特許第6078560号(P6078560)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6078560ポリエステル溶液から残留チタンを除去する新規な方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6078560
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】ポリエステル溶液から残留チタンを除去する新規な方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/90 20060101AFI20170130BHJP
【FI】
   C08G63/90
【請求項の数】28
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-555916(P2014-555916)
(86)(22)【出願日】2012年2月13日
(65)【公表番号】特表2015-507051(P2015-507051A)
(43)【公表日】2015年3月5日
(86)【国際出願番号】CN2012071065
(87)【国際公開番号】WO2013120244
(87)【国際公開日】20130822
【審査請求日】2015年1月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】508079739
【氏名又は名称】ローディア オペレーションズ
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】ネイラヴァル, フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ソトー, ナタリー
(72)【発明者】
【氏名】リン, タオビン
(72)【発明者】
【氏名】ワン, ミンチュアン
【審査官】 岸 智之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−161972(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機チタンを含むポリエステルの水溶液から有機チタンを除去する方法であって、
(a)リン酸またはその酸性塩を添加することによって、前記水溶液のpHを4.0〜5.0に調整する工程と、
(b)工程(a)で得られた前記水溶液を、過酸化水素またはペルオキシ酢酸である酸化剤で処理して、チタン含有固体をもたらす工程と、
(c)工程(b)で得られた反応混合物から前記固体を除去する工程と
を含む方法。
【請求項2】
工程(b)と工程(c)の間の工程:工程(b)で得られた前記反応混合物のpHを6.0〜7.0の値にアルカリで調整する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
用いられるアルカリが、アルカリ性溶液の形態である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
アルカリ性溶液の形態で用いられるアルカリが、8.0〜11.0のpH値を有する、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記水溶液のpHが、工程(a)で4.0の値に調整される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記酸化剤が、工程(a)で用いられる前記水溶液中の前記ポリエステルの重量に対して、0.2重量%〜5.0重量%の量で用いられる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程(b)が、室温から80℃の温度で行われる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程(b)の処理時間が、0.5時間〜4.0時間である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程(c)が、ろ過により行われる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ろ過助剤が、(a)〜(c)の1つ以上の工程で前記水溶液中に導入される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程(c)におけるろ過が、40℃〜90℃の温度で行われる、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
工程(c)における前記ろ過が、1.0気圧〜4.0気圧の圧力下で行われる、請求項9〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
工程(c)における前記ろ過時間が、1.0時間〜2.0時間である、請求項9〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記有機チタンを含むポリエステルが、チタン系触媒の存在下でのポリエステルの調製から得られる、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
工程(a)で用いられる前記水溶液が、前記有機チタンを含むポリエステルを水に溶解させることによって得られる、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記チタン系触媒が、有機チタネートである、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
前記有機チタネートが、テトラアルキルチタネートである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記テトラアルキルチタネートが、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ポリエステルが、ポリエーテル−ポリエステルブロックコポリマーである、請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
工程(a)で用いられる前記水溶液中の前記ポリエステルの濃度が、10重量%〜90重量%である、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
(a)リン酸またはその酸性塩を添加することによって、有機チタンを含むポリエステルの水溶液のpHを4.0〜5.0に調整し、
(b)(a)で得られた前記水溶液を、過酸化水素またはペルオキシ酢酸である酸化剤で処理して、チタン含有固体をもたらし、
(c)(b)で得られた反応混合物から前記固体を除去して得られる、溶液中のチタンの濃度が、1ppm未満である、有機チタネートを含むポリエステルの水溶液の製造方法
【請求項22】
前記水溶液中の前記ポリエステルの濃度が、10重量%〜90重量%である、請求項21に記載の水溶液の製造方法
【請求項23】
有機チタンを含むポリエステルが、チタン系触媒の存在下でのポリエステルの調製から得られる、請求項21または22に記載の水溶液の製造方法。
【請求項24】
前記チタン系触媒が、有機チタネートである、請求項23に記載の製造方法。
【請求項25】
前記有機チタネートが、テトラアルキルチタネートである、請求項24に記載の製造方法。
【請求項26】
前記テトラアルキルチタネートが、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項25に記載の製造方法。
【請求項27】
前記ポリエステルが、ポリエーテル−ポリエステルブロックコポリマーである、請求項21又は22に記載の水溶液の製造方法
【請求項28】
前記ポリエステルが、ポリエーテル−ポリエステルブロックコポリマーである、請求項23から26のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、ポリエステルの水溶液からチタンのレベルを、ポリエステルの加水分解を回避しながら、減少させる新規な方法に関する。詳細には、この新規な方法は、ソイルリリース(soil release)ポリマーの水溶液から残留チタンを除去するために提供される。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルは、様々な産業で広範に使用されている。ポリエステル合成では、チタン系触媒が、一般に使用されており、これは、他の金属および非金属触媒を上回る優れた触媒活性を示す。
【0003】
様々なポリエステル用途のうちで、ポリエステルから構成される一部の市販製品は、水溶液中で製造または使用されている。水性用途の一例は、ポリエーテル−ポリエステルブロックコポリマーであり、これは、ソイルリリースポリマー(SRP)として織物工場処理で、および粉末と液体の両方の洗剤中で使用されてきた。例えば、ポリエチレンテレフタレート/ポリオキシエチレンテレフタレート(PET/POET)およびその変形は、液体洗剤組成物中のソイルリリース剤として使用されている。これらのコポリマーは、米国特許第3,416,952号明細書、米国特許第4,349,688号明細書、米国特許第4,702,857号明細書、4,877.896号明細書、米国特許第4,738,787号明細書、および米国特許第5,786,318号明細書などに記載されている。ポリエステル製品を水に溶解させる場合、とりわけ最初に溶解させる場合に数ヶ月後、反応から残された微量のチタン残留物が溶液から沈殿する。これは、製品品質を劣化させ、したがって、市販の製品、とりわけ長期貯蔵の液体試薬にとって、望ましくない。
【0004】
チタン触媒ポリエステル合成について多くの文献があるが、残留チタンを除去する、とりわけ、水性製品からの残留チタンを除去することについての文献の数は非常に限られている。
【0005】
中国特許第1283614C号明細書には、エステル化生成物からチタネート触媒を除去する方法であって、チタネート触媒は、過炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウムと過酸化水素の水溶液との混合物、または炭酸水素ナトリウムと過酸化水素の水溶液との混合物で処理されて、綿状沈殿を形成し、続いて、得られた沈殿物をろ過して、チタネート触媒を除去する方法が開示されている。反応の間、アルカリ条件が用いられた。
【0006】
PCT国際公開第2001/019775号パンフレットには、ポリエステル分解生成物から酸化チタンを除去する方法であって、酸化チタンは、酸化カルシウム、炭酸カルシウムまたは水酸化カルシウムと反応させて、二酸化チタンを形成し、形成された二酸化チタンを凝集およびろ過される方法が開示されている。反応の間、アルカリ条件がやはり適用される。
【0007】
しかしながら、上記特許/特許出願に記載された方法は、チタン残留物を、例えば、5ppm未満の、満足できるレベルに減少させ得ることは教示できていない。さらに、ポリエステル製品を厳格なアルカリ性反応条件に曝す場合、ポリエステルの加水分解の危険がある。
【0008】
さらに、水溶液からチタン残留物をろ過することは、多くの労働と時間を要する。上記参考文献のすべては、チタンの無機形態が、許容できる期間内、例えば、4時間以内でろ過により有効に除去され得ることを教示することができていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
結果として、ポリエステルの水溶液中のチタンのレベルを減少させる安全で有効な方法が、探求されることが必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、ポリエステルの加水分解を回避しながら、ポリエステルの水溶液中のチタンのレベルを安全かつ有効な方法で減少させる方法を提供することである。
【0011】
本発明は、以下を提供する。
1.残留有機チタンを含むポリエステルの水溶液から残留有機チタンを除去する方法であって、
(a)リン酸またはその酸性塩を添加することによって、水溶液のpHを約4.0〜約5.0に調整する工程と、
(b)工程(a)で得られた水溶液を、過酸化水素またはペルオキシ酢酸である酸化剤で処理して、チタン含有固体をもたらす工程と、
(c)工程(b)で得られた反応混合物からチタン含有固体を除去する工程と
を含む方法。
【0012】
2.工程(b)と工程(c)の間の工程:工程(b)で得られた水溶液のpHを約6.0〜約7.0の値にアルカリで調整する工程をさらに含む、項1に記載の方法。
【0013】
3.用いられるアルカリが、アルカリ性溶液の形態である、項1または2に記載の方法。
【0014】
4.アルカリ性溶液の形態で用いられるアルカリが、約8.0〜約11.0のpH値を有する、項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【0015】
5.水溶液のpHが、工程(a)で約4.0の値に調整される、項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【0016】
6.前記酸化剤が、工程(a)で用いられる水溶液中のポリエステルの重量に対して、約0.2重量%〜約5.0重量%、好ましくは約0.5重量%〜約2.0重量%の量で用いられる、項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【0017】
7.工程(b)が、室温から約80℃、好ましくは約50℃〜約80℃の温度で行われる、項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【0018】
8.工程(b)の処理時間が、約0.5時間〜約4.0時間、好ましくは1.0時間〜約3.0時間である、項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【0019】
9.工程(c)が、ろ過により行われる、項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【0020】
10.ろ過助剤が、(a)〜(c)の1つ以上の工程で水溶液中に導入される、項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【0021】
11.ろ過助剤が、H−20、BH−40、ハイフロスーパーセル(hyflosupercel)、およびそれらの組合せからなる群から選択される、項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【0022】
12.工程(c)におけるろ過が、約40℃〜約90℃、好ましくは約60℃〜約80℃、より好ましくは65℃〜約75℃の温度で行われる、項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【0023】
13.工程(c)におけるろ過が、約1.0気圧〜約4.0気圧、好ましくは約2.5気圧〜約3.0気圧の圧力下で行われる、項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【0024】
14.工程(c)におけるろ過時間が、約1.0時間〜約2.0時間である、項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【0025】
15.残留有機チタンを含むポリエステルが、チタン系触媒の存在下でのポリエステルの調製から得られる、項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【0026】
16.工程(a)で用いられる水溶液が、残留有機チタンを含むポリエステルを水に溶解させ、その溶液を場合によってろ過することによって得られる、項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【0027】
17.チタン系触媒が、有機チタネートである、項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【0028】
18.有機チタネートが、テトラアルキルチタネートである、項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【0029】
19.テトラアルキルチタネートが、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、およびそれらの組合せからなる群から選択される、項1〜18のいずれか一項に記載の方法。
【0030】
20.ポリエステルが、ソイルリリースポリエステルである、項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
【0031】
21.ポリエステルが、ポリエーテル−ポリエステルブロックコポリマーである、項1〜20のいずれか一項に記載の方法。
【0032】
22.工程(a)で用いられる水溶液中のポリエステルの濃度が、約10重量%〜約90重量%、好ましくは約70重量%である、項1〜21のいずれか一項に記載の方法。
【0033】
23.溶液中のチタンの濃度が、1ppm未満である、残留有機チタネートを含むポリエステルの水溶液。
【0034】
24.水溶液中のポリエステルの濃度が、約10重量%〜約90重量%、好ましくは約70重量%である、項24に記載の水溶液。
【0035】
25.残留有機チタンを含むポリエステルが、チタン系触媒の存在下でのポリエステルの調製から得られる、項23または24に記載の水溶液。
【0036】
26.チタン系触媒が、有機チタネートである、項23〜25のいずれか一項に記載の水溶液。
【0037】
27.有機チタネートが、テトラアルキルチタネートである、項23〜26のいずれか一項に記載の水溶液。
【0038】
28.テトラアルキルチタネートが、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、およびそれらの組合せからなる群から選択される、項23〜27のいずれか一項に記載の水溶液。
【0039】
29.ポリエステルが、ソイルリリースポリエステルである、項23〜28のいずれか一項に記載の水溶液。
【0040】
30.ポリエステルが、ポリエーテル−ポリエステルブロックコポリマーである、項23〜29のいずれか一項に記載の水溶液。
【0041】
本発明で記載される方法に従って残留チタンを除去することによって得られるポリエステルの水溶液は、5ppm未満、好ましくは1ppm未満のチタンレベルを示す。さらに、チタン除去のプロセスの間でポリエステルの加水分解は、認められない。
【0042】
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、本発明の特定の態様をさらに証明するために含まれる。本発明は、本明細書で提示される具体的な実施形態の詳細な説明と組み合わせてこれらの図面の1つ以上を参照することによってより良く理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】本方法で使用される典型的な手順を表すフローチャートである。
図2】ポリエステルの水溶液中の加水分解挙動をモニターするGPC図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明は、ポリエステルの水溶液中のチタンのレベルを、ポリエステルの加水分解を回避しながら、安全で、有効な方法で減少させる方法を提供する。
【0045】
本発明の方法によれば、残留有機チタンを含有するポリエステルの水溶液は、弱酸性条件下で、酸化剤で処理される。残留有機チタンは、酸化反応によって無機形態になり、反応混合物からチタン含有固体として沈殿する。次いで、チタン含有固体は、好ましくは中性または弱酸性条件下でろ過によって、反応混合物から除去される。残留有機チタンをその無機形態に変換する弱酸性条件が、特に望ましい。詳細には、酸化、およびその後のチタン含有固体の除去は、弱酸性条件が、リン酸またはその酸性塩を用いることによって達成される場合に、有効に行われ得ることが見出された。このような弱酸性条件は、ポリエステルの加水分解の危険を減少させるだけでなく、チタン変換率を増加させることが見出された。
【0046】
水溶液中の残留有機チタンは、いずれの供給源のものでもあり得るが、大部分の場合、チタン系触媒を用いてポリエステルを調製する反応からもたらされる。一例として、ポリエステルの合成で用いられるチタン系触媒は、テトラアルキルチタネート(Ti−(O−アルキル))である。本発明の一つの好ましい実施形態において、チタン系触媒は、テトライソプロピルチタネート(Ti−(O−Bu))、テトラブチルチタネート(Ti−(O−iPr))、およびそれらの組合せからなる群から選択される。本発明の一つのより好ましい実施形態において、チタン系触媒は、テトライソプロピルチタネート(Ti−(O−iPr))である。
【0047】
ポリエステルの調製から残された残留有機チタネートは、用いられるとおりの元の触媒、または調製の間に反応から生じた任意の変形、または種々の形態の混合物の形態であり得る。一実施形態において、有機チタンは、Ti−(OR、OR、OR、OR)(ここで、R、R、R、およびRは、同じか、またはエステル化反応の間に交換された異なるアルキル基である)であり得る。
【0048】
本明細書で使用される場合、「ポリエステル」という用語は、二塩基性酸と二価アルコールとの反応により生成されるポリエステル、およびまたこのようなポリエステルの誘導体、例えば、ポリエーテル−ポリエステルコポリマーを含むコポリマーも含めて、複数のエステル結合を有するポリマーを指す。
【0049】
本発明のある実施形態によれば、ポリエステルは、チタン系触媒反応に由来するいずれか一つであり得る。ポリエステルポリマーは、ホモポリマーまたはコポリマーであり得る。典型的には、ポリエステルは、エチレングリコールなどのジオールを、遊離の酸のようなジカルボン酸またはそのジメチルエステルと反応させて、エステルモノマーおよび/またはオリゴマーを生成させ、次いで、これを重縮合させて、ポリエステルを生成させることによって作製される。カルボン酸基またはその誘導体を有する2つ以上の化合物と、ヒドロキシル基またはその誘導体を有する2つ以上の化合物とを、このプロセスの間に反応させることができる。
【0050】
ポリエステル合成のための適切な「ジカルボン酸」成分の例には、好ましくは8〜14個の炭素原子を有する芳香族ジカルボン酸、好ましくは4〜12個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸、または好ましくは8〜12個の炭素原子を有する脂環式ジカルボン酸が含まれる。酸成分として有用なジカルボン酸のより具体的な例は、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキサンジ酢酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などであり、イソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、およびシクロヘキサンジカルボン酸が、最も好ましい。これらの酸の対応する酸無水物、エステル、および酸クロリドの使用が、「カルボン酸」という用語に含まれることが理解されるべきである。
【0051】
ポリエステル合成のための適切な「ジオール」成分の例には、好ましくは6〜20個の炭素原子を有する脂環式ジオールおよび/または好ましくは3〜20個の炭素原子を有する脂肪族ジオールが含まれる。このようなジオールのより具体的な例には、ジエチレングリコール;トリエチレングリコール;1,4−シクロヘキサンジメタノール;プロパン−1,3−ジオール;ブタン−1,4−ジオール;ペンタン−1,5−ジオール;ヘキサン−1,6−ジオール;3−メチルペンタンジオール−(2,4);2−メチルペンタンジオール−(1,4);2,2,4−トリメチルペンタン−ジオール−(1,3);2,5−ジエチルヘキサンジオール−(1,3);2,2−ジエチルプロパン−ジオール−(1,3);ヘキサンジオール−(1,3);1,4−ジ−(ヒドロキシエトキシ)−ベンゼン;2,2−ビス−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−プロパン;2,4−ジヒドロキシ−1,1,3,3−テトラメチル−シクロブタン;2,2−ビス−(3−ヒドロキシエトキシフェニル)−プロパン;および2,2−ビス−(4−ヒドロキシプロポキシフェニル)−プロパンが含まれる。
【0052】
本発明のポリエステルの一例は、ソイルリリースポリエステル、例えば、ポリエ−テル−ポリエステルブロックコポリマーである。ポリエーテル−ポリエステルブロックコポリマーは、少なくとも1種の、芳香族ジカルボン酸のジ(C〜C)アルキルエステルと、少なくとも1種の脂肪族ジオールまたは脂肪族ポリオールとのエステル交換反応、続いて、少なくとも1種のポリエーテル、少なくとも1種の一価アルコール、少なくとも1種のモノカルボン酸、および少なくとも1種のエステルからなる群から選択される1種以上の化合物との重縮合によって得られ、ここで、ポリエーテルは、少なくとも1個の末端ヒドロキシル基を有する。
【0053】
ポリエーテル−ポリエステルブロックコポリマーの調製のための芳香族ジカルボン酸のジ(C〜C)エステルの適切な例には、オルトフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、5−スルホイソフタル酸、1,2−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、1,7−ナフタレンデカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸および2,7−ナフタレンジカルボン酸の、ジメチルエステル、ジエチルエステル、ジプロピルエステルおよびジブチルエステルが含まれる。
【0054】
ポリエーテル−ポリエステルブロックコポリマーの調製のための脂肪族ジオールの適切な例には、C〜C12脂肪族ジオール、およびC〜C12脂肪族トリオールなどの脂肪族ポリオールが含まれる。より好ましくは、脂肪族ジオールは、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,2−デカンジオール、1,2−ドデカンジオール、およびネオペンチレングリコールからなる群から選択される1種以上である。
【0055】
ポリエーテル−ポリエステルブロックコポリマーの調製のためのポリエーテルの適切な例には、分子量750のMPEG、分子量600のPEG、分子量1000のPEG、分子量1500のPEG、分子量750のMPEG−b−PPG、分子量1000のPPG−b−PEG−b−PPG、および分子量1500のPPG−b−PEG−b−PPG(ここで、MPEGは、メトキシポリエチレングリコールであり、PEGは、ポリエチレングリコールであり、PPGは、ポリプロピレングリコールである)が含まれる。
【0056】
PCT/CN2009/072575には、チタン系反応によって得られるSRPとしてのポリエーテル−ポリエステルコポリマーが記載されている。
【0057】
本発明の方法の典型的な実施形態において、本発明は、残留有機チタンを含むポリエステルの水溶液から残留有機チタンを除去する方法であって、
(a)リン酸またはその酸性塩を添加することによって、該水溶液のpHを約4.0〜約5.0の値に調整する工程と、
(b)工程(a)で得られた水溶液を、過酸化水素またはペルオキシ酢酸である酸化剤で処理して、チタン含有固体をもたらす工程と、
(c)工程(b)で得られた反応混合物から該チタン含有固体を、好ましくはろ過によって、除去する工程と
を含む方法を提供する。
【0058】
本発明の方法の一つの好ましい実施形態において、工程(a)で用いられる水溶液は、残留有機チタンを含むポリエステルを水に溶解させ、この溶液を場合によってろ過することによって得られる。工程(a)で用いられる水溶液中のポリエステルの濃度は、本発明の方法にとって重要ではなく、実際の適用に基づいて容易に決定され得る。例えば、濃度は、約10重量%〜約90重量%、好ましくは約50重量%〜約90重量%、最も好ましくは約70重量%であり得る。
【0059】
本発明の方法の別の好ましい実施形態において、ろ過助剤が、工程(c)において反応混合物中に導入される。あるいは、ろ過助剤はまた、工程(a)または工程(b)において導入され得る。
【0060】
本発明の方法の工程(a)において、リン酸またはその酸性塩が、有利には水溶液のpHを調整するために用いられる。リン酸の酸性塩の例には、NaHPO、KHPOなどが含まれる。
【0061】
上記工程(a)において上記例示されたとおりの酸による調整後の適切なpHは、弱酸性、好ましくは約4.0〜約5.0である。例示的なpHは、約4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9または5.0である。最も好ましいpHは、約4.0である。
【0062】
本発明の方法の工程(b)において、用いられる適切な酸化剤は、中性酸化剤または酸性酸化剤である。好ましい酸化剤は、過酸化水素またはペルオキシ酢酸である。最も好ましくは、酸化剤は、ハイドリゲンペルオキシドである。上記工程(b)で用いられる酸化剤の適切な量は、工程(a)で用いられる水溶液中ポリエステルの重量に対して、約0.2〜約5.0%、好ましくは約0.3〜約4.0%、より好ましくは約0.4から約3.0%、より好ましくは約0.5〜約2.0%である。酸化剤の例示的な量は、約0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.2、1.4、1.6、1.8、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5または5.0重量%である。
【0063】
本発明によれば、上記工程(b)は、当業者によって決定され得る適切な温度、例えば、約室温(例えば、20℃)〜約90℃、好ましくは約40℃〜約80℃、より好ましくは約50℃〜約80℃で行われる。工程(b)における反応の例示的な温度は、約30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃または90℃である。
【0064】
本発明によれば、上記工程(b)は、合理的な期間、例えば、約0.5時間〜約4時間、好ましくは約1.0時間〜約3.0時間行うことができる。上記工程(b)のための好ましい処理時間は、約1.0、2.0、3.0または4.0時間である。
【0065】
本発明の方法の工程(c)において、チタン含有固体/無機チタンは、工程(b)で得られる反応混合物から除去される。工程(b)からもたらされる無機チタンは、TiO2であり、従来の手段によって除去され得る。例えば、無機チタンは、好ましくはろ過助剤の助けとともに、ろ過によって除去される。適切なろ過助剤は、簡単な実験によって容易に見出すことができる。例えば、適切なろ過助剤は、BH−20、BH−40、ハイフロスーパーセル、およびそれらの組合せからなる群から選択される。
【0066】
一実施形態において、工程(c)におけるろ過は、約1.0気圧〜4.0気圧、好ましくは約2.5気圧〜3.0気圧で行われ得る。実施される例示的な圧力は、約1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5または4.0気圧である。好ましい圧力は、約2.5または3.0気圧である。好ましくは、工程(c)におけるろ過は、高温で行われる。ろ過のための適切な温度は、約室温(例えば、20℃)〜約80℃、好ましくは約60℃〜約80℃、より好ましくは約65℃〜約75℃である。例示的な温度には、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、および80℃が含まれる。好ましい温度は、65℃、70℃または75℃である。一実施形態において、工程(c)におけるろ過時間は、約1.0時間〜約2.0時間である。
【0067】
一つの好ましい実施形態において、本発明による方法は、工程(b)と工程(c)の間の工程:工程(b)で得られた水溶液のpHを、アルカリで約6.0〜約7.0、より好ましくは約6.2〜約6.8、最も好ましくは約6.5の値に調整する工程をさらに含む。この処理は、この処理は、無機チタンの一部がより比較的低いpHで錯体を形成し得る可能性を防止し得る。形成された錯体は、工程(c)におけるその後のろ過にとって望ましくないことがあり得る。一実施形態において、用いられるアルカリは、アルカリ性溶液の形態である。一つのさらなる実施形態において、アルカリは、約8.0〜約11.0のpH値を有するアルカリ性溶液の形態で用いられる。pHを逆に調整するために用いられる適切なアルカリは、例えば、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウムなどである。好ましいアルカリは、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムである。
【0068】
本発明の方法の効率は、任意の従来の分析手段、例えば、誘導結合プラズマ原子発光分光計(Inductively Coupled Plasma Atomic Emission Spectrometer(ICP)によって、モニターされ得る。ポリエステルの水溶液中のチタンのレベルは、本発明の方法によって5ppm未満、好ましくは1ppm未満に減少させ得る。
【0069】
本発明の方法におけるポリエステルの加水分解の危険は、GPCおよびHPLCなどの任意の従来のクロマトグラフィーによってモニターされ得る。
【0070】
本発明による用法は、様々な産業、例えば、スペシャルケミストリー、ポリエステル製造、廃水処理などでその用途を見出し得る。
【実施例】
【0071】
以下の実施例は、本発明の実施形態を例証するために含まれる。以下に続く実施例で開示される技術は、本発明の実施において十分機能するために、本発明者によって発見された技術を表すことは当業者によって理解されるべきである。しかしながら、当業者は、本開示に照らして、多くの変形が、開示される具体的な実施形態においてなされ得、かつ本発明の概念、精神および範囲から逸脱することなく、同様または類似の結果をなお得ることを理解すべきである。当業者に明らかなこのような類似の代替および変更のすべては、添付の特許請求の範囲により定義されるとおりの本発明の精神、範囲および概念の内にあるとみなされる。
【0072】
調製実施例:SRPの調製
磁気式/機械式撹拌機、40cmの充填分留カラム、温度計およびNガス吸気管を備えた三つ口フラスコに、29.5gのテルフタル酸ジメチル(DMT)、6.10gの1,2−プロピレングリコール(PG)、0.20gの酢酸カリウム(KAc)、115gの、分子量750のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(MPEG−750)、26.0gのジエチレングリコールジエチルエーテル(DEG−ジ−Et)および0.2gのテトライソプロピオン酸チタン(TPT)を投入した。この反応を、最初に大気圧において窒素パージ下200℃で4時間行い、メタノールを分留カラムにより収集した。次いで、反応を約10ミリバールの真空下210℃で6時間続け、ジエチレングリコールジエチルエーテルを収集した。最後に、反応の最後に向けて、真空よりはむしろ窒素スパージを用いた。
【0073】
実施例
実施例1で得た70gの溶融SRPを、フラスコ中に投入し、30mLの純粋を添加し、最終濃度70重量%まで撹拌した。溶液中のチタン残留物は、約1,000ppmとわかった。溶液のpHを、HPOまたはその酸性塩の添加によって4.0〜5.0に調整し、過酸化水素またはペルオキシ酢酸の酸化物およびろ過助剤を添加した。酸化処理を加熱下で1.0〜3.0時間行い、続いて、溶液のpHを50%NaOH水溶液で6.0〜7.0に調整した。加圧ろ過を、1.0気圧〜4.0気圧の圧力および60℃〜80℃の温度下で行った。ろ過の効率は、ろ過速度で適格とした。
【0074】
チタン除去効率は、70P誘導結合プラズマ原子発光分光計(ICP)(JY、仏国)によりモニターした。作業条件下で使用したパラメータには、12L/分の冷却流量、0.25L/分のキャリアガス流量、600の反射パウダー、1.4mL/分の溶液の容量増加、および誘導ループの上15mmの観測高さが含まれる。
【0075】
ポリエステルの加水分解の危険は、600ポンプおよび410RI検出器を備えたGPC(Waters system)ならびにHPLC(Agilent1100 HPLC system)によりモニターした。0.2g試料/10mL HOを調製し、GPCおよびHPLCに充填した。GPC(Waters system):カラム:Waters Ultrahydrogel LinearおよびUltrahydrogel 120(それぞれ7.8300mm);溶離液:水;カラム温度:40℃;およびRI検出器温度:40℃。HPLC(Agilent1100 HPLC system):カラム:Shisiedo C18、1504.6mm、3μm;溶離液勾配:表1参照;流量:1mL/分;温度:40℃;および検出:240nm(対照標準320nm)。
【0076】
【0077】
種々の実験条件および結果を以下の表2〜表4にまとめる。
【0078】
溶液のpHの調整に異なる酸を用いたこと、または酸化処理をアルカリ条件で行ったことを除いて、比較実験は、上記のとおりの手順に実質的に従って行った。比較実験の条件および結果は、以下の表2および表4にまとめる。
【0079】
【0080】
表2に示されるように、酸化をpH4または5で行った場合、加水分解は、GPCとHPLCの両方ともにより認められなかったが、pH7または8で行った場合、部分的な加水分解が認められた。図2は、表2に示されるとおりに実施例1〜実施例6に対応する試料1〜6の水溶液中の加水分解挙動のモニターの結果を示す。図2において、22.8分におけるGPCピークは、SRPに対応し、不変のままであり、表2における実施例1〜実施例6の条件で加水分解がなかったことを示す。さらに、表2における実施例1〜実施例6のデータは、ICPにより検出して1ppm未満の良好なチタン除去効率、および良好なろ過速度を示す。
【0081】
【0082】
表3は、NaHPOにより調整したpH4での酸化処理および酸化剤としてのAcOOHの使用も、ICPにより検出して1ppm未満の良好なチタン除去効率を与えたことを示している。
【0083】
【0084】
表4は、種々のろ過助剤を用い、およびHによる酸化処理において種々の酸を用いることによって、残留チタンを除去する効率を示す。表4から、BH−20、BH−40およびハイフロスーパーセルなどの種々の酸を用いて、残留チタンの除去の満足できる効率を促進し得ることがわかる。酸化処理のためにpHを調整するために用いた酸に関して、HPO、NaHPOおよびKHPOのすべては、残留チタンの除去の良好な効率を与えるが、HCl、AcOHおよびHSOを用いることによって得られた試料は、その後のろ過操作でろ過することができない。
図1
図2