特許第6078573号(P6078573)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6078573
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】車両及び車両用アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 11/02 20060101AFI20170130BHJP
   H01Q 1/22 20060101ALI20170130BHJP
   H01Q 1/32 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
   B60R11/02 A
   H01Q1/22 B
   H01Q1/32 Z
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-52015(P2015-52015)
(22)【出願日】2015年3月16日
(65)【公開番号】特開2016-172460(P2016-172460A)
(43)【公開日】2016年9月29日
【審査請求日】2016年4月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(73)【特許権者】
【識別番号】000006758
【氏名又は名称】株式会社ヨコオ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】水谷 勇一
(72)【発明者】
【氏名】山瀬 智彦
(72)【発明者】
【氏名】郷 清二
【審査官】 菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−050031(JP,A)
【文献】 特開2013−009143(JP,A)
【文献】 特開2008−182523(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/003078(WO,A1)
【文献】 特開2005−057653(JP,A)
【文献】 特開平11−198731(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 11/02
H01Q 1/22
H01Q 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルーフパネルと、車両用アンテナ装置と、を備えた車両において、
前記ルーフパネルは、ルーフ部と、該ルーフ部から隆起し、内部に前記車両用アンテナ装置を収容する空間を有するアンテナカバー部と、を有し、
前記ルーフパネルは樹脂製であって、
前記ルーフ部と前記アンテナカバー部は、一体成形されており、
前記車両用アンテナ装置は、ベース部と、該ベース部から立設する立設部と、を有し、
車両への取付状態において外側に位置する前記ルーフ部の外面と前記アンテナカバー部との境界部分に位置する境界線に沿って外側仮想面を想定した場合、
前記ベース部の少なくとも一部は、前記外側仮想面よりも下方に位置している車両。
【請求項2】
車両への取付状態において内側に位置する前記ルーフ部の内面と前記アンテナカバー部との境界部分に位置する境界線に沿って内側仮想面を想定した場合、
前記ベース部の全体が、前記外側仮想面よりも下方であって、かつ前記内側仮想面よりも下方に位置している請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記車両用アンテナ装置をルーフパネルに取り付けるための取付部は、
前記ルーフパネルに一体成形されている請求項1又は請求項に記載の車両。
【請求項4】
ルーフ部と、該ルーフ部から隆起し、内部に車両用アンテナ装置を収容する空間を有するアンテナカバー部と、を有するルーフパネルを備える車両に取り付けられる車両用アンテナ装置において、
ベース部と、該ベース部から立設する立設部と、を有し、
車両への取付状態において外側に位置する前記ルーフ部の外面と前記アンテナカバー部との境界部分に位置する境界線に沿って外側仮想面を想定した場合、
前記ベース部の少なくとも一部は、前記外側仮想面よりも下方に位置する車両用アンテナ装置。
【請求項5】
車両への取付状態において内側に位置する前記ルーフ部の内面と前記アンテナカバー部との境界部分に位置する境界線に沿って内側仮想面を想定した場合、
前記ベース部の全体が、前記外側仮想面よりも下方であって、かつ前記内側仮想面よりも下方に位置している請求項に記載の車両用アンテナ装置。
【請求項6】
前記ルーフパネルに一体成形されている取付部を介して、前記ルーフパネルに取り付けられる請求項又は請求項に記載の車両用アンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用アンテナ装置を備えた車両及び車両用アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両には、AM/FMラジオ放送、テレビ放送、GPS用等の車両用アンテナ装置が取り付けられている。車両用アンテナ装置は、見通しがよく、車両の最も高い位置であるルーフに取り付けられていることが多い。
【0003】
図6(a),(b)に示すように、特許文献1に記載の車両用アンテナ装置51は、ベース部53と、ベース部53から立設する立設部54と、を有している。そして、車両用アンテナ装置51と、該車両用アンテナ装置51全体を収容するアンテナカバー部52と、によって、アンテナユニット50が構成されており、アンテナユニット50が車両のルーフ101に取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−50031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のアンテナユニット50では、ベース部53が、車両のルーフ101に取り付けられているため、ベース部53全体を収容させるためにアンテナカバー部52が大型化してしまうという問題点があった。
【0006】
この発明は、上記従来技術に存在する問題点に着目してなされたものであり、その目的は、小型化されたアンテナカバー部を有する車両及び車両用アンテナ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するための車両は、ルーフパネルと、車両用アンテナ装置と、を備えた車両において、前記ルーフパネルは、ルーフ部と、該ルーフ部から隆起し、内部に前記車両用アンテナ装置を収容する空間を有するアンテナカバー部と、を有し、前記ルーフパネルは樹脂製であって、前記ルーフ部と前記アンテナカバー部は、一体成形されており、前記車両用アンテナ装置は、ベース部と、該ベース部から立設する立設部と、を有し、車両への取付状態において外側に位置する前記ルーフ部の外面と前記アンテナカバー部との境界部分に位置する境界線に沿って外側仮想面を想定した場合、前記ベース部の少なくとも一部は、前記外側仮想面よりも下方に位置していることを要旨とする。
【0008】
上記問題点を解決するための車両用アンテナ装置は、ルーフ部と、該ルーフ部から隆起し、内部に車両用アンテナ装置を収容する空間を有するアンテナカバー部と、を有するルーフパネルを備える車両に取り付けられる車両用アンテナ装置において、ベース部と、該ベース部から立設する立設部と、を有し、車両への取付状態において外側に位置する前記ルーフ部の外面と前記アンテナカバー部との境界部分に位置する境界線に沿って外側仮想面を想定した場合、前記ベース部の少なくとも一部は、前記外側仮想面よりも下方に位置することを要旨とする。
【0009】
ベース部の全体が外側仮想面よりも上方に位置している場合、外側仮想面からのベース部の突出長が最も長くなるので、アンテナカバー部の外寸が最も長くなる。ところが、ベース部の少なくとも一部が外側仮想面よりも下方に位置している場合、ベース部の全体が外側仮想面よりも上方に位置している場合に比して、外側仮想面からのベース部の突出長が短くなるので、アンテナカバー部内においてベース部を収容するための空間を小さくすることができる。アンテナカバー部においてベース部を収容するための空間が小さくなれば、それに伴い、アンテナカバー部の外寸を短くすることができる。その結果、アンテナカバー部全体を小型化することができる。
【0010】
また、ルーフパネルが樹脂製であることから、ルーフパネルを成形し易い。また、ルーフ部とアンテナカバー部を一体成形することで、車両用アンテナ装置を収容したアンテナカバー部をルーフ部に別途取り付けるための部品を必要とすることがないので、アンテナカバー部の取り付けに係る部品点数を削減することもできる。また、車両用アンテナ装置を車両の外側から取り付ける場合、ルーフ部とアンテナカバー部との間に生じる隙間を塞ぐためにシール部材等が必要となる。しかし、ルーフ部とアンテナカバー部を一体成形したことで、車両用アンテナ装置を車両の外側から取り付ける必要がなくなり、その結果、ルーフ部とアンテナカバー部との間に隙間が生じることがないので、シール部材等の余分な部材を必要とすることがない。
【0011】
また、車両について、車両への取付状態において内側に位置する前記ルーフ部の内面と前記アンテナカバー部との境界部分に位置する境界線に沿って内側仮想面を想定した場合、前記ベース部の全体が、前記外側仮想面よりも下方であって、かつ前記内側仮想面よりも下方に位置していてもよい。
【0012】
また、車両用アンテナ装置について、車両への取付状態において内側に位置する前記ルーフ部の内面と前記アンテナカバー部との境界部分に位置する境界線に沿って内側仮想面を想定した場合、前記ベース部の全体が、前記外側仮想面よりも下方であって、かつ前記内側仮想面よりも下方に位置していてもよい。
【0013】
これによれば、ベース部の全体が外側仮想面よりも下方であって、かつ内側仮想面よりも下方に位置している場合、ベース部が外側仮想面よりも上方に突出していないので、アンテナカバー部においてベース部を収容するための空間を確保する必要がない。よって、ベース部が外側仮想面よりも上方に位置している場合に比して、より一層、アンテナカバー部全体を小型化することができる。
【0014】
また、車両について、前記車両用アンテナ装置をルーフパネルに取り付けるための取付部は、前記ルーフパネルに一体成形されていてもよい。
また、車両用アンテナ装置について、前記ルーフパネルに一体成形されている取付部を介して、前記ルーフパネルに取り付けられるようにしてもよい。
【0015】
これによれば、車両用アンテナ装置の取り付けに係る部品点数を削減することができる。また、樹脂成型によって、ルーフパネルと取付部を一体成形することができるので、製品毎に取付部の位置が異なるということがなくなり、取付部の位置精度を高めることもできる。アンテナカバー部を小型化する場合、アンテナカバー部の空間が、最大限、小型化されている。このような場合、取付部の位置が少しでもずれると、それに伴って、取付部に取り付けられる車両用アンテナ装置の位置もずれる虞があり、アンテナカバー部の内部に車両用アンテナ装置が当接する虞もある。ところが、ルーフパネルと取付部を一体成形することで、製品毎に取付部の位置が異なるということがなくなるので、アンテナカバー部内に、確実に車両用アンテナ装置を収容することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、アンテナカバー部を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態の車両を示す背面図。
図2】アンテナカバー部に車両用アンテナ装置が収容された状態を示す断面図。
図3図2における3−3線断面図。
図4】車両用アンテナ装置の配置の変更例を示す断面図。
図5】車両用アンテナ装置の配置の変更例を示す断面図。
図6】(a),(b)は、従来例におけるアンテナカバー部に車両用アンテナ装置が収容された状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、車両及び車両用アンテナ装置の一実施形態を図面に従って説明する。なお、以下の説明において、「前後方向」とは、車両の前後方向に相当し、「上下方向」とは、車両の高さ方向に相当する。
【0019】
図1に示すように、ルーフパネル20は、車両10のルーフ11を構成している。ルーフパネル20は、樹脂製である。
図2に示すように、ルーフパネル20は、ルーフ部21と、ルーフ部21から隆起するアンテナカバー部22と、を有する。ルーフ部21とアンテナカバー部22と、が一体成形されたものが、ルーフパネル20である。
【0020】
ルーフパネル20について説明する。
ルーフパネル20は、第1成形部23と第2成形部24の二色成形によって製造されている。第1成形部23は、透過材製である。第2成形部24は、不透過材製である。車両10にルーフパネル20が取り付けられた状態において、第1成形部23は、第2成形部24よりも車両10の外側に位置している一方、第2成形部24は、第1成形部23よりも車両10の内側に位置している。これにより、車両10にルーフパネル20が取り付けられた状態で車両10の外側に位置する第1成形部23の一面が、ルーフパネル20の外面、及びルーフ部21の外面21aに相当する。また、車両10にルーフパネル20が取り付けられた状態で車両10の内側に位置する第2成形部24の一面が、ルーフパネル20の内面、及びルーフ部21の内面21bに相当する。
【0021】
ルーフ部21について説明する。
図2及び図3に示すように、ルーフ部21は、ルーフパネル20においてアンテナカバー部22が形成されていない箇所とされている。
【0022】
アンテナカバー部22について説明する。
図1に示すように、アンテナカバー部22は、ルーフパネル20の後方であって、車幅方向における略中央に位置している。図2及び図3に示すように、アンテナカバー部22は、ルーフ部21の外面21aから隆起し、内部に空間Sを有している。ルーフ部21とアンテナカバー部22の曲率は異なっている。また、ルーフ部21の外面21aとアンテナカバー部22の外面22aとの境界部分には、外側隆起始点部R1を想定することができる。また、ルーフ部21の内面21bとアンテナカバー部22の内面22bとの境界部分には、内側隆起始点部R2を想定することができる。
【0023】
この実施形態におけるアンテナは、所謂、シャークフィンアンテナである。そして、この実施形態におけるアンテナカバー部22は、車両10の前後方向における断面視が略三角形状であるとともに、車幅方向における断面視が、車両10の下方に向かうほど広がる略三角形状である。
【0024】
また、図2に示すように、ルーフ部21の内面21bであって、車両10の前方向において最も先端に想定される外側隆起始点部R1の下方には、車両用アンテナ装置30をルーフパネル20に取り付けるための取付部25が位置している。取付部25は、丸ボスであって、ルーフ部21の内面21bから下方に向かって延びている。また、取付部25は、ルーフ部21(ルーフパネル20)と一体成形されている。また、取付部25の先端25aは、ルーフ部21と略平行となっている。
【0025】
車両用アンテナ装置30は、ベース部31と、立設部としての第1アンテナ部品32と、を有する。
図2に示すように、ベース部31は、底板311と基板312とを有する。底板311の上方に、平面視したときの形状が底板311と同一である基板312が積層されて、ベース部31が形成されている。ベース部31は、平面視した状態において、長辺と短辺を持つ長方形状の平板であり、第1アンテナ部品32を車両10に取り付けるための基台となる。
【0026】
ベース部31には、第1アンテナ部品32が立設されている。また、ベース部31において第1アンテナ部品32よりも前方には、第2アンテナ部品34が実装されている。第1アンテナ部品32、及び、第2アンテナ部品34は、車両用アンテナ装置30をアンテナとして機能させるための部品である。なお、この実施形態における第1アンテナ部品32は、該第1アンテナ部品32よりも前方に位置する第2アンテナ部品34よりも、ベース部31からの突出長が長いアンテナ部品とされている。ちなみに、第1アンテナ部品32は、全体がアンテナ素子であってもよいし、アンテナ素子が実装された基板であってもよい。すなわち、第1アンテナ部品32とは、ベース部31から立設する部材であり、少なくとも、アンテナ素子を含む部材である。
【0027】
この実施形態では、車幅方向とベース部31の短辺方向が同じ方向となるように配置されている。また、第1アンテナ部品32の板厚方向が、ベース部31の板厚方向と直交するように、第1アンテナ部品32がベース部31に配置されている。
【0028】
ここで、図3に示すように、ベース部31の短辺方向への長さを「長さL1」とすると、ベース部31の上方には、第1アンテナ部品32の立設方向に沿って長さL1分の幅を有する領域を想定することができる。そして、この実施形態において第1アンテナ部品32及び第2アンテナ部品34は、前述した長さL1分の幅を有する領域内に収まり、当該領域外へはみ出していない。つまり、図3に示すように、この実施形態の車両用アンテナ装置30は、車両用アンテナ装置30を正面視した場合においてベース部31の短辺方向で対向し、長辺方向に沿うベース部31の端部が最も外方に位置していることになる。
【0029】
また、図2に示すように、車両10の前方向におけるベース部31の先端には、挿通孔31aが形成されている。詳細にいえば、底板311と基板312は、それぞれ、厚み方向に貫通する孔を有しており、この二つの孔が連通することで挿通孔31aが形成されている。
【0030】
また、車両10において、ルーフパネル20よりも下方であって、車両10に取り付けられた状態における車両用アンテナ装置30のベース部31よりも下方には、車両10の内装を構成する内装パネル40が取り付けられている。
【0031】
以下、図2及び図3に従って、アンテナカバー部22に車両用アンテナ装置30を収容する方法を、従来技術と比較しつつ、その作用とともに説明する。
なお、図3において一点鎖線で記載した個所は、比較例としての従来技術(図6(a),(b)参照)における車両用アンテナ装置51を、実施形態における車両用アンテナ装置30に置き換えて説明するものである。また、説明を簡略化するために、従来技術におけるアンテナカバー部と、実施形態におけるアンテナカバー部22を、相似化している。これにより、従来技術におけるアンテナカバー部22の頂点の開口角度θと、実施形態におけるアンテナカバー部22の頂点の開口角度θは、同一角度となる。
【0032】
まず、各部材の寸法について説明する。
図3に示すように、この実施形態では、車幅方向において対向する外側隆起始点部R1間の距離を、車幅方向におけるアンテナカバー部22の外寸と定義する。そして、アンテナカバー部22の外寸を、「長さL2」と定義する。また、車幅方向において対向する外側隆起始点部R1同士を結ぶ仮想線Xを想定した場合、仮想線Xとアンテナカバー部22の内面との交点K1及び交点K2間の長さを、車幅方向におけるアンテナカバー部22の内寸と定義する。そして、アンテナカバー部22の内寸を、「長さL3」と定義する。また、図3に示すように、一点鎖線で示す従来技術におけるアンテナカバー部22の外寸を、「長さL4」と定義する。なお、長さL2及び長さL3は、アンテナカバー部22を平面視したときにおける平面形状と、その平面形状の断面位置によって変動し得る値である。例えば、アンテナカバー部22を平面視したときの形状を略楕円形状とし、車両10の前後方向と楕円の長径方向が同一方向となるようにアンテナカバー部22を配置したとする。この場合、楕円の前方向又は後方向に進むほど、長さL2及び長さL3は短くなる一方、楕円の中央ほど、長さL2及び長さL3は長くなる。
【0033】
また、図2及び図3に示すように、ルーフ部21の外面21aと外側隆起始点部R1との境界部分に沿う境界線R11を想定する。境界線R11は、車両10を平面視したときに環状に視認可能である。そして、境界線R11を輪郭とし、かつ外面21aと同一曲率となる外側仮想面21cを想定する。同様に、ルーフ部21の内面21bと内側隆起始点部R2との境界部分に沿う境界線R22を想定する。境界線R22は、車両10を平面視したときに環状に視認可能である。そして、境界線R22を輪郭とし、かつ内面21bと同一曲率となる内側仮想面21dを想定する。
【0034】
図3の一点鎖線で示す従来技術では、ルーフ部21の外面21aと当接する位置に、車両用アンテナ装置30のベース部31が取り付けられている(図6(a),(b)に示す位置参照)。以下、従来技術における外側仮想面21cからのベース部31の突出長を、「長さM1」と定義する。
【0035】
ベース部31がルーフ部21の外面21aと当接する位置に取り付けられていることで、「長さM1」は、ベース部31の板厚と同じ長さとなる。また、従来技術では、外側仮想面21cから最も離れた位置にあるベース部31の一面(以下、外面31bと示す)の幅方向端部がアンテナカバー部22の内側に当接しないように、次のような長さ関係を有している。すなわち、アンテナカバー部22においてベース部31を収容するための空間を確保するために、アンテナカバー部22の内寸は、ベース部31の短辺方向への長さL1よりも長くなっている。また、ベース部31の位置にかかわらず、アンテナカバー部22の厚みが変化しないとすると、アンテナカバー部22の内寸が長くなることに伴い、アンテナカバー部22の外寸も長くなる。そして、アンテナカバー部22の外寸が長くなることに伴い、アンテナカバー部22の空間Sも大きくなる。
【0036】
一方、図2に示すように、実施形態では、ベース部31の挿通孔31aと、アンテナカバー部22の取付部25に対して、外側仮想面21cよりも下方から、取付部25の立設方向に沿ってビスBを挿入し、車両用アンテナ装置30をルーフパネル20よりも内側からルーフパネル20に取り付けている。この状態では、第1アンテナ部品32が、アンテナカバー部22の空間S内に収容される。そして、この状態では、取付部25を介して車両10に取り付けられたベース部31の全体が、外側仮想面21cよりも上方に位置しないようになっている。つまり、従来技術における外側仮想面21cからのベース部31の突出長よりも突出長が短くなる。なお、この実施形態では、外側仮想面21cからベース部31は、突出していない(突出長が「0」である)。
【0037】
実施形態では、外側仮想面21cからのベース部31の突出長が短くなることで、アンテナカバー部22においてベース部31を収容するための空間Sを、従来技術における空間よりも小さくすることができる。これにより、アンテナカバー部22の外寸を短くすることができる。その結果、比較例のようにルーフ部21の外面21aに車両用アンテナ装置30を取り付ける場合に比して、アンテナカバー部22全体を小型化することができる。
【0038】
図2及び図3に示すように、この実施形態では、ベース部31の外面31bが、外側仮想面21cよりも下方であって、かつ内側仮想面21dよりも下方に位置している。この場合、外側仮想面21cから上方に向かってベース部31が突出していないので、アンテナカバー部22においてベース部31を収容するための空間を確保する必要がない。よって、アンテナカバー部22の外寸を、より一層、短くすることができる。その結果、アンテナカバー部22全体を、より一層、小型化することが可能となる。
【0039】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)ベース部31の少なくとも一部が外側仮想面21cよりも下方に位置している場合、ベース部31の全体が外側仮想面21cよりも上方に位置している場合に比して、外側仮想面21cからのベース部31の突出長が短くなる。これにより、車両用アンテナ装置30を収容するためのアンテナカバー部22の空間Sを小型化することができる。ベース部31の位置にかかわらず、アンテナカバー部22の厚みが変化しないとすると、アンテナカバー部22においてベース部31を収容するための空間Sが小さくなれば、それに伴い、アンテナカバー部22の外寸も短くすることができるので、その結果、アンテナカバー部22全体を小型化することができる。
【0040】
(2)また、アンテナカバー部22全体を小型化することで、車両10の空力性能を向上させることができる。
(3)また、アンテナカバー部22全体を小型化することで、アンテナカバー部22全体の見映えが良くなる。
【0041】
(4)また、車両用アンテナ装置30をルーフ部21の外面21aに取り付けなければならないという制約がなくなるので、車両用アンテナ装置30を最適な位置に取り付けることができたときには、アンテナ性能を向上させることができる。
【0042】
(5)車両用アンテナ装置30をルーフ部21の外面21aから取り付ける場合、車両用アンテナ装置30をルーフ部21の外面21aに固定するための部材や、ルーフ部21とアンテナカバー部22との間に生じる隙間を塞ぐためのシール部材等が必要となる。しかし、ルーフ部21とアンテナカバー部22を一体化したことにより、車両用アンテナ装置30をルーフパネル20よりも内側から取り付け可能となり、車両10の外側から取り付ける必要がなくなる。よって、車両用アンテナ装置30をルーフ部21の外面21aに固定するための部材やシール材等の部品が必要なくなるので、結果、車両用アンテナ装置30の取り付けに要するコストを削減することができる。
【0043】
(6)また、ルーフ部21と、アンテナカバー部22と、を一体化することで、ルーフ部21とアンテナカバー部22との境界に見切り線が生じないので、アンテナカバー部22全体の見映えが良くなる。
【0044】
(7)取付部25をルーフ部21(ルーフパネル20)に一体成形したことで、車両用アンテナ装置30の取り付けに係る部品点数を削減することができる。また、樹脂成型によって、ルーフ部21(ルーフパネル20)と取付部25を一体成形することができるので、製品毎に取付部25の位置が異なるということがなくなり、取付部25の位置精度を高めることもできる。取付部25の位置精度を高めることで、車両用アンテナ装置30の位置精度を高めることができる。したがって、アンテナカバー部22と車両用アンテナ装置30との当接などに起因して、車両用アンテナ装置30がアンテナカバー部22内に収容できなくなることが抑制される。
【0045】
(8)取付部25は、ルーフ部21の内面21bから下方に向かって延びている。また、取付部25の先端25aは、ルーフ部21と略平行となっている。このため、取付部25を介して車両10に取り付けられたベース部31は、取付部25の先端25aに当接し、かつルーフ部21と略平行となる。また、ベース部31の全体が外側仮想面21cよりも下方であって、かつ内側仮想面21dよりも下方に位置することになる。このような場合、ベース部31が外側仮想面21cよりも上方に突出していないので、アンテナカバー部22においてベース部31を収容するための空間Sを確保する必要がない。よって、ベース部31が外側仮想面21cよりも上方に位置している場合に比して、アンテナカバー部22の外寸を短くすることができる。その結果、より一層、アンテナカバー部22全体を小型化することができる。
【0046】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ ルーフパネル20よりも内側からベース部31を取り付けることを許容できるのであれば、取付部はどのような形状であってもよい。また、取付部の位置も、実施形態の位置に限られない。例えば、車両10の後方向において最も先端に位置する外側隆起始点部R1の下方に取付部が位置していてもよい。
【0047】
○ ルーフパネル20よりも内側からベース部31を取り付けることを許容できるのであれば、取付部は、ベース部31に位置していてもよい。例えば、ベース部31の外面31bに、該外面31bから車両10の高さ方向に向かって突出する取付部を形成してもよい。そして、ベース部31の内面31cからビスBを挿入することで、ベース部31に形成された取付部に対してアンテナカバー部22を取り付けるようにしてもよい。
【0048】
○ 取付部25とルーフ部21(ルーフパネル20)を一体成形せず、別々の部材としてもよい。すなわち、取付部25を有さないルーフパネル20に対して、ルーフパネル20とは別部材の取付部25を取り付けてもよい。
【0049】
○ 車両用アンテナ装置30は、第2アンテナ部品34を有していなくてもよい。
図3に示すように、車両用アンテナ装置30のベース部31の全体が、外側仮想面21cよりも下方に位置している必要はなく、ベース部31の一部が、外側仮想面21cよりも下方に位置していればよい。例えば、図4の実線で示すように、ベース部31の内面31cは、内側仮想面21dよりも上方に位置しているが、ベース部31の外面31bが、外側仮想面21cよりも下方に位置していればよい。また、図4の一点鎖線で示すように、ベース部31の外面31bは、外側仮想面21cよりも上方に位置しているが、ベース部31の内面31cが、外側仮想面21cよりも下方に位置していればよい。なお、一点鎖線で示す例において、外側仮想面21cからのベース部31の突出長は、「長さM1」よりも短い「長さM2」である。さらに、実線で示す例において、車幅方向におけるアンテナカバー部22の外寸を「長さL5」とする一方、一点鎖線で示す例において、車幅方向におけるアンテナカバー部22の外寸を「長さL6」とする。この場合、ベース部31が外側仮想面21cよりも下方に位置している分だけ、アンテナカバー部22においてベース部31を収容するための空間Sが小さくなる。これにより、長さL5の方が長さL6よりも短くなる。
【0050】
図3に示すように、車両用アンテナ装置30のベース部31の全体が、外側仮想面21cよりも下方に位置している必要はなく、ベース部31の一部が、外側仮想面21cよりも下方に位置していればよい。例えば、図5に示すように、取付部25の先端25aを、車両10の前方向から後方向に向かって尻上りに傾斜させた場合、取付部25を介して車両10に取り付けられたベース部31は、車両10の前方向から後方向に向かって尻上りに傾斜するように取り付けられる。この状態では、ベース部31の前方は、外側仮想面21cよりも下方に位置しているが、ベース部31の後方は、外側仮想面21cよりも上方に位置することになる。
【0051】
○ ルーフ部21とアンテナカバー部22を一体成形せず、別々に成形してもよい。なお、ルーフ部21とアンテナカバー部22を別々に成形した場合も、車両用アンテナ装置30のベース部31の一部が外側仮想面21cよりも下方に位置するよう、車両用アンテナ装置30をルーフ部21に取り付けることが好ましい。例えば、ルーフ部21に凹部を設け、該凹部の底部に車両用アンテナ装置30のベース部31が当接するように車両用アンテナ装置30を取り付けた後、アンテナカバー部22をルーフ部21の車外側から取り付けるようにしてもよい。また、ルーフ部21とアンテナカバー部22を、同一の材料で成形してもよいし、異なる材料で成形してもよい。
【0052】
○ ベース部31の全体が外側仮想面21cよりも上方に位置している場合におけるアンテナカバー部22の上端の位置と、ベース部31の少なくとも一部が外側仮想面21cよりも下方に位置している場合におけるアンテナカバー部22の上端の位置を同じとしてもよい。つまり、ベース部31の少なくとも一部が外側仮想面21cよりも下方に位置している場合、ベース部31の全体が外側仮想面21cよりも上方に位置している場合に比して、ベース部31からの第1アンテナ部品32の突出長を長くしてもよい。このようにする場合、アンテナカバー部22の高さは変わらないが、アンテナカバー部22の幅を短くすることができるので、アンテナカバー部22の小型化に繋がる。また、ベース部31からの第1アンテナ部品32の突出長が長くなるということは、アンテナ受信部が長くなるということに繋がるので、受信感度の向上にも繋がる。
【0053】
○ 基板312の車幅方向の寸法(実施形態中における短辺方向の寸法)は、底板311よりも短くてもよい。このような場合、底板311よりも基板312の車幅方向の寸法が短いことで、外側仮想面21cから最も離れた位置にある基板312の一面の幅方向端部は、アンテナカバー部22の内側に当接しない。よって、外側仮想面21cから最も離れた位置にある底板311の一面の幅方向端部が、アンテナカバー部22の内側に当接しないよう、アンテナカバー部22においてベース部31を収容するための空間を確保すればよい。すなわち、ベース部31において、車幅方向の寸法が最も長くなるのは、底板311となるので、底板311の幅方向端部がアンテナカバー部22に当接しないようにすればよい。
【0054】
○ ベース部31は、基板312のみで構成されていてもよい。
○ 基板312の前後方向の寸法(実施形態中における長辺方向の寸法)が、底板311の前後方向よりも短い場合など、基板312が取付部25と対向していない場合、ビスBが挿通される挿通孔31aは、底板311のみに設けられた孔であってもよい。
【0055】
○ アンテナカバー部22の形状は、図6(b)に示す形状のように、外側仮想面21cからのベース部31の突出長にかかわらず、開口角度θを同一とする一方、外側仮想面21cからのベース部31の突出長に合わせて、ベース部31付近におけるアンテナカバー部22の外寸を異ならせてもよい。
【0056】
○ 外側仮想面21cからのベース部31の突出長に応じて開口角度θを変化させることで、アンテナカバー部22の形状を変化させてもよい。図3で説明した事例を用いて説明する。このとき、一点鎖線で示す例における開口角度θよりも、実線で示す例における開口角度θの方が狭いとする。外側仮想面21cからのベース部31の突出長が短いほど、開口角度θを狭くすることができるので、その結果、アンテナカバー部22の外寸を短くすることができる。
【0057】
○ ルーフパネル20は、樹脂以外の材料(例えば、金属材料)で成形してもよい。なお、アンテナカバー部22は、電波の送受信を阻害しないような材料で成形することが好ましい。
【0058】
○ ルーフパネル20は可動式であってもよい。例えば、ルーフ11に開口部を設け、開口部の車両幅方向縁部に、ルーフパネル20を移動可能に支持する支持部を形成する。そして、支持部によってルーフパネル20を支持しつつ、ルーフパネル20を開口部に対して移動可能とすることで、開口部を開放又は閉塞するようにしてもよい。この場合も、ルーフパネル20とアンテナカバー部22を一体化することができる。
【0059】
○ 車両用アンテナ装置30がルーフ11の後方に取り付けられる場合、ルーフ11の後方を樹脂製のパネルとする一方、ルーフ11における残りの部分は金属板で構成してもよい。また、ルーフ11の後方において車両用アンテナ装置30が取り付けられる最低限の面積のみ樹脂製のパネルとする一方、ルーフ11における残りの部分は金属板で構成してもよい。
【0060】
○ ルーフパネル20とリアウィンドウを樹脂製のパネルとしてもよい。また、車両用アンテナ装置30がルーフ11の後方に取り付けられる場合、ルーフ11の後方とリアウィンドウを樹脂製のパネルとする一方、ルーフ11における残りの部分は金属板で構成してもよい。また、ルーフ11の後方における車両用アンテナ装置30が取り付けられる最低限の面積とリアウィンドウを樹脂製のパネルとする一方、ルーフ11における残りの部分は金属板で構成してもよい。
【0061】
○ ルーフパネル20を単色成形としてもよい。
○ ルーフパネル20は、透過性を有していてもよい。また、透過性を有していなくてもよい。
【0062】
○ 車両用アンテナ装置30の取付位置は、車両10の後方に限られない。例えば、車両10の前方に取り付けられてもよいし、ルーフ11の略中央に取り付けられてもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
【0063】
(イ)ルーフパネルと、車両用アンテナ装置と、を備えた車両において、前記ルーフパネルは、ルーフ部と、該ルーフ部から隆起し、内部に空間を有するアンテナカバー部と、を有し、前記車両用アンテナ装置は、ベース部と、該ベース部から立設する立設部と、を有し、前記ルーフパネルは樹脂製であって、前記ルーフ部と前記アンテナカバー部は、一体成形されている車両。ルーフ部とアンテナカバー部が別部材とされている場合(例えば、特開2014−50031号公報参照)、ルーフ部にアンテナカバー部を取り付けるための取付部材や、ルーフ部とアンテナカバー部との間に生じる隙間を塞ぐためのシール部材等が必要となり、取り付けるために手間がかかったり、取り付けるためのコストが増加する。しかしながら、ルーフ部とアンテナカバー部を一体成形することで、ルーフ部にアンテナカバー部を取り付ける手間を省くことができる。また、ルーフ部にアンテナカバー部を取り付けるために要するコストを削減することができる。なお、ルーフ部とアンテナカバー部を一体成形する場合、車両用アンテナ装置のベース部は、外側仮想面よりも上方に位置していても構わない。
【符号の説明】
【0064】
R1…外側隆起始点部、R11…境界線、R2…内側隆起始点部、R22…境界線、S…空間、10…車両、11…ルーフ、20…ルーフパネル、21…ルーフ部、21a…ルーフ部の外面、21b…ルーフ部の内面、21c…外側仮想面、21d…内側仮想面、22…アンテナカバー部、22a…アンテナカバー部の外面、22b…アンテナカバー部の内面、23…第1成形部、24…第2成形部、25…取付部、30…車両用アンテナ装置、31…ベース部、32…第1アンテナ部品。
図1
図2
図3
図4
図5
図6