(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に実施形態を掲げ、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態のみに限定されるものではない。
【0020】
[実施形態1]
(フィルム1)
図1および
図2に示すように、フィルム1は、セパレータ13およびセパレータ13上に配置された裏面保護フィルム11を含む。より具体的には、フィルム1は、セパレータ13およびセパレータ13上に配置された一体型フィルム71a、71b、71c、……、71m(以下、「一体型フィルム71」と総称する。)を含む。一体型フィルム71aと一体型フィルム71bのあいだの距離、一体型フィルム71bと一体型フィルム71cのあいだの距離、……一体型フィルム71lと一体型フィルム71mのあいだの距離は一定である。フィルム1はロール状をなすことができる。
【0021】
(一体型フィルム71)
一体型フィルム71は、ダイシングテープ12およびダイシングテープ12上に配置された裏面保護フィルム11を含む。ダイシングテープ12は、基材121および基材121上に配置された粘着剤層122を含む。粘着剤層122は、裏面保護フィルム11と接する接触部122Aを含む。粘着剤層122は、接触部122Aの周辺に配置された周辺部122Bをさらに含む。接触部122Aは放射線により硬化されている。一方、周辺部122Bは放射線により硬化する性質を有する。放射線としては紫外線が好ましい。
【0022】
基材121は、粘着剤層122と接する第1主面、および第1主面に対向した第2主面で両面を定義できる。裏面保護フィルム11は、粘着剤層122と接する第1面、および第1面に対向した第2面で両面を定義できる。第2面はセパレータ13と接する。
【0023】
一体型フィルム71における波長555nmの全光線透過率は3%以上、好ましくは5%以上、より好ましくは7%以上である。3%以上であることにより、一体型フィルム71と半導体ウエハを貼り合わせた後に半導体ウエハのノッチを検出できる。一体型フィルム71における波長555nmの全光線透過率の上限は、たとえば50%、30%、20%である。
【0024】
一体型フィルム71の厚みは、好ましくは8μm以上、より好ましくは20μm以上、さらに好ましくは31μm以上、特に好ましくは47μm以上である。一方、一体型フィルム71の厚みは、好ましくは1500μm以下、より好ましくは850μm以下、さらに好ましくは500μm以下、特に好ましくは330μm以下である。
【0025】
(裏面保護フィルム11)
裏面保護フィルム11における波長555nmの全光線透過率は3%以上、好ましくは5%以上、より好ましくは7%以上である。3%以上であることにより、裏面保護フィルム11と半導体ウエハを貼り合わせた後に半導体ウエハのノッチを検出できる。裏面保護フィルム11における波長555nmの全光線透過率の上限は、たとえば50%、30%、20%である。
【0026】
波長555nmの全光線透過率は、裏面保護フィルム11の厚み、着色剤の種類などによってコントロールできる。たとえば、裏面保護フィルム11の厚みを小さくすること、着色剤として顔料を使用することにより、波長555nmの全光線透過率を高めることができる。
【0027】
裏面保護フィルム11は有色であることが好ましい。裏面保護フィルム11が有色であることにより、レーザーマークを容易に視認できる。裏面保護フィルム11は、たとえば、黒色、青色、赤色などの濃色であることが好ましい。黒色が特に好ましい。
【0028】
濃色とは、基本的には、L
*a
*b
*表色系で規定されるL
*が、60以下(0〜60)[好ましくは50以下(0〜50)、さらに好ましくは40以下(0〜40)]となる濃い色のことを意味している。
【0029】
また、黒色とは、基本的には、L
*a
*b
*表色系で規定されるL
*が、35以下(0〜35)[好ましくは30以下(0〜30)、さらに好ましくは25以下(0〜25)]となる黒色系色のことを意味している。なお、黒色において、L
*a
*b
*表色系で規定されるa
*やb
*は、それぞれ、L
*の値に応じて適宜選択することができる。a
*やb
*としては、たとえば、両方とも、−10〜10であることが好ましく、より好ましくは−5〜5であり、特に−3〜3の範囲(中でも0またはほぼ0)であることが好適である。
【0030】
なお、L
*a
*b
*表色系で規定されるL
*、a
*、b
*は、色彩色差計(商品名「CR−200」ミノルタ社製;色彩色差計)を用いて測定することにより求められる。なお、L
*a
*b
*表色系は、国際照明委員会(CIE)が1976年に推奨した色空間であり、CIE1976(L
*a
*b
*)表色系と称される色空間のことを意味している。また、L
*a
*b
*表色系は、日本工業規格では、JIS Z 8729に規定されている。
【0031】
裏面保護フィルム11は通常、未硬化状態である。未硬化状態は半硬化状態を含む。裏面保護フィルム11は、好ましくは半硬化状態である。
【0032】
85℃および85%RHの雰囲気下で168時間放置したときの、裏面保護フィルム11の吸湿率は、好ましくは1重量%以下、より好ましくは0.8重量%以下である。1重量%以下であることにより、レーザーマーキング性を向上できる。吸湿率は、無機充填剤の含有量などによってコントロールできる。
【0033】
裏面保護フィルム11における吸湿率の測定方法は、以下のとおりである。すなわち、85℃、85%RHの恒温恒湿槽に裏面保護フィルム11を168時間放置し、放置前後の重量減少率から、吸湿率を求める。
【0034】
裏面保護フィルム11を硬化させることにより得られる硬化物を、85℃および85%RHの雰囲気下で168時間放置したときの吸湿率は、好ましくは1重量%以下、より好ましくは0.8重量%以下である。1重量%以下であることにより、レーザーマーキング性を向上できる。吸湿率は、無機充填剤の含有量などによってコントロールできる。
【0035】
硬化物における吸湿率の測定方法は、以下のとおりである。すなわち、85℃、85%RHの恒温恒湿槽に硬化物を168時間放置し、放置前後の重量減少率から、吸湿率を求める。
【0036】
裏面保護フィルム11におけるエタノール抽出のゲル分率は、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、よりさらに好ましくは90%以上である。50%以上であると、半導体製造プロセスにおける治具などへの固着を防ぐことができる。
【0037】
なお、裏面保護フィルム11のゲル分率は、樹脂成分の種類やその含有量、架橋剤の種類やその含有量の他、加熱温度や加熱時間などによりコントロールすることができる。
【0038】
裏面保護フィルム11の未硬化状態における23℃での引張貯蔵弾性率は、好ましくは0.5GPa以上、より好ましくは0.75GPa以上、さらに好ましくは1GPa以上である。1GPa以上であると、裏面保護フィルム11がキャリアテープに付着することを防止できる。23℃での引張貯蔵弾性率の上限は、たとえば50GPaである。23℃での引張貯蔵弾性率は、樹脂成分の種類やその含有量、充填材の種類やその含有量などによりコントロールすることができる。
【0039】
裏面保護フィルム11は導電性であっても、非導電性であってもよい。
【0040】
裏面保護フィルム11の半導体ウエハに対する接着力(23℃、剥離角度180°、剥離速度300mm/分)は、好ましくは1N/10mm幅以上、より好ましくは2N/10mm幅以上、さらに好ましくは4N/10mm幅以上である。一方、かかる接着力は、好ましくは10N/10mm幅以下である。1N/10mm幅以上であることにより、優れた密着性で半導体ウエハや半導体素子に貼着されており、浮きなどの発生を防止することができる。また、半導体ウエハのダイシングの際にチップ飛びが発生するのを防止することもできる。なお、裏面保護フィルム11の半導体ウエハに対する接着力は、たとえば、次の通りにして測定した値である。すなわち、裏面保護フィルム11の一方の面に、粘着テープ(商品名「BT315」日東電工株式会社製)を貼着して裏面補強する。その後、裏面補強した長さ150mm、幅10mmの裏面保護フィルム11の表面(おもてめん)に、厚み0.6mmの半導体ウエハを、50℃で2kgのローラーを一往復して熱ラミネート法により貼り合わせる。その後、熱板上(50℃)に2分間静置した後、常温(23℃程度)で20分静置する。静置後、剥離試験機(商品名「オートグラフAGS−J」島津製作所社製)を用いて、温度23℃の下で、剥離角度:180°、引張速度:300mm/minの条件下で、裏面補強された裏面保護フィルム11を引き剥がす。裏面保護フィルム11の半導体ウエハに対する接着力は、このときの裏面保護フィルム11と半導体ウエハとの界面で剥離させて測定された値(N/10mm幅)である。
【0041】
裏面保護フィルム11の厚みは、好ましくは2μm以上、より好ましくは4μm以上、さらに好ましくは6μm以上、特に好ましくは10μm以上である。一方、裏面保護フィルム11の厚みは、好ましくは200μm以下、より好ましくは160μm以下、さらに好ましくは100μm以下、よりさらに好ましくは80μm以下、特に好ましくは50μm以下である。
【0042】
裏面保護フィルム11は、好ましくは着色剤を含む。着色剤としては、たとえば、染料、顔料を挙げることができる。
【0043】
染料としては、濃色系染料が好ましい。濃色系染料としては、たとえば、黒色染料、青色染料、赤色染料などを挙げることができる。なかでも、黒色染料が好ましい。顔料としては、濃色系顔料が好ましい。濃色系顔料としては、たとえば、黒色顔料、青色顔料、赤色顔料などを挙げることができる。なかでも、黒色顔料が好ましい。着色剤は単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
裏面保護フィルム11における着色剤の含有量は、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上、さらに好ましくは2重量%以上である。裏面保護フィルム11における着色剤の含有量は、好ましくは10重量%以下、より好ましくは8重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下である。
【0045】
裏面保護フィルム11は、熱可塑性樹脂を含むことができる。
【0046】
熱可塑性樹脂としては、たとえば、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリブタジエン樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、6−ナイロンや6,6−ナイロンなどのポリアミド樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)やPBT(ポリブチレンテレフタレート)などの飽和ポリエステル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、またはフッ素樹脂などが挙げられる。熱可塑性樹脂は単独でまたは2種以上を併用して用いることができる。なかでも、アクリル樹脂、フェノキシ樹脂が好適である。
【0047】
アクリル樹脂としては、特に限定されるものではなく、炭素数30以下(好ましくは炭素数4〜18、さらに好ましくは炭素数6〜10、特に好ましくは炭素数8または9)の直鎖もしくは分岐のアルキル基を有するアクリル酸またはメタクリル酸のエステルの1種または2種以上を成分とする重合体などが挙げられる。すなわち、本発明では、アクリル樹脂とは、メタクリル樹脂も含む広義の意味である。アルキル基としては、たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、へキシル基、ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ドデシル基(ラウリル基)、トリデシル基、テトラデシル基、ステアリル基、オクタデシル基などが挙げられる。
【0048】
また、アクリル樹脂を形成するための他のモノマー(アルキル基の炭素数が30以下のアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル以外のモノマー)としては、特に限定されるものではなく、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸もしくはクロトン酸などの様なカルボキシル基含有モノマー、無水マレイン酸もしくは無水イタコン酸などの様な酸無水物モノマー、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリルもしくは(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレートなどの様なヒドロキシル基含有モノマー、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレートもしくは(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などの様なスルホン酸基含有モノマー、または2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどの様な燐酸基含有モノマーなどが挙げられる。なお、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸および/またはメタクリル酸をいい、本発明の(メタ)とは全て同様の意味である。
【0049】
裏面保護フィルム11における熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは30重量%以上である。裏面保護フィルム11における熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは90重量%以下、より好ましくは70重量%以下である。
【0050】
裏面保護フィルム11は、熱硬化性樹脂を含むことができる。
【0051】
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂は、単独でまたは2種以上併用して用いることができる。熱硬化性樹脂としては、特に、半導体素子を腐食させるイオン性不純物など含有が少ないエポキシ樹脂が好適である。また、エポキシ樹脂の硬化剤としてはフェノール樹脂を好適に用いることができる。
【0052】
エポキシ樹脂としては、特に限定は無く、たとえば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂などの二官能エポキシ樹脂や多官能エポキシ樹脂、またはヒダントイン型エポキシ樹脂、トリスグリシジルイソシアヌレート型エポキシ樹脂もしくはグリシジルアミン型エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂を用いることができる。
【0053】
なかでも、ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂が特に好ましい。これらのエポキシ樹脂は、硬化剤としてのフェノール樹脂との反応性に富み、耐熱性などに優れるからである。
【0054】
さらに、フェノール樹脂は、エポキシ樹脂の硬化剤として作用するものであり、たとえば、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールノボラック樹脂、tert−ブチルフェノールノボラック樹脂、ノニルフェノールノボラック樹脂などのノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、ポリパラオキシスチレンなどのポリオキシスチレンなどが挙げられる。フェノール樹脂は単独でまたは2種以上を併用して用いることができる。これらのフェノール樹脂のうちフェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂が特に好ましい。半導体装置の接続信頼性を向上させることができるからである。
【0055】
エポキシ樹脂とフェノール樹脂の配合割合は、たとえば、エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量当たりフェノール樹脂中の水酸基が0.5当量〜2.0当量になるように配合することが好適である。より好適なのは、0.8当量〜1.2当量である。
【0056】
裏面保護フィルム11における熱硬化性樹脂の含有量は、好ましくは2重量%以上、より好ましくは5重量%以上である。裏面保護フィルム11における熱硬化性樹脂の含有量は、好ましくは40重量%以下、より好ましくは20重量%以下である。
【0057】
裏面保護フィルム11は、エポキシ樹脂とフェノール樹脂の熱硬化促進触媒を含むことができる。熱硬化促進触媒としては、特に制限されず、公知の熱硬化促進触媒の中から適宜選択して用いることができる。熱硬化促進触媒は単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。熱硬化促進触媒としては、たとえば、アミン系硬化促進剤、リン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、ホウ素系硬化促進剤、リン−ホウ素系硬化促進剤などを用いることができる。
【0058】
裏面保護フィルム11を予めある程度架橋させておくため、作製に際し、重合体の分子鎖末端の官能基などと反応する多官能性化合物を架橋剤として添加させておくことが好ましい。これにより、高温下での接着特性を向上させ、耐熱性の改善を図ることができる。
【0059】
架橋剤としては、特に制限されず、公知の架橋剤を用いることができる。具体的には、たとえば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤、尿素系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、アミン系架橋剤などが挙げられる。架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤やエポキシ系架橋剤が好適である。また、架橋剤は単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0060】
イソシアネート系架橋剤としては、たとえば、1,2−エチレンジイソシアネート、1,4−ブチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートなどの低級脂肪族ポリイソシアネート類;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロへキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネ−ト、水素添加キシレンジイソシアネ−トなどの脂環族ポリイソシアネート類;2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート類などが挙げられ、その他、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物[日本ポリウレタン工業(株)製、商品名「コロネートL」]、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート3量体付加物[日本ポリウレタン工業(株)製、商品名「コロネートHL」]なども用いられる。また、エポキシ系架橋剤としては、たとえば、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、1,3−ビス(N,N−グリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o−フタル酸ジグリシジルエステル、トリグリシジル−トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノール−S−ジグリシジルエーテルの他、分子内にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ系樹脂などが挙げられる。
【0061】
なお、本発明では、架橋剤を用いる代わりに、あるいは、架橋剤を用いるとともに、電子線や紫外線などの照射により架橋処理を施すことも可能である。
【0062】
裏面保護フィルム11は、充填剤を含むことができる。充填剤を含むことにより、裏面保護フィルム11の弾性率の調節などを図ることができる。
【0063】
充填剤としては、無機充填剤、有機充填剤のいずれであってもよいが、無機充填剤が好適である。無機充填剤としては、たとえば、シリカ、クレー、石膏、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、酸化ベリリウム、炭化珪素、窒化珪素などのセラミック類、アルミニウム、銅、銀、金、ニッケル、クロム、鉛、錫、亜鉛、パラジウム、半田などの金属、または合金類、その他カーボンなどからなる種々の無機粉末などが挙げられる。充填剤は単独でまたは2種以上を併用して用いることができる。充填剤としては、なかでも、シリカ、特に合成シリカが好適である。なお、無機充填剤の平均粒径は0.1μm〜80μmの範囲内であることが好ましい。無機充填剤の平均粒径は、たとえば、レーザー回折型粒度分布測定装置によって測定することができる。
【0064】
裏面保護フィルム11における充填剤の含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上である。裏面保護フィルム11における充填剤の含有量は、好ましくは70重量%以下、より好ましくは50重量%以下である。
【0065】
裏面保護フィルム11は、他の添加剤を適宜含むことができる。他の添加剤としては、たとえば、難燃剤、シランカップリング剤、イオントラップ剤、増量剤、老化防止剤、酸化防止剤、界面活性剤などが挙げられる。
【0066】
難燃剤としては、たとえば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、臭素化エポキシ樹脂などが挙げられる。難燃剤は、単独で、または2種以上を併用して用いることができる。シランカップリング剤としては、たとえば、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランなどが挙げられる。シランカップリング剤は、単独でまたは2種以上を併用して用いることができる。イオントラップ剤としては、たとえばハイドロタルサイト類、水酸化ビスマスなどが挙げられる。イオントラップ剤は、単独でまたは2種以上を併用して用いることができる。
【0067】
熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂および溶媒などを混合して混合液を調製し、混合液を剥離紙上に塗布し乾燥する方法などにより、裏面保護フィルム11を得ることができる。
【0068】
(ダイシングテープ12)
ダイシングテープ12における波長555nmの全光線透過率は、好ましくは3%以上、より好ましくは10%以上、さらに好ましくは20%以上である。10%以上であることにより、一体型フィルム71と半導体ウエハを貼り合わせた後に半導体ウエハのノッチを検出できる。一方、ダイシングテープ12における波長555nmの全光線透過率の上限は、たとえば95%、90%である。
【0069】
ダイシングテープ12における波長555nmの全光線透過率は、基材121の第2主面の表面凹凸、着色剤の種類によってコントロールできる。
【0070】
基材121は放射線透過性を有していることが好ましい。基材121は紫外線透過性を有していることがより好ましい。基材121としては、たとえば、紙などの紙系基材;布、不織布、フェルト、ネットなどの繊維系基材;金属箔、金属板などの金属系基材;プラスチックのフィルムやシートなどのプラスチック系基材;ゴムシートなどのゴム系基材;発泡シートなどの発泡体や、これらの積層体[特に、プラスチック系基材と他の基材との積層体や、プラスチックフィルム(またはシート)同士の積層体など]などの適宜な薄葉体を用いることができる。基材121としては、プラスチックのフィルムやシートなどのプラスチック系基材を好適に用いることができる。このようなプラスチック材における素材としては、たとえば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体などのオレフィン系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、アイオノマー樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル(ランダム、交互)共重合体などのエチレンをモノマー成分とする共重合体;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステル;アクリル系樹脂;ポリ塩化ビニル(PVC);ポリウレタン;ポリカーボネート;ポリフェニレンスルフィド(PPS);ポリアミド(ナイロン)、全芳香族ポリアミド(アラミド)などのアミド系樹脂;ポリエーテルエーテルケトン(PEEK);ポリイミド;ポリエーテルイミド;ポリ塩化ビニリデン;ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体);セルロース系樹脂;シリコーン樹脂;フッ素樹脂などが挙げられる。
【0071】
基材121は、無延伸で用いてもよく、必要に応じて一軸または二軸の延伸処理を施したものを用いてもよい。延伸処理などにより熱収縮性を基材121に付与することにより、基材121を熱収縮させることにより粘着剤層122と裏面保護フィルム11との接着面積を低下させて、半導体素子の回収の容易化を図ることができる。
【0072】
基材121の表面は、隣接する層との密着性、保持性などを高めるため、慣用の表面処理、たとえば、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理などの化学的または物理的処理、下塗剤によるコーティング処理を施すことができる。
【0073】
基材121は、同種または異種のものを適宜に選択して使用することができ、必要に応じて数種をブレンドしたものを用いることができる。また、基材121には、帯電防止能を付与するため、基材121上に金属、合金、これらの酸化物などからなる厚みが30〜500Å程度の導電性物質の蒸着層を設けることができる。基材121は単層あるいは2種以上の複層でもよい。
【0074】
基材121の厚み(積層体の場合は総厚)は、特に制限されず強度や柔軟性、使用目的などに応じて適宜に選択でき、たとえば、一般的には1000μm以下(たとえば、1μm〜1000μm)、好ましくは10μm〜500μm、さらに好ましくは20μm〜300μm、特に30μm〜200μm程度であるが、これらに限定されない。
【0075】
なお、基材121には、各種添加剤(着色剤、充填材、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、界面活性剤、難燃剤など)が含まれていてもよい。
【0076】
粘着剤層122は粘着剤により形成されており、粘着性を有している。このような粘着剤としては、特に制限されず、公知の粘着剤の中から適宜選択することができる。具体的には、粘着剤としては、たとえば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、フッ素系粘着剤、スチレン−ジエンブロック共重合体系粘着剤、これらの粘着剤に融点が約200℃以下の熱溶融性樹脂を配合したクリ−プ特性改良型粘着剤などの公知の粘着剤(たとえば、特開昭56−61468号公報、特開昭61−174857号公報、特開昭63−17981号公報、特開昭56−13040号公報など参照)の中から、かかる特性を有する粘着剤を適宜選択して用いることができる。また、粘着剤としては、放射線硬化型粘着剤(またはエネルギー線硬化型粘着剤)や、熱膨張性粘着剤を用いることもできる。粘着剤は単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0077】
粘着剤としては、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤を好適に用いることができ、特にアクリル系粘着剤が好適である。アクリル系粘着剤としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの1種または2種以上を単量体成分として用いたアクリル系重合体(単独重合体または共重合体)をベースポリマーとするアクリル系粘着剤が挙げられる。
【0078】
アクリル系粘着剤における(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、たとえば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル基の炭素数が4〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好適である。なお、(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基は、直鎖状または分岐鎖状のいずれであっても良い。
【0079】
なお、アクリル系重合体は、凝集力、耐熱性、架橋性などの改質を目的として、必要に応じて、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な他の単量体成分(共重合性単量体成分)に対応する単位を含んでいてもよい。このような共重合性単量体成分としては、たとえば、(メタ)アクリル酸(アクリル酸、メタクリル酸)、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などのカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物基含有モノマー;(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチルメタクリレートなどのヒドロキシル基含有モノマー;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などのスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどのリン酸基含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミドなどの(N−置換)アミド系モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルなどの(メタ)アクリル酸アミノアルキル系モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアノアクリレートモノマー;(メタ)アクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有アクリル系モノマー;スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル系モノマー;イソプレン、ブタジエン、イソブチレンなどのオレフィン系モノマー;ビニルエーテルなどのビニルエーテル系モノマー;N−ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン、N−ビニルカルボン酸アミド類、N−ビニルカプロラクタムなどの窒素含有モノマー;N−シクロヘキシルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド系モノマー;N−メチルイタコンイミド、N−エチルイタコンイミド、N−ブチルイタコンイミド、N−オクチルイタコンイミド、N−2−エチルヘキシルイタコンイミド、N−シクロヘキシルイタコンイミド、N−ラウリルイタコンイミドなどのイタコンイミド系モノマー;N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクルロイル−6−オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシオクタメチレンスクシンイミドなどのスクシンイミド系モノマー;(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコールなどのグリコール系アクリルエステルモノマー;(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、フッ素(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレートなどの複素環、ハロゲン原子、ケイ素原子などを有するアクリル酸エステル系モノマー;ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ジビニルベンゼン、ブチルジ(メタ)アクリレート、ヘキシルジ(メタ)アクリレートなどの多官能モノマーなどが挙げられる。これらの共重合性単量体成分は1種または2種以上使用できる。
【0080】
粘着剤として放射線硬化型粘着剤(またはエネルギー線硬化型粘着剤)を用いる場合、放射線硬化型粘着剤(組成物)としては、たとえば、ラジカル反応性炭素−炭素二重結合をポリマー側鎖または主鎖中もしくは主鎖末端に有するポリマーをベースポリマーとして用いた内在型の放射線硬化型粘着剤や、粘着剤中に紫外線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分が配合された放射線硬化型粘着剤などが挙げられる。また、粘着剤として熱膨張性粘着剤を用いる場合、熱膨張性粘着剤としては、たとえば、粘着剤と発泡剤(特に熱膨張性微小球)とを含む熱膨張性粘着剤などが挙げられる。
【0081】
粘着剤層122は、各種添加剤(たとえば、粘着付与樹脂、着色剤、増粘剤、増量剤、充填材、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、界面活性剤、架橋剤など)を含むことができる。
【0082】
粘着剤層122は、たとえば、粘着剤(感圧接着剤)と、必要に応じて溶媒やその他の添加剤などとを混合して、シート状の層に形成する慣用の方法を利用し形成することができる。具体的には、たとえば、粘着剤および必要に応じて溶媒やその他の添加剤を含む混合物を、基材121上に塗布する方法、適当なセパレータ(剥離紙など)上に混合物を塗布して粘着剤層122を形成し、これを基材121上に転写(移着)する方法などにより、粘着剤層122を形成することができる。
【0083】
粘着剤層122の厚みは特に制限されず、たとえば、5μm〜300μm、好ましくは5μm〜200μm、さらに好ましくは5μm〜100μm、特に好ましくは7μm〜50μm程度である。粘着剤層122の厚みがかかる範囲内であると、適度な粘着力を発揮することができる。なお、粘着剤層122は単層、複層のいずれであってもよい。
【0084】
(セパレータ13)
セパレータ13としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどが挙げられる。セパレータ13は、好ましくは離型処理が施されたものである。セパレータ13の厚みは適宜設定できる。
【0085】
(半導体装置の製造方法・保護チップの製造方法)
図3に示すように、一体型フィルム71と半導体ウエハ4を貼り合わせる。具体的には、セパレータ13を剥離し、一体型フィルム71と半導体ウエハ4を貼り合わせる。これにより、半導体ウエハ4の裏面上に裏面保護フィルム11が設けられる。貼り合わせ方法は特に限定されないが、圧着が好ましい。圧着は、通常、圧着ロールなどの押圧手段により押圧しながら行われる。
【0086】
図4に示すように、半導体ウエハ4にはノッチ44が設けられている。半導体ウエハ4は、回路面、および回路面に対向した裏面(非回路面、非電極形成面などとも称される)で両面を定義できる。半導体ウエハ4としては、シリコンウエハを好適に用いることができる。
【0087】
ノッチ44を検出するための検出センサーにより、一体型フィルム71と接した半導体ウエハ4のノッチ44を検出する。これにより、半導体ウエハ4に設けられたノッチ44の位置情報を得ることが可能で、裏面保護フィルム11におけるレーザーをあてる領域を特定できる。検出センサーとしては、マイクロスコープ、透過型センサー、反射型センサーなどが挙げられる。
【0088】
裏面保護フィルム11にレーザーで印字する。なお、レーザーで印字する際には、公知のレーザーマーキング装置を利用することができる。また、レーザーとしては、気体レーザー、個体レーザー、液体レーザーなどを利用することができる。具体的には、気体レーザーとしては、特に制限されず、公知の気体レーザーを利用することができるが、炭酸ガスレーザー(CO
2レーザー)、エキシマレーザー(ArFレーザー、KrFレーザー、XeClレーザー、XeFレーザーなど)が好適である。また、固体レーザーとしては、特に制限されず、公知の固体レーザーを利用することができるが、YAGレーザー(Nd:YAGレーザーなど)、YVO
4レーザーが好適である。
【0089】
図5に示すように、半導体ウエハ4のダイシングを行う。これにより、保護チップ5を形成する。保護チップ5は、半導体素子41および半導体素子41の裏面上に配置された保護膜111を含む。半導体素子41は、回路面(表面、回路パターン形成面、電極形成面などとも称される)、および回路面に対向した裏面で両面を定義できる。ダイシングは、ダイシングテープ12を吸着台8に真空吸着させた状態で、たとえば、半導体ウエハ4の回路面側から常法に従い行われる。また、本工程では、たとえば、一体型フィルム71まで切込みを行うフルカットと呼ばれる切断方式などを採用できる。本工程で用いるダイシング装置としては特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。
【0090】
次いで、保護チップ5を粘着剤層122から剥離する。すなわち、保護チップ5をピックアップする。ピックアップの方法としては特に限定されず、従来公知の種々の方法を採用できる。たとえば、保護チップ5をニードルによって突き上げ、突き上げられた保護チップ5をピックアップ装置によってピックアップする方法などが挙げられる。
【0091】
図6に示すように、フリップチップボンディング方式(フリップチップ実装方式)により、保護チップ5を被着体6に固定する。具体的には、半導体素子41の回路面が被着体6と対向する形態で、保護チップ5を被着体6に固定する。たとえば、半導体素子41の回路面上に設けられたバンプ51を、被着体6の接続パッドに被着された接合用の導電材(半田など)61に接触させて押圧しながら導電材61を溶融させることにより、半導体素子41と被着体6との電気的導通を確保し、保護チップ5を被着体6に固定することができる(フリップチップボンディング工程)。このとき、保護チップ5と被着体6との間には空隙が形成されており、その空隙間距離は、一般的に30μm〜300μm程度である。なお、保護チップ5を被着体6上にフリップチップボンディング(フリップチップ接続)した後は、保護チップ5と被着体6との対向面や間隙を洗浄し、間隙に封止材(封止樹脂など)を充填させて封止することができる。
【0092】
被着体6としては、リードフレームや回路基板(配線回路基板など)などの基板を用いることができる。このような基板の材質としては、特に限定されるものではないが、セラミック基板や、プラスチック基板が挙げられる。プラスチック基板としては、たとえば、エポキシ基板、ビスマレイミドトリアジン基板、ポリイミド基板などが挙げられる。
【0093】
バンプや導電材の材質としては、特に限定されず、たとえば、錫−鉛系金属材、錫−銀系金属材、錫−銀−銅系金属材、錫−亜鉛系金属材、錫−亜鉛−ビスマス系金属材などの半田類(合金)や、金系金属材、銅系金属材などが挙げられる。
【0094】
なお、導電材61の溶融時の温度は、通常、260℃程度(たとえば、250℃〜300℃)である。裏面保護フィルム11がエポキシ樹脂を含むことにより、かかる温度に耐えることが可能である。
【0095】
本工程では、保護チップ5と被着体6との対向面(電極形成面)や間隙の洗浄を行うのが好ましい。洗浄に用いられる洗浄液としては、特に制限されず、たとえば、有機系の洗浄液や、水系の洗浄液が挙げられる。
【0096】
次に、フリップチップボンディングされた保護チップ5と被着体6との間の間隙を封止するための封止工程を行う。封止工程は、封止樹脂を用いて行われる。このときの封止条件としては特に限定されないが、通常、175℃で60秒間〜90秒間の加熱を行うことにより、封止樹脂の熱硬化が行われるが、本発明はこれに限定されず、たとえば165℃〜185℃で、数分間キュアすることができる。また、当該工程により、保護膜111を完全にまたはほぼ完全に熱硬化させることができる。さらに、保護膜111は、未硬化状態であっても当該封止工程の際に、封止材と共に熱硬化させることができるので、保護膜111を熱硬化させるための工程を新たに追加する必要がない。
【0097】
封止樹脂としては、絶縁性を有する樹脂(絶縁樹脂)であれば特に制限されない。封止樹脂としては、弾性を有する絶縁樹脂がより好ましい。封止樹脂としては、たとえば、エポキシ樹脂を含む樹脂組成物などが挙げられる。また、エポキシ樹脂を含む樹脂組成物による封止樹脂としては、樹脂成分として、エポキシ樹脂以外に、エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂(フェノール樹脂など)や、熱可塑性樹脂などが含まれていてもよい。なお、フェノール樹脂としては、エポキシ樹脂の硬化剤としても利用することができる。封止樹脂の形状は、フィルム状、タブレット状などである。
【0098】
以上の方法により得られた半導体装置(フリップチップ実装の半導体装置)は、被着体6および被着体6に固定された保護チップ5を含む。かかる半導体装置の保護膜111にレーザーで印字することが可能である。なお、レーザーで印字する際には、公知のレーザーマーキング装置を利用することができる。また、レーザーとしては、気体レーザー、個体レーザー、液体レーザーなどを利用することができる。具体的には、気体レーザーとしては、特に制限されず、公知の気体レーザーを利用することができるが、炭酸ガスレーザー(CO
2レーザー)、エキシマレーザー(ArFレーザー、KrFレーザー、XeClレーザー、XeFレーザーなど)が好適である。また、固体レーザーとしては、特に制限されず、公知の固体レーザーを利用することができるが、YAGレーザー(Nd:YAGレーザーなど)、YVO
4レーザーが好適である。
【0099】
フリップチップ実装方式で実装された半導体装置は、ダイボンディング実装方式で実装された半導体装置よりも、薄く、小さい。このため、各種の電子機器・電子部品またはそれらの材料・部材として好適に用いることができる。具体的には、フリップチップ実装の半導体装置が利用される電子機器としては、いわゆる「携帯電話」、「PHS」、小型のコンピュータ(たとえば、いわゆる「PDA」(携帯情報端末)、いわゆる「ノートパソコン」、いわゆる「ネットブック(商標)」、いわゆる「ウェアラブルコンピュータ」など)、「携帯電話」およびコンピュータが一体化された小型の電子機器、いわゆる「デジタルカメラ(商標)」、いわゆる「デジタルビデオカメラ」、小型のテレビ、小型のゲーム機器、小型のデジタルオーディオプレイヤー、いわゆる「電子手帳」、いわゆる「電子辞書」、いわゆる「電子書籍」用電子機器端末、小型のデジタルタイプの時計などのモバイル型の電子機器(持ち運び可能な電子機器)などが挙げられるが、もちろん、モバイル型以外(設置型など)の電子機器(たとえば、いわゆる「ディスクトップパソコン」、薄型テレビ、録画・再生用電子機器(ハードディスクレコーダー、DVDプレイヤーなど)、プロジェクター、マイクロマシンなど)などであってもよい。また、電子部品または、電子機器・電子部品の材料・部材としては、たとえば、いわゆる「CPU」の部材、各種記憶装置(いわゆる「メモリー」、ハードディスクなど)の部材などが挙げられる。
【0100】
以上のとおり、半導体装置の製造方法は、たとえば、一体型フィルム71を準備する工程と、一体型フィルム71と半導体ウエハ4を貼り合わせる工程とを含む。半導体装置の製造方法は、一体型フィルム71と半導体ウエハ4を貼り合わせる工程の後に、レーザーで裏面保護フィルム11に印字する工程をさらに含む。裏面保護フィルム11に印字する工程は、裏面保護フィルム11と接した半導体ウエハ4のノッチ44を検出するステップを含む。半導体装置の製造方法は、裏面保護フィルム11に印字する工程の後に、ダイシングにより保護チップ5を形成する工程をさらに含む。半導体装置の製造方法は、保護チップ5を被着体6に固定する工程をさらに含む。保護チップ5を被着体6に固定する工程は、好ましくはフリップチップ接続により、保護チップ5を被着体6に固定する工程である。
【0101】
以上のとおり、保護チップ5の製造方法は、たとえば、一体型フィルム71を準備する工程と、一体型フィルム71と半導体ウエハ4を貼り合わせる工程とを含む。保護チップ5の製造方法は、一体型フィルム71と半導体ウエハ4を貼り合わせる工程の後に、レーザーで裏面保護フィルム11に印字する工程をさらに含む。裏面保護フィルム11に印字する工程は、裏面保護フィルム11と接した半導体ウエハ4のノッチ44を検出するステップを含む。半導体装置の製造方法は、裏面保護フィルム11に印字する工程の後に、ダイシングにより保護チップ5を形成する工程をさらに含む。
【0102】
(変形例1)
図7に示すように、ダイシングテープ12における粘着面の全体が、裏面保護フィルム11と接する。粘着剤層122は、放射線により硬化する性質を有することが好ましい。
【0103】
(変形例2)
粘着剤層122の接触部122Aは放射線により硬化する性質を有する。粘着剤層122の周辺部122Bも放射線により硬化する性質を有する。
【0104】
(変形例3)
粘着剤層122の接触部122Aは放射線により硬化されている。粘着剤層122の周辺部122Bも放射線により硬化されている。
【0105】
(変形例4)
裏面保護フィルム11は、第1層および第1層上配置された第2層を含む複層形状をなす。
【0106】
(その他の変形例)
変形例1〜変形例4などは、任意に組み合わせることができる。
【実施例】
【0107】
以下に、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている材料や配合量などは、特に限定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0108】
[裏面保護フィルムの作製]
裏面保護フィルムを作製するために使用した成分について説明する。
エポキシ樹脂:DIC社製「HP−4700」
フェノール樹脂:明和化成社製「MEH−7851H」
アクリルゴム:ナガセケムテックス社製「テイサンレジンSG−P3」
シリカフィラー:アドマテックス社製「SE−2050−MCV」(平均一次粒径0.5μm)
着色剤1:オリエント化学工業社製「NUBIAN BLACK TN877」
着色剤2:オリエント化学工業社製「SOM−L−0543」
着色剤3:オリエント化学工業社製「ORIPACS B−35」
【0109】
表1に記載の配合比に従い、各成分をメチルエチルケトンに溶解し、固形分濃度が22重量%の接着剤組成物の溶液を調製した。接着剤組成物の溶液を、剥離ライナー(シリコーン離型処理した厚みが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム)上に塗布した後、130℃で2分間乾燥させることにより、裏面保護フィルムを作製した。裏面保護フィルムの厚みを表1に示す。
【0110】
[裏面保護フィルムに関する評価]
裏面保護フィルムについて、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0111】
(波長555nmの全光線透過率)
裏面保護フィルムについて下記の条件にて波長555nmの全光線透過率(%)を測定した。
<光線透過率測定条件>
測定装置: 紫外可視近赤外分光光度計V−670DS(日本分光株式会社製)
速度: 2000nm/min
測定範囲: 400〜1600nm
積分球: ISN−723
スポット径: 1cm角
【0112】
(ノッチ検出)
裏面保護フィルムと8inchミラーウエハを70℃で貼り合わせ、デジタルマイクロスコープ光量25%にてノッチが検出できた場合を○、できなかった場合を×と判定した。
【0113】
(ゲル分率)
裏面保護フィルムから約0.1gをサンプリングして精秤し(試料の重量)、サンプルをメッシュ状シートで包んだ後、約50mlのエタノール中に室温で1週間浸漬させた。その後、溶剤不溶分(メッシュ状シートの内容物)をエタノールから取り出し、130℃で約2時間乾燥させ、乾燥後の溶剤不溶分を秤量し(浸漬・乾燥後の重量)、下記式(a)よりゲル分率(%)を算出した。
ゲル分率(%)=[(浸漬・乾燥後の重量)/(試料の重量)]×100 (a)
【0114】
(引張貯蔵弾性率)
レオメトリック社製の動的粘弾性測定装置「Solid Analyzer RS A2」を用いて、引張モードにて、サンプル幅:10mm、サンプル長さ:22.5mm、サンプル厚み:0.2mmで、周波数:1Hz、昇温速度:10℃/分、窒素雰囲気下、所定の温度(23℃)にて、引張貯蔵弾性率を測定した。
【0115】
【表1】
【0116】
[一体型フィルムの作製]
(実施例4)
実施例1で得られた裏面保護フィルムと日東電工社製「V−8AR」(ダイシングテープ)を貼り合わせ、一体型フィルムを得た。
(実施例5)
実施例2で得られた裏面保護フィルムと「V−8AR」を貼り合わせ、一体型フィルムを得た。
(実施例6)
実施例3で得られた裏面保護フィルムと「V−8AR」を貼り合わせ、一体型フィルムを得た。
(比較例2)
比較例1で得られた裏面保護フィルムと「V−8AR」を貼り合わせ、一体型フィルムを得た。
【0117】
[一体型フィルムに関する評価]
一体型フィルムについて、以下の評価を行った。結果を表2に示す。
【0118】
(波長555nmの全光線透過率)
一体型フィルムについて下記の条件にて波長555nmの全光線透過率(%)を測定した。
<光線透過率測定条件>
測定装置: 紫外可視近赤外分光光度計V−670DS(日本分光株式会社製)
速度: 2000nm/min
測定範囲: 400〜1600nm
積分球: ISN−723
スポット径: 1cm角
【0119】
(ノッチ検出)
一体型フィルムと8inchミラーウエハを70℃で貼り合わせ、デジタルマイクロスコープ光量25%にてノッチが検出できた場合を○、できなかった場合を×と判定した。
【0120】
【表2】