(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
ある層にSnを含み、近接層にCuを含むダイパッケージ構造には、ダイパッケージ相互接続部に関する、1または2以上の有害な問題がある。これらの有害な問題の一つは、ダイパッケージ相互接続部の電気的および機械的な特性の劣化、相互接続部の製作歩留まりの低下、あるいはウィスカーおよび剥離等、意図していない領域が不規則に形成されることである。剥離という用語には、1または2以上の層の劣化および物理的な分離が含まれる。これらの有害な問題のいくつかは、以下に示すように
図1A乃至1Dに示されている。
【0009】
図1A乃至1Dには、一例として、段差が剥離したダイパッケージ相互接続部が示されている。
図1Aの段差110は、ハンダ領域であり、Sn合金、PbSnを含む。マークされた領域115に示すように、段差110は、下側の相互接続部またはベース層金属125の形状に対応する。段差110は、下側の相互接続部の端部および側壁またはベース層金属と接触し、これらを被覆する。
【0010】
図1Bには、領域115の拡大図を示す。図には、ベース層金属125、PbSn段差110、およびダイパッケージ領域130が認められる。この図において、層125には、基板130と段差110の間で剥離が生じている。そのような剥離は、ベース層金属の1または2以上の特性によるものである。ベース層金属125は、ベース層金属125が劣化するようなベーキングまたは熱処理工程によって構成される。劣化および剥離は、層125、110の間の導電部の表面積を低下させ、電気泳動に関係する欠陥が形成される。
【0011】
ダイパッケージ相互接続部のいくつかの欠陥は、電気泳動に関係する欠陥であり、他の欠陥は、層材料の特性および層との相互作用によるものである。いくつかの電気泳動に関係する欠陥は、層125、110の金属特性、温度上昇および熱応力の問題、ならびに層125、110の間での1または2以上のボイド120の成長によるものである。領域115の電気泳動は、高電流密度を発生させ、電磁力を増大させる。以下に示すような、1または2以上の一例としての実施例、方法、構造および技術によって、電気泳動に関係するダイパッケージ相互接続部の問題が軽減される。
【0012】
ダイパッケージ相互接続部の1または2以上の層の金属特性は、ダイパッケージ相互接続部の欠陥の原因となる。そのような金属特性の例には、非適合表面、異なる温度での材料の相転移、ならびに異なる層の元素の拡散および相互混合が含まれる。例えば、Snは、1または2以上のダイパッケージ相互接続層に使用される共通の金属である。しかしながら、Snには、異なる温度で2つの同素体がある。約13.2℃以上の温度では、堅くて光沢のある導電性αSn(正方晶構造、α相Sn)が安定相である。温度が13.2℃未満では、βSn(ダイヤモンド立方晶構造、β相Sn)が熱力学的に安定である。α相は、層構造に好ましい相である。αからβへの相転移では、2相間の密度差のため、体積が26%増加する。相転移時の体積変化は、Snと他の層間の界面を変形させる。またβSnは、粉末状であり、相互接続部に機械的強度を付与しない。従って、Snがβ相の状態にある場合、Sn層と相互接続部の機械的強度は、低下する。少なくとも上記理由により、低温においては、Sn層または相互接続部がα相からβ相に転移し、相互接続部に欠陥が生じる。1または2以上の一例としての実施例、方法、技術および構造では、以下に示すように、Snの低温での相転移が抑制される。
【0013】
段差110は、ハンダ段差として示されているが、段差は、ハンダ層に隣接する層であれば、ハンダ段差ではない段差またはバンプ層であっても良い。また、段差110は、ダイパッケージ105と直接接している必要はない。以下の図に示すように、段差またはバンプ層は、Cu等の他の材料を含んでいても良く、ベース層金属または他の相互接続層と直接接していても良い。
【0014】
図1C、1Dには、異なる層のCuとSnの好ましくない相互混合の例を示す。例えば
図1Cには、ハンダ層内にボイド155を有するダイパッケージ相互接続部150が示されている。異なる層からのCuおよびSnの拡散または相互混合によって、CuSn合金が形成され、ボイド155の形成が助長される。相互接続部150の電気抵抗は、ハンダの空洞化によって増大し、電気泳動の問題が生じる。さらにCuとSnの相互混合により、ウィスカー等の他の好ましくない形態が形成される。ウィスカーは、Sn段差に構築される圧縮応力の結果として生じ、ダイパッケージ相互接続部の欠陥につながる。
【0015】
図1Dには、CuとSnが拡散または相互混合した、ダイパッケージ相互接続層の別の例の写真160を示す。
図1Dには、CuとSnが混合した様子が示されている。例えば写真160において、Cu172、178と、Sn176の層の間には、Cu
3Snの領域165とCu
6Sn
5の領域170が形成されている。
【0016】
ある従来技術を用いて、異なるダイパッケージ相互接続層からのCuおよびSnの相互混合および拡散を防止することが考えられる。例えば、Pb
5Sn段差を用いることにより、ウィスカーの形成が防止される。しかしながら、Pb
5Sn段差を使用した場合、前述のような低温でのSnの相転移の結果として、電気泳動の問題が生じる。また、Pbは、環境問題および健康問題上好ましくない。別の従来例として、スパッタリングNiを用いたCuのSnへの拡散防止が考えられる。しかしながら、スパッタリングNiは、拡散バリア特性に乏しく、CuおよびSnの拡散または相互混合を適切に防止することはできない。以下に示す1または2以上の一例としての実施例、方法、技術および構造によって、異なるダイパッケージ相互接続層間のCuおよびSnの拡散および相互混合が防止される。
【0017】
また、本願の1または2以上の一例としての実施例では、ベース層金属のエッチングの際にSn段差の劣化を防止する方法、技術および構造が提供される。例えば、Ti、AlまたはNiVを含むベース層金属のエッチング中の、Sn段差の腐食および酸化が防止される。
【0018】
図2には、ダイパッケージ相互接続部の一例としての実施例を示す。ベース層金属230は、シリコン基板205の上部に形成され、ベース層金属230はCuを含んでも良い。またベース層金属230は、パターン化された絶縁体、樹脂、またはポリイミド層等の誘電体層235の上部に形成されても良い。ベース層金属230は、接着層232とシード層234を含んでも良い。接着層232は、例えば基板205上または誘電体層235上に形成される。接着層232は、ベース層金属と下側の表面とを固着させ、2つの異なる表面同士の接合または接着を容易にする。シード層234は、接着層232上部のベース層金属構造の形成を容易にする。シード層は、下側の層との界面を平滑化させ、ベース層金属の正確な成長および形成を容易にする。接着層232は、Ti、TiNおよびTiSiNを含み、シード層234は、Ni、NiVおよびCoを含んでも良い。接着層232とシード層234の間には、1または2以上のベース層金属の特性を改良するため、Al層等の追加の金属層233が形成されても良い。追加の層によって改良されたベース層金属の特性は、ウィスカー形成の抑制、層剥離の抑制、ならびに熱処理時および電磁場印加時の劣化の抑制であっても良い。
【0019】
拡散バリア層225は、ベース層金属230の上部に選択的に設置されても良い。選択的設置とは、ある表面の一部のみが別の成膜層を有することを意味する。無電解拡散バリアは、CuおよびSnが拡散バリアを通って拡散することを防止する。拡散バリア層225は、無電解成膜である位置に設置され、ベース層金属230からのCuの相互混合およびバンプ層215またはハンダ層210からのSnの相互混合を防止する。拡散バリア層225は、CuSn合金の形成を防止し、ウィスカーの形成を防止する。拡散バリア層225は、段差の剥離を防止するため、ダイパッケージ相互接続部の製作プロセスの歩留まりが向上する。拡散バリア層225は、CoBP、CoWP、CoWB、CoWBP、NiBP、NiWP、NiWBおよびNiWBPのいずれか一つを含んでも良い。
【0020】
無電解メッキには、不規則形状の対象物、パターンおよび窪みに成膜する場合、1または2以上の利点がある。無電解メッキでは、電子は、化学還元剤によって供給される。一般に、無電解メッキとは、還元剤を含む溶液から金属イオンを還元させることを言う。還元剤は、触媒表面での酸化によって電子を供給する。無電解メッキされた膜は、均一で、メッキ時に圧縮応力は、ほとんど生じない。無電解メッキでは、下地基材の全形状部に均一な厚さが得られ、電流密度が均一となるため、電気泳動の問題が軽減される。また無電解メッキされたバリアには、低コストで選択形成することができ、アモルファス化できるという利点がある。
【0021】
拡散バリアは、拡散バリアを通過するCuとSnの拡散を防止または抑制する他の材料を有しても良い。例えば、SnとCuの反応または拡散を抑制する平板材料を使用しても良い。この平板材料は、VIII属の金属(例えば、Co、Ni、Fe、Ru、Rh、IrおよびOs)と、VI属(例えば、W、MoおよびCr)および半金属(例えば、B、PおよびN)とを合金化させた材料等で構成される。
【0022】
拡散バリア層225の上部には、ウェッティング層(図示されていない)を設置しても良い。またウェッティング層は、拡散バリア層225の一部に選択的に設置しても良い。ウェッティング層は、CoB、NiBおよびNiPのいずれかを含んでも良い。
【0023】
ウェッティング層の上部には、バンプ層215が設置され、バンプ層215の上部には、ハンダ層210が設置される。ダイパッケージ220は、ハンダ層210の上部に設置され、この層と電気的に接続される。ダイパッケージ220の電気接続によって、ダイパッケージと装置、および基板近傍または基板上の相互接続部の間の通電が可能となる。バンプ層215、ハンダ層210または層210、215の両方には、Snが含まれても良い。
【0024】
本願の1または2以上の一例としての実施例では、Snは、ウィスカーの形成およびこれに関連する電気泳動の問題を抑制するため、電気メッキされても良い。電気メッキSnは、低温(例えば、約13.2℃)でのSnの相転移を抑制するとともに、βSnに関する機械的劣化および電気泳動による劣化を防止する。Snの電気メッキには、Snのメッキと、0.7Cu、Bi、Sb、および3.5Ag等のSn合金のメッキが含まれる。Snは、Sn塩(例えば、硫酸Sn、塩化Sn)、酸(例えば硫酸、スルホン酸)、および他の添加剤(例えば、ポリエーテルグリコール等のサプレッサまたは細粒化剤、抗酸化剤)を含む溶液から、定電流(例えば約10乃至100mA/cm
2)または定電圧で電気メッキされる。
【0025】
図3には、一例として、
図2に示す一実施例のフロー図を示す。ステップ310では、1または2以上の装置およびCuの相互接続部が、ウェハ上に形成される。次にステップ312では、ダイパッケージ相互接続部200が、SiNおよびポリイミドでパッシベートされる。またCuの金属化のため、写真転写技術およびエッチング処理によって、コンタクトパッド(図示されていない)が開口される。ステップ314では、プラズマ気相成膜法(PVD)、化学気相成膜法(CVD)、原子層成膜法(ALD)またはメッキによって、ベース層金属230が成膜される。ベース層金属230は、接着層(例えば、Ti、TiN、TiSiN)と、シード層(例えば、Ni、NiV、Co)とを含んでも良い。接着層とシード層との間には、ベース層金属230のバリア特性を向上させるため、Al等の追加の金属層が形成されても良い。
【0026】
次にステップ316で、フォトレジスト層が成膜され、パターン化される。ステップ318では、拡散バリア層225が形成される。拡散バリア層225は、無電解層であり、CoBP、CoWP、CoWB、CoWBP、NiBP、NiWP、NiWBおよびNiWBPのいずれか一つを含んでも良い。次にステップ320では、拡散バリア層225上にウェッティング層が成膜される。ウェッティング層は、CoB、NiB、CoPおよびNiPのいずれかを含んでも良い。ステップ322では、SnまたはSn合金のメッキが行われる。Sn合金は、0.7Cu、Bi、Sbおよび3.5Agのいずれかを含む。次にステップ324では、フォトレジストが除去され、ステップ326では、ベース層金属230がエッチングされる。
【0027】
拡散バリア層225を有するダイパッケージ相互接続部200を形成するステップは、エッチングによってベース層金属230をパターン化するステップを有する。ベース層金属230のエッチングは、Sn段差およびポリイミドの劣化(例えば腐食または酸化)を抑制する。
【0028】
図4には、ダイパッケージ相互接続部400の別の一例としての実施例を示す。バンプ層415は、Cuで構成され、直接ベース層金属430上に設置される。ベース層金属430は、Cuであっても良い。拡散バリア層425は、無電解層であり、(Cuの)バンプ層415の上部に設置され、SnまたはSn合金層の下側に設置される。拡散バリア層425は、
図2の相互接続部200の拡散バリア層225と同様の利点を有する。例えば、拡散バリア層425は、CuおよびSnの拡散バリアを通る拡散を防止することにより、(Cuの)バンプ層415とSn層435の間のCuおよびSnの拡散または相互混合を防止する。拡散バリア層425は、バンプ層415内でのウィスカーの形成を抑制する。図には、一例として、いくつかの層415、425、435の厚さが示されているが、層の厚さは、これとは異なっていても良い。
【0029】
ハンダ層410は、Sn層435の上部に形成され、パッケージ層420は、ハンダ層410に接続される。パッケージ層420は、相互接続部400内の他の全ての層410、435、425、415、430と電気的に接続されても良く、この場合、ダイパッケージと、装置および基板近傍または基板上の相互接続部との間に電流が流れるようになる。
【0030】
図5には、一例として、
図4に示す一実施例を製作するためのフロー図を示す。ステップ310、312、314、および316での相互接続部400の処理プロセスフローは、
図2、3の相互接続部200の処理プロセスフローの手順と同様であり、順番も同様である。ステップ518では、Cuバンプ層415が電気メッキで形成される。
図2のSnバンプ層215の電気メッキの場合と同様に、Cuバンプ層415の電気メッキによって、均一な厚さの層が得られ、ウィスカー形成が抑制され、圧縮応力は、ほとんどまたは全く生じない。ステップ520では、無電解層であっても良い拡散バリア層425が、バンプ層415上に形成され、ステップ522では、バンプ層415上部にウェッティング層(
図4には示されていない)が形成される。無電解拡散バリア層425は、CoBP、CoWP、CoWB、CoWBP、NiBP、NiWP、NiWBおよびNiWBPのいずれか一つを含んでも良く、ウェッティング層は、CoB、NiB、CoPおよびNiPのいずれかを含んでも良い。
【0031】
ステップ524では、ウェッティング層の上部にSn層435が電気メッキで形成される。電気メッキSn層435は、前述の相互接続部200内の電気メッキSnと同様の利点を有する。同様の利点とは、ウィスカー形成の抑制、Snの低温相変態の防止等である。ステップ526では、フォトレジストが除去され、ステップ528では、ベース層金属430がエッチングされる。Sn層435の上部にはハンダ層410が形成され、パッケージ層420がハンダ層410と接続される。ハンダ層410は、Snを含んでも良く、電気メッキで設置されても良い。
【0032】
図6には、別の一例としてのダイパッケージ相互接続部600の実施例を示す。バンプ層615は、Cuで構成され、ベース層金属630上に直接設置されても良い。ベース層金属630は、Cuを含んでも良い。拡散バリア層625は、無電解層であっても良く、Cuバンプ層615の上部およびSnまたはSn合金の下側に設置される。拡散バリア層625は、バンプ層615の底部表面と接するベース層金属630とともに、バンプ層615を取り囲んでも良い。ベース層金属630を除く、バンプ層615の上部表面および側壁表面を含む全ての表面が、無電解拡散バリア層625で被覆されても良い。この場合、バンプ層615の外表面は、物理的に分離しており、Snを含む層との直接接触が回避される。無電解拡散バリア層625には、
図4の相互接続部400と同様の利点が得られる。例えば、無電解拡散バリア層625は、バンプ層615内のCuとSn層610内のSnとの間で、CuおよびSnが拡散または相互混合することを防止し、バンプ層615内でのウィスカーの形成を防止する。
【0033】
ハンダ層610は、無電解拡散バリア層625の上部に形成されても良く、パッケージ層602がハンダ層610と接続される。ハンダ層610はSnを含み、電気メッキされても良い。
【0034】
図7には、
図6に示す一例としての実施例の製作フロー図を示す。ステップ310、312、314、316および518での相互接続部600の処理プロセスは、
図4、
図5の相互接続部400の処理フローと同様であり、順番も同様である。ステップ720では、フォトレジストが除去され、ステップ722では、ベース層金属630がエッチングされる。拡散バリア層625は、無電解層であっても良く、ステップ724では、拡散バリア層625がバンプ層615上に設置され、ステップ726では、バンプ層615の上部にウェッティング層(
図6には示されていない)が設置される。無電解拡散バリア層625は、CoBP、CoWP、CoWB、CoWBP、NiBP、NiWP、NiWBおよびNiWBPのいずれか一つを含んでも良く、ウェッティング層は、CoB、NiB、CoPおよびNiPのいずれかを含んでも良い。無電解拡散バリア層625およびウェッティング層の上部には、ハンダ層610等の他の導電層が形成されても良く、この層は、パッケージ層620と接続される。
【0035】
図8には、電気コンピュータシステムにおけるパッケージ構造の一例としての実施例を示す。
図3、5および7を参照して上述したように、ダイパッケージの1または2以上の相互接続部および層が、基板上に形成される。ダイパッケージ810を回路基板850上に設置した場合、ダイパッケージ810は、ダイパッケージ内の内部回路を、回路基板850上のダイパッケージの外部の回路と接続する。回路基板850は、例えばメモリ843、中央演算処理ユニット(CPU)825、および制御器または他のロジックユニット833等の他のチップ並びに部品を備えていても良い。回路基板850は、部品間の信号を経路化させるため、複数の層で構成されても良く、コンピュータおよび/または電子機器860のシステム内で使用されても良い。
【0036】
本発明の多数の実施例について説明した。しかしながら、本発明の思想および範囲から逸脱しないで、各種変更が可能である。例えば、処理プロセス順は、
図3、5および7に示した処理順と変更しても良い。例えば
図7では、ステップ518で、相互接続部600のCu層を電気メッキで形成した後、ステップ724で無電解拡散バリア層625が成膜される。その後、ステップ726での、無電解拡散バリア層625上へのウェッティング層の形成後に、ステップ720でフォトレジストを除去して、ステップ722において、ベース層金属630をエッチングしても良い。別の例では、無電解拡散バリアは、CuおよびSn以外の他の金属の相互混合を防止するために使用され、例えばAuおよびAlの相互混合が防止される。