特許第6078594号(P6078594)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6078594
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】ゲル状食品
(51)【国際特許分類】
   A23L 29/281 20160101AFI20170130BHJP
   A23L 29/256 20160101ALI20170130BHJP
   A23L 9/10 20160101ALN20170130BHJP
【FI】
   A23L29/281
   A23L29/256
   !A23L9/10
【請求項の数】1
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-143362(P2015-143362)
(22)【出願日】2015年7月17日
(62)【分割の表示】特願2012-218015(P2012-218015)の分割
【原出願日】2012年9月28日
(65)【公開番号】特開2015-180233(P2015-180233A)
(43)【公開日】2015年10月15日
【審査請求日】2015年7月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006127
【氏名又は名称】森永乳業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】田中 学
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 英樹
(72)【発明者】
【氏名】若尾 庄児
【審査官】 坂崎 恵美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−193814(JP,A)
【文献】 特開平10−075724(JP,A)
【文献】 特開昭59−113857(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 29/281
A23L 29/256
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/WPIDS/FSTA/FROSTI(STN)
日経テレコン
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼラチンを溶解した組成物のゲル化物中に寒天ゲル破砕物および気泡が含まれているゲル状物を有するゲル状食品であって、
前記ゲル状物に対するゼラチンの含有量が0.24〜1.4質量%、寒天の含有量が0.04〜0.5質量%、オーバーランが20〜80%であり、
前記ゲル状物の10℃における硬さが4×10〜20×10N/mであり、
前記ゲル状物の、20℃、30℃、および40℃の各温度におけるtanδの値に差があり、かついずれの温度においてもtanδの値が0.4〜0.8の範囲内であるゲル状食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は気泡を含むゲル状食品およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンは、卵成分、乳成分、及び糖類を基本成分として含有する原料液を、焼成および/又は蒸すことによって固化させた焼プリンと、該原料液にゲル化剤を含有させ、ゲル化温度以下に冷却して固化(ゲル化)させたゲルプリンとに大別される。
焼プリンは、卵の加熱凝固性を利用して固化させたものであるため、比較的硬い食感を有する。一方、ゲルプリンはゲル化剤のゲル化を利用して固化したものであり、ゲル化剤の量によって硬くも軟らかくもできる。
【0003】
下記特許文献1には、ゲルプリンの食感を維持しつつ、カスタード風味を増強させるために、卵黄と、砂糖と、乳たんぱく質と、グリセリン脂肪酸エステルと、クエン酸塩および/またはリン酸塩と、増粘多糖類とを含む第1の原料液を、例えば80〜100℃で30〜60分間加熱することによって固化させた後に、ホモミキサー等で粉砕して粉砕物を得、該粉砕物にゲル化剤と水を添加してゲル化剤を溶解させた後、冷却してゲル化させる方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−189810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、消費者の嗜好が多様化し、新しい食感の食品が求められる。例えば、口溶けの良さは消費者に好まれる傾向にある。
焼プリンを構成する卵の加熱凝固物は温度が上昇しても再溶解しないため、口溶け感は得られない。一方、熱可逆性を有するゲル化剤で固化されたゲルプリンは、口の中で軟化するものの、素早く溶解するわけではないので良好な口溶け感は得られない。
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、例えば焼プリンのような硬い食感を有しながら、口溶けが良好であるという、新しい食感を有するゲル状食品およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のゲル状食品の製造方法は、JIS K6503によるゼリー強度が50〜300ブルームであるゼラチン、日寒式によるゼリー強度が200〜400g/cmである寒天、および水を含有し、該ゼラチンの含有量が0.35〜2質量%、寒天の含有量が0.07〜0.7質量%である第1の組成物を、85℃以上に加熱する工程aと、
前記工程aの後、前記第1の組成物を少なくとも40℃になるまでは流動させながら冷却して、該第1の組成物の液温を25℃以下にする工程bと、
前記工程bの後、前記第1の組成物を30〜55℃に加熱する工程cと、
前記工程cの後、前記第1の組成物を20〜25℃に冷却する工程dと、
起泡性を有する起泡性組成物を、25℃以下の温度でオーバーランが100%以上となるように起泡させて第2の組成物を得る起泡工程と、
前記工程dを終えた第1の組成物と、前記起泡工程で得た第2の組成物とを、混合後のオーバーランが20〜80%となるように混合して第3の組成物を得る混合工程と、
前記第3の組成物を冷却してゲル化させるゲル化工程を有することを特徴とする。
【0007】
前記混合工程における第1の組成物と第2の組成物の混合比が、第1の組成物:第2の組成物の質量比で50:50〜80:20であることが好ましい。
【0008】
上記ゲル状食品の製造方法は参考の態様である。
本発明は、ゼラチンを溶解した組成物のゲル化物中に寒天ゲル破砕物および気泡が含まれているゲル状物を有するゲル状食品であって、前記ゲル状物に対するゼラチンの含有量が0.24〜1.4質量%、寒天の含有量が0.04〜0.5質量%、オーバーランが20〜80%であり、前記ゲル状物の10℃における硬さが4×10〜20×10N/mであり、前記ゲル状物の、20℃、30℃、および40℃の各温度におけるtanδの値に差があり、かついずれの温度においてもtanδの値が0.4〜0.8の範囲内であるゲル状食品を提供する
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、例えば焼プリンのような硬い食感を有しながら、口溶けが良好である、新しい食感を有するゲル状食品が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の製造方法の一実施形態を示す工程図である。
図2】実施例1における動的粘弾性の測定結果を示すグラフである。
図3】比較例1における動的粘弾性の測定結果を示すグラフである。
図4】比較例2における動的粘弾性の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<ゼラチンのゼリー強度>
本発明におけるゼラチンのゼリー強度は、JIS K6503「にかわおよび工業用ゼラチン」に規定されている測定方法で測定されるゼリー強度である。
すなわち、濃度6.67質量%のゼラチン水溶液を調製し、規定の容器に入れ10℃の恒温槽で16〜18時間冷却して試料を得る。得られた試料の表面を、直径1/2インチ(12.7mm)のプランジャーで4mm押し下げるのに必要な荷重のグラム数をゼリー強度(単位:ブルーム)とする。
【0012】
<寒天のゲル強度>
本発明における寒天のゲル強度は、日寒式によって測定される値である。すなわち日本寒天製造水産組合が採用した日寒水式ゼリー強度測定器を用いて測定される値であり、濃度1.5質量%の寒天水溶液を調製し、20℃で15時間放置して凝固させたゲルについて、その表面1cm当たり20秒間耐えうる最大荷重(g)をゼリー強度(単位:g/cm)とする。
【0013】
<オーバーラン値>
本発明におけるオーバーランの値は、起泡(ホイップ)前の体積に対する、起泡(ホイップ)前後における体積増加分の割合を意味し、下記一般式(I)より求められる値である。
オーバーラン(%)=(起泡後の体積−起泡前の体積)/起泡前の体積×100 ・・・(I)
本発明において、ゲル化させる前とゲル化後でのオーバーランの値は同じとみなす。
【0014】
<ゲル状物の硬さ>
本発明におけるゲル状物の硬さは、消食表第277号(平成23年6月23日)「特別用途食品の表示許可等について」の第18頁、別添1の別紙3 えん下困難者用食品の試験方法、(1) 硬さ、付着性及び凝集性の試験方法に準処する方法で測定して得られる値である。
具体的には、レオメーターにより、直径20mm、高さ8mmの樹脂製のプランジャーを用いて、圧縮速度10mm/sec、クリアランス5mmで圧縮測定を行い、一定速度で圧縮したときの抵抗の最大値を硬さの測定値(単位:N/m)とする。測定時の試料の温度は10℃とする。
【0015】
<tanδ>
本発明におけるtanδの値は、レオメーターにより、測定開始温度5℃、測定終了温度40℃(1分当たり2℃温度上昇させる条件:Ranp rate 2℃/min)、ひずみ率(Strain)0.5%の測定条件で動的貯蔵弾性率(G’)および動的損失粘弾率(G’’)を測定し、tanδ=G’’/G’により算出される値である。
【0016】
<ゲル状食品の製造方法>
図1は本発明の製造方法の一実施形態を示す工程図である。
本発明のゲル状食品の製造方法は、概略、ゲル化剤を含有する第1の組成物に工程a〜dを施した後、気泡を含む第2の組成物と混合し(混合工程)、得られる混合物を冷却してゲル化させる(ゲル化工程)方法である。ゲル化剤として、少なくともゼラチンおよび寒天を用いる。
【0017】
<第1の組成物>
第1の組成物は、ゼラチン、寒天および水を含有する。
ゼラチンは、JIS K6503によるゼリー強度が50〜300ブルームであるものを用いる。市販のゼラチンから適宜選択して使用することができる。ゼラチンのゼリー強度は100〜300ブルームが好ましく、200〜300ブルームがより好ましい。
ゼラチンは1種でもよく物性等が異なる2種以上を併用してもよい。2種以上を用いる場合は、各ゼラチンのゼリー強度がそれぞれ上記の範囲内となるように選択して用いる。
ゼラチンのゲル化点およびゼラチンゲルの融点は特に限定されない。通常、ゼラチンのゲル化点は15〜20℃程度、融点は25〜30℃程度である。
【0018】
第1の組成物に対するゼラチンの含有量は0.35〜2質量%である。該ゼラチンの含有量が0.35質量%以上であると、得られるゲル状食品において適度な硬さが得られる。2質量%以下であると得られるゲル状食品が硬くなりすぎず、また第1の組成物と第2の組成物との混合物において適度な流動性が得られるため、該混合物の良好な充填性が得られる。
該ゼラチンの含有量は0.5〜1.5質量%が好ましく、0.7〜1.05質量%がより好ましい。
【0019】
寒天は日寒式によるゼリー強度が200〜400g/cmであるものを用いる。市販の寒天から適宜選択して使用することができる。寒天のゼリー強度は250〜350g/cmが好ましく、280〜320g/cmがより好ましい。
寒天は1種でもよく物性等が異なる2種以上を併用してもよい。2種以上を用いる場合は、各寒天のゼリー強度がそれぞれ上記の範囲内となるように選択して用いる。
寒天の凝固点および寒天ゲルの融点は特に限定されない。通常、寒天の凝固点は40〜50℃程度、融点は80〜90℃程度である。
【0020】
第1の組成物に対する寒天の含有量は0.07〜0.7質量%である。寒天の含有量が0.07質量%以上であると、得られるゲル状食品において適度な硬さが得られる。0.7質量%以下であると得られるゲル状食品が硬くなりすぎず良好な食感が得られる。
該寒天の含有量は0.12〜0.6質量%が好ましく、0.21〜0.49質量%がより好ましい。
【0021】
第1の組成物は、得られるゲル状食品の食感の改善を目的として、寒天およびゼラチン以外に公知のゲル化剤、増粘剤、または安定剤(以下、増粘剤類という)を含有してもよい。該増粘剤類の例としては、グアーガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、タマリンド種子多糖類、ネイティブジェランガム等が挙げられる。
寒天およびゼラチン以外の増粘剤類の合計の含有量は、第1の組成物と第2の組成物との混合物に対して3質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましい。
【0022】
また第1の組成物に、乳成分、卵成分、糖類、チョコパウダー、ココアパウダー、抹茶、小豆あん等の呈味成分を適宜含有させることができる。
また必要に応じて、乳化剤、香料、色素、酸化防止剤等の公知の添加剤を適宜含有させることができる。
【0023】
第1の組成物は、水(溶解水)にゼラチン、寒天、およびそれ以外の第1の組成物の成分を溶解または分散させて調製される。溶解水の温度は特に限定されず常温でよい。工程aの直前の時点で、第1の組成物中に溶解していない成分が存在していてもよい。
第1の組成物は、以下の工程a〜dを経て、後述の混合工程に供される。
【0024】
[工程a]
工程a:第1の組成物を85℃以上に加熱する工程。
第1の組成物を85℃以上に加熱することにより、第1の組成物を殺菌するとともに、第1の組成物中に未溶解の成分(例えば寒天)が存在する場合は、これを溶解させる。本工程における第1の組成物の液温の上限は、第1の組成物中の成分を熱変性させない範囲であればよく、特に限定されない。例えば150℃以下が好ましく、140℃以下がより好ましい。
本工程において、85℃以上の高温に保持する時間は、第1の組成物を殺菌でき、かつ第1の組成物中の成分を熱変性させない範囲であればよい。例えば、125℃で15秒加熱、130℃で2秒加熱、またはこれらと同等の殺菌効果が得られる加熱条件が好ましい。
【0025】
[工程b]
工程b:工程aを終えた第1の組成物を、少なくとも40℃以下になるまでは流動させながら冷却して液温を25℃以下にする工程。
本工程において、例えば、第1の組成物が40℃以下になるまでは流動させながら冷却した後、タンク等に貯蔵された状態で25℃以下になるまで冷却してもよく、あるいは、工程aを終えた第1の組成物を25℃以下になるまで流動させながら冷却してもよい。
本工程において40℃以下に冷却すると寒天のゲル化が生じる。また流動させながら冷却することにより、生成した寒天ゲルが破砕され、第1の組成物は該寒天ゲルの破砕物を含む流動性を有する液となる。さらに25℃以下、好ましくは10℃以下に冷却することにより、寒天ゲル破砕物の良好な硬さが得られる。
流動させながら冷却させる温度を40℃以下とすることにより、本工程を終えた第1の組成物中にゲル状のダマが生じるのを防止して、寒天ゲルの破砕物を含む均一な液とすることができる。
本工程を終えた時点でゼラチンはゲル化していてもよく、していなくてもよい。
【0026】
第1の組成物を冷却する際の流動は、該流動によるせん断力によって、第1の組成物中で生成する寒天ゲルが良好に粉砕されるように行う。第1の組成物を流動させる方法は、例えば第1の組成物を撹拌する方法で流動させてもよく、管状の流路に原料液を流す方法で流動させてもよい。冷媒ジャケットを備えた冷却管内を流す方法が、冷却速度を高くしやすい点で好ましい。
例えば内径が2.0インチの管(冷却管)に2,000〜10,000L/時間の流量で流す方法、またはこれと同等のせん断力が生じる方法が好ましい。
【0027】
[工程c]
工程c:工程bにおいて寒天ゲルの破砕物を含む流動性を有する液となった、第1の組成物の液温を30〜55℃に加熱する。
30℃以上に再加熱することにより第1の組成物中のゼラチンが良好に溶解し、第1の組成物と第2の組成物とを混合した際に均一な混合物が得られる。また液温を55℃以下とすることにより、第1の組成物と第2の組成物との混合物(第3の組成物)における増粘が抑えられ、例えば充填しやすいなど、混合工程後の操作性が良好となる。
本工程において寒天ゲルの破砕物は、融点以下であるために溶解されずに維持される。したがって本工程では、液温が30〜55℃であり、寒天ゲルの破砕物を含有し、ゼラチンが溶解した状態で含まれる第1の組成物が得られる。該第1の組成物の液温は35〜50℃がより好ましい。
【0028】
[工程d]
工程d:工程cを終えた第1の組成物の液温を20〜25℃にする。これにより、ゼラチンのゲル化を抑えつつ、第2の組成物と第1の組成物の温度差を小さくすることができる。該温度差が大きいと、第1の組成物と第2の組成物とを混合した際に、第2の組成物中の気泡が壊れ、均一に混ざらないおそれがある。
本工程における第1の組成物の液温を20℃以上とすることにより、第1の組成物と第2の組成物とを混合する前にゼラチンがゲル化するのを良好に防止できる。また25℃以下とすることにより、第1の組成物と第2の組成物との混合物において適度な粘度が得られ、充填時の泡噛みが抑えられる。
【0029】
<第2の組成物>
第2の組成物は、起泡性を有する起泡性組成物を、25℃以下の温度でオーバーランが100%以上となるように起泡させたものである。
起泡性組成物は、ホイップすることによりオーバーラン100%以上になり得るものであればよい。起泡性組成物は液状であることが好ましく、水を含んでもよい。
起泡性組成物はホイップ用クリーム、卵白、大豆蛋白質、乳化剤等の起泡性を有する成分を含むことが好ましい。また起泡性を妨げない範囲で、例えば糖類、香料等のその他の成分を適宜含有させることができる。
【0030】
起泡性組成物は、起泡(ホイップ)を行う前に、必要に応じて加熱殺菌を行ってもよい。殺菌条件は特に限定されず公知の殺菌条件で行うことができる。例えば125℃で15秒加熱、130℃で2秒加熱、またはこれらと同等の殺菌効果が得られる加熱条件が好ましい。
加熱殺菌を行った後の起泡性組成物を、必要に応じてタンク等に貯蔵してもよい。貯蔵温度は起泡性組成物に含まれる成分に悪影響が出ないように適宜設定することができる。貯蔵温度は、0℃以上、かつ次の起泡工程での起泡温度以下の範囲内が好ましい。
【0031】
起泡(ホイップ)を行う際の、起泡性組成物の温度(起泡温度)は25℃以下とする。25℃を超えると起泡安定性の点で好ましくない。該起泡温度の下限値は特に限定されないが、3℃以上が好ましい。
第2の組成物のオーバーランは、後述の混合工程後にオーバーランが20〜80%の混合物(第3の組成物)が得られる範囲であればよいが、第1の組成物と第2の組成物の良好な混合割合を考慮すると100%〜300%が好ましく、150〜250%がより好ましく、170〜230%がさらに好ましい。
【0032】
<混合工程>
次いで、第2の組成物と前記工程dを終えた第1の組成物とを混合して混合物(第3の組成物)を得る。第1の組成物と第2の組成物の混合割合は、混合後の第3の組成物のオーバーランが20〜80%となるようにする。
第3の組成物が該オーバーランの範囲で気泡を含むことにより、該第3の組成物を冷却して得られるゲル状食品において、比較的硬い食感を有しながら、良好な口溶け感を得ることができる。第3の組成物のオーバーランは30〜70%が好ましく、40〜60%がより好ましい。
本工程における第1の組成物と第2の組成物の混合比は、第2の組成物のオーバーランの値にもよるが、第1の組成物:第2の組成物の質量比で50:50〜80:20が好ましく、60:40〜80:20がより好ましい。
【0033】
<ゲル化工程>
次いで、第3の組成物を、必要に応じて容器に充填した後、冷却してゲル化させることにより気泡を含有するゲル状物が得られる。こうして得られる容器入りゲル状物を、そのままゲル状食品とすることができる。
または第3の組成物を冷却して得られるゲル状物は比較的硬いため、ゲル化した後に液状のソース等を充填してゲル状食品としてもよい。また、第3の組成物を容器に充填した後、予備冷却を行って、少なくとも表層部分をゲル化させた後に、該表層部分の上にソース等を充填したのち、蓋を被せてシールし、しかる後に冷却して全体をゲル化させてもよい。
ゲル化工程における冷却温度、および予備冷却における冷却温度は、ゼラチンのゲル化温度以下であればよい。好ましくは0〜10℃である。
【0034】
<ゲル状食品>
このようにして得られるゲル状食品は、ゼラチン、寒天、および水を含むとともに、オーバーランが20〜80%の範囲で気泡を含むものであり、硬い食感を有しながら、口溶けが良好であるという、従来にはない新しい食感を有する。
具体的には、上述の測定方法で得られる、10℃における硬さの測定値が4×10N/m以上であり、かつtanδの値が、20℃、30℃、および40℃の各温度において差があり、いずれの温度においても0.4〜0.8の範囲内であるという物性を有する。この硬さの測定値が大きいほど食感が硬いことを意味する。
20℃、30℃、および40℃の各温度におけるtanδの値のうちの、最大値と最小値の差の絶対値は0.1〜0.4が好ましく、0.2〜0.3がより好ましい。
前記10℃における硬さの測定値の上限は、特に限定されないが、より良好な食感および風味が得られやすい点で20×10N/m以下が好ましく、10×10N/m以下がより好ましい。
【0035】
tanδの値は、動的貯蔵弾性率(G’)に対する動的損失粘弾率(G’’)の比であり、tanδの温度依存性は、喫食した際の口の中での食感変化の指標となる。G’は固体の性質、G’’は液体の性質を表し、tanδ(=G’’/G’)が1より大きい(G’’>G’)とサンプルは液体の性質が強く、tanδが1より小さい(G’’<G’)とサンプルは固体の性質が強いことを意味する。例えば20℃、30℃、および40℃の各温度におけるtanδの値が一定であるときは、口の中で温度が上昇しても性状が変化せず、口溶け感が得られないことを意味する。tanδの温度依存性が大きいほど、すなわち各温度におけるtanδの値どうしの差が大きいほど、口の中で温度が上昇するときの性状変化が大きく、口溶け感が強く感じられることを意味する。
【0036】
また本発明のゲル状食品は、後述の実施例に示されるように、凍結解凍に対する耐性が良好であり、冷凍後に解凍しても、離水が抑制され、ほぼ元の状態が得られる。したがって、製品の冷凍保存が可能であり、流通経路の自由度が高いという利点を有する。
また凍結した状態でも硬くなりすぎず、アイスクリーム様の性状が得られ、フローズンデザートとして提供することも可能である。
【0037】
本発明のゲル状食品におけるゼラチンの含有量は0.5〜1.5質量%が好ましく、0.7〜1.05質量%がより好ましい。
本発明のゲル状食品における寒天の含有量は0.12〜0.6質量%が好ましく、0.21〜0.49質量%がより好ましい。
【実施例】
【0038】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
以下において「%」は特に断りのない限り「質量%」である。
【0039】
以下の例において用いたゲル化剤、増粘剤および乳化剤は以下の通りである。
[ゲル化剤]
・寒天:低強度寒天、伊那食品社製、商品名:ウルトラ寒天、日寒式によるゼリー強度300g/cm、凝固点45℃、ゲルの融点85℃。
・ゼラチン:新田ゼラチン社製、商品名:ゼラチンGB250、JIS K6503によるゼリー強度250ブルーム、ゲル化点20℃、ゲルの融点25℃。
【0040】
[増粘剤類]
・増粘剤A:グアーガム、太陽化学社製、商品名:ネオソフト。
・増粘剤B:タマリンド種子多糖類、三栄源FFI社製、商品名:ビストップ。
・増粘剤C:ローカストビーンガム、三栄源FFI社製、商品名:ビストップ。
・増粘剤D:キサンタンガム、三栄源FFI社製、商品名:ビストップ。
【0041】
[乳化剤]
・乳化剤A:グリセリンモノ脂肪酸エステル、リケンビタミン社製、商品名:ポエム。
・乳化剤B:ポリグリセリン脂肪酸エステル、リケンビタミン社製、商品名:ポエム。
・乳化剤C:ショ糖脂肪酸エステル、三菱化学社製、商品名:リョートーシュガーエステル。
・乳化剤D:コハク酸モノグリセリド、花王社製、商品名:ステップ。
【0042】
<試験例1>
本例では、第1の組成物中のゼラチン含有量および寒天含有量をそれぞれ表3に示す通りに変化させてゲル状食品を製造した。
表1に第1の組成物の配合を示す。第1の組成物中における寒天の配合量(m)およびゼラチンの配合量(n)はそれぞれ表3に示す値(単位:質量%)とし、第1の組成物の全体が100質量%となるように溶解水の配合量で調整した。
なお表1、2には、各組成物を100質量%とするときの配合のほかに、第1の組成物と第2の組成物との混合物の全体を100質量%とするときの、該混合物中の各成分の含有量(単位:質量%)を合わせて示す。
【0043】
まず、表1に示す原料を混合し、125℃、15秒の条件で加熱殺菌を行った(工程a)後、タンクに連通する管内を流量4000L/時間で流動させながら20℃まで冷却し、10℃に保温設定されたタンクに一旦貯蔵した(工程b)。タンクから供給される第1の組成物を、45℃まで加熱した後(工程c)、25℃に冷却した(工程d)。工程aの加熱殺菌は、インフュージョン式加熱殺菌装置を用いて行った。
一方、表2に示す配合で第2の組成物を調製した。すなわち、表2に示す原料を混合して起泡性組成物を調製し、130℃、2秒の条件で加熱殺菌を行った後、冷却して5℃に設定された保温タンクに一旦貯蔵した。タンクから供給される起泡性組成物(5℃)をホイップして、オーバーラン200%の第2の組成物を得た。起泡性組成物の加熱殺菌は、プレート式加熱殺菌装置を用いて行った。起泡性組成物のホイップは、連続式ホイッパーを用いて行った。
【0044】
こうして得られた5℃の第2の組成物と、上記工程dで得た25℃の第1の組成物とを混合した(混合工程)。これらの混合比は第1の組成物:第2の組成物の質量比で70:30とした。混合後のオーバーランは55%であった。得られた混合物(第3の組成物)を市販のプリンカップに67gずつ充填した後、5℃に冷却してゲル化させプリン風味の気泡含有ゲル状物を得た(ゲル化工程)。さらに該気泡含有ゲル状物の上に、10℃のカラメルソースを20g充填した。その後、蓋をしてシールし、プリン風味の気泡含有ゲル状物とカラメルソースが容器に収容されたゲル状食品を得た。
【0045】
[評価方法]
下記の方法で充填性の評価と硬さの官能評価を行った。結果を表3に示す。表には充填性の評価(○、△、×)とゲル物の硬さの官能評価(1〜5)の結果を‐(ハイフン)を用いて併記する。
(充填性)第2の組成物と第1の組成物の混合物の物性について以下の基準で評価した。
○:充填した後に、表面が平らになる。
△:充填した後に、表面が平らにならず、充填した際の形が残ってしまう。
×:混合物の粘度が高すぎて充填が困難である。
(ゲル状物の硬さの官能評価)冷却してゲル化させた後の、気泡含有ゲル状物の性状について以下の基準で評価した。
0:全く固まっていない。カラメルソースが貫通する。
1:固まるが、ほとんど食感が残らない。カラメルソースが貫通する。
2:食べたときに硬さが感じられる程度に固まる。気泡含有ゲル状物の上にカラメルソース乗る。
3:食べたときに、ほどよい硬さが感じられる。気泡含有ゲル状物の上にカラメルソース乗る。
4:食べたときに、しっかりとした硬さが残る。気泡含有ゲル状物の上にカラメルソース乗る。
5:食感が硬すぎる。気泡含有ゲル状物の上にカラメルソース乗る。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
【表3】
【0049】
表3の結果に示されるように、第1の組成物中のゼラチンの含有量が0.35〜2質量%であり、かつ寒天の含有量が0.07〜0.7質量%である範囲で、充填性が良好であり、かつ気泡含有ゲル状物の硬さ(官能評価)が2〜4の良好な性状が得られた。
【0050】
<試験例2>
本例では、工程bにおける冷却条件を変化させてゲル状食品を製造した。
すなわち、試験例1において、第1の組成物中における寒天の配合量(m)を0.3質量%、ゼラチンの配合量(n)を1.5質量%とした。工程bにおいて、殺菌機からタンクまでの間の管内で、第1の組成物を流動させながら冷却する際の、流量および管の出口における第1の組成物の温度(出口温度)を表4に示すとおりに変化させた。その他は試験例1と同様にしてプリン風味のゲル状食品を製造した。
【0051】
[評価方法]
タンク内に貯蔵された第1の組成物の100mLを採取して目視で観察し、該第1の組成物の性状を以下の基準で評価した。結果を表4に示す。
×:第1の組成物中にゲル状のダマ物が存在する。
○:第1の組成物中にゲル状のダマは観察されず、均一な液体である。
【0052】
【表4】
【0053】
表4の結果に示されるように、工程bにおいて、第1の組成物を2000L/時間以上の流量で流動させながら、出口温度が40℃以下となるように冷却することにより、ゲル状のダマが存在しない均一な第1の組成物が得られた。
表4の結果において、評価が×であった第1の組成物を用い、試験例1と同様にしてプリン風味の気泡含有ゲル状物を製造したところ、食感においてゲル状のダマが残っている感じであった。
【0054】
<試験例3>
本例では、工程cにおける加熱条件を変化させてゲル状食品を製造した。
すなわち、試験例1において、第1の組成物中における寒天の配合量(m)を0.3質量%、ゼラチンの配合量(n)を1.5質量%とした。工程cにおいて、タンクから供給される第1の組成物を、表5に示す加熱温度まで温度上昇させた後(工程c)、20℃に冷却した(工程d)。その他は試験例1と同様にしてプリン風味のゲル状食品を製造した。
【0055】
[評価方法]
混合工程において、第2の組成物と第1の組成物とを混合したときに、(1)均一な混合物が得られるかどうかを下記の基準で評価した。また混合工程において均一な混合物が得られた場合には、さらに(2)該混合物をプリンカップに充填する際の物性について以下の基準で評価した。結果を表5に示す。
(混合物の均一性)
○:第2の組成物と第1の組成物とが均一に混ざる。
×:第2の組成物と第1の組成物とが均一に混ざらず、ゲル状のダマができる。
(充填性)
××:混合工程では均一に混ざるが、混ざった後にすぐに増粘して固まってしまう。
×:混合工程では均一に混ざるが、充填するまでに増粘して固まってしまう。
○:混合工程では均一に混ざり、かつ充填までゆるいクリーム状の物性を保つ。
【0056】
【表5】
【0057】
表5の結果に示されるように、工程cにおいて第1の組成物を30〜55℃に加熱することによって、混合工程後の混合物の均一性が良好になるとともに、混合工程後の増粘がゆるやかになり、良好な充填性が得られた。
また、加熱温度が20℃であると、混合工程において均一な混合物とならず、ゲル状のダマができた。これを充填後に冷却しても固まらなかった。
【0058】
<試験例4>
本例では、工程dにおける冷却条件を変化させてゲル状食品を製造した。
すなわち、試験例1において、第1の組成物中における寒天の配合量(m)を0.3質量%、ゼラチンの配合量(n)を1.5質量%とした。工程cにおいて、タンクから供給される第1の組成物を、45℃まで加熱した後(工程c)、表6に示す冷却温度まで温度を降下させた(工程d)。その他は試験例1と同様にしてプリン風味のゲル状食品を製造した。
【0059】
[評価方法]
混合工程において、第2の組成物と第1の組成物とを混合したときに、(1)均一な混合物が得られるかどうかを下記の基準で評価した。また混合工程において均一な混合物が得られた場合には、さらに(2)該混合物をプリンカップに充填する際の物性について以下の基準で評価した。結果を表6に示す。
(1)混合物の均一性
○:第2の組成物と第1の組成物とが均一に混ざる。
×:第2の組成物と第1の組成物とが均一に混ざらない。
(2)充填性
×:混合工程では均一に混ざるが、充填するまでに増粘して固まってしまう。
△:混合工程では均一に混ざるが、充填時に泡噛みを生じ、不均一な気泡となる。
○:混合工程では均一に混ざり、かつ充填までゆるいクリーム状の物性を保つ。
【0060】
【表6】
【0061】
表6の結果に示されるように、工程dにおいて第1の組成物を20〜25℃に冷却することによって、混合工程後の混合物の均一性が良好になるとともに、混合工程後の増粘がゆるやかになり、良好な充填性が得られた。また充填時の泡噛みが防止され均一な気泡含有ゲル状物が得られた。
第1の組成物を15℃に冷却した場合は、混合前に第1の組成物がゲル化してしまった。
【0062】
<実施例1>
まず、表1に示す配合で第1の組成物を調製した。第1の組成物中における寒天の配合量(m)は0.35質量%、ゼラチンの配合量(n)は1.05質量%とした。次に、該第1の組成物を125℃、15秒の条件で加熱殺菌を行った後(工程a)、タンクに連通する管内を流量4000L/時間で流動させながら20℃まで冷却し、10℃に保温設定されたタンクに一旦貯蔵した(工程b)。タンクから供給される第1の組成物を45℃まで加熱した後(工程c)、25℃に冷却した(工程d)。工程aの加熱殺菌は、インフュージョン式加熱殺菌装置を用いて行った。
【0063】
一方、表2に示す配合で第2の組成物を調製した。すなわち、表2に示す原料を混合し、130℃、2秒の条件で加熱殺菌を行った後、冷却して5℃に設定された保温タンクに一旦貯蔵した。タンクから供給される液を、オーバーラン200%にホイップして第2の組成物を得た。加熱殺菌は、プレート式加熱殺菌装置を用いて行った。ホイップは、連続式ホイッパーを用いて行った。
【0064】
こうして得られた5℃の第2の組成物と、上記工程dで得た25℃の第1の組成物とを混合した(混合工程)。これらの混合比は第1の組成物:第2の組成物の質量比で70:30とし、混合後のオーバーランは54%であった。得られた混合物を市販のプリンカップに充填した後、5℃に冷却してゲル化させて気泡含有ゲル状物とした(ゲル化工程)。得られたプリン風味の気泡含有ゲル状物の上に、10℃のカラメルソースを充填して、プリン風味のゲル状食品を得た。
得られた気泡含有ゲル状物は、焼プリンのような硬い食感を有しながら、良好な口溶け感を有する。
【0065】
実施例1で得られた、カラメルソースを充填する前の気泡含有ゲル状物をサンプルとして、レオメーターにより動的貯蔵弾性率(G’)、動的損失粘弾率(G’’)を測定し、tanδ(=G’’/G’)を求めた。レオメーターとしては、ARES−2KFRT(製品名、TA Instruments社製)を用い、周波数1Hzで測定した。これらの結果を図2に示す。また20℃、30℃、および40℃の各温度におけるtanδの値を表7に示す。表にはサンプルのオーバーラン値も合わせて示す。サンプルのオーバーラン値は第2の組成物と第1の組成物の混合物のオーバーラン値と同じである。
また、サンプルの10℃における硬さを測定した。測定装置はレオメーター(サン科学社製、製品名:RHEO METER、COMPAC−100 II)を用いた。結果を表7に示す。
【0066】
<比較例1>
実施例1において寒天の配合を0%、ゼラチンの配合を0.3%にそれぞれ変更した。また、第1の組成物と第2の組成物の混合比を、第1の組成物:第2の組成物=50:50とした。そのほかは実施例1と同様にして、オーバーランが100%である、プリン風味の気泡含有ゲル状物を製造した。カラメルソースの充填は行わなかった。
得られた気泡含有ゲル状物は、ムース状で、実施例1のゲル状物よりも明らかに軟らかい食感であった。
実施例1と同様にして、動的貯蔵弾性率(G’)、動的損失粘弾率(G’’)、tanδ(=G’’/G’)を測定した。これらの結果を図3に示す。また実施例1と同様にして各物性値を測定した。結果を表7に示す。
【0067】
<比較例2>
実施例1において寒天およびゼラチンの配合をともに0%に変更した。また、第1の組成物と第2の組成物の混合比を、第1の組成物:第2の組成物=20:80とした。さらに、第2の組成物のオーバーランを320%に設定した。そのほかは実施例1と同様にして、オーバーランが250%である、プリン風味の気泡含有組成物を製造した。カラメルソースの充填は行わなかった。
得られた気泡含有組成物は、ホイップクリーム状で非常に軟らかい。
実施例1と同様にして、動的貯蔵弾性率(G’)、動的損失粘弾率(G’’)、tanδ(=G’’/G’)を測定した。これらの結果を図4に示す。また実施例1と同様にして各物性値を測定した。結果を表7に示す。
【0068】
<参考例1>
参考例として、市販の焼プリン(森永乳業社製、商品名:森永の焼プリン)について、実施例1と同様にして各物性値を測定した。結果を表7に示す。
<参考例2>
参考例として、ゲル化剤を用いた市販のゲルプリン(森永乳業社製、商品名:森永プリン)。について、実施例1と同様にして各物性値を測定した。結果を表7に示す。
【0069】
【表7】
【0070】
図2〜4において、横軸はサンプルの温度、左縦軸はG’、G’’(単位:Pa)、右縦軸はtanδである。
実施例1は温度が40℃まで上昇してもtanδの値は1より小さい。比較例1、2では、温度の上昇に伴ってtanδが上昇し、40℃では1に近い値となっている。
【0071】
表7の結果に示されるように、参考例1のtanδは温度依存性が見られず、常に低い値であった。これは温度が上昇しても溶けず、口溶け感が得られないことを意味する。また参考例1のオーバーラン値はゼロであり、気泡を含んでいないことを意味する。
参考例2のtanδは参考例1より少し高く、やや温度依存性が見られる。参考例2のオーバーラン値はゼロであり、気泡を含んでいないことを意味する。硬さの測定値は参考例1より低い。
実施例1のサンプルは、オーバーラン値が54%であり、硬さの測定値は参考例1と同等であり、tanδは参考例2と、比較例1、2との中間程度の値となっている。
すなわち、実施例1のサンプルは、焼プリン(参考例1)と同等の硬さを有しながら、口の中で温度が上昇するときの食感の変化は焼プリンともゲルプリンとも異なっており、比較例1のムース状や比較例2のホイップクリーム状と、ゲルプリンとの中間程度の口溶け感を有することがわかる。
【0072】
<実施例2:気泡を含むチョコプリンの製造>
まず、表8に示す配合で原料を混合し第1の組成物を調製した。次に、該第1の組成物を125℃、15秒の条件で加熱殺菌を行った後(工程a)、タンクに連通する管内を流量4000L/時間で流動させながら20℃まで冷却し、10℃に保温設定されたタンクに一旦貯蔵した(工程b)。タンクから供給される第1の組成物を45℃まで加熱した後(工程c)、25℃に冷却した(工程d)。工程aの加熱殺菌は、インフュージョン式加熱殺菌装置を用いて行った。
【0073】
【表8】
【0074】
一方、表9に示す配合で第2の組成物を調製した。すなわち、表9に示す原料を混合し、130℃、2秒の条件で加熱殺菌を行った後、冷却して5℃に設定された保温タンクに一旦貯蔵した。タンクから供給される液を、オーバーラン200%にホイップして第2の組成物を得た。加熱殺菌は、プレート式加熱殺菌装置を用いて行った。ホイップは、連続式ホイッパーを用いて行った。
得られた5℃の第2の組成物と、上記工程dで得た25℃の第1の組成物とを混合した(混合工程)。これらの混合比は第1の組成物:第2の組成物の質量比で70:30とし、混合後のオーバーランは55%であった。得られた混合物を市販のプリンカップに充填した後、5℃に冷却してゲル化させてチョコレート風味の気泡含有ゲル状物を得た(ゲル化工程)。
【0075】
【表9】
【0076】
これとは別に、表10に示す配合で原料を混合し、130℃、2秒の条件で加熱殺菌してチョコレートソースを得た。上記で得た気泡含有ゲル状物の上に、チョコソース(10℃)を充填して、チョコレート風味のゲル状食品を得た。
得られた気泡含有ゲル状物は、焼プリンのような硬い食感を有しながら、良好な口溶け感を有するものであった。
【0077】
【表10】
【0078】
<実施例3:気泡を含むミルクプリンの製造>
まず、表11に示す配合で原料を混合し第1の組成物を調製した。次に、該第1の組成物を125℃、15秒の条件で加熱殺菌を行った後(工程a)、タンクに連通する管内を流量4000L/時間で流動させながら20℃まで冷却し、10℃に保温設定されたタンクに一旦貯蔵した(工程b)。タンクから供給される第1の組成物を45℃まで加熱した後(工程c)、25℃に冷却した(工程d)。加熱殺菌は、インフュージョン式加熱殺菌装置を用いて行った。
【0079】
【表11】
【0080】
一方、表12に示す配合で第2の組成物を調製した。すなわち、表12に示す原料を混合し、130℃、2秒の条件で加熱殺菌を行った後、冷却して5℃に設定された保温タンクに一旦貯蔵した。タンクから供給される液を、オーバーラン200%にホイップして第2の組成物を得た。加熱殺菌は、プレート式加熱殺菌装置を用いて行った。ホイップは、連続式ホイッパーを用いて行った。
得られた5℃の第2の組成物と、上記工程dで得た25℃の第1の組成物とを混合した(混合工程)。これらの混合比は第1の組成物:第2の組成物の質量比で70:30とし、混合後のオーバーランは55%であった。得られた混合物を市販のプリンカップに充填した後、5℃に冷却してゲル化させてミルク風味の気泡含有ゲル状物を得た(ゲル化工程)。
【0081】
【表12】
【0082】
これとは別に、表13に示す配合で原料を混合し、130℃、2秒の条件で加熱殺菌して練乳ソースを得た。上記で得た気泡含有ゲル状物の上に、練乳ソース(10℃)を充填して、ミルク風味のゲル状食品を得た。
得られた気泡含有ゲル状物は、焼プリンのような硬い食感を有しながら、良好な口溶け感を有するものであった。
【0083】
【表13】
【0084】
<試験例5:凍結耐性>
下記(i)〜(v)の5種の食品を−20℃の冷凍庫にて12時間凍結し、凍結状態の食品と、解凍後の食品のそれぞれについて評価した。凍結状態の評価は、凍結状態の食品を試食して評価した。解凍後の評価は、12時間の凍結後、5℃の冷蔵庫にて12時間解凍したものを試食して官能評価した。
(i)実施例1で得られたゲル状食品。
(ii)参考例1の焼プリン。
(iii)参考例2のゲルプリン。
(iv)市販のゼリー(森永乳業社製、商品名:フルーツゼリー)。
(v)市販のホイップクリーム(森永乳業社製、商品名:森永ホイップ)をオーバーラン170%までホイップさせたもの。
【0085】
[凍結状態の評価]
凍結状態の食品を試食して評価した。
(i)硬いアイスクリームのような性状で、スプーンですくって食べることができる。美味しい。
(ii)シャーベットのような性状。美味しくない。
(iii)シャーベットのような性状。美味しくない。
(iv)シャーベットのような性状。適度に解凍させれば美味しい。
(v)組織が硬く、ボソボソした食感。
【0086】
[解凍後の評価]
12時間の凍結後、5℃の冷蔵庫にて12時間解凍したものを試食して官能評価した。
(i)凍結前と同じ食感、風味が得られる。
(ii)離水が多く生じた。組織はボソボソした食感。
(iii)離水が多く生じた。組織が崩れた。
(iv)離水が大量に生じた。
(v)ひび割れした。組織が硬く、ボソボソした食感。
【0087】
以上の評価結果から、本発明のゲル状食品は、凍結後、解凍することによって凍結前と同じ風味、食感が得られ、凍結耐性に優れることがわかる。また、凍結状態でも硬いアイスクリーム様の性状を有し、美味しく食べることができる。
図1
図2
図3
図4