特許第6078633号(P6078633)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6078633治療用のチオレドキシン相互作用タンパク質(TXNIP)のインヒビター
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6078633
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】治療用のチオレドキシン相互作用タンパク質(TXNIP)のインヒビター
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/113 20100101AFI20170130BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20170130BHJP
   C12Q 1/68 20060101ALI20170130BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20170130BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20170130BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20170130BHJP
   A61P 15/08 20060101ALI20170130BHJP
   G01N 33/15 20060101ALI20170130BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
   C12N15/00 GZNA
   C07K16/18
   C12Q1/68 A
   A61K31/7088
   A61K39/395 N
   A61K48/00
   A61P15/08
   G01N33/15 Z
   G01N33/50 Z
【請求項の数】3
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-507410(P2015-507410)
(86)(22)【出願日】2013年4月17日
(65)【公表番号】特表2015-522251(P2015-522251A)
(43)【公表日】2015年8月6日
(86)【国際出願番号】EP2013001143
(87)【国際公開番号】WO2013159879
(87)【国際公開日】20131031
【審査請求日】2014年10月23日
(31)【優先権主張番号】12002914.5
(32)【優先日】2012年4月25日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512151403
【氏名又は名称】ドイッチェス・クレープスフォルシュングスツェントルム
【氏名又は名称原語表記】DEUTSCHES KREBSFORSCHUNGSZENTRUM
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】クラマー,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ギュロウ,カルステン
(72)【発明者】
【氏名】ザス,ザビーネ
【審査官】 福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0272710(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0058105(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0097317(US,A1)
【文献】 Endocrinology,2004年,Vol.145, No.12,p.5485-5492
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00−15/90
C12Q 1/00−3/00
CA/MEDLINE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
女性(メス)の生殖能の改善のための医薬組成物であって、
(a)チオレドキシン相互作用タンパク質(TXNIP)の生物活性、又は、
(b)TXNIPをコードする遺伝子の発現を低減又は抑制することが可能な化合物を含み、
前記化合物は、
(i)TXNIPをコードする遺伝子の発現を低減又は抑制するアンチセンスオリゴヌクレオチド又はshRNA、若しくは、
(ii)TXNIP、又はそのフラグメントに対する抗体、であることを特徴とする、医薬組成物。
【請求項2】
TXNIPの生物活性、又はTXNIPをコードする遺伝子の発現を低減又は抑制することによって 女性(メス)の生殖能の改善する化合物を同定する方法であって、以下の工程を有する、
(a)候補化合物と、TXNIP又はTXNIPをコードする遺伝子を含むテストシステムとをインキュベートする、そして、
(b)TXNIPの生物活性を分析する、
ここで、TXNIPの生物活性の抑制又は損失は、 女性(メス)の生殖能を改善する特性を有する候補化合物の存在を示す、方法。
【請求項3】
前記TXNIPの生物活性の抑制又は損失は、テスト化合物の不在によって特徴付けられるテストシステムとの比較によって判定される請求項2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化ストレスに対する耐性の改善が有益な作用を有する状態を治療するために、(a) チオレドキシン相互作用タンパク質(TXNIP)の生物活性、又は(b) TXNIPをコードする遺伝子の発現を低減又は抑制することが可能な化合物を提供する。
【背景技術】
【0002】
アンチエイジング医学、実験老年学、および生物医学老年学、としても知られている寿命延伸科学は、最大寿命と平均寿命との両方を延伸するために老齢化のプロセスを減速又は逆転することの研究である。この分野における幾人かの研究者、および「寿命延伸学者(“life extensionists”)」又は「長寿学者」は、幹細胞、分子修復、および臓器交換(人工臓器や異種移植等による)による組織若返りにおける将来のブレークスルーによっていずれは人間が健全な若い状態へと完全に若返ることが可能になるであろう、と信じている。栄養補給、フィジカルフィットネス、スキンケア、ホルモン補充、ビタミン、サプリメント、ハーブ等といった自称アンチエイジング製品の売り上げは、米国市場において毎年約500億ドルもの収入を生み出している儲かる産業である。しかしながら、医学の専門家は、そのような製品の利用がアンチエイジングプロセスに影響を与えることは示されておらず、アンチエイジング医学の唱道者による多くの主張は、米国医師会(American Medical Association)を含め、医療専門家によっておおむね批判されてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、本発明の背景にある技術的課題は、最大寿命と平均寿命との両方を延伸するための手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記技術的課題の解決は、請求項に特徴付けられている実施例を提供することによって達成される。
【0005】
老齢化 (これは多くに科学者によって「疾患」と見なされている)と臓器の機能障害に寄与する主要な要因の一つは、高齢者における機能不全とより高い死亡率とをもたらす細胞巨大分子における酸化ダメージの蓄積である(1)。本発明をもたらした実験中において、チオレドキシン相互作用タンパク質(TXNIP)が老齢化中において酸化還元バランスと細胞防御能力とに悪影響を与えることが見出された。VDUP1(ビタミンD3アップレギュレーションタンパク質1)又はTB-2(チオレドキシン結合タンパク質2)としても知られるチオレドキシン相互作用タンパク質(TXNIP)は、最初、HL-60白血病細胞のビタミンD3治療時にアップレギュレーションされるタンパク質として同定された(3, 4)。TXNIPは、チオレドキシン(TXN)の抗酸化機能に相互作用し、それによってこの機能を抑制することによる、細胞酸化還元状態の主要な調節物質である(5, 6)。更に、TXNIPは、代謝、心臓および炎症性疾患、更に、ガン等の様々な病状において役割を果たすことが示されている。TXNIPは、増殖の抑制および/又はアポトーシスの誘導による腫瘍抑制因子であるとも考えられている(4, 7-9)。糖尿病の発生においてもTXNIPの顕著な役割が示された。それは前糖尿病性および糖尿病患者において過剰発現されることが見出され、TXNIP発現の欠如は、β細胞機能とおよびグルコース耐性の改善と関連付けられた(8, 10)。更に、グルコース誘導TXNIP発現は、インフラマソームの活性化に関連し、炎症誘発サイトカインインターロイキン-1βの分泌を誘発し、それによってβ細胞死を促進した(11)。
【0006】
本発明者等は、TXNIPの発現が老齢者の種々のヒト細胞型において大幅に増し、それが酸化ストレスに対するストレス耐性の減少を導く、ことを見出した。重要なことに、キイロショウジョウバエにおいてTXNIPを破壊することによってチオレドキシン(TXNIP)抗酸化活性が増大し、それによって絶食と酸化ストレスに対する耐性が改善された。驚くべきことに、TXNIP欠損は、更に、健康寿命を大幅に延伸し、それと同時に、産卵能を高めた。本発明の結果は、TXNIP欠損が健康寿命を延伸し、女性(メス)の生殖能に対して好影響を与えることを示すものであって、寿命延長と生殖能は反対方向にのみ調節されるものではない、ということを再度証明するものである(2)。これらデータは、更に、老齢化中におけるTXNIP発現の増大は、初老者における、寿命、ストレス耐性、病気に影響を与える普遍的な機序を表すものであるかもしれない、ということを示唆している。
【0007】
要するに、本発明は、健康寿命と酸化ストレス耐性の制御における酸化還元調節物質TXNIPの新規な役割を記載するものである。理論的に限定されることを望むものではないが、TXNIPはTXN利用可能率と活性を低減させ、それによって細胞酸化還元ホメオスタシスを損なうものであると考えられる。酸化ストレスは、老齢化プロセス中においてダメージ蓄積と細胞劣化とに影響を与える主要な要因の一つであるので、TXNIP発現の逆調節によって細胞防御能力を改善することが可能になるであろう(1, 25)。あるいは、本発明の結果は、老齢化中におけるTXNIP発現の増大が非-酸化還元依存TXNIP機能に影響を与えうる可能性を排除するものではない。それにより、それは、年齢関連疾患及び細胞機能の劣化も影響するかもしれない。老齢化中においてTXNIPが増大するという知見は、糖尿病等の初老者における年齢関連疾患の増加と良好に結びつく。同時に、TXNIP発現増加は、リウマチ性関節炎患者においても示すことができた。老齢化中において様々なヒト組織において観察されたTXNIP発現の増大は、種々の年齢関連疾患の悪化に寄与するものと考えられる。従って、老齢化中のTXNIPアップレギュレーションに拮抗することによって健康寿命を増加されるかもしれない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1a老齢者のT細胞におけるROS生成の増大 T細胞を、若齢提供者(20〜25歳)と老齢提供者(>55歳)の血液から単離した。a:老齢提供者からのT細胞は、活性-誘導ROS産生の増大を示した。一次T細胞を、ジクロロジヒドロフルオレセイン・ジアセテート(H2DCF-DA)で染色し、FACSによって「平均蛍光強度」(“Mean Fluorescence Intensity”: MFI)を分析した(それぞれ、n=11の若齢提供者と16の高齢の提供者、p<0.001)。
図1b老齢者のT細胞におけるROS生成の増大 T細胞を、若齢提供者(20〜25歳)と老齢提供者(>55歳)の血液から単離した。b,c:老齢者のT細胞は、TCRトリガー時に、(b) qPCR (p<0.001)または(c)ウェスタンブロッティングによる測定で、未刺激細胞においてもTXNIP発現の増加を示した。
図1c老齢者のT細胞におけるROS生成の増大 T細胞を、若齢提供者(20〜25歳)と老齢提供者(>55歳)の血液から単離した。b,c:老齢者のT細胞は、TCRトリガー時に、(b) qPCR (p<0.001)または(c)ウェスタンブロッティングによる測定で、未刺激細胞においてもTXNIP発現の増加を示した。
図1d老齢者のT細胞におけるROS生成の増大 T細胞を、若齢提供者(20〜25歳)と老齢提供者(>55歳)の血液から単離した。d:qPCRによる測定で、老齢者のT細胞においてはTXN発現が僅かに減少する(それぞれn=5の若齢提供者とn=13の高齢提供者、p<0.01)。
図1e老齢者のT細胞におけるROS生成の増大 T細胞を、若齢提供者(20〜25歳)と老齢提供者(>55歳)の血液から単離した。e:TXN活性アッセイによる測定で老齢者のT細胞においてTXN活性が減少する(p<0.01)。
図2aTXNIPアップレギュレーションはROS生成と細胞死に対する感受性を増大する。a,b:TXNIPのための誘導可能発現ベクターとコントロールベクター(ctr)とを安定的に形質導入したJurkat細胞を、未処理で放置、もしくは、1μg/mlのDoxで24時間処理し、TXNIP発現を(a) qPCRまたは(b)ウェスタンブロッティングによって分析した。
図2bTXNIPアップレギュレーションはROS生成と細胞死に対する感受性を増大する。a,b:TXNIPのための誘導可能発現ベクターとコントロールベクター(ctr)とを安定的に形質導入したJurkat細胞を、未処理で放置、もしくは、1μg/mlのDoxで24時間処理し、TXNIP発現を(a) qPCRまたは(b)ウェスタンブロッティングによって分析した。
図2cTXNIPアップレギュレーションはROS生成と細胞死に対する感受性を増大する。c:TXNIP又はctr発現を、24時間のDox処理によって誘導するか、もしくは、細胞を未処理状態に放置した。その後、細胞をDCFで染色し、ROS遊離を、フローサイトメトリー分析によって分析した(p=0.001)。
図2dTXNIPアップレギュレーションはROS生成と細胞死に対する感受性を増大する。d:プレート結合α-CD3抗体による24時間の刺激時に、フローサイトメトリーによるFSC/SSC測定によって細胞死を分析した(p=0.02)。データは、少なくとも三つの独立した実験を示している。
図3aTXNIPダウンレギュレーションはROS生成を減少させストレス耐性を高める。a,b:Jurkat細胞に、TXNIPに対する誘導可能shRNA構造体又はスクランブルされたコントロール (shCtr)とを安定的に形質導入した。形質導入細胞を、1μg/mlのDoxで24時間インキュベートし、TXNIP mRNA発現を(a) qPCRまたは(b)ウェスタンブロッティングによるTXNIPタンパク質レベルによってそれぞれ分析した。
図3bTXNIPダウンレギュレーションはROS生成を減少させストレス耐性を高める。a,b:Jurkat細胞に、TXNIPに対する誘導可能shRNA構造体又はスクランブルされたコントロール (shCtr)とを安定的に形質導入した。形質導入細胞を、1μg/mlのDoxで24時間インキュベートし、TXNIP mRNA発現を(a) qPCRまたは(b)ウェスタンブロッティングによるTXNIPタンパク質レベルによってそれぞれ分析した。
図3cTXNIPダウンレギュレーションはROS生成を減少させストレス耐性を高める。c:安定的に形質導入されたJurkat細胞を未処理状態に放置するか、もしくは、Doxで24時間処理し、その後、プレート結合α-CD3抗体で1時間刺激した。その後、細胞をDCFで染色し、ROS遊離を、フローサイトメトリー分析によって分析した(p=0.006)。
図3dTXNIPダウンレギュレーションはROS生成を減少させストレス耐性を高める。d:細胞死を、プレート結合α-CD3抗体での24時間の刺激時にフローサイトメトリーによるFSC/SSC測定によって分析した(p<0.001)。
図3eTXNIPダウンレギュレーションはROS生成を減少させストレス耐性を高める。e:Jurkat細胞に、TXNIPに対する誘導可能shRNA構造体を安定的に形質導入し、その発現を24時間のDox処理(+Dox)によって誘導するか、もしくは、細胞を未処理状態に放置した。その後、細胞死を、100又は200μm H202での処理で誘導し、細胞死を、図示の時点においてフローサイトメトリーによって分析した。データは少なくとも三つの独立した実験を表している。
図4aTXNIP欠損ハエは、寿命の延長、ストレス耐性の増大、メス生殖能の増大を示しているa:一日齢のTXNIP欠損メス成体メスハエの体重の増大(平均±SEM; n=各グループにつき40匹のハエ)。 すべての生存実験に関して、少なくとも三つの独立した実験からの一つの代表的な実験が図示されている。
図4bTXNIP欠損ハエは、寿命の延長、ストレス耐性の増大、メス生殖能の増大を示しているb:TXNIP欠損ハエは、寿命の延長を示している。ctrとRNAiハエの生存曲線(p < 0.001、n=各グループにつき200匹のハエ)。 すべての生存実験に関して、少なくとも三つの独立した実験からの一つの代表的な実験が図示されている。
図4cTXNIP欠損ハエは、寿命の延長、ストレス耐性の増大、メス生殖能の増大を示しているc:TXNIP欠損ハエ、酸化ストレスの増大を示している。図示の時間、1mMのパラコートに晒されたハエの生存曲線(n=各グループにつき50匹のハエ)。 すべての生存実験に関して、少なくとも三つの独立した実験からの一つの代表的な実験が図示されている。
図4dTXNIP欠損ハエは、寿命の延長、ストレス耐性の増大、メス生殖能の増大を示しているd:TXNIP欠損ハエは、飢餓ストレス耐性の増大を示している。飢餓状態のハエの生存曲線(n=各グループにつき50匹のハエ)。 すべての生存実験に関して、少なくとも三つの独立した実験からの一つの代表的な実験が図示されている。
図4eTXNIP欠損ハエは、寿命の延長、ストレス耐性の増大、メス生殖能の増大を示しているe:TXNIP欠損ハエにおけるTXN活性の増大。全ハエタンパク質溶解物に対して、TXN活性アッセイを行った(n=各グループにつき8匹のハエ、p=0.01)。 すべての生存実験に関して、少なくとも三つの独立した実験からの一つの代表的な実験が図示されている。
図4fTXNIP欠損ハエは、寿命の延長、ストレス耐性の増大、メス生殖能の増大を示しているf:TXNIP欠損ハエは、生殖能の増大を示している。データは、一日当たり一匹のメスが生んだ卵の平均数として提示されている(±SD, p=0.01)。各ビンにつき10匹のハエを含む各グループにつき5つのビンからの卵を計数した。実験は独立的に三回繰り返された。代表的な実験が図示されている。 すべての生存実験に関して、少なくとも三つの独立した実験からの一つの代表的な実験が図示されている。
図5a種々の細胞型においてTXNIP発現が増大するa:老齢血液提供者の単球はqPCRによる測定でTXNIP mRNA発現の増加を示している(p=0.001)。
図5b種々の細胞型においてTXNIP発現が増大するb:若齢および老齢肝細胞から単離されたmRNAは老齢提供者からの肝細胞におけるTXNIP発現の増大を示している。
図5c種々の細胞型においてTXNIP発現が増大するc:アフィメトリクス(Affymetrix)遺伝子チップアレイ分析は、老齢提供者から単離された間葉系幹細胞と造血前駆細胞におけるより高いTXNIP発現を示している。
図5d種々の細胞型においてTXNIP発現が増大するd:リウマチ性関節炎患者のMACS単離CD4+T細胞は、qPCRによる分析でTXNIP発現の増大を示している(p=0.04)。
図5e種々の細胞型においてTXNIP発現が増大するe:アレスチンファミリーメンバーARRB1およびARRB2は、qPCRによる測定で若齢(n=8)および老齢血液提供者(n=7)のT細胞における類似のTXNIP mRNA発現を示している(それぞれp=0.072および0.43)。
図6a老齢ハエにおけるより高いTXNIP発現a,b:TXNIP RNAiハエは、(a) qPCR又は(b)ウェスタンブロッティングによる測定で検出不能レベルのTXNIPを発現する。全RNAをTXNIP RNAi(RNAi)およびコントロール(ctr)成体ハエの全身から抽出し、遺伝子発現をqPCRによって分析した。全ハエタンパク質溶解物を、RNAi又はctrハエから調製し、TXNIP又はβ-アクチンに対して免疫ブロットした。
図6b老齢ハエにおけるより高いTXNIP発現a,b:TXNIP RNAiハエは、(a) qPCR又は(b)ウェスタンブロッティングによる測定で検出不能レベルのTXNIPを発現する。全RNAをTXNIP RNAi(RNAi)およびコントロール(ctr)成体ハエの全身から抽出し、遺伝子発現をqPCRによって分析した。全ハエタンパク質溶解物を、RNAi又はctrハエから調製し、TXNIP又はβ-アクチンに対して免疫ブロットした。
図6c老齢ハエにおけるより高いTXNIP発現c:メス成体RNAiおよびctrハエ、それぞれの、外観と体の大きさ。
図6d老齢ハエにおけるより高いTXNIP発現d:全ハエ抽出物を、図示の年齢のメス成体ハエから調製し、それぞれ、TXNIPおよびβ-アクチンに対する抗体によって免疫ブロットした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
従って、本発明は、酸化ストレスに対する耐性の改善が有益な作用を有する状態を治療するために、(a) チオレドキシン相互作用タンパク質(TXNIP)の生物活性、又は(b) TXNIPをコードする遺伝子の発現を低減又は抑制することが可能な化合物に関する。
【0010】
一好適実施例において、本発明は、(i)女性(メス)の生殖能の改善、又は(ii)寿命、好ましくは、健康寿命の延伸、のために、(a) チオレドキシン相互作用タンパク質(TXNIP)の生物活性、又は(b) TXNIPをコードする遺伝子の発現を低減又は抑制することが可能な化合物に関する。
【0011】
ここでの使用において、「酸化ストレス」とは、活性酸素種の生成と出現と、反応中間体を容易に解毒し、又は、その結果生じるダメージを修復する生体システムの能力との間の不均衡を意味する。組織の正常な酸化還元状態における障害は、タンパク質、脂質およびDNAを含む細胞のすべての構成要素にダメージを与える過酸化物とフリーラジカルの生成を通じて、有毒作用を与えうる。いくつかの活性酸素種は、酸化還元シグナリング(redox signaling)と呼ばれる現象を通じてメッセンジャーとして作用することすら可能である。ヒトにおいて、酸化ストレスは多く疾患に関連している。具体例としては、鎌状赤血球症、アテローム性動脈硬化症、パーキンソン病、アルツハイマー病、心不全、心筋梗塞、統合失調症、双極性障害、脆弱X症候群、慢性疲労症候群がある。短期の酸化ストレスは、ミトホルミーシス(mitohormesis)と呼ばれるプロセスの誘導による老齢化の防止においても重要であるかもしれない。
【0012】
生物活性の低減又は抑制は、TXNIPに対する化合物の直接的相互作用又は結合、あるいは、たとえば、TXNIPの生物活性に関連する化合物との相互作用による等の、間接的相互作用によって行うことができる。生物活性の低減又は抑制は、又、改変された、たとえば、不活性形態の、好ましくは、過剰な、TXNIPの使用によっても達成可能である。
【0013】
治癒的効果を得る目的で、TXNIPの生物活性、あるいは、TXNIPをコードする遺伝子の発現を低減又は抑制する適当な化合物の具体例は以下を含む、
(a) プラスミド、ベクター又は天然/合成/変異ウイルス、種々の改変型 (たとえば、PTO, LNA, 2’F-ANA、タンパク質-ヌクレオチド複合体、shRNA(RNA干渉を通じて遺伝子発現をサイレンシングするために使用可能なタイトなヘアピンカーブを作り出すRNAの配列である「小ヘアピンRNA」または「ショートヘアビンRNA」)のオリゴヌクレオチド、RNAi, siRNA又はmikromiRNA、メチルメトキシ-、ホスホロアミダイト、PNA、モリフォリノ、ホスホラアミダイト、シクロヘキセン(CeNA)、gap-meres、リボザイム、アプタマ、CpG-オリゴ、DNA-ザイム、リボスイッチ、又は、脂質又は脂質含有分子、
(b) ペプチド、すべてのタイプのリンカーを含むペプチド複合体、
(c) 小分子、
(d) 抗体およびそれらの誘導体、特に、キメラ、Fabフラグメント、Fcフラグメント、
(e)担体、リポソーム、ナノ粒子、複合体、又は、上記構造物を含むその他すべてのデリバリシステム、又は、
(f)酸化剤又はスルフヒドリル(SH基)変性剤。
【0014】
本発明の目的に適したその他の化合物および、そのような化合物の同定/選択方法について以下により詳細に説明する。
【0015】
好ましくは、医薬組成物において、上述したもののような化合物は、薬用的に許容可能な担体と組み合わされる。「薬用的に許容可能な」とは、活性成分の有効性に干渉せず、それが投与される宿主に対して毒性を持たない、すべての担体を含むことを意味する。適当な薬用担体の具体例は周知であって、リン酸緩衝食塩水、水、油/水エマルジョン等のエマルジョン、種々の湿潤剤、無菌液等を含む。そのような担体は、従来の方法によって作製することができ、活性化合物は対象体に対して有効投与量で投与することができる。
【0016】
「有効投与量」とは、所望の処置に影響を与えるのに十分な量の活性成分を意味する。処置のために有用な「有効投与量」は、当業者に知られている方法を利用して決定することができる(たとえば、(12)を参照)。
【0017】
適切な組成物の投与は、様々な方法、たとえば、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、局所又は皮内投与によって行うことができる。投与経路は、もちろん、治療の種類、前記薬用組成物に含まれる化合物の種類に依存する。投与計画は、担当医およびその他の臨床要素によって決定されるであろう。医学技術において周知であるように、ある一人の患者のための投与量は、患者のサイズ、体表面積、年齢、性別、投与される特定の化合物、投与時間と経路、治療の種類、一般的健康状態および、同時に投与される他の薬剤を含む、多くの要因に依存する。
【0018】
当業者は、TXNIPのアミノ酸配列、このタンパク質をコードする遺伝子のヌクレオチド配列に関する知識に基づいて、本発明の処置のために有用な化合物を容易に同定又は作り出すことができる。各配列は、NCBIデータベース(NCBI参照配列: NP_006463.3)に見られる。
【0019】
本発明の別の好適実施例において、TXNIPをコードする遺伝子の発現を低減又は抑制するために有用な前記化合物は、TXNIPに対して特異的なアンチセンスオリゴヌクレオチド、shRNA又はsiRNAである。
【0020】
適切なアンチセンスオリゴヌクレオチドの作成は、TXNIPコード遺伝子内における、アンチセンス相互作用が起こって、その所望の作用、たとえば、前記タンパク質の発現の抑制が生じる、単数又は複数の部位、の同定を含む。好適な遺伝子内部位は、(a)前記遺伝子のオープンリーディングフレーム(ORF)の翻訳開始又は終結コドンを含む領域、又は(b) 「ループ」又は「バルジ(bulge)」である、即ち、二次構造の一部ではない、mRNAの領域である。もしも単数又は複数の標的部位が同定されたならば、その標的に対して十分に相補的である、即ち、十分良好に、かつ、十分な特異性に、ハイブリダイズして所望の作用を提供するオリゴヌクレオチドが選択される。本発明の内容において、「ハイブリダイゼーション」とは、相補的ヌクレオチド又はヌクレオチド塩基間の、ワトソン-クリック、フーグスティーン又は逆フーグスティーン水素結合することができる、水素結合を意味する。ここでの使用において「相補的」とは、二つのヌクレオチド間の正確な対合の能力を意味する。例えば、もしもオリゴヌクレオチドのある位置のヌクレオチドが、DNA又はRNA分子の同じ位置のヌクレオチドとの水素結合が可能であるならば、そのオリゴヌクレオチドとDNA又はRNAとは、その位置において互いに相補的であるとみなされる。前記オリゴヌクレオチドとDNA又はRNAとは、各分子の十分な数の対応する位置が、互いに水素結合を形成可能なヌクレオチドによって占有されている場合に、互いに対して相補的である。従って、「特異的にハイブリダイズ可能」と「相補的」は、オリゴヌクレオチドとDNA又はRNA標的との間で安定的かつ特異的な結合が生じる十分な程度の相補的又は正確な対合を示すのに使用される用語である。当該技術においては、アンチセンス化合物の配列は、特異的にハイブリダイズ可能なその標的核酸のそれに対して必ずしも100%相補的である必要はない、と理解されている。アンチセンス化合物は、当該化合物の標的DNA又はRNA化合物に対する結合が当該標的DNA又はRNA分子の正常な機能に干渉して、有用性の損失を引き起こし、特異的結合が望ましい状態、即ち、治療処置の場合において前記アンチセンス化合物の非標的配列に対する非特異的結合を回避するために十分な程度の相補性が存在する場合に、特異的にハイブリダイズ可能である。
【0021】
当業者は、TXNIPに対する公知のDNA配列をベースにして、本発明によるアンチセンス化合物、shRNAおよびsiRNAを生成することができる。
【0022】
「オリゴヌクレオチド」とは、リボ核酸(RNA)又はデオキシリボ核酸(DNA)のオリゴマー又はポリマー、又はそれらの模倣化合物(mimetics)のを意味する。この用語は、自然発生ヌクレオ塩基、糖、および共有結合性ヌクレオシド間(骨格(backbone))結合、更に、類似の機能を非自然発生部分を有するオリゴヌクレオチドから成るオリゴヌクレオチドを含む。そのよう改変又は置換オリゴヌクレオチドは、たとえば、高い細胞取り込み、核酸標的に対する高い親和性、ヌクレアーゼの存在下における高い安定性等の望ましい特性により、天然型よりも好ましい。アンチセンスオリゴヌクレオチドが、前記アンチセンス化合物の好適な形態ではあるが、本発明は、後述するもののような、オリゴマー模倣化合物を、非限定的に含む、その他のオリゴマーアンチセンス化合物も含む。本発明による前記アンチセンス化合物は、約8〜約50の核酸塩基(すなわち、約8〜約50のリンクされたヌクレオシド)を含む。特に好適なアンチセンス化合物は、アンチセンスオリゴヌクレオチドであり、更に好ましくは、約15〜約25核酸塩基を含む、アンチセンスオリゴヌクレオチドである。アンチセンス化合物は、リボザイム、外部ガイド配列(external guide sequence: EGS)、オリゴヌクレオチド(オリゴエンザイム)、および、前記標的核酸にハイブリダイズしてその発現を抑制する、その他の短い触媒RNA又は触媒オリゴヌクレオチドを含む。
【0023】
あるいは、本発明の前記化合物は、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドが、たとえば、哺乳動物宿主中において転写することを可能にするベクターである。好ましくは、そのようなベクターは、遺伝子療法のために有用なベクターである。遺伝子療法のために有用な好適なベクターは、ウイルスベクター、たとえば、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニア、又は、より好ましくは、レトロウイルス等のRNAウイルスである。更に好ましくは、前記レトロウイルスベクターは、マウス又はトリレトロウイルスの派生物である。本発明に使用可能なそのようなレトロウイルスベクターの具体例は、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMuLV)、ハーベイマウス肉腫ウイルス(HaMuSV)、マウス乳ガンウイルス(MuMTV)およびラウス肉腫ウイルス(RSV)である。最も好ましくは、マウスベクターと比較してより広い宿主範囲を提供するテナガザル白血病ウイルス(GaLV)等の非ヒト霊長類白血病ウイルス(GaLV)が使用される。組み換えレトロウイルスは欠陥を有するので、感染性粒子を作り出すためには補助が必要である。そのような補助は、たとえば、前記LTR内の調節配列の制御下で前記レトロウイルスの構造遺伝子の全部をコードするプラスミドを含むヘルパー細胞系を使用することによって提供することができる。適切なヘルパー細胞系は当業者に周知である。前記ベクターは、更に、形質転換細胞を同定可能とするべく、選択可能なマーカーをコードする遺伝子を含むことができる。更に、前記レトロウイルスベクターは、それらが標的特異性となるように改変可能である。これは、たとえば、糖、糖脂質、又は、タンパク質、好ましくは、抗体をコードするポリヌクレオチドを挿入することによって達成可能である。標的特異性ベクターを作りための方法は当業者に知られている。イン・ヴィトロ又はイン・ヴィヴォ遺伝子療法のためのその他の適当なベクターと方法は、文献に記載されており、当業者に知られている。例えば、WO94/29469又はWO97/00957を参照。
【0024】
発現が特定の標的臓器において生じる必要がある場合、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの転写のための前記DNA配列を、組織特異性プロモータに結合して、遺伝子療法に使用することができる。そのようなプロモータは、当業者に周知である(たとえば、(26-29))。
【0025】
オリゴヌクレオチド構造内において、リン酸基は、一般に、そのオリゴヌクレオチドのヌクレオシド間骨格を形成するものとして言及される。RNAとDNAの正常な連結又は骨格は、3’〜5’ホスホジエステル結合である。本発明において有用な好適アンチセンス化合物の具体例は、改変された骨格又は非天然ヌクレオシド間結合を含有するオリゴヌクレオチドを含む。改変骨格を有するオリゴヌクレオチドは、骨格にリン酸原子を保持しているものと、骨格にリン酸原子を保持していないものとが含まれる。安定性の増大をもたらすことができる改変オリゴヌクレオチド骨格は当業者に知られており、好ましくは、そのような改変はホスホロチオエート結合である。
【0026】
好適なオリゴヌクレオチド模倣化合物は、極めて優れたハイブリダイゼーション特性を有することが証明されているオリゴヌクレオチド模倣化合物であって、ペプチド核酸(PNA)と呼ばれる。PNA化合物において、オリゴヌクレオチドの糖骨格は、アミド含有骨格、特に、アミノエチルグリシン骨格によって置き換えられる。前記核酸塩基は保持され、前記骨格のアミド部分のアザ窒素原子に、直接又は間接的に結合されている(たとえば、(30)を参照)。
【0027】
改変オリゴヌクレオチドは、更に、単数又は複数の置換又は改変糖部分( moiety)も含むことができる。好適なオリゴヌクレオチドは、2’位置に下記の一つを含む、 OH、F、0-、S-、又はN-アルキル、0-、S-, 又はN-アルケニル、0-、S-又はN-アルキニル、又は0-アルキル-O-アルキル、ここで、アルキル、アルケニルおよびアルキニルは、置換又は未置換C1〜C10アルキル、又はC2〜C10アルケニル、およびアルキニルとすることができる。特に好適な改変糖部分は2’-O-メトキシエチル糖部分である。
【0028】
本発明のオリゴヌクレオチドは、更に、核酸塩基改変又は置換を含むことができる。改変核酸塩基は、5-メチルシトシン(5-me-C)、5-ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン、アデニンとグアニンの6-メチルおよびその他のアルキル誘導体、アデニンとグアニンの2-プロピル及びその他のアルキル誘導体、2-チオウラシル、2-チオチミン、および2-チオシトシン等を含むことができ、ここで、5-メチルシトシン置換が、これらの改変は核酸二本鎖安定性を増加させることが示されていることから好適である。
【0029】
本発明のオリゴヌクレオチドの別の改変は、当該オリゴヌクレオチドの活性、細胞分布、又は細胞取り込みを高める、単数又は複数の成分(moiety)又は抱合体を前記オリゴヌクレオチドに化学的に結合させることに関する。そのような部分は、脂質成分、例えばコレステロール成分、コール酸、チオエーテル、チオコレステロール、脂肪族鎖、たとえば、ドデカンジオール又はウンデシル残基、リン脂質、ポリアミンやポリエチレングリコール鎖、又はアダマンタン酢酸、パルミチル成分、又はオクタデシルアミンやヘキシルアミノ-カルボニル-オキシコレステロール成分を含む。
【0030】
本発明は、更に、キメラ化合物であるアンチセンス化合物も含む。本発明の内容において「キメラ」アンチセンス化合物や「キメラ」は、そのそれぞれが、少なくとも1つのモノマー単位から成る、即ち、オリゴヌクレオチド化合物の場合は、ヌクレオチドから成る二つ以上の化学的に異なる領域を含むアンチセンス化合物、特に、オリゴヌクレオチドである。これらのオリゴヌクレオチドは、通常、そのオリゴヌクレオチドが、当該オリゴヌクレオチドに対して、ヌクレアーゼ分解に対するオリゴヌクレオチド耐性の増加、細胞取り込みの増加および/又は、標的核酸に対する結合親和性の増加を与えるように改変されている少なくとも1つの領域を含む。前記オリゴヌクレオチドの追加領域は、RNA:DNA又はRNA:RNAハイブリッドを切断することが可能な酵素のための基質として作用することができる。例えば、RNase Hは、RNA:DNA複合体のRNA鎖を切断する細胞エンドヌクレアーゼである。従って、RNase Hの活性化によって、RNA標的の切断が起こり、それによって、遺伝子発現のオリゴヌクレオチド抑制の効率を大幅に高める。その結果、同じ標的領域に対してハイブリダイズするホスホロチオエートデオキシオリゴヌクレオチドと比較して、キメラオリゴヌクレオチドが使用された場合、多くの場合、より短いオリゴヌクレオチドでも同様に結果を得ることができる。本発明のキメラアンチセンス化合物は、二つ以上のオリゴヌクレオチド、改変オリゴヌクレオチド、オリゴネクレオシド、上述したようなオリゴヌクレオチド模倣化合物(mimetics)の複合構造体として形成することができる。そのような化合物も、当該技術においては、ハイブリッド又はgapmersと呼ばれている。
【0031】
本発明の更に別の好適実施例において、治療法に使用される前記化合物は、TXNIPの生物活性を低減又は抑制する化合物である。
【0032】
TXNIPの生物活性を低減又は抑制することが可能な化合物の具体例は、TXNIPに対する(中和)抗体、又は実質的に同じ結合特性を有するそのフラグメントである。ここで「抗体」という用語は、好ましくは、異なるエピトープ特異性を有するプールされたモノクローナル抗体、並びに、様々なモノクローナル抗体調合物からなる抗体に関する。モノクローナル抗体は、当業者に周知の方法によって、たとえば、TXNIPのフラグメントを含む抗原から作られる(たとえば(31)を参照)。ここでの使用において、用語「抗体」(Ab)又は「モノクローナル抗体」(Mab)は、タンパク質に特異的に結合することができる、無傷(intact)分子と、抗体フラグメント(たとえば、FabやF(ab’)2フラグメント)を含むことを意味する。FabおよびF(ab’)2フラグメントは、無傷(intact)抗体のFcフラグメントが無く、循環からより急速に取り除かれ(clear)、無傷(intact)抗体よりも非特異的組織結合が少ない可能性がある(32)。従って、これらのフラグメント、および、FAB又はその他の免疫グロブリン発現ライブラリーの産生物が好適である。更に、本発明の目的のために有用な抗体は、キメラ、一本鎖、およびヒト化抗体を含む。
【0033】
あるいは、本発明の目的のための好ましい化合物は、不活性形態のTXNIP又は、上述したアプローチ/ベクターによって導入することが可能な不活性形態のTXNIPをコードする核酸である。そのような不活性形態は、突然変異誘発の周知の方法によって作り出すことができる。そのような化合物は、特に過剰に適用された時にそれらの機能的活性対応物に置き換わることによって、人体中に治癒効果を与えることができる。潜在的に不活性形態のTXNIPの分析は、TXNIPの生物活性を分析することによって行うことができる。
【0034】
本発明は、更に、TXNIPの生物活性および/又はその発現を低減又は抑制する化合物を同定する方法にも関し、この方法は以下の工程を有する、
(a)候補化合物を、TXNIP又はその遺伝子を含むテストシステムとインキュベートする、そして、
(b)TXNIPの生物活性を分析する、
ここで、TXNIPの生物活性の抑制又は損失、特に、前記テスト化合物の不在のテストシステムとの比較における抑制又は損失は、前記所望特性を有する候補化合物の存在を示す。
【0035】
そのような候補分子の具体例は、抗体、オリゴヌクレオチド、タンパク質、又は、小分子を含む。そのような分子は、公知技術を使用して合理的に構築可能である。
【0036】
好ましくは、スクリーニングに使用される前記テストシステムは、類似の化学的および/又は物理的特性の物質を含み、最も好適には、前記物質はほとんど同一である。本発明の方法によってテストおよび同定可能な化合物は、発現ライブラリー、たとえば、cDNA発現ライブラリー、ペプチド、タンパク質、核酸、抗体、低分子有機化合物、リガンド、ホルモン、ペプチド模倣化合物(peptidomimetics)、PNA等とすることができる。
【0037】
WO98/25146は、所望の特性、特に、ポリペプチド又はその細胞受容体に、作動(agonize)、結合、拮抗(antagonize)する能力を有する化合物に関して、複合体のライブラリーをスクリーニングする方法を記載している。そのようなライブラリーにおける複合体は、テスト対象化合物と、前記化合物の合成の少なくとも一つの工程において記録するタグ、そして、レポーター分子による改変を受けるテザー(tether)を有する。前記テザー(tether)の改変は、複合体が所望の特性を有していることを示すために使用される。前記タグは、そのような化合物の合成における少なくとも1つの工程を明らかにするために解読(decode)可能である。TXNIP、又はそのような分子をコードする核酸分子と相互作用する化合物を同定するためのその他の方法として、たとえば、ファージディスプレイシステムでのイン・ヴィトロスクリーニング、更に、フィルタ結合アッセイ、又は相互作用の「リアルタイム」測定がある。
【0038】
例えば、TXIPに対する基質又はリガンドとして作用することが可能な、低分子有機化合物の模倣化合物を設計、合成および分析することが可能であることも当業者には周知である。
【0039】
これらの方法のすべてを、本発明によって、TXNIPの生物活性を低減又は抑制する化合物を同定するために使用することが可能である。
【0040】
TXNIPをコードする遺伝子は、インヒビターのスクリーニング用の標的としても使用することができる。インヒビターは、たとえば、TXNIPをコードする遺伝子のmRNAに結合し、それによって、当該mRNAの元来の構造を不安定化し、転写および/又は翻訳を阻害するタンパク質を含むことができる。更に、文献には、細胞内において化合物がそれに結合して細胞成長の遅延又は細胞死をもたらす定義された又は未定義の標的RNA分子の構造を模倣するRNAフラグメント、等の核酸分子を同定するための方法が記載されている。例えば、WO98/18947とそこに引用されている文献を参照。これらの核酸分子は、薬用対象の未知の化合物の同定、および、ある状態を治療するのに使用される未知のRNA標的の同定のために使用可能である。これらの方法および組成物は、TXNIPの発現レベルを低減するのに有用な化合物を同定するために使用することができる。
【0041】
更に、TXNIPの推定調節因子をコードする、および/又は、TXNIPの上流又は下流側でその効果を発揮する遺伝子を、たとえば、当該技術において知られている遺伝子標的化ベクターを使用する挿入突然変異技術を使用して同定することができる。
【0042】
前記化合物は、又、公知のインヒビターの機能的誘導体又はアナログであってもよい。そのように有用な化合物は、TXNIP、又は、それをコードする遺伝子の調節配列に結合するトランス作用因子であってもよい。トランス作用因子の同定は、当該技術における標準方法を使用して行うことができる。タンパク質が当該タンパク質自身又は、調節配列に結合するか否かを決定するために、標準ネイティブゲルシフト分析を行うことができる。前記タンパク質又は調節配列に結合するトランス作用因子を同定するために、前記タンパク質又は調節配列を、標準タンパク質精製法における親和性試薬として、あるいは、発現ライブラリーのスクリーニングのためのプローブとして使用することができる。TXNIPと相互作用するポリペプチドをコードする核酸分子の同定も、たとえば、(33)に記載されているように、いわゆる酵母「ツーハイブリッドシステム(two-hybridsystem)」を使用することによって、達成するこができる。このシステムにおいて、TXNIPはGAL4転写因子のDNA結合ドメインに連結される。この融合ポリペプチドを発現し、GAL転写因子によって認識される、適当なプロモータによって駆動されるlacZレポーター基を含む酵母株は、植物タンパク質、又は、活性化ドメインに融合されるそのペプチドを発現するcDNAのライブラリーと形質転換される。従って、もしも前記cDNAの一つによってコードされるペプチドが、TXNIPのペプチドを含む融合ペプチドと相互作用できるならば、前記複合体は、前記レポーター遺伝子の発現を指図できる。このようにして、TXNIPとTXNIPコード遺伝子はTXNIPと相互作用するペプチドとタンパク質とを同定するために使用することができる。当業者には、そのシステムおよびそれに類似のシステムを、インヒビターの同定のために更に利用することが可能であることが明らかである。
【実施例】
【0043】
下記の例によって本発明をより詳細に説明する。
【0044】
例1.材料と方法
(A) 統計学的分析
結果は、特に銘記されない限り、平均±SDとしてあらわされている。両側独立スチューデントt-検定を使用して統計学的比較を行った。2サンプルコルモゴロフ-スミルノフテストを使用して、生存曲線の有意性を決定した。統計的有意差異を、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001として定義した。
【0045】
(B)化学物質
ジクロロヒドロフルオレシン二酢酸-(H2DCF-DA)を、Invitrogen (Carlsbad, CA, USA)から入手した。イオノマイシンは、Merk (Darmstadt, ドイツ)から購入した。その他すべての化学物質は、Sigma-Aldrich (ミュンヘン、ドイツ)によって供給された。蛍光色素共役抗体はBD Biosciences (ハイデルベルグ、ドイツ)から購入した。ヒトCD3に対するモノクローナル抗体(OKT3)は(13)に記載のように作成された。
【0046】
(C)qPCR
全RNAを、RNeasy Mini Kit (Qiagen Hilden、ドイツ)又は、TRIzol試薬(Invitrogen)を製造業者の指示に従って使用して、一次T-細胞、Jurkat T細胞又は全ハエ溶解物から単離した。RNAを逆転写し、以前に報告されている(15)ようにしてqPCRを行った。正規化のためにコントロール遺伝子として、ハウスキーピング遺伝子GAPDHを使用した。プライマー配列は下記の通りである。GAPDH、 5’-GCA AAT TCC ATG GCA CCG T-3’および5’-TCG CCC CAC TTG ATT TTG G-3’、TXNIP、5’-TCA TGG TGA TGT TCA AGA AGA TC-3’および5’-ACT TCA CAC CTC CAC TAT C-3’、TXN、5’-GAC GCT GCA GGT GAT AAA C-3’および5’-CTG ACA GTC ATC CAC ATC TAC-3’、ARRB1、5’-AGT GGC CGT GGA ACT GCC CTT CA-3’および5’-GGA ACT TCC CGA TGC GGG GGT TC-3’、ARRB2、5’-GGG CAA GCG GGA CTT CGT AGA-3’および5’-TGC GGT CCT TCA GGT AGT CAG GG-3’。
【0047】
(D) 細胞培養条件と処理
Jurkat J16-145細胞を、ヒトリンパ芽球細胞系Jurkat J16(13)から誘導した。Jurkat細胞を、10% FCSを含有するIMDM中で培養した。新しく単離された末梢ヒトT細胞を、10% FCSを含有するRPMI 1640(+1-グルタミン)中で2 x 106細胞/mlの濃度で培養した。培養物を、加湿された5%CO2インキュベータ中で37℃で保存した。一晩静置しておいた一次細胞に対して分析を行った。
【0048】
(E) 血液提供者
T細胞を、20〜25歳(11名の若齢提供者)と55歳以上(16名の老齢提供者)の健常なヒト提供者の血液から単離した。研究への関与の前に、すべての被験者からインフォームドコンセントを得た。研究は、ドイツガン研究センター(German Cancer Research Center)の倫理的ガイドラインとヘルシンキ宣言に従って行われ、それは、Ruprecht-Karls大学、ハイデルベルグ、ドイツの倫理委員会によって認可された。
【0049】
(F) ヒト末梢T細胞の単離
一次ヒトT細胞を、(13)に記載されているように精製した。調製されたT細胞の純度を、PE-共役抗-CD3抗体による染色と、その後の、FACS分析とによって確認した。
【0050】
(G) 細胞死の分析
細胞死を、生細胞との比較による前方-側方拡散プロファイル(forward-to-side scatter profile)における減少として分析し、前述(13)のように、「特異的細胞死」に再計算した。
【0051】
(H) ROS生成の測定
細胞を、H2DCF-DA(5μM)で10分間、染色した。次に、細胞を分け、プレート結合抗-CD3抗体(30μg/ml)で1時間刺激するか、又は未処理状態に放置した。細胞を氷冷PBSで二回洗浄し、ROS生成を、FACS分析によって測定した。ROS生成は、以前に報告されている(14)ようにして計算した平均蛍光強度(MFI)の増加として定量化された。
【0052】
(I) ウェスタンブロッティング
ウェスタンブロッティング分析のために、全細胞抽出物を、細胞又はハエから、氷冷RIPAリーシス緩衝液(50mM Tris-HCl、pH 8.0、120 mM NaCl, 1% NP-40、0.5% Na-デスオキシコール酸(Na-Desoxycholat)、0.1% SDS、2 mM EDTA、25 mM NaF、0.2 mM NaVO4、1 mM、DTT、Rocheのコンプリートプロテアーゼインヒビターカクテル)中での30分間の溶解によって作製した。タンパク質をSDS-PAGEによって分離し、タンパク質をニトロセルロース膜(Invitrogen Carlsbad, CA, USA)上にブロッティングし、その後、5%ミルク中でブロッキングした。下記の抗体を使用した。抗-TXNIP (1: 10000, T. Dickによって提供された)、抗-アクチン(1: 8000、Acris Herford、ドイツ)、抗-カタラーゼ(1: 10000、 Sigma-Aldrich, ミュンヘン、ドイツ)、および抗-TXN (1: 10000) (T.Dick博士、ドイツがん研究センター、ハイデルベルク、ドイツからの寄付)。
【0053】
(J) Jurkat T細胞を過剰発現するデオキシサイクリン(Dox)-誘導TXNIPの生成
ヒトTXNIPcDNAを、プライマ対 5’-CCGGAATTCATGGTGATGTTCAAGAAGATCAAG-3’と5’-CGGGGTACCTCACTGCACATTGTTGTTGAGG-3’で、TXNIP発現ベクターIOH42128-pEFDEST51(Open Biosystemsハイデルベルグ、ドイツ)から増幅し、pRev-TRE-Tight (Clonetech, USA)にクローニングした。レトロウイルスを、pRev-TRE-TXNIPとのPhoenix細胞のトランスフェクションによって生成した。前記Dox-依存トランスアクチベータを保持するJurakat M2細胞を感染させ、100μg/mlハイグロマイシンを添加した培地中で、7日間、培養した。その結果得られた細胞を、二回サブクローニングし、ウェスタンブロッティングによってDox-誘導TXNIP発現に関してスクリーニングした。
【0054】
(K) レンチウイルス安定TXNIPノックダウン
レンチウイルス粒子の作成のために、予め25μMのクロロキンで1時間、前処理しておいたHEK293T細胞を、TXNIPに対するshRNAを含有するベクター(Open Biosystems, ハイデルベルグ)とgag、pol、envおよびVSV-G(シュードタイピング(psuedotyping)用)のためのプラスミド混合物とトランスフェクションした。トランスフェクションの8時間後、培地を、パッケージング細胞から取り換えた。二日後、上清を、0.45μMフィルタに通した。これは、ポリブレン(Polybrene)(8μg/ml)が添加されている。1x 105の標的細胞を、1mlのウイルス上清とのspin occulationによって感染させた。安定的に形質導入されたJurkat細胞を、ピューロマイシン耐性(1μg/mlピューロマイシン)によって選択し、Dox依存発現をウェスタンブロッティングによってチェックした。
【0055】
(L) TXN活性アッセイ
TXN活性の分析を、一次T細胞と全ハエのタンパク質溶解物中で分析した。
【0056】
(M) ショウジョウバエストックと維持
ハエにおけるRNAi-媒介TXNIPノックダウン、w1118に関して、P(GD4976)v15203メスハエをウイーンショウジョウバエRNAiセンター(Vienna Drosophila RNAi Center: VDRC、ウイーン、オーストリア)から入手し、B.A. Edgarによって提供されたtubGa 14オスと交配させた。ハエは、標準培地では25℃で生育した。
【0057】
(N) ショウジョウバエの生殖能分析
産卵行動の分析のために、10匹の新たに孵化したメス(孵化の3日後)と5匹のオス(孵化の3日後)とをバイアルに共に入れ、グレープジュースを含む寒天プレート上に24時間置いた。各メスによって寒天プレート上に産卵された卵を計数した。
【0058】
(O) ショウジョウバエの寿命研究
新たに孵化したハエを、標準的なエサを含むバイアル中(各バイアルにつき10匹のハエ、オスとメスとを分離)で25℃で維持した。2〜3日毎に、ハエを新しいバイアルに移し、死んだハエを記録した。
【0059】
例2.老齢者のT細胞におけるROS生成の増加
以前、酸化信号がT細胞媒介免疫応答の調節において重要な役割を果たすことが示された(13-15)。ROS生成の年齢関連変化を分析するために、老齢(>55歳)および若齢(20-25歳)の個人からの一次T細胞を、単離し、これら二つのグループ間で、活性-誘導ROS生成を比較した。驚くべきことに、T細胞受容体(TCR)トリガー時に、老齢提供者のT細胞中にROS生成の増加が観察された(図1a)。老齢者におけるROSを調節する分子を求めて、mRNAとタンパク質レベルとの両方における老齢者のT細胞でのネガティブ酸化還元調節因子TXNIPの発現の大幅な増大が同定された(図1b,c)。若齢提供者のT細胞におけるTCRトリガー時に観察された完全な活性-誘導ダウンレギュレーションは、老齢者のT細胞においては、効率的ではなかった。その結果、段レギュレーションは、グルコース取り込みと、関連する細胞成長とのために必要であることが示されている(16)ことから、残りのTXNIP発現は、適切な細胞の活性化を妨げる可能性がある。連続調査によって、老齢者の、いくつかの一次細胞タイプ、即ち、単球、肝細胞と、更に、間葉又は造血幹細胞とにおける発現を増加が示された(図5a、b、c)。これは、老齢者の皮膚におけるTXNIP発現の増大を示す従来の報告と一致している(17)。更に、免疫系が加速老齢化表現型に関連するリウマチ性関節炎患者(図5d)のCD4+T細胞においてもTXNIPレベルの増大が見られた(18)。興味深いことに、主要なTXNIP相互作用パートナー、チオレドキシン(TXN)の分析は、老齢者のT細胞におけるTXN発現のダウンレギュレーションを示した(図1c、d)。従って、若齢提供者と比較して老齢者から単離されたT細胞におけるTXN活性の大幅な低下が観察された(図1e)。これらのデータは、高いTXNIP発現が、老齢者のT細胞のTXP抗酸化能力の減少に関連していることを示している。
【0060】
例3.TXNIPアップレギュレーションはROS生成と細胞死への感受性を高める
T細胞におけるTXNIPの役割を調べるために、ヒトモデルT細胞系Jurkatにおける誘発TXNIP過剰発現システムを使用した。TXNIP発現を、1μg/mlのドキシサイクリン(Dox)の24時間、約2倍、の使用によって誘導した(図2a、b)。老齢者のT細胞において得られた結果と一致して、誘導されたTXNIP過剰発現によって、1時間のCDトリガー時に活性-誘導ROS遊離の大幅な増大が起こった(図2c)。正常T細胞ホメオスタシスの維持のためには、免疫応答後の抗原特異性T細胞の除去がきわめて重要である。これは、TCRの再刺激時にアポトーシス経路を介して活性-誘導細胞死(AICD)をトリガーすることによって達成される(19, 20)。ここで、TCRトリガーされた酸化信号がAICDの誘導を調節において重要な役割を果たす(13)。従って、AICDに対するTXNIP発現の増大を調べた。TXNIP誘導Jurkat細胞を、プレート結合α-CD3抗体で24時間刺激してAICDを誘導した。図2dに図示されているように、TXNIP過剰発現によってAICDの大幅な増加が生じた。これらを総合すると、これらの結果は、TXNIP発現の増大がJurkat T細胞における活性-誘導ROS遊離と細胞死とに影響する、ことを示している。
【0061】
例4.TXNIPダウンレギュレーションはROS生成を減少させストレス耐性を高める
TXNIPダウンレギュレーションの作用を調べるために、誘導shRNAシステムを使用した。Doxとの24時間のインキュベーションによって、TXNIP shRNAの発現が誘導され、その結果、TXNIP mRNAとタンパク質レベルのダウンレギュレーションがもたらされた(図3a、b)。Jurkat T細胞におけるTXNIP発現の喪失によって、コントロール細胞又は非誘導細胞との比較において、CD3に対するアゴニスト抗体でのトリガー時に、活性-誘導ROS生成の速度が低下した(図3c)。若齢提供者における低いTXNIPレベルは低い活性-誘導ROS生成に相関したので、これらの結果は、一次T細胞に関して観察されたデータに対応している。次に、AICD誘導におけるTXNIPダウンレギュレーションの作用を調べた。Dox処理によるTXNIPに対する特異的shRNAの誘導後、Jurkat細胞を、プレート結合α-CD3抗体で24時間刺激し、細胞死を分析した。コントロール形質転換又は非形質転換細胞と比較して、特異的TXNIPダウンレギュレーションによって、AICDにおける大幅な減少がもたらされ(図3d)、TXNIP発現が免疫細胞の細胞死調節に関連していることが更に示された。これらの知見を更に裏付けるために、特異的TXNIPダウンレギュレーション後の種々の刺激による細胞死誘導を、フローサイトメトリーを使用して分析した。若齢 対 老齢提供者の一次T細胞で得られた結果に一致して(図1f)、TXNIPの特異的ダウンレギュレーションによって、H2O2処置による酸化ストレス誘導時の生存が改善された(図3e)。しかしながら、スタウロスポリン等の他の細胞ストレッサや、アゴニスト抗体によるCD95トリガーによる細胞死誘導は、TXNIPがダウンレギュレーションされようがされまいが細胞死レベルの変化を示さず(データ図示なし)、CD95L転写の上流の近位側ROS依存シグナリング経路はTXNIPによって影響されることを示している。総合すると、これらのデータは、Jurkat T細胞のTXNIPノックダウンは酸化還元均衡に影響を与えただけでなく、酸化ストレス時の細胞死誘導に対する耐性を増大させたことを示唆している。
【0062】
例5.TXNIP欠損ハエは、寿命延伸、ストレス耐性の増大、メス繁殖性の増加を示す
TXNIPが、その発現が老齢化と相関するマーカーであるのか、又は、TXNIPは寿命の決定的な調節因子であるのかを分析するために、TXNIPの役割をイン・ヴィトロで調べた。ショウジョウバエゲノムは、約47%の全体的類似性を有するヒトTXNIPのホモログを含む。ショウジョウバエにおいて、それは神経系の発達において役割を有することが報告されている(21、22)。TXNIP欠損ハエを、UAS-TXNIP RNAiハエをtubulin-GAL4ドライバーと交配して、TXNIPの遍在的ダウンレギュレーションを作り出すことによって調製した。TXNIPに対するRNAiはqPCRとウェスタンブロッティングによる測定で、TXNIP発現の顕著な低減をもたらした (図6a、b)。前記ハエの顕微鏡検査は、TXNIP欠損ハエはより大きいことが示された(図6c)。これは、コントロールハエに比べてTXNIP欠損のより大きな体重により、もたらされた(図6a)。われわれは、種々のヒト細胞タイプにおけるTXNIP発現のアップレギュレーションを観察していたので、老齢のコントロールハエが若齢のハエと比較して高いTXNIPレベルを示すかどうかも問うた。事実、コントロールのハエからの全ハエタンパク質抽出物の免疫ブロットは、生後一日の若齢ハエと比較して、47日齢のハエにおいてはTXNIPタンパク質の顕著な増加を示した。TXNIP欠損ハエは、タンパク質発現が終生欠如し、高効率のTXNIPノックダウンを確認した(図6d)。次に、TXNIPは、TXNIP欠損Jurkat T細胞において観察されたものに類似して、種々のストレス誘導物に対する耐性において重要な役割を果たすものであるか否かを調べた。従って、TXNIP欠損ハエの、飢餓状態、パラコート、酸化ストレスの誘導体での処理における生存についてテストした。ハエを、摂食妨害分析用の寒天のみのバイアル、又は、酸化ストレス耐性のテストのための1mMパラコートを添加した寒天に移した。TXNIP欠損は、飢餓とパラコートに対する曝露との両方においてハエの生存を顕著に増大させた(図4b、c)。更に、イン・ヴィトロデータに対応して、TXNIP欠損は、全ハエタンパク質溶解物におけるTXN活性の増大をもたらし(図4d)、従って、ショウジョウバエの抗酸化能力にも影響した。TXNIP欠損が老齢化の調節に直接関与しているか否かを調べるために、TXNIP欠損ハエとコントロールのハエの寿命を測定した。驚くべきことに、TXNIPの遺伝障害によってオスとメスのショウジョウバエの健康寿命が大幅に延伸され、TXNIPの寿命の決定的調節因子としての役割が示された。平均寿命は、それぞれコントロールのハエと比較して、メスのTXNIP RNAiハエにおいて18%増加し、これに対して、最大寿命はオスにおいて5%(p<0.01)、メスRNAiハエでは13%(p<0.001)増加した(図4e)。これらのデータに対応して、過去の研究も、メスとオスの生物間の寿命延伸の差を報告している(23, 24)。従って、このことは、TXNIPを、イン・ヴィヴォで、寿命の直接的調節因子として同定するものである。更に、TXNIP発現の欠損時における産卵頻度による測定でのメスの繁殖性の増大が観察された。TXNIP欠損ハエは、24時間の観察時間内において、産卵数の最大30%の増加を示した(図4f)。これらのデータは、TXNIP欠損は、過去の報告書(23)におけるショウジョウバエのラパマイシン処理時にも見られるような、寿命と繁殖性との脱共役をもたらすということを示している。総合すると、上述した表現型は、TXNIPのハエの老齢化と長命においてのみならず、ストレス耐性と繁殖性の調節における役割を示している。
【0063】
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図1a
図1b
図1c
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図1e
図2a
図2b
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図3a
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図6a
図6b
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図6d