特許第6078672号(P6078672)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6078672
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】噛合チェーン及び可動体移動装置
(51)【国際特許分類】
   B66F 7/12 20060101AFI20170130BHJP
   F16G 13/20 20060101ALI20170130BHJP
   F16G 13/06 20060101ALI20170130BHJP
   F16G 13/07 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
   B66F7/12
   F16G13/20
   F16G13/06 B
   F16G13/06 E
   F16G13/07
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-31145(P2016-31145)
(22)【出願日】2016年2月22日
【審査請求日】2016年2月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003355
【氏名又は名称】株式会社椿本チエイン
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】餌取 威志
【審査官】 井上 信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−1377(JP,A)
【文献】 特開2013−57332(JP,A)
【文献】 特開2008−256202(JP,A)
【文献】 特開2001−241211(JP,A)
【文献】 特開平8−169693(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2015−0079507(KR,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0026018(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0219144(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 7/12
F16G 13/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
進退移動可能な少なくとも一対のチェーン部材を有し、対をなす前記チェーン部材同士が進行方向に移動することで相互に噛み合って一体化する一方、その一体化した噛合状態から前記チェーン部材同士が退行方向に移動することで相互に噛み外れて分岐する噛合チェーンであって、
前記チェーン部材は、一対のピン孔を有した複数のリンクプレート同士が前記一対のピン孔において直列に連結ピンによって回動自在に連結され、
前記チェーン部材を構成する複数の前記リンクプレートの前記一対のピン孔は、それぞれ前記チェーン部材の進退移動方向に並んで配置されるとともに、互いに大きさが異なり、
前記連結ピンは、前記一対のピン孔のうちの小さい方の前記ピン孔に密嵌され且つ大きい方の前記ピン孔に遊嵌され、
前記チェーン部材同士が噛み合って一体化された状態では、前記進退移動方向及び前記連結ピンの延びる方向の両方と直交する方向において対向する前記連結ピン同士の前記ピン孔に対する嵌合状態が同じになることを特徴とする噛合チェーン。
【請求項2】
前記各対のチェーン部材同士は、前記リンクプレートにおける前記進退移動方向の一方側に形成された爪部において噛合し、
前記各リンクプレートにおける前記一対のピン孔のうち前記連結ピンが密嵌される方は前記爪部側に配置されることを特徴とする請求項1に記載の噛合チェーン。
【請求項3】
前記各対のチェーン部材同士は、前記リンクプレートにおける前記進退移動方向の一方側に形成された爪部において噛合し、
前記各リンクプレートにおける前記一対のピン孔のうち前記連結ピンが遊嵌される方は前記爪部側に配置されることを特徴とする請求項1に記載の噛合チェーン。
【請求項4】
前記チェーン部材は、前記連結ピンと前記リンクプレートとによって構成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の噛合チェーン。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の噛合チェーンと、前記噛合チェーンに連結されて前記噛合チェーンとともに前記噛合チェーンの進退移動方向へ移動可能な可動体とを備えた可動体移動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噛合チェーン及び当該噛合チェーンを用いて可動体を移動させる可動体移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の噛合チェーンとして、噛合チェーン式駆動装置に組み込まれて使用されるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このような噛合チェーン式駆動装置では、進退移動可能な一対の噛合チェーンが進行方向への移動に伴い相互に噛み合って一体化する一方で退行方向への移動に伴い相互に噛み外れて分岐することにより昇降テーブルが昇降されるようになっている。
【0003】
こうした噛合チェーンは、それぞれ一対のピン孔を有した外リンクプレートと内リンクプレートとが、屈曲可能に連結ピンにより一対のピン孔においてチェーン長手方向に多数連結された構成になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−138926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のような噛合チェーンでは、外リンクプレートを構成するチェーン幅方向の両側方の最外方に位置するガイドプレートが有する一対のピン孔と、内リンクプレートが有する一対のピン孔との大きさが異なるため、ガイドプレート(外リンクプレート)と内リンクプレートとを同じ構成(共通部品)にすることができない。このため、噛合チェーンを構成する部品の種類を低減することが困難であるという問題がある。
【0006】
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、チェーン部材を構成する部品の種類を低減することができる噛合チェーン及び可動体移動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する噛合チェーンは、進退移動可能な少なくとも一対のチェーン部材を有し、対をなす前記チェーン部材同士が進行方向に移動することで相互に噛み合って一体化する一方、その一体化した噛合状態から前記チェーン部材同士が退行方向に移動することで相互に噛み外れて分岐する噛合チェーンであって、前記チェーン部材は、一対のピン孔を有した複数のリンクプレート同士が前記一対のピン孔において直列に連結ピンによって回動自在に連結され、前記チェーン部材を構成する複数の前記リンクプレートの前記一対のピン孔は、それぞれ前記チェーン部材の進退移動方向に並んで配置されるとともに、互いに大きさが異なり、前記連結ピンは、前記一対のピン孔のうちの小さい方の前記ピン孔に密嵌され且つ大きい方の前記ピン孔に遊嵌され、前記チェーン部材同士が噛み合って一体化された状態では、前記進退移動方向及び前記連結ピンの延びる方向の両方と直交する方向において対向する前記連結ピン同士の前記ピン孔に対する嵌合状態が同じになる。
【0008】
この構成によれば、各対のチェーン部材のうちの一方のチェーン部材を構成するリンクプレートと他方のチェーン部材を構成するリンクプレートとを同じ構成(共通部品)にすることができるので、チェーン部材を構成する部品の種類を低減することができる。
【0009】
上記噛合チェーンにおいて、前記各対のチェーン部材同士は、前記リンクプレートにおける前記進退移動方向の一方側に形成された爪部において噛合し、前記各リンクプレートにおける前記一対のピン孔のうち前記連結ピンが密嵌される方は前記爪部側に配置されることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、各対のチェーン部材のリンクプレートの爪部同士の噛合状態を安定させることができる。
上記噛合チェーンにおいて、前記各対のチェーン部材同士は、前記リンクプレートにおける前記進退移動方向の一方側に形成された爪部において噛合し、前記各リンクプレートにおける前記一対のピン孔のうち前記連結ピンが遊嵌される方は前記爪部側に配置されることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、各対のチェーン部材のリンクプレートの爪部同士が噛合する際のずれを吸収することができる。
上記噛合チェーンにおいて、前記チェーン部材は、前記連結ピンと前記リンクプレートとによって構成されていることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、チェーン部材が2種類の部品のみで構成されるので、チェーン部材の構造を簡単にすることができる。
上記課題を解決する可動体移動装置は、上記構成の噛合チェーンと、前記噛合チェーンに連結されて前記噛合チェーンとともに前記噛合チェーンの進退移動方向へ移動可能な可動体とを備えた。
【0013】
この構成によれば、上記噛合チェーンと同様の作用効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、チェーン部材を構成する部品の種類を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態の可動体移動装置において、噛合チェーンが進行方向へ移動したときの状態を示す正面図。
図2】同可動体移動装置において、噛合チェーンが退行方向へ最も移動したときの状態を示す正面図。
図3】同可動体移動装置を構成する噛合チェーンの一部を示す斜視図。
図4】同噛合チェーンを構成するチェーン部材の一部を示す分解斜視図。
図5】同噛合チェーンの一部を示す正面拡大図。
図6】変更例の噛合チェーンの一部を示す正面拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、可動体移動装置の一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、可動体移動装置11は、互いに噛合可能な一対のチェーン部材12a,12bを有するとともにその長手方向に沿って進退移動可能な噛合チェーン12と、噛合チェーン12の基端側に固定状態で配置される収容部13と、噛合チェーン12の先端側の端部にジョイントリンク14を介して連結された可動体15とを備えている。
【0017】
なお、以下の記載では、可動体15を移動させる際の噛合チェーン12の進退移動方向をZとする。この場合、噛合チェーン12の進行方向(図1では上方向)をZ1とし、噛合チェーン12の退行方向(図1では下方向)をZ2とする。また、進退移動方向Zと直交する方向のうち、対をなすチェーン部材12a,12b同士が相互に噛み合って一体化した噛合状態にある噛合チェーン12が退行方向への移動に伴いチェーン部材12a,12b同士を相互に噛み外れさせて分岐させる方向を分岐方向X(図1では左右方向)とする。さらに、進退移動方向Z及び分岐方向Xの両方と直交する方向を前後方向Y(図1では紙面と直交する方向)とする。そして、図1及び図2では、収容部13の外装の図示を省略して、収容部13の内部構成を図示している。
【0018】
図1に示すように、収容部13は、噛合チェーン12を収容可能に構成されている。収容部13内における分岐方向Xの中央部には、前後方向Yに延びる軸線を中心に正逆両方向に回転可能なスプロケット16が片方のチェーン部材12b(噛合チェーン12)と噛み合うように設けられている。スプロケット16は、図示しないモーターによって正逆両方向に回転駆動される。そして、このスプロケット16の回転駆動に伴って噛合チェーン12は進退移動方向Zに沿って進退移動する。
【0019】
さらに、収容部13は、前後方向Yにおいて外装(図示略)と略同一の矩形状をなす誘導板17を備えている。誘導板17の内側面には、噛合状態から分岐した一対のチェーン部材12a,12bが渦巻きながら移動するように、一対のチェーン部材12a,12bを誘導可能な渦巻状の部分を有する一対の誘導溝18が図1においてほぼ左右対称となるように設けられている。
【0020】
また、収容部13において、外装(図示略)の内側面には、誘導板17の一対の誘導溝18と対応するように一対の誘導溝18が設けられている。したがって、収容部13の前後方向Yにおける両内側面には、一対の誘導溝18同士がそれぞれ対向するように設けられている。なお、収容部13における進行方向Z1側の面における分岐方向Xのほぼ中央部には、噛合チェーン12を通すための開口部19が形成されている。
【0021】
図3及び図4に示すように、本実施形態において、噛合チェーン12を構成する一対のチェーン部材12a,12bには、一列のチェーン部材が採用されている。そして、一対のチェーン部材12a,12bは、進退移動方向Zに沿った直列方向へ順次に直列に連結されるリンクプレートの一例としての複数対の内プレート21と、リンクプレートの一例としての複数対の外プレート22とをそれぞれ有している。
【0022】
内プレート21及び外プレート22は、互いに同じ構成になっており、それぞれ鉤状の爪部25を有している。すなわち、一対のチェーン部材12a,12bのうち一方のチェーン部材12aの各外プレート22及び各内プレート21における進行方向Z1側と、他方のチェーン部材12bの各外プレート22及び各内プレート21における退行方向Z2側には、互いに噛合可能な爪部25がそれぞれ形成されている。
【0023】
つまり、爪部25は、一対のチェーン部材12a,12bの各外プレート22及び各内プレート21における進退移動方向Zの一方側に形成されている。そして、一対のチェーン部材12a,12b同士は、各外プレート22の爪部25及び各内プレート21の爪部25においてそれぞれ噛合する。
【0024】
さらに、各内プレート21及び各外プレート22には、円形状の一対のピン孔23a,23bが、チェーン部材12a,12bの進退移動方向Zに沿った直列方向に並んで配置されるように貫通して形成されている。一対のピン孔23a,23bは互いに大きさが異なっている。本実施形態の各内プレート21及び各外プレート22では、ピン孔23aの方がピン孔23bよりも若干小さくなっており、この小さい方のピン孔23aが爪部25側に配置されている。
【0025】
さらに、一対のチェーン部材12a,12bは、直列方向で端部同士が重なって隣り合う各対の内プレート21と各対の外プレート22とを一対のピン孔23a,23bにおいて回動自在に直列に連結する円柱状の連結ピン24を有している。連結ピン24は、一対のピン孔23a,23bのうちの小さい方のピン孔23aに密嵌され且つ大きい方のピン孔23bに遊嵌される。
【0026】
すなわち、連結ピン24は、一対のピン孔23a,23bのうちの小さい方のピン孔23aに対して回動不能に嵌合され且つ大きい方のピン孔23bに対して回動可能に嵌合される。この場合、各内プレート21及び各外プレート22における一対のピン孔23a,23bのうち連結ピン24が密嵌される方のピン孔23aは爪部25側に配置される。
【0027】
なお、本実施形態の一対のチェーン部材12a,12bは、ブシュやローラを必要とすることなく、連結ピン24と、互いに同一構成の内プレート21及び外プレート22とによって構成されている。すなわち、一対のチェーン部材12a,12bは、2種類の部品のみで構成されている。
【0028】
また、連結ピン24の両端部は、前後方向Yにおいて外プレート22よりも外側に突出している。そして、一対のチェーン部材12a,12bが収容部13内に収容される際には、それらの連結ピン24の両端部が収容部13内にて前後方向Yで対向するそれぞれの一対の誘導溝18に摺動可能に挿入される。
【0029】
すなわち、一対のチェーン部材12a,12bが収容部13内に収容される際には、各連結ピン24の一端部が収容部13の誘導板17に設けられた誘導溝18に挿入され、各連結ピン24の他端部が収容部13の外装(図示略)の内側面に設けられた誘導溝18に挿入される。
【0030】
そして、噛合チェーン12は、図1に示すように、一対のチェーン部材12a,12bの進行方向Z1への移動に伴って一対のチェーン部材12a,12b間で対応する外プレート22の爪部25同士及び内プレート21の爪部25同士がそれぞれ相互に噛み合うことで直棒状に一体化した剛体構造の噛合状態となる。一方、噛合チェーン12は、図2に示すように、その噛合状態から一対のチェーン部材12a,12bの退行方向Z2への移動に伴って相互に噛み外れることで分岐方向Xに分岐されて大部分が収容部13内に収容される。なお、一対のチェーン部材12a,12bにおける互いに噛合する外プレート22同士と互いに噛合する内プレート21同士とは、進退移動方向Zに並ぶ連結ピン24の1ピッチ分だけ位置がずれている。
【0031】
また、図1及び図2に示すように、噛合チェーン12は、長手方向における進行方向Z1側の端部が可動体15に連結されている。可動体15には各種の機能部材(例えば、昇降テーブルやクレーンなど)が取り付けられるようになっている。そして、噛合チェーン12の進退移動に伴って可動体15が進退移動方向Zへ移動すると、可動体15に取り付けられた機能部材も可動体15と一緒に進退移動方向Zへ移動する。
【0032】
次に、可動体移動装置11において、一対のチェーン部材12a,12bの進行方向Z1への移動に伴って相互に噛み合うことで、噛合チェーン12が直棒状に一体化した剛体構造の噛合状態となるときの作用を説明する。
【0033】
さて、一対のチェーン部材12a,12bを噛合させて噛合チェーン12を噛合状態とする場合には、まず、スプロケット16を図2において時計方向に回転駆動させる。すると、一対のチェーン部材12a,12bは、一対の誘導溝18により連結ピン24においてそれぞれガイドされながら進行方向Z1へ移動する。これにより、一対のチェーン部材12a,12bにおける互いに対応する外プレート22同士及び内プレート21同士がそれらの爪部25において交互に順次噛合し、図1に示すように、噛合チェーン12が噛合状態となる。
【0034】
このとき、図5に示すように、噛合チェーン12は、進退移動方向Z及び連結ピン24の延びる方向である前後方向Yの両方と直交する方向である分岐方向Xにおいて対向する連結ピン24同士のピン孔23a,23bに対する嵌合状態が同じになる。すなわち、分岐方向Xにおいて対向する連結ピン24同士は、いずれもピン孔23aに密嵌しているか、いずれもピン孔23bに遊嵌しているかのどちらかになっている。
【0035】
この場合、チェーン部材12aの外プレート22及び内プレート21の退行方向Z2側のピン孔23bと、当該外プレート22及び内プレート21に対して退行方向Z2側でそれぞれ隣り合うチェーン部材12bの外プレート22及び内プレート21の進行方向Z1側のピン孔23bとが分岐方向Xにおいて対向する。
【0036】
一方、チェーン部材12aの外プレート22及び内プレート21の進行方向Z1側のピン孔23aと、当該外プレート22及び内プレート21に対して進行方向Z1側でそれぞれ隣り合うチェーン部材12bの外プレート22及び内プレート21の退行方向Z2側のピン孔23aとが分岐方向Xにおいて対向する。
【0037】
このため、チェーン部材12aを構成する外プレート22及び内プレート21と、チェーン部材12bを構成する外プレート22及び内プレート21とを全て同じ構成(共通部品)にすることができる。したがって、一対のチェーン部材12a,12bを構成する部品の種類を低減でき、ひいては噛合チェーン12を構成する部品の種類を低減できる。
【0038】
また、噛合チェーン12が噛合状態にあるときには、一対のチェーン部材12a,12bの外プレート22の爪部25同士の噛合部分及び内プレート21の爪部25同士の噛合部分が、それぞれ分岐方向Xにおいて対向する2つのピン孔23aにそれぞれ密嵌された連結ピン24同士に挟まれた状態になる。このため、一対のチェーン部材12a,12bの外プレート22の爪部25同士の噛合状態及び内プレート21の爪部25同士の噛合状態がそれぞれ安定する。
【0039】
以上詳述した実施形態によれば、次のような効果が発揮される。
(1)噛合チェーン12において、一対のチェーン部材12a,12b同士が噛み合って一体化された噛合状態では、分岐方向Xにおいて対向する連結ピン24同士のピン孔23a,23bに対する嵌合状態が同じになっている。このため、チェーン部材12aを構成する外プレート22及び内プレート21と、チェーン部材12bを構成する外プレート22及び内プレート21とを全て同じ構成(共通部品)にすることができる。したがって、一対のチェーン部材12a,12bを構成する部品の種類を低減でき、ひいては噛合チェーン12を構成する部品の種類を低減できる。加えて、一対のチェーン部材12a,12bにおける外プレート22のピッチと内プレート21のピッチとの差が無くなるので、噛合チェーン12とスプロケット16との円滑な噛み合い状態を実現できる。
【0040】
(2)噛合チェーン12において、一対のチェーン部材12a,12b同士は、外プレート22の爪部25及び内プレート21の爪部25において噛合し、外プレート22及び内プレート21における一対のピン孔23a,23bのうち連結ピン24が密嵌される方のピン孔23aは爪部25側に配置されている。このため、一対のチェーン部材12a,12bの外プレート22の爪部25同士の噛合状態及び内プレート21の爪部25同士の噛合状態をそれぞれ安定させることができる。
【0041】
(3)噛合チェーン12において、一対のチェーン部材12a,12bは、連結ピン24と、互いに同一構成の外プレート22及び内プレート21とによって構成されている。このため、一対のチェーン部材12a,12bを2種類の部品だけで構成することができるので、一対のチェーン部材12a,12bの構造を簡単にすることができる。
【0042】
(4)噛合チェーン12は、その構成にブシュを用いていない。このため、ブシュを用いた噛合チェーンに比べて、ブシュの分だけ部品点数を低減できるとともに軽量化を図ることができる。したがって、水平方向と進退移動方向Zとが一致する態様で可動体移動装置11を使用した場合の噛合チェーン12の自重による撓み量を低減できる。この結果、噛合チェーン12のストローク(進退移動距離)を、ブシュを用いた噛合チェーンに比べて長くすることができる。加えて、噛合チェーン12はブシュを用いていないので、ブシュと連結ピンとの接触音をなくすことができる。このため、ブシュを用いた噛合チェーンに比べて使用時の騒音を低減することができる。
【0043】
(変更例)
なお、上記実施形態は次のように変更してもよい。
図6に示すように、噛合チェーン12の噛合状態において、一対のチェーン部材12a,12bの各内プレート21及び各外プレート22における一対のピン孔23a,23bのうち連結ピン24が遊嵌される方のピン孔23aを爪部25側に配置してもよい。この場合、チェーン部材12aの外プレート22及び内プレート21の進行方向Z1側のピン孔23bと、当該外プレート22及び内プレート21に対して進行方向Z1側でそれぞれ隣り合うチェーン部材12bの外プレート22及び内プレート21の退行方向Z2側のピン孔23bとが分岐方向Xにおいて対向する。一方、チェーン部材12aの外プレート22及び内プレート21の退行方向Z2側のピン孔23aと、当該外プレート22及び内プレート21に対して退行方向Z2側でそれぞれ隣り合うチェーン部材12bの外プレート22及び内プレート21の進行方向Z1側のピン孔23aとが分岐方向Xにおいて対向する。さらにこの場合、一対のチェーン部材12a,12bの外プレート22の爪部25同士の噛合部分及び内プレート21の爪部25同士の噛合部分が、それぞれ分岐方向Xにおいて対向する2つのピン孔23bにそれぞれ遊嵌された連結ピン24同士に挟まれた状態になる。このため、一対のチェーン部材12a,12bの各内プレート21の爪部25同士及び各外プレート22の爪部25同士が噛合する際のずれを吸収することができる。
【0044】
・噛合チェーン12は、連結ピン24が挿通されるローラを備えていてもよい。
・噛合チェーン12を構成するチェーン部材12a,12bは二列以上のチェーン部材であってもよい。
【0045】
・噛合チェーン12は、二対以上のチェーン部材12a,12bによって構成してもよい。
・可動体移動装置11は何れの向きに配置してもよい。例えば、進退移動方向Zが水平方向と一致するように可動体移動装置11を配置してもよいし、進退移動方向Zが水平方向と交差するように可動体移動装置11を配置してもよい。
【符号の説明】
【0046】
11…可動体移動装置、12…噛合チェーン、12a,12b…チェーン部材、15…可動体、21…リンクプレートの一例としての内プレート、22…リンクプレートの一例としての外プレート、23a,23b…ピン孔、24…連結ピン、25…爪部、Z…進退移動方向、Z1…進行方向、Z2…退行方向。
【要約】
【課題】チェーン部材を構成する部品の種類を低減することができる噛合チェーン及び可動体移動装置を提供する。
【解決手段】噛合チェーン12は、進退移動可能な一対のチェーン部材12a,12bを有し、これらが進行方向Z1に移動することで噛み合って一体化し、その一体化した状態からこれらが退行方向Z2に移動することで噛み外れて分岐する。チェーン部材12a,12bは、大きさの異なる一対のピン孔23a,23bを有した複数の外プレート22同士及び複数の内プレート21同士がそれぞれピン孔23a,23bにおいて直列に連結ピン24によって回動自在に連結される。連結ピン24は進退移動方向Zに並んで配置された一対のピン孔23a,23bのうち小さい方に密嵌され且つ大きい方に遊嵌される。チェーン部材12a,12b同士が一体化された状態では、対向する連結ピン24同士のピン孔23a,23bに対する嵌合状態が同じになる。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4
図5
図6