特許第6078697号(P6078697)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6078697非充電式バッテリを有する埋込可能医療デバイスのための電力アーキテクチャ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6078697
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】非充電式バッテリを有する埋込可能医療デバイスのための電力アーキテクチャ
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/378 20060101AFI20170130BHJP
【FI】
   A61N1/378
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-534578(P2016-534578)
(86)(22)【出願日】2014年6月17日
(65)【公表番号】特表2016-527988(P2016-527988A)
(43)【公表日】2016年9月15日
(86)【国際出願番号】US2014042792
(87)【国際公開番号】WO2015023359
(87)【国際公開日】20150219
【審査請求日】2016年2月15日
(31)【優先権主張番号】13/966,510
(32)【優先日】2013年8月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507213592
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック ニューロモデュレイション コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103609
【弁理士】
【氏名又は名称】井野 砂里
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】ラモント ロバート ジー
(72)【発明者】
【氏名】パルラモン ジョルディ
(72)【発明者】
【氏名】オザワ ロバート ディー
【審査官】 川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2013/0211469(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0211132(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0097719(US,A1)
【文献】 特表2009−518144(JP,A)
【文献】 特表2010−532700(JP,A)
【文献】 特表2005−515859(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/378
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋込可能医療デバイスのための回路であって、
患者の組織に治療電流を通過させるように構成された電極と、
バッテリ電圧を出力する非充電式バッテリと、
前記バッテリ電圧をブースト回路の出力でのブースト電圧まで昇圧するように構成されたブースト回路と、
前記ブースト回路の出力によってのみ給電される第1の回路と、
前記バッテリ電圧によって給電され、かつ前記バッテリ電圧に直接接続された第2の回路と、を含み、
前記第2の回路は、前記治療電流を生成するように構成されたデジタル−アナログコンバータに給電するためのコンプライアンス電圧を生成するように構成されたDC−DCコンバータ、及び、外部デバイスと無線でデータを通信するように構成されたテレメトリコイルに結合されたタンク回路、を含むことを特徴とする回路。
【請求項2】
前記第1の回路は、1つ又はそれよりも多くの調整器を含むことを特徴とする請求項1に記載の回路。
【請求項3】
前記1つ又はそれよりも多くの調整器の各々が、前記埋込可能医療デバイスの少なくとも1つの回路要素に給電するために電源電圧を供給することを特徴とする請求項2に記載の回路。
【請求項4】
前記1つ又はそれよりも多くの調整器は、作動するのに最低入力電源電圧を必要とし、
前記バッテリ電圧は、前記最低入力電源電圧よりも低いことを特徴とする請求項2に記載の回路。
【請求項5】
前記第1及び第2の回路は、単一集積回路上に集積されることを特徴とする請求項1に記載の回路。
【請求項6】
前記第1の回路は、複数の調整器を含み、各々が、前記埋込可能医療デバイス内の回路要素のための電源電圧を生成するように構成されることを特徴とする請求項1に記載の回路。
【請求項7】
前記回路要素は、アナログ回路及びデジタル回路を含み、
前記調整器のうちの1つが、前記アナログ回路のためのアナログ電源電圧を生成するように構成され、
前記調整器のうちの1つが、前記デジタル回路のためのデジタル電源電圧を生成するように構成される、
ことを特徴とする請求項に記載の回路。
【請求項8】
前記回路要素は、メモリを更に含み、
前記調整器のうちの1つが、前記メモリのためのメモリ電源電圧を生成するように構成される、
ことを特徴とする請求項に記載の回路。
【請求項9】
埋込可能医療デバイスのための回路であって、
患者の組織に治療電流を通過させるように構成された電極と、
バッテリ電圧を出力する非充電式バッテリと、
前記バッテリ電圧をブースト回路の出力でのブースト電圧まで昇圧するように構成されたブースト回路と、
前記ブースト回路の出力によってのみ給電される複数の調整器を含み、且つ複数の調整器の各々が前記埋込可能医療デバイス内の回路要素のための電源電圧を生成するように構成された第1の回路と、
前記バッテリ電圧によって給電され、かつ前記バッテリ電圧に直接接続された第2の回路と、を含み、
前記第2の回路は、前記治療電流を生成するように構成されたデジタル−アナログコンバータに給電するためのコンプライアンス電圧を生成するように構成されたDC−DCコンバータ、及び、外部デバイスと無線でデータを通信するように構成されたテレメトリコイルに結合されたタンク回路、を含むことを特徴とする回路。
【請求項10】
前記回路要素は、アナログ回路及びデジタル回路を含み、
前記調整器のうちの1つが、前記アナログ回路のためのアナログ電源電圧を生成するように構成され、
前記調整器のうちの1つが、前記デジタル回路のためのデジタル電源電圧を生成するように構成される、
ことを特徴とする請求項に記載の回路。
【請求項11】
前記回路要素は、メモリを更に含み、
前記調整器のうちの1つが、前記メモリのためのメモリ電源電圧を生成するように構成される、
ことを特徴とする請求項10に記載の回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願への相互参照〕
この国際出願は、その全体が引用によって本明細書に組み込まれる2013年8月14日出願の米国特許出願出願番号第13/966,510号に対する優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、一般的に埋込可能医療デバイスに関し、具体的には1次バッテリを有する埋込可能医療デバイスのための改良されたアーキテクチャに関する。
【背景技術】
【0003】
埋込可能神経刺激デバイスとは、心臓不整脈を治療するペースメーカー、心細動を治療する除細動器、難聴を治療するための蝸牛刺激器、失明を治療するための網膜刺激器、四肢の協働した動きを生じるための筋肉刺激器、慢性疼痛を治療するための脊髄刺激器、運動及び精神的疾患を治療するための皮膚及び脳深部刺激器、及び尿失禁、睡眠時無呼吸、肩関節亜脱臼などを治療するための他の神経刺激器のような電気刺激を発生して様々な生理的疾患の治療のために身体の神経及び組織に送出するデバイスである。以下の説明は、一般的には、米国特許第6,516,227号明細書に開示するような「脊髄刺激(SCS)」システム内の本発明の使用に着目する。しかし、本発明は、あらゆる埋込可能医療デバイスに適用性を見出すことができる。
【0004】
図1A及び図1Bに示すように、SCSシステムは、典型的には、例えば、チタンのような導電材料から作られた生体適合性デバイスケース30を含む「埋込可能パルス発生器(IPG)」100を含む。ケース30は、典型的には、IPGの回路及び回路に電力を供給するバッテリを保持する。IPGを使用する患者の特定の必要性及び状況に応じて、バッテリは、充電式又は非充電式1次バッテリにすることができる。IPG100は、1つ又はそれよりも多くの電極アレイ(2つのアレイ102及び104を示している)を含み、各々がいくつかの電極106を収容する。電極106は可撓性本体108上に担持され、この可撓性本体108は、各電極に結合された個々の電極リード112及び114も収容する。図示の実施形態において、アレイ102上にE1−E8のラベルを備えた8つの電極、アレイ104上にE9−E16のラベルを備えた8つの電極があるが、アレイ及び電極の数は用途に固有のものであり、従って、変更される場合がある。アレイ102、104は、リードコネクタ38a及び38bを使用してIPG100に結合され、例えば、エポキシを含むことができる非導電ヘッダ材料36に固定される。
【0005】
図2に示すように、IPG100は、典型的には、PCB16に取り付けられるマイクロプロセッサ、集積回路、及びコンデンサのような様々な電子構成要素20と共にプリント回路基板(PCB)16を含む電子基板アセンブリを含む。これらの電子構成要素20の一部を以下に詳しく説明する。テレメトリコイル13(一般的にアンテナ)が一般的にはIPG100に存在して外部コントローラ80にデータを送信する/外部コントローラ80からデータを受信する。テレメトリコイル13は、典型的には、図のようにIPG100のヘッダ36内に装着され、フェライトコア13’の周りに巻き付けられる。他の実施形態において、テレメトリコイル13は、ケース30内に入れることができる。IPG100のような充電式バッテリを有するIPGでは、外部充電器82を使用してIPGのバッテリを充電又は再充電するために充電コイル18も存在する。
【0006】
上述のように、手持ち式プログラマー又は臨床医のプログラマーのような外部コントローラ80が使用されて無線でIPG100にデータを送信し、IPG100からデータを受信する。例えば、外部コントローラ80は、プログラミングデータをIPG100に送信し、IPG100が患者に与えることになる治療を決めることができる。外部コントローラ80は、IPGのステータスに対する様々なデータ報告のようなIPG100からのデータの受信機として機能することができる。IPG100のような外部コントローラ80は、PCB70も収容し、PCB70上には、外部コントローラ80の作動を制御するための電子構成要素72が配置される。コンピュータ、携帯電話、又は他の手持ち式電子デバイスに使用されるものに類似であり、更に例えばタッチ可能ボタン及びディスプレイを含むユーザインタフェース74が、患者又は臨床医が外部コントローラ80を作動させることを可能にする。外部コントローラ80への及び外部コントローラ80からのデータの通信は、IPG100のコイル13と通信するコイル(アンテナ)17によって可能になる。
【0007】
典型的には手持ち式デバイスでもある外部充電器82を使用してIPG100に無線で電力を送り、バッテリが充電式である場合にIPGのバッテリを再充電するためにその電力を使用することができる。外部充電器82からの電力の移送は、IPG100のコイル18によって受け取られる電力を発生するコイル(アンテナ)17’によって可能になる。外部充電器82は、外部コントローラ80に類似の構成を有するものとして示されているが、現実には、当業者が理解するようにその機能に応じて異なるものになる。
【0008】
図3は、充電式バッテリ26を使用するIPG100のアーキテクチャを示している。図3では、IPG100の様々な電源を特に強調して示しており、これが本発明の開示のフォーカスであり太線に示している。以下に説明する範囲において単に少数の他の非電源信号を図3に示しているが、これは細い線に示している。当業者は、IPG100が、便宜上示していない多くのそのような「通常の」信号回線を収容することを理解するであろう。
【0009】
充電式バッテリ26は、典型的には、リチウムイオンポリマーバッテリを含み、その減衰のレベルに応じて、約3.2から4.2ボルトのバッテリ電圧Vbatを有することができる。IPG100は、バッテリインタフェース回路32を含み、このバッテリインタフェース回路32が、充電コイル18と充電式バッテリ26の間の仲介役として機能する。バッテリインタフェース回路32は、外部充電器82(図2)から充電コイル18で受け入れる電力を整流して制御された方式で充電式バッテリ26を充電するための回路を収容する。充電式バッテリ26からの電力は、バッテリインタフェース回路32の制御可能スイッチング回路を通じて経路指定され、電圧Vbat’としてIPG100の回路の残りに供給される。Vbat’の大きさは、本質的に、バッテリインタフェース回路32のスイッチング回路両端で発生した小さい電圧降下を差し引いたVbatと同じである。バッテリインタフェース回路32の例は、2011年7月20日出願の米国特許出願第61/509,701号明細書に見出すことができる。
【0010】
バッテリインタフェース回路32は、電圧Vbat’を電圧調整器40、42、及び44を通じてIPG100の様々な回路要素に供給する。調整器40、42、及び44を使用して、接続されている回路要素、すなわち、アナログ回路50、デジタル回路52、及びメモリ54それぞれへの電力に応じて電源電圧VDDA、VDDD、及びVDDFにVbat’を調節する。調整器40、42、及び44は、低電力、低ドロップアウト線形調整器を含むことができ、これは非常に小さい電力しか使用せず、電力を節約するバッテリ給電式埋め込み医療デバイスに特に有用である。線形調整器は、スイッチング調整器に比べてノイズを生じないので有利でもある。
【0011】
回路50、52、及び54の各々に必要な電源電圧VDDD、VDDA、VDDFの大きさを同じにすることができるが、各回路は、その固有の電圧調整器によって給電されることが好ましい。デジタル回路52は、切り換わる時にVDDDにノイズを生じ、このノイズは潜在的にアナログ回路50の性能に影響を与える場合があるので、アナログ回路50及びデジタル回路52は個別の調整器40及び42を有することが好ましい。メモリ54は、大量の電流を消費する場合があり、それをVDDFが供給しなければならないので、メモリ54は固有の調整器44を有することが好ましい。更に、電力を節約するためにVDDFを時々停止することができる。
【0012】
アナログ回路50は、IPG100内に電源VDDAによって給電されるいくつかの低電圧アナログ回路要素を収容し、これには、サーミスタ、バンドギャップ基準電圧源、発振器及びクロック、テレメトリコイル13に結合されたタンク回路24にデータを送信し、かつタンク回路24からデータを受信する変調及び復調回路、及びアナログ測定及び経路指定回路などが含まれる。一例におけるVDDAは、2.8ボルトを含むことができる。
【0013】
デジタル回路52は、マイクロコントローラ60及びタイミング回路66を含む電源VDDDによって給電されるデジタル回路をIPG100に含む。一例におけるVDDDは、2.8ボルトを含むことができる。例えば、米国特許公開第2008/0319497号明細書に示すように、デジタル回路52は、アナログ回路50の少なくとも一部と共に単一混合モードASIC集積回路に少なくとも一部統合することができ、又はこれから分離することができる。
【0014】
電源VDDFによって給電されるメモリ54は、システム(例えば、マイクロコントローラ60)のためのオペレーティングソフトウエアを保持することができ、自由空間として機能し、分析及び/又は患者へのフィードバックのために外部コントローラ80に報告されるログデータのようなデータを格納することができる。メモリ54は、以前に参照された治療設定値のような外部コントローラ80から送信されたデータを格納することができ、このデータは、次に、マイクロコントローラ60に送信される。メモリ54は、フラッシュEPROM、ランダムアクセスメモリ(RAM)、スタティックRAM(SRAM)、ハードドライブのようなあらゆるタイプのメモリとすることができる。しかし、電力が失われた時のデータ保存を保証するために、メモリ54は、フラッシュEPROMメモリを有することが多い。フラッシュEPROMは、プログラム及び消去の両方に追加の電力を必要とすることがあるので、上述のように、VDDFは、典型的には高給電調整器44によって給電される。一例におけるVDDFは、2.8ボルトを含むことができる。
【0015】
充電式バッテリ26は、特定の刺激電極106を通じて治療電流パルスを送るのに必要な電力も供給する。これは、DC−DCコンバータ22を使用してコンプライアンス電圧V+を生じることによって成される。コンバータ22は、調整器40、42、及び44と同様に、Vbat’から電圧(V+)を発生し、電圧(V+)を使用して1つ又はそれよりも多くのデジタル−アナログコンバータ(DAC)33に給電し、治療電流Ioutを発生する。コンプライアンス電圧V+は、実際には、DAC33のための電源を含む。DAC33によって発生される治療電流Ioutの大きさは、デジタル信号61によって指定される。Ioutは、選択することができるIPG100の特定の電極106への出力であり、患者の組織R25を通過する。(別の電極106’は、Ioutのための戻り経路、又は基準を提供することができる。)
【0016】
治療電流は、時々変化させることができるので、この電流を発生するのに必要なコンプライアンス電圧V+も同様に変化させることができ、従って、V+をコンバータ22によって変化させることができる。米国特許公開第2007/0097719号明細書に説明するように、DAC33が治療電流を発生する時にV+モニタ及び調節回路19が電極106の電圧を測定することができ、その電流を供給するのに最適なV+の値V+(opt)をコンバータ22に通知することができる。'719公報に説明するように、V+が低すぎる場合に、DAC33は、「負荷状態」になり、望ましい電流Ioutを提供することができない。V+が高すぎる場合に、DAC33は望ましい電流を提供することができるが、電流は無駄になり、コンプライアンス電圧V+のある一定の部分がいずれの有用な効果もなくDAC33の両端で降下する。'719公報に開示するように、コンバータ22は、コンデンサベースのチェンジポンプ、誘導子ベースのステップアップコンバータ、又はその組合せを含むことができる。V+は、一例ではコンバータ22によって3から18ボルトの間でどこからでも設定することができる。
【0017】
テレメトリコイル13に結合されたタンク回路24も、Vbat’によって給電される。例えば、米国特許公開第2009/0069869号明細書に示すように、タンク回路24は、コイル13のインダクタンスに連動して作動してその共振周波数を設定する同調コンデンサを含むことができ、かつ変調回路(アナログ回路50の一部)によって制御されてコイル13が送信する時に共振周波数でタンクを切り換えるトランジスタを更に含むことができる。データを受信した時に、タンク回路24は、代わりに復調回路(アナログ回路50の一部を含むことができる)に結合される。
【0018】
多くのIPGが充電式バッテリを使用するが、1次バッテリの使用が有利である状況もある。1次バッテリは、電気化学反応が充電電流を通すことによって可逆ではないバッテリであり、従って、バッテリを非充電式にする。1次バッテリは、その電極の一方又は両方で材料を使い果たし、従って、制限された寿命を有する。
【0019】
しかし、1次バッテリは、典型的には充電式バッテリよりも廉価であり、同じような信頼度の問題に影響を受けない。同様に、医療埋込可能デバイスにおける1次バッテリの使用は、適切な場合に、例えば、1次バッテリの予想寿命が患者の平均余命を超えると予想される時に、又は身体的又は精神的制限のある患者がバッテリの充電に困難を有する状況で好ましい。埋込可能医療デバイスに1次バッテリを使用することで、特に充電コイル18が必要ないので設計を単純化することになる。
【0020】
図4は、例えば、1.2から3.2ボルトの電圧Vbatを有するCFxを備えたCFxバッテリ又はSVOハイブリッドとすることができる1次バッテリ12を使用するIPG400のアーキテクチャを示している。図示のように、IPG400の回路要素及び接続の多くは、図3の充電式バッテリIPG100に使用されるものと同じである。そのような類似の態様は、改めて説明しない。
【0021】
図4の1次バッテリアーキテクチャの有意な違いは、1次バッテリ12からの電力を様々な回路ブロックに供給するためにバッテリインタフェース回路32の代わりにブーストコンバータ64を使用することである。その名が意味する通りに、ブーストコンバータ64は、接続した回路ブロック、すなわち、調整器40、42、44、DC−DCコンバータ22、及びテレメトリコイル13に結合されたタンク回路24によって使用するのに適する高い電位Vbat+にバッテリ電圧Vbatをブースト(昇圧)する。この例におけるVbat+は、3.2V又はその程度にすることができる。そのようなブーストは、充電式バッテリ26に対して1次バッテリ12の相対的に低い電圧に起因して必要である。ブーストしない場合に、Vbatは低すぎて、調整器40、42、及び44が望ましい大きさの電源電圧VDDD、VDDA、及びVDDF(約2.8V)を発生することができない。ブーストコンバータ64は、DC−DCコンバータ22と同様に、コンデンサベースのチェンジポンプ、誘導子ベースのステップアップコンバータ、又はその組合せを含むことができる。
【0022】
残念ながら、そのようなブースト自体が1次バッテリ12からの電力を使用するので、ブーストコンバータ64を使用してIPG400の回路要素に供給される電圧をブーストするのは非効率的である。1次バッテリは再充電することができないので、効率は、1次バッテリを備えた埋込可能医療デバイスにおいて特に重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】米国特許第6,516,227号明細書
【特許文献2】米国特許出願第61/509,701号明細書
【特許文献3】米国特許公開第2008/0319497号明細書
【特許文献4】米国特許公開第2007/0097719号明細書
【特許文献5】米国特許公開第2009/0069869号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
従って、埋込可能医療デバイス及びより具体的には埋込可能刺激デバイスは、1次バッテリを使用する改良されたアーキテクチャから利益を受けると考えられ、そのような解決法の実施形態を本明細書に提供する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1A】従来技術による埋込可能パルス発生器(IPG)を示す図である。
図1B】従来技術により電極アレイがIPGに結合される方式を示す図である。
図2】従来技術によるIPG、外部コントローラ、及び外部充電器を示す図である。
図3】従来技術により充電式バッテリを使用するIPG電力アーキテクチャの態様を示す図である。
図4】従来技術により1次バッテリを使用するIPG電力アーキテクチャの態様を示す図である。
図5】1次バッテリを使用する改良IPG電力アーキテクチャの態様を示す図である。
図6】1次バッテリを使用する代替の改良IPG電力アーキテクチャの態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
1次バッテリの電圧がブーストされる状況を低減し、従って、インプラントにおける電力引き出しを低減する1次バッテリを使用する埋込可能医療デバイスの改良されたアーキテクチャを開示する。アーキテクチャは、1次バッテリの電圧を選択的にブーストしてブーストされた電圧をデジタル回路、アナログ回路、及びメモリを含む回路ブロックのある一定のものに供給するためのブーストコンバータを含む。しかし、ブーストコンバータは、電圧が閾値よりも下であるバッテリ電圧をブーストするためだけに使用され、閾値よりも上である場合に、バッテリ電圧は、ブーストすることなく回路ブロックに送られる。これに加えて、テレメトリタンク回路及びコンプライアンス電圧発生器を含む低バッテリ電圧でも作動させることができる一部の回路は、ブーストすることなく及びバッテリ電圧の現在の大きさに関係なく直接、バッテリ電圧を受け入れる。
【0027】
修正された改良アーキテクチャは、ブースト電圧を回路ブロックに供給するためのブーストコンバータを含むが、この修正された改良では、ブースト電圧が常にバッテリ電圧の現在の大きさに関係なく回路ブロックに供給される。回路ブロックが作動するのに必要な最低入力電源電圧よりもバッテリ電圧が必ず低い時にこの修正は有用である。低バッテリ電圧でも作動させることができる回路は、ブーストすることなく直接、バッテリ電圧を受け入れる。
【0028】
図5は、図4に関して前に説明した1次バッテリと同様とすることができる1次バッテリ12を使用するIPG500の改良されたアーキテクチャを示している。IPG500の回路要素及び接続の多くは、図3の充電式バッテリIPG100及び図4の1次バッテリIPG400に使用されたものに類似である。そのような類似の態様は、改めて説明しない。
【0029】
図4のIPG400の1次バッテリアーキテクチャと同様に、IPG500は、ブーストコンバータ64を含み、様々な回路に給電するのに必要な高電圧Vbat+に1次バッテリ12の電圧Vbatを電位的にブーストする。しかし、2つの違いは明らかである。
【0030】
第1に、ブーストコンバータ64は、Vbatと閾値Vtの関係に応じて設定されるスイッチ76によって制御される。Vbatが閾値よりも大きいか又は等しい場合に、スイッチ76は、Vbatを入力電源88として第1の回路81に直接、経路指定するように設定され、第1の回路81は、アナログ回路50、デジタル回路52、及びメモリ54それぞれのための電源電圧VDDD、VDDA、及びVDDFを発生する調整器40、42、及び44を含む。VbatがVtよりも小さい場合に、スイッチ76は、Vbatをブーストコンバータ64の入力28に経路指定し、従って、ブーストコンバータ64が、高電圧Vbat+を入力電源88として第1の回路81に及び従って調整器40、42、及び44に供給することを可能にする。図示していないが、ブーストコンバータ64はまた、スイッチ76がVbatをそれに経路指定しない時にそれがブーストしようとしないように、Vbat<Vtの時にのみ選択的に有効にすることができる。ブーストコンバータへのそのような有効化信号は、スイッチ76を制御するのに使用される同じ信号又はその信号の反転を含むことができる。
【0031】
閾値Vtの値は、作動するのに調整器40、42、及び44によって要求される最低電圧に従って及び上述のように1.2から3.2Vの範囲とすることができる1次バッテリの電圧Vbatの予想される範囲に従って設定することができる。例えば、これらの調整器が2.8Vに等しい電源VDDD、VDDA、及びVDDFを発生しなければならない場合に、Vtを2.9Vの僅かに高い電圧に設定することができる。従って、2.9<Vbat<3.2である場合に、スイッチ76は、ブーストすることなくVbatを第1の回路81に直接送ることになる。調整器は、この電圧を適切な電力供給レベルに下げることができる。1.2<Vbat<2.9である場合に、スイッチ76は、Vbatをブーストコンバータ64に送り、Vbat+にブーストすることができ、それは、ここでもまた、3.2V又はその程度を含むことができる。調整器は、このブースト電圧Vbat+を適切な電力供給レベルに下げることができる。この方式を使用してかつ図4のアーキテクチャとは別に、バッテリ電圧Vbatは、調整器に送られる前に常にブーストされるとは限らず、代わりに、Vbatが閾値よりも下に降下した時にのみブーストされる。電圧のブーストに電力が必要であるために、この方式のブーストコンバータ64の選択的有効化は、従来の方法に比べてIPG500の電力を節約する。
【0032】
図示していないが、Vbat及びVtの関連の大きさを決定する段階、及びスイッチ76の適切な制御信号を生成する段階は、いくつかの異なる方法で達成することができる。Vbatは、アナログ−デジタル(A/D)コンバータでデジタル化することができ、デジタル回路52でVtとデジタル的に比較されてスイッチ76の適切なデジタル制御信号を発生することができる。これに代えて、アナログ回路50の一部をなす比較器が、アナログ形式でVbat及びVtを受け入れることができ、この比較器は、スイッチ76のためのデジタル制御信号を発生することができる。スイッチ76は、単一トランジスタ又はより複雑なスイッチング回路を含むことができる。
【0033】
図4の1次バッテリアーキテクチャとの第2の違いにおいて、テレメトリタンク回路24とコンプライアンス電圧V+を発生するDC−DCコンバータ22とを含む第2の回路84が、ブーストコンバータ64からのブーストなしに直接、バッテリ電圧Vbatを受け入れることに注意されたい。それによってこれらの回路がVbatの非常に低いレベルでも満足に作動させることができるということ、及び従って回路の入力電源86を高レベルにブーストする電力を消費する必要がないことが認められる。例えば、DC−DCコンバータ22は、その入力電圧をブーストするための、すなわち、DAC33に給電するのに必要なV+までブーストするための回路を予め収容しており、コンバータ22内のそのようなブースト回路は、作動するのにいずれの特定の大きさの入力電圧も必要としない。タンク回路24はまた、低レベルのVbatでも満足できるように実行することができる。Vbatが低レベルに降下した場合に、コイル13から外部コントローラ80(図2)への無線信号の送信強度は相応に低減される。しかし、IPG500からの無線送信が低減された信号強度を有する場合でも、無線送信は外部コントローラ80で受信することができるが、恐らくはより短い距離からのものになる。いずれにせよ、ブーストコンバータ64からDC−DCコンバータ22及びタンク回路24に給電しないことで、コンバータ64への依存性を低減し、IPG500の電力を節約する。ブーストコンバータ64が特定のより限られた状況でのみ作動され、調整器40、42、及び44に給電するためにのみ使用されるので、コンバータ64は、高電流容量で出力Vbat+を供給する必要がない。
【0034】
図5のIPG500のアーキテクチャは、図4のIPG400のアーキテクチャと比較した時に有意な電力節約をもたらし、上述のように、これは、1次非充電式バッテリを使用する埋込可能医療デバイスにおいて重要である。ブーストコンバータ64は、約70%の効率で作動するが、調整器40、42、及び44は、低電源電圧VDDA、VDDD、及びVDDFを形成するために入力電源88を低減する時に約90%の効率で作動する。従って、Vbat≧Vtの場合に、この電圧を提供するのにブーストコンバータ64を使用するよりも入力電源電圧88を調整器によって低下させる方がより効率的である。
【0035】
図6は、1次バッテリ12を有するIPG600の代替のアーキテクチャを示している。この例では、スイッチ76(図5)が取り除かれており、代わりに電圧ブーストコンバータ64が、バッテリ電圧VbatをVbat+に常にブーストして入力電源88を通じて第1の回路81(調整器40、42、及び44、アナログ回路50、デジタル回路52、及びメモリ54)に給電する。図5のアーキテクチャと同様に、第2の回路84(テレメトリタンク回路24、コンプライアンス電圧V+を発生するためのDC−DCコンバータ22)は、ブーストコンバータ64からのブーストなしに直接、バッテリ電圧Vbatを受け入れる。1次バッテリ12が低電圧バッテリであり、従って、Vbatが低すぎて第1の回路81に給電できないことが既知の時に図6のこのアーキテクチャは好ましい。例えば、Vbat=1.2Vであり、従って、調整器40、42、及び44が作動するのに必要な最低入力電源電圧よりも小さい場合に、電圧ブーストコンバータ64がVbat=1.2VをVbat+>2.9Vにブーストし、調整器40、42、及び44に適切な入力電源88を提供し、VDDA、VDDD、及びVDDFに対して望ましい値を発生するように作動する必要があることになる。対照的に、第2の回路84は、バッテリ12によって給電され、かつバッテリ12に直接接続され、これは、図5に関して上述したように、これらの回路が低レベルでブーストすることなく十分作動させることができるので許容可能である。ここでもまた、ブーストコンバータ64が調整器に電力を提供するために常に作動するとしても、これはIPG600の電力を節約する。
【0036】
本発明の特定の実施形態を図示して説明したが、以上の説明は本発明をこれらの実施形態に限定するように意図していないことを理解しなければならない。本発明の精神及び範囲から逸脱することなく様々な変更及び修正を行うことができることは当業者には明らかであろう。すなわち、本発明は、特許請求の範囲によって定められるような本発明の精神及び範囲内に該当する場合がある代替物、修正物、及び均等物を網羅するように意図している。
【符号の説明】
【0037】
12 1次バッテリ
24 タンク回路
64 電圧ブーストコンバータ
106 電極
600 埋込可能パルス発生器
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6