【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための本発明の第1の態様に係る溶融押出成形賦形用のロールは、
熱可塑性樹脂の溶融押出成形において使用される溶融押出成形賦形用のロールであって、
内部に熱媒流路が設けられた、金属製のロール本体部、
ロール本体部の中央部分の表面を覆う第1筒状部材、及び、
ロール本体部の両端部分の表面を覆う第2筒状部材、
から成り、
第1筒状部材は、40W/m・K以上の熱伝導率を有する第1金属材料から製作されており、
第2筒状部材は、20W/m・K以下の熱伝導率を有する第2金属材料から作製されており、
第1筒状部材と第2筒状部材とは、少なくとも一部において接合されていることを特徴とする。
【0010】
上記の目的を達成するための本発明の第2の態様に係る溶融押出成形賦形用のロールは、
熱可塑性樹脂の溶融押出成形において使用される溶融押出成形賦形用のロールであって、
内部に熱媒流路が設けられ、両端部分の外面に切欠部が設けられたロール本体部、及び、
ロール本体部の両端部分の切欠部のそれぞれに嵌合した筒状部材、
から成り、
ロール本体部は、40W/m・K以上の熱伝導率を有する第1金属材料から製作されており、
筒状部材は、20W/m・K以下の熱伝導率を有する第2金属材料から作製されており、
ロール本体部の切欠部と筒状部材とは、少なくとも一部において接合されていることを特徴とする。
【0011】
尚、本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る溶融押出成形賦形用のロールにおいて、限定するものではないが、第1金属材料の熱伝導率の上限値として100W/m・Kを挙げることができるし、第2金属材料の熱伝導率の下限値として5W/m・Kを挙げることができる。
【0012】
上記の目的を達成するための本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る溶融押出成形賦形用のロール組立体は、溶融押出成形賦形用のロール(以下、便宜上、『第1ロール』と呼ぶ場合がある)、及び、溶融押出成形賦形用のロールと対向して配置された圧着用ロール(以下、便宜上、『第2ロール』と呼ぶ場合がある)から成り、
溶融押出成形賦形用のロール(第1ロール)は、本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る溶融押出成形賦形用のロールから構成されている。
【0013】
上記の目的を達成するための本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る溶融押出成形方法は、
溶融押出成形賦形用のロール(第1ロール)、及び、溶融押出成形賦形用のロールと対向して配置された圧着用ロール(第2ロール)から成り、
溶融押出成形賦形用のロール(第1ロール)は、本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る溶融押出成形賦形用のロールから構成された溶融押出成形賦形用のロール組立体を用いた溶融押出成形方法であって、
ダイから押し出された溶融熱可塑性樹脂を、溶融押出成形賦形用のロール(第1ロール)と圧着用ロール(第2ロール)との間を通過させることで、シート成形品を得ることを特徴とする。尚、シート成形品には、シート、フィルム、フィルム成形品が包含される。
【0014】
本発明の第1の態様に係る溶融押出成形賦形用のロール、本発明の第1の態様に係る溶融押出成形賦形用のロール組立体を構成する溶融押出成形賦形用のロール、あるいは、本発明の第1の態様に係る溶融押出成形方法において使用される溶融押出成形賦形用のロール(以下、これらの溶融押出成形賦形用のロールを総称して、『本発明の第1の態様における第1ロール等』と呼ぶ場合がある)において、第2筒状部材は、第1筒状部材の延在部を介してロール本体部の両端部分の表面を覆っている形態とすることができる。あるいは又、第2筒状部材の表面は、第1筒状部材の延在部によって覆われている形態とすることができる。尚、第2筒状部材と第1筒状部材の延在部とを螺合することで一体化することができるし、あるいは又、焼嵌め法によって第2筒状部材と第1筒状部材の延在部とを一体化することもできるし、溶接によって第2筒状部材と第1筒状部材の延在部とを一体化することもできる。第2筒状部材と第1筒状部材の延在部の肉厚の比として、1:9乃至9:1を例示することができる。また、第2筒状部材と第1筒状部材の延在部の肉厚の合計として、1mm乃至10mmを例示することができる。本発明の第1の態様における第1ロール等の表面粗さを重視する場合には、第1筒状部材の延在部を外側に配置することが望ましい。また、転写性を重視する場合には、第2筒状部材を外側に配置する方が望ましい。これらは、本発明の第1の態様における第1ロール等に求められる仕様・要求の違いにより、適宜、選択することが可能である。
【0015】
以上に説明した好ましい形態を含む本発明の第1の態様における第1ロール等において、少なくとも第1筒状部材の表面にはメッキ層が形成されている構成とすることができる。即ち、第1筒状部材の表面にメッキ層が形成されている構成とすることができるし、第1筒状部材及び第2筒状部材の表面にメッキ層が形成されている構成とすることができる。
【0016】
また、本発明の第2の態様に係る溶融押出成形賦形用のロール、本発明の第2の態様に係る溶融押出成形賦形用のロール組立体を構成する溶融押出成形賦形用のロール、あるいは、本発明の第2の態様に係る溶融押出成形方法において使用される溶融押出成形賦形用のロール(以下、これらの溶融押出成形賦形用のロールを総称して、『本発明の第2の態様における第1ロール等』と呼ぶ場合がある)において、ロール本体部及び筒状部材の表面にはメッキ層が形成されている構成とすることができる。
【0017】
そして、これらの場合、メッキ層を構成する材料として、例えば、ニッケル−リン合金や、銅、ニッケル、クロムを挙げることができ、無電解メッキ法あるいは電解メッキ法にて形成することができる。より具体的には、メッキ層は、例えば、銅メッキ層、ニッケルメッキ層、無電解ニッケル−リンメッキ層、電解ニッケル−リンメッキ層及びクロムメッキ層から成る群から選択された少なくとも1種類のメッキ層から成ることが好ましい。尚、表面に微細凹凸構造を有する第1ロールを作製する場合には、ビッカース硬度が低く、加工性に富む銅やニッケルからメッキ層を構成することが好ましく、一方、高いビッカース硬度が要求される場合にはクロムからメッキ層を構成することが好ましい。また、適度に高いビッカース硬度と微細加工性が併せて要求される場合、ニッケル−リン合金からメッキ層を構成することが好ましい。メッキ層の厚さとして、0.05mm乃至2.0mmを例示することができる。上記の好ましい構成を含む本発明の第1の態様あるいは第2の態様における第1ロール等において、メッキ層の表面には、マットパターン、又は、プリズムパターン、又は、マイクロレンズアレイパターンが形成されている形態とすることができる。ここで、サンドブラスト、放電加工、ケミカルエッチング等の方法によりマットパターンを形成することができる。また、ダイヤモンドバイトによる切削等によってプリズムパターンやマイクロレンズアレイパターンを形成することができる。あるいは又、例えば、外装材等に使用するための装飾用の図柄とすることもできる。第1筒状部材及び第2筒状部材の表面(本発明の第1の態様における第1ロール等)、あるいは、ロール本体部及び筒状部材(本発明の第2の態様における第1ロール等)の表面へのメッキ層の形成や光学パターン加工は、ロール本体部に第1筒状部材及び第2筒状部材を装着する前に行ってもよいし、ロール本体部に筒状部材を装着する前に行ってもよいし、装着後に行ってもよい。但し、ロール本体部に第1筒状部材及び第2筒状部材を装着する前に行った場合、あるいは又、ロール本体部に筒状部材を装着する前に行った場合、メッキ層に傷が入ったり、変質したり、熱歪みによって円筒度が悪化する虞があるので、ロール本体部に第1筒状部材及び第2筒状部材を装着した後、あるいは又、ロール本体部に筒状部材を装着した後、行うことが望ましい。
【0018】
場合によっては、第1ロールを鏡面ロールとして使用することもできる。即ち、メッキ層の表面は鏡面である形態とすることができる。そして、この場合、第1筒状部材及び第2筒状部材の表面にハードクロム層をメッキ法にて形成することが好ましく(本発明の第1の態様における第1ロール等)、あるいは又、ロール本体部及び筒状部材の表面にハードクロム層をメッキ法にて形成することが好ましい(本発明の第2の態様における第1ロール等)。ハードクロム層は非常に硬く、研磨性に優れ、しかも、傷が付き難い。ハードクロム層の表面粗さは、少なくとも0.2S以下(算術平均表面粗さで50nm以下)とすることが好ましい。鏡面ロールとして使用する場合、その研磨面が転写されるため、非常にフラットなプレーンシート成形品の成形が可能となる。即ち、シート端部の鏡面転写性が向上することに加えて、シート端部のネックインに起因した厚肉部を潰し易くなるので、全面均一プレスが可能となり、通常の鏡面ロールを使用した場合に比べて、更に一層、面精度が向上する。
【0019】
一般に、熱可塑性樹脂の溶融押出成形においては、ダイのリップ部から流出した溶融熱可塑性樹脂は溶融押出成形賦形用のロールに接触する直前のエアギャップにおいてネックインし、リップ開度の調整では制御しきれないほど、シート成形品最端部が極端に厚くなる場合がある。精密賦形シート成形品の成形において、シート成形品最端部の厚肉部は転写阻害因子となり得るので好ましくない。従来の技術にあっては、この端部厚肉部をプレスしないように、ロール端部に段差を設ける場合があるが、本発明の第1の態様あるいは第2の態様における第1ロール等にあっては、このようなロール端部に段差を設けることは不要である。
【0020】
更には、以上に説明した各種の好ましい構成、形態を含む本発明の第1の態様における第1ロール等において、
第1筒状部材及び第2筒状部材は、焼嵌め法によってロール本体部に装着されており、
常温における第1筒状部材及び第2筒状部材の内径をD
2-i、常温におけるロール本体部の外径をD
1-oとしたとき、
0mm≦D
1-o−D
2-i≦0.4mm
好ましくは、
0.05mm≦D
1-o−D
2-i≦0.20mm
を満足することが望ましい。尚、
ロール本体部の外径D
1-o :200mm乃至800mm
第1筒状部材及び第2筒状部材の肉厚:1mm乃至10mm
を例示することができる。尚、第1筒状部材及び第2筒状部材の肉厚とは、常温における第1筒状部材及び第2筒状部材の外径をD
2-oとしたとき、
(D
2-o−D
2-i)/2
である。第1筒状部材及び第2筒状部材の材質(熱伝導率)の選択、第1筒状部材及び第2筒状部材の肉厚の選択に基づき、第1筒状部材及び第2筒状部材による、第1ロールと接する溶融熱可塑性樹脂の冷却遅延効果の程度の制御が可能である。常温から350゜Cまでの温度範囲において、第1筒状部材及び第2筒状部材の線膨張係数は、ロール本体部の線膨張係数よりも小さいことが好ましい。溶融押出成形時においては第1ロールを所望の設定温度とする必要があるため、第1ロールの温度上昇による第1筒状部材及び第2筒状部材の緩みを防止するためである。但し、ロール本体部の線膨張係数よりも第1筒状部材及び第2筒状部材の線膨張係数が大きく、あるいは又、同程度である場合には、焼嵌め代を若干大きく取ることで、第1筒状部材及び第2筒状部材の緩みを防止することもできるし、第1筒状部材及び第2筒状部材の端部をロール本体部にスポット溶接して空回りや脱落を防止することも可能である。
【0021】
また、以上に説明した各種の好ましい構成、形態を含む本発明の第2の態様における第1ロール等において、
筒状部材は、焼嵌め法によってロール本体部に装着されており、
常温における筒状部材の内径をD
2-i、常温におけるロール本体部の切欠部の外径をD
1-oとしたとき、
0mm≦D
1-o−D
2-i≦0.4mm
好ましくは、
0.05mm≦D
1-o−D
2-i≦0.20mm
を満足することが望ましい。尚、
ロール本体部の外径D
1-o :200mm乃至800mm
筒状部材肉厚 :1mm乃至10mm
を例示することができる。尚、筒状部材の肉厚とは、常温における筒状部材の外径をD
2-oとしたとき、
(D
2-o−D
2-i)/2
である。ロール本体部及び筒状部材の材質(熱伝導率)の選択、筒状部材の肉厚の選択に基づき、ロール本体部及び筒状部材による、第1ロールと接する溶融熱可塑性樹脂の冷却遅延効果の程度の制御が可能である。溶融押出成形時においては第1ロールを所望の設定温度とする必要があるため、第1ロールの温度上昇による筒状部材の緩みを防止するためである。但し、ロール本体部の線膨張係数よりも筒状部材の線膨張係数が大きく、あるいは又、同程度である場合には、焼嵌め代を若干大きく取ることで、筒状部材の緩みを防止することもできるし、筒状部材の端部をロール本体部にスポット溶接して空回りや脱落を防止することも可能である。
【0022】
更には、以上に説明した各種の好ましい構成、形態を含む本発明の第1の態様あるいは第2の態様における第1ロール等において、第1金属材料は、例えば、炭素鋼、クロム鋼、クロムモリブデン鋼、鋳鉄、又は、タングステン鋼から成ることが好ましく、より具体的には、例えば、構造用合金鋼材であるクロムモリブデン鋼SCM440から成ることがより好ましいし、第2金属材料は、例えば、ニッケル鋼、ステンレス鋼、ニッケル合金、又は、チタン(Ti)から成ることが好ましい。また、本発明の第1の態様の態様における第1ロール等において、ロール本体部を構成する金属材料として、材料の強度や剛性という観点から、第1金属材料として挙げた材料の中から選択することが好ましく、即ち、ロール本体部は第1金属材料から鳴ることが好ましく、更には、線膨張係数等の熱的性質の違いによるトラブルの発生防止といった観点から、第1筒状部材と同じ金属材料から構成することが望ましい。特に好ましい材料として、クロムモリブデン鋼を挙げることができる。但し、これに限定するものではなく、場合によっては、第1金属材料よりも高い熱伝導率を有する材料から製作することもできる。各材料の常温における熱伝導率は以下の表1のとおりである。
【0023】
[表1]
炭素鋼 :45〜53W/m・K
クロム鋼 :52〜60W/m・K
クロムモリブデン鋼 :40〜48W/m・K
鋳鉄 :48W/m・K
タングステン鋼 :53〜66W/m・K
ニッケル鋼 :10〜19W/m・K
ステンレス鋼 :13〜16W/m・K
ニッケル合金 : 9〜17W/m・K
チタン :17W/m・K
【0024】
ロール本体部の表面の加工精度は、高ければ高い程、好ましく、その芯振れについては1000分の10ミリ以下、より好ましくは1000分の5ミリ以下であることが望ましい。ロール本体部の表面の表面粗さに関しては、バフ研磨仕上げで少なくとも0.4S程度とすることが好ましい。本発明の第1の態様における第1ロール等にあっては、ロール本体部の錆の発生を防止するために、10μm以下の厚さの薄いメッキ層を設けてもよい。また、第1筒状部材及び第2筒状部材の加工精度については、ロール本体部と同様に、高ければ高い程、好ましいが、第1筒状部材及び第2筒状部材の場合、第1筒状部材及び第2筒状部材の外径(D
2-o)だけでなく、内径(D
2-i)についても高い加工精度が必要とされる。本発明の第2の態様における第1ロール等にあっても、筒状部材の加工精度については、ロール本体部と同様に、高ければ高い程、好ましいが、筒状部材の外径(D
2-o)だけでなく、内径(D
2-i)についても高い加工精度が必要とされる。外径(D
2-o)、内径(D
2-i)共に、真円度を1000分の5ミリ以下、円筒度を1000分の10ミリ以下に抑えることが望ましい。
【0025】
更には、以上に説明した各種の好ましい構成、形態を含む本発明の第1の態様における第1ロール等において、溶融押出成形賦形用のロールを用いて溶融押出成形賦形されるシート成形品の幅をW
0とし、第1筒状部材の長さをX
1としたとき、
W
0>X
1
を満足することが好ましく、あるいは又、
30mm≦W
0−X
1≦300mm
を満足することが好ましい。また、第2筒状部材の長さをX
2としたとき、
30mm≦X
2≦300mm
を満足することが好ましい。更には、
(X
1+2・X
2)>W
0+30(mm)
を満足することが好ましい。尚、第1筒状部材及び第2筒状部材の合計の長さは、ロール本体部の実効的な長さと同じとすることができるし、あるいは又、ロール本体部の実効的な長さよりも短くすることもできる。X
2の領域がシート成形品の端部と30mm以上重なる状態とすることが好ましい。
【0026】
また、以上に説明した各種の好ましい構成、形態を含む本発明の第2の態様における第1ロール等において、溶融押出成形賦形用のロールを用いて溶融押出成形賦形されるシート成形品の幅をW
0とし、ロール本体部の切欠部と切欠部との間のロール本体部の部分の長さをX
1としたとき、
W
0>X
1
を満足することが好ましく、あるいは又、
30mm≦W
0−X
1≦300mm
を満足することが好ましい。また、筒状部材の長さをX
2としたとき、
30mm≦X
2≦300mm
を満足することが好ましい。更には、
(X
1+2・X
2)>W
0+30(mm)
を満足することが好ましい。
2の領域がシート成形品の端部と30mm以上重なる状態とすることが好ましい。
【0027】
本発明の第1の態様における第1ロール等において、第1筒状部材と第2筒状部材とは、少なくとも一部において接合されている状態とするためには、例えば、第2筒状部材と対向する第1筒状部材の対向面と、第1筒状部材と対向する第2筒状部材の対向面とを、溶接すればよいし、あるいは又、圧接すればよい。具体的には、第1筒状部材と第2筒状部材とを溶融・一体化させるアーク溶接法等の溶接法、第1筒状部材の対向面と第2筒状部材の対向面とを密着させ、熱、圧力を加えることで原子同士を金属融合させて接合する抵抗溶接、鍛接、摩擦圧接法等の圧接法、第1金属材料及び第2金属材料よりも融点の低い合金であるロウ材を用いて、第1筒状部材及び第2筒状部材を、溶融させずに、濡れ現象で接合するロウ付け法等の方法を、適宜、選択すればよい。尚、接合後、接合部位に段差や盛り上がりが生じた場合、第1筒状部材と第2筒状部材との接合部に対して円筒研削や円筒研磨を行って、面精度を修正しておけばよい。
【0028】
また、本発明の第2の態様における第1ロール等において、ロール本体部と筒状部材とは、少なくとも一部において接合されている状態とするためには、例えば、筒状部材と対向するロール本体部の切欠部の対向面と、ロール本体部の切欠部と対向する筒状部材の対向面とを、溶接すればよいし、あるいは又、圧接すればよい。具体的には、ロール本体部と筒状部材とを溶融・一体化させるアーク溶接法等の溶接法、ロール本体部の対向面と筒状部材の対向面とを密着させ、熱、圧力を加えることで原子同士を金属融合させて接合する抵抗溶接、鍛接、摩擦圧接法等の圧接法、第1金属材料及び第2金属材料よりも融点の低い合金であるロウ材を用いて、ロール本体部及び筒状部材を、溶融させずに、濡れ現象で接合するロウ付け法等の方法を、適宜、選択すればよい。尚、接合後、接合部位に段差や盛り上がりが生じた場合、ロール本体部と筒状部材との接合部に対して円筒研削や円筒研磨を行って、面精度を修正しておけばよい。
【0029】
本発明の第1の態様あるいは第2の態様における第1ロール等において、ロール本体部は、切削ドリルによってロール本体部の側面から円管状の熱媒流路を軸方向に対して平行に設けた、所謂ドリルドロールであってもよいし、スパイラルロールとも呼ばれ、熱媒流路がスパイラル状になっている二重管ロールとしてもよい。尚、熱媒流路の数は、本質的に任意である。熱媒として水や熱媒油を挙げることができる。
【0030】
更には、以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る溶融押出成形方法において、得られたシート成形品の厚さは0.05mm乃至0.5mmである構成とすることができるし、このような構成を含む、以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る溶融押出成形賦形用のロール、溶融押出成形賦形用のロール組立体あるいは溶融押出成形方法において、熱可塑性樹脂は、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリメチル−1−ペンテン樹脂から成る群から選択された熱可塑性樹脂である構成とすることができるが、特に、ポリカーボネート樹脂が好適である。尚、これらの樹脂中には、適宜、熱安定剤、離型剤、UV吸収剤等の添加剤を添加することができる。そして、得られたシート成形品は光拡散シートである形態とすることができるし、あるいは又、得られたシート成形品は輝度向上シートである形態とすることができる。尚、光拡散シートには、通常、マットパターンが形成され、輝度向上シートには、通常、プリズムパターンが形成されている。
【0031】
溶融押出成形装置を構成する溶融押出成形機は周知の溶融押出成形機を用いればよい。溶融押出成形機は、通常、
ダイを有し、原料熱可塑性樹脂を、可塑化、溶融するための加熱シリンダー(バレルとも呼ばれる)、及び、
加熱シリンダーに取り付けられ、加熱シリンダーに原料熱可塑性樹脂を供給するためのホッパー、
を備えている。本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る溶融押出成形方法での使用に適した溶融押出成形機として、ベント式押出機やタンデム式押出機を含む周知の一軸押出機、パラレル式二軸押出機やコニカル式二軸押出機を含む周知の二軸押出機を用いることができるし、ダイの構造、構成、形式も、本質的に任意であり、Tダイやコートハンガーダイを挙げることができる。加熱シリンダーは、一般に、供給部(フィードゾーン)、圧縮部(コンプレッションゾーン)、計量化部(メタリングゾーン)から構成され、計量化部の下流にダイが配置されており、供給部にホッパーが取り付けられている。使用する溶融押出成形機によっては、加熱シリンダーを密閉構造とし、加熱シリンダーに不活性ガスを導入できるような改造が必要とされる場合がある。ホッパーに投入された原料熱可塑性樹脂は、加熱シリンダーの供給部では固形のまま圧縮部に送られ、圧縮部の前後で原料熱可塑性樹脂の可塑化、溶融が進行し、計量化部で計量され、ダイを通って押し出される。尚、排気口(ベント部)を設ける場合、排気口(ベント部)を圧縮部あるいはその下流(例えば、圧縮部と計量化部との間)に設ければよい。加熱シリンダー、スクリュー、ホッパーの形式、構造、構成は、本質的に任意であり、公知の加熱シリンダー、スクリュー、ホッパーを用いることができる。
【0032】
本発明におけるロール組立体として、厚さが300μm以下のシート成形品を成形するのに適した、片面圧着のみが可能な薄物シート成形品専用の成形装置を使用することができるし、厚さが300μm以上のシート成形品を成形するのに適した、3本ロール構成により両面圧着が可能な厚物シート成形品専用の成形装置を使用することもできる。シート成形装置の場合には、ロール配置が縦型仕様でも横型仕様でも、あるいは、そのハイブリット型でも構わない。第2ロール(圧着ロール)として使用可能なロールとして、金属剛体ロール、金属弾性ロール、ゴムロール等を挙げることができる。ここで、金属弾性ロールには、金属外筒の厚さを2mm前後まで薄くしたものや、ゴムロールの上に薄い金属スリーブを巻いたもの等が含まれる。
【0033】
第1ロールと第2ロールの圧着圧(線圧:圧着力をシート成形品の幅で除した値)はロール剛性の許容範囲において任意であるが、好ましい例として、5〜50kg/cmを挙げることができる。第1ロールの設定温度は、使用樹脂のガラス転移温度より10゜C程度低い温度に設定することが多いが、剥離不良による外観不良発生の程度によって、適宜、調整することが可能である。
【0034】
シート成形品の成形速度についても、シート成形品の厚さに応じて、適宜、調整可能であるが、樹脂冷却不足による転写不良現象の発生を起こさせないようにするため、2m/分乃至20m/分程度が好ましい。このような速度領域においては、本発明の溶融押出成形賦形用のロールの冷却遅延効果が最も顕著となり、転写性向上と剥離不良現象抑制の両立が図り易い。