特許第6078706号(P6078706)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱瓦斯化学株式会社の特許一覧 ▶ MGCフィルシート株式会社の特許一覧

特許6078706溶融押出成形賦形用のロール、溶融押出成形賦形用のロール組立体、及び、溶融押出成形方法
<>
  • 特許6078706-溶融押出成形賦形用のロール、溶融押出成形賦形用のロール組立体、及び、溶融押出成形方法 図000002
  • 特許6078706-溶融押出成形賦形用のロール、溶融押出成形賦形用のロール組立体、及び、溶融押出成形方法 図000003
  • 特許6078706-溶融押出成形賦形用のロール、溶融押出成形賦形用のロール組立体、及び、溶融押出成形方法 図000004
  • 特許6078706-溶融押出成形賦形用のロール、溶融押出成形賦形用のロール組立体、及び、溶融押出成形方法 図000005
  • 特許6078706-溶融押出成形賦形用のロール、溶融押出成形賦形用のロール組立体、及び、溶融押出成形方法 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6078706
(24)【登録日】2017年1月27日
(45)【発行日】2017年2月15日
(54)【発明の名称】溶融押出成形賦形用のロール、溶融押出成形賦形用のロール組立体、及び、溶融押出成形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 47/88 20060101AFI20170206BHJP
   B29C 59/04 20060101ALI20170206BHJP
   B29L 7/00 20060101ALN20170206BHJP
【FI】
   B29C47/88 Z
   B29C59/04 C
   B29L7:00
【請求項の数】22
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2012-284597(P2012-284597)
(22)【出願日】2012年12月27日
(65)【公開番号】特開2014-124897(P2014-124897A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2015年10月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】597003516
【氏名又は名称】MGCフィルシート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 共永
(74)【代理人】
【識別番号】100147762
【弁理士】
【氏名又は名称】藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】柿木 修
(72)【発明者】
【氏名】武田 聖英
(72)【発明者】
【氏名】杉山 真隆
【審査官】 辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−248421(JP,A)
【文献】 実公昭39−022196(JP,Y1)
【文献】 特開2010−036564(JP,A)
【文献】 特開2009−166489(JP,A)
【文献】 特開2005−321013(JP,A)
【文献】 特開2003−053834(JP,A)
【文献】 特表2008−543617(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0001333(US,A1)
【文献】 特開2012−232586(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0313288(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C47/00−47/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂の溶融押出成形において使用される溶融押出成形賦形用のロールであって、
内部に熱媒流路が設けられた、金属製のロール本体部、
ロール本体部の中央部分の表面を覆う第1筒状部材、及び、
ロール本体部の両端部分の表面を覆う第2筒状部材、
から成り、
第1筒状部材は、40W/m・K以上の熱伝導率を有する第1金属材料から製作されており、
第2筒状部材は、20W/m・K以下の熱伝導率を有する第2金属材料から作製されており、
第1筒状部材と第2筒状部材とは、少なくとも一部において接合されていることを特徴とする溶融押出成形賦形用のロール。
【請求項2】
第2筒状部材は、第1筒状部材の延在部を介してロール本体部の両端部分の表面を覆っている請求項1に記載の溶融押出成形賦形用のロール。
【請求項3】
第2筒状部材の表面は、第1筒状部材の延在部によって覆われている請求項1に記載の溶融押出成形賦形用のロール。
【請求項4】
少なくとも第1筒状部材の表面にはメッキ層が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の溶融押出成形賦形用のロール。
【請求項5】
メッキ層は、銅メッキ層、ニッケルメッキ層、無電解ニッケル−リンメッキ層、電解ニッケル−リンメッキ層及びクロムメッキ層から成る群から選択されたメッキ層から成ることを特徴とする請求項4に記載の溶融押出成形賦形用のロール。
【請求項6】
メッキ層の表面には、マットパターン、又は、プリズムパターン、又は、マイクロレンズアレイパターンが形成されていることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の溶融押出成形賦形用のロール。
【請求項7】
第1金属材料は、炭素鋼、又は、クロム鋼、又は、クロムモリブデン鋼から成ることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の溶融押出成形賦形用のロール。
【請求項8】
第2金属材料は、ニッケル鋼、又は、ステンレス鋼から成ることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の溶融押出成形賦形用のロール。
【請求項9】
ロール本体部は第1金属材料から構成されている請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の溶融押出成形賦形用のロール。
【請求項10】
熱可塑性樹脂の溶融押出成形において使用される溶融押出成形賦形用のロールであって、
内部に熱媒流路が設けられ、両端部分の外面に切欠部が設けられたロール本体部、及び、
ロール本体部の両端部分の切欠部のそれぞれに嵌合した筒状部材、
から成り、
ロール本体部は、40W/m・K以上の熱伝導率を有する第1金属材料から製作されており、
筒状部材は、20W/m・K以下の熱伝導率を有する第2金属材料から作製されており、
ロール本体部の切欠部と筒状部材とは、少なくとも一部において接合されていることを特徴とする溶融押出成形賦形用のロール。
【請求項11】
ロール本体部及び筒状部材の表面にはメッキ層が形成されていることを特徴とする請求項10に記載の溶融押出成形賦形用のロール。
【請求項12】
メッキ層は、銅メッキ層、ニッケルメッキ層、無電解ニッケル−リンメッキ層、電解ニッケル−リンメッキ層及びクロムメッキ層から成る群から選択されたメッキ層から成ることを特徴とする請求項11に記載の溶融押出成形賦形用のロール。
【請求項13】
メッキ層の表面には、マットパターン、又は、プリズムパターン、又は、マイクロレンズアレイパターンが形成されていることを特徴とする請求項11又は請求項12に記載の溶融押出成形賦形用のロール。
【請求項14】
第1金属材料は、炭素鋼、又は、クロム鋼、又は、クロムモリブデン鋼から成ることを特徴とする請求項10乃至請求項13のいずれか1項に記載の溶融押出成形賦形用のロール。
【請求項15】
第2金属材料は、ニッケル鋼、又は、ステンレス鋼から成ることを特徴とする請求項10乃至請求項14のいずれか1項に記載の溶融押出成形賦形用のロール。
【請求項16】
溶融押出成形賦形用のロール、及び、溶融押出成形賦形用のロールと対向して配置された圧着用ロールから成り、
溶融押出成形賦形用のロールは、
内部に熱媒流路が設けられた、金属製のロール本体部、
ロール本体部の中央部分の表面を覆う第1筒状部材、及び、
ロール本体部の両端部分の表面を覆う第2筒状部材、
から成り、
第1筒状部材は、40W/m・K以上の熱伝導率を有する第1金属材料から製作されており、
第2筒状部材は、20W/m・K以下の熱伝導率を有する第2金属材料から作製されており、
第1筒状部材と第2筒状部材とは、少なくとも一部において接合されていることを特徴とする溶融押出成形賦形用のロール組立体。
【請求項17】
溶融押出成形賦形用のロール、及び、溶融押出成形賦形用のロールと対向して配置された圧着用ロールから成り、
溶融押出成形賦形用のロールは、
内部に熱媒流路が設けられ、両端部分の外面に切欠部が設けられたロール本体部、及び、
ロール本体部の両端部分の切欠部のそれぞれに嵌合した筒状部材、
から成り、
ロール本体部は、40W/m・K以上の熱伝導率を有する第1金属材料から製作されており、
筒状部材は、20W/m・K以下の熱伝導率を有する第2金属材料から作製されており、
ロール本体部の切欠部と筒状部材とは、少なくとも一部において接合されていることを特徴とする溶融押出成形賦形用のロール組立体。
【請求項18】
溶融押出成形賦形用のロール、及び、溶融押出成形賦形用のロールと対向して配置された圧着用ロールから成り、
溶融押出成形賦形用のロールは、
内部に熱媒流路が設けられた、金属製のロール本体部、
ロール本体部の中央部分の表面を覆う第1筒状部材、及び、
ロール本体部の両端部分の表面を覆う第2筒状部材、
から成り、
第1筒状部材は、40W/m・K以上の熱伝導率を有する第1金属材料から製作されており、
第2筒状部材は、20W/m・K以下の熱伝導率を有する第2金属材料から作製されており、
第1筒状部材と第2筒状部材とは、少なくとも一部において接合されている溶融押出成形賦形用のロール組立体を用いた溶融押出成形方法であって、
ダイから押し出された溶融熱可塑性樹脂を、溶融押出成形賦形用のロールと圧着用ロールとの間を通過させることで、シート成形品を得ることを特徴とする溶融押出成形方法。
【請求項19】
溶融押出成形賦形用のロール、及び、溶融押出成形賦形用のロールと対向して配置された圧着用ロールから成り、
溶融押出成形賦形用のロールは、
内部に熱媒流路が設けられ、両端部分の外面に切欠部が設けられたロール本体部、及び、
ロール本体部の両端部分の切欠部のそれぞれに嵌合した筒状部材、
から成り、
ロール本体部は、40W/m・K以上の熱伝導率を有する第1金属材料から製作されており、
筒状部材は、20W/m・K以下の熱伝導率を有する第2金属材料から作製されており、
ロール本体部の切欠部と筒状部材とは、少なくとも一部において接合されている溶融押出成形賦形用のロール組立体を用いた溶融押出成形方法であって、
ダイから押し出された溶融熱可塑性樹脂を、溶融押出成形賦形用のロールと圧着用ロールとの間を通過させることで、シート成形品を得ることを特徴とする溶融押出成形方法。
【請求項20】
得られたシート成形品の厚さは0.05mm乃至0.5mmであることを特徴とする請求項18又は請求項19に記載の溶融押出成形方法。
【請求項21】
熱可塑性樹脂は、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリメチル−1−ペンテン樹脂から成る群から選択された熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項18乃至請求項20のいずれか1項に記載の溶融押出成形方法。
【請求項22】
得られたシート成形品は、光拡散フィルム又は輝度向上シートであることを特徴とする請求項18乃至請求項21のいずれか1項に記載の溶融押出成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融押出成形賦形用のロール、溶融押出成形賦形用のロール組立体、及び、溶融押出成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂シートの溶融押出成形を行う際、屡々、表面に微細構造を有する溶融押出成形賦形用のロールを用いてその微細構造をシート表面に転写することで、熱可塑性樹脂から成るシート成形品の表面に様々な機能を付与している。ここで、溶融押出成形によって表面に微細構造を有する熱可塑性樹脂から成るシート成形品を成形する場合、幅方向における転写均一性、特に、シート成形品端部における転写均一性が大きな問題である。
【0003】
一般的に、Tダイやコートハンガーダイのリップ部から流出した溶融熱可塑性樹脂から成るシート(以下、単に『シート』と呼ぶ場合がある)は、溶融押出成形賦形用の金属製のロール(以下、『第1ロール』と呼ぶ場合がある)と圧着用のプレスロール(以下、『第2ロール』と呼ぶ場合がある)との間で圧着される前に、即ち、エアギャップにおいて、空気によって冷却され、シート温度が大きく低下する。この温度低下の度合いは、シート中央部とシート端部とでは大きく異なっており、シート端部に近いほど冷却され易いので、温度低下が大きい。それ故、シート中央部とシート端部では第1ロール表面の微細構造の転写状態が異なってしまうし、シート中央部とシート端部における諸物性(例えば、複屈折率や厚さ)の不均一化を招く。
【0004】
このようなシート幅方向における転写状態や諸物性の不均一化を防止するための方法として、第1ロールと接触するシートの第1ロールの軸線方向に沿った温度変化を異ならせる方法を挙げることができる。通常、第1ロールの内部には、第1ロールの表面温度の制御のための熱媒流路が設けられている。ところで、熱媒流路から第1ロールの表面までの距離が短い場合、熱媒流路から第1ロールの表面までの距離が長い場合と比較して、第1ロールと接触したシートの温度変化は、より大きい。それ故、第1ロール端部近傍における熱媒流路から第1ロールの表面までの距離を、第1ロール中央部における熱媒流路から第1ロールの表面までの距離よりも長くすることで、第1ロール端部と接触したシートの部分の温度変化を、第1ロール中央部と接触したシートの部分の温度変化よりも小さくすることができる。その結果、シート中央部とシート端部とで、第1ロール表面の微細構造の転写状態や諸物性の均一化を図ることが可能となる。
【0005】
このように、第1ロール中央部にあっては熱媒流路から第1ロールの表面までの距離を短くし、第1ロール端部にあっては熱媒流路から第1ロールの表面までの距離を長くするためには、例えば、実開平6−001834号公報の図11及び図12に開示された構造を採用すればよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平6−001834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
実開平6−001834号公報の図11及び図12に開示された構造は、第1ロールの端面から熱媒流路用の円穴を切削ドリルにて空けることによって製作された、所謂ドリルドロールによって達成することが可能である。しかしながら、第1ロール(溶融押出成形賦形用の金属製のロール)の長さが長くなると、このような切削ドリルによる加工は極めて困難となる。
【0008】
従って、本発明の目的は、中央部と端部で諸物性に出来る限り差異が無いシート成形品(フィルム成形品)を溶融押出成形法によって成形するための溶融押出成形賦形用のロール、係る溶融押出成形賦形用のロールを備えた溶融押出成形賦形用のロール組立体、及び、係る溶融押出成形賦形用のロール組立体を用いた溶融押出成形方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための本発明の第1の態様に係る溶融押出成形賦形用のロールは、
熱可塑性樹脂の溶融押出成形において使用される溶融押出成形賦形用のロールであって、
内部に熱媒流路が設けられた、金属製のロール本体部、
ロール本体部の中央部分の表面を覆う第1筒状部材、及び、
ロール本体部の両端部分の表面を覆う第2筒状部材、
から成り、
第1筒状部材は、40W/m・K以上の熱伝導率を有する第1金属材料から製作されており、
第2筒状部材は、20W/m・K以下の熱伝導率を有する第2金属材料から作製されており、
第1筒状部材と第2筒状部材とは、少なくとも一部において接合されていることを特徴とする。
【0010】
上記の目的を達成するための本発明の第2の態様に係る溶融押出成形賦形用のロールは、
熱可塑性樹脂の溶融押出成形において使用される溶融押出成形賦形用のロールであって、
内部に熱媒流路が設けられ、両端部分の外面に切欠部が設けられたロール本体部、及び、
ロール本体部の両端部分の切欠部のそれぞれに嵌合した筒状部材、
から成り、
ロール本体部は、40W/m・K以上の熱伝導率を有する第1金属材料から製作されており、
筒状部材は、20W/m・K以下の熱伝導率を有する第2金属材料から作製されており、
ロール本体部の切欠部と筒状部材とは、少なくとも一部において接合されていることを特徴とする。
【0011】
尚、本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る溶融押出成形賦形用のロールにおいて、限定するものではないが、第1金属材料の熱伝導率の上限値として100W/m・Kを挙げることができるし、第2金属材料の熱伝導率の下限値として5W/m・Kを挙げることができる。
【0012】
上記の目的を達成するための本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る溶融押出成形賦形用のロール組立体は、溶融押出成形賦形用のロール(以下、便宜上、『第1ロール』と呼ぶ場合がある)、及び、溶融押出成形賦形用のロールと対向して配置された圧着用ロール(以下、便宜上、『第2ロール』と呼ぶ場合がある)から成り、
溶融押出成形賦形用のロール(第1ロール)は、本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る溶融押出成形賦形用のロールから構成されている。
【0013】
上記の目的を達成するための本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る溶融押出成形方法は、
溶融押出成形賦形用のロール(第1ロール)、及び、溶融押出成形賦形用のロールと対向して配置された圧着用ロール(第2ロール)から成り、
溶融押出成形賦形用のロール(第1ロール)は、本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る溶融押出成形賦形用のロールから構成された溶融押出成形賦形用のロール組立体を用いた溶融押出成形方法であって、
ダイから押し出された溶融熱可塑性樹脂を、溶融押出成形賦形用のロール(第1ロール)と圧着用ロール(第2ロール)との間を通過させることで、シート成形品を得ることを特徴とする。尚、シート成形品には、シート、フィルム、フィルム成形品が包含される。
【0014】
本発明の第1の態様に係る溶融押出成形賦形用のロール、本発明の第1の態様に係る溶融押出成形賦形用のロール組立体を構成する溶融押出成形賦形用のロール、あるいは、本発明の第1の態様に係る溶融押出成形方法において使用される溶融押出成形賦形用のロール(以下、これらの溶融押出成形賦形用のロールを総称して、『本発明の第1の態様における第1ロール等』と呼ぶ場合がある)において、第2筒状部材は、第1筒状部材の延在部を介してロール本体部の両端部分の表面を覆っている形態とすることができる。あるいは又、第2筒状部材の表面は、第1筒状部材の延在部によって覆われている形態とすることができる。尚、第2筒状部材と第1筒状部材の延在部とを螺合することで一体化することができるし、あるいは又、焼嵌め法によって第2筒状部材と第1筒状部材の延在部とを一体化することもできるし、溶接によって第2筒状部材と第1筒状部材の延在部とを一体化することもできる。第2筒状部材と第1筒状部材の延在部の肉厚の比として、1:9乃至9:1を例示することができる。また、第2筒状部材と第1筒状部材の延在部の肉厚の合計として、1mm乃至10mmを例示することができる。本発明の第1の態様における第1ロール等の表面粗さを重視する場合には、第1筒状部材の延在部を外側に配置することが望ましい。また、転写性を重視する場合には、第2筒状部材を外側に配置する方が望ましい。これらは、本発明の第1の態様における第1ロール等に求められる仕様・要求の違いにより、適宜、選択することが可能である。
【0015】
以上に説明した好ましい形態を含む本発明の第1の態様における第1ロール等において、少なくとも第1筒状部材の表面にはメッキ層が形成されている構成とすることができる。即ち、第1筒状部材の表面にメッキ層が形成されている構成とすることができるし、第1筒状部材及び第2筒状部材の表面にメッキ層が形成されている構成とすることができる。
【0016】
また、本発明の第2の態様に係る溶融押出成形賦形用のロール、本発明の第2の態様に係る溶融押出成形賦形用のロール組立体を構成する溶融押出成形賦形用のロール、あるいは、本発明の第2の態様に係る溶融押出成形方法において使用される溶融押出成形賦形用のロール(以下、これらの溶融押出成形賦形用のロールを総称して、『本発明の第2の態様における第1ロール等』と呼ぶ場合がある)において、ロール本体部及び筒状部材の表面にはメッキ層が形成されている構成とすることができる。
【0017】
そして、これらの場合、メッキ層を構成する材料として、例えば、ニッケル−リン合金や、銅、ニッケル、クロムを挙げることができ、無電解メッキ法あるいは電解メッキ法にて形成することができる。より具体的には、メッキ層は、例えば、銅メッキ層、ニッケルメッキ層、無電解ニッケル−リンメッキ層、電解ニッケル−リンメッキ層及びクロムメッキ層から成る群から選択された少なくとも1種類のメッキ層から成ることが好ましい。尚、表面に微細凹凸構造を有する第1ロールを作製する場合には、ビッカース硬度が低く、加工性に富む銅やニッケルからメッキ層を構成することが好ましく、一方、高いビッカース硬度が要求される場合にはクロムからメッキ層を構成することが好ましい。また、適度に高いビッカース硬度と微細加工性が併せて要求される場合、ニッケル−リン合金からメッキ層を構成することが好ましい。メッキ層の厚さとして、0.05mm乃至2.0mmを例示することができる。上記の好ましい構成を含む本発明の第1の態様あるいは第2の態様における第1ロール等において、メッキ層の表面には、マットパターン、又は、プリズムパターン、又は、マイクロレンズアレイパターンが形成されている形態とすることができる。ここで、サンドブラスト、放電加工、ケミカルエッチング等の方法によりマットパターンを形成することができる。また、ダイヤモンドバイトによる切削等によってプリズムパターンやマイクロレンズアレイパターンを形成することができる。あるいは又、例えば、外装材等に使用するための装飾用の図柄とすることもできる。第1筒状部材及び第2筒状部材の表面(本発明の第1の態様における第1ロール等)、あるいは、ロール本体部及び筒状部材(本発明の第2の態様における第1ロール等)の表面へのメッキ層の形成や光学パターン加工は、ロール本体部に第1筒状部材及び第2筒状部材を装着する前に行ってもよいし、ロール本体部に筒状部材を装着する前に行ってもよいし、装着後に行ってもよい。但し、ロール本体部に第1筒状部材及び第2筒状部材を装着する前に行った場合、あるいは又、ロール本体部に筒状部材を装着する前に行った場合、メッキ層に傷が入ったり、変質したり、熱歪みによって円筒度が悪化する虞があるので、ロール本体部に第1筒状部材及び第2筒状部材を装着した後、あるいは又、ロール本体部に筒状部材を装着した後、行うことが望ましい。
【0018】
場合によっては、第1ロールを鏡面ロールとして使用することもできる。即ち、メッキ層の表面は鏡面である形態とすることができる。そして、この場合、第1筒状部材及び第2筒状部材の表面にハードクロム層をメッキ法にて形成することが好ましく(本発明の第1の態様における第1ロール等)、あるいは又、ロール本体部及び筒状部材の表面にハードクロム層をメッキ法にて形成することが好ましい(本発明の第2の態様における第1ロール等)。ハードクロム層は非常に硬く、研磨性に優れ、しかも、傷が付き難い。ハードクロム層の表面粗さは、少なくとも0.2S以下(算術平均表面粗さで50nm以下)とすることが好ましい。鏡面ロールとして使用する場合、その研磨面が転写されるため、非常にフラットなプレーンシート成形品の成形が可能となる。即ち、シート端部の鏡面転写性が向上することに加えて、シート端部のネックインに起因した厚肉部を潰し易くなるので、全面均一プレスが可能となり、通常の鏡面ロールを使用した場合に比べて、更に一層、面精度が向上する。
【0019】
一般に、熱可塑性樹脂の溶融押出成形においては、ダイのリップ部から流出した溶融熱可塑性樹脂は溶融押出成形賦形用のロールに接触する直前のエアギャップにおいてネックインし、リップ開度の調整では制御しきれないほど、シート成形品最端部が極端に厚くなる場合がある。精密賦形シート成形品の成形において、シート成形品最端部の厚肉部は転写阻害因子となり得るので好ましくない。従来の技術にあっては、この端部厚肉部をプレスしないように、ロール端部に段差を設ける場合があるが、本発明の第1の態様あるいは第2の態様における第1ロール等にあっては、このようなロール端部に段差を設けることは不要である。
【0020】
更には、以上に説明した各種の好ましい構成、形態を含む本発明の第1の態様における第1ロール等において、
第1筒状部材及び第2筒状部材は、焼嵌め法によってロール本体部に装着されており、
常温における第1筒状部材及び第2筒状部材の内径をD2-i、常温におけるロール本体部の外径をD1-oとしたとき、
0mm≦D1-o−D2-i≦0.4mm
好ましくは、
0.05mm≦D1-o−D2-i≦0.20mm
を満足することが望ましい。尚、
ロール本体部の外径D1-o :200mm乃至800mm
第1筒状部材及び第2筒状部材の肉厚:1mm乃至10mm
を例示することができる。尚、第1筒状部材及び第2筒状部材の肉厚とは、常温における第1筒状部材及び第2筒状部材の外径をD2-oとしたとき、
(D2-o−D2-i)/2
である。第1筒状部材及び第2筒状部材の材質(熱伝導率)の選択、第1筒状部材及び第2筒状部材の肉厚の選択に基づき、第1筒状部材及び第2筒状部材による、第1ロールと接する溶融熱可塑性樹脂の冷却遅延効果の程度の制御が可能である。常温から350゜Cまでの温度範囲において、第1筒状部材及び第2筒状部材の線膨張係数は、ロール本体部の線膨張係数よりも小さいことが好ましい。溶融押出成形時においては第1ロールを所望の設定温度とする必要があるため、第1ロールの温度上昇による第1筒状部材及び第2筒状部材の緩みを防止するためである。但し、ロール本体部の線膨張係数よりも第1筒状部材及び第2筒状部材の線膨張係数が大きく、あるいは又、同程度である場合には、焼嵌め代を若干大きく取ることで、第1筒状部材及び第2筒状部材の緩みを防止することもできるし、第1筒状部材及び第2筒状部材の端部をロール本体部にスポット溶接して空回りや脱落を防止することも可能である。
【0021】
また、以上に説明した各種の好ましい構成、形態を含む本発明の第2の態様における第1ロール等において、
筒状部材は、焼嵌め法によってロール本体部に装着されており、
常温における筒状部材の内径をD2-i、常温におけるロール本体部の切欠部の外径をD1-oとしたとき、
0mm≦D1-o−D2-i≦0.4mm
好ましくは、
0.05mm≦D1-o−D2-i≦0.20mm
を満足することが望ましい。尚、
ロール本体部の外径D1-o :200mm乃至800mm
筒状部材肉厚 :1mm乃至10mm
を例示することができる。尚、筒状部材の肉厚とは、常温における筒状部材の外径をD2-oとしたとき、
(D2-o−D2-i)/2
である。ロール本体部及び筒状部材の材質(熱伝導率)の選択、筒状部材の肉厚の選択に基づき、ロール本体部及び筒状部材による、第1ロールと接する溶融熱可塑性樹脂の冷却遅延効果の程度の制御が可能である。溶融押出成形時においては第1ロールを所望の設定温度とする必要があるため、第1ロールの温度上昇による筒状部材の緩みを防止するためである。但し、ロール本体部の線膨張係数よりも筒状部材の線膨張係数が大きく、あるいは又、同程度である場合には、焼嵌め代を若干大きく取ることで、筒状部材の緩みを防止することもできるし、筒状部材の端部をロール本体部にスポット溶接して空回りや脱落を防止することも可能である。
【0022】
更には、以上に説明した各種の好ましい構成、形態を含む本発明の第1の態様あるいは第2の態様における第1ロール等において、第1金属材料は、例えば、炭素鋼、クロム鋼、クロムモリブデン鋼、鋳鉄、又は、タングステン鋼から成ることが好ましく、より具体的には、例えば、構造用合金鋼材であるクロムモリブデン鋼SCM440から成ることがより好ましいし、第2金属材料は、例えば、ニッケル鋼、ステンレス鋼、ニッケル合金、又は、チタン(Ti)から成ることが好ましい。また、本発明の第1の態様の態様における第1ロール等において、ロール本体部を構成する金属材料として、材料の強度や剛性という観点から、第1金属材料として挙げた材料の中から選択することが好ましく、即ち、ロール本体部は第1金属材料から鳴ることが好ましく、更には、線膨張係数等の熱的性質の違いによるトラブルの発生防止といった観点から、第1筒状部材と同じ金属材料から構成することが望ましい。特に好ましい材料として、クロムモリブデン鋼を挙げることができる。但し、これに限定するものではなく、場合によっては、第1金属材料よりも高い熱伝導率を有する材料から製作することもできる。各材料の常温における熱伝導率は以下の表1のとおりである。
【0023】
[表1]
炭素鋼 :45〜53W/m・K
クロム鋼 :52〜60W/m・K
クロムモリブデン鋼 :40〜48W/m・K
鋳鉄 :48W/m・K
タングステン鋼 :53〜66W/m・K
ニッケル鋼 :10〜19W/m・K
ステンレス鋼 :13〜16W/m・K
ニッケル合金 : 9〜17W/m・K
チタン :17W/m・K
【0024】
ロール本体部の表面の加工精度は、高ければ高い程、好ましく、その芯振れについては1000分の10ミリ以下、より好ましくは1000分の5ミリ以下であることが望ましい。ロール本体部の表面の表面粗さに関しては、バフ研磨仕上げで少なくとも0.4S程度とすることが好ましい。本発明の第1の態様における第1ロール等にあっては、ロール本体部の錆の発生を防止するために、10μm以下の厚さの薄いメッキ層を設けてもよい。また、第1筒状部材及び第2筒状部材の加工精度については、ロール本体部と同様に、高ければ高い程、好ましいが、第1筒状部材及び第2筒状部材の場合、第1筒状部材及び第2筒状部材の外径(D2-o)だけでなく、内径(D2-i)についても高い加工精度が必要とされる。本発明の第2の態様における第1ロール等にあっても、筒状部材の加工精度については、ロール本体部と同様に、高ければ高い程、好ましいが、筒状部材の外径(D2-o)だけでなく、内径(D2-i)についても高い加工精度が必要とされる。外径(D2-o)、内径(D2-i)共に、真円度を1000分の5ミリ以下、円筒度を1000分の10ミリ以下に抑えることが望ましい。
【0025】
更には、以上に説明した各種の好ましい構成、形態を含む本発明の第1の態様における第1ロール等において、溶融押出成形賦形用のロールを用いて溶融押出成形賦形されるシート成形品の幅をW0とし、第1筒状部材の長さをX1としたとき、
0>X1
を満足することが好ましく、あるいは又、
30mm≦W0−X1≦300mm
を満足することが好ましい。また、第2筒状部材の長さをX2としたとき、
30mm≦X2≦300mm
を満足することが好ましい。更には、
(X1+2・X2)>W0+30(mm)
を満足することが好ましい。尚、第1筒状部材及び第2筒状部材の合計の長さは、ロール本体部の実効的な長さと同じとすることができるし、あるいは又、ロール本体部の実効的な長さよりも短くすることもできる。X2の領域がシート成形品の端部と30mm以上重なる状態とすることが好ましい。
【0026】
また、以上に説明した各種の好ましい構成、形態を含む本発明の第2の態様における第1ロール等において、溶融押出成形賦形用のロールを用いて溶融押出成形賦形されるシート成形品の幅をW0とし、ロール本体部の切欠部と切欠部との間のロール本体部の部分の長さをX1としたとき、
0>X1
を満足することが好ましく、あるいは又、
30mm≦W0−X1≦300mm
を満足することが好ましい。また、筒状部材の長さをX2としたとき、
30mm≦X2≦300mm
を満足することが好ましい。更には、
(X1+2・X2)>W0+30(mm)
を満足することが好ましい。2の領域がシート成形品の端部と30mm以上重なる状態とすることが好ましい。
【0027】
本発明の第1の態様における第1ロール等において、第1筒状部材と第2筒状部材とは、少なくとも一部において接合されている状態とするためには、例えば、第2筒状部材と対向する第1筒状部材の対向面と、第1筒状部材と対向する第2筒状部材の対向面とを、溶接すればよいし、あるいは又、圧接すればよい。具体的には、第1筒状部材と第2筒状部材とを溶融・一体化させるアーク溶接法等の溶接法、第1筒状部材の対向面と第2筒状部材の対向面とを密着させ、熱、圧力を加えることで原子同士を金属融合させて接合する抵抗溶接、鍛接、摩擦圧接法等の圧接法、第1金属材料及び第2金属材料よりも融点の低い合金であるロウ材を用いて、第1筒状部材及び第2筒状部材を、溶融させずに、濡れ現象で接合するロウ付け法等の方法を、適宜、選択すればよい。尚、接合後、接合部位に段差や盛り上がりが生じた場合、第1筒状部材と第2筒状部材との接合部に対して円筒研削や円筒研磨を行って、面精度を修正しておけばよい。
【0028】
また、本発明の第2の態様における第1ロール等において、ロール本体部と筒状部材とは、少なくとも一部において接合されている状態とするためには、例えば、筒状部材と対向するロール本体部の切欠部の対向面と、ロール本体部の切欠部と対向する筒状部材の対向面とを、溶接すればよいし、あるいは又、圧接すればよい。具体的には、ロール本体部と筒状部材とを溶融・一体化させるアーク溶接法等の溶接法、ロール本体部の対向面と筒状部材の対向面とを密着させ、熱、圧力を加えることで原子同士を金属融合させて接合する抵抗溶接、鍛接、摩擦圧接法等の圧接法、第1金属材料及び第2金属材料よりも融点の低い合金であるロウ材を用いて、ロール本体部及び筒状部材を、溶融させずに、濡れ現象で接合するロウ付け法等の方法を、適宜、選択すればよい。尚、接合後、接合部位に段差や盛り上がりが生じた場合、ロール本体部と筒状部材との接合部に対して円筒研削や円筒研磨を行って、面精度を修正しておけばよい。
【0029】
本発明の第1の態様あるいは第2の態様における第1ロール等において、ロール本体部は、切削ドリルによってロール本体部の側面から円管状の熱媒流路を軸方向に対して平行に設けた、所謂ドリルドロールであってもよいし、スパイラルロールとも呼ばれ、熱媒流路がスパイラル状になっている二重管ロールとしてもよい。尚、熱媒流路の数は、本質的に任意である。熱媒として水や熱媒油を挙げることができる。
【0030】
更には、以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る溶融押出成形方法において、得られたシート成形品の厚さは0.05mm乃至0.5mmである構成とすることができるし、このような構成を含む、以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る溶融押出成形賦形用のロール、溶融押出成形賦形用のロール組立体あるいは溶融押出成形方法において、熱可塑性樹脂は、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリメチル−1−ペンテン樹脂から成る群から選択された熱可塑性樹脂である構成とすることができるが、特に、ポリカーボネート樹脂が好適である。尚、これらの樹脂中には、適宜、熱安定剤、離型剤、UV吸収剤等の添加剤を添加することができる。そして、得られたシート成形品は光拡散シートである形態とすることができるし、あるいは又、得られたシート成形品は輝度向上シートである形態とすることができる。尚、光拡散シートには、通常、マットパターンが形成され、輝度向上シートには、通常、プリズムパターンが形成されている。
【0031】
溶融押出成形装置を構成する溶融押出成形機は周知の溶融押出成形機を用いればよい。溶融押出成形機は、通常、
ダイを有し、原料熱可塑性樹脂を、可塑化、溶融するための加熱シリンダー(バレルとも呼ばれる)、及び、
加熱シリンダーに取り付けられ、加熱シリンダーに原料熱可塑性樹脂を供給するためのホッパー、
を備えている。本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る溶融押出成形方法での使用に適した溶融押出成形機として、ベント式押出機やタンデム式押出機を含む周知の一軸押出機、パラレル式二軸押出機やコニカル式二軸押出機を含む周知の二軸押出機を用いることができるし、ダイの構造、構成、形式も、本質的に任意であり、Tダイやコートハンガーダイを挙げることができる。加熱シリンダーは、一般に、供給部(フィードゾーン)、圧縮部(コンプレッションゾーン)、計量化部(メタリングゾーン)から構成され、計量化部の下流にダイが配置されており、供給部にホッパーが取り付けられている。使用する溶融押出成形機によっては、加熱シリンダーを密閉構造とし、加熱シリンダーに不活性ガスを導入できるような改造が必要とされる場合がある。ホッパーに投入された原料熱可塑性樹脂は、加熱シリンダーの供給部では固形のまま圧縮部に送られ、圧縮部の前後で原料熱可塑性樹脂の可塑化、溶融が進行し、計量化部で計量され、ダイを通って押し出される。尚、排気口(ベント部)を設ける場合、排気口(ベント部)を圧縮部あるいはその下流(例えば、圧縮部と計量化部との間)に設ければよい。加熱シリンダー、スクリュー、ホッパーの形式、構造、構成は、本質的に任意であり、公知の加熱シリンダー、スクリュー、ホッパーを用いることができる。
【0032】
本発明におけるロール組立体として、厚さが300μm以下のシート成形品を成形するのに適した、片面圧着のみが可能な薄物シート成形品専用の成形装置を使用することができるし、厚さが300μm以上のシート成形品を成形するのに適した、3本ロール構成により両面圧着が可能な厚物シート成形品専用の成形装置を使用することもできる。シート成形装置の場合には、ロール配置が縦型仕様でも横型仕様でも、あるいは、そのハイブリット型でも構わない。第2ロール(圧着ロール)として使用可能なロールとして、金属剛体ロール、金属弾性ロール、ゴムロール等を挙げることができる。ここで、金属弾性ロールには、金属外筒の厚さを2mm前後まで薄くしたものや、ゴムロールの上に薄い金属スリーブを巻いたもの等が含まれる。
【0033】
第1ロールと第2ロールの圧着圧(線圧:圧着力をシート成形品の幅で除した値)はロール剛性の許容範囲において任意であるが、好ましい例として、5〜50kg/cmを挙げることができる。第1ロールの設定温度は、使用樹脂のガラス転移温度より10゜C程度低い温度に設定することが多いが、剥離不良による外観不良発生の程度によって、適宜、調整することが可能である。
【0034】
シート成形品の成形速度についても、シート成形品の厚さに応じて、適宜、調整可能であるが、樹脂冷却不足による転写不良現象の発生を起こさせないようにするため、2m/分乃至20m/分程度が好ましい。このような速度領域においては、本発明の溶融押出成形賦形用のロールの冷却遅延効果が最も顕著となり、転写性向上と剥離不良現象抑制の両立が図り易い。
【発明の効果】
【0035】
本発明の第1の態様における第1ロール等は、ロール本体部並びに第1筒状部材及び第2筒状部材から成り、第1筒状部材を構成する第1金属材料の熱伝導率、第2筒状部材を構成する第2金属材料の熱伝導率が規定されている。また、本発明の第2の態様における第1ロール等は、ロール本体部並びに筒状部材から成り、ロール本体部を構成する第1金属材料の熱伝導率、筒状部材を構成する第2金属材料の熱伝導率が規定されている。それ故、熱可塑性樹脂のシート成形品の製造に適した冷却速度を得ることが可能である。また、第1筒状部材あるいはロール本体部を高熱伝導率の第1金属材料から作製し、第2筒状部材あるいは筒状部材を低熱伝導率の第2金属材料から作製するので、第2筒状部材あるいは筒状部材と接触した直後の溶融熱可塑性樹脂(シート)の冷却が遅延され、光学パターン等を転写させるために必要な時間を稼ぐことが可能になるため光学パターン等の転写率を向上させることができると共に、第1筒状部材あるいはロール本体部から離れる直前のシート成形品が十分に冷却されるが故に、シート成形品における剥離マークの発生を効果的に防ぐことができる。それ故、中央部と端部で諸物性に出来る限り差異が無いシート成形品(フィルム成形品)を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1図1の(A)並びに(B)は、それぞれ、実施例1の溶融押出成形賦形用のロールの模式的な断面図、並びに、ダイ及び溶融押出成形賦形用のロール組立体の配置を示す概念図である。
図2図2は、実施例2の溶融押出成形賦形用のロールの模式的な断面図である。
図3図3の(A)及び(B)は、実施例3の溶融押出成形賦形用のロール及びその変形例の模式的な断面図である。
図4図4の(A)及び(B)は、それぞれ、実施例4の溶融押出成形賦形用のロール及びロール本体部の模式的な断面図である。
図5図5は、実施例1及び比較例1の溶融押出成形賦形用のロールを用いて成形したシート成形品のヘイズ値を測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面を参照して、実施例に基づき本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではなく、実施例における種々の数値や材料は例示である。
【実施例1】
【0038】
実施例1は、本発明の第1の態様に係る溶融押出成形賦形用のロール、溶融押出成形賦形用のロール組立体、及び、溶融押出成形方法に関する。実施例1の溶融押出成形賦形用のロール(第1ロール)1Aを軸線を含む仮想平面で切断したときの第1ロール1Aの模式的な断面図を図1の(A)に示し、ダイ及び溶融押出成形賦形用のロール組立体の配置状態の概念図を図1の(B)に示す。
【0039】
実施例1の第1ロール1Aは、熱可塑性樹脂の溶融押出成形において使用される溶融押出成形賦形用のロールであって、
内部に熱媒流路11が設けられた、金属製のロール本体部10、
ロール本体部10の中央部分の表面を覆う第1筒状部材12、及び、
ロール本体部10の両端部分の表面を覆う第2筒状部材13、
から成る。そして、第1筒状部材12は、40W/m・K以上の熱伝導率を有する第1金属材料から製作されており、第2筒状部材13は、20W/m・K以下の熱伝導率を有する第2金属材料から作製されており、第1筒状部材12と第2筒状部材13とは、少なくとも一部において接合されている。第1筒状部材12を構成する第1金属材料、第2筒状部材13を構成する第2金属材料は、具体的には、以下の表2のとおりである。
【0040】
実施例1の溶融押出成形賦形用のロール組立体は、図1の(B)に示すように、上述した実施例1の第1ロール1A、及び、第1ロール1Aと対向して配置された圧着用の第2ロール2から成る。実施例1において、第2ロール2はフッ素樹脂製のゴムロールから構成されている。
【0041】
第1筒状部材12及び第2筒状部材13は、焼嵌め法によってロール本体部10に装着されている。常温における第1筒状部材12及び第2筒状部材13の内径D2-iの値、常温におけるロール本体部10の外径D1-oの値を、以下の表2に示す。即ち、焼嵌め代を0.1mmとした。また、第1筒状部材12及び第2筒状部材13の肉厚を7.00mmとした。尚、実施例1にあっては、ロール本体部10を、切削ドリルによってロール本体部10の側面から円管状の熱媒流路11を軸方向に対して平行に設けた、所謂ドリルドロールとした。熱媒流路11の本数は、本質的に任意である。ロール本体部10の熱媒として熱媒油を使用した。尚、第1筒状部材12及び第2筒状部材13を構成する第1金属材料及び第2金属材料の線膨張係数は、ロール本体部10を構成する金属材料の線膨張係数よりも若干大きいが、焼嵌め代を若干大きく取ることで、第1筒状部材12及び第2筒状部材13の緩みを防止することができる。場合によっては、第2筒状部材13の端部をロール本体部10にスポット溶接して空回りや脱落を防止してもよい。
【0042】
表面粗さを約0.7Sまで研磨した第1筒状部材12及び第2筒状部材13の表面には、メッキ層14、具体的には、厚さ約0.1mmの電解ニッケルメッキ層が形成されている。メッキ層14の表面には、バフ研磨を行った後、サンドブラスト法に基づき微細凹凸形状が形成されている。第1筒状部材12及び第2筒状部材13の表面へのメッキ層14の形成及び光学パターン加工は、ロール本体部10に第1筒状部材12及び第2筒状部材13を装着した後に行った。有限会社グルーラボ製UV硬化型樹脂GLX18−73N(屈折率:1.49)を用いて第1筒状部材12及び第2筒状部材13の表面(メッキ層14)の透明レプリカを作製して、そのヘイズ値(濁度)を測定したところ、それぞれ、86%及び85%であり、両者の表面粗さはほぼ等しかった。
【0043】
溶融押出成形賦形用のロールを用いて溶融押出成形されるシート成形品の幅をW0とし、第1筒状部材12の長さをX1としたとき、
0>X1
を満足している。あるいは又、
30mm≦W0−X1≦300mm
を満足している。また、各第2筒状部材13の長さをX2としたとき、
30mm≦X2≦300mm
を満足している。
更には、第2筒状部材13の長さをX2としたとき、
(X1+2・X2)>W0+30(mm)
を満足している。具体的なX1、X2及びW0の値を、以下の表2に示す。尚、第1筒状部材12及び第2筒状部材13の合計の長さ(X1+2・X2)は、ロール本体部10の面長と同じである。尚、X2の領域がシート成形品の端部と30mm以上重なる状態とすることが好ましい。
【0044】
[表2]
ロール本体部を構成する金属材料
:S45C
熱伝導率 :45W/m・K
線膨張係数:12×10-6mm/mm・K
第1金属材料 :S25C
熱伝導率 :50W/m・K
線膨張係数:12×10-6mm/mm・K
第2金属材料 :SUS309
熱伝導率 :14W/m・K
線膨張係数:15×10-6mm/mm・K
1-o :386.0mm
2-i :385.8mm
2-o :400.0mm
1 :300mm
2 :195mm
0 :450mm
【0045】
実施例1にあっては、熱可塑性樹脂としてポリカーボネート樹脂(PC樹脂、三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製ポリカーボネート樹脂「ユーピロンH3000」)を使用した。また、実施例1の溶融押出成形方法において得られたシート成形品(フィルム成形品)の公称厚さは130μmであり、幅W0は表2に示したとおりである。得られたシート成形品(フィルム成形品)は、光拡散シート(光拡散フィルム)であり、マットパターンが形成されている。
【0046】
実施例1にあっては、周知の溶融押出成形装置を使用して、ダイから押し出された溶融熱可塑性樹脂を、第1ロール1Aと第2ロール2との間を通過させることで、シート状の溶融熱可塑性樹脂に圧力を加え、シート成形品(フィルム成形品)を得た。成形条件を、以下の表3に示す。
【0047】
[表3]
ダイ温度 :270゜C
ライン速度 :7m/分
第1ロール温度:140゜C
第2ロール温度:70゜C
線圧レベル :6kg/cm
【0048】
比較例1として、S45C製の筒状部材(寸法は実施例1の第1筒状部材12及び第2筒状部材13を一体化したと想定した筒状部材と同じ)を使用し、その他は実施例1と同様にして、第1ロールを作製した。UV硬化型樹脂GLX18−73Nを用いて筒状部材の表面(メッキ層)の透明レプリカを作製して、そのヘイズ値を測定したところ、86%であり、実施例1とほぼ同じ表面形状であることを確認した。そして、実施例1と同様の条件でシート成形品(フィルム成形品)を成形した。
【0049】
図5に、実施例1及び比較例1の第1ロールを用いて成形したシート成形品のヘイズ値を測定した結果を示す。尚、図5において、「A」は、実施例1の第1ロールを用いて成形した結果を示し、「B」は、比較例1の第1ロールを用いて成形した結果を示す。実施例1にあっては、成形されたシート成形品(フィルム成形品)には、剥離マーク等の第1筒状部材12からの離形不良による外観不良は発生しておらず、ヘイズ値を測定すると中央部で71%乃至72%、端部で70%乃至72%であり、中央部と端部でヘイズ値には殆ど差が認められなかった。一方、比較例1にあっては、成形されたシート成形品(フィルム成形品)には、剥離マーク等の筒状部材からの離形不良による外観不良は発生していなかったが、ヘイズ値を測定すると中央部で71%乃至72%、端部で67%乃至70%であり、中央部と端部でヘイズ値に約3%の差が認められた。
【0050】
以上のとおり、実施例1にあっては、第1ロール1Aを、ロール本体部10並びに第1筒状部材12及び第2筒状部材13から構成し、第1筒状部材12を構成する第1金属材料の熱伝導率、第2筒状部材13を構成する第2金属材料の熱伝導率を規定しているが故に、熱可塑性樹脂のシート成形品の製造に適した冷却速度を得ることが可能となる。また、第2筒状部材13を低熱伝導率の第2金属材料から作製するので、第2筒状部材13と接触した直後の溶融熱可塑性樹脂(シート)の冷却が遅延され、光学パターン等を転写させるために必要な時間を稼ぐことができ、光学パターン等の転写率を向上させることができる。しかも、ロール本体部10が第1金属材料で製作されているので、第2筒状部材13から離れる直前のシート成形品が十分に冷却されるが故に、シート成形品における剥離マークの発生を効果的に防ぐことができる。そして、中央部と端部でヘイズ値に差異の無いシート成形品(フィルム成形品)を得ることができた。
【実施例2】
【0051】
実施例2は、実施例1の変形である。実施例2の溶融押出成形賦形用のロール(第1ロール)1Bを軸線を含む仮想平面で切断したときの第1ロール1Bの模式的な断面図を図2に示す。
【0052】
実施例2にあっては、ロール本体部20を、スパイラルロールとも呼ばれ、熱媒流路21がスパイラル状になっている、二重管ロールとした。実施例2の第1ロール1Bにおけるロール本体部20、並びに、第1筒状部材22及び第2筒状部材23の諸元は表2に示したとおりである。実施例1と同様に、第1筒状部材22及び第2筒状部材23は焼嵌め法によってロール本体部20に装着されており、焼嵌め代、第1筒状部材22及び第2筒状部材23の肉厚を、実施例1と同様とした。熱媒流路21内には、ロール本体部20の軸線に沿って螺旋状に延びる連続した隔壁(仕切り壁)25が設けられている。尚、隔壁25の数は、本質的に任意である。ロール本体部20の熱媒として熱媒油を使用した。
【0053】
また、第1筒状部材22及び第2筒状部材23の表面に、厚さ約0.3mmの電解ニッケル−リンメッキ層24を形成し、ダイヤモンドバイトによる切削加工によって、公称ピッチ100μm、公称高さ50μm、公称角度90度のプリズムパターンを設けた。実施例1と異なり、第2ロール2として、ハードクロムメッキを施した金属弾性ロールを使用した。
【0054】
実施例2にあっては、実施例1と同様に、ポリカーボネート樹脂「ユーピロンH3000」を使用した。また、実施例2の溶融押出成形方法において得られたシート成形品(フィルム成形品)の公称厚さは300μmである。得られたシート成形品(フィルム成形品)は、輝度向上シート(輝度向上フィルム)であり、プリズムパターンが形成されている。
【0055】
実施例2にあっても、周知の溶融押出成形装置を使用して、ダイから押し出された溶融熱可塑性樹脂を、第1ロール1Bと第2ロール2との間を通過させることで、シート状の溶融熱可塑性樹脂に圧力を加え、シート成形品(フィルム成形品)を得た。成形条件を以下の表4に示す。
【0056】
[表4]
ダイ温度 :280゜C
ライン速度 :5m/分
第1ロール温度:135゜C
第2ロール温度:120゜C
線圧レベル :10kg/cm
【0057】
成形したプリズムフィルムの外観は良好であった。具体的には、成形されたシート成形品(フィルム成形品)の中央部における平均転写率は85%、端部の平均転写率は84%であり、中央部と端部で平均転写率には殆ど差が認められなかった。また、シート成形品の縁部の厚肉部分が圧着し易くなったことで、転写率の相対的な向上が見られた。
【0058】
比較例2として、S45C製の筒状部材(寸法は実施例2の第1筒状部材22及び第2筒状部材23を一体化したと想定した筒状部材と同じ)を使用し、その他は実施例2と同様にして、第1ロールを作製した。そして、実施例2と同様の条件でシート成形品(フィルム成形品)を成形した。成形されたシート成形品(フィルム成形品)の中央部における平均転写率は83%、端部の平均転写率は80%であり、相対的に転写率は低く、中央部と端部で平均転写率に差が認められた。
【実施例3】
【0059】
実施例3は、実施例1あるいは実施例2の変形である。溶融押出成形賦形用のロール(第1ロール)の模式的な断面図を図3の(A)あるいは図3の(B)に示す。尚、図3の(A)及び(B)に示す第1ロール1Cは、実施例1の第1ロールの変形例である。実施例3において、第2筒状部材13は、第1筒状部材の延在部12Aを介してロール本体部10の両端部分の表面を覆っている。第1筒状部材の延在部12Aはロール本体部10に接しており、第2筒状部材13は第1筒状部材の延在部12A上に配されている。具体的には、第2筒状部材13の内面及び第1筒状部材の延在部12Aの外面にはネジ山(図示せず)が形成されており、第2筒状部材13と第1筒状部材の延在部12Aとを螺合することで一体化されている。尚、第2筒状部材13と第1筒状部材の延在部12Aとの一体化は、このような方法に限定されない。焼嵌め法によって第2筒状部材13と第1筒状部材の延在部12Aとを一体化することもできるし、溶接によって第2筒状部材13と第1筒状部材の延在部12Aとを一体化することもできる。
【0060】
図3の(A)に示す実施例3の第1ロール1Cを用いて、成形を行った。第1ロール1C等の諸元を、以下の表5に示すが、ロール本体部10は、第1筒状部材12と同じ第1金属材料から構成されている。尚、実施例3にあっても、実施例2と同様に、第1筒状部材12及び第2筒状部材113の表面に、厚さ約0.3mmの無電解ニッケル−リンメッキ層14を形成し、ダイヤモンドバイトによる切削加工によって、公称ピッチ100μm、公称高さ50μm、公称角度90度のプリズムパターンを、第1ロール1Cの長さ700mmに亙り設けた。実施例1と異なり、第2ロール2として、実施例2と同様に、ハードクロムメッキを施した金属弾性ロールを使用した。
【0061】
[表5]
ロール本体部を構成する金属材料
:SCM440
熱伝導率 :43W/m・K
線膨張係数:12×10-6mm/mm・K
第1金属材料 :SCM440
第2金属材料 :SUS309
熱伝導率 :14W/m・K
線膨張係数:15×10-6mm/mm・K
1-o :270.0mm
2-i :269.8mm
2-o :300mm
第1筒状部材の延在部の肉厚:7.5mm
第2筒状部材の肉厚 :7.5mm
1 :580mm
2 :160mm
0 :680mm
【0062】
実施例3にあっては、熱可塑性樹脂としてポリカーボネート樹脂(PC樹脂、三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製ポリカーボネート樹脂「ユーピロンS3000」)を使用した。また、実施例3の溶融押出成形方法において得られたシート成形品(フィルム成形品)の公称厚さは300μmである。得られたシート成形品(フィルム成形品)は、輝度向上シート(輝度向上フィルム)であり、プリズムパターンが形成されている。
【0063】
そして、実施例3にあっては、周知の溶融押出成形装置を使用して、幅800mmのダイから押し出された溶融熱可塑性樹脂を、第1ロール1Cと第2ロール2との間を通過させることで、シート状の溶融熱可塑性樹脂に圧力を加え、シート成形品(フィルム成形品)を得た。成形条件を、以下の表6に示す。
【0064】
[表6]
ダイ温度 :290゜C
ライン速度 :5m/分
第1ロール温度:135゜C
第2ロール温度:120゜C
線圧レベル :20kg/cm
【0065】
比較例3として、SCM440製の筒状部材(寸法は実施例3の第1筒状部材12及び第2筒状部材13を一体化したと想定した筒状部材と同じ)を使用し、その他は実施例3と同様にして、第1ロールを作製した。そして、実施例3と同様の条件でシート成形品(フィルム成形品)を成形した。
【0066】
実施例3にあっても、周知の溶融押出成形装置を使用して、ダイから押し出された溶融熱可塑性樹脂を、第1ロール1Cと第2ロール2との間を通過させることで、シート状の溶融熱可塑性樹脂に圧力を加え、シート成形品(フィルム成形品)を得た。成形したプリズムフィルムの外観は良好であった。具体的には、成形されたシート成形品(フィルム成形品)の中央部における平均転写率は75%、端部の平均転写率は76%であり、中央部と端部で平均転写率には殆ど差が認められなかった。また、シート成形品の縁部の厚肉部分が圧着し易くなり、相対的な転写率の向上が見られた。一方、比較例3にあっては、成形されたシート成形品(フィルム成形品)の中央部における平均転写率は75%、端部の平均転写率は71%であり、中央部と端部で平均転写率に大きな差が認められた。
【0067】
以上の点を除き、実施例3の溶融押出成形賦形用のロール(第1ロール)、溶融押出成形賦形用のロール組立体、及び、この第1ロールを使用した溶融押出成形方法は、実施例1あるいは実施例2において説明した第1ロール、溶融押出成形賦形用のロール組立体、及び、この第1ロールを使用した溶融押出成形方法と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。
【0068】
尚、図3の(B)に示すように、第2筒状部材13の表面は、第1筒状部材の延在部12Bによって覆われている形態とすることもできる。尚、このような形態においては、第1筒状部材12の表面にメッキ層14が形成されている。
【実施例4】
【0069】
実施例4は、本発明の第2の態様に係る溶融押出成形賦形用のロール、溶融押出成形賦形用のロール組立体、及び、溶融押出成形方法に関する。実施例4の溶融押出成形賦形用のロール(第1ロール)1Dを軸線を含む仮想平面で切断したときの第1ロール1Dの模式的な断面図を図4の(A)に示し、ロール本体部30の模式的な断面図を図4の(B)に示す。尚、ダイ及び溶融押出成形賦形用のロール組立体の配置状態の概念図は図1の(B)に示したと同様である。
【0070】
実施例4の第1ロール1Dは、熱可塑性樹脂の溶融押出成形において使用される溶融押出成形賦形用のロールであって、
内部に熱媒流路11が設けられ、両端部分31の外面に切欠部32が設けられたロール本体部30、及び、
ロール本体部30の両端部分31の切欠部32のそれぞれに嵌合した筒状部材33、
から成る。そして、ロール本体部30は、40W/m・K以上の熱伝導率を有する第1金属材料から製作されており、筒状部材33は、20W/m・K以下の熱伝導率を有する第2金属材料から作製されており、ロール本体部30の切欠部32と筒状部材33とは、少なくとも一部において接合されている。ロール本体部30を構成する第1金属材料、筒状部材33を構成する第2金属材料は、具体的には、以下の表7のとおりである。
【0071】
筒状部材33は、焼嵌め法によってロール本体部30に装着されている。常温における筒状部材33の内径D2-iの値、常温におけるロール本体部30の切欠部32における外径D1-oの値、常温における切欠部32と切欠部32との間のロール本体部30の部分30Aにおける外径D’1-oの値を、以下の表7に示す。即ち、焼嵌め代を0.15mmとした。また、筒状部材33の肉厚を8mmとした。尚、実施例4にあっても、ロール本体部30を、切削ドリルによってロール本体部30の側面から円管状の熱媒流路11を軸方向に対して平行に設けた、所謂ドリルドロールとした。熱媒流路11の本数は、本質的に任意である。ロール本体部30の熱媒として熱媒油を使用した。尚、筒状部材33を構成する第2金属材料の線膨張係数は、ロール本体部30を構成する第1金属材料の線膨張係数よりも若干大きいが、焼嵌め代を若干大きく取ることで、筒状部材33の緩みを防止することができる。場合によっては、筒状部材33の端部をロール本体部30にスポット溶接して空回りや脱落を防止してもよい。
【0072】
ロール本体部30及び筒状部材33の表面には、実施例1のメッキ層と同様のメッキ層14を形成した。また、実施例2と同様に、第2ロール2として、実施例1の第2ロール2と同様のフッ素樹脂製のゴムロールを用いた。
【0073】
溶融押出成形賦形用のロールを用いて溶融押出成形賦形されるシート成形品の幅をW0とし、ロール本体部30の切欠部32と切欠部32との間のロール本体部30の部分の長さをX1としたとき、
0>X1
を満足している。あるいは又、
30mm≦W0−X1≦300mm
を満足している。また、筒状部材33の長さをX2としたとき、
30mm≦X2≦300mm
を満足している。更には、
(X1+2・X2)>W0+30(mm)
を満足している。具体的なX1、X2及びW0の値を、以下の表7に示す。X2の領域がシート成形品の端部と30mm以上重なる状態とすることが好ましい。
【0074】
[表7]
第1金属材料 :S45C
熱伝導率 :45W/m・K
線膨張係数:12×10-6mm/mm・K
第2金属材料 :SUS309
熱伝導率 :14W/m・K
線膨張係数:15×10-6mm/mm・K
1-o :384.0mm
D’1-o :400.0mm
2-i :383.7mm
2-o :400.0mm
1 :300mm
2 :195mm
0 :450mm
【0075】
実施例4にあっては、熱可塑性樹脂としてポリカーボネート樹脂(PC樹脂、三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製ポリカーボネート樹脂「ユーピロンE2000」)を使用した。また、実施例4の溶融押出成形方法において得られたシート成形品(フィルム成形品)の公称厚さは130μmであり、幅W0は表7に示したとおりである。得られたシート成形品(フィルム成形品)は、実施例1と同様に、光拡散シート(光拡散フィルム)であり、マットパターンが形成されている。
【0076】
実施例4にあっても、周知の溶融押出成形装置を使用して、ダイから押し出された溶融熱可塑性樹脂を、第1ロール1Dと第2ロール2との間を通過させることで、シート状の溶融熱可塑性樹脂に圧力を加え、シート成形品(フィルム成形品)を得た。成形条件を、以下の表8に示す。得られた光拡散シート(光拡散フィルム)の外観は良好であり、中央部と端部でヘイズ値には殆ど差が認められなかった。
【0077】
[表8]
ダイ温度 :280゜C
ライン速度 :7m/分
第1ロール温度:135゜C
第2ロール温度: 70゜C
線圧レベル :6kg/cm
【0078】
以上、本発明を好ましい実施例に基づき説明したが、本発明はこれらの実施例に限定するものではない。実施例にて説明した溶融押出成形賦形用のロール、溶融押出成形賦形用のロール組立体、溶融押出成形装置の構成、構造、使用した材料、溶融押出成形条件等は例示であり、適宜、変更することができる。例えば、実施例2において説明したメッキ層を実施例1、実施例4に適用することができるし、実施例1において説明したメッキ層を実施例2〜実施例3に適用することができる。
【符号の説明】
【0079】
1A,1B,1C,1D・・・第1ロール、2・・・第2ロール、10,20,30・・・ロール本体部、11,21・・・熱媒流路、12,22・・・第1筒状部材、12A,12B・・・第1筒状部材の延在部、13,23,113・・・第2筒状部材、14,24・・・メッキ層、25・・・隔壁、31・・・第1ロール1Dの両端部分、32・・・切欠部、33・・・筒状部材
図1
図2
図3
図4
図5