特許第6078713号(P6078713)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6078713
(24)【登録日】2017年1月27日
(45)【発行日】2017年2月15日
(54)【発明の名称】逆流防止弁
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/298 20060101AFI20170206BHJP
   E03C 1/292 20060101ALI20170206BHJP
【FI】
   E03C1/298
   E03C1/292
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-152046(P2012-152046)
(22)【出願日】2012年7月6日
(65)【公開番号】特開2014-15719(P2014-15719A)
(43)【公開日】2014年1月30日
【審査請求日】2015年6月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000157212
【氏名又は名称】丸一株式会社
(72)【発明者】
【氏名】堀江 進
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 嘉浩
(72)【発明者】
【氏名】笹川 知久
【審査官】 七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−287329(JP,A)
【文献】 特表2006−511768(JP,A)
【文献】 特開平09−053736(JP,A)
【文献】 実開昭58−119669(JP,U)
【文献】 特開2011−089359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/12−1/33
F16K 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略筒状にして弾性を有する素材から成る逆流防止弁であって、
下方に進むにつれて、対向する面に対して漸次近接するよう傾斜を設けた傾斜面と、
前記傾斜面が対向する面と当接することによって形成される開閉部と
前記傾斜面と隣接する筒側面において剛性部を備え、
前記傾斜面が、軸方向に対し異なる角度で傾斜する第一傾斜面と第二傾斜面より成り、
前記第二傾斜面は、剛性部よりも下方に配置されていることを特徴とする逆流防止弁。
【請求項2】
略筒状にして弾性を有する素材から成る逆流防止弁であって、
下方に進むにつれて、対向する面に対して漸次近接するよう傾斜を設けた傾斜面と、
前記傾斜面が対向する面と当接することによって形成される開閉部とを備え、
前記開閉部は、
平時において閉弁状態となっており、上流側からの正圧によって開弁状態となる第一開閉部と、
平時において開弁状態となっており、下流側からの正圧によって閉塞し閉弁状態となる第二開閉部より成り、
前記第一開閉部は、第二開閉部内壁下端が該第二開閉部における傾斜面よりも内側に向けて突出し、互いに当接することにより形成されていることを特徴とする逆流防止弁。
【請求項3】
前記傾斜面が、軸方向に対し異なる角度で傾斜する第一傾斜面と第二傾斜面より成り、
前記第二傾斜面が第二開閉部として機能することを特徴とする請求項2に記載の逆流防止弁。
【請求項4】
上記第一傾斜面が、第二傾斜面よりも軸方向に対して大きく傾斜していることを特徴とする請求項1若しくは請求項3に記載の逆流防止弁。
【請求項5】
前記傾斜面が平坦面であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の逆流防止弁。
【請求項6】
前記傾斜面と隣接する筒側面において剛性部を有することを特徴とする請求項乃至請求項5のいずれか1つに記載の逆流防止弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水配管等に取り付けられる逆流防止弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
洗面ボウルやシンク、浴槽等、使用により排水が生じる設備機器に対して、排水を下流側へと排出するための排水配管が備えられている。
【0003】
当該排水配管においては、設備機器と下流側を繋いでしまうと、下水側からの臭気や害虫が排水配管内を通り、屋内へと逆流してしまう。その為、排水配管の途中に、下水側からの臭気や害虫の逆流を防ぐ為の機構を有する排水トラップ若しくは逆流防止弁が接続されている。
【0004】
排水トラップは、内部に設備機器から排出された排水が貯留され、排水流路の一部を当該排水によって満たすことで、上記臭気や害虫の逆流を防ぐトラップ機能を形成する構造となっている。尚、前記貯留された排水を「封水」と呼ぶ。
【0005】
しかし、上記排水トラップは、長期の不使用や、下流側に負圧が発生した場合において、上記封水が蒸発、若しくは下流側に負圧若しくは正圧が生じること等によって封水が減少し、トラップ機能が失われる「破封」と呼ばれる現象が生じる。
【0006】
一方、図20に示す逆流防止弁は、シリコン等の弾性を有する材質から成り、内部に排水流路を有する略円筒形状であるが、上方近傍より下方に向けて漸次近接する傾斜面を有し、該傾斜面が対向する面に当接することで下端に開閉部を形成している。即ち、開閉部は円筒の一端を押し潰し、軸上で重ね合わせた形状をしており、側面視において略漏斗形状を成している。又、当該開閉部は無排水時において閉塞している。
上記逆流防止弁の上流側(設備機器側)から開閉部に向けて排水が流入した際、排水が開閉部を押し開けることによって変形し、開閉部の閉塞が解除されて排水は下流側へと排出される。そして、上流からの排水の流入が終了すると、自身の弾性力により再び開閉部が閉塞する。
従って、図20に示す逆流防止弁は開閉部の閉塞によって、下水側からの臭気や害虫の逆流を防ぐ構造となっている(つまり、排水トラップとして使用されている)。
【0007】
上記構造を有する逆流防止弁においては、前記排水トラップのように、内部に封水を形成する必要が無い為、上記封水の蒸発等による破封現象は生じない。
しかし、縦管に近い場所に設備機器及び逆流防止弁が配置されている場合において、上記縦管に多量の排水が生じた際等、逆流防止弁に対し、下流側から強い正圧がかかる場合がある。この時、逆流防止弁は一定の強さまでの正圧であれば、当該正圧によって開弁されない構造となっているが、一定以上の正圧が下流側から付与された場合、弾性素材から構成されていることもあり、予期せぬ形状に変形してしまう。そして、当該変形に伴い弁部分が開口し、下流側からの臭気や排水等が屋内に逆流してしまうという自体が生じていた。
【0008】
この様な下流側からの正圧に対抗する為、例えば逆流防止弁の素材の硬度を上げることが考えられるが、素材の硬度を上げると上流側に排水が発生した場合の排水性能が悪化してしまうという問題が生じた。
又、開閉部(弁部分)を長尺にすることで、下流側からの正圧に耐えることが考えられるが、開閉部を長尺にしても、逆流防止弁の上流側に排水が発生した場合の排水性能が悪化し、且つ装置自体が大型化してしまい、又、レイアウト性等が大幅に減少する、ゴミ詰まりが生じ易くなる等の問題が生じた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2011−89359号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、好適な排水性能を備えながらも、装置の全高を大きくすることなく、下流側からの正圧に対し強い耐性を有する逆流防止弁を提供することを課題とする。
【0011】
上記課題を解決する為の請求項1に記載の本発明は、略筒状にして弾性を有する素材から成る逆流防止弁であって、
下方に進むにつれて、対向する面に対して漸次近接するよう傾斜を設けた傾斜面と、
前記傾斜面が対向する面と当接することによって形成される開閉部と
前記傾斜面と隣接する筒側面において剛性部を備え、
前記傾斜面が、軸方向に対し異なる角度で傾斜する第一傾斜面と第二傾斜面より成り、
前記第二傾斜面は、剛性部よりも下方に配置されていることを特徴とする逆流防止弁である。
【0012】
請求項2に記載の本発明は、略筒状にして弾性を有する素材から成る逆流防止弁であって、
下方に進むにつれて、対向する面に対して漸次近接するよう傾斜を設けた傾斜面と、
前記傾斜面が対向する面と当接することによって形成される開閉部とを備え、
前記開閉部は、
平時において閉弁状態となっており、上流側からの正圧によって開弁状態となる第一開閉部と、
平時において開弁状態となっており、下流側からの正圧によって閉塞し閉弁状態となる第二開閉部より成り、
前記第一開閉部は、第二開閉部内壁下端が該第二開閉部における傾斜面よりも内側に向けて突出し、互いに当接することにより形成されていることを特徴とする逆流防止弁である。
【0013】
請求項3に記載の発明は、前記傾斜面が、軸方向に対し異なる角度で傾斜する第一傾斜面と第二傾斜面より成り、
前記第二傾斜面が第二開閉部として機能することを特徴とする請求項2に記載の逆流防止弁である。
【0014】
請求項4に記載の本発明は、上記第一傾斜面が、第二傾斜面よりも軸方向に対して大きく傾斜していることを特徴とする請求項1若しくは請求項3に記載の逆流防止弁である。
【0015】
請求項5に記載の本発明は、前記傾斜面が平坦面であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の逆流防止弁である。
【0016】
請求項6に記載の本発明は、前記傾斜面と隣接する筒側面において剛性部を有することを特徴とする請求項乃至請求項5のいずれか1つに記載の逆流防止弁である。
【発明の効果】
【0017】
上記請求項1乃至請求項3に記載の本発明においては、下流側から正圧が生じた際等に第二開閉部(第二傾斜面)が閉塞し、閉塞面積を増やすことによって確実に下流側からの逆流を防止することが可能となる。
請求項4に記載の本発明においては、第一傾斜面が、第二傾斜面よりも軸方向に対して大きく傾斜している為、より第二傾斜面(第二開閉部)が容易且つ確実に閉塞することが可能となる。
請求項5に記載の本発明においては、傾斜面が平坦面に形成されている為、閉塞時に確実に面で閉塞することが可能となる。
請求項6に記載の本発明においては、筒側面に剛性部を有する為、逆流防止弁が下流側からの正圧によって予期せぬ変形、及び予期せぬ変形に伴う開閉部の閉塞が解除されてしまうことがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の逆流防止弁を示す斜視図である。
図2】発明が排水配管に取り付けられた状態を示す断面図である。
図3】本発明の逆流防止弁を示す側面図である。
図4】本発明の逆流防止弁を示す側面断面図である。
図5】本発明の逆流防止弁を示す正面図である。
図6】本発明の逆流防止弁を示す正面断面図である。
図7】本発明の逆流防止弁の閉弁状態を示す底面図である。
図8】本発明の逆流防止弁の閉弁状態を示す平面図である。
図9】本発明の逆流防止弁の閉弁状態を示す斜視図である。
図10】本発明の逆流防止弁の開弁状態を示す底面図である。
図11】本発明の逆流防止弁の開弁状態を示す平面図である。
図12】本発明の逆流防止弁の開弁状態を示す斜視図である。
図13】本発明の逆流防止弁の閉弁状態を示す側面断面図である。
図14】本発明の第二実施形態を示す側面断面図である。
図15】本発明の第三実施形態を示す側面断面図である。
図16】本発明の第四実施形態の(a)平時を示す側面断面図、(b)下流側より正圧が生じた状態を示す側面断面図である。
図17】本発明の第五実施形態を示す側面図である。
図18】本発明の第五実施形態を示す斜視図である。
図19】本発明の第五実施形態を示す底面図である。
図20】従来の逆流防止弁である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら本発明の逆流防止弁1を説明する。尚、以下に記載する説明は実施形態の理解を容易にする為のものであり、これによって発明が制限して理解されるものでない。又、特に断りの無い限り、図5に示す正面図を基準として上下左右を説明する。
【0020】
図1に示す本発明の逆流防止弁1は、洗面ボウルやシンク、浴槽等、使用によって排水を生じる設備機器(図示せず)から連続する排水配管に取り付けられ、略円筒状であって内部に排水流路を有し、シリコン等の弾性素材より成る。又、図1及び図2に示すように、上流側に設けられた取付部13と、側面視において略漏斗形状を成しており、傾斜面2、開閉部3、筒側面5等より成る弁部分より構成される。
【0021】
取付部13は、傾斜面2(第一傾斜面21)上流側に備えられており、外周及び内周が拡径する部分を有する。図2に示すように、逆流防止弁1は当該拡径部分によって、排水配管のフランジ部分と嵌着して取り付けられる。
【0022】
尚、当該取付部13は、排水配管に水密に取付可能な構造であれば良く、形状等については特に限定されるものではない。
【0023】
逆流防止弁1はその正面(図5)及び背面(図5と同一である為省略)において、上方近傍より下方に向けて漸次近接する傾斜面2をそれぞれ有し、該傾斜面2同士が当接することによって開閉部3を形成している。
【0024】
ここで、傾斜面2は図3及び図4に示すように、軸方向に対して異なる傾斜角を有する平坦面である第一傾斜面21と第二傾斜面22より形成されている(以降、第一傾斜面21と第二傾斜面22を合わせて指す時は「傾斜面2」と記載する)。又、該第一傾斜面21と第二傾斜面22の間には屈曲部8が形成されている。
第一傾斜面21は前記取付部13側(上流側)の傾斜面であって、逆流防止弁1の軸方向に対して傾斜している。一方、第二傾斜面22は前記第一傾斜面21下端より連続して設けられている、開閉部3側(下流側)の傾斜面であって、第一傾斜面21下端より後述する第一開閉部31に至る部分までを構成し、逆流防止弁1の軸方向に対して傾斜している。
尚、第一傾斜面21は第二傾斜面22よりも(軸方向に対して)大きく傾斜している。
屈曲部8は上記第一傾斜面21と第二傾斜面22との境界であって、下流側からの正圧によって中心軸方向に近接する。該近接によって、第二傾斜面22同士が当接し、後述する開閉部3の内の第二開閉部32として機能する。(尚、各図においては屈曲部8の理解を容易にする為、屈曲部8の位置を示す補助線を引いている。)
【0025】
開閉部3は第一開閉部31と第二開閉部32より形成されている。(以降、第一開閉部31と第二開閉部32を合わせて指す時は「開閉部3」と記載する)
第一開閉部31は図3及び図4に示すように、逆流防止弁1の上流側及び下流側から正圧も負圧も付与されていない状態(以下、「平時」)における傾斜面2の当接位置(第二傾斜面22下端)より逆流防止弁1の下端にかけて垂設されている。即ち、第一開閉部31は円筒の一端を押し潰し、軸上で重ね合わせた形状をしている。当該第一開閉部31は内側(上流側)から圧力が付与されない限りにおいて閉塞を維持する為、下流側からの臭気や害虫の逆流を防ぐことが出来る(つまり、排水トラップとして使用されている)。一方、第二開閉部32は、前記第一開閉部31上端から連続して上方に向けて設けられている部分であって、平時において開弁しているが、下流側からの正圧によって閉塞し、閉弁状態となる。尚、本実施形態においては前記第二傾斜面22が第二開閉部32として機能する。
又、逆流防止弁1は、前記傾斜面2と隣接する側面である筒側面5において、剛性部であるリブ6を計4箇所に備えている。
【0026】
リブ6は図3乃至図7に示すように、逆流防止弁1の軸方向に対して平行に設けられた厚肉部分であって、逆流防止弁1の他の部分よりも高い剛性、特に軸方向(天地方向)の圧力に対して高い剛性を有する。
又、リブ6は前記第一傾斜面21上端の高さ位置から、当該第一傾斜面21に達する位置まで延設されているものであって、リブ6は筒側面5にのみ設けられ、第二傾斜面22までは達していない。
即ち、図5に示すように、逆流防止弁1は、リブ6が設けられているエリアXにおいて軸方向に高い剛性を備えて下流側からの正圧による変形を防ぎ、一方でリブ6下端より開閉部3下端までのエリアYにおいては好適な排水を行う為、リブ6を設けないようにして剛性(弾性)が抑えられている。又、上記の通りリブ6は第二傾斜面22までは達していないものであるから、第二傾斜面22(第二開閉部32)は上記エリアYに配置されている。従って、下流側にて正圧が生じた際、リブ6が第二傾斜面22(第二開閉部32)の閉塞動作を抑制することはない。
一方、リブ6は第一開閉部31両端部の上方に設けられているが、図6に記載する正面断面図に示すように、前記傾斜面2同士が当接する当接面4と同一平面上には設けられていない。(図6は当接面4において逆流防止弁1を切断した図である)又、図4に記載する側面断面図(及び図7に記載する底面図)に示すように、リブ6は当接面4(第一開閉部31)の延長線上には配置されておらず、当該延長線を挟むように配置されている。従って、リブ6は当接面4の同一平面(延長線上)を挟むように設けられており、開閉部3の両端部に2箇所ずつ、計4箇所設けられている。
【0027】
図7乃至図9に示すように、上記構造を有する逆流防止弁1は上流側から排水が流入しておらず、圧力が付与されていない状態(平時)において、開閉部3が閉塞を維持しているが、その他の場合においては以下のように動作する。
【0028】
設備機器等の使用により排水が発生した場合、該排水は排水配管を通り、逆流防止弁1へと流入する。そして、逆流防止弁1内部へと流入した排水は、逆流防止弁1内部より第一開閉部31に対して水勢又は排水の自重によって圧力(正圧)を加え、第一開閉部31を押し広げる。そして、第一開閉部31が一時的に開弁状態となることによって、逆流防止弁1内部に流入した排水は第一開閉部31を通過し、下流へと排出される。
【0029】
この時、図10乃至図12に示すように、逆流防止弁1はその構造上、排水の流入の際に第一開閉部31が開弁状態となるものであるが、本発明においては上記のようにリブ6が筒側面5にのみ設けられている為、第一開閉部31の開弁/閉塞に伴い大きく変形する傾斜面2及び第一開閉部31はリブ6によってその動作を妨げられることはない。尚、開弁時においては軸方向と直交する方向に筒側面5もある程度変形する必要があるが、リブ6は逆流防止弁1の軸方向に対して平行に設けられている為、軸方向と直交する方向に対しては(軸方向に比べて)高い剛性を有さず、開弁を妨げることはない。
さらに、逆流防止弁1は開弁時において、対向する傾斜面2同士は互いが離間する方向に変形し、一方で対向する開閉部3下端の両端部同士は互いが近接する方向に変形する。従って、図10及び図11に示すように、筒側面5の内、開閉部3下端の両端部の直上であって、底面視(平面視)における開閉部3の閉塞時における当接面4の延長線上に当たる部分が最も変形するが、前述の通り、当該箇所にはリブ6が設けられていない為弾性が確保されており、より開閉部3の開弁を妨げることはない。
【0030】
設備機器からの排水が終了すると、開閉部3は自身の弾性力によって再び閉塞状態となる。そして、当該閉塞状態によって、下流側からの臭気や害虫の逆流を防ぐ。
【0031】
一方、逆流防止弁1の下流側より正圧が発生した場合、当該正圧は開閉部3を押し広げる方向には働かない為、開閉部3は閉塞を維持する。
【0032】
又、従来の逆流防止弁であれば予期せぬ形状に変形してしまう程強い正圧が下流側より生じた場合、本発明の逆流防止弁1は図13に示すように、屈曲部8が逆流防止弁1の中心軸に向けて近接する。そして第二傾斜面22(第二開閉部32)同士が当接することによって、開閉部3の閉塞面積(当接面4)が増大し、該正圧が生じても強固に逆流を防止することが可能となる。
この時、前述のように、リブ6は第二開閉部32(第二傾斜面22)までは達していない為、当該第二開閉部32の閉塞動作がリブ6によって阻害されることはない。
【0033】
即ち、本発明における逆流防止弁1においては、下流側からの強い正圧発生時において、エリアYに設けられた第二開閉部32が閉塞することで逆流防止機能を増大させることが出来、且つエリアXが剛性部であるリブ6によって下流側からの正圧が生じる方向(軸方向)に対して強い耐性を備える為、予期せぬ方向への変形を防ぐことが出来る。
【0034】
従って、本発明においては、平時においては開弁状態であって、下流側に正圧が生じた時に閉塞する第二開閉部32を設けたことによって、平時における排水性能が高く、且つ下流側に正圧が生じた際の逆流を好適に防ぐことが出来る構造となっている。
【0035】
上記本発明の実施形態において、第一傾斜面22及び第二傾斜面23は共に平坦面として形成されている為、閉塞時の密着を面で確実に行うことが可能となるが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、図14に示す本発明の第二実施形態のように、傾斜面2が円弧状であっても良い。
【0036】
又、図15に示す本発明の第三実施形態のように、傾斜面2が第一傾斜面21、第二傾斜面22、第三傾斜面23の三面より構成されていても良い。この場合においては、傾斜面2の内、一番下方の傾斜面2である第三傾斜面23が第二開閉部32として機能する。尚、当然に、上記第三実施形態より多くの面より傾斜面2が構成されていても良い。
【0037】
又、図16に示す本発明の第四実施形態のように、側面視(側面断面視)において正面と背面が非対称であって、正面と背面に設けられた傾斜面2の傾斜角が異なっていても良い。
【0038】
又、上記実施形態では、逆流防止弁1の正面及び背面に傾斜面2がそれぞれ設けられていたが、図17乃至図19に示す本発明の第五実施形態のように、傾斜面2が正面(若しくは背面)にのみ設けられていても良い。
【0039】
又、上記実施形態では、筒側面5に設けられたリブ6が剛性部として機能していたが、本発明においては剛性部の配置、形状、構造等はどのようなものでも良い。
【0040】
尚、本発明における逆流防止弁1は、排水配管等に取り付けられる吸気弁として使用されても良い。
【0041】
又、本発明における逆流防止弁1は、排水配管以外にも、例えばエアコン等の気体の通気構造においても採用することが出来る。この場合においては、上記実施形態のような、逆流防止弁1の下流側が正圧になる場合だけでなく、逆流防止弁1の上流側が負圧になることも考えられるが、当該上流側が負圧となった場合においても、剛性部であるリブ6が軸方向に対し平行に設けられている為、逆流防止弁1が予期せぬ変形をしてしまうことはなく、又、第二開閉部32が閉塞することで逆流を防ぐことが出来る。
【符号の説明】
【0042】
1 逆流防止弁
2 傾斜面
21 第一傾斜面
22 第二傾斜面
23 第三傾斜面
3 開閉部
31 第一開閉部
32 第二開閉部
4 当接面
5 筒側面
6 リブ(剛性部)
8 屈曲部
13 取付部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20