特許第6078729号(P6078729)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6078729
(24)【登録日】2017年1月27日
(45)【発行日】2017年2月15日
(54)【発明の名称】音声処理装置
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/00 20060101AFI20170206BHJP
   G10L 21/0364 20130101ALI20170206BHJP
   H03G 7/00 20060101ALI20170206BHJP
   H03G 3/00 20060101ALI20170206BHJP
【FI】
   H04R3/00
   G10L21/0364
   H03G7/00
   H03G3/00 A
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-260534(P2011-260534)
(22)【出願日】2011年11月29日
(65)【公開番号】特開2013-115640(P2013-115640A)
(43)【公開日】2013年6月10日
【審査請求日】2014年11月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】398034168
【氏名又は名称】株式会社アクセル
(74)【代理人】
【識別番号】100106426
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 賢二
(72)【発明者】
【氏名】田中 隆行
【審査官】 菊池 充
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−154091(JP,A)
【文献】 特開2010−187741(JP,A)
【文献】 特開2007−006986(JP,A)
【文献】 特開2009−160241(JP,A)
【文献】 特開2008−229103(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/069225(WO,A1)
【文献】 特開2008−164932(JP,A)
【文献】 特開2011−152413(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 3/00− 3/14
G10L 19/00−21/18
H03G 1/00− 3/34
H03G 5/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が、同時出力可能な複数の圧縮された音声信号に対して伸長処理を行うデコーダと、そのデコーダで伸長処理された音声信号の音量を調整するボリュームコントローラとで構成され、並列配設された複数のトラック処理部を有し、その複数のトラック処理部からの複数の音声信号を混合して出力する音声処理用LSIを備えた音声処理装置であって、
前記音声処理用LSIは、
トラックステータス情報として、各デコーダから各デコーダの現ステータスの情報であるデコーダステータス情報と、各ボリュームコントローラから各ボリュームコントローラの現ステータスの情報であるボリュームステータス情報とを定期的に入力することにより、全トラックステータス情報を更新作成していると共に、任意の一のトラック処理部における音曲の再生に係る指令がメタデータとして記述されたトラック制御指令であって、他のトラック処理部における音曲の再生に対する相対的な指令をも含むトラック制御指令を入力すると、そのときの前記全トラックステータス情報を参照し、その参照に基づいて、前記一のトラック処理部に含まれる前記デコーダ及び前記ボリュームコントローラに対してデコーダ制御指令及びボリューム制御指令をそれぞれ出力すると共に、前記相対的な指令と前記参照された前記全トラックステータス情報とで選択される他のトラック処理部に含まれる前記デコーダ及び前記ボリュームコントローラに対してデコーダ制御指令及びボリューム制御指令をそれぞれ出力する状況判定制御部を更に有していることを特徴とする音声処理装置。
【請求項2】
前記状況判定制御部は、前記トラック制御指令を入力した時点で、前記全トラックステータス情報を更新することを特徴とする請求項1又は2に記載の音声処理装置。
【請求項3】
前記メタデータは、前記他のトラック処理部における音曲の再生に対する相対的な指令として、前記相対的な指令と前記参照された前記全トラックステータス情報とで選択される他のトラック処理部における音曲の再生が停止される場合のフェードアウト時間が記述されるフェードアウト要求を含むことを特徴とする請求項1に記載の音声処理装置。
【請求項4】
前記フェードアウト時間を含む相対的な指令と前記参照された前記全トラックステータス情報とに基づいて、当該他のトラック処理部における音曲の再生が停止される場合には、前記定期的な参照により、当該他のトラック処理部に係るトラックステータス情報に含まれる現音量が、前記フェードアウト時間に応じて徐々に減少し、最終的に前記音曲の再生が停止されることを特徴とする請求項に記載の音声処理装置。
【請求項5】
前記メタデータは、前記音曲を特定するための情報と、最終音量を含むことを特徴とする請求項に記載の音声処理装置。
【請求項6】
前記メタデータは、前記他のトラック処理部における音曲の再生に対する相対的な指令として、他の音曲に対する相対的な優先度を更に含むことを特徴とする請求項5に記載の音声処理装置。
【請求項7】
前記メタデータは、前記他のトラック処理部における音曲の再生に対する相対的な指令として、同時再生可能な音曲数を更に含むことを特徴とする請求項6に記載の音声処理装置。
【請求項8】
前記メタデータは、再生すべき音曲のフェードイン時間の情報を更に含むことを特徴とする請求項7に記載の音声処理装置。
【請求項9】
前記音声処理用LSIに前記メタデータを含む音曲再生命令を与える中央処理装置を更に備えることを特徴とする請求項乃至8のいずれかに記載の音声処理装置。
【請求項10】
前記音声信号の元となる音声データが圧縮されて格納される音声データ格納部を更に備えることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の音声処理装置。
【請求項11】
パチンコ機に組み込まれることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の音声処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声処理装置に関し、特に、同時出力可能な複数の音声信号に対して所望の処理を行うと共にそれらの音量を調整する並列配設された複数のトラック処理部を有し、その複数のトラック処理部からの複数の音声信号を混合して出力する音声処理用LSIを有する音声処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パチンコ機、ゲーム機等の遊技機は、スピーカ等の音声出力機器を備え、緊迫感や臨場感の向上等を目的として、状況に応じて各種の音を出力させることが今や常識となっている。各種の音としては、音楽、台詞、効果音等さまざまなものがあるが、これらの各種音声データは、通常は圧縮されたデータとして外部の記憶手段(ROM(Read Only Memory)など)に格納され、必要に応じて各種の処理が行われたのち、スピーカ等の音声出力機器から出力される。このとき、各種遊技機の遊技態様の多様性に応じて、各種の音声データが同時並列的に出力されることも多いが、スピーカ等の音声出力機器の数によっては、ミキシング処理も行われる。
【0003】
ここで、上述のミキシング処理を行うときには、重ね合された音声信号の出力レベルが任意の時刻で0dBを越えないように、すなわち、いわゆるクリッピングが発生しないように、調整する必要がある。クリッピングが発生すると、いわゆる「音割れ」が生じ、不快な音として聞こえてしまうからである。このクリッピングを回避するためには、ミキシングされる各音声信号のレベルを低減させる等のレベル制御を行うのが一般的である。かかる技術を開示した文献としては、例えば特許文献1がある。
【0004】
一方、複数の音声信号をミキシング処理して出力する場合に、クリッピングが発生するか否かに拘らず、それらの音声信号の出力レベルを相対的に変化させたい場合もある。同時並列的に出力されるそれぞれの音の種類に応じて、相対的な優先度を持たせたい場合があるからである。例えば、BGMが恒常的に出力されている状況下で、台詞が間欠的に出力される場合には、台詞を聴こえやすくするために、当該台詞の出力レベルに応じてBGMのレベルを下げるように調整することが行われる(いわゆるダッキング処理)。同様の技術を開示した文献としては、例えば特許文献2がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−169400号公報
【特許文献2】特開2009−94796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の特許文献1の例のようなレベル制御の処理においては、単にミキシング後の音声信号レベルが所定値を越えないように画一的にレベル制御するのみであり、実際に出力される各音声の属性等に応じて、適応的に融通性のある出力レベル制御を行っていない。つまり、特許文献1においては、厳格なクリッピング回避を追及するあまり、全体の音楽性が失われる懸念があるという課題がある。
【0007】
また、上述の特許文献2の例のような優先度を持たせた出力レベル制御においては、BGMとセリフといった単純な相対関係については比較的容易に実現できるが、同時に出力される可能性のある他の複数の音声信号との関係において任意の音声信号の出力レベルを適応的に制御することは困難である。また、相対的な優先度やその度合いを容易に変更することも困難である。
【0008】
更に、従来においては、上記の指令制御手段(典型的には、CPU(Central Processing Unit))が、各トラックでの出力状況や相対的な優先度を常時把握して各トラックごとの指令を発しなければならず、指令が複雑であり、それに応じてプログラミングが煩雑であるという課題があった。
【0009】
本発明は上述のような事情から為されたものであり、本発明の目的は、複数の音声信号をミキシング処理して出力する際に、上位からの指令が簡易になると共に、複数のトラック処理部での現実の状況を常に把握することにより、全体の音楽性を維持することを優先しつつ、クリッピングが発生しにくい状況を作り出すことができる音声処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の音声処理装置は、各々が、同時出力可能な複数の圧縮された音声信号に対して伸長処理を行うデコーダと、そのデコーダで伸長処理された音声信号の音量を調整するボリュームコントローラとで構成され、並列配設された複数のトラック処理部を有し、その複数のトラック処理部からの複数の音声信号を混合して出力する音声処理用LSIを備えた音声処理装置であって、前記音声処理用LSIは、トラックステータス情報として、各デコーダから各デコーダの現ステータスの情報であるデコーダステータス情報と、各ボリュームコントローラから各ボリュームコントローラの現ステータスの情報であるボリュームステータス情報とを定期的に入力することにより、全トラックステータス情報を更新作成していると共に、任意の一のトラック処理部における音曲の再生に係る指令がメタデータとして記述されたトラック制御指令であって、他のトラック処理部における音曲の再生に対する相対的な指令をも含むトラック制御指令を入力すると、そのときの前記全トラックステータス情報を参照し、その参照に基づいて、前記一のトラック処理部に含まれる前記デコーダ及び前記ボリュームコントローラに対してデコーダ制御指令及びボリューム制御指令をそれぞれ出力すると共に、前記相対的な指令と前記参照された前記全トラックステータス情報とで選択される他のトラック処理部に含まれる前記デコーダ及び前記ボリュームコントローラに対してデコーダ制御指令及びボリューム制御指令をそれぞれ出力する状況判定制御部を更に有していることを要旨とする。
【0012】
また、前記状況判定制御部は、前記トラック制御指令を入力した時点で、前記全トラックステータス情報を更新することが特徴である。
【0013】
前記メタデータは、好適には、前記他のトラック処理部における音曲の再生に対する相対的な指令として、前記相対的な指令と前記参照された前記全トラックステータス情報とで選択される他のトラック処理部における音曲の再生が停止される場合のフェードアウト時間が記述されるフェードアウト要求を含むことが特徴である。そのとき、前記フェードアウト時間を含む相対的な指令と前記参照された前記全トラックステータス情報とに基づいて、当該他のトラック処理部における音曲の再生が停止される場合には、前記定期的な参照により、当該他のトラック処理部に係るトラックステータス情報に含まれる現音量が、前記フェードアウト時間に応じて徐々に減少し、最終的に前記音曲の再生が停止される。
また、好適には、前記メタデータは、前記音曲を特定するための情報と、最終音量を含む。更に好適には、前記メタデータは、他の音曲に対する相対的な優先度を更に含む。更に好適には、前記メタデータは、同時再生可能な音曲数を更に含む。更に好適には、前記メタデータは、再生すべき音曲のフェードイン時間の情報を更に含む。
【0014】
また、前記音声処理用LSIに前記メタデータを含む音曲再生命令を与える中央処理装置を更に備えることを要旨とする。また、前記音声信号の元となる音声データが圧縮されて格納される音声データ格納部を更に備えることを要旨とする。ここで、好適には、当該音声処理装置は、パチンコ機に組み込まれる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の音声処理装置によれば、複数の音声信号をミキシング処理して出力する際に、上位からの指令が簡易になると共に、複数のトラック処理部での現実の状況を常に把握することにより、全体の音楽性を維持することを優先しつつ、クリッピングが発生しにくい状況を作り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の音声処理装置おける一実施形態の構成ブロック図である。
図2】トラック制御指令TCCが入力された状況判定制御部における処理の具体例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の音声処理装置おける一実施形態の構成ブロック図である。同図に示すように、一実施形態としての音声処理装置は、各種音声データが圧縮データとして格納される音声データ格納外部ROM(Read Only Memory)1と、音曲再生命令等を出力する中央処理装置(以下、「CPU(Central Processing Unit)」と称す)2と、そのCPU2からの音曲再生命令に応じて、音声データ格納用外部ROM1に格納された音声データを入力して音声として出力するための処理を行う音声処理用大規模集積回路(以下、「音声処理用LSI(Large Scale Integrated-Circuit)」と称す)3と、音声処理用LSI3から出力された音声信号を入力して音声として出力する少なくとも1つのスピーカ4と、を備えている。
【0018】
ここで、音声データ格納用外部ROM1には、複数のフレーズデータ(例えば、約4000種類)が圧縮されたデジタルデータとして格納されている。但し、圧縮されていることが好適であるが、その限りではない。
【0019】
音声処理用LSI3は、第1トラック〜第nトラックの各々に対応した音声処理を行うための第1〜第nトラック処理部31−1〜31−nを有している。ここで、第1トラック処理部31−1は、入力されるデコーダ制御指令DCC[1]に基づいて、音声データ格納用外部ROM1から圧縮された所望の音声データを読み出して伸長処理を行うデコーダ311−1と、入力されるボリューム制御指令VCC[1]に基づいて、デコーダ311−1からの伸長音声データについての出力音量及びフェードイン/アウト等を制御するボリュームコントローラ312−1と、を有している。但し、必要に応じて、ボリュームコントローラ312−1の後段に、イコライザやエフェクタ等が含まれていることもある。第2〜第nトラック処理部31−2〜31−nも、第1トラック処理部31−1と同様である。なお、図1においては、第1トラック処理部31−1及び第nトラック処理部31−nのみを示し、他は省略している。また、nは、例えば16である。
【0020】
また、音声処理用LSI3は、CPU2から発生られた命令を入力して簡易解析し、トラック制御指令TCCを発する命令解析部32を有している。
【0021】
更に、音声処理用LSI3は、第1〜第nトラック処理部31−1〜31−nから、各デコーダ311−1〜311−nの現ステータスの情報であるデコーダステータス情報DS[1]〜DS[n]と、各ボリュームコントローラ312−1〜312−nの現ステータスの情報であるボリュームステータス情報VS[1]〜VS[n]とを定期的に入力して全トラックステータス情報TTSを更新作成していると共に、命令解析部32からのトラック制御指令TCCを入力すると、そのときの全トラックステータス情報TTSを参照し、その参照に基づいて選択されたデコーダ311−k及びボリュームコントローラ312−kに対して(kは複数個もあり得る)、それぞれデコーダ制御指令DCC[k]及びボリューム制御指令VCC[k]を出力する状況判定制御部33を有している。
【0022】
また、音声処理用LSI3は、第1〜第nトラック処理部31−1〜31−nの各々から出力された音声信号を混合して出力するミキサー34と有している。
【0023】
なお、トラック制御指令TCC、全トラックステータス情報TTS、デコーダステータス情報DS、ボリュームステータス情報VS、デコーダ制御指令DCC、及びボリューム制御指令VCCの具体例については、以下の動作の説明において示す。
【0024】
次に、図1に示した音声処理装置の動作を説明する。
ここで、前述のように、音声データ格納外部ROM1には、例えば遊技機(パチンコ機、ゲーム機等)で再生されるべき、背景音楽、効果音、声等の各種音声データを圧縮データとして予め格納しておく。なお、圧縮方式としては、例えば、MDCT(変形離散コサイン変換:Modified Discrete Cosine Transform)があるが、それに限られることはない。また、必ずしも圧縮して格納する必要もない。
【0025】
そこで、本音声処理装置が搭載された遊技機等が駆動開始されると、本音声処理装置も動作が開始する。動作開始に伴って、CPU2は、図示しないプログラムROM等に格納されたプログラムに従って、音曲再生命令を含む各種命令(コマンド)を音声処理用LSI3に出力しつつ処理を進める。CPU2から出力される命令としては、他にパン命令、ループ命令等がある。音曲再生等に係る詳細指示は、上位装置で作成されたメタデータとしてCPU2に与えられ、CPU2は、そのメタデータを組み込んだ命令を音声処理用LSI3に供給することとなる。
【0026】
一方、音声処理用LSI3内の状況判定制御部33は、第1〜第nトラック処理部31−1〜31−nから定期的に情報を獲得することにより、それらのリアルタイムの処理状況を常に把握している。具体的には、状況判定制御部33は、デコーダ311−1〜311−nの各々のデコーダステータス情報DS[1]〜DS[n]を定期的に参照して受け取ると共に、ボリュームコントローラ312−1〜312−nの各々のボリュームステータス情報VS[1]〜VS[n]を定期的に参照して受け取り、それらの情報を全トラックステータス情報TTSとして常に更新しつつ保持している。
【0027】
デコーダステータス情報DSとしては、例えば“再生状況、優先度、フレーズ番号”がある。ここで、“再生状況”とは、そのトラックで何らかの音曲が再生されているか否を示す情報であり、“優先度”とは、再生されている音曲の他の音曲に対する相対的な再生の優先度であり、“フレーズ番号”とは、音曲を特定するための番号、すなわちデコーダステータス情報DSとしては、再生されている音曲を示している。
【0028】
また、ボリュームステータス情報VSとしては、例えば“音量、フェード状況”がある。ここで、“音量”とは、現在再生している音曲の音量(例えば、最大音量に対するパーセンテージ)である。また、“フェード状況”とは、現在再生している音曲にフェードイン/アウトが設定されているか否かや、設定されていればそれは完了しているか否かの情報であり、“フェードタイマ#秒”で表現され、例えば、“フェードタイマ3”は、3秒で完了するフェードイン/アウトが未完了であることを示しており、“フェードタイマ0”は、フェードイン/アウトが要求されていない、又は、完了していることを示している。
【0029】
従って、上記の場合、全トラックステータス情報TTSは、トラックごとの“再生状況、優先度、フレーズ番号、現音量、フェード状況”の情報を含むこととなる。以下に、全トラックステータス情報TTSの具体例を示す。
【0030】
第1トラック:待機中
第2トラック:再生中、優先度A、フレーズ番号17、現音量90%、フェードタイマ0
第3トラック:再生中、優先度C、フレーズ番号33、現音量70%、フェードタイマ0
第4トラック:再生中、優先度B、フレーズ番号72、現音量80%、フェードタイマ0


第nトラック:待機中
【0031】
そこで、音声処理用LSI3内の状況判定制御部33が、恒常的にこのような更新処理を行っている状況下で、前述のように、CPU2から命令が入力されると、その命令は、音声処理用LSI3内の命令解析部32により解析される。命令解析部32は、CPU2から入力された命令が音曲再生命令であると判断すると、状況判定制御部33に対してトラック制御指令TCCを発する。
【0032】
命令解析部32からトラック制御指令TCCを受け取った状況判定制御部33は、その時点の全トラックステータス情報TTSを参照しつつ、受け取ったトラック制御指令TCCに基づいて、指令を与えるべきトラック処理部31−k(kは、1〜nのうちの少なくとも1つ)を選択し、選択したデコーダ311−k及びボリュームコントローラ312−kに対して、それぞれデコーダ制御指令DCC[k]及びボリューム制御指令VCC[k]を与える。
【0033】
状況判定制御部33からデコーダ制御指令DCC[k]を受け取ったデコーダ311−kは、その指令に応じた処理、例えば、再生(伸長)開始処理や再生終了処理を行う。ここで、再生開始処理の場合には、デコーダ制御指令DCC[k]に含まれるフレーズ番号に対応した圧縮データを音声データ格納外部ROM1から読み出し、その圧縮方式に応じた伸長処理を行う。また、その演算は、好適には、ハードウェアロジックにより行われる。そして、伸長処理された音声データは、ボリュームコントローラ[k]に送られる。なお、格納された音声データが圧縮されていない場合には、伸長処理は行われない。
【0034】
状況判定制御部33からボリューム制御指令VCC[k]を受け取ったボリュームコントローラ312−kは、その指令に応じた処理を行う。例えば、再生開始の場合には、指定された音量(%)で出力するように制御し、更に、フェードインタイマが規定されている場合には、その時間でその指定された音量に達するように制御する。また、再生停止の場合には、音量を0とし、更に、フェードアウトタイマが規定されている場合には、その時間で音量0に達するように制御する。また、通常の再生中は、音量制御された音声信号をミキサー34に送る。
【0035】
ミキサー34は、第1〜第nトラック処理部31−1〜31−nの各々から出力された音声信号を混合して出力する。ミキサー34、すなわち音声処理用LSI3から出力された音声信号は、スピーカ4に送られ、所望の音声として出力される。
【0036】
図2は、状況判定制御部33にトラック制御指令TCCが入力された場合の、状況判定制御部33における処理の具体例を説明するための図である。
【0037】
そこで、全トラックステータス情報TTSが、図2の現ステータスで示すような状態(記載されていない他のトラックは待機中)にあるときに、状況判定制御部33が、左に示すトラック制御指令TCCを受ける場合を考える。このトラック制御指令TCCは、具体的には、フレーズ番号72の音曲を、トラック6において、優先度B、最終音量90%、フェードタイマ0.1秒で再生開始すべし、という指令である。また、同じ音曲は同時に1曲しか再生しない、という限定があり、また、優先度の低い他の再生音曲があれば、3秒でフェードアウトして再生停止するという動作を規定している。
【0038】
そこで、当該トラック制御指令TCCを受け取った状況判定制御部33は、全トラックステータス情報TTSが示す現ステータスを参照し、待機中の第6トラックにおいて、指定された音曲の再生を始めると共に、第2トラックにおいて再生中の音曲については再生を維持し、第3トラックにおいて再生中の音曲については、3秒のフェードアウトで再生停止し、第4トラックにおいて再生中の音曲については、直ちに再生停止するように、各トラック処理部31のデコーダ311及びボリュームコントローラ312に指令を与える。
【0039】
詳細には、当該トラック制御指令TCCを受け取った状況判定制御部33は、第6トラックにおいて指定された音曲を再生すべく、デコーダ311−6に対して、フレーズ番号72の音曲の再生開始指示を含むデコーダ制御指令DCC[6]を送る。当該デコーダ制御指令DCC[6]を受け取ったデコーダ311−6は、音声データ格納外部ROM1からフレーズ番号72の音曲に係る圧縮データを読み出して、伸長しつつ、後段のボリュームコントローラ312−6に送る。また、状況判定制御部33は、ボリュームコントローラ312−6に対して、フェードインタイマ0.1秒で、最終的に音量90%となるような音量指示を含むボリューム制御指令VCC[6]を送る。当該ボリューム制御指令VCC[6]を受け取ったボリュームコントローラ312−6は、デコーダ311−6から入力した伸長音声データについて、0.1秒かけて90%の音量になるような音声信号として、ミキサー34に出力する。
【0040】
また、状況判定制御部33は、全トラックステータス情報TTSの参照の結果、第4トラックにおいて再生中の音曲がフレーズ番号72に係る音曲であり、一方、当該トラック制御指令TCCにあるように、今回新たに再生指示された音曲が同じフレーズ番号72の音曲であって、同時再生可能曲数が1曲であることから、第4トラックにおいて再生中の音曲を停止させるべく、デコーダ311−4に対して、再生停止指示を含むデコーダ制御指令DCC[4]を送る。当該デコーダ制御指令DCC[4]を受け取ったデコーダ311−4は、圧縮データの伸長処理を中止して、音声データのボリュームコントローラ312−4への供給を停止する。
【0041】
また、状況判定制御部33は、全トラックステータス情報TTSの参照の結果、第3トラックにおいて再生中の音曲が優先度Cの音曲であり、一方、当該トラック制御指令TCCにあるように、今回新たに再生指示された音曲が優先度Bであり、先行フェードアウト要求が3秒であることから、第3トラックにおいて再生中の音曲を3秒のフェードアウト時間で停止させるべく、デコーダ311−3に対して、3秒後の再生停止指示を含むデコーダ制御指令DCC[3]を送る。当該デコーダ制御指令DCC[3]を受け取ったデコーダ311−3は、3秒後に圧縮データの伸長処理を中止して、音声データのボリュームコントローラ312−3への供給を停止する。また、状況判定制御部33は、ボリュームコントローラ312−3に対して、フェードアウトタイマ3秒で、最終的に音量0%となるような音量指示を含むボリューム制御指令VCC[3]を送る。当該ボリューム制御指令VCC[3]を受け取ったボリュームコントローラ312−3は、デコーダ311−3から入力した伸長音声データについて、3秒かけて0%の音量になるような音声信号として、ミキサー34に出力する。
【0042】
また、状況判定制御部33は、全トラックステータス情報TTSの参照の結果、第2トラックにおいて再生中の音曲が優先度Aの音曲であり、一方、当該トラック制御指令TCCにあるように、今回新たに再生指示された音曲が優先度Bであることから、第2トラックにおいて再生中の音曲については、再生を維持すると判断する。従って、状況判定制御部33は、第2トラック処理部31−2に含まれるデコーダ311−2及びボリュームコントローラ312−2に対しては何ら指令を送らない。
【0043】
状況判定制御部33は、前述のように、定期的にデコーダステータス情報DS及びボリュームステータス情報VSを入手して、全トラックステータス情報TTSを更新する一方、トラック制御指令TCCを受けたときにも、必然的に更新を行う。すなわち、今回、状況判定制御部33が当該トラック制御指令TCCを受けて、当該デコーダ制御指令DCC及びボリューム制御指令VCCを送った直後の全トラックステータス情報TTSは、図2の過渡的ステータスに示すような内容となっている。
【0044】
具体的には、第6トラックについては、フレーズ番号72の音曲を優先度Bで再生開始と表わされるが、再生開始直後のため、現音量は0パーセントであり、0.1秒のフェードインは完了していないので、フェードタイマは0.1となっている。また、第4トラックについては、再生していた音曲は即座に再生停止であるので、停止と表わされている。また、第3トラックについては、再生していた音曲は、3秒のフェードアウト時間経過の後、停止であるので、その時点ではまだ再生されており、しかしながら、フェードアウトタイマは3と表わされている。また、第2トラックについては、再生していた音曲をそのまま再生し続けるので、ステータス情報を不変である。
【0045】
3秒以上経過した後においては、全トラックステータス情報TTSは、図2の次ステータスに示すような内容となる。具体的には、第6トラックについては、フェードイン時間が経過しているので、現音量は90%となり、フェードタイマは、完了の0を示している。また、第4トラックについては、上述のように即座に停止しており、第3トラックについても、フェードアウト時間が経過しているので、停止となっている。また、第2トラックについては、やはり再生を維持していることを表わしている。
【0046】
以上のように、本発明の音声処理装置における上述の一実施形態によれば、状況判定制御部33が、常に、各トラック処理部31の状況を把握しており、一方、音曲再生に関する命令としては、上位からメタデータとして与えられるので、状況判定制御部33は、音曲再生に係る指示が与えられると、そのときの各トラック処理部31の状況を参照しつつ、機械的に判定指定、音曲再生に係る指示を各トラック処理部31に与えることができる。ここで、命令を与える上位のCPU2は、再生に係る音曲の属性を形式的なメタデータとして与えるだけでよく、音声処理用LSI3が全体の音楽性を損なわないことを優先しつつ、クリッピングが起こりにくい状態とするような判定制御を行う。つまり、従来、各トラック処理部31の状況を把握しないで余裕を見込んでクリッピング回避の制御を行っていたCPU2の処理を、音声処理用LSI3に委ねて、各トラック処理部31の状況を把握して実情に即したクリッピング回避制御を行うことができ、一方、CPU2は、形式化されたメタデータを供給するだけでよいので、負荷が軽減することとなる。更に、メタデータには、最上流に位置するサウンドクリエイタやオーサリング担当者の意図が簡易に記述できるので、かかる意図を実機に容易に反映できる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の音声処理装置は、パチンコ機、ゲーム機等の遊技機、及び楽器に採用できる。
【符号の説明】
【0048】
1 音声データ格納外部ROM
2 CPU
3 音声処理用LSI
31−1〜31−n 第1〜第nトラック処理部
312−1〜312−n デコーダ
313−1〜313−n ボリュームコントローラ
32 命令解析部
33 状況判定制御部
34 ミキサー
4 スピーカ
TTS 全トラックステータス情報
DS デコーダステータス情報
VS ボリュームステータス情報
DCC デコーダ制御指令
VCC ボリューム制御指令
TCC トラック制御指令
図1
図2