特許第6078756号(P6078756)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6078756マイクロフォーカスX線CT装置用の分解能評価試験片
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6078756
(24)【登録日】2017年1月27日
(45)【発行日】2017年2月15日
(54)【発明の名称】マイクロフォーカスX線CT装置用の分解能評価試験片
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20170206BHJP
   A61B 6/00 20060101ALI20170206BHJP
   G01N 23/04 20060101ALI20170206BHJP
【FI】
   A61B6/03 F
   A61B6/00 390A
   G01N23/04 320
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-175655(P2014-175655)
(22)【出願日】2014年8月29日
(65)【公開番号】特開2016-49224(P2016-49224A)
(43)【公開日】2016年4月11日
【審査請求日】2015年12月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】509153238
【氏名又は名称】一般社団法人日本検査機器工業会
(74)【代理人】
【識別番号】100084412
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 冬紀
(72)【発明者】
【氏名】夏原 正仁
(72)【発明者】
【氏名】鶴 祥司
【審査官】 伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−151726(JP,A)
【文献】 特開2014−36787(JP,A)
【文献】 実開昭60−144403(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 − 6/14
G01N 23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線吸収体とX線非吸収体とを等間隔に並べて形成された複数種類の評価パターンが長手方向に配置された帯状基板と、
前記帯状基板を中心軸に沿って縦長に内包したX線非吸収体の外装体とを備えたマイクロフォーカスX線CT装置用の分解能評価試験片。
【請求項2】
請求項1に記載のマイクロフォーカスX線CT装置用の分解能評価試験片において、
前記帯状基板は、シリコン基板であり、前記評価パターンには前記シリコン基板上に半導体製造プロセスにより形成されたX線吸収体のラインとX線非吸収体のスリットとがミクロン単位で等間隔に並べて配置されるマイクロフォーカスX線CT装置用の分解能評価試験片。
【請求項3】
請求項2に記載のマイクロフォーカスX線CT装置用の分解能評価試験片において、
前記X線吸収体のラインは、X線が透過しにくい金であり、その幅および厚さがミクロン単位であり、
前記X線非吸収体のスリットは、X線が透過しやすいシリコンであり、その幅はミクロン単位であるマイクロフォーカスX線CT装置用の分解能評価試験片。
【請求項4】
請求項3に記載のマイクロフォーカスX線CT装置用の分解能評価試験片において、
前記X線吸収体のラインの幅と前記X線非吸収体のスリットの幅は略等しいマイクロフォーカスX線CT装置用の分解能評価試験片。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか一項に記載のマイクロフォーカスX線CT装置用の分解能評価試験片において、
前記評価パターンには、前記X線吸収体のラインが横方向と縦方向にそれぞれ複数本ずつ、T字形に配置されるマイクロフォーカスX線CT装置用の分解能評価試験片。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか一項に記載のマイクロフォーカスX線CT装置用の分解能評価試験片において、
前記複数種類の評価パターンの各々は、前記ラインおよび前記スリットの幅が互いに異なって形成されており、前記中心軸に沿って縦に並べて配置されるマイクロフォーカスX線CT装置用の分解能評価試験片。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のマイクロフォーカスX線CT装置用の分解能評価試験片において、
前記外装体は、円柱状のアクリル樹脂で形成されたマイクロフォーカスX線CT装置用の分解能評価試験片。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロフォーカスX線CT装置用の分解能評価試験片に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロフォーカスX線CT装置は、医療用として発達し、また製造業の品質管理においても非破壊検査の手法として利用されている。近年、微細な焦点であるマイクロフォーカスX線管をCT装置に搭載したマイクロフォーカスX線CT装置による検査の必要性が高まり多くの企業や機関で使用されている。このようなマイクロフォーカスX線CT装置は被検査物の微細な内部形状の観察と併せて微細な寸法計測の技術として利用されている。
【0003】
一般的なX線透過型のマイクロフォーカスX線検査システムの分解能評価用試験片としては、2次元計測用のものがある(特許文献1)。また、マイクロフォーカスX線CT装置の校正と評価のための標準ゲージとして、円柱状のベリリウム成形体を包むX線の吸収度の異なる材料を持った外装体で構成され、X線吸収度の異なる物質のX線投影画像におけるコントラストの差で空隙模様を得てその寸法を計測するものがある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−151726号公報
【特許文献2】特開2012−189517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の試験片は、2次元計測用であって、3次元計測用としては用いることができない。また、特許文献2に記載の標準ゲージは、鋳造、鍛造、焼結、切削、研磨などの加工で制作されるため、ミクロン単位の加工が困難でミクロン単位の分解能評価試験片として使用することが困難である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のマイクロフォーカスX線CT装置用の分解能評価試験片は、X線吸収体とX線非吸収体とを等間隔に並べて形成された複数種類の評価パターンが長手方向に配置された帯状基板と、帯状基板を中心軸に沿って縦長に内包したX線非吸収体の外装体とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ミクロン単位の寸法計測が可能なマイクロフォーカスX線CT装置用の分解能評価試験片を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】試験片の正面図である。
図2】試験片の左側面図である。
図3】試験片の平面図である。
図4】帯状基板の斜視図である。
図5】評価パターンの拡大図である。
図6】評価パターンの断面図である。
図7】試験片の実寸に基づく正面図である。
図8】試験片の実寸に基づく左側面図である。
図9】試験片の実寸に基づく平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明によるマイクロフォーカスX線CT装置用の分解能評価試験片(以下、試験片と称する)の一実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
図1は試験片1の正面図である。試験片1は、直径2.0mm、長さ35mmの円柱状の外装体2と、外装体2の中心部に内包される帯状基板3より構成される。図2は試験片1の左側面図であり、図3は試験片1の平面図である。
【0011】
以下、図1図3を参照して説明する。外装体2は、X線を透過しやすいX線非吸収体(X線透過体)である透明なアクリル樹脂で成形され、半円柱状の蓋部2aと半円柱状の基部2bと円柱状の台座2cより成る。基部2bと台座2cは一体的に形成され、基部2bは帯状基板3の厚みに相当する凹部2a−1を有し、凹部2a−1内に帯状基板3を貼り付けて基部2bと蓋部2aを接着することにより、基部2bと蓋部2aの間に帯状基板3が挟み込まれた状態で保持される。なお、基部2bと帯状基板3の間の接着面、および基部2bと蓋部2aの間の接着面はシリコン系等の接着剤で貼り付けられる。台座2cは直径2.0mm、長さ24.7mmであり、図1図2において、長さは中間省略して図示する。基部2bと蓋部2aを貼り合わせた部分は、直径2.0mm、長さ10.3mmである。
【0012】
帯状基板3は縦7.0mm、横0.8mm、厚さ0.2mmの直方形であり、半導体製造プロセスにより形成された評価パターン3aが中央に長手方向に配置されたシリコン基板である。評価パターン3aはX線を透過しにくいX線吸収体を含んで形成されている。基部2bの凹部2a−1の四隅はカーブが施され、帯状基板3が凹部2a−1に嵌合するようになっている。
【0013】
帯状基板3は、図1、2に示すように、円柱状の台座2cの上であって、外装体2の円柱の中心軸αに沿って縦長に配置され、外装体2に内包される。したがって、帯状基板3の評価パターン3aは円柱の中心軸αに沿って配置されることになる。
【0014】
試験片1の背面図は、図1の正面図とほぼ同様であり図示省略するが、異なる部分は、帯状基板3の評価パターン3aが見えず、帯状基板3の背面が見えた状態となることである。試験片1の右側面図は、図2の左側面図と左右対称であり図示省略する。試験片1の底面図は、図3の平面図と同一であり図示省略する。
【0015】
図4は帯状基板3の斜視図である。帯状基板3は縦7.0mm、横0.8mm、厚さ0.2mmの直方形であり、5種類の評価パターン3a−3〜3a−7が中央に配置されたシリコン基板である。縦長に配置された評価パターン3aは長さが2.5mmである。
【0016】
図5は評価パターン3a−5を拡大した図であり、横方向に長さ0.1mmの3本のラインSxが、縦方向に長さ0.15mmの3本のラインSyがT字形に配置されている。これらのラインはX線を透過しにくいX線吸収体となる金(Au)で形成されており、各ライン間の白い部分はX線を透過しやすいX線非吸収体となるシリコン(Si)のスリットである。ラインSx、Syの間のスリット以外の白い部分もX線非吸収体となるシリコン(Si)である。数字SnはラインSx、Sy、およびスリット幅をμmで表わした識別のための数字であり、この例ではラインSx、Sy、およびスリット幅は5μmであることを示している。X線吸収体のラインの幅と前記X線非吸収体のスリットの幅は略等しい。5種類の評価パターン3a−3〜3a−7の各スリット幅は夫々3μm、4μm、5μm、6μm、7μmであるので、図4では、評価パターン3a−3〜3a−7には夫々数字3、4、5、6、7が付記されている。なお、図1において、評価パターン3aの数字Snの記載は省略している。さらに、図1において、評価パターン3aの3本のラインSx、Syは1本のラインに省略して記載している。
【0017】
図6は、図5のA−A断面図である。帯状基板3はシリコン基板であり、3本のラインSyはシリコン基板上に半導体製造プロセスにより形成されたX線吸収体となる金(Au)のラインである。図6に示す断面図では、X線吸収体の金(Au)のラインとX線非吸収体のシリコン(Si)のスリットとをミクロン単位で等間隔に並べた配置になっている。図6は、評価パターン3a―5の例であるが、各ライン幅wおよび各スリット幅wは5μmであり、金(Au)のラインの厚さdは4μmである。各ライン幅wおよび各スリット幅wが異なった5種類の評価パターン3a−3〜3a−7の金(Au)のラインの厚さdは何れも4μmである。
【0018】
図1図6は、説明を分かり易くする為に実際の寸法とは異なる寸法で記載した。これに対して、図7は、実寸を拡大して記載した試験片1の正面図である。同一箇所には同一の符号を附してその説明を省略する。横方向の寸法は、x=2.0mm、x1=0.6mm、x2=0.8mm、x3=0.6mmである。縦方向の寸法は、y=35.0mm、y1=24.7mm、y2=0.3mm、y3=7.0mm、y4=0.3mm、y5=2.7mm、y6=2.5mmである。試験片1の背面図は、図7の正面図とほぼ同様であり図示省略するが、異なる部分は、帯状基板3の評価パターン3aが見えず、帯状基板3の背面が見えた状態となることである。
【0019】
図8は、実寸を拡大して記載した試験片1の左側面図である。同一箇所には同一の符号を附してその説明を省略する。帯状基板3の厚さはz=0.2mmである。試験片1の右側面図は、図8の左側面図と左右対称であり図示省略する。
【0020】
図9は、実寸を拡大して記載した試験片1の平面図である。同一箇所には同一の符号を附してその説明を省略する。試験片1の底面図は、図9の平面図と同一であり図示省略する。
【0021】
以上のように構成される試験片1は、マイクロフォーカスX線CT装置の検査用テーブル(図示省略)に載置し、マイクロフォーカスX線CT装置のX線放射口(図示省略)を可能な限り接近させる。そして、試験片1の中心軸αを回転軸として検査用テーブルを回転させて、試験片1の360度のデータを取り込む。試験片1には、円柱状の外装体2の中心軸αに沿って縦に並べられた複数種類の評価パターン3aが配置された帯状基板3が内包されているので、コンピュータ解析により評価パターン3aの3次元の断面画像を得る。特に、評価パターン3aのラインは縦方向、横方向にT字形に配置されているので、横断面及び縦断面を含むあらゆる角度のミクロン単位の情報が得られる。その結果、3次元の断面画像によりミクロン単位の寸法計測ができ、マイクロフォーカスX線CT装置の高分解能評価と、マイクロフォーカスX線CT装置の検査時におけるミクロン単位の内部形状と寸法計測の基準を提供することができる。
【0022】
試験片1は、半導体製造プロセスにより形成された評価パターン3aを有する帯状基板3を円柱状の外装体2の中心部に内包した構成であるので、同一の精度で簡単に大量に製造でき、試験片1を広く提供することができる。
【0023】
(変形例)
本発明は、以上説明した実施の形態を次のように変形して実施することができる。
(1)外装体2の基部2bと台座2cは一体的に形成したが、基部2bと台座2cはそれぞれ別体に制作し、その後、両者をシリコン系等の接着剤で貼り付けてもよい。また、外装体2の基部2bは帯状基板3の厚みに相当する凹部2a−1を有し、基部2bと蓋部2aの間に帯状基板3を挟み込むようにしたが、蓋部2aに凹部2a−1を形成し、基部2bと蓋部2aの間に帯状基板3を挟み込むようにしてもよい。また、外装体2は透明なアクリル樹脂の例で説明したが、半透明なアクリル樹脂であってもよく、アクリル樹脂に限らずX線非吸収体(X線透過体)の材料であればよい。また、円柱状の外装体2は直径2.0mmの例で説明したが、帯状基板3を内包できればよく、直径2.0mmに限定せず数mmであればよい。更に、外装体2は円柱以外の形状であってもよい。
【0024】
(2)帯状基板3を外装体2の中心軸αに沿って縦長に内包したが、帯状基板3が外装体2の中心軸αと完全に一致する必要はなく、外装体2の中心軸αと略並行であって、外装体2の中心軸αに沿って縦長に内包されているものであってもよい。また、試験片1をマイクロフォーカスX線CT装置の検査用テーブルに載置して検査用テーブルを回転させたときの回転軸に沿って評価パターン3aが配置されていれば、外装体2の中心軸αと検査テーブルの回転軸とが一致しなくてもよい。
【0025】
(3)帯状基板3の中央には、縦長に5種類の評価パターン3a−3〜3a−7を配置する例で説明した。しかし、配置する評価パターンの数は5種類に限定せず任意である。また、一つの評価パターンは横方向と縦方向のラインからなるT字形を例に説明したが、L字形などその他の形状であってもよい。また、評価パターン3aの横方向と縦方向のX線吸収体となるラインは3本の例で説明したが、3本に限定せず任意である。
【0026】
(4)評価パターン3aのX線吸収体となるラインは金(Au)の例で説明したが、金(Au)に限らずタングステン(W)などX線吸収体の材料であればよい。
【0027】
(5)5種類の評価パターン3a−3〜3a−7の各スリット幅は夫々3μm、4μm、5μm、6μm、7μmの例で説明したが、評価パターン3a−3〜3a−7の各スリット幅はこれ以下のサイズ、若しくはこれ以上のサイズにより構成されるものであってもよい。
【0028】
以上説明した実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)本発明によるマイクロフォーカスX線CT装置用の分解能評価試験片1は、X線吸収体とX線非吸収体とを等間隔に並べて形成された複数種類の評価パターン3a−3〜3a−7が長手方向に配置された帯状基板3と、帯状基板3を中心軸αに沿って縦長に内包したX線非吸収体の外装体2とを備えた。したがって、ミクロン単位の寸法計測が可能なマイクロフォーカスX線CT装置用の分解能評価試験片を提供することができる。
【0029】
本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の特徴を損なわない限り、本発明の技術思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。また、上述の実施の形態と複数の変形例を組み合わせた構成としてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 試験片
2 外装体
3 帯状基板
3a 評価パターン
α 中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9