(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
A.実施例:
A1.ガス生成装置の概要:
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づき説明する。
図1は、本発明の一実施例としてのガス生成システムの概略図である。ガス生成システム900は、水の電気分解によって水素ガスと酸素ガスとを生成する。ガス生成システム900は、ガス生成装置800と、直流電源400と、電解液供給装置500と、を備えている。
【0020】
ガス生成装置800は、水素ガスが生成される第1室210を形成する部材(詳細は後述)と、第1室210に収容される第1電極310と、酸素ガスが生成される第2室220を形成する部材(詳細は後述)と、第2室220に収容される第2電極320と、第1室210と第2室220との間を仕切る分離膜330と、を備えている。
【0021】
直流電源400は、2つの電極310、320の間にバイアス電圧を印加する。第1電極310には、直流電源400の負極が接続され、第2電極320には、直流電源400の正極が接続されている。
【0022】
電解液供給装置500は、2つの室210、220に、水を含む電解液を供給する。電解液供給装置500は、第1供給路510を介して第1室210に接続され、第2供給路520を介して第2室220に接続されている。水を含む電解液としては、プロトン(H
+。水素イオンとも呼ばれる)の伝導を許容するNa
2SO
4の水溶液が用いられる。ただし、電解液としては、プロトン(H
+)の伝導を許容する他の電解液(例えば、NaHCO
3の水溶液)を採用してもよい。
【0023】
2つの室210、220の間を仕切る分離膜330は、ガスの通過を制限する膜であり、第1電極310によって生成された水素ガスが第2室220に移動することと、第2電極320によって生成された酸素ガスが第1室210に移動することを、制限している。これにより、生成された水素ガスと酸素ガスとが分離され、それらのガスの混合が抑制される。また、分離膜330は、プロトン(H
+)の伝導性を有している。本実施例では、このような分離膜330として、スルホン酸基を含むフッ素系樹脂(例えば、ナフィオン(デュポン社の商標))の膜が用いられている。このようなフッ素系樹脂の膜は、電解質膜とも呼ばれる。
【0024】
第1電極310は、導電性材料(ここでは、ステンレス鋼)を用いて構成されている。第2電極320は、光を用いて水の電気分解を促進する光触媒としての酸化タングステン(WO
3)を含む導電性材料を用いて構成されている。第2電極320に太陽光等の光が照射されると、光触媒の作用により、水(H
2O)から、酸素ガス(O
2)と、プロトン(H
+)とが生成され、そして、電子(e
−)が、第2電極320に生じる。
【0025】
酸素ガスは、第2室220に接続された第2ガス流路420を通じて、第2室220の外に排出される。排出された酸素ガスは、図示しない酸素タンクに貯留される。ただし、酸素ガスを、貯留せずに、所定の空間(例えば、大気中)に解放してもよい。第2電極320に生じた電子(e
−)は、直流電源400に移動し、直流電源400から第1電極310へ電子(e
−)が供給される。プロトン(H
+)は、分離膜330を通り抜けて、第1室210に移動する。
【0026】
第1室210に移動したプロトン(H
+)は、第1電極310で電子(e
−)と結合して、水素ガス(H
2)を生成する。生成された水素ガス(H
2)は、第1室210に接続された第1ガス流路410を通じて、第1室210の外に排出される。排出された水素ガス(H
2)は、例えば、図示しない水素タンクに貯留される。また、水素ガスが、図示しない燃料電池に供給されてもよい。
【0027】
A2.ガス生成装置の詳細:
図2は、ガス生成装置800の構成を示す断面図であり、
図3はガス生成装置800の分解断面図であり、
図4は、ガス生成装置800の分解斜視図である。図中には、互いに直交する3つの方向Dx、Dy、Dzが示されている。
図2と
図3とは、第2方向Dyと直交する断面図であり、
図4(A)に示すA−A断面である。
図4(A)と
図4(B)との間では、観察する方向が互いに逆方向である。以下、第1方向Dxを「+Dx方向」とも呼び、第1方向Dxの反対方向を「−Dx方向」とも呼ぶ。また、+Dx方向側を、単に「+Dx側」とも呼び、−Dx方向側を、単に「−Dx側」とも呼ぶ。同様に、第2方向Dyを「+Dy方向」とも呼び、さらに、第2方向Dyの反対方向を「−Dy方向」と、+Dy方向側を「+Dy側」と、−Dy方向側を「−Dy側」と、それぞれ呼ぶ。また、第3方向Dzを「+Dz方向」とも呼び、さらに、第3方向Dzの反対方向を「−Dz方向」と、+Dz方向側を「+Dz側」と、−Dz方向側を「−Dz側」と、それぞれ呼ぶ。
【0028】
A2−1.第1室:
図2に示すように、第1室210は、容器110と分離膜330とによって形成される空間である。以下、容器110を、「第1室形成部110」とも呼ぶ。容器110は、−Dz方向を向いた開口111と、開口111に連通する凹部である収容室112と、を有する有底の容器である。
図4(B)に示すように、開口111の形状は、第1方向Dxと平行なラインと、第2方向Dyと平行なラインと、によって構成される矩形状と、おおよそ同じである。収容室112の形状は、開口111を1つの面として有する直方体と、おおよそ同じである。
【0029】
図2、
図3に示すように、容器110は、収容室112の+Dx側に形成されて+Dx方向に沿って延びる貫通孔113を有している。貫通孔113は、収容室112と容器110の外部とを連通する。以下、貫通孔113が収容室112から外部に向かって延びる方向(ここでは、第1方向Dx)を、「挿入方向Dx」とも呼ぶ。また、容器110は、収容室112内の貫通孔113とは反対側(すなわち、−Dx側)に形成されている凹部114を有している。
図4(B)に示すように、凹部114は、収容室112の−Dy側の端から+Dy側の端まで延びている。なお、容器110は、絶縁性材料(例えば、樹脂)を用いて単一の部材として形成されている。
【0030】
図3、
図4(B)に示すように、第1電極310は、多数の孔が形成されたメッシュ状の部分311(「メッシュ部分311」と呼ぶ)と、メッシュ部分311の−Dx側の端部に固定された第1バスバー312と、メッシュ部分311の+Dx側の端部に固定された第2バスバー313と、第2バスバー313に固定されて+Dx方向に向かって突出する端子314と、含んでいる。
図4(B)に示すように、メッシュ部分311は、第1方向Dxと平行なライン状の端と、第2方向Dyと平行なライン状の端と、を有する略矩形状のプレートであり、第3方向Dzと直交するように配置されている。第3方向Dzを向いて観察した場合、メッシュ部分311は、収容室112の内部のおおよそ全体に拡がっている。第1バスバー312と第2バスバー313とは、それぞれ、メッシュ部分311の−Dy側の端から+Dy側の端まで延びている。第1電極310の各部311、312、313、314は、いずれも、ステンレス鋼を用いて形成されている。各部311、312、313、314を互いに固定する方法としては、例えば、溶接を採用可能である。
【0031】
図2に示すように、第1電極310の端子314は、収容室112内(すなわち、容器110内)から、容器110の貫通孔113に挿入されている。端子314と貫通孔113との間は、Oリング315によって、シールされている。Oリング315は、弾性材料(例えば、ゴム)を用いて形成されている。貫通孔113は、端子314が貫通孔113に挿入されることによって、第1電極310を支持している。
【0032】
図2に示すように、第1電極310の第1バスバー312は、容器110の凹部114に挿入されている。これにより、凹部114は、第1バスバー312、すなわち、第1電極310を支持している。
【0033】
図3、
図4(B)に示す長さL1xは、収容室112に収容された状態の第1電極310の挿入方向Dxに沿った長さを示している。この長さL1xは、開口111の挿入方向Dxに沿った長さL2xよりも長い。このように、開口111よりも長い第1電極310を収容室112に収容する方法については、後述する。なお、
図4(B)に示すように、第1電極310の第2方向Dyに沿った長さL1yは、開口111の第2方向Dyに沿った長さL2yよりも若干短い。
【0034】
図4(B)に示すように、容器110の−Dz側の端面には、開口111を囲むループ状の溝118が形成されている。この溝118には、第1シール部材391が嵌め込まれる(
図2)。第1シール部材391の−Dz側(すなわち、容器110の−Dz側)には、分離膜330が配置されている。
図2、
図4(B)に示すように、分離膜330は、開口111の全体を覆うことによって、開口111を塞いでいる。第1シール部材391は、容器110と分離膜330とに密着し、開口111を囲む全周に亘って、容器110と分離膜330と間をシールする。第1シール部材391は、弾性材料(例えば、ゴム)を用いて形成されている。
【0035】
A2−2.第2室:
図2に示すように、第2室220は、第2室形成部140と分離膜330とガラス板324とによって形成される空間である。第2室形成部140は、第1壁部材120と、第1壁部材120の−Dz側に配置される第2壁部材130と、を含んでいる。
【0036】
図4に示すように、第1壁部材120は、第3方向Dzに沿って延びる貫通孔122を有するループ状の部材である。
図3、
図4(B)に示す様に、第1壁部材120は、貫通孔122の大きさが互いに異なる第1部分120a(+Dz側の部分)と第2部分120b(−Dz側の部分)との2つの部分に区分される。第2部分120bによって形成される貫通孔122は、第1部分120aによって形成される貫通孔122よりも、大きい。第3方向Dzを向いて観察した場合、第1部分120aの内周面は、容器110の開口111の内周面と、おおよそ重なっている。なお、第1壁部材120は、絶縁性材料(例えば、樹脂)を用いて形成されている。
【0037】
図4に示すように、第2壁部材130は、第3方向Dzに沿って延びる貫通孔132を有するループ状の部材である。
図3、
図4(B)に示すように、第3方向Dzを向いて観察した場合、貫通孔132の形状は、略矩形状であり、貫通孔132の内周面は、第1壁部材120の第1部分120aの内周面と、おおよそ重なっている。なお、第2壁部材130は、絶縁性材料(例えば、樹脂)を用いて形成されている。
【0038】
図3、
図4(A)に示すように、第2電極320は、ガラス板324と、ガラス板324の+Dz側の面上の全体に形成された透明導電層323と、透明導電層323の+Dz側の面上の縁よりも内側の部分に形成された光触媒層322と、透明導電層323の+Dz側の面上の縁部分と全周に亘って接触する金具325と、を含んでいる。金具325は、光触媒層322を覆わないように、ループ状に形成されている。
図2に示すように、第2電極320は、第1壁部材120の第2部分120bに嵌め込まれ、第1壁部材120の第1部分120aと第2壁部材130とによって挟まれる。第2壁部材130の貫通孔132は、ガラス板324によって閉じられる。第1壁部材120の貫通孔122のガラス板324よりも+Dz側の空間が、第2室220に対応する。
【0039】
図3、
図4に示すように、金具325の内周側には、ループ状の第3シール部材393が配置されている。第3シール部材393は、透明導電層323と第1壁部材120(より具体的には、第1部分120a)との間に挟まれて、第2電極320と第1壁部材120との間を、貫通孔122の全周に亘って、シールする。第3シール部材393は、弾性材料(例えば、ゴム)を用いて形成されている。
【0040】
図4(B)に示すように、第3方向Dzを向いて観察した場合に、透明導電層323とガラス板324と金具325とのそれぞれの輪郭形状は、略矩形状である。さらに、
図2、
図4(B)に示すように、それらの部材の323、324、325の輪郭は、全周に亘って、第1壁部材120の第2部分120bの内周面よりも若干内側に位置し、そして、全周に亘って、第1壁部材120の第1部分120aの内周面よりも外側に位置している。
【0041】
光触媒層322は、酸化タングステン(WO
3)を膜状に形成したものである。透明導電層323は、導電性材料としてのFTO(フッ素ドープ酸化スズ)を膜状に形成したものであり、光触媒層322によって用いられる光を透過可能である。ガラス板324も、光触媒層322によって用いられる光を透過可能である。
図2に示すように、光(例えば、太陽光)は、第2壁部材130の貫通孔132から入射し、ガラス板324と透明導電層323を透過して、光触媒層322に至る。光を受けた光触媒層322は、水の電気分解を促進する。また、光触媒層322では、電子(e
−)が生じる。生じた電子(e
−)は、透明導電層323を介して、金具325に集められる。
【0042】
金具325は、導電性材料(例えば、ステンレス鋼)を用いて形成されている。金具325は、透明導電層323の縁部分と全周に亘って接触しているので、透明導電層323から電子(e
−)を効率よく集めることができる。また、金具325は、金具325と透明導電層323との間の接触抵抗を低減させるために、弾性を有するように構成されている。本実施例では、金具325は、導電性材料の網を折り畳むことによって、形成されている。金具325の第3方向Dzの厚さは、第3シール部材393のつぶし率を考慮して、透明導電層323との十分な接触面積を実現できるように、設定されている。金具325には、図示しない端子がガス生成装置800の外部から接続される。
図4(B)に示すように、第1壁部材120の第2部分120bの+Dx側には、図示しない端子を挿入するための切欠124が形成されている。
【0043】
図4(A)に示すように、第1壁部材120の+Dz側の端面には、貫通孔122を囲むループ状の溝128が形成されている。この溝128には、第2シール部材392が嵌め込まれる(
図2)。第2シール部材392の+Dz側(すなわち、第1壁部材120の+Dz側)には、分離膜330が配置されている。
図2、
図4(A)に示すように、分離膜330は、貫通孔122の全体を覆うことによって、貫通孔122を塞いでいる。第2シール部材392は、第1壁部材120と分離膜330とに密着し、貫通孔122を囲む全周に亘って、第1壁部材120と分離膜330との間をシールする。第2シール部材392は、弾性材料(例えば、ゴム)を用いて形成されている。
【0044】
A2−3.その他の部分の構成:
図4に示すように、ガス生成装置800の複数の部材は、複数のボルト380によって固定される。複数のボルト380のために、容器110は、複数のネジ孔119を有し、第1壁部材120は、複数のネジ孔129を有し、第2壁部材130は、複数のネジ孔139を、有している。容器110のネジ孔119には、雌ネジが形成されている。ボルト380は、−Dz側から、ネジ孔139、129を通り抜け、そして、容器110のネジ孔119にねじ込まれる。複数のネジ孔119、129、139は、収容室112と貫通孔122、132(すなわち、第1室210と第2室220)の周囲を囲むように、配置されている。
【0045】
なお、図示を省略するが、容器110には、第1ガス流路410(
図1)を接続するための接続口と、第1供給路510を接続するための接続口と、が設けられている。また、図示を省略するが、第1壁部材120には、第2ガス流路420を接続するための接続口と、第2供給路520を接続するための接続口と、が設けられている。
【0046】
A3.第1電極の収容:
図5は、第1電極310を容器110の収容室112内に取り付ける手順の例を示す説明図である。取り付け手順は、
図5(A)〜
図5(D)の順に、進行する。図中には、容器110と第1電極310とが示されている。
図5(A)〜
図5(D)は、それぞれ、斜視図(左部分)と断面図(右部分)と、を示している。断面図は、第2方向Dyと直交し、貫通孔113を通る断面を示している。
【0047】
上述したように、貫通孔113の延びる方向(すなわち、挿入方向Dx)の長さに関しては、第1電極310の長さL1x(
図5(A))は、開口111の長さL2xよりも長い。従って、仮に第1電極310の全体が剛体である場合には、第1電極310を収容室112に入れることが困難である。本実施例では、第1電極310のメッシュ部分311は、弾性変形可能な金属プレートを用いて形成されている。このメッシュ部分311を変形させることによって、第1電極310を収容室112に入れることができる。
【0048】
先ず、
図5(B)に示すように、メッシュ部分311は、端子314が+Dx方向を向き、第1電極310の−Dx側の端部(第1バスバー312を含む部分)が−Dz側を向くように、湾曲される。この状態の第1電極310の挿入方向Dxの長さが、図示された長さL1xbである。この長さL1xbは、容器110の挿入方向Dxの長さL2xよりも短いので、開口111を通じて第1電極310(特に、端子314)を収容室112内に入れることが可能になる。そして、第1電極310の端子314が、収容室112の内から、貫通孔113に挿入される。端子314には、予め、Oリング315が装着されている。
【0049】
次に、
図5(C)に示すように、第1バスバー312が収容室112内に入るように、メッシュ部分311が湾曲される。メッシュ部分311は、端子314と第1バスバー312とが収容室112内に配置され、メッシュ部分311の中央部分が開口111の外に残るように、湾曲される。次に、第1バスバー312が、収容室112の−Dx側に設けられた凹部114に向かって、移動される。
【0050】
次に、
図5(D)に示すように、凹部114に、第1バスバー312が挿入される。以上により、第1電極310の取り付けが完了する。
【0051】
以上のように、実施例では、開口111を有し、第1室210を形成する有底の容器110に、第1電極310が収容されている。そして、容器110に設けられた貫通孔113に、第1電極310の端子314が挿入されることによって、容器110(具体的には、貫通孔113)は、第1電極310を支持する。このような構成を採用することによって、以下に説明する参考例のガス生成装置と比べて、ガス生成装置800の構成を簡素化できる。
【0052】
図6は、ガス生成装置の参考例を示す分解斜視図である。
図6は、
図4(A)と同様の分解斜視図を示している。図示されたガス生成装置800Rの部材のうちの、
図4(A)に示す実施例と同じ部材には、同じ符号が付されている。参考例のガス生成装置800Rでは、第1室210xは、第1室形成部110xと分離膜330とによって形成される空間である。第1室形成部110xは、第1壁部材110xaと、第1壁部材110xaの−Dz側に配置された第2壁部材110xbと、を含んでいる。
【0053】
第1壁部材110xaは、−Dz側に設けられた図示しない凹部を有している。第2壁部材110xbは、貫通孔112xbを有するループ状の部材である。第1電極310xは、第1壁部材110xaと第2壁部材110xbとの間に挟まれ、第1壁部材110xaの凹部と、第2壁部材110xbの貫通孔112xbとの間を仕切っている。
【0054】
第1電極310xは、略矩形のループ状の金属プレートであるフレーム部312xと、フレーム部312xの内側に設けられたメッシュ状のメッシュ部分311xと、を含んでいる。フレーム部312xと第1壁部材110xaとの間は、第1壁部材110xaの図示しない凹部を全周に亘って囲むループ状の第3シール部材393xによって、シールされている。フレーム部312xと第2壁部材110xbとの間は、貫通孔112xbを全周に亘って囲むループ状の第4シール部材394xによって、シールされている。
【0055】
第2壁部材110xbの−Dz側には、分離膜330が配置され、分離膜330は、貫通孔112xbを塞いでいる(分離膜330と第2壁部材110xbとの間は、第1シール部材391によってシールされている)。
【0056】
なお、分離膜330よりも−Dz側の構成の、実施例のガス生成装置800からの変更点は、第2電極320xに端子板326が追加されている点である。端子板326は、第2電極320xと外部との電気的な接続を行うための部材であり、+Dx方向に突出する端子部326tを有する、ループ状の金属部材である。端子板326は、金具325の+Dz側に配置され、金具325の+Dz側の面と全周に亘って接触する。端子板326を含む第2電極320xは、ループ状の第1壁部材120xの−Dz側に嵌め込まれ、第1壁部材120xと、第1壁部材120xの−Dz側に配置されたループ状の第2壁部材130xとによって、挟まれる。第1壁部材120xの+Dx側には、切欠124xが設けられており、端子板326の端子部326tは、切欠124xに嵌め込まれる。分離膜330よりも−Dz側の他の部分の構成は、上記実施例のガス生成装置800の構成とおおよそ同じであるので、詳細な説明を省略する。
【0057】
このように、参考例のガス生成装置800Rでは、第1室210xを形成するために、2つの壁部材110xa、110xbと、壁部材110xa、110xbと他の部材(ここでは、第1電極310x)との間をシールするシール部材393x、394xと、が用いられている。一方、
図4(A)に示す実施例のガス生成装置800では、そのような複数の部材の代わりに、1つの容器110を用いて、第1室210が形成されている。従って、実施例のガス生成装置800では、参考例のガス生成装置800Rよりも、ガス生成装置800の構成を簡素化できるので、ガス生成装置の製造を容易にできる。
【0058】
また、実施例のガス生成装置800では、参考例のガス生成装置800Rと比べて、第1室210の気密性のためのシール部材の数が少ないので、水素脆化の影響を受けやすい第1室210の気密性を向上できる。従って、第1室210で生成された水素ガスの漏洩を抑制できる。この結果、生成された水素ガスを効率よく収集することができるので、水素ガスの発生効率が、水素ガスの漏洩に起因して低下することを、抑制できる。
【0059】
また、第1室210、第2室220で起こりうるガスシール部材や電極部材の劣化などの不具合を確認するためのメンテナンス作業や、これに限らず定期的にメンテナンス作業が行われる場合がある。実施例のガス生成装置800では、参考例のガス生成装置800Rと比べて、第1室の気密性のためのシール部材の数が少ないので、ガス生成装置の分解と再組み立てとを、容易に行うことができる。
【0060】
また、
図2に示すように、実施例では、貫通孔113に第1電極310の端子314が挿入されることによって、貫通孔113が第1電極310を支持する。従って、第1室210内で第1電極310を支持するためにクリップ等の他の部材を用いる場合と比べて、第1電極310を支持するための部材の数を低減できるので、ガス生成装置800の構成を簡素化できる。この結果、ガス生成装置の製造を容易にできる。
【0061】
更に、実施例では、
図2に示すように、容器110は、凹部114を有し、凹部114は、第1電極310の端子314から離れた端部(ここでは、第1バスバー312)が挿入されることによって、第1電極310を支持する。このように、互いに離れた2つの部分(具体的には、端子314と第1バスバー312)が容器110によって支持される。従って、第1室210内での第1電極310の位置ズレを、貫通孔113と凹部114という簡単な構成によって、抑制できる。従って、ガス生成装置の製造を容易にできる。
【0062】
また、
図5で説明したように、第1電極310は、メッシュ部分311を備え、メッシュ部分311は、第1電極310の形状を変化させることが可能である。従って、第1電極310を容器110に収容する場合に、第1電極310の形状を変形させることができるので、ガス生成装置800の製造を容易にできる。
【0063】
また、
図3、
図4(B)で説明したように、貫通孔113の延びる方向(すなわち、挿入方向Dx)の長さに関しては、第1電極310の長さL1xは、開口111の長さL2xよりも長い。従って、第1電極310の長さL1xが、開口111の長さL2xよりも短い場合と比べて、第1電極310と電解液との接触面積を大きくできる。従って、ガス生成の効率低下を抑制できる。また、そのように大きな第1電極310を容器110に収容する場合に、第1電極310の形状を変化させることによって、第1電極310を容器110に容易に収容できるので、ガス生成装置800の製造を容易にできる。
【0064】
また、
図4(B)で説明したように、第1電極310は、多数の孔を有するメッシュ部分311を備えている。従って、メッシュ部分が無い場合と比べて、第1電極310と電解液との接触面積を増大できる。このように、メッシュ部分311を設けるという簡単な構成で、ガス生成の効率低下を抑制できるので、ガス生成装置800の製造を容易にできる。
【0065】
さらに、第1電極310は、メッシュ部分311に接続された通電のためのバスバー312、313を含んでいる。第2バスバー313は、端子314に接続されているので、端子314とメッシュ部分311との間の通電を行うバスバーとして機能する。第1バスバー312は、端子314には接続されていないが、メッシュ部分311の端部における通電を行うバスバーとして機能する。実施例では、バスバー312、313が無い場合と比べて、端子314とメッシュ部分311との間の電気抵抗を小さくすることができる。従って、メッシュ部分311に対する通電の効率を向上でき、そして、ガス生成効率を向上できる。このように、バスバー312、313を設けるという簡単な構成で、ガス生成の効率低下を抑制できるので、ガス生成装置800の製造を容易にできる。
【0066】
B.第1電極の別の実施例:
図7、
図8、
図9は、それぞれ、第1電極の別の実施例を示す斜視図である。図示された第1電極310a、310b、310cは、それぞれ、上記実施例の第1電極310の代わりに用いることができる。
図7の第1電極310aの構成は、
図4(B)に示す第1電極310から、第1バスバー312とメッシュ部分311とを省略し、この代わりに、多数の孔を有する短メッシュ部分311aを設けることによって得られる構成と同じである。この第1電極310aの挿入方向Dxの長さL1axは、開口111の挿入方向Dxの長さL2xよりも短い。従って、第1電極310aを、収容室112内に容易に装着することができる。装着の際には、短メッシュ部分311aを変形させることも可能である。なお、第1電極310aの第2方向Dyの長さは、開口111の第2方向Dyの長さよりも、若干小さい。
【0067】
図8の第1電極310bの構成は、
図4(B)に示す第1電極310のメッシュ部分311とバスバー312、313とを、略直方体の多孔質ブロック311bに置換したものである。多孔質ブロック311bは、多数の孔を有する多孔質金属のブロックであり、例えば、ステンレス鋼を用いて形成されている。多孔質ブロック311bは、硬い部材であり、破壊せずに変形させることが困難である。しかし、第1電極310bの挿入方向Dxの長さL1bxは、開口111の挿入方向Dxの長さL2xよりも短い。従って、この第1電極310bを、容易に、収容室112内に装着することができる。なお、多孔質ブロック311bの第2方向Dyの長さは、開口111の第2方向Dyの長さよりも、若干短い。
【0068】
図9の第1電極310cは、
図8の第1電極310bの多孔質ブロック311bの−Dx側に第2多孔質ブロック311cbを配置し、それらのブロック311b、311cbを、ヒンジ311ccを用いて連結したものである。第2多孔質ブロック311cbの材料と形状とは、多孔質ブロック311b(第1多孔質ブロック311bと呼ぶ)と同じである。
図9(A)に示すように、ヒンジ311ccを曲げずに伸ばした状態の第1電極310cの挿入方向Dxの長さL1cxは、開口111の挿入方向Dxの長さL2xよりも長い。ところが、
図9(B)に示すように、ヒンジ311ccを折り曲げるように回動させることによって、第2多孔質ブロック311cbが−Dz方向を向くので、第1電極310cの挿入方向Dxの長さL1cxbは、開口111の挿入方向Dxの長さL2xよりも短くなる。この結果、
図5(B)の第1電極310と同様に、端子314を貫通孔113に容易に挿入することができる。この挿入の後、ヒンジ311ccを拡げるように回動させることによって、第1電極310cの全体を、収容室112内に収容することができる。
【0069】
C.変形例:
(1)酸素を生成する電極に用いられる光触媒としては、酸化タングステン(WO
3)に限らず、光を用いて水の電気分解を促進する種々の材料を採用可能である。なお、光触媒の材料としては、必ずしもWO
3に限定されるものでなく、TiO
2(二酸化チタン)、SrTiO
3(チタン酸ストロンチウム)、BaTiO
3(チタン酸バリウム)、ZrO(酸化亜鉛)、SnO
2(二酸化錫(すず))、CdS(硫化カドミウム)等の任意の高機能酸化物半導体光触媒を選択することができる。
【0070】
(2)容器110の構成としては、実施例の構成に限らず、種々の構成を採用可能である。例えば、容器110の開口111の形状としては、略矩形状に限らず、円形状等の任意の形状を採用可能である。同様に、収容室112の形状としても、略直方体に限らず、円柱形状等の任意の形状を採用可能である。また、第1電極の端部を支持する凹部114の形状としては、第1電極の形状に適合する任意の形状を採用可能である。例えば、第1電極に丸棒部分を設け、この丸棒部分を凹部に挿入する場合には、円柱状の凹部を採用可能である。また、凹部114の位置(すなわち、収容室112内の位置)としては、貫通孔113から見て挿入方向Dxの反対方向側に限らず、第1電極の端部を受け入れ可能な任意の位置を採用可能である。例えば、挿入方向Dxと交差する方向側(例えば、+Dy側)に、凹部114が配置されてもよい。また、凹部114を省略してもよい。例えば、貫通孔113のみを用いて、第1電極310を支持してもよい。また、貫通孔113の延びる方向としては、開口111を含む平面と平行な方向(実施例では、第1方向Dx)に限らず、そのような平面と交差する方向を採用してもよい。
【0071】
いずれの場合も、容器110は、単一の部材として形成されていることが好ましい。こうすれば、水素脆化の影響を受けやすい第1室210からの水素ガスの漏洩を抑制できるので、第1電極310で生成された水素ガスを、効率良く利用することができる。また、容器110が、複数の部材を分解不可能に接続して形成されてもよい。例えば、複数の部材を接着剤で接着して容器110を形成してもよい。このように形成された容器110も、分解不可能であれば、単一の部材である、ということができる。なお、水素ガスの漏洩を抑制するという観点からは、容器110は、複数の部材を接続するのではなく、接続部分の無い連続な単一の部材として形成されていることが好ましい。
【0072】
(3)分離膜330としては、ガス(具体的には、水素ガスと酸素ガス)の通過を制限(好ましくは、防止)する種々の膜を採用可能である。ここで、水素ガスの生成を効率よく行うためには、プロトン(H
+)の伝導性を有する膜が採用される。例えば、プロトン(H
+)が通過し得る程度の多数の細孔が設けられたフィルタを採用可能である。また、プロトン(H
+)の伝導性が良好な膜としては、上述したフッ素系樹脂の膜のほか、例えば、炭化水素系樹脂の膜を採用可能である。
【0073】
(4)第1室210を、開口を有する有底の容器(例えば、
図4(B)の容器110)を用いて形成する場合には、第1電極の収容を容易に行うために、第1電極に、第1電極の形状を変化させることが可能な部分である可変部分を設けることが好ましい。第1電極は、光触媒を含まない電極であるので、第1電極の材料としては、電解液に対する耐腐食性(例えば、耐酸性と耐アルカリ性)が良好な、種々の導電性材料を採用可能である。従って、可変部分を有する第1電極を、容易に実現できる。可変部分の構成としては、例えば、弾性変形が可能な部分(「弾性部分」と呼ぶ)を採用可能である。弾性部分としては、折り曲げ可能な部分や、圧縮可能な部分を採用可能である。例えば、多数の孔を有する金属プレート(例えば、
図5のメッシュ部分311)や、孔の無い折り曲げ可能な金属プレートを採用してもよく、金属ワイヤを網状に成形した折り曲げ可能な部材を採用してもよく、金属ワイヤで形成された圧縮可能なコイルを採用してもよい。また、可変部分としては、弾性部分に限らず、機械的に第1電極の形状を変化させることが可能な構成を採用してもよい。例えば、ヒンジ(例えば、
図9のヒンジ311cc)や、第1電極を折り畳むリンク機構を採用してもよい。
【0074】
なお、第1電極の挿入方向Dxの長さが、開口111の挿入方向Dxの長さよりも長い場合には、可変部分を用いて第1電極の形状を変化させることによって、第1電極を破壊せずに端子314を貫通孔113に挿入できるように、可変部分が構成されていることが好ましい。例えば、可変部分を用いて第1電極の形状を変化させることによって、第1電極の挿入方向Dxの長さが、開口111の挿入方向Dxの長さよりも短くなるように、可変部分が構成されていることが好ましい。
【0075】
ただし、可変部分を省略してもよい。この場合には、第1電極を変形させずに容器110に収容できるように、第1電極の挿入方向Dxの長さが、開口111の挿入方向Dxの長さよりも短いことが好ましい(例えば、
図8の第1電極310b)。
【0076】
また、
図4に示す実施例では、第1電極310の端子314を受け入れる貫通孔113の断面形状が略円形状であるが、この代わりに、非円形状であってもよい。例えば、多角形状(三角形や四角形等)や楕円形状を採用可能である。また、端子314の断面形状としては、端子314が貫通孔113に挿入された状態で端子314が貫通孔113と係合することによって、第1電極310が端子314を中心に回転することを抑制するような形状を採用してもよい。そのような端子314の断面形状としては、非円形状を採用可能であり、例えば、貫通孔113の断面形状とおおよそ同じ形状を採用可能である。こうすれば、
図2に示すような第1室形成部110の凹部114が省略された場合であっても、第1室210内で第1電極310が端子314を中心に回転することを抑制できる。
【0077】
(5)ガス生成の効率低下を抑制するためには、第1電極と電解液との接触面積を大きくすることが好ましい。このためには、第1電極が、多数の孔が形成された部分である孔形成部分を含むことが好ましい。孔形成部分としては、例えば、多数の孔が形成された金属プレート(例えば、
図4(B)の第1電極310のメッシュ部分311)や、金属ワイヤを網状に加工して得られるワイヤメッシュや、金属棒をグリッド状に加工したグリッドメッシュや、多孔質金属(例えば、
図8の多孔質ブロック311b)等の、多数の孔が形成された種々の構成を採用可能である。なお、孔形成部分が、上述の可変部分に含まれる部分であってもよく、この代わりに、孔形成部分が、可変部分と異なる部分であってもよい。なお、孔形成部分を省略してもよい。
【0078】
(6)第1電極が、孔形成部分を含む場合には、第1電極は、孔形成部分に接続された通電のためのバスバーを含むことが好ましい(例えば、
図4(B)のバスバー312、313)。こうすれば、孔形成部分に対する通電の効率を向上できる。なお、バスバーの構成としては、バスバーを省略した場合と比べて孔形成部分と端子との間の電気抵抗が小さくなるような種々の構成を採用可能である。例えば、バスバーとしては、断面を比較した場合に孔形成部分よりも密に形成された部材を採用可能である。また、バスバーとしては、孔形成部分よりも太い部材を採用可能である。いずれの場合も、バスバーの形状と配置とは、上記実施例の形状と配置に限らず、種々の形状と配置とを採用可能である。例えば、
図4(B)の実施例において、端子314から−Dx方向に延びるバスバーを採用してもよい。また、
図8の実施例において多孔質ブロック311bの側面の一部にバスバーを設けてもよい。なお、バスバーを省略してもよい。
【0079】
(7)第2室220の構成としては、実施例の構成に限らず、任意の構成を採用可能である。また、第2電極320の構成としても、実施例の構成に限らず、任意の構成を採用可能である。ここで、第2室220を、第1室210と同様に、開口を有する有底の容器を用いて形成してもよい。例えば、光触媒によって用いられる光を透過可能な材料(例えば、ガラス、または、樹脂)を用いて形成された容器を採用可能である。この容器としては、単一の部材として形成された容器を採用可能である。また、第2電極320は、突出する端子を含み、第2室220を形成する容器には、その端子が挿入される貫通孔が設けられ、その貫通孔は、第2電極320を支持することとしてもよい。一般には、第1室(すなわち、第1室を形成する容器)と第1電極との上述した種々の構成の任意の一部または全部を、第2室(すなわち、第2室を形成する容器)と第2電極とに適用可能である。例えば、第2電極に、可変部分を設けてもよい。可変部分としては、例えば、
図9のヒンジ311ccと同様のヒンジを採用可能である。また、第2電極は、金属部材と、その金属部材の表面に直接に固定された光触媒と、を含んでも良い。
【0080】
以上、実施例、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。