【実施例1】
【0016】
本発明の第1の実施例を
図1に示した。
図1(a)には第1の実施例のデジタルカメラの正面図を、
図1(b)には第1の実施例のデジタルカメラの上面図を示している。
図1(a)を参照すると、本発明の特徴である回転リング103が、デジタルカメラ100の筐体104の、撮像のためのレンズ117を含むレンズ鏡筒102の外周に回転自在となるように、デジタルカメラ1の前面部に設けられている。また回転リング103の連続的あるいは離散的な出力値のモードを切り替えるための切替スイッチ105が回転リング103の近傍に設けられ、さらに、撮影をするためのシャッター101や電源のON/OFF、撮影モード、あるいは再生モードを切り替えるための電源スイッチ108、さらなるモード切り替えのための機能ボタン109が筐体104の外面に設けられている。他の撮影機構等については従来のデジタルカメラと同一のために説明を省略する。ここで離散的な値とは実際のエンコーダーからの出力値が離散的なものであることだけでなく、ユーザーが演算結果として認識する値が離散的なもの(たとえば、絞りF値、シャッタースピードなど)を含む。
【0017】
図2(a)には、デジタルカメラ100の前面側でレンズ鏡筒102の中心部を通る線(
図1(a)の破線矢印A)で切断した断面の一部を示した。回転リング103は筐体104との間に設けられた回転機構118、ここではボールベアリング、によってスムースに回転するように設定されている。また、回転リング103の回転角、回転方向や回転速度は回転リング103に設けられたロータリーエンコーダ(図示しない)によって検知される。ここで回転角と回転方向の検出等は周知の他の方法を用いてもよい。なお、レンズ鏡筒102の筐体104への固定方法は当業者に周知な方法により容易に設計されるものが利用できるため説明を省略する。また、切替スイッチ105の筐体内側には、切替スイッチ105に接続された固定部106、固定部106にバネ111を介して接続される規制部107、切替スイッチ105(および固定部106)の切り替え時の位置を固定するための手段(図示しない)が設けられている。
【0018】
図2(b)〜
図2(d)には回転リング103を筐体内部(
図2(a)の矢印B方向)から見た構造が示されている。回転リング103の外周103bには円形の突出部201が一様に設けられている。切替スイッチ105が非規制状態(この場合は、アナログ、あるいは連続的な出力値)の時は、回転リング103の回転状態に関して特に規制されることなくユーザーが外周103aを介して回転リング103を回転することができる。
【0019】
図3(a)および
図3(b)はそれぞれ、切替スイッチ105が規制状態(この場合は、デジタル、あるいは離散的な出力値)に設定された時の動作を示す概念図である。切替スイッチ105の移動に連動して、筐体104内部では固定部106が回転リング103に近接するように移動する。固定部106には規制部107がバネ111によって突出するように設けられている。そして、回転リング103が回転された時、
図3(a)のように突出部201間の谷の位置において、回転リング103が固定され、
図3(b)のように突出部201に関して、規制部107が谷以外の位置関係にあるときには、固定部106と規制部107の間に設けられたバネ111の押圧力によって最も近い谷の位置に規制部107が移動するように規制される。この谷の位置に規制部107が位置づけられた際にユーザーに対してクリック感をもたらすようにするとユーザーの利便性が向上する。規制部107の先端および突出部201の形状は例として円形を示したが、回転リング13が回転可能で、規制部107が谷の位置に配置され得るような構造であればどのような構造でもよい。また、切替スイッチ105により規制状態と非規制状態が切り替えられた時、元の状態における最後の出力値が元の状態の値としてメモリに記憶され、回転リング103のロータリーエンコーダーからの出力値は新たな機能に対応する機能の出力値として出力される。
【0020】
図2(c)は、回転リング103の変形例を示したものである。この例では回転リング103の外周103bに離散的に凹部202を設けている。この場合は、回転リング103が回転時に凹部202と規制部107が接しない部分では連続的に回転し、凹部202と規制部107が接するような部分では規制部107がバネによる押圧力に対して最も安定な位置で固定される。この変形例の応用として、出力値として、凹部202に位置した離散的な値と、凹部202間での連続的な値を出力するようにしてもよい。
【0021】
図2(c)では凹部202を外周103b上で離散的に設けたが、回転リング103の外周に一様に隣接するように凹部202を設けてもよい。また、
図2(b)では回転リング103の外周に一様に隣接するように突出部21を設けたが、回転リング103の外周103bに離散的に突出部201を設けてもよい。いずれの構成をとるかは、回転リング103に適用される機能に応じて、設計者が自由に設計してよい。また、適用される機能に応じて、隣接する凹部202あるいは突出部201の間隔が徐々に大きくなる、あるいは徐々に小さくなるようにして、操作者が適用された機能を直感的に操作ができるようにすることもできる。さらに、一部の突出部201が回転リング103の内部に収納可能とし、規制部107と接しない構成することによって、間隔をユーザーの操作やデジタルカメラに内蔵されたプログラムによって調整するようにしてもよい。
【0022】
上述した実施例においては、切替スイッチ105は機械的な動作により機能するスイッチとしたが、本発明はこれに限られず、デジタルカメラの操作設定画面から切替を設定するように構成してもよい。この場合の一例として、デジタルカメラ100の前面には切替スイッチ105は設けられず、筐体104内部に固定部106を移動させるアクチュエータ等を設けて設定画面で設定されたモードに応じて、アクチュエータを動作させて規制部107を回転リング103の規制位置、非規制位置に移動させる。また、設定画面での設定とは別に、外部に設けたボタン等によってこのアクチュエータ制御を動作させるように構成してもよい。
【0023】
さらに、適用される機能によっては回転方向に限度があったほうが良い場合がある(例えば、回転リング103の外周に絞り値を記入したような場合で最小のF値と最大のF値が隣接するような場合)。このような場合には、単に回転リング103の外周に突起203を設けて、この突起が固定部106に接触してしまいそれ以上の回転を抑止する方法や、例えば、回転リング103の回転方向を検出する手段を設けて、それ以上回転すると出力値に不具合が生じる場合に、不具合が発生する方向へのさらなる回転が検出されると、固定部106を回転リング103にさらに接近させ、規制部107が突出部201を乗り越えられないように構成することによって不具合を回避するように構成してもよい。また、回転規制手段は本実施例の構成に限られず、周知のほかの方法を用いてもよい。
【0024】
本実施例では、離散的な値としては、シャッタースピード、露出値、撮影モード、機能の項目、撮影済み画像の一覧表示での画像のコマ送り、撮影済み画像の表示時のページめくりなどが挙げられ、他のボタン等と組み合わせて機能の項目などを変化させてもよい。連続的な値としては、焦点位置、レンズのズーム倍率、撮影済みの表示画像をズームする際の倍率などが挙げられる。さらに離散的なとして、x2、x4、x10というようにレンズのズーム倍率がステップとなっている場合、表示のズーム倍率がステップとなっている場合なども用いてもよい。
【0025】
次に、
図4を用いて実際の動作例を説明する。まず、電源スイッチ108により電源が入れられる(S100)。次に、回転リング103の回転状態を検出する(S200)。続いて、回転が検出される、その回転角度、回転速度、回転量などの必要な値が測定される。続いて、切替スイッチ105の状態が検出され(S300)、その後、機能ボタン109の状態が検出される(S401、S402)。切替スイッチ105、機能ボタン109がいずれもセットされている場合、デジタルカメラ100は回転リング103の機能を「絞り」と判断する。そして、絞り値に関する現在値をメモリから読み出す(S501)。この操作が、初めての場合は、初期値がメモリに記憶されている。続いて、回転リング103の出力値に応じて絞り機構を制御する(S601)。続いて、変更された絞り値をメモリに記憶する(S701)。そして、デジタルカメラシステムは回転リングの回転を検出するS200に制御を移動する。デジタルカメラシステムは、切替スイッチと機能ボタンの状態に応じて、シャッタースピード制御(S502〜S702)、ズームモータ駆動制御(S503〜S703)、フォーカス機構制御(S504〜S704)を絞り機構制御と同様に制御する。離散値を記憶する場合は、回転リングに設けられたエンコーダーから算出する値ではなく、算出された値から演算された離散値(たとえば、絞りの場合はF値F1.4、F2、F3.5、F4、F5.6、F8など)を記憶する。また、連続な値から離散的な値へ切り替えられた場合には、規制手段を挿入された位置を記憶されていた離散値に対応するものとして演算する。連続的な値を記憶する場合は、回転リングに設けられたエンコーダーから算出されたその機能に対応する値を記憶する。また、離散値から連続値に切り替えられた場合は、規制手段が抜かれたその位置を記憶手段に記憶された値の位置とする。ここでは機能ボタンを1つ設けたが、機能の数に応じて削除することも、さらに複数の機能ボタンを設けることもできる。また、今回はそれぞれの機能として、絞り、シャッタースピード、ズーム、フォーカスが割り当てられたが、割り当てる機能は適宜設計可能であることは言うまでもない。また、ユーザーが現在のリングへ割り当てられた機能をわかりやすいようにファインダーまたは液晶表示器に、現在の割り当てられた機能の出力値とともに、現在の割り当てられた機能を表示するようにすると都合がよい。
【0026】
次に、
図5に
図4で説明したフローの変形例を説明する。近年、オートフォーカスを採用したデジタルカメラにおいて、シャッター101の半押しによってオートフォーカスが動作され、さらにオートフォーカスで焦点合わせが行われた後に、マニュアルでフォーカスの微調整をユーザーが行うDMF(ダイレクトマニュアルフォーカス)機能が採用されて来ている。図のフローにおいて、本来、ズーム機能が回転リングに割り当てられている場合であっても、制御フローにおいて、シャッター半押しを検出すると、回転リングに割り当てられた機能がフォーカス機能だったものとして制御が行われる。また、切替スイッチが電子的に制御される場合は、シャッター半押しを検出した場合、切替スイッチの状態に関わらず回転リングの機能を、例えば、上述のようにフォーカス機能に当てはめるようにしてもよい(フォーカス機能を割り当てた場合は、切替スイッチの状態にかかわらず規制を外すように設定すると都合がよい)。本実施例によればレンズ鏡筒の外周部に設けられた操作リングに複数の機能を割り付けることができるので、従来の一眼カメラと同等の操作感が実現でき、ユーザーが直感的に操作可能である。
【実施例2】
【0027】
本発明の第2の実施例の要部概略を
図6に示した。図において、デジタルカメラ前面の筐体604の一部と、回転リング603の主要構成のみが示され、レンズ等ほかの構成は省略されている。この実施例において、回転リング603は筐体604の前面部に設けられ、回転リング603は回転自在で、かつ、筐体604の全面パネルの前後に移動可能に構成されている。通常状態においては、回転リング603は図示しないバネ等によって筐体604の内側(矢印C)に押圧されている。本実施例においては固定部607は筐体604内部に固定され、そこに規制部607がバネによって回転リング603へ接近するように押圧をかけられて固定されている。
【0028】
通常状態においては、
図6(a)に示されるように、内部周縁603bは規制部607に接触しないのでその回転は規制されず、ユーザーは連続的に回転リング603を回転させることができる。規制状態に移行するために、
図6(b)に示すように、ユーザーはまず、回転リング603の外部周縁603aを筐体604から矢印D方向へ引き出す動作を行う。この時、検出スイッチ608のスイッチが押されて、ユーザーが引出動作を行い、規制状態のための引出動作が行われたことがカメラシステムに認識される。また、この引出動作によって、内部周縁603bと規制部607が嵌合するようになる。内部周縁603bと規制部607の規制機構は上述の実施例1と同様として実施することができる。また、ほかの周知の規制機構を用いてもよい。ここで、ユーザーが回転リング603を引き出しやすいように、外部周縁603aは筐体604に向かって径が縮まるようなテーパーを設けると都合がよい。また、規制部607と内部周縁603bが嵌合しやすいように、いずれか片方、または両方の接触部にテーパーを設けると都合がよい。
【実施例3】
【0029】
本発明の第3の実施例の概念図を
図7に示した。本発明による回転ダイヤル703がデジタルカメラ背面の液晶表示部701の近傍に設けられている。回転ダイヤル703の中央部には操作決定用のボタン709が設けられている。回転ダイヤル703の表面を筐体704の内部方向(矢印E)に押圧することによって規制状態、非規制状態を切替することができる。
【0030】
本実施例の回転ダイヤル703の動作を
図7(a)〜
図7(e)を用いて説明する。
図7(a)は回転ダイヤル703の配置されたカメラの一面を示す。
図7(b)は通常状態の回転ダイヤル703の構成を示したものである。回転ダイヤル703は筐体704に押し込み可能な様にバネ710を介して筐体704に固定されている。また回転ダイヤル703の下面近傍で、通常状態では回転ダイヤル703に接しないように規制部707と、規制部707を回転ダイヤル703方向にバネを介して押圧するように筐体704に固定する固定部706が配置されている。次にユーザーが回転ダイヤル703を筐体704に押し込むように(矢印E方向に)押圧することによって、回転ダイヤル703は規制状態となる。規制部707側の回転ダイヤル703の表面(
図7(d)参照)には側方から見ると
図7(e)のように凹部711が設けられており、回転ダイヤル703の押下によって、
図7(c)に示したように規制部707と凹部710が嵌合することとなり、回転ダイヤル703の回転時に、規制部707は隣接する凹部710をバネにより矢印Eに垂直方向に伸縮しながら移動することとなり、離散的な状態を推移することとなる。また、回転ダイヤル703が押下された状態では検出器708がオン状態となり、カメラシステムは回転ダイヤル703が規制状態であることを検出する。本実施例において規制部707は、回転ダイヤル703の下面の一か所で接するように構成しているが回転ダイヤル703の下面の複数の箇所で接するように構成してもよい。この場合、対称に規制部707を配置すると都合がよい。
【0031】
図8は、デジタルカメラに用いられる回転リングの別の例を示したものである。
図8(a)は回転リング803の外周の一部(太線部)804に感圧式のタッチセンサーを備えており、
図8(b)では、回転リング806の凹部807に静電式のタッチセンサーを備えている。回転リングに複数の機能を割り当てる場合、回転リングと機能ボタンとを組み合わせて動作させる必要がある。しかしながら、カメラを両手でホールディングすると、組み合わせの機能を発揮させるボタンを押下するためにはホールディングした手を放す必要が生じてカメラのブレが生じ、結果として撮影品質が劣化する。本実施例における機能ボタンはリングの一部として設けられているので、ホールディングした手を放す必要もなく、撮影品質の低下の虞がない。また、リングにボタンを設ける場合に比べても、ボタンの押下などのブレの要因がないので優れている。たとえば、この機能を応用したものとしては、回転リングの回転に、第1の速度のズームと、タッチセンサーのON時の第2の速度のズーム、あるいは、連続ズームと、タッチセンサーON時のステップズーム、ズームと、タッチセンサーON時のフォーカス制御、(連続的な)フォーカスと、ステップフォーカス(フォーカス位置を50cm、1m、3m、10m、∞などの離散的なものとしたもの)といった機能を割り当てた構成とすることができる。ここで、本発明の切替スイッチとして、この別例のタッチセンサーを用いることによって、たとえば、
図8(a)の場合、回転センサー803の外周805を回転させたときは、離散的な値、たとえば、絞り値の変化を、感圧式のタッチセンサーを備える外周804に一定値以上の力を加えながら回転した場合は、連続的な値、たとえば、フォーカス制御を、割り当てることができる。また、
図8(b)の場合、回転センサー806の外周808を回転させたときは、離散的な値、たとえば、絞り値の変化を、静電式のタッチセンサーを備える外周807に触れながら回転した場合は、連続的な値、たとえば、フォーカス制御を、割り当てることができる。この外周807の幅はたとえば強く握った際に指の肌がタッチセンサーに触れる程度の幅(3mm〜10mm程度)、深さ(1mm〜5mm程度)とすると誤動作を防ぐことができる。
【実施例4】
【0032】
図9は本発明の第4の実施例を示すものである。本実施例は本発明の回転ダイヤルを波形モニタ900に適用した例である。本実施例では通常状態では回転ダイヤル903の内部周縁903bと規制部907が嵌合し、離散的な状態となって、測定機能A、Bと結果表示機能Cのいずれかの機能が選択されている。一方で、回転ダイヤル903を押下した場合は、この嵌合状態が外れ、連続的な回転が可能となる。例えば、
図9(a)に示された波形モニタ900の機能が表示機能Cにセットされた状態で、過去に測定された計測データ曲線905が液晶表示器901に表示されている。この曲線の任意の点でのx座標値910が表示器の右下に、y座標値911が表示器の左上に表示されている。この表示波形において、任意の点は、黒丸902で示されている。そして、回転ダイヤル903を押下した状態で回転させることで、表示点902を曲線上で移動させることができる。
【0033】
本発明の回転リングはカメラ本体に設けられるものを主な例として示してきた。
【0034】
上述のように本発明の実施例を説明してきたが、本発明の趣旨の範囲での修正は本発明に含まれる。また、上述してきた実施例は一実施例に過ぎず、それぞれの実施例の構成を相互に組み替えるなどの修正も本願に含まれる。