(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6078889
(24)【登録日】2017年1月27日
(45)【発行日】2017年2月15日
(54)【発明の名称】サンプル内の粒子、特に単一分子を追跡する方法および装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/64 20060101AFI20170206BHJP
【FI】
G01N21/64 F
【請求項の数】20
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-540501(P2014-540501)
(86)(22)【出願日】2012年11月12日
(65)【公表番号】特表2014-535059(P2014-535059A)
(43)【公表日】2014年12月25日
(86)【国際出願番号】EP2012072375
(87)【国際公開番号】WO2013072273
(87)【国際公開日】20130523
【審査請求日】2015年11月6日
(31)【優先権主張番号】102011055367.3
(32)【優先日】2011年11月15日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510273525
【氏名又は名称】マックス−プランク−ゲゼルシャフト ツル フォルデルング デル ヴィッゼンシャフテン イー.ヴイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ヘル,ステファン ダブリュー.
【審査官】
吉田 将志
(56)【参考文献】
【文献】
特表2009−503442(JP,A)
【文献】
特表2011−514532(JP,A)
【文献】
特開2010−197986(JP,A)
【文献】
特表2008−525781(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/099269(WO,A1)
【文献】
米国特許第05793478(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0293154(US,A1)
【文献】
国際公開第2006/061947(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00、01
17−74
G02B 19/00−21/00
21/06−21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光(4)を照射される時に光子を放出する、サンプル(3)内の粒子(2)の移動を追跡する方法であって、
空間的に制限された極小点(19)を含む光強度分布(18)をもたらすように光を形成することと、
前記粒子(2)が前記光強度分布(18)の前記空間的に制限された極小点(19)に位置付けられるように前記サンプル(3)に前記光強度分布(18)を施すことと、
前記粒子(2)によって放出された前記光子を検出することと、
前記光強度分布(18)を、前記粒子(2)によって放出された前記光子の割合が最小のままとなるように、前記サンプル(3)に対して移動させることと、を含み、
前記粒子(2)は、前記光強度分布(18)の前記極小点(19)によって追跡される、方法。
【請求項2】
前記光強度分布(18)の前記極小点(19)は少なくとも1つの空間次元に空間的に制限され、前記光強度分布(18)を、前記極小点(19)が空間的に制限される次元全ての方向において前記サンプル(3)に対して移動させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記光(4)は、前記光(4)のコヒーレント光線の干渉パターンによって前記光強度分布(18)をもたらすように形成され、前記極小点(19)は前記干渉パターンのゼロ点である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記コヒーレント光線の位相関係は、様々な方向から前記極小点(19)を空間的に制限するように変調される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記光子は点検出器(12)によって検出される、請求項1〜4のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記サンプル(3)はカメラ(15)によって映し出される、請求項1〜5のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記粒子(2)の開始位置は、前記サンプル(3)に前記光(4)が均一に照射される時に前記カメラ(15)によって判断される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記サンプル(3)に対する前記光強度分布(18)の位置は前記カメラ(15)によって追跡される、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記粒子(2)の移動方向は、前記粒子(2)によって放出された前記光子が前記カメラ(15)によって検出される位置によって判断される、請求項6〜8のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
パルスの際に前記光(4)を前記サンプル(3)にあて、前記粒子(2)によって放出された前記光子を、それぞれの前記パルスの後に、制限された時間間隔で検出する、請求項1〜9のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記粒子(2)が光子を放出することができない第1の状態から、前記粒子(2)が光子を放出することができる第2の状態へと、前記粒子(2)は前記光(4)によって活性化される、請求項1〜10のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
2つの異なる粒子(2)の移動は、2つの異なる波長の光(4)によって、同時か交互に追跡される、請求項1〜11のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
サンプル(3)内の粒子(2)の移動を追跡する装置(1)であって、
前記粒子(2)に光子を放出させる光を供給するように構成された光源(5)であって、空間的に制限された極小点(19)を含む光強度分布(18)を有する前記サンプル(3)に光(4)をあてるように構成された光線成形手段(7)を含む光源(5)と、
前記粒子(2)によって放出された前記光子を検出するように、かつ、検出された前記光子の割合を示す信号を供給するように構成された検出器(12、15)と、
前記サンプル(3)に対して前記光強度分布(18)を移動するように、かつ、前記検出器(12、15)によって検出された前記光子の割合が移動する前記粒子(2)を前記極小点(19)で追跡するために最小のままとされるように、前記検出器(12、15)の前記信号に基づいて制御されるように構成された光線偏向手段(9〜11)と、を含む、装置(1)。
【請求項14】
前記光源(5)は、前記極小点(19)の位置におけるゼロ点を含む干渉パターンを形成するために複数のコヒーレント光線を重畳する、請求項13に記載の装置(1)。
【請求項15】
前記光源(5)は、前記複数のコヒーレント光線の位相関係を変調するために、制御可能な空間光変調器を含む、請求項14に記載の装置(1)。
【請求項16】
前記検出器(12、15)は点検出器(12)である、請求項13〜15のうちいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項17】
前記検出器(12、15)はカメラ(15)である、請求項13〜15のうちいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項18】
前記サンプル(3)を映し出すように構成されたカメラ(15)をさらに含む、請求項13〜16のうちいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項19】
前記光源(5)は、前記光(4)をパルスの際に前記サンプル(3)にあてるパルス光源であり、前記検出器(12、15)は、前記パルスそれぞれの後に、制限された時間間隔で前記粒子(2)によって放出された前記光子を検出するように構成された前記パルス光源と同期させたゲートを含む、請求項13〜18のうちいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項20】
2つの異なる粒子(2)の移動を同時か交互に追跡するために、2つの光源(5)によって異なる波長の光が供給される、請求項13〜19のうちいずれか一項に記載の装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を照射される時に光子を放出するように駆動される、サンプル内の粒子の移動を追跡する方法であって、粒子によって放出された光子を検出することを含む方法に関する。さらに、本発明は、このような方法を行う装置であって、光を供給するように構成された光源と、光子を検出するように構成された検出器とを含む装置に関する。
【0002】
サンプル内の移動を追跡される粒子は、単一分子であってよく、錯体、量子ドット、反射する金粒子など、共に移動する分子のグループであってよい。
【0003】
光を照射される粒子による光子の放出する基となるプロセスは、蛍光発光であってよい。しかしながら、光の散乱など、多くの他のプロセスは、光子の放出の際のベースとして使用されてもよい。
【0004】
光子の放出をもたらすそれぞれのプロセスは、粒子自体が追跡される特性、または、追跡される粒子に印をつけるマーカー、特に染料に関する場合がある。
【背景技術】
【0005】
サンプル内の単一分子の移動を追跡する既知の方法によると、分子は光子を放出するために光で励起され、分子によって放出された光子は、サンプルを映し出す2次元検出器によって検出される。そして、分子の現在位置を、検出器によって検出された光子の空間分布から判断する。検出器の適切な画素密度によって、分子の現在の位置を、回折限界より高い空間解像度で光子の空間分布から判断することができる。しかしながら、回折限界を超える空間解像度で粒子を追跡するために、分子の位置毎に、すなわち、分子がその位置を変更する前に、より多くの光子を検出することができるよう、さらに求められる。これは、分子がより多くの光子を放出する周期全体に対して、この位置が不変のままである場合、より多くの光子は分子の位置を判断する際に実現される空間解像度のみを高めることに起因する。
【0006】
空間解像度は、検出器上へ映し出される分子からの光子の回折パターンの強度の中心から判断される分子の位置を取り囲む円の半径Δrによって示される。分子の真位置は、その円内に位置付けられる。半径Δrは、
Δr=FWHM/N
1/2 (1)
によって示され、検出された光子の数N、および、回折パターンの半値全幅FWHMに左右される。
【0007】
単一分子の移動を追跡する既知の方法は、サンプル内の分子の各位置に対して、膨大な数Nの光子を要するため、分子には著しく応力が加えられ、その結果、分子をブリーチングする危険性が高まる。ブリーチングのプロセスにおいて、励起された状態にある分子は、ブリーチング後分子がこれ以上光子を供給しないように、化学的に変化する。光化学ブリーチングと関係なく、光子を放出するように集中して、および/または、おびただしく励起された分子を、準安定の暗状態に移すことも可能である。しばらくしたら、準安定の暗状態から分子は戻ることができる。しかしながら、その間、分子を連続して追跡するために必要ないずれの光子も、分子は放出することができない。
【0008】
その結果として、いくつかの分子、すなわち、既知の方法における使用に適した、いくつかのいわゆる蛍光塗料または蛍光物質のみが存在する。多くの蛍光物質は非常に早くブリーチングするため、それら蛍光物質の移動または当該蛍光物質によって印をつけられた分子の移動を、サンプル内に広がる期間を延長して、または、距離を長くして、追跡することはできない。
【0009】
先に記載した方法については、分子によって放出された光子が2次元検出器によって検出された位置の分布から、分子の位置が判断される。この手法は局所化と呼ばれる。局所化とは別の手法としては、いわゆる、STEDまたはRESOLFT蛍光顕微鏡法によって示される。ここでは、サンプル内の分子が光子を放出するように効果的に励起される空間領域は、回折限界より小さいサイズに低減される。よって、サンプルから放出される光子は、光子が検出される位置とは無関係に、かつ検出される光子の数と無関係に、低減したサイズのこの特定の空間領域によってもたらされ得る。実際には、光子を放出するために分子を効果的に励起する空間領域の低減は、光を阻害する蛍光発光のコヒーレント光線の干渉パターンによって重畳される、集束した励起光線をあてることによって実現される。この干渉パターンは、励起光線の焦点におけるゼロ点を含む。光を阻害する蛍光発光の光線の高い絶対強度のために、光を阻害する蛍光発光の強度は、サンプル内の分子による光子の放出が基本的にゼロ点以外のどこでも阻害されるように、ゼロ点以外のどこにおいても飽和強度I
sを超える。実現された空間解像度は、
Δr=λ/(n sin α(1+I/I
s)
1/2) (2)
によって示される。式中、Iはサンプル内の干渉パターンの最大強度である。
【0010】
STED蛍光顕微鏡法において、蛍光発光の阻害は誘導放出によって実現される。RESOLFT蛍光顕微鏡法の場合、蛍光発光の阻害は、分子が蛍光発光することができない配座状態へ分子を一時的に移すことによって実現される。STED蛍光顕微鏡法において、光を阻害する蛍光発光の高い絶対強度が必要とされるため、使用される蛍光物質をブリーチングする危険性は比較的高い。RESOLFT蛍光顕微鏡法については、光を阻害する蛍光発光の比較的低い強度でも十分である。しかしながら、この手法には、蛍光物質が蛍光発光できない配座状態に切り替えられ得る特別な蛍光物質のみを適用することができる。
【0011】
一般に、STEDまたはRESOLFT蛍光顕微鏡法のような手法は、サンプル内の粒子の移動を追跡するのに適すると思われ、この場合、蛍光を放出するために効果的に励起される、空間的に低減されたサイズの領域で、粒子が追跡される。粒子が、蛍光を放出するように効果的に励起され、それによって粒子の位置を判断することができる、空間的に低減されたサイズの領域内に粒子が依然位置付けられるかどうかを判断することは、追跡された粒子によって放出される光子の割合が連続して最大である場合にのみ可能であると思われる。粒子の連続した局所化よりもこの手法によって追跡するのに要する光子はより少なくて済むと思われるが、粒子の数およびより長い距離にわたる移動を追跡するのに適したマーカーは、大きくは増加しないはずである。その上、STEDおよびRESOLFT蛍光顕微鏡法において、励起光および蛍光を阻害する光を供給するために様々な光線をあてる必要がある。様々な光線は様々な波長を有するため、かつ、様々な光線は慎重に空間的に整列されなければならないため、これにはさらなる尽力が必要とされる。
【0012】
特許文献1から、サンプル内の粒子の移動を追跡するために適用される、いわゆる減衰全反射に基づく光学系が既知である。特許文献1によると、サンプルには、光子を放出するように粒子を駆動する光が照射される。サンプルを照らす光の強度分布は、均質でないが空間的に変調されるため、粒子の移動によって、放出される粒子の数はそれぞれ変動することになる。よって、強度分布の変調を考慮すると、粒子の移動は、放出された光子の検出された変動、すなわち、検出器信号の変調から判断が下される。しかしながら、一定の光強度の経路に沿って移動する粒子の移動を追跡することはできない。特に、光を照射されていない、またはほとんど照射されていない粒子を追跡することはできない。代わりに、特許文献1から既知である光学系によってサンプル内の粒子の移動を追跡するために、粒子に頻繁に光を照射することが不可欠である。従って、粒子または粒子に印をつけるマーカーをブリーチングする危険性は、効果的に減少されず、受け入れなければならない。
【0013】
サンプル内の粒子の移動を追跡するために、サンプル内に粒子が広がる期間を長くして、または、より長い距離にわたって粒子の移動を追跡する場合でも、粒子、または粒子に印をつけるマーカーをブリーチングする危険性が小さいままとする方法および装置が、依然必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】独国特許出願公開第2546952号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、光を照射される時に光子を放出するように駆動される、サンプル内の粒子の移動を追跡する方法に関する。本方法は、空間的に制限された極小点を含む光強度分布をもたらすように光を形成することを含む。光強度分布は、粒子が光強度分布の空間的に制限された極小点に位置付けられるようにサンプルに施される。粒子によって放出された光子は検出され、光強度分布を、粒子によって放出された光子の割合が最小のままとなるように、サンプルに対して移動させる。このように、粒子は、光強度分布の強度分布の極小点によって追跡される。
【0016】
さらに、本発明は、サンプル内の粒子の移動を追跡する装置に関する。本装置は、光子を放出するように粒子を駆動させる光を供給するように構成された光源であって、空間的に制限された極小点を含む強度分布を有するサンプルに光をあてるように構成された光線成形手段を含む光源と、粒子によって放出された光子を検出するように、かつ、検出された光子の割合を示す信号を供給するように構成された検出器と、サンプルに対して強度分布を移動するように、かつ、検出器によって検出される光子の割合が、移動する粒子を極小点によって追跡するために最小のままとされるように、検出器の信号に基づいて制御されるように構成された光線偏向手段と、を含む。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の有益となるさらなる展開は、請求項、明細書および図面によってもたらされる。本明細書に記載された特徴および複数の特徴の組み合わせによる利点は、例としての役割のみ果たし、これらの利点を実現すべきである、本発明による実施形態を必要とせずに、代替的にまたは累積的に使用されてよい。添付の請求項によって定められるような保護の範囲を変えずに、原出願および特許の開示について下記事項を適用し、さらなる特徴は、図面から、特に、複数の構成要素の互いについて例示された設計および寸法、ならびに、それらの相対配置および作用する関連性から、読み取ることができる。本発明の異なる実施形態の特徴の組み合わせ、または選択された請求項の参照箇所とは関係のない異なる請求項の特徴の組み合わせも可能であり、本明細書によって当該組み合わせが提案される。本発明は、別個の図面に例示されるか、これらの図面について説明する際に記載される特徴にも関する。これらの特徴を、異なる請求項の特徴と組み合わせることもできる。また、本発明のさらなる実施形態が請求項に記載される特徴全てを有さない場合もあり、独立請求項に記載される特徴全てを有さないこともあり得る。
【0018】
下記において、図面に示される好ましい例示の実施形態を参照して、本発明についてさらに説明し記載する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明による方法の一実施形態を実施するための、本発明による装置の例示の実施形態を示す図である。
【
図2】本発明による方法の別の実施形態を実施するための、本発明による装置の別の例示の実施形態を示す図である。
【
図3】光子を放出するように粒子を駆動するための強度分布の極小点の領域内の粒子を示す図である。
【
図4】線形状に沿った位置に左右される、
図3に記載の強度分布の強度と、さらに、
図3に記載の粒子によって放出された結果として生じた光子の割合とを示す図である。
【
図5】
図3に記載の、粒子のその位置からの移動後の状況を示す図である。
【
図6】強度分布が粒子の移動に追従した後の状況を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に従った方法によると、サンプルに施された光強度分布は空間的に制限された極小点を含む。STEDまたはRESOLFT蛍光顕微鏡法において使用される、光を阻害する蛍光発光の場合と同様に、この強度分布は、コヒーレント光線の干渉パターンによって形成されるのが好ましく、この場合、空間的に制限された極小点は干渉パターンのゼロ点である。よって、極小点に小さな空間次元を与えることができる。特に、極小点の空間次元は回折限界より小さいものであってよい。STEDまたはRESOLFT蛍光顕微鏡法とは対照的に、この特定の強度分布を表示する光は、蛍光発光を阻害するためではなく、本発明による方法における光子を放出する、サンプル内で追跡される粒子を駆動するために使用される。さらに、サンプルは、強度分布の極小点で走査されるのではなく、強度分布は、粒子によって放出された後検出される光子の割合が最小限に抑えられるように、サンプルに対してのみ連続して移動する。光子の最小の割合は、粒子が光強度分布の極小点の位置に依然位置付けられることに対応する。極小点外の光の強度が急激に増大することで、この急激な増加を利用して、サンプル内の粒子の現在位置について強度分布を迅速に追跡することによって、粒子の移動を、回折限界をかなり下回る空間解像度で追跡することができる。本発明による方法において、粒子が多くの光子を放出することは必要とされない。従って、粒子をブリーチングする危険性は大幅に低減される。そのため、ブリーチングしがちな粒子でさえも、サンプル内で粒子が広がる期間を長くして、またはより長い距離にわたって、追跡可能である。さらに、STEDまたはRESOLFT蛍光顕微鏡法に基づく方法とは対照的に、サンプルには、本発明による方法における極小点を含む強度分布のみが施される。よって、光を、空間的にも、別の光線へのその波長についても整列させる必要はない。このため、本発明による方法を適用する光学装置では、STEDまたはRESOLFT蛍光顕微鏡法よりも錯体がかなり少なくなる。STEDまたはRESOLFT蛍光顕微鏡法と比較すると、別の違いがまた存在する。本発明に従った方法によると、光強度分布がその極小点外の低い強度でも光子の放出を引き起こす場合、極小点を有する光強度分布の小さい絶対強度でも十分である。特に、回折限界を下回る空間解像度を実現するためにゼロ点外で放出するための励起の飽和状態を実現する必要はない。その代りに、多くの場合、ゼロ点からの距離が長くなるにつれて、認識できる程に励起を高めることが好ましい。前述の全てに加えて、追跡された粒子によって放出された光子の数が最小限に抑えられるため、その粒子のブリーチングの危険性も最小限に抑えられることは、本発明に見られる特徴である。
【0021】
検出器によって検出された光子の割合を連続的に最小限に抑えるために、相対的に、すなわち、サンプルについて、強度分布を移動させることまたは偏向することは、試行錯誤手法に基づいてよい。すなわち、強度分布を徐々に試験的に移動させる。その移動によって、放出された光子の割合に類似した、検出された光子の割合が減少する場合、強度分布をさらに同じ方向に移動させる。逆の場合では、その移動によって検出された光子の割合が増加する場合、強度分布を別の方向、例えば、反対方向へ移動させる。「追跡−アルゴリズム」および「ファジー−論理」というキーワードによって示されるような種々の適したアルゴリズムおよび実施形態は、当業者にとって利用可能なものである。
【0022】
STEDまたはRESOLFT蛍光顕微鏡法から、極小点を含む、光を阻害する蛍光発光の光強度分布を形成するための種々の技法が既知である。これらの技法のいずれもまた、本発明による方法において使用可能である。いくつかの例のみを挙げるために、位相フィルタ、空間光変調器、4π配置(4 pi arrangements)などを、極小点を含む光強度分布を形成するために利用することができる。
【0023】
サンプルに対して極小点を有する光強度分布を移動するか偏向するために、STEDおよびRESOLFT蛍光顕微鏡法から既知であるようなスキャナを適用することができる。例えば、このようなスキャナは、音響光学反射器または電子光学反射器、回転鏡、および、光線に対してサンプルを調節する圧電アクチュエータ、または対物レンズを作動させ、かつ、サンプルに対して光線を調節する圧電アクチュエータを含む。
【0024】
光強度分布を代替的にまたは追加で偏向するために、サンプルに対して極小点を有する光強度分布を移動させることを、極小点を有する光強度分布に対してサンプルをずらすことによって達成することもできることに留意されたい。サンプルに対して極小点を有する光強度分布を移動させることには、相対的な極小点による光強度分布とサンプルとの間の相対的な移動のみが必要とされる。特に、xおよびy方向に、サンプルに対して極小点を有する光強度分布を移動させることを、光強度分布を偏向することによって実現してもよく、z方向に、サンプルに対して極小点を有する光強度分布を移動させることを、サンプルをずらすことによって実現してもよい。z方向は、サンプルに光強度分布が施されることによって、サンプルの表面の主な拡張部分の面に直交する方向であってよく、xおよびy方向は、この主な拡張部分の面に沿ってまたは平行に拡張してよい。
【0025】
本発明の方法によると、光強度分布の極小点は、1次元、2次元または3次元において空間的に制限され得るものである。すなわち、当該極小点は、1つの面に沿って、1つの線に沿ってまたは1つの点の周りで拡張することができる。そして、粒子の移動を追跡するために、強度分布を、極小点が制限される次元のあらゆる方向においてサンプルに対して移動させるか偏向させる。極小点が制限されてない方向における移動は、粒子によって放出される光子の割合を低減させないため、効果的に使用できない場合がある。このことは、この方向における粒子の移動を追跡できないということも意味する。従って、この方向における粒子の移動の見込みがないように、この方向を向けることが好ましい。多くの場合、サンプル内の粒子の移動は、いずれにしても、特定の構造に沿った方向に限られる。2次元サンプルの場合、3次元の方向における粒子の移動は、原理上除外される。
【0026】
様々な方向において極小点を1次元的にまたは2次元的に制限するために、干渉によって、強度分布を与える光線の位相関係を変調することができる。例えば、位相関係は、第1の位相関係の場合、極小点がx−y面における環によって制限されるように、かつ、第2の位相関係の場合、極小点がz方向に制限されるように、第1の位相関係と第2の位相関係との間で変化する場合がある。あるいは、様々な逐次的位相関係によって、様々な方向に向けられた線状または面状の極小点がもたらされる場合がある。これらの極小点は、回転ストライプ(rotating stripe)として説明される場合があり、それらの空間交差としての1つの点または1つの線を含むことができる。こういった位相関係間で迅速に切り替える場合、および、粒子によって放出される最小の割合の光子が各位相関係に対して個々に、または、位相関係の変化全体に対して位置付けられる場合、サンプル内の粒子の移動を3つの次元全てにおいて追跡することができる。
【0027】
本発明の方法によると、粒子によって放出された光子を、2次元検出器配列によって検出する必要はない。むしろ、最初の追跡はこれらの光子の割合に左右されるため、光子を検出するには点検出器の使用で十分である。サンプル内の粒子の現在位置を、サンプルに対する、極小点を有する強度分布の現在位置から判断することができる。この位置を、例えば、強度分布を移動させるために使用されるスキャナの現在位置によって、強度分布をサンプルに対して移動させる装置の位置から判断を下すことができる。サンプルに対する強度分布の位置を、例えば、サンプルを映し出すカメラで粒子が放出する光子を検出することによって、かつ、カメラ上のこれらの光子からなる光強度分布の画像を評価することによって、直接的に判断することもできる。局所化の原理によると、この判断によって、回折限界を超える解像度を実現することもできる。
【0028】
さらに、サンプルを映し出すカメラを、光を空間的に構造化せずに、光子を放出するように粒子を駆動する光をサンプルに照らすことによって、粒子の最初の位置を判断するために使用することができる。光子を放出し、かつ、互いを別々に追跡することができない、2つ以上の粒子を判断する場合、極小点に隣接する光強度分布の極大点に存在するような高い強度の光を意図的に加えることによって、残りの粒子を光化学的にブリーチングすることができる。摂動を起こさせる粒子のブリーチングを、例えば、カメラによって、移動したのが追跡した粒子ではなく、追跡した粒子の経路を通過した類似の種類の別の粒子であることが認識される時に施すこともできる。これは、例えば、光の強度分布の極小点からさらに離れた、膨大な数の放出された光子から判断を下すことができる。
【0029】
サンプルを映し出すカメラを、粒子によって放出された光子がカメラによって検出された位置から粒子の移動方向を判断するために使用することもできる。この判断のために、粒子の局所化を行うことも可能であり、この場合、その局所化は、光の強度分布の極小点を離れる時に粒子によって放出された光子に基づいている。ここで、局所化を高い精度によって行うことは必要とされない。よって、光の強度分布の極小点が粒子に追従するために移動せざるを得ない方向を判断するためにのみ、放出された光子が使用されるため、粒子は多くの光子を放出する必要はない。しかしながら、放出された光子は、粒子を追跡する際に所望の空間解像度を実現するのに必要ではない。そうではなく、空間解像度は粒子によって放出された光子の割合をその後最小限に抑えることによって、例えば、光強度分布の極小点を形成するおよび/または配置することによって、実現される。
【0030】
本発明による方法は、粒子によって放出される光子の割合の最小化を目的とするため、光子に加えて検出されるバックグラウンドが重要性を高める。バックグラウンドは、例えば、光子を放出するように粒子を駆動するために、または、粒子の自己蛍光によって、サンプルにあてられる光によって示され得る。バックグラウンドの影響を最小限に抑えるために、光子を放出するように粒子を駆動する光を、パルスの際にサンプルにあてることができ、粒子によって放出された光子を、それぞれの光のパルスの後に、制限された時間間隔で検出することができる。この時間間隔またはゲートを、最大信号対雑音比が実現されるように調節することができる。
【0031】
本発明による方法を、切り替え可能な粒子、例えば、切り替え可能な分子を追跡するために適用することもできる。この場合、光子の放出を駆動する光によって、光子を放出するように粒子を駆動することができない状態から、光子を放出するように粒子を駆動することができる蛍光発光状態へと、切り替え可能な分子の活性化がもたらされ得る。このような切り替え可能な分子ついての1つの例は、緑色蛍光タンパク質(GFP)の突然変異体である、PADRONと呼ばれる。このPADRONは、必要ではないが、本実施形態において、光子の放出を駆動する光の強度分布の極小点において実現される放出された光子の割合を最小限に抑える効果を支持するため、粒子が急速に非蛍光性の暗状態に戻る場合に、好ましいとされ得る。粒子が暗状態へ戻ることは、自発的に生じたり、何らかの物理的または化学的信号によって誘発されたりする場合がある。この誘発する信号は空間的に構造化される必要はないため、好ましくは空間的に構造化されない。光子の放出を駆動する光の波長とは別の波長の光を、例えば、単一粒子のいずれの追跡にも必要とされるため、サンプル内で光子を放出するように駆動可能な活性化された粒子の密度を小さくするように調節するために使用することもできる。このために、DRONPAと呼ばれる分子を使用することができる。DRONPAは、GFPの別の変異体であり、その励起波長において、PADRONのものと比較すると対照的である活性化の特性を示す。
【0032】
本発明の方法によって、2つ以上の異なる粒子の移動を追跡することもできる。このために、2つ以上の異なる波長の光を使用することができ、各粒子を特徴付ける波長の光子を検出することができる。一般的な対物レンズとは別に、こういった2つ以上の異なる粒子の追跡を、別のデバイスで行うことができる。しかしながら、これらのデバイスは、各光源以外の共通部分を共有することもできる。そして、共通部分全てを、両方の粒子に対して交互に使用することができるが、すなわち、ある粒子の追跡と他の粒子の追跡との間で切り替えられるということである。
【0033】
本発明による装置は、光子を放出するように粒子を駆動させるために使用される光を供給する光源と、粒子によって放出された光子を検出する検出器とを含む。当該装置は、空間的に制限された極小点を含む強度分布を有するサンプルに光をあてるために、光源において光線成形手段をさらに含む。また、検出器の信号に従って制御される光線偏向手段が設けられる。この従属関係は、サンプルに対する光強度分布を移動させるか偏向させることによって、検出器によって検出される光子の割合を最小に維持するように構成される。よって、移動する粒子は、光強度分布の極小点によって追跡される。
【0034】
本発明による装置の光源は、極小点の位置におけるゼロ点を表示する干渉パターンで干渉するコヒーレント光線を重畳することができる。光線の位相関係を変調するために、光源は、動的に制御可能な空間光変調器を含むことができる。
【0035】
サンプルを映し出すためのカメラを設けることができる。カメラを、例えば、追跡される粒子がサンプル内のどこに位置付けられるかを判断するために使用することができる。この判断のために、サンプルに、空間的構造がない光を照射することができる。カメラを、粒子がサンプル内で追跡される時に、光強度分布の位置を判断するために使用することもできる。さらに、粒子を追跡するために強度分布が移動せざるを得ない方向を判断するために、カメラを使用することができる。
【0036】
2つの異なる粒子を追跡するために、異なる波長の光を与える2つの光源を設けることができる。同時に追跡するために、別個の光線成形手段および光線偏向手段を、それぞれの光源に対して設けることができる。しかしながら、双方の光源に対して、交互に使用される共通手段を設けることもできる。3つ以上の粒子を同時にまたは迅速に交互に追跡するために、3つ以上の光源を設けることも可能である。
【0037】
特に、光源は、光をパルスの際にサンプルにあてるにようにするパルス状レーザーのようなパルス光源であってよい。そして、検出器は、ゲートを備えてよく、最大信号対雑音比で制限された時間間隔における光の各パルスの後に、粒子によって放出された光子が検出されるように、パルス光源と同期させることができる。
【0038】
本発明による装置は、放出用の粒子を駆動するための光を供給することのみを必要とするため、その装置構成を簡易にすることができる。しかしながら、本発明による装置を、(既に存在する)STEDまたはRESOLFT蛍光顕微鏡法をベースに形にすることもできる。ここで、蛍光発光を阻害する光線に対して使用される光線成形手段を、本発明に従って、光子を放出するように粒子が駆動される光に対して使用することができる。さらに、サンプルを走査するために使用される光線偏向手段は、検出される光子の割合を最小限に抑えることによって粒子を追跡するために使用されるように適応可能である。
【0039】
ここで、より詳細に図面を参照すると、
図1は、サンプル3内の粒子2の移動を追跡する装置1を示している。粒子2は、例えば、蛍光マーカーであってよく、または、粒子2はこのような蛍光マーカーによって印をつけられてよい。光源5からの光4によって、蛍光マーカーは光子を放出するように駆動される。これは基本的に、サンプル3内の光4の強度分布の極小点外のみで生じる。この強度分布については、
図3〜6を参照してさらに詳細に説明する。光源5は、レーザー6と、対物レンズ8の焦点体積における所望の光強度分布を調節するための光線成形手段7と、サンプル3内の光4の強度分布の極小点の位置を調節するための光線偏向手段9、10および11と、を含む。光線偏向手段9および10は、光4に直接的に作用し、x方向および/またはy方向に、すなわち、光路について横方向に極小点を移動させるか偏向させる。しかしながら、光線偏向手段11は、サンプル3に直接的に作用し、z方向にサンプル3に対して光4の強度分布の極小点を移動させるか偏向させる。二色性ビームスプリッタ13の後ろに、粒子2によって放出された光子を選択的に検出するための点検出器12が設けられる。ビームスプリッタ13は、レーザー6とサンプル3との間の光路に、特に、レーザー6と光線偏向手段9および10との間に位置付けられる。光線偏向手段9および10と対物レンズ8との間には、別のビームスプリッタ14が位置付けられる。ビームスプリッタ14を介して、2次元検出器を含むカメラ15はサンプル3を監視する。最初に粒子2を位置付けるために、広いエリアにわたって光4をサンプル3にあて、粒子2は、粒子2によって放出された光子に基づいて位置付けられ、カメラ15で映し出される。その後、粒子2が光4の強度分布の極小点の位置に位置付けられるように、光4の強度分布は粒子2に対して調節される。粒子2が実際に極小点の位置に位置付けられていることを、試験的にサンプル3に対して光4の強度分布を移動させることによってチェックする。このように移動させると、点検出器12によって検出される粒子2によって放出された光子の割合は増加するはずである。しかしながら、割合の減少は、粒子2が移動したため、光4の強度分布を極小点によって粒子2を追跡するように調節しなければならないことを示す。光4の強度分布を移動させることなく光子の割合が増加することは、粒子2がサンプル3内で移動したことも意味する。その後、光子の割合が再びその最小値に達するまで、粒子2を極小点によって追跡するために光4の強度分布を移動させなければならない。この追跡のために、光線偏向手段9〜11は、検出器12の信号に従って制御器16によって制御される。追跡中に判断される光4の強度分布の極小点の位置および/または移動は、サンプル3内の粒子2の移動に類似している。粒子2が移動する方向は、粒子2によって放出される光子がカメラ15によって検出される位置、すなわち、粒子が極小点から出て極小点による粒子の追跡を支持する位置から判断可能である。
【0040】
図1において、制御器16が光線成形手段7も制御することが示されている。実際には、光線成形手段7は、サンプル3内の光4の様々な強度分布を適切に調節することができる、空間光変調器であってよい。これら光強度分布の極小点はそれぞれ、1つまたは2つの次元に制限され、粒子2がサンプル3内で追跡可能である、共通の交点のみを含む。この実施形態によって、3つの次元全てにおける最大空間解像度によってサンプル3内の粒子2の移動について、粒子2を追跡することが可能になる。
【0041】
図2に例示された装置1の実施形態は、
図1による点検出器12を含まない。ここでは、サンプル3内で粒子2によって放出される光子を検出するためのカメラ15のみが設けられる。さらに、サンプル3は、基本的に2つの次元のみで拡張するサンプルである。光4の強度分布は、粒子2が追跡される環状の極大点に囲まれる中心極小点を含む。光4のこのドーナッツ形の強度分布は、静的な光線成形手段7の助けを借りて生成される。2次元サンプル3の面において、光4の強度分布の極小点は、光4に直接的に作用する光線偏向手段9および10によって位置付けられる。カメラ15は、対物レンズ8に対向するサンプル3の側面に配置されるさらなる対物レンズ17の後ろに配置される。ここで、カメラ15は、サンプル3内の光4の強度分布の位置を判断するためにさらに使用される。これによって、一方において光線偏向手段9および10の現在位置を判断することが可能になる。他方では、このカメラを使用して、サンプル内の光4の強度分布の極小点の位置を判断することができる。特に、そうすることで、サンプル内の極小点の位置を、回折限界を超える空間解像度で判断することもできる。
【0042】
図3は、粒子2が光強度分布18の中心極小点19に位置付けられている、サンプル3内の光4の強度分布を概略的に示している。
図4は、(規模を大きくした)
図3によるサンプル3を通る線形状に沿った光強度分布18(直線)の強度Iを示すグラフである。極小点19の領域において、光強度分布18は、極小点19について対称的である基本的に正弦波の形で変化する曲率を有する。光強度分布18に加えて、
図3は、粒子2に対応する強度Iの光4を施すと仮定した場合の、粒子2によって放出された光子の結果として生じる割合R(破線)を示す。極小点19の位置において、割合Rはその最小値R
minも有する。粒子2がこの極小点19を離れるとすぐに、割合Rは急速に増加する。特に、極小点19までの短い距離でも、割合Rはすでに、その最大値R
maxに近いか等しい値に達する。この反応は、高い空間解像度で光強度分布18の極小点19によってサンプル3内で粒子2を追跡するために有利に使用される。
【0043】
図5に例示されるように、粒子2が強度分布18に対してその位置を変更して極小点19を離れる場合、粒子2によって放出された光子の増加した割合Rが検出される。試験的にサンプル内で強度分布18を移動させることによって、その割合は再び低減しかつ最小とされる。このように、
図6に例示されるように、極小点19を有する光強度分布18がサンプル3に対して同じ方向にかつ同じ距離で移動する前に、その割合の極小点は実現されないため、どの方向にかつどのくらいの距離で粒子2が移動したかが求められる。極小点19を有する強度分布18が粒子2を追跡するために移動せざるを得ない方向を、粒子2によって放出された光子がカメラによって検出される位置から求めることもできる。
【符号の説明】
【0044】
1 装置
2 粒子
3 サンプル
4 光
5 光源
6 レーザー
7 光線成形手段
8 対物レンズ
9 光線偏向手段
10 光線偏向手段
11 光線偏向手段
12 点検出器
13 ビームスプリッタ
14 ビームスプリッタ
15 カメラ
16 制御器
17 対物レンズ
18 強度分布
19 極小点
I 強度
R 割合