(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6078980
(24)【登録日】2017年1月27日
(45)【発行日】2017年2月15日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 9/02 20060101AFI20170206BHJP
B60C 9/08 20060101ALI20170206BHJP
B60C 9/18 20060101ALI20170206BHJP
B60C 15/00 20060101ALI20170206BHJP
【FI】
B60C9/02 B
B60C9/08 J
B60C9/18 K
B60C15/00 B
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-100340(P2012-100340)
(22)【出願日】2012年4月25日
(65)【公開番号】特開2013-226938(P2013-226938A)
(43)【公開日】2013年11月7日
【審査請求日】2015年4月8日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】南 祐二
【審査官】
増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−051480(JP,A)
【文献】
特開2007−196746(JP,A)
【文献】
特開2008−037266(JP,A)
【文献】
特開2011−251646(JP,A)
【文献】
特開2012−240373(JP,A)
【文献】
特開2012−196993(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 9/02
B60C 9/08
B60C 9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対のビード部と該ビード部に連なるサイドウォール部と該サイドウォール部を連結するトレッド部とを備え、タイヤ周方向に対して80度〜90度で補強コードが配列されてなる2枚のカーカス層を有すると共に、前記トレッド部における前記カーカス層の外周に、ベルト層を構成するコード軸方向とタイヤ周方向とのなす角が±15〜45度で交差する少なくとも2層のベルト層を配置し,かつ前記2枚のカーカス層の前記トレッド部の中央領域において分割して構成した空気入りタイヤであって、下記の要件(c)、(d)および(e)を満足するように構成されてなることを特徴とする空気入りタイヤ。
(c)前記分割された2枚のカーカス層のタイヤ径方向外側の端部E2、E3は、前記2枚のベルト層の間に挟まれて配置されていること、
(d)タイヤ幅方向で最外側にある前記分割カーカス層のタイヤ径方向内側の端部F2は、前記ビード部のタイヤ幅方向内側に配置され、かつ前記端部F2がビードコアとタイヤ幅方向で内側にある前記分割されたカーカス層との間に挟み込まれていること、
(e)前記ベルト層のタイヤ径方向で内側にあるベルト層のタイヤ幅方向の総幅W1が、タイヤ径方向で外側にあるベルト層のタイヤ幅方向の総幅W2よりも狭く構成されていること。
【請求項2】
前記分割されたカーカス層のタイヤ径方向外側の端部E2、E3が、いずれも、前記ベルト層のタイヤ径方向で内側にあるベルト層の端部から、タイヤ赤道側に向けて該内側にあるベルト層のタイヤ幅方向の総幅の5%〜35%の範囲内に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記分割された2枚のカーカス層のタイヤ径方向外側の端部E2、E3のうち、タイヤ径方向で内側にあるカーカス層の端部をE3とし、タイヤ径方向で外側にあるカーカス層の端部をE2としたとき、該端部E2と該端部E3の位置が5mm以上離れていることを特徴とする請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記タイヤ径方向で内側にあるベルト層のタイヤ幅方向の総幅W1が、前記タイヤ径方向で外側にあるベルト層のタイヤ幅方向の総幅W2よりも5〜25mm狭いことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気入りタイヤに関する。
【0002】
さらに詳しくは、タイヤの軽量化のために、従来、一般的には両ビード部間に跨って存在させていたカーカスを、ベルト下で除去した分割カーカス方式で構成され、優れた軽量化効果とともにカーカスの除去端部を起点とする損傷発生がなく、優れた耐久性、軽量性を併せ有する空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0003】
従来、自動車における省資源化、低燃費化等の観点からタイヤの軽量化は重要な課題である。
【0004】
タイヤの軽量化の方法については、さまざまな手法が考えられてきているが、一つの具体的方法として、ベルト下のカーカスを除去した分割カーカス方式でタイヤを構成することが提案されている。
【0005】
具体的には、例えば、一対のビード部及び一対のサイドウォール部と、トレッド部とを有し、各ビード部内に埋設したビードコアからトレッド部に向け延びる1プライ以上のラジアル配列コードのゴム被覆になるカーカス層と、カーカス層の外周でトレッド部を強化する2層以上のゴム被覆コード交差層のベルトとを備え、カーカス層は各ビードコアの周りをタイヤ内側から外側に向け巻上げる折返し部を有する空気入りタイヤにおいて、前記カーカス層が、ベルトの配置領域内のプライに1箇所以上のコード分断部を有し、コード分断部のタイヤ軸方向合計幅はベルト最大幅の90%以下の値を有し、かつ、カーカス層の折返し部はリム径ラインから測って35mm以下の高さを有する空気入りタイヤが提案されている(特許文献1)。
【0006】
また、分割カーカス端部の剥離損傷を抑えながら、操縦安定性の向上を図ることを目的に、カーカス層を2枚あるいは1枚使用し、少なくとも1枚を分割カーカス層にし、トレッド部内に配される複数枚のベルト層の層間に、該分割カーカス層の一端を狭持させるようにした空気入りラジアルタイヤが提案されている(特許文献2)。
【0007】
しかし、特許文献1の提案は、分割カーカス層を採用することにより、操縦安定性能向上と乗心地性能・車内騒音性能向上とを両立させること、また、カーカスの分断部の分だけ軽量化されるので低転がり抵抗性能を向上させるものであるが(特許文献1の段落0027、0038)、カーカス層が分割されていることの不都合として、カーカス層の分割端部付近を起点とした損傷が生じやすくなり耐久性の点で劣るものであった。
【0008】
また、特許文献2の提案では、ベルト層で挟持されている点で分割カーカスの分割端部での剥離損傷は防止されるものの、ベルト層の挟持が解かれる付近で応力集中し、耐久性に劣ることが懸念されるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−187511号公報
【特許文献2】特開2005−81873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明
の目的は、上述したような点に鑑み、
従来の2プライ構造の空気入りタイヤと比べて、分割カーカス方式を採用して軽量化に優れ
るとともに、分割カーカス方式のタイヤにおいて劣りがちな耐久性能の点でも優れ
た分割カーカス方式を採用した空気入りタイヤを提供することにある。
【0011】
上述した
目的を達成する
本発明の空気入りタイヤは、以下の
(1)の構成を有する。
(1)左右一対のビード部と該ビード部に連なるサイドウォール部と該サイドウォール部を連結するトレッド部とを備え、タイヤ周方向に対して80度〜90度で補強コードが配列されてなる2枚のカーカス層を有すると共に、前記トレッド部における前記カーカス層の外周に、ベルト層を構成するコード軸方向とタイヤ周方向とのなす角が±15〜45度で交差する少なくとも2層のベルト層を配置し,かつ前記2枚のカーカス層の前記トレッド部の中央領域において分割して構成した空気入りタイヤであって、下記の要件(c)、(d)および(e)を満足するように構成されてなることを特徴とする空気入りタイヤ。
(c)前記分割された2枚のカーカス層のタイヤ径方向外側の端部E2、E3は、前記2枚のベルト層の間に挟まれて配置されていること、
(d)タイヤ幅方向で最外側にある前記分割カーカス層のタイヤ径方向内側の端部F2は、前記ビード部のタイヤ幅方向内側に配置され、かつ前記端部F2がビードコアとタイヤ幅方向で内側にある前記分割されたカーカス層との間に挟み込まれていること、
(e)前記ベルト層のタイヤ径方向で内側にあるベルト層のタイヤ幅方向の総幅W1が、タイヤ径方向で外側にあるベルト層のタイヤ幅方向の総幅W2よりも狭く構成されていること。
【0012】
また、かかる
本発明の空気入りタイヤにおいて、好ましくは以下の
(2)〜
(4)のいずれかの構成を有するものである。
(2)前記分割されたカーカス層のタイヤ径方向外側の端部E2、E3が、いずれも、前記ベルト層のタイヤ径方向で内側にあるベルト層の端部から、タイヤ赤道側に向けて該内側にあるベルト層のタイヤ幅方向の総幅の5%〜35%の範囲内に配置されていることを特徴とする上記
(1)に記載の空気入りタイヤ。
(3)前記分割された2枚のカーカス層のタイヤ径方向外側の端部E2、E3のうち、タイヤ径方向で内側にあるカーカス層の端部をE3とし、タイヤ径方向で外側にあるカーカス層の端部をE2としたとき、該端部E2と該端部E3の位置が5mm以上離れていることを特徴とする上記
(1)または
(2)に記載の空気入りタイヤ。
(4)前記タイヤ径方向で内側にあるベルト層のタイヤ幅方向の総幅W1が、前記タイヤ径方向で外側にあるベルト層のタイヤ幅方向の総幅W2よりも5〜25mm狭いことを特徴とする上記(1)〜
(3)のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【発明の効果】
【0013】
請求項
1にかかる
本発明の空気入りタイヤによれば、従来の2プライ構造と比べて,分割カーカス方式を採用して軽量化に優れるとともに、分割カーカス方式のタイヤにおいて劣りがちな耐久性能の点で優れた分割カーカス方式を採用した空気入りタイヤが提供されるものである。
【0014】
請求項
2〜4にかかる本発明の空気入りタイヤによれば、上記
本発明の空気入りタイヤの効果をより高度かつ明確に有する空気入りタイヤが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
本発明を説明する上で参考例となる空気入りタイヤの一
例を示したタイヤ子午線方向断面図である。
【
図2】
本発明にかかる空気入りタイヤの一実施例を示したタイヤ子午線方向断面図である。
【
図3】(a)は、
参考例の空気入りタイヤのコードベルト層5、6の端部付近Aでのカーカスラインをモデル的に示した子午線方向断面図に対応するモデル図であり、(b)は
参考例の空気入りタイヤの要件(b)のW1とW2の関係とが逆の関係(W2がW1よりも狭い)を有する本発明以外の空気入りタイヤにおけるコードベルト層5、6の端部付近Aでのカーカスラインをモデル的に示した子午線方向断面図に対応するモデル図である。
【
図4】(a)は、
図1に示した
参考例の空気入りタイヤのコードベルト層5、同6と、分割カーカス層4の端部(タイヤ径方向外側)E1、同F1(タイヤ径方向内側)の関係をモデル的に示した子午線方向断面図に対応するモデル図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、更に詳しく本発明の空気入りタイヤについて説明する。
【0017】
図1は、
本発明を説明する上で参考例となる空気入りタイヤT1を示したものである。1はトレッド部、2はサイドウォール部、3はビード部である。
【0018】
空気入りタイヤT1は、左右一対のビード部と該ビード部に連なるサイドウォール部と該サイドウォール部を連結するトレッド部とを備え、少なくとも1枚のカーカス層を有すると共に、前記トレッド部における前記カーカス層の外周に交差する少なくとも2層のベルト層を配置し,かつ前記カーカス層の前記トレッド部の中央領域において分割して構成した空気入りタイヤであって、
下記の要件(a)および(b)を満足するように構成されてなることを特徴とするものである。
(a)分割されたカーカス層4のタイヤ径方向外側の端部E1は、前記2枚のコードベルト層5、6の間に挟まれて配置されていること、
(b)コードベルト層5、6のタイヤ径方向で内側にあるコードベルト層5のタイヤ幅方向の総幅W1が、タイヤ径方向で外側にあるコードベルト層6のタイヤ幅方向の総幅W2よりも狭く構成されていること。
【0019】
空気入りタイヤT1において、特に限定されるものではないが、前記カーカス層は、タイヤ周方向に対して80度〜90度で補強コードが配列されてなること、また、交差する少なくとも2層のベルト層は、ベルト層を構成するコード軸方向とタイヤ周方向とのなす角が±15〜45度で交差するようにして2枚以上が積層されているものであることが好ましい。
【0020】
また、ベルト層5、6の外周側には、有機繊維コードをタイヤ周方向に巻回してなるベルトカバー層(図示していない)が配置されていてもよい。7はビードコア、8はビードフィラーである。また、分割されたカーカス層4のタイヤ径方向内側の端部F1は、
図1に示した例では、ビードフィラー8の頂部付近に配置させているが、特に限定されるものではない。
【0021】
上述した
参考例の空気入りタイヤによれば、コードベルト層5、6でカーカス端部E1を挟むことにより、分割領域(カーカス層が分割されて、タイヤ幅方向で存在していない領域)を、より拡大することができ、そのためより軽量化を達成することができる。また、コードベルト層5、6で挟持されているため、カーカスコードの引抜抵抗力が大きくなり、かつベルト層5、6のエッジ部付近で生ずるひずみが小さくなり、分割カーカス層4の端部E1付近、ベルト層5、6の端部付近Aでの応力集中が抑えられ緩和される方向であり、その付近での故障が原因であるタイヤ破壊が起こりにくくなり、タイヤの耐久性が向上する。
【0022】
特に、タイヤ径方向で内側にあるベルト層5のタイヤ幅方向の総幅W1が、タイヤ径方向で外側にあるベルト層6のタイヤ幅方向の総幅W2よりも狭く構成されていることにより、ベルト層5、6の端部付近Aでのカーカスラインの変化が小さく、応力集中がし難くなり、分割カーカス層4の耐久性が著しく向上する。
【0023】
この状態をモデル的に図で説明したのが、
図3(a)、(b)であり、総幅W1と総幅W2とが
参考例の空気入りタイヤの関係を有する場合を
図3(a)で示し、総幅W1と総幅W2とが
参考例の空気入りタイヤと逆の関係を有する場合を
図3(b)で示している。
【0024】
この
図3(b)からわかるように、
参考例の空気入りタイヤと逆の関係の場合には、内側にあるベルト層5がタイヤ幅方向外側に突き出ているため、カーカス4のラインはベルト層5、6の端部付近Aで急激な角度変化を受けて存在することとなる。この状態でタイヤが実走行に供されると早期に耐久性の限界に到達する。
【0025】
これに対して、
図3(a)に示した
参考例の空気入りタイヤの場合には、カーカスラインの角度変化は緩く、そのため応力の集中はせず、耐久性に優れている。
参考例の空気入りタイヤにおいて、ベルト層5、6は、タイヤ子午線断面上で、いずれもタイヤ赤道を中心として左右対称に存在することが基本思想であるが、厳密に左右が対称でなくてもよく、また、それらの中心線位置(総幅の1/2の位置)が厳密に一致してなくともよい。ただし、
図3(a)に示したように、タイヤ径方向で内側にあるベルト層5の端部が、タイヤ径方向で外側にあるベルト層6の端部よりもタイヤ幅方向で外側に位置することがないようにするものである。
【0026】
また、分割されたカーカス層4のタイヤ径方向外側の端部E1は、挟持する2枚のベルト層5、6のうち、タイヤ径方向で内側にあるベルト層5の端部から、タイヤ赤道側に向けて、該内側ベルト層5のタイヤ幅方向の総幅W1の5%〜35%の範囲内の位置(
図1で示したLの位置)に配置されていることが好ましい。5%未満の位置に配されているときは、タイヤの空気圧を保持するカーカスの機能の発揮に支障をきたすことがあり、また35%よりも大きい位置のときは軽量化の効果が十分に得られないので、好ましくない。好ましくは、該カーカス層4のタイヤ径方向外側の端部E1の位置は、耐久性と軽量化をより好ましく両立させる上で、上記値で10〜25%の範囲内に配置されていることである。
【0027】
上述した
図1に示した
参考例の空気入りタイヤのベルト層5、同6と、分割カーカス層4の端部E1(タイヤ径方向外側の端部)、同F1(タイヤ径方向内側の端部)の関係例を
図4(a)にモデル図で示した。
【0028】
また、
図2は、
本発明の空気入りタイヤT2を示したものであり、
本発明の空気入りタイヤT2は、左右一対のビード部と該ビード部に連なるサイドウォール部と該サイドウォール部を連結するトレッド部とを備え、
タイヤ周方向に対して80度〜90度で補強コードが配列されてなる2枚のカーカス層を有すると共に、該トレッド部における該カーカス層の外周に
、ベルト層を構成するコード軸方向とタイヤ周方向とのなす角が±15〜45度で交差する少なくとも2層のベルト層を配置し,かつ前記2枚のカーカス層の前記トレッド部の中央領域において分割して構成した空気入りタイヤであって、下記の要件(c)、(d)および(e)を満足するように構成されてなることを特徴とするものである。
(c)前記分割された2枚のカーカス層4A、4Bのタイヤ径方向外側の端部E2、E3は、前記2枚のベルト層5、6の間に挟まれて配置されていること、
(d)タイヤ幅方向で最外側にある前記分割カーカス層4Aのタイヤ径方向内側の端部F2は、前記ビード部3のタイヤ幅方向内側に配置され
、かつ前記端部F2がビードコアとタイヤ幅方向で内側にある前記分割されたカーカス層4Bとの間に挟み込まれていること、
(e)前記ベルト層5、6のタイヤ径方向で内側にあるベルト層5のタイヤ幅方向の総幅W1が、タイヤ径方向で外側にあるベルト6のタイヤ幅方向の総幅W2よりも狭く構成されていること。
【0029】
これらの要件のうち、要件(c)は、
参考例の空気入りタイヤの要件(a)と同様なものであり、分割された2枚のカーカス層4A、4Bのタイヤ径方向外側の端部E2、E3の双方について、2枚のベルト層5、6によって挟持されることを要件としたものである。要件(d)については、
図2に示した位置に、タイヤ幅方向で最外側にある分割カーカス層4Aのタイヤ径方向内側の端部F2を配置したものである。要件(e)は、
参考例の空気入りタイヤの要件(b)と同様なものであり、ベルト層5、6の端部付近において、緩いカーカスラインを実現するものである。
【0030】
この本発明の空気入りタイヤT2において、前記カーカス層は、タイヤ周方向に対して80度〜90度で補強コードが配列されてな
り、また、交差する少なくとも2層のベルト層は、ベルト層を構成するコード軸方向とタイヤ周方向とのなす角が±15〜45度で交差するようにして2枚以上が積層されているものである
。
【0031】
この
本発明にかかる空気入りタイヤによれば、従来の2プライ構造の空気入りタイヤと比べて、操縦安定性を低下させることなく,軽量化を達成することができる。また、一方の分割カーカス層4Aをビード部3で折り返さないことによって、よりタイヤを軽量化することができる。すなわち、タイヤ幅方向で最外側にある分割カーカス層4Aのタイヤ径方向内側の端部F2を、ビードコア7のタイヤ幅方向内側の位置に配置することが重要である。タイヤ幅方向で内側にある分割カーカス層4Bのタイヤ径方向内側の端部F3は、
図2に示したようにビード部3で折り返すことがよい。
【0032】
図2に示した
本発明の空気入りタイヤのベルト層5、同6と、分割カーカス層4A、4Bの端部E2、同E3(タイヤ径方向外側の端部)と、同F2、同F3(タイヤ径方向内側の端部)の関係を
図4(b)にモデル図で示した。
【0033】
また、
本発明の空気入りタイヤにおいても、
参考例の空気入りタイヤと同様に、分割されたカーカス層4A、4Bのタイヤ径方向外側の端部E2、E3が、いずれも、コードベルト層のタイヤ径方向で内側にあるコードベルト層5の端部から、タイヤ赤道側に向けて該内側にあるコードベルト層5のタイヤ幅方向の総幅の5%〜35%の範囲内に配置されていることが好ましい。これは、
参考例の空気入りタイヤと同様な理由であり、耐久性と軽量化を両立させるために、好ましくは、端部E2、E3の位置が上記値で10〜25%の範囲内に配置されていることであることも同様である。
【0034】
また、分割された2枚のカーカス層4A、4Bのタイヤ径方向外側の端部E2、E3のうち、タイヤ径方向で内側にあるカーカス層4Bの端部をE3とし、タイヤ径方向で外側にあるカーカス層4Aの端部をE2としたとき、該端部E2と該端部E3の位置が5mm以上離れていることが好ましい。特に、分割カーカス層が2プライの場合に、2つの分割端がタイヤ幅方向の位置的に、重ならないことが重要であり、該分割端が重なっているときは、それらのカーカス層端部を起点とする損傷が起こりやすい。そのため、両位置は、重なっていないこと、少なくとも5mm以上は離れていることが好ましい。
【0035】
上述した
参考例の空気入りタイヤ、
本発明にかかる空気入りタイヤのいずれにおいても、タイヤ径方向で内側にあるベルト層5のタイヤ幅方向の総幅W1が、タイヤ径方向で外側にあるベルト層6のタイヤ幅方向の総幅W2よりも5〜25mm狭いことが好ましい。このように構成すれば、カーカスを挟みこみ、ベルトエッジ部でのひずみが小さくなるため,ベルトの有効幅に対してステップ量(一番ベルト(5)の幅と2番ベルト(6)の幅の差)を小さくすることができることから好ましい。より好ましくは、タイヤ径方向で内側にあるコードベルト層5のタイヤ幅方向の総幅W1が、タイヤ径方向で外側にあるコードベルト層5のタイヤ幅方向の総幅W2よりも8〜14mm狭いことである。
【0036】
なお、上記のタイヤ径方向で内側にあるコードベルト層5のタイヤ幅方向の総幅W1が、タイヤ径方向で外側にあるコードベルト層6のタイヤ幅方向の総幅W2よりも5〜25mm狭いということは、タイヤ赤道から片側だけのコードベルト層の幅で言うと、(W1×1/2)値が(W2×1/2)値よりも、2.5〜12.5mm小さいことである。
【0037】
上述したように、本発明においては、コードベルト層5、6は、タイヤ子午線断面上で、いずれもタイヤ赤道を中心として左右対称に存在することが基本思想であるが、厳密に左右が対称でなくてもよく、中心線位置(総幅の1/2の位置)が厳密に一致してなくともよい。そのため、タイヤ赤道から片側だけのコードベルト層の幅で言うと、2.5〜12.5mm小さいようにすることがよいものである。
【実施例】
【0038】
以下、実施例に基づいて、
参考例の空気入りタイヤおよび
本発明に係る空気入りタイヤについて具体的に説明する。
【0039】
195/65R15サイズの評価タイヤにて、それぞれ表1、表2に示した構造の分割カーカス方式により、1プライのカーカス層による従来例1、比較例1、
参考例1−2の空気入りタイヤ、および2プライのカーカス層による比較例2−3、実施例
1−
2の空気入りタイヤを製作し、荷重耐久性の試験と質量の評価を行った。
【0040】
従来例1は、コードベルト層5の総幅がコードベルト層6の総幅よりも大きく、かつカーカス層の端部E1がコードベルト層5、同6に挟持されていない構造のものである。
【0041】
比較例1は、コードベルト層5の総幅がコードベルト層6の総幅よりも大きく、かつカーカス層の端部E1がコードベルト層5、同6に挟持されている構造のものである。
【0042】
比較例2は、コードベルト層5の総幅がコードベルト層6の総幅よりも大きく、かつカーカス層の1枚だけが分割カーカスで、かつカーカス層の端部E2がコードベルト層5、同6に挟持されている構造のものである。
【0043】
比較例3は、コードベルト層5の総幅がコードベルト層6の総幅よりも大きく、かつカーカス層の2枚が分割カーカスで、かつカーカス層の端部E2、E3がコードベルト層5、同6に挟持されている構造のものである。
【0044】
参考例1−
2および実施例1−2の本発明の空気入りタイヤは、それぞれ表1、2に記載したとおりのものである。
【0045】
かかる
表2からわかるように、本発明にかかる空気入りタイヤは、従来の分割カーカス層方式の空気入りタイヤと比較して、質量の低減が一段とできるとともに、耐久性において顕著に優れており、総合的に非常に優れた分割カーカス層方式の空気入りタイヤである。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【符号の説明】
【0048】
1:トレッド部
2:サイドウォール部
3:ビード部
4(4A、4B):カーカス層(分割カーカス層)
5:ベルト層(タイヤ径方向で内側。一番ベルト)
6:ベルト層(タイヤ径方向で外側。二番ベルト)
7:ビードコア
8:ビードフィラー
T1、T2:空気入りタイヤ
A:ベルト層5、6の端部付近
E1、E2、E3:分割カーカスのタイヤ径方向外側の端部
F1、F2、F3:分割カーカスのタイヤ径方向内側の端部
W1:タイヤ径方向で内側にあるベルト層5のタイヤ幅方向の総幅
W2:タイヤ径方向で外側にあるベルト層6のタイヤ幅方向の総幅