(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6079116
(24)【登録日】2017年1月27日
(45)【発行日】2017年2月15日
(54)【発明の名称】エンジン
(51)【国際特許分類】
F02D 41/04 20060101AFI20170206BHJP
F02D 41/34 20060101ALI20170206BHJP
F02D 41/02 20060101ALI20170206BHJP
【FI】
F02D41/04 325C
F02D41/34 C
F02D41/02 325A
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-224286(P2012-224286)
(22)【出願日】2012年10月9日
(65)【公開番号】特開2014-77374(P2014-77374A)
(43)【公開日】2014年5月1日
【審査請求日】2015年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100088683
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100095441
【弁理士】
【氏名又は名称】白根 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100119976
【弁理士】
【氏名又は名称】幸長 保次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100172580
【弁理士】
【氏名又は名称】赤穂 隆雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(74)【代理人】
【識別番号】100134290
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 将訓
(72)【発明者】
【氏名】柳川 健介
【審査官】
山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−005451(JP,A)
【文献】
特開2012−167618(JP,A)
【文献】
特開平01−267339(JP,A)
【文献】
特開平06−123248(JP,A)
【文献】
特開2005−220887(JP,A)
【文献】
特開平04−295151(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 41/00 − 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気管へ燃料を噴射する吸気通路インジェクタ及び筒内へ燃料を噴射する筒内インジェクタを複数の気筒のそれぞれに有したエンジンであって、
前記エンジンの運転状態に合わせて各気筒の燃料の噴射モードを、前記吸気通路インジェクタのみから燃料を噴射する吸気通路モード、前記吸気通路インジェクタ及び前記筒内インジェクタに燃料を分配して噴射する吸気通路+筒内モード、前記筒内インジェクタのみから燃料を噴射する筒内モードの3つの噴射モードに切り換え可能な制御装置を備え、
前記制御装置は、複数の前記気筒を少なくとも2つの群に分け、1つの群の噴射モードを切り換える間、残りの群の噴射モードをそれまでの噴射モードに維持するようにそれぞれの前記群の前記噴射モードを順番に切り換えるものであって、
前記吸気通路モードから前記吸気通路+筒内モードへ前記噴射モードを切り換える場合、および、前記吸気通路+筒内モードから前記吸気通路モードへ前記噴射モードを切り換える場合、前記群は、1つの前記気筒をそれぞれ含み、
前記吸気通路+筒内モードから前記筒内モードへ前記噴射モードを切り換える場合、および、前記筒内モードから前記吸気通路+筒内モードへ前記噴射モードを切り換える場合、前記群は、点火順序が連続しない少なくとも2つの気筒をそれぞれ含む
ことを特徴とするエンジン。
【請求項2】
前記制御装置は、1つの群の噴射モードの切り換えを完了した後、次の群の噴射モードの切り換えを開始するまで、一定の時間を空ける
ことを特徴とする請求項1に記載されたエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒内インジェクタ及び吸気通路インジェクタの燃料噴射の比率を変化させるエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
筒内に燃料を直接噴射する燃料噴射弁(筒内インジェクタ)を備えるエンジンを搭載する車両がある(例えば、特許文献1)。このエンジンは、着火時期などから燃焼の状態を判断し、燃焼モードを通常燃焼モード又は予混合燃焼モードに切り替える。通常燃焼モードでは、吸気行程中から圧縮行程中の任意の期間に燃料を噴射するパイロット噴射と、圧縮行程中に燃料を噴射するメイン噴射とが含まれる。予混合燃焼モードでは、燃料と空気をあらかじめ混合させておき、これを燃焼させる。これらの2つの燃焼モードを切り替える際に、着火時期がずれたり燃焼が不安定になったりしないように、複数ある気筒のうち一部の気筒を先行して切り替える。燃焼モードを切り換えた後の状況を確認し、他の残りの気筒の燃焼モードを切り替える。
【0003】
また、筒内に燃料を直接噴射する筒内噴射用インジェクタ(筒内インジェクタ)及び吸気ポートに燃料を噴射する吸気通路噴射用インジェクタ(吸気通路インジェクタ)を各気筒に備えるエンジンを搭載する車両がある(例えば、特許文献2)。このエンジンでは、運転状態に対応させて筒内インジェクタ及び吸気通路インジェクタの噴き分け比率(燃料噴射比率)が決定される。比率は、エンジンの回転数及び負荷率によって決まる運転領域ごとに予め設定されており、筒内インジェクタのみから燃料噴射が行われる場合、吸気通路インジェクタのみから燃料噴射が行われる場合、筒内インジェクタ及び吸気通路インジェクタの両方からそれぞれ決まった割合で燃料噴射が行われる場合に分類される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−45520号公報
【特許文献2】特開2006−258017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の場合、燃料噴射を行なうタイミングを変化させ燃焼モードを変えるのに対し、特許文献2の場合、吸気通路インジェクタと筒内インジェクタから噴射される燃料の比率を変える。したがって、吸気通路インジェクタと筒内インジェクタの燃料噴射の割合は、テーリング制御によって切替えられる。このとき、吸気通路インジェクタが噴射する燃料の圧力に対し、筒内インジェクタが噴射する燃料の圧力は、はるかに高く、噴射時間が短い。また筒内インジェクタから噴射される燃料の量が最小駆動時間によって決まる(クリップされる)とともに、吸気通路インジェクタから噴射された燃料が付着燃料となっている場合などに起因して、空気/燃料比率が、化学量論的値、いわゆる「ストイキ(理論空気量(Stoichimetric Air))」から外れ、リッチ又はリーンになることがある。
【0006】
したがって、吸気通路インジェクタのみから燃料噴射が行われる運転状態を吸気通路インジェクタ及び筒内インジェクタを併用して燃料噴射が行われる運転状態へ切り換わる場合、吸気通路インジェクタ及び筒内インジェクタを併用して燃料噴射が行われる運転状態から筒内インジェクタのみから燃料噴射が行われる運転状態へ切り換わる場合、またはこれらの逆の場合など、燃料噴射の比率を変化させる際、排ガス中のHC(炭化水素)やNOxが増えてしまうことが懸念される。
【0007】
そこで、吸気通路インジェクタと筒内インジェクタがそれぞれ噴射する燃料の量の比率を変えても排ガス中のHCやNOxが著しく増えない噴射制御を行うエンジンを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る一実施形態のエンジンは、吸気ポートへ燃料を噴射する吸気通路インジェクタ及び筒内へ燃料を噴射する筒内インジェクタを複数の気筒のそれぞれに有し、エンジンの運転状態に合わせて各気筒の燃料の噴射モードを、吸気通路モード、吸気通路+筒内モード、筒内モード、の
3つの噴射モードに切り換え
可能な制御装置を備える。吸気通路モードでは、吸気通路インジェクタのみから燃料を噴射する。吸気通路+筒内モードでは、吸気通路インジェクタ及び筒内インジェクタに燃料を分配して噴射する。筒内モードでは、筒内インジェクタのみから燃料を噴射する。そして、制御装置は、複数の気筒を少なくとも2つの群に分け、1つの群の噴射モードを切り換える間、残りの群の噴射モードをそれまでの噴射モードに維持する
ように各群の噴射モードを順番に切り換える。このとき、吸気通路モードから吸気通路+筒内モードへ噴射モードを切り換える場合、および、吸気通路+筒内モードから吸気通路モードへ噴射モードを切り換える場合、各群には1つの気筒をそれぞれ含み、吸気通路+筒内モードから筒内モードへ噴射モードを切り換える場合、および、筒内モードから吸気通路+筒内モードへ噴射モードを切り換える場合、各群には点火順序が連続しない少なくとも2つの気筒をそれぞれ含む。
【0009】
このとき、制御装置は、1つの群の噴射モードの切り替えを完了した後、次の群の噴射モードの切り換えを開始するまで、一定の時間を空け
る。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るエンジンによれば、複数の気筒を少なくとも2つの群に分け、1つの群の噴射モードを切り換える間、残りの群の噴射モードを維持するので、噴射モードを切り換えている群の気筒の燃焼状態がストイキから外れてリッチ又はリーンになったとしても、残りの群の気筒の燃焼状態がストイキに維持されている。したがって、噴射モードを切り換える間、エンジンの出力は安定しているとともに、エンジンから排出される排ガス中のHC濃度またはNOx濃度も低く抑えることができる。触媒などを使用した排ガスの浄化処理にかかる負荷を軽減できる。
【0013】
また、1つの群の噴射モードの切り替えを完了した後、次の群の噴射モードの切り換えを開始するまで、一定の時間を空ける発明に係るエンジンによれば、エンジン出力が安定しやすく、噴射モードを切り換えている間に発生したHCやNOxは、噴射モードの切り替えが行われていない間に排出される排気ガスによってさらに希釈される。
【0014】
また、1つの群に1つの気筒を含む発明に係るエンジンによれば、1気筒ずつ噴射モードが切り替わるので、他の場合と同様にエンジンの出力が安定しやすく排ガス中のHC及びNOxの濃度を低く抑えることができる。
【0015】
また、点火順序が連続しない少なくとも2つの気筒を1つの群に含む発明に係るエンジンによれば、噴射モードを切り換えている間のエンジン出力が乱れにくく、また、HCまたはNOxが発生した場合に噴射モードを切り換えている2つの気筒の間で点火されてストイキ運転を続けている気筒から排出される排気ガスによって希釈される。したがって、エンジンから排出される排ガス中のHCやNOxの濃度に斑が生じにくいため、触媒などによる排ガスの浄化処理に対する負荷が軽減される。
【0016】
吸気通路モードから吸気通路+筒内モードへ噴射モードを切り換える場合、および、吸気通路+筒内モードから吸気通路モードへ噴射モードを切り換える場合、1つの群に1つの気筒を含み、制御装置が順番に各群の噴射モードを切り換える発明に係るエンジンによれば、噴射モードを切り換えられる気筒は常に1つであるので、噴射モードを切り換えている気筒の燃焼状態がストイキから外れても、全体で見たときの変動は小さい。筒内インジェクタから噴射される燃料の圧力は高いため、最小駆動時間で一度に噴射される燃料の量が多く、テーリング制御を行なっても、最小駆動時間で噴射される燃料の量よりも少ない量の調整ができない。つまり、筒内インジェクタから噴射される燃料の量の割合が小さい段階において、その影響が燃焼状態に表れやすい。この発明の場合、1気筒ずつ噴射モードを切り換えるので、この気筒がストイキから外れてHCやNOxを発生させる量は、エンジン全体の排ガス量から比べれば、充分に小さい。したがって、触媒などを使用した排ガスの浄化処理に係る負荷は小さい。
【0017】
また、吸気通路+筒内モードから筒内モードへ噴射モードを切り換える場合、および、筒内モードから吸気通路+筒内モードへ噴射モードを切り換える場合、点火順序が連続しない少なくとも2つの気筒を1つの群に含み、制御装置が順番に各群の噴射モードを切り換える発明に係るエンジンによれば、2つの気筒が同時期に噴射モードを切り換えられるので、エンジン全体の噴射モードの切り換えが早く完了する。筒内インジェクタに比べた吸気通路インジェクタから噴射される燃料の圧力は低く、最小駆動時間で一度に噴射される燃料の量が少ない。また、筒内モードにおいて噴射される燃料量は、吸気通路+筒内モードにおいて噴射される燃料量よりも多い。すなわち、吸気通路インジェクタから噴射される燃料量の誤差による影響は、極めて小さい。1つの群に含まれる2つの気筒の噴射モードを同時期に切り換えても、これらの気筒がストイキから外れてHCやNOxを発生する量は、エンジン全体の排ガス量から比べれば充分に小さい。したがって、触媒などを使用した排ガスの浄化処理に係る負荷は小さい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係る一実施形態のエンジンを示す概略図。
【
図2】
図1のエンジンに設定された燃料噴射モードの分布領域を示す図。
【
図3】
図2中の吸気通路モードから吸気通路+筒内モードに移行するときのタイムチャート。
【
図4】
図2中の吸気通路+筒内モードから筒内モードに移行するときのタイムチャート。
【
図5】
図1のエンジンの制御装置によって噴射モードを切り換えるためのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る一実施形態のエンジン10について、
図1から
図5を参照して説明する。
図1に示すエンジン10は、例えば直列4気筒のエンジンである。
図1には1つの気筒2をピストン25のストロークに沿う平面で切った断面を示す。このエンジン10は、シリンダブロック21、シリンダヘッド22、吸気通路23、排気通路24、ピストン25、吸気バルブ231、排気バルブ241、点火プラグ26、吸気通路インジェクタ31、筒内インジェクタ32、制御装置(Electric Control Unit:ECU)4、燃料タンク5、供給ポンプ51、高圧ポンプ52を備える。吸気バルブ231によって塞がれた吸気通路23の端部に、吸気ポート23Aが形成される。また、排気バルブ241によって塞がれた排気通路24の端部に、排気ポート24Aが形成される。排気通路24は、排ガスを浄化処理するための触媒242を下流に備えている。
【0020】
吸気通路インジェクタ31は、各気筒2の吸気ポート23Aの上流の吸気通路23に設置され、吸気ポート23Aに向けて燃料を噴射する。筒内インジェクタ32は、シリンダヘッド22に設置され、各気筒2の筒内へ燃料を噴射する。吸気通路インジェクタ31は、燃料タンク5から供給ポンプ51によって燃料が供給される。筒内インジェクタ32は、供給ポンプ51によって送り出された燃料の一部をさらに高圧ポンプ52によって加圧した燃料が供給される。
【0021】
制御装置4は、エンジン10の運転状態を検出するために、各所に配置されたセンサに接続されている。センサとして、エアーフローメータ、空燃比センサ、圧力センサ、クランク角センサ41、冷却水温センサ42、アクセル開度センサ43、速度計などが含まれる。エンジン回転数は、クランク角センサ41が出力する信号から算出されてもよいし、別途、回転計(タコメータ)を装備してもよい。また、制御装置4は、さらに、点火プラグ26、スロット弁、吸気通路インジェクタ31、筒内インジェクタ32、供給ポンプ51、高圧ポンプ52にも接続されている。
【0022】
この制御装置4は、エンジン10の運転状態に合わせて各気筒2の燃料の噴射モードを、吸気通路モード、吸気通路+筒内モード、筒内モード、のいずれかに切り換える。吸気通路モードでは、吸気通路インジェクタ31のみから燃料を噴射する。吸気通路+筒内モードでは、吸気通路インジェクタ31及び筒内インジェクタ32のそれぞれに燃料を分配して噴射する。吸気通路インジェクタ31及び筒内インジェクタ32に割り当てられる燃料の比率は、運転状態に応じて決定される。筒内モードでは、筒内インジェクタ32のみから燃料を噴射する。
【0023】
エンジン10の運転状態としてエンジン回転数及びエンジン負荷を条件とする場合の各噴射モードの領域を
図2に示す。
図2によれば、吸気通路モードは、エンジン回転数によらず、エンジン負荷が小さい領域に設定されている。筒内モードは、エンジン回転数が高く、かつエンジン負荷も高い領域に設定されている。吸気通路+筒内モードは、吸気通路モードと筒内モードの間の領域に設定される。吸気通路インジェクタ31と筒内インジェクタ32からそれぞれ噴射される燃料量は、条件に応じて数段階にあるいは無段階に変更される。
【0024】
制御装置4は、エンジン10の運転状態が噴射モードの各領域を超えて変化した場合、すべての気筒2の噴射モードを同時期に変更せず、複数ある気筒2を少なくとも2つの群に分け、1つの群の噴射モードを切り換える間、残りの群の噴射モードをそれまでの噴射モードに維持する。本実施形態では、エンジン10は、直列4気筒であって、#1の気筒2からクランクシャフトに沿って#2の気筒2、#3の気筒2、#4の気筒2の順に並んで設置されており、#1→#3→#4→#2の順に点火されるように各気筒2の各行程が設定されている。
【0025】
1つの群は、例えば
図3に示すように1つの気筒2を含むように構成されるか、または例えば
図4に示すように点火順序が連続しない2つの気筒2を含むように構成される。
図4において、#1と#4の気筒2、#3と#2の気筒2がそれぞれ1つの群である。また、制御装置4は、
図3及び
図4に示すように、1つの群の噴射モードの切り換えが完了した後、次の群の噴射モードの切り換えを開始するまで、一定の時間を空ける、すなわち、噴射モードの切り換えを行わない禁止行程(待機行程)XIGを設ける。
【0026】
この制御装置4は、吸気通路モードから吸気通路+筒内モードに噴射モードを切り換える場合、
図3に示すように、各群に含まれる気筒2を1つとし、各群の噴射モードを順番に切り換える。
図3に示された一例では、点火順序に従って、#1→#3→#4→#2の順に噴射モードを切り換えている。また、吸気通路+筒内モードから吸気通路モードに噴射モードを切り換える場合も同様に、各群に含まれる気筒2を1つとし、点火順序に従って噴射モードを順番に切り換える。
【0027】
噴射モードを切り換える気筒2の順番は、点火順序にしたがっていなくてもよく、すべての気筒2が順番に切り換えられれば、噴射モードの切り換えが必要となった時点で最もタイミングの良い気筒から、ランダムに噴射モードが切り換えられてもよい。噴射モードを切り換える際は、テーリング制御によって、吸気通路モードから吸気通路+筒内モードへ徐々に移行する。吸気通路+筒内モードから吸気通路モードに切換えられる場合も同様である。
【0028】
制御装置4は、
吸気通路+筒内モードから筒内モードに噴射モードを切り換える場合、
図4に示すように、各群に含まれる気筒2を点火順序が連続しない2つの気筒2とし、各群の噴射モードを順番に切り換える。
図4に示された一例では、#1と#4の気筒2が同時期に筒内モードから吸気通路
+筒内モードへ切り換えられ、その後、禁止行程XIGを経てから、#3と#2の気筒2の噴射モードを同時期に切り換えている。
【0029】
以上のように機能する制御装置4の燃料噴射制御における噴射モードの切り換えについて、
図5に示すフローチャートを基に以下に説明する。
図5に示すように、制御装置4は、現在の噴射モードが何であるか確認するために、吸気通路モードであるか判断(S1)し、違う場合は吸気通路+筒内モードであるか判断(S2)し、さらに違う場合は筒内モードであると判断(S3)する。吸気通路モードである場合、吸気通路+筒内モードに切換えるかエンジン回転数、エンジン負荷、冷却水温度などの運転条件(S4)を基に判断(S5)する。切り換える必要が無い場合は、制御装置4は、そのままの噴射モードを維持し噴射モード切り換え制御を終了する。
【0030】
S5の判断の結果、燃料噴射モードを切り換える必要がある場合、
図3に示したように、#1の気筒2から順番に噴射モードを吸気通路モードから吸気通路+筒内モードへ切り換え(S6)る。#1の気筒2の噴射モードが吸気通路モードから吸気通路+筒内モードに切り換わるまで、他の気筒2、この場合は、#3、#4、#2の気筒2の噴射モードは、吸気通路モードに維持されている。#1の気筒2の噴射モードが吸気通路+筒内モードに切り換わると、次に#3の気筒2の噴射モードを吸気通路モードから吸気通路+筒内モードに切り換える前に、いずれの気筒2も噴射モードを切り換えない禁止行程XIG(S7)を一定時間設ける。禁止行程XIG(S7)が完了すると、#3の気筒2の噴射モードを吸気通路モードから吸気通路+筒内モードに切り換え(S8)る。#3の気筒2の噴射モードが切り換わるまで、他の気筒2、この場合は、#1、#4、#2の気筒2の噴射モードは、#3の気筒2の噴射モードを切り換える前のまま維持される。つまり#1の気筒2は、吸気通路+筒内モード、#4と#2の気筒2は、吸気通路モードに保持される。
【0031】
#3の気筒2の噴射モードが切り換わると、#1の気筒2の噴射モードを切り換えた後と同様に禁止行程XIG(S9)が設けられ、#4の気筒2の噴射モードの切り換え(S10)、禁止行程XIG(S11)、#2の気筒2の噴射モードの切り換え(S12)という具合に、各気筒2の噴射モードを切り換える行程(S6とS8、S8とS10、S10とS12)の間にそれぞれ禁止行程XIG(S7、S9、S11)を設けている。
【0032】
S2において、吸気通路+筒内モードであると判定された場合、吸気通路モードに切り換えるかエンジン回転数、エンジン負荷、冷却水温度などの運転条件(S13)を基に判断(S14)し、切り換える必要がある場合は、S6〜S12と同様に#1の気筒2から点火順序に従って、禁止行程XIGを間に挟みながら、#3、#4、#2の気筒2を順番に吸気通路+筒内モードから吸気通路モードに切り換え(S15〜S21)る。
【0033】
S14において、吸気通路+筒内モードから吸気通路モードに切り換えない判断がされた場合、さらに吸気通路+筒内モードから筒内モードに切換えるか判断(S22)される。S22において筒内モードに切り換える判断がされると、
図4に示したように、点火順序が連続しない2つの気筒2、この場合、#1と#4の気筒2の噴射モードを吸気通路+筒内モードから筒内モードへ同時期に切り換え(S23)る。そして、噴射モードを切り換えない禁止行程XIG(S24)を間に挟んで、残りの気筒である#3と#2の気筒2の噴射モードを吸気通路+筒内モードから筒内モードへ同時期に切り換え(S25)る。S2において吸気通路+筒内モードであると判断されたのち、S14で吸気通路モードに切り換えないし、S22で筒内モードにも切り換えないと判断された場合、制御装置4は、吸気通路+筒内モードに噴射モードをそのまま維持し、噴射モード切り換え制御を終了する。
【0034】
また、筒内モードであるS3と判定された場合、吸気通路+筒内モードに切り換えるかエンジン回転数、エンジン負荷、冷却水温度等の運転条件(S26)を基に判断(S27)する。噴射モードを切り換える必要があると判断された場合、S23〜S25と同様に#1と#4の気筒2の噴射モードを筒内モードから吸気通路+筒内モードに切り換え(S28)、禁止行程XIG(S29)を間に挟んで、#3と#2の気筒2の噴射モードを筒内モードから吸気通路+筒内モードに切り換え(S30)る。S27において噴射モードを筒内モードから切り換えないと判断された場合は、筒内モードを維持したまま噴射モード切り換え制御を終了する。
【0035】
本実施形態ではエンジン10が直列4気筒であり、吸気通路モードから吸気通路+筒内モードへまたはその逆へ噴射モードを切り換える場合、1つの群に含まれる気筒2の数を1つとし、吸気通路+筒内モードから筒内モードへまたはその逆へ噴射モードを切り換える場合、1つの群に含まれる気筒2の数を2つとしている。吸気通路インジェクタ及び筒内インジェクタの最小駆動時間や排気通路24に設置される触媒242の浄化処理能力に応じて、1つの群に含まれる気筒の数は適宜変更される。例えば、1つの群に2つ以上の気筒を含んだ複数の群に分け、吸気通路モードから吸気通路+筒内モードに切り換えるまたはその逆へ噴射モードを切り換えてもよいし、1つの群に1つの気筒を含み、吸気通路+筒内モードから筒内モードへまたはその逆へ噴射モードを切り換えてもよい。
【0036】
また、直列6気筒、V型6気筒、V型8気筒など気筒数が多いエンジンの場合には、噴射モードの切り換えを同時に実施しない群の数を増やしてもよいし、1つの群に含まれる気筒の数を増やしてもよい。その場合、好ましくは、点火順序が連続しない気筒どうしを1つの群に含むものとする。
【符号の説明】
【0037】
10…エンジン、2…気筒、4…制御装置、23A…吸気ポート、31…吸気通路インジェクタ、32…筒内インジェクタ、XIG…禁止行程。