(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の液晶配向剤は、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選ばれる少なくとも一種の重合体(A)と、特定の窒素含有化合物とを含む。以下に、本発明の液晶配向剤に含まれる各成分、及び必要に応じて任意に配合されるその他の成分について説明する。
【0014】
<重合体(A):ポリアミック酸>
本発明における重合体(A)としてのポリアミック酸は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させることにより得ることができる。
【0015】
[テトラカルボン酸二無水物]
本発明におけるポリアミック酸を合成するのに用いるテトラカルボン酸二無水物としては、例えば脂肪族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、芳香族テトラカルボン酸二無水物などを挙げることができる。これらの具体例としては、
脂肪族テトラカルボン酸二無水物として、例えば1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物などを;
脂環式テトラカルボン酸二無水物として、例えば1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオン−6−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシメチルノルボルナン−2:3,5:6−二無水物、2,4,6,8−テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン−2:4,6:8−二無水物、4,9−ジオキサトリシクロ[5.3.1.0
2,6]ウンデカン−3,5,8,10−テトラオン、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物などを;
芳香族テトラカルボン酸二無水物として、例えばピロメリット酸二無水物などを;それぞれ挙げることができるほか、特開2010−97188号公報に記載のテトラカルボン酸二無水物を用いることができる。なお、上記テトラカルボン酸二無水物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0016】
合成に使用するテトラカルボン酸二無水物としては、透明性及び溶剤への溶解性などの観点から、脂環式テトラカルボン酸二無水物を含むものであることが好ましい。また、脂環式テトラカルボン酸二無水物の中でも、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、2,4,6,8−テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン−2:4,6:8−二無水物、及び1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物よりなる群から選択される少なくとも一種を含むものであることが好ましく、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、2,4,6,8−テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン−2:4,6:8−二無水物及び1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物よりなる群から選ばれる少なくとも一種(以下、特定テトラカルボン酸二無水物ともいう。)を含むものであることがより好ましい。
【0017】
合成に使用するテトラカルボン酸二無水物として上記の特定テトラカルボン酸二無水物を含む場合、それら化合物の合計の含有量は、ポリアミック酸の合成に使用するテトラカルボン酸二無水物の全量に対して、10モル%以上であることが好ましく、20〜100モル%であることがより好ましく、50〜100モル%であることが更に好ましい。
【0018】
[ジアミン]
本発明におけるポリアミック酸を合成するために使用するジアミンとしては、例えば脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、芳香族ジアミン、ジアミノオルガノシロキサンなどを挙げることができる。これらジアミンの具体例としては、脂肪族ジアミンとして、例えばm−キシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどを;
脂環式ジアミンとして、例えば1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなどを;
【0019】
芳香族ジアミンとして、例えばp−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、1,5−ジアミノナフタレン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、2,7−ジアミノフルオレン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,6−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリミジン、3,6−ジアミノアクリジン、3,6−ジアミノカルバゾール、N−メチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−エチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−フェニル−3,6−ジアミノカルバゾール、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−ベンジジン、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−N,N’−ジメチルベンジジン、1,4−ビス−(4−アミノフェニル)−ピペラジン、1−(4−アミノフェニル)−2,3−ジヒドロ−1,3,3−トリメチル−1H−インデン−5−アミン、1−(4−アミノフェニル)−2,3−ジヒドロ−1,3,3−トリメチル−1H−インデン−6−アミン、3,5−ジアミノ安息香酸、コレスタニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸コレスタニル、3,5−ジアミノ安息香酸コレステニル、3,5−ジアミノ安息香酸ラノスタニル、3,6−ビス(4−アミノベンゾイルオキシ)コレスタン、3,6−ビス(4−アミノフェノキシ)コレスタン、4−(4’−トリフルオロメトキシベンゾイロキシ)シクロヘキシル−3,5−ジアミノベンゾエート、4−(4’−トリフルオロメチルベンゾイロキシ)シクロヘキシル−3,5−ジアミノベンゾエート、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−ブチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−ヘプチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェノキシ)メチル)フェニル)−4−ヘプチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−(4−ヘプチルシクロヘキシル)シクロヘキサン、2,4−ジアミノ−N,N―ジアリルアニリン、4−アミノベンジルアミン、3−アミノベンジルアミン、1,3−ジアミノ−4−オクタデシルオキシベンゼン、3−(3,5−ジアミノベンゾイルオキシ)コレスタン、3,6−ビス(4−アミノベンゾイルオキシ)コレスタン、及び下記式(D−1)
【化2】
(式(D−1)中、X
I及びX
IIは、それぞれ独立に、単結合、−O−、−COO−又は−OCO−であり、R
I及びR
IIは、それぞれ独立に、炭素数1〜3のアルカンジイル基であり、aは0又は1であり、bは0〜2の整数であり、cは1〜20の整数であり、nは0又は1である。但し、a及びbが同時に0になることはない。)
で表される化合物などを;
【0020】
ジアミノオルガノシロキサンとして、例えば、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−テトラメチルジシロキサンなどを、それぞれ挙げることができるほか、特開2010−97188号公報に記載のジアミンを用いることができる。
【0021】
上記式(D−1)における「−X
I−(R
I−X
II)
n−」で表される2価の基としては、炭素数1〜3のアルカンジイル基、*−O−、*−COO−又は*−O−C
2H
4−O−(ただし、「*」を付した結合手がジアミノフェニル基と結合する。)であることが好ましい。
基「−C
cH
2c+1」の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基などを挙げることができる。ジアミノフェニル基における2つのアミノ基は、他の基に対して2,4−位又は3,5−位にあることが好ましい。
【0022】
上記式(D−1)で表される化合物の具体例としては、例えば下記式(D−1−1)〜(D−1−5)のそれぞれで表される化合物などを挙げることができる。
【化3】
なお、これらのジアミンは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0023】
本発明におけるポリアミック酸を合成する際に用いるジアミンは、芳香族ジアミンを、全ジアミンに対して30モル%以上含むものであることが好ましく、50モル%以上含むものであることがより好ましく、80モル%以上含むものであることが更に好ましい。
【0024】
[分子量調節剤]
ポリアミック酸を合成するに際して、上記の如きテトラカルボン酸二無水物及びジアミンとともに、適当な分子量調節剤を用いて末端修飾型の重合体を合成することとしてもよい。かかる末端修飾型の重合体とすることにより、本発明の効果を損なうことなく液晶配向剤の塗布性(印刷性)をさらに改善することができる。
【0025】
分子量調節剤としては、例えば酸一無水物、モノアミン化合物、モノイソシアネート化合物などを挙げることができる。これらの具体例としては、酸一無水物として、例えば無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸、n−デシルサクシニック酸無水物、n−ドデシルサクシニック酸無水物、n−テトラデシルサクシニック酸無水物、n−ヘキサデシルサクシニック酸無水物などを;モノアミン化合物として、例えばアニリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ドデシルアミン、n−オクタデシルアミンなどを;モノイソシアネート化合物として、例えばフェニルイソシアネート、ナフチルイソシアネートなどを;それぞれ挙げることができる。
分子量調節剤の使用割合は、使用するテトラカルボン酸二無水物及びジアミンの合計100重量部に対して、20重量部以下とすることが好ましく、10重量部以下とすることがより好ましい。
【0026】
<ポリアミック酸の合成>
本発明におけるポリアミック酸の合成反応に供されるテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの使用割合は、ジアミンのアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.2〜2当量となる割合が好ましく、0.3〜1.2当量となる割合がより好ましい。また、ポリアミック酸の合成反応は、好ましくは有機溶媒中において行われる。このときの反応温度は−20℃〜150℃が好ましく、0〜100℃がより好ましい。また、反応時間は0.1〜24時間が好ましく、0.5〜12時間がより好ましい。
【0027】
ここで、反応に使用する有機溶媒としては、例えば非プロトン性極性溶媒、フェノール系溶媒、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、ハロゲン化炭化水素、炭化水素などが挙げられる。
これら有機溶媒の具体例としては、非プロトン性極性溶媒として、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−エチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミドなどを;フェノール系溶媒として、例えば、フェノール、m−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノールなどを;
アルコールとして、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテルなどを;ケトンとして、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどを;エステルとして、例えば、乳酸エチル、乳酸ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ−ト、エチルエトキシプロピオネ−ト、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチル、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレートなどを;
エーテルとして、例えば、ジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−i−プロピルエーテル、エチレングリコール−n−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、テトラヒドロフラン、ジイソペンチルエーテルなどを;
ハロゲン化炭化水素として、例えば、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,4−ジクロロブタン、トリクロロエタン、クロルベンゼン、o−ジクロルベンゼンなどを;炭化水素として、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどを;それぞれ挙げることができる。
【0028】
これらの有機溶媒のうち、非プロトン性極性溶媒及びフェノール系溶媒よりなる群(第一群の有機溶媒)から選択される一種以上、又は、第一群の有機溶媒から選択される一種以上と、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、ハロゲン化炭化水素及び炭化水素よりなる群(第二群の有機溶媒)から選択される一種以上との混合物を使用することが好ましい。後者の場合、第二群の有機溶媒の使用割合は、第一群の有機溶媒と第二群の有機溶媒との合計量に対して、好ましくは50重量%以下であり、より好ましくは40重量%以下であり、更に好ましくは30重量%以下である。
有機溶媒の使用量(a)は、テトラカルボン酸二無水物及びジアミンの合計量(b)が、反応溶液の全量(a+b)に対して0.1〜50重量%になるような量とすることが好ましい。
【0029】
以上のようにして、ポリアミック酸を溶解してなる反応溶液が得られる。この反応溶液はそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸を単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、又は単離したポリアミック酸を精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。ポリアミック酸を脱水閉環してポリイミドとする場合には、上記反応溶液をそのまま脱水閉環反応に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸を単離したうえで脱水閉環反応に供してもよく、又は単離したポリアミック酸を精製したうえで脱水閉環反応に供してもよい。ポリアミック酸の単離及び精製は公知の方法に従って行うことができる。
【0030】
<重合体(A):ポリアミック酸エステル>
本発明における重合体(A)としてのポリアミック酸エステルは、例えば、[I]上記合成反応により得られたポリアミック酸を、水酸基含有化合物又はエーテル化合物を用いてエステル化することにより合成する方法、[II]テトラカルボン酸ジエステルジクロリドとジアミンとを反応させる方法、[III]テトラカルボン酸ジエステルとジアミンとを反応させる方法、によって得ることができる。なお、ポリアミック酸エステルは、アミック酸エステル構造のみを有していてもよく、アミック酸構造とアミック酸エステル構造とが併存する部分エステル化物であってもよい。
【0031】
<重合体(A):ポリイミド>
本発明の液晶配向剤に含有される重合体(A)としてのポリイミドは、上記の如くして合成されたポリアミック酸を脱水閉環してイミド化することにより得ることができる。
【0032】
上記ポリイミドは、その前駆体であるポリアミック酸が有していたアミック酸構造のすべてを脱水閉環した完全イミド化物であってもよく、アミック酸構造の一部のみを脱水閉環し、アミック酸構造とイミド環構造とが併存する部分イミド化物であってもよい。本発明におけるポリイミドは、電圧保持率を高くできる点において、そのイミド化率が30%以上であることが好ましく、40〜99%であることがより好ましく、50〜99%であることが更に好ましい。このイミド化率は、ポリイミドのアミック酸構造の数とイミド環構造の数との合計に対するイミド環構造の数の占める割合を百分率で表したものである。ここで、イミド環の一部がイソイミド環であってもよい。
【0033】
ポリアミック酸の脱水閉環は、好ましくはポリアミック酸を加熱する方法により、又はポリアミック酸を有機溶媒に溶解し、この溶液中に脱水剤及び脱水閉環触媒を添加し必要に応じて加熱する方法により行われる。このうち、後者の方法によることが好ましい。
【0034】
ポリアミック酸の溶液中に脱水剤及び脱水閉環触媒を添加してイミド化する方法において、脱水剤としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸などの酸無水物を用いることができる。脱水剤の使用量は、ポリアミック酸のアミック酸構造の1モルに対して0.01〜20モルとすることが好ましい。脱水閉環触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミン等の3級アミンを用いることができる。脱水閉環触媒の使用量は、使用する脱水剤1モルに対して0.01〜10モルとすることが好ましい。脱水閉環反応に用いられる有機溶媒としては、ポリアミック酸の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒を挙げることができる。脱水閉環反応の反応温度は、好ましくは0〜180℃であり、より好ましくは10〜150℃である。反応時間は、好ましくは1.0〜120時間であり、より好ましくは2.0〜30時間である。
【0035】
このようにしてポリイミドを含有する反応溶液が得られる。この反応溶液は、そのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液から脱水剤及び脱水閉環触媒を除いたうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、ポリイミドを単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、又は単離したポリイミドを精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。これらの精製操作は公知の方法に従って行うことができる。
【0036】
<重合体(A)の溶液粘度及び重量平均分子量>
以上のようにして得られるポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドは、これを濃度10重量%の溶液としたときに、10〜800mPa・sの溶液粘度を持つものであることが好ましく、15〜500mPa・sの溶液粘度を持つものであることがより好ましい。なお、上記重合体の溶液粘度(mPa・s)は、当該重合体の良溶媒(例えばγ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドンなど)を用いて調製した濃度10重量%の重合体溶液につき、E型回転粘度計を用いて25℃において測定した値である。また、本発明の液晶配向剤に含有させるポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドについて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、500〜100,000であることが好ましく、1,000〜50,000であることがより好ましい。
【0037】
<化合物(B)>
本発明の液晶配向剤に含有される化合物(B)は、窒素含有芳香族複素環を有する化合物であり、具体的には上記式(1)で表される。
【0038】
上記式(1)におけるR
1は、水素原子であるか又は、鎖状炭化水素基若しくは脂環式炭化水素基を有し、かつR
2及びR
3が結合する窒素原子に対して鎖状炭化水素基若しくは脂環式炭化水素基で結合する1価の有機基である。このような1価の有機基としては、例えば、1価の鎖状炭化水素基及び1価の脂環式炭化水素基の他、1価の鎖状炭化水素基又は1価の脂環式炭化水素基における炭素−炭素結合間に、−O−、−NH−、−CO−O−、−CO−NH−、−CO−、−S−、−S(O)
2−、−Si(CH
3)
2−、−O−Si(CH
3)
2−、−O−Si(CH
3)
2−O−、フェニレン基等の芳香族炭化水素基、ピリジニレン基等の複素環基などを有する1価の基;1価の鎖状炭化水素基又は1価の脂環式炭化水素基における少なくとも1つの水素原子が、フッ素原子や塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、フェニル基等の芳香族炭化水素基、水酸基、ハロゲン化アルキル基等で置換された1価の基;などが挙げられる。
【0039】
なお、本明細書における鎖状炭化水素基とは、主鎖に環状構造を含まず、鎖状構造のみで構成された飽和炭化水素基及び不飽和炭化水素基を意味する。但し、直鎖状炭化水素基及び分岐状炭化水素基の双方を含む。また、脂環式炭化水素基とは、環構造としては脂環式炭化水素の構造のみを含み、芳香環構造を含まない炭化水素基を意味する。但し、脂環式炭化水素の構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造を有するものも含む。
【0040】
R
1における1価の鎖状炭化水素基の具体例としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基、イコシル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、エチニル基、プロピニル基などが挙げられる。また、1価の脂環式炭化水素基の具体例としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロペンチルメチル基、シクロへキシル基、シクロへキシルメチル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロウンデシル基、シクロドデシル基、シクロトリデシル基、シクロテトラデシル基、シクロペンタデシル基、シクロオクタデシル基、シクロイコシル基、ビシクロへキシリル基、デカヒドロナフチル基、ノルボルニル基、メチルノルボルニル基、アダマンチル基などが挙げられる。
R
1における1価の有機基としては、炭素数1〜20であることが好ましく、炭素数1〜15であることがより好ましく、炭素数1〜10であることが更に好ましい。
【0041】
上記式(1)におけるR
2及びR
3は、鎖状炭化水素基又は脂環式炭化水素基を有し、かつR
1が結合する窒素原子に対して鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基又は*−CO−R
4−(但し、R
4は2価の鎖状炭化水素基又は脂環式炭化水素基であり、*はR
1が結合する窒素原子との結合手を示す。)で結合する2価の有機基である。R
2及びR
3における2価の有機基としては、2価の鎖状炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基、*−CO−R
4−等が挙げられる。また、当該2価の有機基としては、2価の鎖状炭化水素基又は2価の脂環式炭化水素基における炭素−炭素結合間に、−O−、−NH−、−CO−O−、−CO−NH−、−CO−、−S−、−S(O)
2−、−Si(CH
3)
2−、−O−Si(CH
3)
2−、−O−Si(CH
3)
2−O−、フェニレン基等の芳香族炭化水素基、ピリジニレン基等の複素環基などを有する2価の基;2価の鎖状炭化水素基又は2価の脂環式炭化水素基における少なくとも1つの水素原子が、フッ素原子や塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、フェニル基等の芳香族炭化水素基、水酸基、ハロゲン化アルキル基等で置換された2価の基;などであってもよい。なお、分子内のR
2とR
3とは、互いに同じでも異なっていてもよい。
【0042】
具体的には、R
2、R
3及びR
4における2価の鎖状炭化水素基として、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、オクタデシレン基、イコシレン基、ビニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基、ペンテニレン基、エチニレン基、プロピニレン基などを;2価の脂環式炭化水素基として、例えばシクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基、シクロヘキセニレン基、シクロヘプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基、シクロウンデシレン基、シクロドデシレン基、シクロトリデシレン基、シクロテトラデシレン基、シクロペンタデシレン基、シクロオクタデシレン基、シクロイコシレン基、ビシクロへキシレン基、ノルボルニレン基、アダマンチレン基などを;それぞれ挙げることができる。
R
2及びR
3における2価の有機基としては、炭素数1〜20であることが好ましく、炭素数1〜15であることがより好ましく、炭素数1〜10であることが更に好ましく、炭素数1〜5であることが特に好ましい。なお、式(1)中において、複数のR
2が存在する場合、それらは互いに同じでも異なっていてもよく、複数のR
3が存在する場合、それらは互いに同じでも異なっていてもよい。
【0043】
上記式(1)におけるX
1は窒素含有芳香族複素環であり、当該窒素含有芳香族複素環がR
2を介して窒素原子(R
1が結合する窒素原子)に結合している。窒素含有芳香族複素環としては、環骨格中に窒素原子を1つ以上含む芳香環であればよい。したがって、環骨格中には、ヘテロ原子として窒素原子のみを含んでいてもよいし、窒素原子と、窒素原子以外のヘテロ原子(酸素原子、硫黄原子など)とを含んでいてもよい。X
1における窒素含有芳香族複素環の具体例としては、例えばピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、インドール環、ベンゾイミダゾール環、プリン環、キノリン環、イソキノリン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、フタラジン環、トリアジン環、アゼピン環、ジアゼピン環、アクリジン環、フェナジン環、フェナントロリン環、オキサゾール環、チアゾール環、カルバゾール環、チアジアゾール環、ベンゾチアゾール環、フェノチアジン環、オキサジアゾール環等が挙げられる。また、X
1は、上記例示した環を構成する炭素原子に置換基が導入されたものであってもよい。当該置換基としては、例えばハロゲン原子、炭素数1〜20の1価の有機基等が挙げられる。なお、当該1価の有機基の具体例は、上記R
1の1価の有機基として例示した基が挙げられる。
【0044】
X
1としては、これらの中でも、環骨格がピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、ベンゾイミダゾール環、ナフチリジン環、フタラジン環、キノキサリン環、トリアジン環、アゼピン環、ジアゼピン環又はフェナジン環であることが好ましく、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環又はピラジン環であることがより好ましい。
なお、窒素含有芳香族複素環におけるR
2との結合位置は特に限定しない。例えばX
1としての窒素含有芳香族複素環が5員環である場合、1−位、2−位又は3−位とすることができ、6員環である場合、1−位、2−位、3−位又は4−位とすることができる。nが2又は3の場合、複数のX
1は独立して上記定義を有する。
【0045】
上記式(1)におけるX
2は、環状エーテル基又は重合性不飽和基である。環状エーテル基としては、エポキシ基(オキシラニル基)又はオキセタニル基であることが好ましく、エポキシ基であることがより好ましい。また、重合性不飽和基としては、炭素−炭素二重結合を有していればよく、具体的には、アクリロキシ基、メタクリロキシ基、ビニル基、ビニロキシ基、マレイミド基又はスチリル基であることが好ましい。
【0046】
化合物(B)の好ましい具体例としては、下記式(1−1)で表される化合物、下記式(1−2)で表される化合物及び下記式(1−3)で表される化合物等が挙げられる。
【化4】
(式(1−1)中、R
5は、2価の鎖状炭化水素基又は脂環式炭化水素基であり、tは0又は1である。R
1及びX
1は、それぞれ上記式(1)と同義である。)
【化5】
(式(1−2)中、R
6及びR
7は、それぞれ独立に2価の鎖状炭化水素基又は脂環式炭化水素基であり、rは1又は2である。X
1及びX
2は、それぞれ上記式(1)と同義である。)
【化6】
(式(1−3)中、R
8は、−CO−に対して鎖状炭化水素基又は脂環式炭化水素基で結合する2価の有機基である。R
2及びX
1は、それぞれ上記式(1)と同義である。)
【0047】
上記式(1−1)で表される化合物について、R
1は、水素原子、炭素数1〜10の1価の鎖状炭化水素基又は炭素数3〜10の1価の脂環式炭化水素基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1〜5の1価の鎖状炭化水素基であることがより好ましく、水素原子であることが特に好ましい。R
5は、炭素数1〜10の2価の鎖状炭化水素基又は炭素数3〜10の2価の脂環式炭化水素基であることが好ましく、炭素数1〜10の2価の鎖状炭化水素基であることがより好ましく、炭素数1〜5の2価の鎖状炭化水素基であることが特に好ましい。また、X
1の好ましい具体例は、上記式(1)のX
1で挙げた好ましい具体例の説明を適用することができる。
tは0又は1であり、過酷な使用環境下での劣化の程度がより少ない液晶配向膜を得ることができる点において、0であることが好ましい。
【0048】
一方、上記式(1−2)で表される化合物について、R
6及びR
7としては、炭素数1〜10の2価の鎖状炭化水素基又は炭素数3〜10の2価の脂環式炭化水素基であることが好ましく、炭素数1〜10の鎖状炭化水素基であることがより好ましく、炭素数1〜5の鎖状炭化水素基であることが特に好ましい。なお、分子内におけるR
6及びR
7は、互いに同じでも異なっていてもよい。X
1の好ましい具体例としては、上記式(1)のX
1で挙げた好ましい具体例の説明を適用することができる。また、X
2は、エポキシ基、アクリロキシ基、メタクリロキシ基、ビニル基、ビニロキシ基、マレイミド基又はスチリル基であることが好ましく、エポキシ基であることが特に好ましい。
rは1又は2であり、2であることが好ましい。
【0049】
また、上記式(1−3)で表される化合物について、R
8における2価の有機基としては、上記式(1)におけるR
2及びR
3の具体例として例示した基を挙げることができる。好ましくは炭素数1〜19であり、更に好ましくは炭素数1〜9である。R
2は、炭素数1〜10の2価の鎖状炭化水素基又は炭素数3〜10の2価の脂環式炭化水素基であることが好ましく、炭素数1〜10の2価の鎖状炭化水素基であることがより好ましく、炭素数1〜5の2価の鎖状炭化水素基であることが特に好ましい。X
1の好ましい具体例は、上記式(1)のX
1で挙げた好ましい具体例の説明を適用することができる。なお、式(1−3)中の複数のX
1は、互いに同じでも異なっていてもよい。
【0050】
上記化合物(B)としては、過酷な使用環境下でも劣化の程度が極力少ない液晶配向膜を得ることができる点で、上記式(1−1)で表される化合物、上記式(1−2)で表される化合物及び上記式(1−3)で表される化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。これらの中でも、上記式(1−1)で表される化合物であることが特に好ましい。
【0051】
本発明の液晶配向剤に含有される化合物(B)の具体例としては、例えば下記式(ma−1)〜(ma−39)のそれぞれで表される化合物等を挙げることができる。なお、下記式のうち、式(ma−1)〜(ma−19)が上記式(1−1)で表される化合物の具体例に相当し、式(ma−26)〜(ma−39)が上記式(1−2)で表される化合物の具体例に相当し、式(ma−20)〜(ma−25)が上記式(1−3)で表される化合物に相当する。上記化合物(B)としては、これらを1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【化7】
【化8】
【化9】
【0052】
上記化合物(B)の配合割合は、液晶配向剤中に含有される重合体の合計100重量部に対して、0.1〜30重量部であることが好ましい。化合物(B)の配合割合を0.1重量部以上とすることにより、過酷な使用環境下でも電圧保持率を維持できる信頼性の高い液晶配向膜が得られるといった効果を好適に得ることができ、30重量部以下とすることにより、液晶配向膜の機械的強度や電気的特性を損なわないようにすることができる。より好ましくは0.5〜25重量部であり、更に好ましくは1.0〜20重量部である。
【0053】
<その他の成分>
本発明の液晶配向剤は、必要に応じてその他の成分を含有していてもよい。かかるその他の成分としては、例えば、上記重合体(A)以外のその他の重合体、分子内に少なくとも一つのエポキシ基を有する化合物(但し、上記化合物(B)に該当する化合物を除く。以下、「エポキシ基含有化合物」という。)、官能性シラン化合物等を挙げることができる。
【0054】
<その他の重合体>
上記その他の重合体は、溶液特性や電気特性の改善のために使用することができる。かかるその他の重合体としては、例えばポリオルガノシロキサン、ポリエステル、ポリアミド、セルロース誘導体、ポリアセタール、ポリスチレン誘導体、ポリ(スチレン−フェニルマレイミド)誘導体、ポリ(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
その他の重合体を液晶配向剤に添加する場合、その配合割合は、液晶配向剤中に含まれる重合体の合計100重量部に対して、50重量部以下であることが好ましく、0.1〜40重量部であることがより好ましく、0.1〜30重量部であることが更に好ましい。
【0055】
<エポキシ基含有化合物>
エポキシ基含有化合物は、液晶配向膜における基板表面との接着性や電気特性を向上させるために使用することができる。このようなエポキシ基含有化合物としては、例えばエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、2,2−ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N−ジグリシジル−ベンジルアミン、N,N−ジグリシジル−アミノメチルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−シクロヘキシルアミン等を好ましいものとして挙げることができる。その他、エポキシ基含有化合物の例としては、国際公開第2009/096598号記載のエポキシ基含有ポリオルガノシロキサンを用いることができる。
これらエポキシ化合物を液晶配向剤に添加する場合、その配合割合は、液晶配向剤中に含まれる重合体の合計100重量部に対して、40重量部以下が好ましく、0.1〜30重量部がより好ましい。
【0056】
<官能性シラン化合物>
上記官能性シラン化合物は、液晶配向剤の印刷性の向上を目的として使用することができる。このような官能性シラン化合物としては、例えば3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノナン酸メチル、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、2−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
これら官能性シラン化合物を液晶配向剤に添加する場合、その配合割合は、液晶配向剤中に含まれる重合体の合計100重量部に対して、2重量部以下が好ましく、0.02〜0.2重量部がより好ましい。
なお、その他の成分としては、上記のほか、分子内に少なくとも一つのオキセタニル基を有する化合物や酸化防止剤などを使用することができる。
【0057】
<溶剤>
本発明の液晶配向剤は、上記重合体(A)及び化合物(B)、並びに必要に応じて任意に配合されるその他の成分が、好ましくは有機溶媒中に溶解されて構成される。
ここで、本発明の液晶配向剤の調製に使用される溶剤としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、γ−ブチロラクタム、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、乳酸ブチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ−ト、エチルエトキシプロピオネ−ト、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−i−プロピルエーテル、エチレングリコール−n−ブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジイソブチルケトン、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレート、ジイソペンチルエーテル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等を挙げることができる。これらは、1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0058】
本発明の液晶配向剤における固形分濃度(液晶配向剤の溶媒以外の成分の合計重量が液晶配向剤の全重量に占める割合)は、粘性、揮発性などを考慮して適宜に選択されるが、好ましくは1〜10重量%の範囲である。すなわち、本発明の液晶配向剤は、後述するように基板表面に塗布され、好ましくは加熱されることにより、液晶配向膜である塗膜又は液晶配向膜となる塗膜が形成されるが、このとき、固形分濃度が1重量%未満である場合には、この塗膜の膜厚が過小となって良好な液晶配向膜を得ることができない。一方、固形分濃度が10重量%を超える場合には、塗膜の膜厚が過大となって良好な液晶配向膜を得ることができず、また、液晶配向剤の粘性が増大して塗布特性が劣るものとなる。
【0059】
特に好ましい固形分濃度の範囲は、基板に液晶配向剤を塗布する際に用いる方法によって異なる。例えばスピンナー法による場合には、固形分濃度1.5〜4.5重量%の範囲が特に好ましい。印刷法による場合には、固形分濃度を3〜9重量%の範囲とし、それにより溶液粘度を12〜50mPa・sの範囲とすることが特に好ましい。インクジェット法による場合には、固形分濃度を1〜5重量%の範囲とし、それにより、溶液粘度を3〜15mPa・sの範囲とすることが特に好ましい。
本発明の液晶配向剤を調製する際の温度は、好ましくは10〜100℃であり、より好ましくは20〜80℃である。なお、重合体(A)と化合物(B)とを混合する際には、重合体(A)が溶解された重合体溶液に化合物(B)を直接添加してもよいが、化合物(B)を適当な溶媒(例えば、上記重合体(A)を可溶な溶媒)に溶解させた後、その溶液と重合体溶液とを混合することが好ましい。
【0060】
<液晶配向膜及び液晶表示素子>
本発明の液晶配向膜は、上記のように調製された液晶配向剤により形成される。また、本発明の液晶表示素子は、本発明の液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜を具備する。本発明の液晶表示素子を適用する駆動モードは特に限定せず、TN型、STN型、IPS型、FFS型、VA型、MVA型、PSA型などの種々の駆動モードに適用することができる。
【0061】
本発明の液晶表示素子は、例えば以下の(1)〜(3)の工程により製造することができる。工程(1)は、所望の駆動モードによって使用基板が異なる。工程(2)及び(3)は各駆動モードに共通である。
【0062】
[工程(1):塗膜の形成]
先ず、基板上に本発明の液晶配向剤を塗布し、次いで塗布面を加熱することにより基板上に塗膜を形成する。
(1−1)TN型、STN型、VA型、MVA型又はPSA型の液晶表示素子を製造する場合、パターニングされた透明導電膜が設けられている基板二枚を一対として、それぞれの基板における透明性導電膜の形成面上に、本発明の液晶配向剤を、好ましくはオフセット印刷法、スピンコート法、ロールコーター法又はインクジェット印刷法によりそれぞれ塗布する。ここで、基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラスなどのガラス;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリ(脂環式オレフィン)などのプラスチックからなる透明基板を用いることができる。基板の一面に設けられる透明導電膜としては、酸化スズ(SnO
2)からなるNESA膜(米国PPG社登録商標)、酸化インジウム−酸化スズ(In
2O
3−SnO
2)からなるITO膜などを用いることができる。パターニングされた透明導電膜を得るには、例えばパターンなし透明導電膜を形成した後にフォト・エッチングによりパターンを形成する方法、透明導電膜を形成する際に所望のパターンを有するマスクを用いる方法などによることができる。液晶配向剤の塗布に際しては、基板表面及び透明導電膜と塗膜との接着性を更に良好にするために、基板表面のうち塗膜を形成する面に、官能性シラン化合物、官能性チタン化合物などを予め塗布する前処理を施しておいてもよい。
【0063】
液晶配向剤の塗布後、塗布した配向剤の液垂れ防止などの目的で、好ましくは予備加熱(プレベーク)が実施される。プレベーク温度は、好ましくは30〜200℃であり、より好ましくは40〜150℃であり、特に好ましくは40〜100℃である。プレベーク時間は好ましくは0.25〜10分であり、より好ましくは0.5〜5分である。その後、溶剤を完全に除去する目的で、また必要に応じて重合体に存在するアミック酸構造を熱イミド化することを目的として焼成(ポストベーク)工程が実施される。このときの焼成温度(ポストベーク温度)は、好ましくは80〜300℃であり、より好ましくは120〜250℃である。ポストベーク時間は、好ましくは5〜200分であり、より好ましくは10〜100分である。このようにして、形成される膜の膜厚は、好ましくは0.001〜1μmであり、より好ましくは0.005〜0.5μmである。
【0064】
(1−2)IPS型又はFFS型液晶表示素子を製造する場合、櫛歯型にパターニングされた透明導電膜又は金属膜からなる電極が設けられている基板の電極形成面と、電極が設けられていない対向基板の一面とに、本発明の液晶配向剤をそれぞれ塗布し、次いで各塗布面を加熱することにより塗膜を形成する。このとき使用される基板及び透明導電膜の材質、塗布方法、塗布後の加熱条件、透明導電膜又は金属膜のパターニング方法、基板の前処理、並びに形成される塗膜の好ましい膜厚については上記(1−1)と同様である。金属膜としては、例えばクロムなどの金属からなる膜を使用することができる。
【0065】
上記(1−1)及び(1−2)のいずれの場合も、基板上に液晶配向剤を塗布した後、有機溶媒を除去することによって配向膜となる塗膜が形成される。このとき、本発明の液晶配向剤に含有される重合体が、ポリアミック酸であるか、ポリアミック酸エステルであるか又はイミド環構造とアミック酸構造とを有するイミド化重合体である場合には、塗膜形成後に更に加熱することによって脱水閉環反応を進行させ、よりイミド化された塗膜としてもよい。
【0066】
[工程(2):ラビング処理]
TN型、STN型、IPS型又はFFS型の液晶表示素子を製造する場合、上記工程(1)で形成した塗膜を、例えばナイロン、レーヨン、コットンなどの繊維からなる布を巻き付けたロールで一定方向に擦るラビング処理を施す。これにより、液晶分子の配向能が塗膜に付与されて液晶配向膜となる。一方、VA型液晶表示素子を製造する場合、上記工程(1)で形成した塗膜をそのまま液晶配向膜として使用することができるが、該塗膜に対しラビング処理を施してもよい。なお、ラビング処理後の液晶配向膜に対して、更に、液晶配向膜の一部に紫外線を照射することによって液晶配向膜の一部の領域のプレチルト角を変化させる処理や、液晶配向膜表面の一部にレジスト膜を形成した上で先のラビング処理と異なる方向にラビング処理を行った後にレジスト膜を除去する処理を行い、液晶配向膜が領域ごとに異なる液晶配向能を持つようにしてもよい。この場合、得られる液晶表示素子の視界特性を改善することが可能である。
PSA型液晶表示素子を製造する場合には、上記工程(1)で形成した塗膜をそのまま用いて以下の工程(3)を実施してもよいが、液晶分子の倒れ込みを制御し、配向分割を簡易な方法で行う目的で弱いラビング処理を行ってもよい。
【0067】
[工程(3):液晶セルの構築]
(3−1)上記のようにして液晶配向膜が形成された基板を2枚準備し、対向配置した2枚の基板間に液晶を配置することにより液晶セルを製造する。液晶セルを製造するには、例えば以下の2つの方法が挙げられる。まず、第一の方法は、従来から知られている方法である。この方法では、先ずそれぞれの液晶配向膜が対向するように間隙(セルギャップ)を介して2枚の基板を対向配置し、2枚の基板の周辺部をシール剤を用いて貼り合わせ、基板表面及びシール剤により区画されたセルギャップ内に液晶を注入充填した後、注入孔を封止することにより液晶セルを製造する。また、第二の方法は、ODF(One Drop Fill)方式と呼ばれる手法である。この手法では、液晶配向膜を形成した2枚の基板のうちの一方の基板上の所定の場所に、例えば紫外光硬化性のシール材を塗布し、さらに液晶配向膜面上の所定の数箇所に液晶を滴下した後、液晶配向膜が対向するように他方の基板を貼り合わせる。そして、液晶を基板の全面に押し広げ、次いで基板の全面に紫外光を照射してシール剤を硬化することにより液晶セルを製造する。いずれの方法による場合でも、上記のようにして製造した液晶セルにつき、用いた液晶が等方相をとる温度まで更に加熱した後、室温まで徐冷することにより、液晶充填時の流動配向を除去することが望ましい。
【0068】
シール剤としては、例えば硬化剤及びスペーサーとしての酸化アルミニウム球を含有するエポキシ樹脂などを用いることができる。また、液晶としては、ネマチック液晶及びスメクチック液晶を挙げることができ、その中でもネマチック液晶が好ましく、例えばシッフベース系液晶、アゾキシ系液晶、ビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶、エステル系液晶、ターフェニル系液晶、ビフェニルシクロヘキサン系液晶、ピリミジン系液晶、ジオキサン系液晶、ビシクロオクタン系液晶、キュバン系液晶などを用いることができる。また、これらの液晶に、例えばコレスチルクロライド、コレステリルノナエート、コレステリルカーボネートなどのコレステリック液晶;商品名「C−15」、「CB−15」(メルク社製)として販売されているようなカイラル剤;p−デシロキシベンジリデン−p−アミノ−2−メチルブチルシンナメートなどの強誘電性液晶などを、添加して使用してもよい。
【0069】
(3−2)PSA型液晶表示素子を製造する場合には、液晶と共に光重合性化合物を注入又は滴下する点以外は上記(3−1)と同様にして液晶セルを構築する。その後、一対の基板の有する導電膜間に電圧を印加した状態で液晶セルに光照射する。ここで印加する電圧は、例えば5〜50Vの直流又は交流とすることができる。また、照射する光としては、例えば150〜800nmの波長の光を含む紫外線及び可視光線を用いることができるが、300〜400nmの波長の光を含む紫外線が好ましい。照射光の光源としては、例えば低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、重水素ランプ、メタルハライドランプ、アルゴン共鳴ランプ、キセノンランプ、エキシマレーザーなどを使用することができる。なお、上記の好ましい波長領域の紫外線は、光源を、例えばフィルター回折格子などと併用する手段などにより得ることができる。光の照射量としては、好ましくは1,000J/m
2以上200,000J/m
2未満であり、より好ましくは1,000〜100,000J/m
2である。
【0070】
そして、液晶セルの外側表面に偏光板を貼り合わせることにより、本発明の液晶表示素子を得ることができる。液晶セルの外表面に貼り合わされる偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながらヨウ素を吸収させた「H膜」と称される偏光膜を酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板又はH膜そのものからなる偏光板を挙げることができる。なお、塗膜に対してラビング処理を行った場合には、2枚の基板は、各塗膜におけるラビング方向が互いに所定の角度、例えば直交又は逆平行となるように対向配置される。
【0071】
本発明の液晶表示素子は、種々の装置に有効に適用することができ、例えば、時計、携帯型ゲーム、ワープロ、ノート型パソコン、カーナビゲーションシステム、カムコーダー、PDA、デジタルカメラ、携帯電話、スマートフォン、各種モニター、液晶テレビなどの表示装置に用いることができる。
【実施例】
【0072】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0073】
以下の実施例及び比較例において、重合体溶液中のポリイミドのイミド化率、重合体溶液の溶液粘度、重合体の重量平均分子量及びエポキシ当量は以下の方法により測定した。
[ポリイミドのイミド化率]
ポリイミドの溶液を純水に投入し、得られた沈殿を室温で十分に減圧乾燥した後、重水素化ジメチルスルホキシドに溶解し、テトラメチルシランを基準物質として室温で
1H−NMRを測定した。得られた
1H−NMRスペクトルから、下記数式(x)によりイミド化率[%]を求めた。
イミド化率[%]=(1−A
1/A
2×α)×100 …(x)
(数式(x)中、A
1は化学シフト10ppm付近に現れるNH基のプロトン由来のピーク面積であり、A
2はその他のプロトン由来のピーク面積であり、αは重合体の前駆体(ポリアミック酸)におけるNH基のプロトン1個に対するその他のプロトンの個数割合である。)
[重合体溶液の溶液粘度]
重合体溶液の溶液粘度[mPa・s]は、所定の溶媒を用い、重合体濃度10重量%に調製した溶液について、E型回転粘度計を用いて25℃で測定した。
[重合体の重量平均分子量]
重量平均分子量は、以下の条件におけるゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算値である。
カラム:東ソー(株)製、TSKgelGRCXLII
溶剤:テトラヒドロフラン
温度:40℃
圧力:68kgf/cm
2
[エポキシ当量]
エポキシ当量は、JIS C 2105に記載の塩酸−メチルエチルケトン法により測定した。
【0074】
<重合体(A)の合成>
[合成例1:ポリイミド(PI−1)の合成]
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物(TCA)22.4g(0.1モル)、ジアミンとしてp−フェニレンジアミン(PDA)8.6g(0.08モル)及び3,5−ジアミノ安息香酸コレスタニル(HCDA)10.5g(0.02モル)を、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)166gに溶解し、60℃で6時間反応を行い、ポリアミック酸を20重量%含有する溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、NMPを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は90mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液に、NMPを追加してポリアミック酸濃度7重量%の溶液とし、ピリジン11.9g及び無水酢酸15.3gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなNMPで溶媒置換(本操作によって脱水閉環反応に使用したピリジン及び無水酢酸を系外に除去した。以下同じ。)することにより、イミド化率約68%のポリイミド(PI−1)を26重量%含有する溶液を得た。得られたポリイミド溶液を少量分取し、NMPを加えてポリイミド濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は45mPa・sであった。
【0075】
[合成例2:ポリイミド(PI−2)の合成]
テトラカルボン酸二無水物としてTCA22.5g(0.1モル)、ジアミンとして
3,5−ジアミノ安息香酸(35DAB)10.7g(0.07モル)、コレスタニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン(HCODA)7.35g(0.015モル)及び上記式(D−1−5)で表される化合物(LDA)6.94g(0.015モル)、をNMP190gに溶解し、60℃で6時間反応を行い、ポリアミック酸を20重量%含有する溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、NMPを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は80mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液に、NMPを追加してポリアミック酸濃度7重量%の溶液とし、ピリジン15.7g及び無水酢酸20.3gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなNMPで溶媒置換することにより、イミド化率約80%のポリイミド(PI−2)を26重量%含有する溶液を得た。得られたポリイミド溶液を少量分取し、NMPを加えてポリイミド濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は40mPa・sであった。
【0076】
[合成例3:ポリイミド(PI−3)の合成]
テトラカルボン酸二無水物として2,4,6,8−テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン−2:4,6:8−二無水物(BODA)18.7g(0.075モル)及び1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CB)4.90g(0.025モル)、ジアミンとして35DAB10.7g(0.07モル)及び1,3−ジアミノ−4−{4−[トランス−4−(トランス−4−n−ペンチルシクロヘキシル)シクロヘキシル]フェノキシ}ベンゼン(PBCH5DAB、上記式(D−1−2)で表される化合物)13.1g(0.03モル)を、NMP190gに溶解し、60℃で6時間反応を行い、ポリアミック酸を20重量%含有する溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、NMPを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は85mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液に、NMPを追加してポリアミック酸濃度7重量%の溶液とし、ピリジン9.5g及び無水酢酸12.3gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなNMPで溶媒置換することにより、イミド化率約65%のポリイミド(PI−3)を26重量%含有する溶液を得た。得られたポリイミド溶液を少量分取し、NMPを加えてポリイミド濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は45mPa・sであった。
【0077】
[合成例4:ポリイミド(PI−4)の合成]
テトラカルボン酸二無水物として、TCA110g(0.50モル)及び1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン160g(0.50モル)、ジアミンとして、p−フェニレンジアミン(PDA)91g(0.85モル)、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン25g(0.10モル)及び3,6−ビス(4−アミノベンゾイルオキシ)コレスタン25g(0.040モル)、並びにモノアミンとしてアニリン1.4g(0.015モル)を、NMP960gに溶解し、60℃で6時間反応を行うことにより、ポリアミック酸を含有する溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、NMPを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は60mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液にNMP2,700gを追加し、ピリジン390g及び無水酢酸410gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなγ−ブチロラクトンで溶媒置換することにより、イミド化率約95%のポリイミド(PI−4)を15重量%含有する溶液約2,500gを得た。この溶液を少量分取し、NMPを加え、ポリイミド濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は70mPa・sであった。
【0078】
[合成例5:ポリイミド(PI−5)の合成]
テトラカルボン酸二無水物としてTCA22.4g(0.1モル)、ジアミンとしてPDA8.6g(0.08モル)、4,4’−ジアミノジフェニルメタン2.0g(0.01モル)及び4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル3.2g(0.01モル)を、NMP324gに溶解し、60℃で4時間反応を行い、ポリアミック酸を10重量%含有する溶液を得た。
次いで、得られたポリアミック酸溶液に、NMP360gを追加し、ピリジン39.5g及び無水酢酸30.6gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなNMPで溶媒置換し、イミド化率約93%のポリイミド(PI−5)を10重量%含有する溶液を得た。得られたポリイミド溶液を少量分取して測定した溶液粘度は30mPa・sであった。
【0079】
[合成例6:ポリイミド(PI−6)の合成]
使用するジアミンを、35DAB12.2g(0.08モル)及びHCODA9.8g(0.02モル)に変更した以外は、上記合成例1と同様の方法によりポリアミック酸溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、NMPを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は80mPa・sであった。
次いで、上記合成例1と同様の方法によりイミド化を行い、イミド化率約65%のポリイミド(PI−6)を26重量%含有する溶液を得た。得られたポリイミド溶液を少量分取し、NMPを加えてポリイミド濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は40mPa・sであった。
【0080】
[合成例7:ポリアミック酸(PA−1)の合成]
テトラカルボン酸二無水物としてCB200g(1.0モル)、ジアミンとして2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル210g(1.0モル)を、NMP370g及びγ−ブチロラクトン3,300gの混合溶媒に溶解し、40℃で3時間反応を行い、ポリアミック酸(PA−1)を10重量%含有する溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取して測定した溶液粘度は160mPa・sであった。
【0081】
[合成例8:ポリアミック酸(PA−2)の合成]
使用するテトラカルボン酸二無水物を、ピロメリット酸二無水物(PMDA)196g(0.9モル)及びCB19.6g(0.1モル)とし、ジアミンを、PDA0.2モル及び4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(DDE)とした以外は上記合成例7と同様の方法により、ポリアミック酸(PA−2)を10重量%含有する溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取下測定した溶液粘度170mPa・sであった。
【0082】
[合成例9:ポリオルガノシロキサン(APS−1)の合成]
撹拌機、温度計、滴下漏斗及び還流冷却管を備えた反応容器に、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(ECETS)100.0g、メチルイソブチルケトン500g及びトリエチルアミン10.0gを仕込み、室温で混合した。次いで、脱イオン水100gを滴下漏斗より30分かけて滴下した後、還流下で撹拌しつつ、80℃で6時間反応を行った。反応終了後、有機層を取り出し、0.2重量%硝酸アンモニウム水溶液により、洗浄後の水が中性になるまで洗浄した後、減圧下で溶媒及び水を留去することにより、反応性ポリオルガノシロキサン(EPS−1)を粘調な透明液体として得た。この反応性ポリオルガノシロキサンについて、
1H−NMR分析を行ったところ、化学シフト(δ)=3.2ppm付近にエポキシ基に基づくピークが理論強度どおりに得られ、反応中にエポキシ基の副反応が起こっていないことが確認された。得られた反応性ポリオルガノシロキサンの重量平均分子量Mwは3,500、エポキシ当量は180g/モルであった。
次いで、200mLの三口フラスコに、反応性ポリオルガノシロキサン(EPS−1)を10.0g、溶媒としてメチルイソブチルケトン30.28g、反応性化合物として4−ドデシルオキシ安息香酸3.98g、及び触媒としてUCAT 18X(商品名、サンアプロ(株)製)0.10gを仕込み、100℃で48時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、反応混合物に酢酸エチルを加えて得た溶液を3回水洗し、有機層を硫酸マグネシウムを用いて乾燥した後、溶剤を留去することにより、液晶配向性ポリオルガノシロキサン(APS−1)を9.0g得た。得られた重合体の重量平均分子量Mwは9,900であった。
【0083】
<実施例1>
[液晶配向剤の調製]
重合体(A)としてポリイミド(PI−1)を含有する溶液に、化合物(B)としてビス(3−ピリジルメチル)アミンのNMP溶液を、重合体の合計100重量部に対して5重量部加え、溶媒組成がNMP:BC=50:50(重量比)、固形分濃度6.0重量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターを用いて濾過することにより液晶配向剤(S1)を調製した。
[液晶セルの製造]
上記で調製した液晶配向剤(S1)を、液晶配向膜印刷機(日本写真印刷(株)製)を用いてITO膜からなる透明電極付きガラス基板の透明電極面に塗布し、80℃のホットプレート上で1分間加熱(プレベーク)して溶媒を除去した後、210℃のホットプレート上で30分間加熱(ポストベーク)して、平均膜厚80nmの塗膜を形成した。
この塗膜に対し、レーヨン布を巻き付けたロールを有するラビングマシーンにより、ロール回転数500rpm、ステージ移動速度3cm/秒、毛足押しこみ長さ0.4mmでラビング処理を行い、液晶配向能を付与した。その後、超純水中で1分間超音波洗浄を行い、次いで100℃クリーンオーブン中で10分間乾燥することにより、液晶配向膜を有する基板を得た。この操作を繰り返し、液晶配向膜を有する基板を一対(2枚)得た。
次に、上記一対の基板のそれぞれについて、液晶配向膜を有する面の外縁に、直径5.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤を塗布した後、液晶配向膜面が相対するように重ね合わせて圧着し、接着剤を硬化させた。次いで、液晶注入口より一対の基板間にネマチック液晶(メルク社製MLC−6221)を充填した後、アクリル系光硬化接着剤で液晶注入口を封止することにより液晶セルを製造した。
【0084】
[液晶配向膜の信頼性の評価]
上記で得られた液晶セルに5Vの電圧を60マイクロ秒の印加時間、167ミリ秒のスパンで印加した後、印加解除から167ミリ秒後の電圧保持率(VHR1)を測定した。次いで、液晶セルを、LEDランプ照射下の80℃オーブン中で200時間静置した後、室温中に静置して室温まで自然冷却した。冷却後、液晶セルに5Vの電圧を60マイクロ秒の印加時間、167ミリ秒のスパンで印加した後、印加解除から167ミリ秒後の電圧保持率(VHR2)を測定した。なお、測定装置は(株)東陽テクニカ製「VHR−1」を使用した。このときのVHRの変化率(ΔVHR)を下記数式(y)により算出し、ΔVHRによって液晶配向膜の信頼性を評価した。評価は、ΔVHRが1%以下であった場合を信頼性「非常に良好(◎)」、1%よりも大きく2%以下であった場合を信頼性「良好(○)」、2%よりも大きかった場合を信頼性「不良(×)」として行った。その結果を下記表1に示す。
ΔVHR[%]=(VHR1−VHR2)/(VHR1)×100 …(y)
【0085】
【表1】
【0086】
表1中、化合物(B)の「添加量」は、液晶配向剤中の重合体成分の合計100重量部に対する配合の割合[重量部]を示す。表1中の化合物(B)の略称は、それぞれ以下の意味である。
Bis−AMP:ビス(3−ピリジルメチル)アミン(上記式(ma−1)で表される化合物)
Tri−AMP:トリ(3−ピリジルメチル)アミン(上記式(ma−14)で表される化合物)
Epo−AMP:上記式(ma−26)で表される化合物
Epo−AMPm:上記式(ma−27)で表される化合物
DA−AMP:上記式(ma−20)で表される化合物
DA−AEIm:上記式(ma−21)で表される化合物
NM−AMP:3−(メチルアミノメチル)ピリジン
3−AMP:3−アミノメチルピリジン
【化10】
【0087】
<実施例2〜13、比較例1、2>
使用する重合体(A)の種類、並びに化合物(B)の種類及び量を上記表1の通り変更した以外は実施例1と同様にして液晶配向剤(S2)〜(S13)、(R1)、(R2)をそれぞれ調製した。また、調製した液晶配向剤の各々について、上記実施例1と同様にして液晶配向膜の信頼性について評価した。それらの結果を上記表1に示す。なお、表1中、重合体(A)として2種類の重合体を使用した実施例7〜9については、使用した重合体の全体量に対する各重合体の使用割合(重量%)を併せて示した。
【0088】
表1に示すように、化合物(B)を含む液晶配向剤を用いた実施例1〜13ではいずれも、光照射、80℃のストレス環境下に長時間(200時間)曝した後であっても電圧保持率の低下が少なく、信頼性が良好であった。中でも特に、化合物(B)としてBis−AMP又はTri−AMPを用いた実施例1〜9ではΔVHRが0.6%以下であり、光ストレス及び熱ストレスの付与による電圧保持率の低下が僅かであった。これに対し、化合物(B)を含まない比較例1,2では、光ストレス及び熱ストレスの付与によって電圧保持率が大きく低下した。