特許第6079239号(P6079239)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6079239
(24)【登録日】2017年1月27日
(45)【発行日】2017年2月15日
(54)【発明の名称】画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G09G 3/02 20060101AFI20170206BHJP
   G02B 26/10 20060101ALI20170206BHJP
   G09G 3/00 20060101ALI20170206BHJP
【FI】
   G09G3/02 A
   G02B26/10 C
   G09G3/00 K
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-62(P2013-62)
(22)【出願日】2013年1月4日
(65)【公開番号】特開2014-132286(P2014-132286A)
(43)【公開日】2014年7月17日
【審査請求日】2015年10月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】大山 実
(72)【発明者】
【氏名】岩田 和己
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 龍一
(72)【発明者】
【氏名】中野 達矢
【審査官】 西島 篤宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−287550(JP,A)
【文献】 特開平09−185344(JP,A)
【文献】 特開平03−186076(JP,A)
【文献】 特開2002−344765(JP,A)
【文献】 特開2012−063694(JP,A)
【文献】 特開2005−106930(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/02
G02B 26/10
G09G 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光束を出力するレーザ光源部と、
主走査方向及び副走査方向に往復駆動されることで、前記光束を反射させる走査ミラー部と、
画像データに基づいて前記レーザ光源部を駆動させる光源駆動部と、
前記画像データを構成する画素の輝度値を調整するビットシフト処理部と、
前記ビットシフト処理部により減光処理された前記画像データに対して、前記画像データを構成する画素の輝度値を所定の規則で0として表示させる制御を行う減光処理部と、
を備えた画像表示装置。
【請求項2】
前記減光処理部は、
主走査方向の走査線であって前記走査ミラー部の往路または復路のいずれか一方の走査線の輝度値を0として表示させる制御を行う、
請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記減光処理部は、
主走査方向の走査線上において、前記画素の輝度値を一つ置きに0として表示させる制御を行う、
請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記減光処理部は、
主走査方向の往路の走査線と主走査方向の復路の走査線とで、輝度値が0となる画素が縦方向に並ばないように表示させる制御を行う、
請求項3に記載の画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像表示装置に関し、より具体的には、レーザー走査型のプロジェクションディスプレーに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザー光を走査ミラーで反射させ、光線のラスター走査により投射面に画像を表示させる画像表示装置が知られている(例えば特許文献1)。
すなわち、レーザー走査型のプロジェクションディスプレーは、走査ミラーを左右に往復揺動させて水平方向の走査線を描くと同時に、画像を構成する走査線の数に合わせて走査ミラーを垂直方向に往復揺動させる。
【0003】
レーザー走査型画像表示装置の利用形態として、例えば、車載用途がある。車載用の画像表示装置では、運転者の前面にあるフロントガラスまたはコンバイナを介して映像を表示する(例えば特許文献2)。これにより、画像表示装置から発射された画像光束とフロントガラスを透過してきた外界からの光とがオーバーレイ(重畳)して運転者の眼に入射する。したがって、運転者は、映像情報と共に前方の状況を同時に見ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2010−539525号公報
【特許文献2】特開平5−8661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
画像表示装置は小型で可搬性に優れるため、様々環境で使用されることが期待される。例えば、さまざまな明るさの環境で使用されることが期待され、そのためには、幅広い調光レベルの調整、特に低輝度での調整が詳細に行えることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明は、
光束を出力するレーザ光源部と、
主走査方向及び副走査方向に往復駆動されることで、前記光束を反射させる走査ミラー部と、
画像データに基づいて前記レーザ光源部を駆動させる光源駆動部と、
前記画像データを構成する画素の輝度値を調整するビットシフト処理部と、
前記ビットシフト処理部により減光処理された前記画像データに対して、前記画像データを構成する画素の輝度値を所定の規則で0として表示させる制御を行う減光処理部と、
を備えた画像表示装置を提供する。

【発明の効果】
【0007】
画質を維持しつつも幅広い調光レベルの調整ができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】画像表示装置の典型的使用例を示す図。
図2】画像表示装置の全体構成を示す機能ブロック図。
図3】映像信号の処理の流れを示す図。
図4】画像データの構成を説明するための図。
図5】光射出ユニットの斜視図。
図6】走査ミラー部の構造を示す図。
図7】光射出ユニットから発射された画像光束L1が見る人の眼に到達するまでの光路を示す図。
図8】調光レベルの一覧表の一例を示す図。
図9】第1減光処理により、復路に相当する走査線の画像データを間引いた様子を示した図。
図10】往路Fsのときだけ描画する表示動作を示す図。
図11】第2減光処理により、往路に相当する走査線の画像データにおいて一つ置きに画素の画素値を間引いた様子を示した図。
図12】往路Fsにおいて描画点が飛び飛びとなる表示動作を示す図。
図13】垂直方向にブランクが並ぶように画素を間引いた例を示す図。
図14】往路と復路とで互い違いに間引いた例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態を図示するとともに図中の各要素に付した符号を参照して説明する。
(第1実施形態)
本発明の画像表示装置に係る第1実施形態について説明する。
図1は、本発明が想定する画像表示装置100の典型的使用例である。画像表示装置100は、レーザー光を走査ミラーで反射させ、光線のラスター走査により投射面に画像を表示(描画)させるものである。図1において、画像表示装置100は、自動車10に搭載されている。画像表示装置100からは所望の画像を表示させるように調整された画像光束L1が発射(出力)される。この画像光束L1は、フロントガラス11での反射を介して運転者Pの眼に入射し、網膜上に像を結ぶ。同時に、フロントガラス11には外界からの光L2も入射して透過していく。したがって、外界からの光L2と画像表示装置100の画像光束L1とがオーバーレイ(重畳)し、運転者Pの視界には外界の実景と画像表示装置100によって発射された画像とが同時に見えることになる。
【0010】
図2は、画像表示装置100の全体構成を示す機能ブロック図である。画像表示装置100は、画像信号処理部110と、光射出ユニット120と、結像光学系150と、タイミング処理部160と、中央制御部180と、を備える。各機能部の構成および動作を以下に説明する。
【0011】
画像信号処理部110は、ビデオインターフェース111と、ビデオデコーダ112と、メモリコントローラ113と、フレームメモリ114と、データバッファ115と、光源駆動部116と、デジタル調光処理部400と、を備える。
【0012】
ビデオインターフェース111を介して原画像信号が入力される。画像ソースは限定されず種々考えられるが、例えば、カーナビゲーション装置からの画像信号や車両からの速度表示信号などがあり、その他、場合によっては、テレビ放送や記録メディアから読み出した画像再生信号なども考えられうる。ビデオデコーダ112は、画像種別に応じてその原画像信号をデコード処理する。例えば、原画像信号がアナログ画像信号(コンポーネント映像信号)である場合には、デコード処理により、原画像信号を、3色(RGB)のデジタル色信号で構成されるデジタル画像信号と、水平同期信号と垂直同期信号とを含む同期信号と、に分離する。
【0013】
メモリコントローラ113は、書込み部113Wと読出し部113Rとを有する。
図3は、映像信号の処理の流れを示す図である。
書込み部113Wは、ビデオデコーダ112で処理した映像信号をフレームメモリ114に一旦書き込んでバッファさせる。そして、読出し部113Rは、指定されたドットクロックに基づいてフレームメモリ114から画像データを主走査線の一ラインずつ読み出す。
ここで、読出し部113Rは、レーザー走査型のプロジェクションディスプレーに適したタイミングで画像データを読み出すとともに後段に出力する。すなわち、読出し部113Rは、タイミング処理部160で調整されたタイミング信号(ドットクロック、表示期間指示信号)に合わせて画像データを読み出す。このように読み出された画像データは、デジタル調光処理部400に出力される。
【0014】
ここで、走査ミラー部200は、水平方向(主走査駆動方向)において往復振動するところ、往路でも復路でも描画を行う。したがって、読出し部113Rは、主走査駆動の往路に相当する画像データを読み出すにあたっては、画像データをアドレス順に読み出すが、主走査駆動の復路に相当する画像データを読み出すにあたっては画像データをアドレスの逆から読み出す。(主走査駆動の復路において描画点は右から左に移動するので、逆順に読み出した通りの順番で画像データを光源駆動部116に送り、半導体レーザーダイオードを発光駆動させれば、主走査駆動の復路においても画像を表示することができる。)
【0015】
デジタル調光処理部400は、読出し部113Rから出力された画像データに対し、デジタル演算処理によって画像の明るさ調整を行う。
画像データとしては、例えば、カーナビゲーション装置からの画像信号や車両からの速度表示信号などがあり、その他、場合によっては、テレビ放送や記録メディアから読み出した画像再生信号なども考えられる。ここで、周辺環境の明るさが、晴天時の雪道のように明るすぎたり、夜間の山中のように暗すぎたりすると、ユーザにとって画像が見にくくなる場合がある。デジタル調光処理部400は、概念的には周辺環境が明るすぎる場合には画像信号の輝度を高くして映像を表示させ、周辺環境が暗すぎる場合には、画像信号の輝度を低くして映像を表示させる。
【0016】
デジタル調光処理部400は、ビットシフト処理部410と、減光処理部420と、を備えている。
ビットシフト処理部410は、画像信号の各画素の輝度値をビットシフト演算によって上げたり下げたりする。このようなビットシフト演算は既知の技術を用いてもよい。
例えば、図8のテーブル中に示すように、ビットシフト処理によってシフトゲインを8〜0.03125まで変化させることができる。
ただし、低輝度での階調の維持と調光レベル数の確保のため、ビットシフトによるレーザー発光強度の調整だけでなく、後述のように、画素を所定の規則で表示させないようにする処理も併用する。
【0017】
減光処理部420は、ビットシフト処理部410で減光処理された画像の明るさをさらに暗くする処理を行う。
減光処理部420により、画像データ中の画素の輝度値を所定の規則に従って"0"にする減光処理を行うことで、より低輝度側の階調を確保できる。
減光処理部420による処理によって輝度値を"0"とされた画素は、表示画像中ではブランク(黒)として表示される。したがって、画素の輝度値を"0"にすることで、ユーザには表示画像から画素が間引かれて暗くなったように見える。
本明細書の以下の説明においては、画素の輝度値を0にする処理のことを"画素を間引く"、あるいは、"画素を表示させない"のように表現する。
なお、この減光処理部420による減光処理は、画素毎の色と輝度を別々に設定できるレーザー走査型のプロジェクションディスプレー方式に適した処理である。以降は、プロジェクションディスプレー方式における光射出ユニット120の構成と動作を説明し、その後に、減光処理部420による減光処理を例示することとする。
【0018】
デジタル調光処理部400で調光処理された画像データはデータバッファ115で一時保持され、さらに、画像データは順に光源駆動部116に出力される。
【0019】
光源駆動部116は、D/A変換部を備え、画像データに応じて光射出ユニット120の光源である各半導体レーザーダイオードに駆動電流を印加して各半導体レーザーダイオードを所望の輝度で発光させる。
光射出ユニット120の光源としては、RGB3色を得るため、赤色レーザーダイオード、青色レーザーダイオード、および、緑色レーザーダイオードが設けられている(具体的な構造は図5を参照)。
それに合わせて、光源駆動部116としても、赤色ドライバ116Rと、緑色ドライバ116Gと、青色ドライバ116Bと、を備えている。
各半導体レーザーダイオードに印加する駆動電流のゲインを上げ下げすることで調光することができる(図8参照)。
【0020】
なお、当然のことであるが、画像データを構成する各画素データは、図4に示すように、画素ごとにR(赤)、G(緑)、B(青)の3色で構成される色情報を有する。
それぞれのドライバ116R、116G、116Bはおのおの各画素の各色の情報に応じて半導体レーザーダイオードに電流を印加することで、色情報に応じた輝度で各半導体レーザーダイオードを発光させる。
【0021】
光射出ユニット120は、光源部130と、走査ミラー部200と、を備える。
図5は、光射出ユニット120の斜視図であり、光源部130と走査ミラー部200とは一例としてユニット化されている。
光源部130は、3色のレーザーダイオード132R、132G、132Bと、複数のミラー133A、133B、133C、133Dと、複数の集光レンズ134と、を有する。
レーザーダイードとしては、R(赤)、G(緑)、B(青)の各色のレーザー(レーザー光)をそれぞれ出力する、赤色レーザーダイオード132R、緑色レーザーダイオード132Gおよび青色レーザーダイオード132Bが設けられている。
なお、本実施形態は、3色より多いレーザーダイオードを用いた構成にも適用可能であるし、1色や2色のレーザーダイオードを用いた構成にも適用可能である。
【0022】
ミラー133B、133Cはそれぞれ所定の波長の色を透過または反射させるダイクロイックミラーである。
光源部130が出力する光の経路を簡単に説明すると、第1ミラー133Aは緑色レーザーダイオード132Gが出力する緑色レーザーを直角に反射して反射光を赤色レーザーの光路に導く。
第2ミラー133Bは、赤色レーザーダイオード132Rが出力する赤色レーザーを透過させるとともに緑色レーザーを反射して両者を合波する。
第3ミラー133Cは、前記第2ミラー133Bからの光を透過させるとともに、青色レーザーダイオード132Bが出力する青色レーザーを反射する。
これにより三つのレーザー光を一軸に合波した光束として、最後に第4ミラー133Dによって前記光束を走査ミラー部200に所定の角度で入射させる。
なお、光路上に集光レンズ134が適宜配置されており、レーザー光を集光させる。
各集光レンズの光学特性および配置位置は、次段の結像光学系150との関係で決定される。
【0023】
なお、図5において、光射出ユニット120の背面側に回路基板が設けられ、この回路基板上に画像信号処理部110、タイミング処理部160および中央制御部180が組み込まれており、例えば全体としてモジュール化されている。
【0024】
次に、走査ミラー部200の構成を説明する。
走査ミラー部200は、いわゆるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイスであって、半導体集積回路の加工技術を応用して製造される。走査ミラー部200は、互いに直交する二つの揺動軸を有する二軸駆動可能であって、一面にミラーを有する。ミラーを揺動させることにより、光源部130から出力された、三つのレーザー光を一軸に合波した光束である画像光束をラスタースキャン(ラスター走査)するよう反射する。
【0025】
走査ミラー部200の典型的構造を図6を参照して説明する。
図6において、(A)は走査ミラー部200の平面図であり、(B)は断面模式図である。なお、断面模式図においては、見易いように、誤解のない範囲でハッチングは省略した。また、説明の都合上、図6(A)における上下方向をy軸方向、左右方向をx軸方向として説明する。
【0026】
走査ミラー部200は、光を主走査方向および副走査方向に偏向させるように二軸駆動する光偏向素子210と、光偏向素子210を支える支持基台部250と、を備える。
光偏向素子210は、Si(シリコン)ウェハから周知の半導体プロセスで作製される。光偏向素子210は、図6(A)においてx軸方向の両端に配置された二つの支持部220L、220Rと、前記二つの支持部220L、220Rの間において全体として副走査方向に揺動する副走査揺動体部230と、二つ支持部220L、220Rと副走査揺動体部230とを繋ぐ二つのアーム240L、240Rと、を有する。二つのアーム240L、240Rは、上下方向のほぼ中央で支持部220L、220Rと副走査揺動体部230とを繋ぎ、これにより、副走査揺動軸Xsを揺動軸として副走査揺動体部230が揺動可能になっている。
【0027】
次に、副走査揺動体部230は、枠を構成する枠体231と、枠体231の枠内において枠体231から離間した状態で支持された主走査揺動片部232と、枠体231の内縁と主走査揺動片部232とを繋ぐ四つのL型梁部233A、233B、233C、233Dと、四つの圧電素子234A、234B、234C、234Dと、ミラー235と、二つの磁石236U、236Dと、を備える。
【0028】
L型梁部233A、233B、233C、233Dは、枠体231のうちのy軸に平行な内辺と、主走査揺動片部232のx軸に平行な辺と、を連結している。このとき、L型梁部233A、233B、233C、233Dは、主走査揺動片部232の左右中央に近接した位置において主走査揺動片部232と連結されている。これにより、主走査揺動軸Ysを揺動軸として主走査揺動片部232が揺動可能になっている。
【0029】
そして、四つL型梁部233A、233B、233C、233Dにおいて、x軸に平行な部分に圧電素子234A、234B、234C、234Dが配置されている。圧電素子234A、234B、234C、234Dは、詳しくは図示しないが、下部電極と上部電極との間に圧電体膜を挟んだ積層構造である。
【0030】
ミラー235は、主走査揺動片部232の一面に形成されている。ミラー235は、反射率の高い金属(例えばAlやAu)の蒸着によって形成できる。ここまでの構造で明らかなように、ミラー235は、アーム240L、240Rによる支持によって副走査方向に揺動するとともに、L型梁部233A、233B、233C、233Dの支持によって主走査方向にも揺動できる。
【0031】
二つの磁石236U、236Dは、主走査揺動片部232においてy軸に沿った上下にそれぞれ配置されている。ミラー235が形成された面を表面とすると、磁石236U、236Dは副走査揺動体部230の裏面に貼設されている。
【0032】
支持基台部250は、台部251と、二つの電磁コイル252U、252Dと、を有する。電磁コイル252U、252Dは、それぞれ磁石236U、236Dと対になるように配置されている。
【0033】
最後に、電気的配線について説明する。
4つの圧電素子234A、234B、234C、234Dが設けられているところ、二つの圧電素子234A、234Bで主走査揺動片部232に振動を誘起し、二つの圧電素子234C、234Dで主走査揺動片部232の振動を検出する。すなわち、図6(A)において、主走査揺動軸Ysを間にして左側に配置されている二つの駆動用圧電素子234A、234Bには駆動信号を印加する。すると、左側の二つの駆動用圧電素子234A、234Bの振動がL型梁部233A、233Bを介して主走査揺動片部232に伝達され、主走査揺動片部232が主走査揺動軸Ysを揺動軸として揺動する。また、主走査揺動軸Ysを間にして右側に配置されている二つの検出用圧電素子234C、234Dで主走査揺動片部232の振動を検出する。
ここで、検出用圧電素子234C、234Dから得られる振動検出信号に対して所定の位相差をもった駆動電圧信号を駆動用圧電素子234A、234Bにフィードバックすることにより、主走査揺動片部232を共振駆動させることができる。
【0034】
また、電磁コイル252U、252Dには、所定周期で副走査揺動体部230を揺動させる駆動電流を印加する。これにより、電磁コイル252U、252Dと磁石236U、236Dとが反発および接近を交互に繰り返し、副走査揺動体部230が副走査揺動軸Xsを揺動軸として揺動する。副走査方向の揺動は、非共振駆動であり、画像データの垂直駆動の周期に合わせて調整される。
【0035】
次に、結像光学部150について説明する。
図7は、光射出ユニット120から発射された画像光束L1が見る運転者Pの眼に到達するまでの光路を概略的に示した図である。
なお、結像光学部150の構成は、光射出ユニット120から射出された画像光束L1を見る人の眼に導くものであればよく、特定の構成に限定されるものではない。
結像光学部150は、平面ミラー151と、マイクロレンズアレイ152と、平面ミラー153と、凹面ミラー154と、を備える。また、図7には、コンバイナ(combiner)としてのフロントガラス11を合わせて示している。
【0036】
マイクロレンズアレイ152は、光透過型であって、マイクロレンズをマトリックス状に配列したものである。マイクロレンズアレイ152は、レーザー特有のスペックルを低減する効果があり、放射角や色ムラを考慮して最適設計されている。そして、このマイクロレンズアレイ152によってレーザー光を拡散(放射)することにより、単位面積当たりのレーザー強度が小さくなる。これにより、眼に対する負担が軽くなり、光束が眼に入射しても安全である。
【0037】
走査ミラー部200で反射された光束L1は、マイクロレンズアレイ152上で一旦中間像を結ぶ。その後、平面ミラー153、凹面ミラー154、フロントガラス11での反射を介して画像光束L1は見る者の眼に届く。また、コンバイナとしてのフロントガラス11において、画像光束L1と外界からの実景とがオーバーレイされる。
【0038】
なお、図7には図示しないが、抜き差し可能な減光(ND)フィルタを結像光学部150に設けることで調光することができる。図8のテーブルでは、透過率が1/8の減光(ND)フィルタを使用した例を示している。
【0039】
次に、タイミング処理部160について説明する。
タイミング処理部160は、ミラー駆動制御回路161と、振動検出部162と、タイミング調整部170と、を備える。ここで、タイミング処理が必要な事項としては、走査ミラー部200の主走査駆動制御、走査ミラー部200の副走査駆動制御、および、画像信号処理部110での画像処理タイミングを走査ミラー部200の駆動に合わせるためのタイミング信号の生成、がある。
【0040】
ミラー駆動制御回路161は、走査ミラー部200の主走査駆動制御を行う主走査駆動制御部161Hと、走査ミラー部200の副走査駆動制御を行う副走査駆動制御部161Vと、を備える。
【0041】
走査ミラー部200の主走査駆動制御について説明すると、走査ミラー部200の検出用圧電素子234C、234Dからの検出信号を振動検出部162で検出する。
振動検出部162は、例えば、増幅回路やフィルタで構成することができる。検出された振動検出信号Snを主走査駆動制御部161Hにフィードバックし、走査ミラー部200が主走査方向で共振するように位相調整を行い、主走査駆動制御信号SHとして駆動用圧電素子234A、234Bに印加する。これにより、走査ミラー部200を主走査方向においては共振駆動させる。
【0042】
一方、副走査駆動制御部161Vは、画像データの垂直駆動の周期に合わせて走査ミラー部200を副走査方向に非共振駆動させる。副走査方向の振動周波数は、例えば、VGAであれば60Hzである。副走査駆動制御部161Vは、主走査駆動制御部161Hから出力される主走査駆動信号SHとタイミングを合わせながら、60Hzで走査ミラー部200を副走査方向で揺動させる副走査駆動信号SVを出力する。
【0043】
タイミング調整部170は、メモリコントローラの動作を走査ミラー部の駆動に合わせるようにタイミング処理する。具体的には、走査ミラー部の主走査方向の共振周波数を逓倍し、ドットクロックを生成する。ドットクロックは、タイミング信号として、読出し部113R、RGBデータバッファ115、光源駆動部116に供給される。
【0044】
このように生成されたタイミング信号(ドットクロック、表示期間指示信号)に基づいて描画が行われる動作を順に説明する。
まず、読出し部113Rは、ドットクロックのタイミングで画像データを一ラインずつ読み出してRGBデータバッファ115に出力する。このRGBデータバッファ115に一時保持された画像データが順送りに光源駆動部116に送られる。すると、各色の半導体レーザーダイオードそれぞれが画像データで指示された輝度で発光駆動される。各色の輝度、主走査、副走査の駆動が同期することにより、各画素が適切に描画され、これによって、所望の画像データが描画されることになる。
【0045】
中央制御部180は、画像表示装置100全体の動作を制御している。
特に本実施形態においては、中央制御部180は、画像の調光レベルを設定する。中央制御部180は調光レベル設定部181を有し、調光レベル設定部181には外光センサ300からのセンサ値が入力されるようになっている。外光の明るさに対応した調光レベルを決定するためのテーブルが調光レベル設定部181に予め記憶されており、調光レベル設定部181は、外光の明るさに応じて調光レベルを決定する。また、調光レベル設定部181は、異常時の警報は最大の明るさで表示させるなど、表示内容によっても所定ルールに従った調光レベルを選択する。
【0046】
(減光処理部による減光処理)
(第1減光処理)
減光処理部420による減光処理を説明する。
本実施形態では、減光処理が2段階ある。まず、2段階のうちの第1段階である第1減光処理を説明する。
画像表示装置100は、走査ミラー235を左右に往復揺動させて水平方向の走査線を描くと同時に、画像を構成する走査線の数に合わせて走査ミラー235を垂直方向に往復揺動させることによって画像を表示する。
この表示方式では、水平方向の走査線に往路と復路があるため、往路と復路とのうちのいずれか一方の走査線を表示させないよう制御する(輝度値を"0"にする)ことで画像の明るさを半分にすることができる。
【0047】
復路のレーザー走査を間引く走査について説明する。図9に、復路に相当する走査線の画像データを間引いて表示させる様子を示す。第1減光処理では、復路の走査線の相当する画像データの画素の輝度値を0にして、復路の走査線を間引く処理を行う。これによってミラー235によって復路を走査するときにレーザー発光が無くなる。すると、図10に示すように、往路Fsのときだけ描画され、復路のときに描画されない。
図5に通常描画の様子が示されているが、復路分の描画が無いことで表示輝度が半分になることがわかる。
【0048】
第1減光処理によって、ミラー235の水平方向、及び垂直方向における振動周期を変更することはない。したがって、画像データを表示させるためのフレームレートなどを変更することなく表示させることができる。
【0049】
レーザー走査型のプロジェクションディスプレーは、フラットディスプレイパネルのようにバックライトなどによって全面を同時に光らせる方法とは異なり、描画点を1点ずつ描くものである。フラットディスプレイパネルの場合には、全面が同時に発光するため、画面の明るさの調整と解像度の調整とをそれぞれ独立したものとできるが、画素ごとの輝度を詳細に設定することはできない。
第1減光処理によれば、階調よくレーザー出力を制御できる範囲でレーザー発光を小さくするため、表示画像の階調を保ちながら明るさを半分(0.5)にすることが出来る。
このようにして、レーザー走査型のプロジェクションディスプレーにおいて、画質を維持しながらも全体の輝度を下げることができる。
【0050】
(第2減光処理)
続いて2段階のうちの第2段階である第2減光処理を説明する。
第2減光処理は、第1減光処理を受けた画像よりもさらにもう一段暗い画像を生成するための処理である。
第2減光処理では、第1減光処理を受けた画像からさらに画素を間引く。ここでは、往路の走査線において、一つ置きに画素を間引くこととする。
【0051】
図11には、往路に相当する走査線の画像データにおいて一つ置きに画素の画素値を間引いた様子を示した。
このように画像データを間引くと、往路において描画点が飛び飛びになる。(図12には、往路Fsにおいて描画点が飛び飛びであることを表現した。)
この第2減光処理により、画像の明るさが第1減光処理のさらに半分(0.5)になる。(つまり、通常表示の場合に比べると、四分の一(0.25)になる。)
【0052】
このように往路または復路の走査線上の全ての画素情報を間引いたり、一部の画素の画素情報を間引いたりすることで調光レベルを暗い方に2段階(2ビット分)確保することができるようになった。
(変形例1)
上記の例では、水平方向の走査線(復路の走査線)上の画素情報を間引き、さらに、往路も飛び飛びに間引くことで2段階の減光を行ったが、画素の間引き方は種々考えられるところである。
例えば、垂直方向にブランクが並ぶように画素を間引いてもよい(図13参照)。
または、往路と復路とで互い違いに間引いてもよい(図14参照)。
【0053】
画素を間引くといっても、解像度は出来るだけ維持したい。したがって、隣接する複数の画素をまとめて間引いてしまう(ブランクにする)ようなことは、あまり望ましくない。画像が粗くなってしまうからである。
例えば図14などは典型的な例であるが、できるだけ画像の粗さが目立たないように、間引く画素は飛び飛びにすることが望ましい。
【0054】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、
上記説明では、走査ミラー部としては、一体で二軸駆動が可能なMEMSミラーを例示したが、水平方向に揺動するミラーと垂直方向に揺動するミラーとが別体になっているなど、上記の例示に限定されず種々変更が可能である。
【0055】
画像表示装置は、ヘッドアップディスプレイとしての車載タイプのみならず、ヘルメット内蔵型や眼鏡タイプなどのヘッドマウントディスプレイなどに応用してもよい。
(つまり、本発明は4輪の自動車に搭載された場合だけを想定しているわけではない。)
例えば、ヘルメット内蔵型の画像表示装置を想定し、オートバイの運転者がこのヘルメットを着用するとしてもよい。
【符号の説明】
【0056】
10・・・自動車、11・・・フロントガラス、100・・・画像表示装置、110・・・画像信号処理部、116・・・光源駆動部、120・・・光射出ユニット、130・・・光源部、150・・・結像光学系、160・・・タイミング処理部、180・・・中央制御部、200・・・走査ミラー部、300・・・外光センサ、400・・・デジタル調光処理部。
図1
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