特許第6079379号(P6079379)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6079379
(24)【登録日】2017年1月27日
(45)【発行日】2017年2月15日
(54)【発明の名称】可変容量型斜板式圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04B 27/14 20060101AFI20170206BHJP
   F04B 27/12 20060101ALI20170206BHJP
【FI】
   F04B27/14
   F04B27/12 E
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-73820(P2013-73820)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-199002(P2014-199002A)
(43)【公開日】2014年10月23日
【審査請求日】2015年7月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】太田 雅樹
(72)【発明者】
【氏名】山本 真也
(72)【発明者】
【氏名】本田 和也
(72)【発明者】
【氏名】西井 圭
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 佑介
【審査官】 新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−172052(JP,A)
【文献】 特開平08−135752(JP,A)
【文献】 特開昭58−162781(JP,A)
【文献】 特開2006−233855(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 27/14
F04B 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングを形成するシリンダブロックには複数のシリンダボアが形成されており、各シリンダボア内にはピストンが往復動可能にそれぞれ収容され、クランク室には、回転軸から駆動力を得て回転するとともに前記回転軸に対する傾角が変更される斜板が収容されており、前記斜板には、前記回転軸の軸方向に移動して前記斜板の傾角を変更可能な移動体が連結されており、前記ハウジング内には、制御ガスが導入されて内部の圧力が変更されることで前記移動体を移動させる制御圧室が設けられており、前記移動体の移動により前記斜板の傾角の変更を許容するリンク機構を備え、前記斜板に係留された前記ピストンが前記斜板の傾角に応じたストロークで往復動する可変容量型斜板式圧縮機であって、
前記移動体には、一対の移動体側支持部が設けられており、
前記斜板には、斜板側支持部と前記移動体側に突出したウェイト部とが設けられており、
前記斜板側支持部は、前記斜板とは別体であるリンク部材であり、
一対の前記移動体側支持部の間に、前記リンク部材と前記ウェイト部とが配置されており、
前記ウェイト部は、一対の前記移動体側支持部の一方と前記リンク部材との間に配置されているとともに、一対の前記移動体側支持部の他方と前記リンク部材との間に配置されており、
前記移動体側支持部と前記リンク部材とは、第1連結部材により連結されており、
前記リンク部材は、前記第1連結部材に対して回動可能に支持されているとともに、前記移動体側支持部は、前記第1連結部材に固定されており、
前記斜板は、前記ピストンを上死点に位置させる上死点対応部と、前記ピストンを下死点に位置させる下死点対応部とを有し、
前記上死点対応部と前記下死点対応部とは前記回転軸を間に挟んで位置しており、
前記リンク部材は、前記上死点対応部と前記下死点対応部との間に配置されていることを特徴とする可変容量型斜板式圧縮機。
【請求項2】
前記斜板側支持部は、前記下死点対応部と前記回転軸との間に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の可変容量型斜板式圧縮機。
【請求項3】
記斜板には、連結部が設けられており、
前記リンク部材と前記連結部とは、第2連結部材により連結されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の可変容量型斜板式圧縮機。
【請求項4】
前記連結部は、前記斜板に対して前記移動体側とは反対側に突出しており、
前記リンク部材は前記斜板を貫通して、前記斜板に対して前記移動体側、及び前記移動体側とは反対側に突出していることを特徴とする請求項3に記載の可変容量型斜板式圧縮機。
【請求項5】
前記斜板側支持部は、前記第1連結部材が挿通可能な挿通孔を有しており、
前記挿通孔と前記第1連結部材との隙間は、前記上死点対応部と前記下死点対応部とを結ぶ線を回動中心とした前記斜板の回動時に前記挿通孔の一端のみが前記第1連結部材に当接する大きさであることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の可変容量型斜板式圧縮機。
【請求項6】
前記斜板側支持部は、前記第1連結部材が挿通可能な挿通孔を有しており、
前記挿通孔は、前記挿通孔の中心位置から一方の移動体側支持部に向かうにつれて拡径する第1拡径部と、前記挿通孔の中心位置から他方の移動体側支持部に向かうにつれて拡径する第2拡径部とから形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の可変容量型斜板式圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変容量型斜板式圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のものとして、例えば特許文献1の可変容量型斜板式圧縮機(以下、単に「圧縮機」と記載する)がある。図8及び図9に示すように、特許文献1の圧縮機100のハウジング101は、シリンダブロック102と、シリンダブロック102の前端を弁板103aを介して閉塞するフロントハウジング104と、シリンダブロック102の後端を弁板103bを介して閉塞するリヤハウジング105とからなる。
【0003】
シリンダブロック102の中央部には貫通孔102hが形成されており、貫通孔102hにはフロントハウジング104を貫通する回転軸106が設けられている。シリンダブロック102における回転軸106の周囲には、シリンダボア107が複数形成されており、各シリンダボア107には両頭ピストン108が収容されている。また、シリンダブロック102にはクランク室102aが形成されており、クランク室102aには、回転軸106から駆動力を得て回転する傾角可変な斜板109が収容されている。そして、両頭ピストン108は、シュー110を介して斜板109に係留されている。また、フロントハウジング104及びリヤハウジング105には、各シリンダボア107に連通する吸入室104a,105a及び吐出室104b,105bが形成されている。
【0004】
シリンダブロック102の貫通孔102hの後端には、アクチュエータ111が配設されている。アクチュエータ111の内部には、回転軸106の後端側が収容されている。そして、アクチュエータ111は、その内部が回転軸106の後端側に対して摺動自在であるとともに、アクチュエータ111の周縁が貫通孔102hに対して摺動自在となっている。アクチュエータ111と弁板103bとの間には、押圧ばね112が介在されている。押圧ばね112は、アクチュエータ111を回転軸106の先端側に付勢している。押圧ばね112の付勢力は、クランク室102a内の圧力とのバランスで設定されている。
【0005】
貫通孔102hにおけるアクチュエータ111よりも後方側は、弁板103bの貫通孔を介してリヤハウジング105に形成された圧力調節室117(制御圧室)に連通している。圧力調節室117は、圧力調節回路118を介して吐出室105bに連通している。圧力調節回路118には圧力制御弁119が配設されている。アクチュエータ111の移動量は、圧力調節室117の圧力により調節される。
【0006】
アクチュエータ111の前方には、スラスト軸受113を介して第1連結体114が設置されている。第1連結体114には回転軸106が貫通しており、第1連結体114は、その内部が回転軸106に対して摺動自在になっている。そして、第1連結体114は、アクチュエータ111の摺動に伴い、回転軸106に沿って軸方向に摺動するようになっている。また、第1連結体114の周縁には、外方に延びる第1アーム114aが設けられている。第1アーム114aには、回転軸106の軸方向に対して斜めに切り欠かれた第1ピン案内溝114hが形成されている。
【0007】
また、斜板109の前方には、第2連結体115(駆動力伝達体)が設置されている。第2連結体115は回転軸106と一体回転可能に回転軸106に固定されている。第2連結体115の周縁には、第1アーム114aとは略対称の位置で外方に延びる第2アーム115aが設けられている。第2アーム115aには、回転軸106の軸方向に対して斜めに貫通する第2ピン案内溝115hが形成されている。
【0008】
斜板109における第1連結体114側の面には、第1アーム114aに向けて延びる一対の第1支持耳109aが設けられている。第1アーム114aは、各第1支持耳109aの間に配置されている。そして、各第1支持耳109aと第1アーム114aとは、第1ピン案内溝114hに挿通される第1連結ピン114pにより回動自在に連結されている。
【0009】
斜板109における第2連結体115側の面には、第2アーム115aに向けて延びる一対の第2支持耳109bが設けられている。第2アーム115aは、各第2支持耳109bの間に配置されている。そして、各第2支持耳109bと第2アーム115aとは、第2ピン案内溝115hに挿通される第2連結ピン115pにより回動自在に連結されている。そして、斜板109は、回転軸106から第2連結体115を介して駆動力を得て回転運動を行う。
【0010】
圧縮機100において、吐出容量を減少させるときには、圧力制御弁119を閉じて圧力調節室117の圧力を低くする。これにより、圧力調節室117の圧力、及び押圧ばね112の付勢力よりもクランク室102aの圧力が高くなり、図8に示すように、アクチュエータ111が弁板103bに向かって移動する。このとき、第1連結体114は、クランク室102aの圧力によりアクチュエータ111側に押圧される。この第1連結体114の移動により、第1連結ピン114pが第1ピン案内溝114hで案内されて、各第1支持耳109aが反時計回りに回転する。この各第1支持耳109aの回転に伴って、各第2支持耳109bが反時計回りに回転し、第2連結ピン115pが第2ピン案内溝115hに案内される。これにより、斜板109の傾角が小さくなり、両頭ピストン108のストロークが小さくなって吐出容量が減る。
【0011】
一方、圧縮機100において、吐出容量を増加させるときには、圧力制御弁119を開いて吐出室105bからの高圧ガス(制御ガス)を圧力調節回路118を介して圧力調節室117に導入し、圧力調節室117の圧力を高くする。これにより、圧力調節室117の圧力、及び押圧ばね112の付勢力が、クランク室102aの圧力よりも高くなり、図9に示すように、アクチュエータ111が斜板109に向かって移動する。このとき、第1連結体114は、アクチュエータ111により押圧されて、第2連結体115側に移動する。この第1連結体114の移動により、第1連結ピン114pが第1ピン案内溝114hで案内されて、各第1支持耳109aが時計回りに回転する。この各第1支持耳109aの回転に伴って、各第2支持耳109bが時計回りに回転し、第2連結ピン115pが第2ピン案内溝115hに案内される。これにより、斜板109の傾角が大きくなり、両頭ピストン108のストロークが大きくなって吐出容量が増える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平5−172052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、圧縮機100においては、図10に示すように、両頭ピストン108から斜板109に対して圧縮反力P10が作用する。この圧縮反力P10によって、斜板109が、斜板109の傾角の変更とは異なる方向(図10に示す矢印R10の方向)に回動してしまうことがある。
【0014】
ここで、特許文献1の圧縮機100では、各第1支持耳109aの間に、第1アーム114aが配置されている。すなわち、各第1支持耳109aは、第1アーム114aを挟むように配置され、第1アーム114aよりも斜板109の外周寄りに配置されている。このように、各第1支持耳109aが、斜板109の外周寄りに配置されるほど、斜板109における斜板109の傾角の変更とは異なる方向への回動に伴う、斜板109の傾角の変更とは異なる方向への各第1支持耳109aの変位が大きくなる。すると、この各第1支持耳109aにおける斜板109の傾角の変更とは異なる方向への変位に伴って、斜板109の傾角とは異なる方向に回動させようとする力が、第1連結ピン114pを介して第1アーム114aに伝わり易くなり、第1連結体114が、斜板109の傾角の変更とは異なる方向へ回動し易くなってしまう。第1連結体114が斜板109の傾角の変更とは異なる方向へ回動すると、第1連結体114が移動する際に、第1連結体114と回転軸106との間での摺動抵抗が増大してしまい、斜板109の傾角の変更をスムーズに行うことができなくなってしまう虞がある。
【0015】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、斜板の傾角の変更をスムーズに行うことができる可変容量型斜板式圧縮機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決する可変容量型斜板式圧縮機は、ハウジングを形成するシリンダブロックには複数のシリンダボアが形成されており、各シリンダボア内にはピストンが往復動可能にそれぞれ収容され、クランク室には、回転軸から駆動力を得て回転するとともに前記回転軸に対する傾角が変更される斜板が収容されており、前記斜板には、前記回転軸の軸方向に移動して前記斜板の傾角を変更可能な移動体が連結されており、前記ハウジング内には、制御ガスが導入されて内部の圧力が変更されることで前記移動体を移動させる制御圧室が設けられており、前記移動体の移動により前記斜板の傾角の変更を許容するリンク機構を備え、前記斜板に係留された前記ピストンが前記斜板の傾角に応じたストロークで往復動する可変容量型斜板式圧縮機であって、前記移動体には、一対の移動体側支持部が設けられており、前記斜板には、斜板側支持部と前記移動体側に突出したウェイト部とが設けられており、前記斜板側支持部は、前記斜板とは別体であるリンク部材であり、一対の前記移動体側支持部の間に、前記リンク部材と前記ウェイト部とが配置されており、前記ウェイト部は、一対の前記移動体側支持部の一方と前記リンク部材との間に配置されているとともに、一対の前記移動体側支持部の他方と前記リンク部材との間に配置されており、前記移動体側支持部と前記リンク部材とは、第1連結部材により連結されており、前記リンク部材は、前記第1連結部材に対して回動可能に支持されているとともに、前記移動体側支持部は、前記第1連結部材に固定されており、前記斜板は、前記ピストンを上死点に位置させる上死点対応部と、前記ピストンを下死点に位置させる下死点対応部とを有し、前記上死点対応部と前記下死点対応部とは前記回転軸を間に挟んで位置しており、前記リンク部材は、前記上死点対応部と前記下死点対応部との間に配置されている。
【0017】
ピストンから斜板に対して圧縮反力が作用すると、この圧縮反力によって、斜板が、斜板の傾角の変更とは異なる方向に回動してしまうことがある。しかし、斜板側支持部が上死点対応部と下死点対応部との間に配置されている。よって、従来技術のように、移動体側支持部を挟むように一対の斜板側支持部が配置され、各斜板側支持部が、移動体側支持部よりも斜板の外周寄りに配置されている場合に比べると、斜板における斜板の傾角の変更とは異なる方向への回動に伴う、斜板の傾角の変更とは異なる方向への斜板側支持部の変位を小さくすることができる。その結果、斜板側支持部における斜板の傾角の変更とは異なる方向への変位に伴って、斜板の傾角とは異なる方向に回動させようとする力が、第1連結部材を介して移動体側支持部に伝わり難くなり、移動体が、斜板の傾角の変更とは異なる方向へ回動してしまうことを抑制することができ、斜板の傾角の変更をスムーズに行うことができる。また、斜板とは別体であるリンク部材を第1連結部材に対して回動可能に支持することができるため、例えば、リンク部材を耐摩耗性の優れた材料で形成することで、リンク部材と第1連結部材との間の摺動抵抗を低減することができる。
【0018】
上記可変容量型斜板式圧縮機において、前記斜板側支持部は、前記下死点対応部と前記回転軸との間に配置されていることが好ましい。
このような構成は、上死点対応部と回転軸との間に斜板側支持部を設けるスペースを確保できない場合に有効である。
【0019】
上記可変容量型斜板式圧縮機において、前記斜板側支持部は、前記斜板とは別体であるリンク部材であり、前記斜板には、連結部が設けられており、前記リンク部材と前記連結部とは、第2連結部材により連結されていることが好ましい。
【0021】
上記可変容量型斜板式圧縮機において、前記連結部は、前記斜板に対して前記移動体側とは反対側に突出しており、前記リンク部材は前記斜板を貫通して、前記斜板に対して前記移動体側、及び前記移動体側とは反対側に突出していることが好ましい。
【0022】
このような構成は、斜板と移動体との間のスペースに、第2連結部材を介したリンク部材と連結部との連結スペースを確保できない場合に有効である。
上記可変容量型斜板式圧縮機において、前記斜板側支持部は、前記第1連結部材が挿通可能な挿通孔を有しており、前記挿通孔と前記第1連結部材との隙間は、前記上死点対応部と前記下死点対応部とを結ぶ線を回動中心とした前記斜板の回動時に前記挿通孔の一端のみが前記第1連結部材に当接する大きさであることが好ましい。
【0023】
これによれば、上死点対応部と下死点対応部とを結ぶ線を回動中心とした斜板の回動時に挿通孔の両端が第1連結部材に当接する場合に比べると、斜板側支持部が斜板の傾角の変更とは異なる方向へ回動したときに、移動体が、第1連結部材を介して斜板の傾角の変更とは異なる方向へ回動してしまうことを抑制し易くすることができる。
【0024】
上記可変容量型斜板式圧縮機において、前記斜板側支持部は、前記第1連結部材が挿通可能な挿通孔を有しており、前記挿通孔は、前記挿通孔の中心位置から一方の移動体側支持部に向かうにつれて拡径する第1拡径部と、前記挿通孔の中心位置から他方の移動体側支持部に向かうにつれて拡径する第2拡径部とから形成されていることが好ましい。
【0025】
これによれば、斜板側支持部が斜板の傾角の変更とは異なる方向へ回動したときに、挿通孔の開口端縁に第1連結部材が接触してしまうことを回避し易くすることができる。よって、斜板側支持部が斜板の傾角の変更とは異なる方向へ回動したときに、挿通孔の開口端縁に第1連結部材が接触してしまい、移動体が、第1連結部材を介して斜板の傾角の変更とは異なる方向へ回動してしまうことを抑制することができる。
【発明の効果】
【0026】
この発明によれば、斜板の傾角の変更をスムーズに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施形態における可変容量型斜板式圧縮機を示す側断面図。
図2】制御圧室、圧力調整室、吸入室、及び吐出室の関係を示す模式図。
図3】斜板の傾角が最小傾角のときの可変容量型斜板式圧縮機を示す側断面図。
図4】圧縮反力によって斜板が斜板の傾角の変更とは異なる方向に回動する前の状態を示す平断面図。
図5】圧縮反力によって斜板が斜板の傾角の変更とは異なる方向に回動している状態を示す平断面図。
図6】別の実施形態における圧縮反力によって斜板が斜板の傾角の変更とは異なる方向に回動する前の状態を示す平断面図。
図7】圧縮反力によって斜板が斜板の傾角の変更とは異なる方向に回動している状態を示す平断面図。
図8】従来例における可変容量型斜板式圧縮機を示す側断面図。
図9】従来例における斜板の傾角が最大傾角のときの可変容量型斜板式圧縮機を示す側断面図。
図10】従来例における圧縮反力によって斜板が斜板の傾角の変更とは異なる方向に回動している状態を示す平断面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1図5にしたがって説明する。なお、可変容量型斜板式圧縮機(以下、単に「圧縮機」と記載する)は車両に搭載されている。
図1に示すように、圧縮機10のハウジング11は、互いに接合された第1シリンダブロック12及び第2シリンダブロック13と、前方側(一方側)の第1シリンダブロック12に接合されたフロントハウジング14と、後方側(他方側)の第2シリンダブロック13に接合されたリヤハウジング15とから構成されている。第1シリンダブロック12及び第2シリンダブロック13は、ハウジング11を形成するシリンダブロックである。
【0029】
フロントハウジング14と第1シリンダブロック12との間には、第1弁・ポート形成体16が介在されている。また、リヤハウジング15と第2シリンダブロック13との間には、第2弁・ポート形成体17が介在されている。
【0030】
フロントハウジング14と第1弁・ポート形成体16との間には、吸入室14a及び吐出室14bが区画されている。吐出室14bは吸入室14aの外周側に配置されている。また、リヤハウジング15と第2弁・ポート形成体17との間には、吸入室15a及び吐出室15bが区画されている。さらに、リヤハウジング15には、圧力調整室15cが形成されている。圧力調整室15cは、リヤハウジング15の中央部に位置しており、吸入室15aは、圧力調整室15cの外周側に配置されている。さらに、吐出室15bは吸入室15aの外周側に配置されている。各吐出室14b,15b同士は、図示しない吐出通路を介して接続されている。そして、吐出通路は図示しない外部冷媒回路に接続されている。
【0031】
第1弁・ポート形成体16には、吸入室14aに連通する吸入ポート16a、及び吐出室14bに連通する吐出ポート16bが形成されている。第2弁・ポート形成体17には、吸入室15aに連通する吸入ポート17a、及び吐出室15bに連通する吐出ポート17bが形成されている。各吸入ポート16a,17aには、図示しない吸入弁機構が設けられるとともに、各吐出ポート16b,17bには、図示しない吐出弁機構が設けられている。
【0032】
ハウジング11内には回転軸21が回転可能に支持されている。回転軸21において、中心軸線Lが延びる方向(回転軸21の軸方向)に沿った一端側であり、ハウジング11の前方側(一方側)に位置する前端部側は、第1シリンダブロック12に貫設された軸孔12hに挿通されている。そして、回転軸21の前端は、フロントハウジング14内に位置している。また、回転軸21において、中心軸線Lが延びる方向に沿った他端側であり、ハウジング11の後方側(他方側)に位置する後端部側は、第2シリンダブロック13に貫設された軸孔13hに挿通されている。そして、回転軸21の後端は、圧力調整室15c内に位置している。
【0033】
回転軸21は、その前端部側が軸孔12hを介して第1シリンダブロック12に回転可能に支持されるとともに、後端部側が軸孔13hを介して第2シリンダブロック13に回転可能に支持されている。フロントハウジング14と回転軸21との間にはリップシール型の軸封装置22が介在されている。
【0034】
ハウジング11内には、第1シリンダブロック12及び第2シリンダブロック13により区画されたクランク室24が形成されている。クランク室24には、回転軸21から駆動力を得て回転するとともに、回転軸21に対して軸方向へ傾動可能な斜板23が収容されている。斜板23には、回転軸21が挿通可能な挿通孔23aが形成されている。そして、回転軸21が挿通孔23aに挿通されることにより、斜板23が回転軸21に取り付けられている。
【0035】
第1シリンダブロック12には、第1シリンダブロック12の軸方向に貫通形成されるシリンダボアとしての第1シリンダボア12a(図1では1つの第1シリンダボア12aのみ図示)が回転軸21の周囲に複数配列されている。各第1シリンダボア12aは、吸入ポート16aを介して吸入室14aに連通するとともに、吐出ポート16bを介して吐出室14bに連通している。第2シリンダブロック13には、第2シリンダブロック13の軸方向に貫通形成されるシリンダボアとしての第2シリンダボア13a(図1では1つの第2シリンダボア13aのみ図示)が回転軸21の周囲に複数配列されている。各第2シリンダボア13aは、吸入ポート17aを介して吸入室15aに連通するとともに、吐出ポート17bを介して吐出室15bに連通している。第1シリンダボア12a及び第2シリンダボア13aは、前後で対となるように配置されている。対となる第1シリンダボア12a及び第2シリンダボア13a内には、ピストンとしての両頭ピストン25が前後方向へ往復動可能にそれぞれ収容されている。
【0036】
各両頭ピストン25は、一対のシュー26を介して斜板23の外周部に係留されている。そして、回転軸21の回転にともなう斜板23の回転運動が、シュー26を介して両頭ピストン25の往復直線運動に変換される。各第1シリンダボア12a内には、両頭ピストン25と第1弁・ポート形成体16とによって第1圧縮室20aが区画されている。各第2シリンダボア13a内には、両頭ピストン25と第2弁・ポート形成体17とによって第2圧縮室20bが区画されている。
【0037】
第1シリンダブロック12には、軸孔12hに連続するとともに軸孔12hよりも大径である第1大径孔12bが形成されている。第1大径孔12bは、クランク室24に連通している。クランク室24と吸入室14aとは、第1シリンダブロック12及び第1弁・ポート形成体16を貫通する吸入通路12cにより連通している。
【0038】
第2シリンダブロック13には、軸孔13hに連続するとともに軸孔13hよりも大径である第2大径孔13bが形成されている。第2大径孔13bは、クランク室24に連通している。クランク室24と吸入室15aとは、第2シリンダブロック13及び第2弁・ポート形成体17を貫通する吸入通路13cにより連通している。
【0039】
第2シリンダブロック13の周壁には吸入口13sが形成されている。吸入口13sは外部冷媒回路に接続されている。そして、外部冷媒回路から吸入口13sを介してクランク室24に吸入された冷媒ガスは、吸入通路12c,13cを介して吸入室14a,15aに吸入される。よって、吸入室14a,15a及びクランク室24は、吸入圧領域となっており、圧力がほぼ等しくなっている。
【0040】
回転軸21には、第1大径孔12b内に配置される環状のフランジ部21fが突設されている。回転軸21の軸方向において、フランジ部21fと第1シリンダブロック12との間にはスラスト軸受27aが配設されている。
【0041】
回転軸21におけるフランジ部21fよりも後方側であって、且つ斜板23よりも前方側には、回転軸21と一体回転可能な環状の駆動力伝達体31が固定されている。駆動力伝達体31には、一対のアーム31aが斜板23に向けて突設されている。斜板23の上端側(図1における上側)には突起23cが駆動力伝達体31に向けて突設されている。突起23cは、一対のアーム31a間に挿入されており、一対のアーム31aに挟まれた状態で一対のアーム31a間を移動可能である。一対のアーム31a間の底部には、カム面31bが形成されており、突起23cがカム面31bを摺接可能である。斜板23は、一対のアーム31aに挟まれた突起23cとカム面31bとの連係により回転軸21の軸方向へ傾動可能であるとともに、回転軸21の駆動力が一対のアーム31aを介して突起23cに伝達されて、斜板23が回転運動を行う。斜板23が回転軸21の軸方向へ傾動する際、突起23cは、カム面31b上をスライド移動するようになっている。
【0042】
フランジ部21fと駆動力伝達体31との間には、駆動力伝達体31に対して回転軸21の軸方向に移動可能な有底円筒状の移動体32が配置されている。移動体32は有底円筒状であるとともに、回転軸21が挿通される挿通孔32eが形成された円環状の底部32aと、底部32aの外周縁から回転軸21の軸方向に沿って延びる円筒部32bとから形成されている。円筒部32bの内周面は、駆動力伝達体31の外周面に対して摺動可能になっている。そして、移動体32は、駆動力伝達体31を介して回転軸21と一体回転可能になっている。
【0043】
円筒部32bの内周面と駆動力伝達体31の外周面との間はシール部材33によりシールされている。また、挿通孔32eと回転軸21との間はシール部材34によりシールされている。そして、駆動力伝達体31と移動体32とにより制御圧室35が区画されている。
【0044】
回転軸21には、回転軸21の軸方向に沿って延びる第1軸内通路21aが形成されている。第1軸内通路21aの後端は、圧力調整室15cに開口している。さらに、回転軸21には、回転軸21の径方向に沿って延びる第2軸内通路21bが形成されている。第2軸内通路21bの一端は第1軸内通路21aの先端に連通するとともに、他端は制御圧室35に開口している。よって、制御圧室35と圧力調整室15cとは、第1軸内通路21a及び第2軸内通路21bを介して連通している。
【0045】
図2に示すように、圧力調整室15cと吸入室15aとは抽気通路36を介して連通している。抽気通路36にはオリフィス36aが設けられており、抽気通路36を流れる冷媒ガスの流量がオリフィス36aにより絞られる。また、圧力調整室15cと吐出室15bとは給気通路37を介して連通している。給気通路37上には電磁式の制御弁37sが設けられている。制御弁37sは、吸入室15aの圧力に基づき給気通路37の開度を調整することが可能になっている。そして、制御弁37sにより、給気通路37を流れる冷媒ガスの流量が調整される。
【0046】
吐出室15bから給気通路37、圧力調整室15c、第1軸内通路21a、及び第2軸内通路21bを介した制御圧室35への冷媒ガスの導入と、制御圧室35から第2軸内通路21b、第1軸内通路21a、圧力調整室15c、及び抽気通路36を介した吸入室15aへの排出が行われることにより、制御圧室35の内部の圧力が変更される。そして、制御圧室35とクランク室24との圧力差に伴って移動体32が駆動力伝達体31に対して回転軸21の軸方向に移動するようになっている。よって、制御圧室35に導入される冷媒ガスは、移動体32の移動制御を行うために用いられる制御ガスである。
【0047】
図1に示すように、移動体32の円筒部32bの先端には、斜板23側に向けて突出する一対の移動体側支持部32cが設けられている。図4に示すように、各移動体側支持部32cには、第1連結部材としての円柱状の第1ピン41が挿通可能な円孔状の挿通孔32hがそれぞれ形成されている。第1ピン41は、各挿通孔32hに圧入されることにより各移動体側支持部32cに対して拘束されている。
【0048】
また、図1に示すように、斜板23の下端側(図1における下側)において、移動体32とは反対側の面からは、一対の連結部23dが突出している。図4に示すように、各連結部23dには、第2連結部材としての円柱状の第2ピン42が挿通可能な円孔状の挿通孔23hがそれぞれ形成されている。第2ピン42は、各挿通孔23hに圧入されることにより各連結部23dに対して拘束されている。
【0049】
図1に示すように、斜板23の下端側には孔部23bが形成されている。孔部23bには、柱状のリンク部材43が挿通されている。よって、リンク部材43の一端は、斜板23における移動体32側の面から移動体32に向けて突出するとともに、リンク部材43の他端は、斜板23における移動体32側とは反対側の面から移動体32とは反対側に向けて突出している。すなわち、リンク部材43は斜板23を貫通している。
【0050】
斜板23は、両頭ピストン25を上死点に位置させる上死点対応部231と、両頭ピストン25を下死点に位置させる下死点対応部232とを有する。上死点対応部231と下死点対応部232とは回転軸21を間に挟んで位置している。そして、リンク部材43は、下死点対応部232と回転軸21との間に配置されている。
【0051】
図4に示すように、リンク部材43の一端は、一対の移動体側支持部32cの間に配置されている。リンク部材43の一端側には、第1ピン41が挿通可能な挿通孔43aが形成されている。そして、リンク部材43の一端は、第1ピン41を介して一対の移動体側支持部32cに連結されるとともに、第1ピン41に対して回動可能に支持されている。
【0052】
リンク部材43の他端は、一対の連結部23dの間に配置されている。リンク部材43の他端側には、第2ピン42が挿通可能な挿通孔43bが形成されている。そして、リンク部材43の他端は、第2ピン42を介して一対の連結部23dに連結されるとともに、第2ピン42に対して回動可能に支持されている。よって、本実施形態では、リンク部材43は、斜板23に設けられて、移動体32側に突出するとともに第1ピン41を介して一対の移動体側支持部32cに連結され、第1ピン41に対して回動可能に支持される斜板側支持部に相当する。
【0053】
斜板23における移動体32側の面には、移動体32側に突出するウェイト部45が設けられている。ウェイト部45には、リンク部材43の一端側が配置される溝部45aが形成されている。また、ウェイト部45には、リンク部材43の挿通孔43aに連通するとともに第1ピン41が挿通可能な挿通孔45bが形成されている。挿通孔45bは、リンク部材43の回動に伴って第1ピン41が接触しない大きさになっている。
【0054】
上記構成の圧縮機10において、制御弁37sにおける弁開度を減少させると、吐出室15bから給気通路37、圧力調整室15c、第1軸内通路21a、及び第2軸内通路21bを介して制御圧室35へ導入される冷媒ガスの量が少なくなる。そして、制御圧室35から第2軸内通路21b、第1軸内通路21a、圧力調整室15c、及び抽気通路36を介して冷媒ガスが吸入室15aへ排出されることにより、制御圧室35の圧力が吸入室15aの圧力とほぼ等しくなる。よって、制御圧室35とクランク室24との圧力差が少なくなることで、円筒部32bの内周面が、駆動力伝達体31の外周面に対して摺動して、移動体32が回転軸21の軸方向に案内されながら、底部32aが駆動力伝達体31に近づくように移動する。
【0055】
すると、図3に示すように、リンク部材43が第1ピン41及び第2ピン42に対して回動して、斜板23の下端側が、駆動力伝達体31に対して離間する方向へ揺動する。これに伴い、突起23cがカム面31b上を駆動力伝達体31に対して離間する方向へスライド移動して、斜板23の上端側が、駆動力伝達体31に対して接近する方向へ揺動する。これにより、斜板23の傾角が小さくなり、両頭ピストン25のストロークが小さくなって吐出容量が減る。
【0056】
そして、制御弁37sにおける弁開度を増大させると、吐出室15bから給気通路37、圧力調整室15c、第1軸内通路21a、及び第2軸内通路21bを介して制御圧室35へ導入される冷媒ガスの量が多くなる。このため、制御圧室35の圧力が吐出室15bの圧力とほぼ等しくなる。よって、制御圧室35とクランク室24との圧力差が大きくなることで、円筒部32bの内周面が、駆動力伝達体31の外周面に対して面接触した状態で摺動して、移動体32が回転軸21の軸方向に案内されながら、底部32aが駆動力伝達体31から離間するように移動する。
【0057】
すると、図1に示すように、リンク部材43が第1ピン41及び第2ピン42に対して回動して、斜板23の下端側が、駆動力伝達体31に対して接近する方向へ揺動する。これに伴い、突起23cがカム面31b上を駆動力伝達体31に対して接近する方向へスライド移動して、斜板23の上端側が、駆動力伝達体31に対して離間する方向へ揺動する。これにより、斜板23の傾角が大きくなり、両頭ピストン25のストロークが大きくなって吐出容量が増える。よって、本実施形態では、第1ピン41、第2ピン42、リンク部材43、突起23c、及びカム面31bによって、移動体32の移動により斜板23の傾角の変更を許容するリンク機構が構成されている。
【0058】
次に、本実施形態の作用について説明する。
図5に示すように、圧縮機10においては、両頭ピストン25から斜板23に対して圧縮反力P1が作用する。この圧縮反力P1によって、斜板23が、斜板23の傾角の変更とは異なる方向(図5に示す矢印R1の方向)に回動してしまうことがある。なお、斜板23の傾角の変更とは異なる方向への斜板23の回動とは、図1において一点鎖線で示した上死点対応部231と下死点対応部232とを結ぶ線L1を回動中心とした斜板23の回動である。
【0059】
しかし、本実施形態では、リンク部材43が上死点対応部231と下死点対応部232との間に配置されている。よって、従来技術のように、移動体側支持部を挟むように一対の斜板側支持部が配置され、各斜板側支持部が、移動体側支持部よりも斜板23の外周寄りに配置されている場合に比べると、斜板23における斜板23の傾角の変更とは異なる方向への回動に伴う、斜板23の傾角の変更とは異なる方向へのリンク部材43の変位が小さくなる。その結果、リンク部材43における斜板23の傾角の変更とは異なる方向への変位に伴って、斜板23の傾角とは異なる方向に回動させようとする力が、第1ピン41を介して各移動体側支持部32cに伝わり難くなる。よって、移動体32が、斜板23の傾角の変更とは異なる方向へ回動してしまうことが抑制され、斜板23の傾角の変更がスムーズに行われる。
【0060】
なお、リンク部材43の一端は、第1ピン41に対して回動可能に支持されているため、挿通孔43aと第1ピン41との間には、リンク部材43における第1ピン41に対する回動を許容するための隙間C1が形成されている。そして、この隙間C1によって、圧縮反力P1に伴う、斜板23における斜板23の傾角の変更とは異なる方向への回動に追従して、第1ピン41が、斜板23の傾角の変更とは異なる方向に回動してしまうことが抑制されている。また、隙間C1は、上死点対応部231と下死点対応部232とを結ぶ線L1を回動中心とした斜板23の回動時に挿通孔43aの一端のみが第1ピン41に当接する大きさである。
【0061】
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)移動体32には、斜板23側に向けて突出する一対の移動体側支持部32cが設けられている。斜板23には、移動体32側に突出するとともに第1ピン41を介して一対の移動体側支持部32cに連結され、第1ピン41に対して回動可能に支持されるリンク部材43が設けられている。そして、リンク部材43は、上死点対応部231と下死点対応部232との間に配置されている。圧縮機10においては、両頭ピストン25から斜板23に対して圧縮反力P1が作用すると、この圧縮反力P1によって、斜板23が、斜板23の傾角の変更とは異なる方向に回動してしまうことがある。しかし、リンク部材43が上死点対応部231と下死点対応部232との間に配置されている。よって、従来技術のように、移動体側支持部を挟むように一対の斜板側支持部が配置され、各斜板側支持部が、移動体側支持部よりも斜板23の外周寄りに配置されている場合に比べると、斜板23における斜板23の傾角の変更とは異なる方向への回動に伴う、斜板23の傾角の変更とは異なる方向へのリンク部材43の変位を小さくすることができる。その結果、リンク部材43における斜板23の傾角の変更とは異なる方向への変位に伴って、斜板23の傾角とは異なる方向に回動させようとする力が、第1ピン41を介して移動体側支持部32cに伝わり難くなる。よって、移動体32が、斜板23の傾角の変更とは異なる方向へ回動してしまうことを抑制することができ、斜板23の傾角の変更をスムーズに行うことができる。
【0062】
(2)リンク部材43は、下死点対応部232と回転軸21との間に配置されている。このような構成は、上死点対応部231と回転軸21との間にリンク部材43を設けるスペースを確保できない場合に有効である。
【0063】
(3)リンク部材43は、斜板23に設けられた一対の連結部23dの間で第2ピン42を介して連結されている。これによれば、斜板23とは別体であるリンク部材43を第1ピン41に対して回動可能に支持することができるため、例えば、リンク部材43を耐摩耗性の優れた材料で形成することで、リンク部材43と第1ピン41との間の摺動抵抗を低減することができる。
【0064】
(4)一対の連結部23dは、斜板23に対して移動体32側とは反対側に突出しており、リンク部材43は斜板23を貫通して、斜板23に対して移動体32側、及び移動体32側とは反対側に突出している。このような構成は、斜板23と移動体32との間のスペースに、第2ピン42を介したリンク部材43と一対の連結部23dとの連結スペースを確保できない場合に有効である。
【0065】
(5)隙間C1は、上死点対応部231と下死点対応部232とを結ぶ線L1を回動中心とした斜板23の回動時に挿通孔43aの一端のみが第1ピン41に当接する大きさである。これによれば、線L1を回動中心とした斜板23の回動時に挿通孔43aの両端が第1ピン41に当接する場合に比べると、リンク部材43が斜板23の傾角の変更とは異なる方向へ回動したときに、移動体32が、第1ピン41を介して斜板23の傾角の変更とは異なる方向へ回動してしまうことを抑制し易くすることができる。
【0066】
(6)一対の連結部23dは、斜板23に対して移動体32側とは反対側に突出しており、リンク部材43は斜板23を貫通している。これによれば、一対の連結部23dが、斜板23に対して移動体32側に突出しており、リンク部材43が斜板23を貫通していない場合に比べると、斜板23と移動体32との間における回転軸21の軸方向のスペースを減らすことができる。その結果、圧縮機10の体格を回転軸21の軸方向において小型化することができる。
【0067】
(7)隙間C1は、上死点対応部231と下死点対応部232とを結ぶ線L1を回動中心とした斜板23の回動時に挿通孔43aの一端のみが第1ピン41に当接する大きさである。例えば、隙間C1が、線L1を回動中心とした斜板23の回動時に挿通孔43aが第1ピン41に当接しない大きさである場合、隙間C1が移動体32の移動制御に影響を及ぼす虞がある。すなわち、隙間C1の大きさは、移動体32の移動制御を向上させるためには極力小さいほうが好ましい。
【0068】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
図6に示すように、リンク部材43の挿通孔43aが、挿通孔43aの中心位置から一方の移動体側支持部32cに向かうにつれて拡径する第1拡径部431aと、挿通孔43aの中心位置から他方の移動体側支持部32cに向かうにつれて拡径する第2拡径部432aとから形成されていてもよい。これによれば、図7に示すように、リンク部材43が斜板23の傾角の変更とは異なる方向へ回動したときに、挿通孔43aの開口端縁に第1ピン41が接触してしまうことを回避し易くすることができる。よって、リンク部材43が斜板23の傾角の変更とは異なる方向へ回動したときに、挿通孔43aの開口端縁に第1ピン41が接触してしまい、移動体32が、第1ピン41を介して斜板23の傾角の変更とは異なる方向へ回動してしまうことを抑制することができる。
【0069】
○ 実施形態において、一対のアーム31a、カム面31b及び突起23cを削除してもよい。そして、駆動力伝達体31に、斜板23側に向けて突出する連結部を設けるとともに、当該連結部に、ピンが挿通可能な挿通孔を形成する。さらに、斜板23に、駆動力伝達体31の連結部に向かって延びる連結部を設けるとともに、当該連結部に、ピンが挿通可能な挿通孔を形成する。そして、ピンによって、駆動力伝達体31の連結部が斜板23の連結部に連結されて、回転軸21の駆動力が駆動力伝達体31を介して斜板23に伝達されて、斜板23が回転運動を行うようにしてもよい。この場合、ピンはリンク機構の一部を構成する。
【0070】
○ 実施形態において、リンク部材43は、上死点対応部231と下死点対応部232との間に配置されていればよく、例えば、上死点対応部231と回転軸21との間に配置されていてもよい。
【0071】
○ 実施形態において、一対の連結部23dが、斜板23に対して移動体32側に突出していてもよい。
○ 実施形態において、リンク部材43を削除してもよい。そして、斜板23に、一対の移動体側支持部32cの間に配置される斜板側支持部が一体形成されていてもよい。
【0072】
○ 本発明を、斜板23に片頭ピストンが係留された片頭ピストン型の可変容量型斜板式圧縮機に具体化してもよい。
次に、上記各実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
【0073】
(イ)前記ピストンは両頭ピストンであることが好ましい。
【符号の説明】
【0074】
10…圧縮機(可変容量型斜板式圧縮機)、11…ハウジング、12…シリンダブロックを形成する第1シリンダブロック、12a…シリンダボアとしての第1シリンダボア、13…シリンダブロックを形成する第2シリンダブロック、13a…シリンダボアとしての第2シリンダボア、21…回転軸、23…斜板、23c…リンク機構を構成する突起、23d…連結部、24…クランク室、25…ピストンとしての両頭ピストン、31b…リンク機構を構成するカム面、32…移動体、32c…移動体側支持部、35…制御圧室、41…リンク機構を構成する第1連結部材としての第1ピン、42…リンク機構を構成する第2連結部材としての第2ピン、43…リンク機構を構成するとともに斜板側支持部に相当するリンク部材、43a…挿通孔、231…上死点対応部、232…下死点対応部、431a…第1拡径部、432a…第2拡径部、C1…隙間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10