特許第6079495号(P6079495)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社豊田自動織機の特許一覧

<>
  • 特許6079495-産業車両 図000002
  • 特許6079495-産業車両 図000003
  • 特許6079495-産業車両 図000004
  • 特許6079495-産業車両 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6079495
(24)【登録日】2017年1月27日
(45)【発行日】2017年2月15日
(54)【発明の名称】産業車両
(51)【国際特許分類】
   B60L 11/18 20060101AFI20170206BHJP
【FI】
   B60L11/18 C
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-157663(P2013-157663)
(22)【出願日】2013年7月30日
(65)【公開番号】特開2015-29376(P2015-29376A)
(43)【公開日】2015年2月12日
【審査請求日】2016年1月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 紀佳
【審査官】 大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭48−10327(JP,Y1)
【文献】 特開2011−131772(JP,A)
【文献】 特開2013−115886(JP,A)
【文献】 特開2013−55787(JP,A)
【文献】 特開2011−176961(JP,A)
【文献】 特開2004−146248(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電可能なバッテリと、
前記バッテリを充電する際に充電用プラグが嵌合される充電用コンセントと、を備えた産業車両において、
前記充電用コンセントは、前記産業車両の車体の一部に設けられた開口扉を開口した際に現れる開口部に配置されており、
前記車体における前記開口部との境界部であるエッジ部の一部には、前記充電用コンセントに前記充電用プラグを嵌合する際の前記充電用プラグの移動経路及び前記充電用コンセントに嵌合されている前記充電用プラグを抜き取る際の前記充電用プラグの移動経路であるプラグ移動経路に沿うガイド面を有するガイド部材が設けられており、
前記ガイド部材は、前記エッジ部の内側に取り付けられており、
前記ガイド面は、前記ガイド部材が取り付けられているエッジ部よりも前記プラグ移動経路に近づく方向に突出しており、
前記充電用コンセントに前記充電用プラグが嵌合された状態において、前記充電用プラグと前記ガイド面との前記プラグ移動経路に直交する方向の間隔として、前記充電用プラグを把持した作業者の手が入る間隔が設けられており、
前記プラグ移動経路は略水平方向であり、
前記ガイド部材の前記ガイド面は、前記プラグ移動経路と平行となるように設定されている、
産業車両。
【請求項2】
請求項1に記載の産業車両であって、
前記ガイド部材は、前記充電用コンセントの下方となる位置に取り付けられている、
産業車両。
【請求項3】
請求項1または2に記載の産業車両であって、
前記ガイド部材は、前記エッジ部と一体的に構成されることなく、前記ガイド部材が取り付けられているエッジ部とは別の部材として構成されている、
産業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電可能なバッテリと充電用コンセントを備えた産業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、バッテリ式フォークリフト等、充電可能なバッテリと充電用コンセントとを備えた種々の産業車両が種々の用途で使用されている。
当該産業車両のバッテリは、車体の一部に設けられた充電用コンセントに、充電用の外部電源に接続された充電用プラグが嵌合されることで充電される。
この充電用コンセントと充電用プラグとの嵌合状態は比較的固いので、作業者は、充電用コンセントに充電用プラグを嵌合する作業、及び充電用コンセントに嵌合されている充電用プラグを抜き取る作業に、多大な労力を要している。
例えば特許文献1には、図4に示すように、電源コード181が外部電源に接続された充電用プラグ180に、作業者が把持可能なハンドル部180Bを設け、車体の一部に設けられた充電用コンセント120に充電用プラグ180を嵌合する作業、及び充電用コンセント120に嵌合されている充電用プラグ180を抜き取る作業、を支援することができる、バッテリ式フォークリフトのための充電用プラグが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−201461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
産業車両の車体の一部に設けられた充電用コンセントと、バッテリを充電するための充電用プラグとの嵌合は比較的固いので、特に充電用コンセントに嵌合されている充電用プラグを把持して抜き取る際、作業者は把持した充電用プラグを上下左右に揺動させながら抜き取る場合がある。
特許文献1に記載の充電用プラグは、図4に示すように、充電用コンセント120に嵌合される充電用プラグ180の本体部180Aよりも遠い位置にハンドル部180Bが設けられている。従って、作業者が、把持しているハンドル部180Bを上下左右に揺動させると、「てこ」の原理で、本体部180Aを直接把持して揺動させるよりも大きな応力が本体部180Aにかかり、充電用コンセント120または充電用プラグの本体部180Aを破損等する可能性が考えられる。
また作業者は、固く嵌合している充電用プラグを充電用コンセントから抜き取る場合、多大な力を必要とするので、勢い余って、充電用プラグや当該充電用プラグを把持している手を、周囲の車体の一部にぶつけてしまう可能性がある。
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、よりシンプルな構造で、車体の一部に設けられた充電用コンセントに充電用プラグを嵌合する作業、及び当該充電用コンセントに嵌合されている充電用プラグを抜き取る作業を、より容易に且つより安全に行うことができる産業車両を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明に係る産業車両は次の手段をとる。
まず、本発明の第1の発明は、充電可能なバッテリと、前記バッテリを充電する際に充電用プラグが嵌合される充電用コンセントと、を備えた産業車両である。
前記充電用コンセントは、前記産業車両の車体の一部に設けられた開口扉を開口した際に現れる開口部に配置されている。
そして、前記車体における前記開口部との境界部であるエッジ部の一部には、前記充電用コンセントに前記充電用プラグを嵌合する際の前記充電用プラグの移動経路及び前記充電用コンセントに嵌合されている前記充電用プラグを抜き取る際の前記充電用プラグの移動経路であるプラグ移動経路に沿うガイド面を有するガイド部材が設けられており、前記ガイド部材は、前記エッジ部の内側に取り付けられており、前記ガイド面は、前記ガイド部材が取り付けられているエッジ部よりも前記プラグ移動経路に近づく方向に突出している。
また、前記充電用コンセントに前記充電用プラグが嵌合された状態において、前記充電用プラグと前記ガイド面との前記プラグ移動経路に直交する方向の間隔として、前記充電用プラグを把持した作業者の手が入る間隔が設けられており、前記プラグ移動経路は略水平方向であり、前記ガイド部材の前記ガイド面は、前記プラグ移動経路と平行となるように設定されている。
【0006】
この第1の発明では、車体のエッジ部の一部には、プラグ移動経路に沿うガイド面を有するガイド部材が、エッジ部の一部の内側に取り付けられており、ガイド面は、ガイド部材が取り付けられているエッジ部よりもプラグ移動経路に近づく方向に突出している。
これにより、作業者は、充電用コンセントに充電用プラグを嵌合する際、充電用プラグを把持した手を、ガイド面及びプラグ移動経路に沿って移動させればよいので、より容易に、より安全に嵌合させることができる。またガイド部材の構造は、ガイド面を有していればよいので、非常にシンプルな構造である。
また作業者は、充電用コンセントに嵌合されている充電用プラグを抜き取る際も同様に、充電用プラグを把持した手を、ガイド面及びプラグ移動経路に沿って移動させればよいので、より容易に、より安全に抜き取ることができる。また、充電用プラグを揺動させながら抜き取った場合、ガイド部材が揺動量を規制するので、充電用コンセントや充電用プラグにかかる応力をより低減させることができる。また、抜き取る際に勢い余った場合であっても、ガイド部材のほうがエッジ部よりもプラグ移動経路の側に突出しているので、作業者がエッジ部に手をぶつけることを防止することが可能であり、より安全である。
【0008】
この第1の発明では、充電用コンセントに充電用プラグが嵌合された状態において、充電用プラグとガイド面との間には、充電用プラグを把持した作業者の手が入る間隔が設けられている。
これにより、作業者が充電用コンセントに充電用プラグを嵌合する作業、及び作業者が充電用コンセントに嵌合されている充電用プラグを抜き取る作業、を適切に支援することができるガイド面の位置を、適切な位置に設定することができる。
【0009】
次に、本発明の第2の発明は、上記第1の発明に係る産業車両であって前記ガイド部材は、前記充電用コンセントの下方となる位置に取り付けられている。
【0010】
この第2の発明ではガイド部材は充電用コンセントの下方となる位置に取り付けられている。
この場合、充電用コンセントには充電用プラグが水平方向に嵌合されることになり、充電用コンセントに充電用プラグを嵌合する作業では、充電用コンセントの下方となる位置に設けられたガイド部材の位置は、作業者の作業を支援するために非常に有効な位置であり、作業が容易となる。また充電用コンセントに嵌合されている充電用プラグを抜き取る作業でも、充電用コンセントの下方となる位置に設けられたガイド部材の位置は、作業者の作業を支援するために非常に有効な位置であり、作業が容易となる。
【0011】
次に、本発明の第3の発明は、上記第1の発明または第2の発明に係る産業車両であって、前記ガイド部材は、前記エッジ部と一体的に構成されることなく、前記ガイド部材が取り付けられているエッジ部とは別の部材として構成されている。
【0012】
この第3の発明では、ガイド部材がエッジ部とは別の部材として構成されている。
これにより、ガイド部材の形状や材質等の自由度が高く、種々の産業車両に対して、ガイド部材を適切な位置に取り付けることが可能である。またガイド部材が取り付けられていない既存の産業車両に対しても、ガイド部材を適切な位置に容易に取り付けることができる。

【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】産業車両の車体の一部に設けられた開口扉を開いた状態と、開口部に配置された充電用コンセント及びガイド部材と、充電用コンセントに嵌合するための充電用プラグの例を説明する斜視図である。
図2図1をBB方向から見た図である。
図3】ガイド部材の位置を調整可能とする例を説明する図である。
図4】従来の充電用プラグ(ハンドル部を備えた充電用プラグ)の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明を実施するための形態を図面を用いて説明する。なお図中にX軸、Y軸、Z軸が記載されている場合、X軸とY軸とZ軸は互いに直交しており、Z軸方向は上に向かう鉛直方向を示しており、X軸方向とY軸方向は水平方向を示している。
【0015】
●[開口扉を開いた状態、及び開口部に配置された充電用コンセント、ガイド部材等(図1図3)]
本発明の産業車両は、例えばバッテリ式のフォークリフトであり、充電可能なバッテリと、当該バッテリを充電する際に充電用プラグが嵌合される充電用コンセントと、を備えている。
図1の斜視図に示すように、産業車両の車体Bの一部には、開口扉B1が設けられており、開口扉B1を開口すると開口部Kが現れる。そして開口部Kには充電用コンセント20、表示手段30、ガイド部材40等が配置されている。
充電用コンセント20は、バッテリ10に接続された電極を有して開口部Kの奥に配置されている。
なお充電可能なバッテリ10は、例えば48[V]または80[V]の電圧を供給可能なバッテリである。
表示手段30は、例えば液晶モニタであり、バッテリの状態や充電状態等を表示する。
ガイド部材40は、車体Bにおける開口部Kとの境界部であるエッジ部EU、ED、EL、ERの一部の内側に取り付けられており、図1及び図2の例では、ガイド部材40は、下方のエッジ部EDの内側に取り付けられている。
またガイド部材40のガイド面40Aは、充電用コンセント20に充電用プラグ80を嵌合する際の充電用プラグ80の移動経路及び充電用コンセント20に嵌合されている充電用プラグ80を抜き取る際の充電用プラグ80の移動経路であるプラグ移動経路Sに沿うように向けられている。従って、ガイド面40Aはプラグ移動経路Sと平行となるように設定されているとともに、プラグ移動経路Sと対向する向きに設定されている。
また充電用プラグ80は、電源コード81に接続された電極(図示省略)を本体部80A内に収容している。そして電源コード81は外部電源(図示省略)と接続されており、バッテリ10の充電が必要となった場合、作業者によって、充電用プラグ80は充電用コンセント20に嵌合される。
【0016】
また図1をBB方向から見た図2に示すように、ガイド面40Aは、プラグ移動経路Sの方向から見た場合(図2の例ではAA方向から見た場合)、ガイド部材40が取り付けられているエッジ部(図2の例ではエッジ部ED)よりも、プラグ移動経路Sに近づく方向に突出している。図2の例では、ガイド面40Aは、エッジ部EDよりも、距離DV1だけプラグ移動経路Sに近づく方向に突出している。
このガイド面40Aの距離DV1の突出量により、作業者が、充電用コンセント20に嵌合されている充電用プラグ80を抜き取る際に勢い余った場合であっても、作業者の手あるいは充電用プラグは、エッジ部EDに接触せずにガイド面40Aに当たるので、より安全である。
なお図2に示すように、距離DV1の突出量は、エッジ部EDよりも所定距離DH1だけ奥の側から突出していることが好ましい。これにより、図1に示す開口扉B1とガイド部材40との干渉を回避することができる。
また図3に示すように、突出量調整手段50N(例えば調整ネジ)を用いて、ガイド面40Aの突出量の距離DV1を調整可能に構成してもよい。図3に示す例では、車体Bのエッジ部EDの内側に支持部B2が設けられており、突出量調整手段50Nは、支持部B2に対するガイド部材40のZ軸方向の位置を調整可能であり、ガイド面40Aの突出量である距離DV1を調整可能である。これにより、ガイド面40Aを、作業者に応じた適切な位置に微調整することが可能である。
【0017】
また図2に示すように、充電用コンセント20に充電用プラグ80が嵌合された状態において、充電用プラグ80とガイド面40Aとの間隔であってプラグ移動経路Sに直交する方向の間隔DV2として、嵌合されている充電用プラグ80を把持した作業者の手が入る程度の間隔(例えば数[cm]程度)が設けられている。
この間隔DV2により、作業者は、把持している充電用プラグ80を充電用コンセント20に嵌合する作業、及び充電用コンセント20に嵌合されている充電用プラグ80を把持して引き抜く作業を、より容易に行うことができる。
また、充電用コンセント20に嵌合されている充電用プラグ80を把持して引き抜く作業を行う際、作業者が、把持した充電用プラグ80を下方向に揺動させた場合、手がガイド面40Aに当たって揺動量が規制されるので、充電用コンセント20や充電用プラグ80にかかる応力をより低減させることができる。
【0018】
また図2に示すように、充電用コンセント20の電極が略水平方向(ほぼ水平方向)を向いておりプラグ移動経路Sが略水平方向である場合、ガイド部材40は、充電用コンセント20の下方となる位置に取り付けられていることが好ましく、下方のエッジ部EDの内側に取り付けられていることが好ましい。
この場合、図1に示すように、作業者には充電用コンセント20とガイド面40Aがよく見えるので、充電用プラグ80を嵌合する場合は把持した充電用プラグ80をガイド面40Aに沿ってプラグ移動経路Sの方向に移動させて容易に嵌合させることができる。また嵌合されている充電用プラグ80を抜く場合も、作業者には充電用コンセント20とガイド面40Aがよく見えるので、把持した充電用プラグ80をガイド面40Aに沿ってプラグ移動経路Sの方向に移動させて容易に抜き取ることができる。
【0019】
またガイド部材40は、車体Bのエッジ部と一体的に構成されることなく、ガイド部材40が取り付けられるエッジ部とは別の部材として構成されていることが好ましい。
別の部材として構成することで、ガイド部材の形状や材質等の自由度が高く、種々の産業車両に対して、ガイド部材を適切な位置に取り付けることが可能である。またガイド部材が取り付けられていない既存の産業車両に対しても、ガイド部材を適切な位置に容易に取り付けることができる。
また図2に示すように、ガイド部材40によって、開口部K内においてガイド部材40に覆われた領域である隔離領域KHが形成される。ガイド部材を備えていない従来の産業車両では、この隔離領域KHはガイド部材等によって覆われていなかったので、充電用プラグ80等が領域内に入った場合を想定して利用できない空間であった。しかし本発明の産業車両では、隔離領域KHはガイド部材40に覆われて保護された空間となるので、種々の用途に利用することができる。
【0020】
以上、本実施の形態の説明では、ガイド部材40とエッジ部とを別の部材で構成した例を説明したが、ガイド部材とエッジ部を一体的に構成してもよい。
また本実施の形態の説明では、ガイド部材40を、開口部Kの下側のエッジ部EDの内側に取り付けた例を説明したが、ガイド部材40を、上側のエッジ部EUの内側、または右側のエッジ部ERの内側、または左側のエッジ部ELの内側等、一部のエッジ部の内側に取り付けられていればよい。また、いずれのエッジ部の内側に取り付けられていても、ガイド面40Aがプラグ移動経路Sに対向するように設定されている。
【0021】
本発明の産業車両は、本実施の形態で説明した構成、構造、形状、外観等に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。
また本実施の形態の説明では、産業車両の例としてバッテリ式のフォークリフトで説明したが、産業車両は、バッテリ式のフォークリフトに限定されず、充電可能なバッテリと、当該バッテリを充電する際に充電用プラグが嵌合される充電用コンセントと、を備えた種々の産業車両に、本発明を適用することが可能である。
また本実施の形態の説明に用いた数値は一例であり、この数値に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0022】
10 バッテリ
20 充電用コンセント
30 表示手段
40 ガイド部材
40A ガイド面
80 充電用プラグ
80A 本体部
B 車体
B1 開口扉
DV1 距離
DV2 間隔
EU、ED、ER、EL エッジ部
K 開口部
KH 隔離領域
S プラグ移動経路

図1
図2
図3
図4