(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
走行車体(1)上に設置された薬液を溜めた薬液タンク(18)を備え、該薬液タンク(18)から走行車体(1)に設置された薬液を散布する薬液散布ブーム(19)に薬液を供給して散布する薬液散布作業車において、
薬液散布ブーム(19)は車体前方のセンタブーム(43)と該センタブーム(43)の両側に開閉自在に連結した左右のサイドブーム(44、44)とからなり、さらに各サイドブーム(44)は基本ブーム(44a)と該基本ブーム(44a)に対してスライド移動自在の伸縮ブーム(44b)から構成され、
基本ブーム(44a)には、伸縮ブーム(44b)をスライド駆動させる主駆動モータ(8)及び伸縮ブーム(44b)の駆動を補助する補助駆動モータ(9)を左右一対ずつ設け、
左右それぞれの主駆動モータ(8)と補助駆動モータ(9)の間に伸縮ブーム(44b)を伸縮させる軌道(11a、37a;11b、37b)を設けたことを特徴とする薬液散布作業車。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1記載の発明によれば、変形圃場などで薬液散布作業(防除作業)中に伸縮ブームを頻繁に伸縮すると、該伸縮ブームをスライドさせる駆動モータが単一モータであるので、モータの発熱により駆動トルクが低下し、伸縮ブームのスライド速度が低下する欠点がある。
【0006】
また、従来は単一駆動モータのみで伸縮ブームを伸縮させる構成では、防除作業中にブームランスが上下又は前後に揺れてしなっている時に伸縮ブームを伸縮させると、基本ブーム内を転がるチェーン軌道用のローラに負荷が生じ、転がり抵抗が発生することで、スライド速度が低下し、又は一時的に停止するおそれがあった。
【0007】
そこで本発明の課題は、薬液散布作業(防除作業)中に伸縮ブームを頻繁に伸縮しても伸縮ブームの駆動モータの発熱を防ぎ、伸縮ブームのスライド速度が低下する欠点のない薬液散布ブームを備えた薬液散布作業車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記本発明の課題を解決するために次のような解決手段を採用する。
すなわち、請求項1記載の発明は、走行車体(1)上に設置された薬液を溜めた薬液タンク(18)を備え、該薬液タンク(18)から走行車体(1)に設置された薬液を散布する薬液散布ブーム(19)に薬液を供給して散布する薬液散布作業車において、薬液散布ブーム(19)は車体前方のセンタブーム(43)と該センタブーム(43)の両側に開閉自在に連結した左右のサイドブーム(44、44)とからなり、さらに各サイドブーム(44)は基本ブーム(44a)と該基本ブーム(44a)に対してスライド移動自在の伸縮ブーム(44b)から構成され、基本ブーム(44a)には
、伸縮ブーム(44b)をスライド駆動させる主駆動モータ(8)
及び伸縮ブーム(44b)の駆動を補助する補助駆動モータ(9)を
左右一対ずつ設け
、左右それぞれの主駆動モータ(8)と補助駆動モータ(9)の間に伸縮ブーム(44b)を伸縮させる軌道(11a、37a;11b、37b)を設けたことを特徴とする薬液散布作業車である。
【0009】
請求項2記載の発明は、
前記基本ブーム(44a)の走行車体(1)側の作動基点部に
各主駆動モータ(8)を設け、更に基本ブーム(44a)の先端部に各補助駆動モータ(9)を設け、各主駆動モータ(8)と各補助駆動モータ(9)の外側にチェーン(11a、11b)を設けて前記軌道(11a、37a;11b、37b)を構成したことを特徴とする請求項1記載の薬液散布作業車である。
【0010】
請求項3記載の発明は、
基本ブーム(44a)の揺れを抑制するテンションバー(36)を前記左右の軌道(11a、37a;11b、37b)間であって基本ブーム(44a)の作動基点部と先端部間に張設し、前記各チェーン(11a、11b)は平面視で基本ブーム(44a)と伸縮ブーム(44b)の幅内に設けられていることを特徴とする
請求項2記載の薬液散布作業車である。
【発明の効果】
【0011】
請求項
1記載の発明によれば、変形圃場などで薬液散布作業(防除作業)中に伸縮ブーム(44b)を頻繁に伸縮しても、該ブーム(44b)をスライドさせる駆動モータ(8、9)を複数設けたことで、駆動トルクが低下することがなく、伸縮ブーム(44b)のスライド速度が低下することもない。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、基本ブーム(44a)の走行車体(1)側の作動基点部に伸縮ブーム(44b)の主駆動モータ(8)を設け、基本ブーム(44a)の先端部に補助駆動モータ(9)を設け、
各主駆動モータ(8)と各補助駆動モータ(9)の外側にチェーン(11a、11b)を設けて軌道(
11a、37a;11b、37b)を
構成したことで、精密部品である主駆動モータ(8)が加速度(G)の影響を受けないので性能トラブルの心配がない。
また、請求項3記載の発明によれば、請求項2記載の発明の効果に加えて、テンションバー(36)により、基本ブーム(44a)の作業中の揺れが抑制されると共に、テンションバー(36)の左右のチェーン軌道で伸縮ブーム(44b)を均等に支持することができ、伸縮ブーム(44b)の伸縮時に抵抗なくスムーズにスライドできる利点がある。更に、各チェーン(11a、11b)は基本ブーム(44a)と伸縮ブーム(44b)の横幅内にあるので、チェーン軌道と機体側の部材が干渉することも無い。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づいてこの発明の実施態様について説明する。
図1に薬液散布装置を前部に取り付けた薬液散布作業車の側面図を示し、
図2には薬液散布作業装置部分の平面図を示す。なお、本明細書では薬液散布作業車の前進方向に向かって左右方向をそれぞれ左、右という。
【0015】
薬液散布作業車の車体1は、前輪12及び後輪13を軸装するアクスルハウジングをローリング自在に支持する。また、ハンドルポスト59により支持されたステアリングハンドル14の回転操作により前輪12を操向すると共にボンネット15下のエンジン(図示せず)によって伝動走行される。この車体1には操縦席17の後部から左右両側にわたって囲うように形成された薬液タンク18を車体1に対し着脱自在に搭載し、この薬液タンク18内の薬液を前側に設けられる散布ブーム19へ圧送する防除ポンプ20が車体1の操縦席17の下方に設けられている。
【0016】
操縦席17の左側下方でフロア54の上方に位置する薬液タンク18の左側部には、オペレータ一人が乗り降りできる程度の凹部Sが設けられ、該凹部Sの底面にタンク側ステップ50が設けられている。タンク側ステップ50の外側下方には、本機側ステップ53が設けられている。この本機側ステップ53は、上面53Aが、フロア54と薬液タンク18の底面とほぼ同一高さとなる位置にある。
【0017】
本機側ステップ53の下方には、フロア54から吊り下げ式に設置された梯子部材55が設けられている。梯子部材55は任意の段数、例えば2段のステップを有している。これらの梯子部材55、本機側ステップ53及びタンク側ステップ50は所定の間隔で配置されている。このような構成によりオペレータは、梯子部材55のステップ、本機側ステップ53及びタンク側ステップ50を順に登ることにより、安全かつ容易に操縦席17に到達して乗車できる。
【0018】
本機のフロア54に薬液タンク18を搭載する自走型薬液散布作業車において、薬液タンク18は本機ダッシュパネル56付近まで前方に突出している。また、薬液タンク18は上面視でオペレータの足元まで完全に覆い囲った略コの字状の構造を有している。このような構造により薬液タンク18の高さを増加させずにタンク容量を増大させるとともに後進時の見通しを確保できる。また、薬液タンク18を前方に長くすることにより、薬液タンク内水量の変位による機体の重心移動を小さく抑え、薬液散布作業時の機体バランスを安定させ、走行性能を高めることができ、機体が後傾して沈没するという事態を回避できる。
【0019】
なお、
図2では薬液タンク18の上面が略コの字形状のものを図示しているが、これに限定されず、タンクステップを有する形状であれば任意の形状にすることができる。
薬液タンク18の先端部形状は、フロア54のフロントに上方へ浮き上がるように湾曲させた傾斜部51と密着するように形成されている。従って、薬液タンク18を後方から前方へ移動させて傾斜部51で合致させて止めることができる。このような構造により前輪12の横揺れ等によるタイヤと薬液タンク18の干渉を防止でき、薬液タンク18の本機のフロア54上での接地性を高め、タンク18の安定性を高めることができる。
【0020】
前記車体1の前部には、ボンネット15の左右両側部に支持されたリフトリンク3が取り付けられている。リフトリンク3は、アッパリンク24とロワリンク25を平行状に配置して、この前端部間をヒッチブラケット4で連結し、後端部間を直立した支柱23に軸支して平行リンク形態に構成され、この平行リンクが昇降シリンダ27,27により先端部が昇降移動することで散布ブーム19の薬液散布高さを調節することができる。
【0021】
ヒッチブラケット4の下端部には機体左右方向に伸びるセンターブーム43を取り付けている。またその左右端部に上方に突出したシリンダ取付支柱26が設けられ、シリンダ取付支柱26の上端には電気的に作動制御される油圧タンク付ソレノイドバルブ28を介して伸縮するローリングシリンダである上下シリンダ(ローリングシリンダ)29の上端が取り付けられ、上下シリンダ29の下端にはサイドブーム44が回動自在に取り付けられている。従って、上下シリンダ29の伸縮によりサイドブーム44が昇降される。なお、サイドブーム44は機体の両サイドに収納されるときはサイドブーム受け40で機体に支持される。
【0022】
前記散布ブーム19は、センターブーム43と、このセンターブーム43の外側に折畳可能に連結されるサイドブーム44とから構成され、各々薬液噴霧用の噴霧ノズル45(45a,45b)が一定間隔で配置されている。
【0023】
サイドブーム44はシリンダ取付支柱26を介してセンターブーム43に取り付けられており、センターブーム43に設けられた開閉シリンダ30により開閉される。 また、トラクタのブーム受け40(
図1)を機体の両側面に設けているので、サイドブーム44を使用しないときにはサイドブーム44はブーム受け40に載置される。
【0024】
指標ロッド52(
図1)は、センターブーム43の中央付近領域から上方に向けて垂直に突出して設けられたロッドである。該指標ロッド52の上端にはLED等からなるランプが付設されており、後述する自動水平制御動作の開始と同時にランプが点灯する。なお、指標ロッド52の下端において、作動機構等と連動して自動水平制御中に回転等するようにしても良い。このような構成によりオペレータにブーム43,44の制御状態を認知させることができ、ブーム43,44の誤操作を回避でき、散布作業時に自動水平スイッチをONにすることを忘れ、ロングブーム(サイドブーム44)の先端のノズル45bが作物と接触し、破損するという不具合を回避できる。
【0025】
ここで自動水平制御動作とは、開閉シリンダ30,30によりサイドブーム44,44をセンターブーム43の延長線上の水平方向(機体の進行方向に向かって左右方向)に開き、さらに上下シリンダ29,29であるローリングシリンダを最大限伸ばした際に、サイドブーム44,44が地面に対して水平状態になるように制御することをいう。具体的には、傾斜地を走行中に薬液散布ブーム19のサイドブーム44を開いていても上下シリンダ29により一方のサイドブーム44をリフトさせ、他方のサイドブーム44をダウンさせることで開いたサイドブーム44を傾斜地に対して平行になるようにして、地面に衝突させないようにする。
【0026】
次に上記構成の薬液散布作業車の制御部について説明する。
図3の制御ブロック図に示すように、本機コントローラ100には操舵切替スイッチと水平関係スイッチ(水平関係スイッチには自動スイッチと平行スイッチと手動スイッチがあり、自動スイッチはブーム43,44を地球の水平線に対して水平に維持する水平制御、平行スイッチは圃場面1に対してブーム43,44の平行姿勢を維持する平行制御、手動スイッチは手動で任意の傾斜位置にブーム43,44の姿勢を変更制御することができる。)、車速センサ6、操舵角センサ7、流量センサ74、コントロールレバーセンサ(薬液散布の入・切用のレバー用センサ)、リフトアームセンサ、ストロークセンサ、スロープセンサ、GPSアンテナ(受信機)81からの信号を受信する入力回路などが接続し、操舵装置(ハンドル14や車輪操舵用の油圧シリンダと該シリンダ作動用のソレノイド等からなる)のソレノイド(本実施例の薬液散布作業車はFWS、4WS、RWSを装備しており、4輪全て油圧シリンダで動く構成である。)、昇降ソレノイド(シリンダ29用)、水平ソレノイド(シリンダ30用)、ブザー、表示部への出力回路等が接続している。
【0027】
図4に示すように、薬液散布作業車(本機)のコントローラ100と、薬液タンク18と薬液散布用ブーム43,44と薬液ホース61,66などとその流量制御弁73などから構成される防除機B(
図8)のコントローラ101から本実施例のコントローラは構成され、本機のコントローラ100にはGPS受信機81が接続される。該GPS受信機81は複数のGPS衛星からの信号を受信し、本機の現在位置データとして記憶すると共に、時計回路で計測する所定時間毎に現在位置データを更新しながら移動距離を算出し、該時計回路による所定時間おきに速度、即ち車速を本機コントローラ100にある車速算出手段5により算出する構成としている。また、本機コントローラ100には車軸の回転数を検知する車速センサ6からも入力がある。
【0028】
本実施例の薬液散布作業車では、該作業車に搭載して車速に連動して薬液を散布する防除機Bにおいて、薬液濃度と車速等により薬液散布量を決めて防除ポンプ65の薬液吐出量を決める。
【0029】
GPS受信機81からの速度データや位置データを本機コントローラ100で受信し、該速度、位置データを演算して車速算出手段5により速度を算出し、得られた値を速度信号に変換した後、防除機コントローラ101にシリアル通信で車速算出手段5による車速(第1車速(VG))として送信する。また、本機には車軸の回転数を車速パルスで計測する車速センサ6が設けられており、該車速センサ6からも車速(第2車速(Vs))を得ることができる。こうしてGPS受信機81から得られる車速算出手段5に基づく第1車速(VG)と本機に設けた車速センサ6から得られる第2車速(Vs)を本機側のコントローラ100で計算し、CAN通信により防除機コントローラ101に速度データを送り、薬液散布制御に利用する構成とする。
【0030】
通常は、車両の発進直後と停止直前は車速センサ6に基づく第2車速(Vs)を車速とし、安定走行時にはGPSによる第1車速(VG)を車速とする場合が多い。
本実施の形態の散布幅15mの散布ブーム19のサイドブーム44はズーム式のものである。
【0031】
図5は、基本ブーム44aに伸縮ブーム44bを最大限縮小方向にスライドさせて配置した場合のサイドブーム44の側面図であり、
図6は、サイドブーム44の伸張時(
図6(a))と短縮時(
図6(b))の平面図である。また、
図7(a)には
図6のA−A線矢視図を示し、
図7(b)には
図7(a)の斜視図を示す。
図5、
図6に示すように、サイドブーム44は基本ブーム44aとスライド移動が自在な伸縮ブーム44bとからなり、基本ブーム44aの上を摺動する筒状のスライド体44cの内部で伸縮ブーム44bが固定支持されている。
尚、図5〜図7は参考例とする。
【0032】
補助駆動モータ9と支柱31は、基本ブーム44aの先端部に取り付けられ、駆動モータ8は基本ブーム44aの基部側に取り付けられ、スライド体44cに伸縮ブーム44bが固定されている。また、
図7(a)に示すように、スライド体44c内にローラ44d,44e,44eを介して摺動自在に支持された基本ブーム44aと、スライド体44c内に固定支持された伸縮ブーム44bが配置されている。
【0033】
補助駆動モータ9と支柱31は、基本ブーム44aの先端部に取り付けられており、基本ブーム44aの先端部は
図5に示す通りであり、
図5、
図6(b)に示すように、伸縮ブーム44bを最大限縮小方向にスライドさせた場合は、伸縮ブーム44bの先端部と基本ブーム44aの先端部は略一致している。
【0034】
なお、
図5では基本ブーム44aは基部側を主に示し、その先端部の図示は省略しており、また伸縮ブーム44bは逆にその先端部を示し、基部側の図示を省略している。
図5に示すように、薬液を伸縮ブーム44bのノズル45bに供給するホース77bは基本ブーム44aの基部と先端部にそれぞれ設けられている支柱31と支柱21の間に張られているテンションバー36に巻き付けられている。
【0035】
基本ブーム44aの噴霧ノズル45aは開閉調整式のものを使用すれば、伸縮ブーム44bの伸縮の程度に応じて伸縮ブーム44bの噴霧ノズル45bの位置が噴霧ノズル45aの位置と重複する場合には噴霧ノズル45aから薬剤を噴霧しないようにすることもできる。
【0036】
また、正、逆転作動する主駆動モータ8のスプロケット33にチェーン11が巻回されており、また、補助駆動モータ9のローラ32にケーブル37が巻回されている。そして、
図5に示すように、チェーン11とケーブル37はプレート38を介してスライド体44cに連結されており、スライド体44cがスライドすることで、伸縮ブーム44bが基本ブーム44aに沿ってスライドする。
【0037】
このように、サイドブーム44には伸縮ブーム44bをスライド駆動させる主駆動モータ8を設け、さらに伸縮ブーム44bの先端部に伸縮ブーム44bの駆動を補助する補助駆動モータ9を設けたことにより、2つの駆動モータ8,9で伸縮ブーム44bを伸縮できるので、変形圃場などで薬液散布作業(防除作業)中に伸縮ブーム44bを頻繁に伸縮すると、該ブーム44をスライドさせる主駆動モータ8が従来のように単一モータであると、過負荷によるモータ8の発熱により駆動トルクが低下し、伸縮ブーム44bのスライド速度が低下する欠点を解消できる。
【0038】
図5に示すように、基本ブーム44aのノズル45aには本機側の防除ポンプ65から薬液が送られてくるメインホース77から分岐している第1分岐ホース77aから薬液が供給され、伸縮ブーム44bのノズル45bには、本機側の防除ポンプ65からメインホース77から分岐している第2分岐ホース77bから薬液が供給される。
【0039】
また、伸縮ブーム44bのノズル45bに薬液を送る伸縮ホース77bは、基本ブーム44aの基部側と先端部にある一対の支柱21、31の頂部の間に張られたテンションバー36に巻き付けられており、伸縮ブーム44bの伸縮に対応できるようになっている。
【0040】
操作席の図示しない操作スイッチで主駆動モータ8を正転又は逆転して伸縮ブーム44bの伸縮制御ができる。サイドブーム44の伸縮ブーム44bを伸ばしきると全体の散布ブーム19の幅が約15m長になる。
【0041】
また、
図7(a)のランス先端部側から見た図に示すように基本ブーム44aの地面に対する高さと伸縮ブーム44bの地面に対する高さをほぼ同一になるように並列配置にした。さらに、基本ブーム44aと伸縮ブーム44bにはそれぞれ噴霧ノズル45a、45bを設けるが、基本ブーム44aには
図7(a)に示すように少量の薬剤噴霧用の小径噴霧ノズル45a’を設けても良い。
【0042】
図8(a)には基本ブーム44aの先端方向に少し伸ばした伸縮ブーム44bを示す側面図を示し、薬液タンク18とサイドブーム44の噴霧ノズル45a、45bを薬液ホース77で接続した状態を示し、
図8(b)には、
図8(a)に示す基本ブーム44aの先端方向に伸縮ブーム44bを伸ばして配置した場合のサイドブーム44の平面図を示す。なお
図8(a)、
図8(b)の部分拡大部を
図9(a)、
図9(b)に示す。
【0043】
基本ブーム44aの機体側の作動起点部に伸縮ブーム44bを個別に独立してスライド可能なスライド駆動モータ8a、8bをそれぞれ配置した構成を示す。
なお、
図8(a)には
図5(a)と同様に防除タンクからの一対の伸縮ブーム44b、44bのノズル45bに薬液を供給する構成も示している。
【0044】
図5と同様に、過負荷によりモータの発熱により駆動トルクが低下し、伸縮ブーム44bのスライド速度が低下する欠点を解消できる。
図8に示す構成により基本ブーム44aの機体側の作動起点部に伸縮ブーム44b作動用の主駆動モータ8a、8bを左右一対設けたことで、精密部品である主駆動モータ8が加速度(G)の影響を受けないので性能トラブルの心配がない。即ち、加速度(G)の影響を受けないとは、基本ブーム44aの先端側は、機体の揺動に伴い頻繁に揺れるので、常時加速度が発生している。このような状況が長時間続くと、モータ8の性能劣化が発生してしまう。基本ブーム44aの機体側の作動起点部は、あまり揺れないので、主駆動モータ8、8を設けても加速度の影響を少なくできる。
【0045】
図8に示す構成で、伸縮ブーム44bは主駆動モータ8、8でそれぞれ駆動される一対のチェーン11a、11bでスライド駆動できる構成となっている。
従来は単一駆動モータのみで伸縮ブーム44bを伸縮させていたが、防除作業中にブームランスが上下又は前後に揺れてしなっている時に伸縮ブーム44bを伸縮させると、基本ブーム44aの中間部に設けたスライド体44c内を転がるチェーン軌道用のローラ44d,44e(
図7,
図9)に負荷(ローラ44d,44eが基本ブーム44aを走るときの走行抵抗)が生じ、転がり抵抗が発生することで、スライド速度が低下し、又は一時的に停止するおそれがあった。
【0046】
しかし2つのチェーン軌道を有するサイドブーム44を機体1の左右に一対設けることで、スライドする伸縮ブーム44bの作動力(伸縮する方向への推進力)が大幅(2倍)に改善するので、ブーム44bのスライド操作不良がなくなる。
【0047】
また伸縮ブーム44bの先にさらに別の伸縮ブームを設置することがあっても、ブーム駆動モータを順次増やすことで対処できる。
図8(b)の平面図に示すように、2つのチェーン軌道を有するサイドブーム44を機体1の左右に一対設け、伸縮ブーム44bを伸縮(スライド)させる2つの駆動モータ8a、8bの外側に各チェーン11の軌道を配置したことでブーム44bの量産時、及びブーム44構成部品の組み立て時にチェーン11をモータ8に組み付け易い。
【0048】
また、先端の伸縮ブーム44bをスライドさせる一対のチェーン11a、11bをそれぞれ駆動させる一対の駆動モータ8a、8bと基本ブーム44aの先端部にあるそれぞれのチェーン11a、11bが掛けわたされた一対のローラ32a、32bの間の距離、一対のローラ32a、32bの基本ブーム44aからの設置高さを同等とする構成を2つのチェーン軌道を有するサイドブーム44を機体1の左右に一対設けることで、駆動モータ8a、8bの作動時に、一対の駆動モータ8a、8bが完全に同期するので、チェーン11が基本ブーム44a上でねじれることがなく、スムーズに伸縮ブーム44bがスライドすることができる作用効果がある。
【0049】
前記一対のローラ32a、32bは、従動ローラであるので駆動していないが、
本実施例では、図5に示
すように補助駆動モータ9で駆動する構成
とする。即ち、各ローラ32a、32bを駆動する補助駆動モータ9をそれぞれ設けた構成とする。
また、2つのチェーン軌道を有するサイドブーム44を機体1の左右に一対設けた場合に、先端の伸縮ブーム44bをスライドさせる一対のチェーン11a、11bが平面視で基本ブーム44aの作業中の揺れを抑制するテンションバー36の左右にそれぞれ配置するので、基本ブーム44aの終端部がたれないように、やや持ち上げ気味に基本ブーム44aを引っ張るのでテンションバー36の左右のチェーン軌道で伸縮ブーム44bを均等に支持することができ、伸縮ブーム44bの伸縮時に抵抗なくスムーズにスライドできる利点がある。
【0050】
また、先端の伸縮ブーム44bをスライドさせる一対のチェーン11a、11bが平面視で平行であり、基本ブーム44aと伸縮ブーム44bの横幅内にあるので、チェーン軌道とブーム受け40が干渉すること無く、ブーム受け40にサイドブーム44を格納することができる。
【0051】
このことは、2つのチェーン軌道を有するサイドブーム44を機体1の左右に一対設ける場合も同様であり、チェーン軌道とブーム受け40が干渉すること無く、ブーム受け40にサイドブーム44を格納することができる。
【0052】
また、
図8(a)に示すような薬液散布配管系統の構成を採用した。薬液タンク18からの給水路(ホース)61に給水コック62を設け、該給水コック62より下流の給水路(ホース)61に設けたサクションフィルタ64の出口部に防除ポンプ65を設ける。該防除ポンプ65の出口部には吐水ホース66を接続し、該吐水ホース66の先端は希釈薬液路67を介して噴霧コック69の設置部に接続している。前記吐水ホース66と希釈薬液路67の間に上流側から順に安全弁70とエアチャンバー71と流量制御弁73と流量センサ74が設置されている。
【0053】
また安全弁70の圧力設定部の吐水ホース66と薬液タンク18との間に余水ホース75が接続されている。前記安全弁70を開いておくと、吐水ホース66内の余分な薬液を薬液タンク18に還流させることができる。また、余水ホース75の設置部より上流側の吐水ホース66から分岐して薬液タンク18に接続した攪拌ホース79も設けられている。
【0054】
薬液は噴霧コック69を経由して前記センターブーム43,サイドブーム44に供給される構成になっている。各ブーム43,44への希釈薬液の単位面積(例えば10アール)当たりの供給量(A)は流量制御弁73で調整できる。なお、流量制御弁73は
図3の制御ブロック図に示す流量制御モータ10で開度が制御される。