(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6080037
(24)【登録日】2017年1月27日
(45)【発行日】2017年2月15日
(54)【発明の名称】シャッター付サッシ
(51)【国際特許分類】
E06B 9/17 20060101AFI20170206BHJP
E06B 3/32 20060101ALI20170206BHJP
【FI】
E06B9/17 M
E06B9/17 N
E06B3/32 B
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-216359(P2012-216359)
(22)【出願日】2012年9月28日
(65)【公開番号】特開2014-70400(P2014-70400A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2015年6月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】302045705
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100123663
【弁理士】
【氏名又は名称】広川 浩司
(72)【発明者】
【氏名】堤 賢司
【審査官】
仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−132363(JP,A)
【文献】
特開2004−124434(JP,A)
【文献】
特開2000−130055(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 9/00−9/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上枠と下枠及び左右の縦枠を枠組みしてなる枠体を有し、前記上枠は扉体を支持すると共に巻き上げて収納自在な収納部を有するシャッター付サッシにおいて、
前記左右の縦枠の室外側には前記扉体の左右端部を案内するガイドレール部材が設けられ、前記収納部は前記扉体を巻回自在な巻き取り軸を支持する側面を有し、
前記ガイドレール部材の上端部には、前記収納部の側面との間に加熱発泡材が設けられ、
前記収納部の側面には前記ガイドレール部材の上端部を納める下方凹状の切欠部が形成され、前記ガイドレール部材の上端面と前記切欠部の上端との間に空間部が形成され、前記加熱発泡材は前記空間部に臨むように配置されることを特徴とするシャッター付サッシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物開口部に設けられる枠体の上枠に巻回自在な扉体を納める収納部を設けたシャッター付サッシに関し、特に火災発生時に収納部の内外を閉塞して防火性能を高くしたシャッター付サッシに関する。
【背景技術】
【0002】
建物開口部に設けられる枠体の上枠に巻回自在な扉体を納める収納部を設けたシャッター付サッシにおいて、高い防火性能を求められる場合がある。火災は、シャッター付サッシの室内側で発生する場合と室外側で発生する場合とがあるが、いずれの場合でも、シャッター付サッシによる室内外の遮蔽状態が維持されることが求められる。
【0003】
シャッター付サッシの防火対策としては、収納部の室外側面に防火板を設け、建物開口部とサッシの枠体との間の隙間を塞ぐものがあった。このようなシャッター付サッシとして例えば特許文献1に挙げるようなものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−32437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シャッター付サッシの枠体を構成する縦枠には、扉体の左右端部を上下方向に案内するガイドレール部材が設けられる。ガイドレール部材の上端部は、収納部を構成する側壁の位置まで達している。ガイドレール部材は、縦枠に取付ける際に上側に持ち上げる必要があるため、収納部の側壁には下部に凹状の切欠部が形成されている。
【0006】
ガイドレール部材を縦枠に取付けると、収納部の側壁に形成された切欠部の部分が開口した状態となるため、これを塞ぐように樹脂カバー及び金属製の裏板が取付けられる。しかし、火災発生時にシャッター付サッシが高温に晒されると、樹脂カバーは溶融して脱落し、金属製の裏板も変形するため、この部分に隙間を生じることとなる。収納部の側壁に隙間を生じると、そこから高温のガスが侵入し、収納部内に設けられた樹脂製の部品が溶け落ちてさらなる隙間を発生したり、あるいは室内側に火炎を露出させるといった問題を生じる可能性があった。また、この場合、ガイドレールの上端部が隙間を介して室外側に露出するため、ガイドレールの内部が室外側と連通し、ガイドレール内部を経て室内側までが連通して、シャッター付サッシによる遮蔽性能が低下する可能性もあった。
【0007】
本発明は前記課題を鑑みてなされたものであり、収納部及びガイドレール部材が火災発生時においても室外側と連通しないようにしたシャッター付サッシを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、請求項1の発明に係るシャッター付サッシは、上枠と下枠及び左右の縦枠を枠組みしてなる枠体を有し、前記上枠は扉体を支持すると共に巻き上げて収納自在な収納部を有するシャッター付サッシにおいて、
前記左右の縦枠の室外側には前記扉体の左右端部を案内するガイドレール部材が設けられ、前記収納部は前記扉体を巻回自在な巻き取り軸を支持する側面を有し、
前記ガイドレール部材の上端部には、前記収納部の側面との間に加熱発泡材が設けられ
、
前記収納部の側面には前記ガイドレール部材の上端部を納める下方凹状の切欠部が形成され、前記ガイドレール部材の上端面と前記切欠部の上端との間に空間部が形成され、前記加熱発泡材は前記空間部に臨むように配置されることを特徴として構成されている。
【0009】
請求項1に係る発明によれば、火災発生時には加熱発泡材が発泡して体積が増加し、ガイドレール部材の上端部と収納部の側面との間を塞ぐことができる。
また、加熱発泡材が収納部の側面に形成された切欠部との間の空間部に臨んでいるので、火災発生時には空間部を確実に閉塞することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るシャッター付サッシによれば、火災発生時に加熱発泡材が発泡することによって、収納部が室外側と連通する隙間を塞ぎ、さらに、ガイドレール部材も上端部を閉塞して室外側と連通しないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態におけるシャッター付サッシの縦断面図である。
【
図2】本実施形態におけるシャッター付サッシの横断面図である。
【
図5】ガイドレール部材上端付近の分解斜視図である。
【
図6】火災発生時における収納部付近拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態について図面に沿って詳細に説明する。
図1には本実施形態におけるシャッター付サッシの縦断面図を、
図2には本実施形態におけるシャッター付サッシの横断面図を、それぞれ示している。これら各図に示すように、本実施形態のシャッター付サッシは、箱状を有する収納部2を有する上枠10と下枠11及び左右の縦枠12,12を方形状に枠組みした枠体1を有してなるものであり、この枠体1が建物開口部の室外側部分に取付けられる。
【0015】
収納部2は、上面20と下面21及び側面22を有しており、側面22には巻き取り軸23が回動自在に取付けられていて、多数のスラット30を上下方向に連結してなる扉体3を巻回可能としており、収納部2内に扉体3を収納可能となるように構成されている。扉体3は、収納部2の下部に形成された開口部24から下方に引き出し自在となっている。なお、
図1は扉体3を引き出して全閉とした状態を表している。
【0016】
収納部2を有する上枠20は、上面20を構成する上側部材15と、下面21を構成する下側部材16とを有し、収納部2はさらに、側面22を構成する側面部材18と、上側部材15から収納部2の室外側面を構成するカバー部材17を有している。
【0017】
縦枠12の室外側には、扉体3の左右端部を上下方向に案内するガイドレール部材13が設けられている。ガイドレール部材13は、扉体3の左右端部を飲み込む凹状の案内部13aを備え、案内部13aの室外側には室外中空部13cを有している。室外中空部13c内にはスチール製のガイドレール補強材13dが設けられている。また、ガイドレール部材13が縦枠12に取付けられることで、案内部13aの外周側及び室内側には室内中空部13eが形成される。
【0018】
扉体3の下端部には、ガイドレール部材13間の略全長に渡る幅を有した幅木部材31が設けられる。幅木部材31は、面状に形成された室外面部31aの室外側に、逆L字状に突出する一体的な把手部31bを有し、室外面部31aの室内側にはロックカバー材33が設けられている。室外面部31aとロックカバー材33に囲まれた領域には、扉体3が全閉となったときに幅木部材31をロックするロック機構が納められる。
【0019】
下枠21の室外側部には、幅木部材31を納めることができる凹状の溝部11aが形成されている。幅木部材31を枠体1の下端部に配置することで、幅木部材31が溝部11aに納められると共に、溝部11aを構成する下枠21の室外側面11bを、幅木部材31の把手部31bが跨いだ状態となる。
【0020】
図3には、
図1のうち収納部2付近の拡大図を示している。収納部2の開口部24は、室内側の縁部が下側部材16の室外端部によって構成され、室外側の縁部がカバー部材17の下端部によって構成されている。開口部24の室外側の縁部には、長手方向に沿ってモヘア部材25が設けられ、扉体3の室外側面に当接している。
【0021】
開口部24の室外側の縁部となるカバー部材17の内面下端部には、開口部24の長手方向に沿って支持体40が設けられている。支持体40は、カバー部材17の内面形状に略沿う外形状を有した断面中空状の基部40aを備え、基部40aの上方には傾斜面状の支持面40bを有している。基部40a内には、開口部24の室外側縁部を補強するため開口補強材41が設けられている。また、基部40aの室内側面には、前述のモヘア部材25が固定され、支持面40bには加熱発泡材42が取付けられる。加熱発泡材42は、シート状に形成され所定温度以上になると体積が数十倍に増加するものである。加熱発泡材42は、支持面40bに対してリベット止めにより固定されている。
【0022】
支持体40の支持面40bは、室内側斜め上方に面する傾斜面状となっており、支持面40bに固定される加熱発泡材42も、同様に室内側斜め上方に面することとなり、扉体3の室外側面と対向する。
【0023】
巻き取り軸23に一端が固定されている扉体3は、巻き取り軸23の室外側から垂下され、開口部24から下方に伸びている。扉体3の室外側面と対向する加熱発泡材42は、開口部24近傍に配置されているから、扉体3の室外側面のうち開口部24近傍の部分と対向する。
【0024】
図4には、収納部2を構成する部品の分解斜視図を示している。この図では、カバー部材17については省略している。収納部2は、室内側面を構成する背面部材19と、両側の側面を構成する側面部材18とを有し、側面部材18間には前述の支持体40が渡される。加熱発泡材42は、支持体40の長手方向略全長に渡って設けられる。
【0025】
側面部材18は、内面側に巻き取り軸23を支持する軸支持部18aを有し、下端部から収納部2内に下面張出部18bが張り出している。また、側面部材18の下辺室外側部分は、凹状に切り欠かれた切欠部18cが形成されている。側面部材18はスチール製であり、支持体40及び開口補強材41は、側面部材18に対してネジ止め固定される。
【0026】
支持体40のうち、支持面40bを有する略V字状の部材は、開口補強材41に対してネジ止め固定されている。したがって、支持面40bはスチール製の開口補強材41を介してスチール製の側面部材18に対して固定されており、火災発生時に収納部2が高温に晒され、アルミ部材が軟化、溶融などしても、加熱発泡材42を確実に保持しておくことができる。
【0027】
図5には、ガイドレール部材13上端付近の分解斜視図を示している。ガイドレール部材13は、上端部が側面部材18の切欠部18c下部に納められた状態となっており、ガイドレール部材13と切欠部18cの上端位置との間には隙間となる空間部13bが形成されている。この部分を塞ぐため、側面部材18に対しては金属製の裏板部材50が取付けられ、さらに裏板部材50を覆うように樹脂カバー体51が取付けられる。
【0028】
ガイドレール部材13の上端部には、側面部材18の切欠部18cとの間に形成される空間部13bに臨むように加熱発泡材43が配置される。加熱発泡材43は、リベット止めによりガイドレール部材13に対して固定されている。
【0029】
図6には、火災発生時における収納部2付近拡大断面図を示している。火災が発生してシャッター付サッシが高温に晒された場合、特に、室外側での火災によって高温に晒されると、開口部24の室外側縁部と扉体3の室外側面との間には、大きな隙間があって収納部2の内外が連通しているため、室外側からの高温のガスが収納部2内に侵入する可能性がある。これに対し、
図6に示すように、開口部24近傍に設けられた加熱発泡材42が発泡して体積が膨張することにより、支持体40の支持面40bから扉体3の室外側面までが加熱発泡材42で充填され、開口部24の室外側縁部と扉体3の室外側面との間の隙間が塞がれるので、収納部2内への高温のガスの侵入を防止することができる。
【0030】
支持体40及び加熱発泡材42が高温になる過程において、加熱発泡材42が支持面40bから自重により脱落する可能性があるのに対し、支持面40bが傾斜面状となっていることにより、これを防止することができる。また、支持面40bが傾斜面状となっていることにより、扉体3が開閉する際に加熱発泡材42が干渉しないようにすることもできる。
【0031】
また、シャッター付サッシが高温に晒された場合、ガイドレール部材13と側面部材18の切欠部18cとの間の空間部13bを塞いでいる裏板部材50は、熱によって変形し、樹脂カバー体51も溶融して脱落するので、空間部13bが収納部2内と連通する隙間となってしまう。これに対し、
図6に示すように、ガイドレール部材13の上端部に設けられた加熱発泡材43が発泡して体積が膨張することにより、空間部13bの隙間が塞がれるので、収納部2内への高温のガスの侵入を防止することができる。
【0032】
このように、収納部2の下面21に形成された開口部24と扉体3の間に生じる隙間について、開口部24の室外側縁部に扉体3の室外側面と対向する加熱発泡材42を設けていることで、火災発生時に加熱発泡材42が発泡することによって、収納部2が室外側と連通する隙間を塞ぐことができ、防火性能を高くすることができる。
【0033】
また、収納部2の側面22においてガイドレール部材13の上端部との間に形成される空間部13bについて、ガイドレール部材13の上端部に加熱発泡材43を設けていることで、火災発生時に加熱発泡材43が発泡することによって、収納部2が室外側と連通する隙間を塞ぎ、さらに、ガイドレール部材13の中空内部も室外側と連通しないように塞ぐことができる。特に、ガイドレール部材13の中空内部は室内側とも連通しているので、室外側と連通しないように塞ぐことで防火性能を大きく向上させることができる。
【0034】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の適用は本実施形態には限られず、その技術的思想の範囲内において様々に適用されうるものである。
【符号の説明】
【0035】
1 枠体
2 収納部
3 扉体
10 上枠
11 下枠
12 縦枠
13 ガイドレール部材
13b 空間部
17 カバー部材
18 側面部材
18c 切欠部
19 背面部材
20 上面
21 下面
22 側面
23 巻き取り軸
24 開口部
30 スラット
31 幅木部材
40 支持体
40b 支持面
41 開口補強材
42 加熱発泡材
43 加熱発泡材
50 裏板部材
51 樹脂カバー体