特許第6080039号(P6080039)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6080039-シャッター及びシャッター付サッシ 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6080039
(24)【登録日】2017年1月27日
(45)【発行日】2017年2月15日
(54)【発明の名称】シャッター及びシャッター付サッシ
(51)【国際特許分類】
   E06B 9/80 20060101AFI20170206BHJP
   E06B 9/17 20060101ALI20170206BHJP
【FI】
   E06B9/80 D
   E06B9/17 U
   E06B9/17 M
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-226925(P2012-226925)
(22)【出願日】2012年10月12日
(65)【公開番号】特開2014-77324(P2014-77324A)
(43)【公開日】2014年5月1日
【審査請求日】2015年6月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】302045705
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100123663
【弁理士】
【氏名又は名称】広川 浩司
(72)【発明者】
【氏名】堤 賢司
【審査官】 仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−217986(JP,A)
【文献】 特開2004−257177(JP,A)
【文献】 特開2013−44195(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 9/00−9/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上枠と下枠及び左右の縦枠を枠組みしてなる枠体を有し、前記上枠は扉体を支持すると共に巻き上げて収納自在な収納部を有するシャッターにおいて、
前記扉体は下端部に幅木部材を有し、該幅木部材はロック機構が取付けられ、該ロック機構と前記幅木部材との間に加熱発泡材が設けられることを特徴とするシャッター。
【請求項2】
前記加熱発泡材は前記幅木部材の室外側壁に設けられ、前記加熱発泡材を覆うように前記ロック機構が前記幅木部材の室外側壁に取付けられ、前記ロック機構を覆うようにロックカバー材が前記幅木部材の室外側壁に取付けられることを特徴とする請求項1記載のシャッター。
【請求項3】
前記ロック機構には樹脂部品が用いられ、前記加熱発泡材は前記樹脂部品が溶融温度に達する前に発泡することを特徴とする請求項1または2記載のシャッター。
【請求項4】
サッシ枠体内に障子を納めてなり、請求項1〜3のいずれか1項に記載のシャッターを室外側に一体的に有してなることを特徴とするシャッター付サッシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物開口部に設けられる枠体の上枠に巻回自在な扉体を納める収納部を設けたシャッター及びシャッター付サッシに関し、特に扉体の下端に設けられる幅木部材における防火性能を高めたシャッター及びシャッター付サッシに関する。
【背景技術】
【0002】
枠体の上枠に巻回自在な扉体を納める収納部を設けたシャッターやシャッター付サッシが建物開口部に設けられることがある。シャッターの扉体は、複数のスラットを上下方向に連結してなり、下端部には扉体の略全幅に渡る幅木部材が設けられる。幅木部材は、室外側面に持ち手部を備え、さらに、扉体を閉じた際にロック状態とするロック機構が内蔵されている。このようなシャッターとして例えば特許文献1に挙げるようなものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−163740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シャッターにおいては、高い防火性能を求められる場合がある。火災は、シャッターの室内側で発生する場合と室外側で発生する場合とがあるが、いずれの場合でも、シャッターによる室内外の遮蔽状態が維持されることが求められる。火災時において、扉体が高温に晒されても閉塞状態を維持することが、防火性能の確保には必要となる。扉体は鋼製であるため、火災発生時にも基本的には閉塞状態を維持することができる。一方、幅木部材内に内蔵されたロック機構には、樹脂部品も用いられているが、これが溶融して脱落することにより、発火する可能性があって、これを防止する必要があった。
【0005】
火災発生時のロック機構における樹脂部品の脱落を防止するため、ロック機構に難燃性の部品を採用することや、ロック機構内に熱が侵入することを防止するような構造とすることも考えられる。しかし、このように部品の材料や構造を防火用に変更すると、通常のシャッターとの部品及び構造の差異が大きく、部品の共用化が図れないことによってコストを大きくする要因となっていた。
【0006】
前記課題を解決するため、請求項1の発明に係るシャッターは、上枠と下枠及び左右の縦枠を枠組みしてなる枠体を有し、前記上枠は扉体を支持すると共に巻き上げて収納自在な収納部を有するシャッターにおいて、
前記扉体は下端部に幅木部材を有し、該幅木部材はロック機構が取付けられ、該ロック機構と前記幅木部材との間に加熱発泡材が設けられることを特徴として構成されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明によれば、火災発生時には加熱発泡材がロック機構の周囲を充填し、ロック機構に用いられている樹脂部品を閉じ込めることができる。
【0008】
また、請求項2の発明に係るシャッターは、前記加熱発泡材は前記幅木部材の室外側壁に設けられ、前記加熱発泡材を覆うように前記ロック機構が前記幅木部材の室外側壁に取付けられ、前記ロック機構を覆うようにロックカバー材が前記幅木部材の室外側壁に取付けられることを特徴として構成されている。
【0009】
請求項2に係る発明によれば、火災発生時に加熱発泡材に対し幅木部材から熱が伝わりやすく、加熱発泡材が早期に発泡してロック機構の周囲を充填すると共に、発泡する空間が幅木部材とロックカバー材で規制されるため、ロック機構内を高密度に充填することができる。
【0010】
請求項2に係る発明によれば、火災発生時に加熱発泡材に対し幅木部材から熱が伝わりやすく、加熱発泡材が早期に発泡して空間部を充填すると共に、発泡する空間が幅木部材とロックカバー材で規制されるため、ロック機構内を高密度に充填することができる。
【0011】
さらに、請求項3の発明に係るシャッターは、前記ロック機構には樹脂部品が用いられ、前記加熱発泡材は前記樹脂部品が溶融温度に達する前に発泡することを特徴として構成されている。
【0012】
請求項3に係る発明によれば、火災発生時に樹脂部品が溶融する前に、加熱発泡材でロック機構を充填し、溶融した樹脂材の外部への流出を防止することができる。
【0013】
また、請求項4の発明に係るシャッター付サッシは、サッシ枠体内に障子を納めてなり、前記いずれかのシャッターを室外側に一体的に有してなることを特徴として構成されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るシャッター及びシャッター付サッシによれば、加熱発泡材により火災発生時にロック機構の樹脂部品を閉じ込めることができるので、ロック機構の部品や構造をできるだけ変更することなく防火性能を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態におけるシャッターの縦断面図である。
図2】本実施形態におけるシャッターの横断面図である。
図3】幅木部材付近の拡大縦断面図である。
図4】幅木部材とロック機構及びロックカバー材の分解斜視図である。
図5】ロック機構の正面図である。
図6】被押圧部が押圧された際のロック機構の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態について図面に沿って詳細に説明する。図1には本実施形態におけるシャッターの縦断面図を、図2には本実施形態におけるシャッターの横断面図を、それぞれ示している。これら各図に示すように、本実施形態のシャッターは、箱状を有する収納部2を有する上枠10と下枠11及び左右の縦枠12,12を方形状に枠組みした枠体1を有してなるものであり、この枠体1が建物開口部の室外側部分に取付けられる。
【0017】
収納部2は、上面20と下面21及び側面22を有しており、側面22には巻き取り軸23が回動自在に取付けられていて、多数のスラット30を上下方向に連結してなる扉体3を巻回可能としており、収納部2内に扉体3を収納可能となるように構成されている。扉体3は、収納部2の下部に形成された開口部24から下方に引き出し自在となっている。なお、図1は扉体3を引き出して全閉とした状態を表している。
【0018】
収納部2を有する上枠20は、上面20を構成する上側部材15と、下面21を構成する下側部材16とを有し、収納部2はさらに、側面22を構成する側面部材18と、上側部材15から収納部2の室外側面を構成するカバー部材17を有している。
【0019】
縦枠12の室外側には、扉体3の左右端部を上下方向に案内するガイドレール部材13が設けられている。ガイドレール部材13は、扉体3の左右端部を飲み込む凹状の案内部13aを備えている。
【0020】
扉体3の下端部には、ガイドレール部材13間の略全長に渡る幅を有した幅木部材31が設けられる。幅木部材31は、面状に形成された室外側壁31aの室外側に、逆L字状に突出する一体的な把手部31bを有し、室外側壁31aの室内側にはロックカバー材33が設けられている。室外側壁31aとロックカバー材33に囲まれた領域には、扉体3が全閉となったときに幅木部材31をロックするロック機構32が納められる。
【0021】
下枠11の室外側部には、幅木部材31を納めることができる凹状の溝部11aが形成されている。幅木部材31を枠体1の下端部に配置することで、幅木部材31が溝部11aに納められると共に、溝部11aを構成する下枠11の室外側面11bを、幅木部材31の把手部31bが跨いだ状態となる。
【0022】
幅木部材31及びロック機構32についてより詳細に説明する。図3には幅木部材31付近の拡大縦断面図を示している。幅木部材31の上端部は、扉体3の下端部に対して上下に振れる方向に回動自在となるように固定されている。幅木部材31は、扉体3に対して回動するのに伴い、上部に設けられた回動中心部31dを中心に回動押圧部材31eを回動自在となるように保持している。
【0023】
幅木部材31の室外側壁31aには、ロック機構32が配置される空間部31cに臨むように加熱発泡材34が配置される。加熱発泡材34は、シート状に形成されてなり、所定温度以上となることで発泡して体積が増加するものである。
【0024】
図4には、幅木部材31とロック機構32及びロックカバー材33の分解斜視図を示している。この図に示すように、幅木部材31の長手方向中央位置において、室外側壁31aに加熱発泡材34が取付けられ、この加熱発泡材34を覆うようにロック機構32が幅木部材31の室外側壁31aに対して取付けられ、さらにロック機構32を覆うようにロックカバー材33が幅木部材31の室外側壁31aに対して取付けられる。ロック機構32は、室外側に開放された凹状に形成されてなる本体部材40を有しており、幅木部材31の室外側壁31aとの間に空間部31cを形成する。
【0025】
ロック機構32の構成について説明する。図5には、ロック機構32の正面図を示している。ロック機構32は、本体部材40と、本体部材40の上部に突出する被押圧部41と、被押圧部41と連係し本体部材40に対して回動自在な第1回動部材42と、第1回動部材42と連係し本体部材40に対して回動自在な第2回動部材43と、第1回動部材42と第2回動部材43とを連係させる付勢部材44とを有して構成されている。ロック機構のうち、被押圧部41は樹脂材によって形成され、それ以外の部品は金属材によって形成されている。
【0026】
本体部材40には下部に凹状部40aが形成されており、第2回動部材43には凹状のロック凹部43aが形成されている。図5では、第2回動部材43のロック凹部43aが本体部材40の凹状部40a内に配置されていて、下枠11に固定されている係止部11cを凹状部40aとロック凹部43aで囲んでおり、幅木部材31が下枠11にロックされた状態となっている。
【0027】
図6には、被押圧部41が押圧された際のロック機構32の正面図を示している。扉体3が閉じた状態から開く際には、把手部31bを手で持って幅木部材31を持ち上げるが、このとき、幅木部材31が回動中心部31dを中心に上側に回動するのに伴って、回動押圧部材31eがロック機構32の被押圧部41を下方に押圧する。これにより、第1回動部材42が回動すると共に、第2回動部材43が回動し、ロック凹部43a内に保持された下枠11の係止部11cは、本体部材40の凹状部40aから下方に押し出される。これにより、幅木部材31の下枠11に対するロック状態は解除され、扉体3を開くことができるようになる。
【0028】
かかる構成のロック機構32において、被押圧部41が樹脂製であることにより、金属製の回動押圧部材31eによる押圧動作において、金属材同士が衝突することがなく、円滑にロック解除の動作をなすことができる。一方で、火災発生時にサッシが高温に晒された場合には、被押圧部41が溶融し、可燃ガスを発生して発火する可能性がある。また、第1回動部材42や第2回動部材43の回動中心となる軸部にも、樹脂部品が用いられている。
【0029】
幅木部材31の室外側壁31aに設けられた加熱発泡材34は、被押圧部41及びその他の樹脂部品を構成する樹脂材が融点に達する前に発泡を開始し、樹脂部品が溶融する前にロック機構32が配置された空間部31cを充填する。このとき、ロック機構32の第1回動部材42及び第2回動部材43が配置された部分が加熱発泡材34で充填されてしまうので、被押圧部41やその他樹脂部品が溶融しても、加熱発泡材34によりこれを閉じ込めることができ、溶融した樹脂材が幅木部材31の外部に流出したり、可燃ガスが流出したりすることを防止することができる。
【0030】
特に、加熱発泡材34が幅木部材31の室外側壁31aに設けられていることで、火災発生時には金属製の室外側壁31aが高温になるため、加熱発泡材34に対して熱が伝わりやすく、いち早く加熱発泡材34の発泡を開始して空間部31cを充填することができる。
【0031】
本実施形態では、幅木部材31の室外側壁31aに加熱発泡材34を設けているが、空間部31cに臨む室内側壁、すなわちロックカバー材33の室内側壁に加熱発泡材34を設けるようにしてもよい。
【0032】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の適用は本実施形態には限られず、その技術的思想の範囲内において様々に適用されうるものである。本実施形態では、枠体1を有するシャッターについて説明したが、このシャッターは、方形状に枠組みされたサッシ枠体内に障子を納めてなるサッシの室外側に一体化されたシャッター付サッシに用いられるものである。
【符号の説明】
【0033】
1 枠体
2 収納部
3 扉体
10 上枠
11 下枠
12 縦枠
13 ガイドレール部材
14 端部キャップ
23 巻き取り軸
30 スラット
31 幅木部材
31a 室外側壁
31b 把手部
31c 空間部
32 ロック機構
33 ロックカバー材
34 加熱発泡材
図1
図2
図3
図4
図5
図6