【文献】
W. Takeuchi et al.,Electron field emission enhancement of carbon nanowalls by plasma surface nitridation,Applied Physics Letters,2011年 3月21日,Vol.98, No.12,p.123107/1-123107/3
【文献】
Joshua P. McClure,Oxygen Reduction on Metal-Free Nitrogen-Doped CarbonNanowall Electrodes,Journal of The Electrochemical Society,米国,The Electrochemical Society,2012年 9月14日,Vol.159, No.11,F733〜F742
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記酸素還元電極の前記ガス拡散層はカーボン基板であって、前記酸素還元電極の前記触媒層は、前記カーボン基板から成るガス拡散層上に形成された酸素還元触媒である請求項6又は7に記載の燃料電池。
前記窒化によって、結晶化度が0.5〜3.5である酸素還元触媒用カーボンナノウォールが得られる請求項9又は10に記載の窒素がドープされたカーボンナノウォールの製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る酸素還元触媒で利用するカーボンナノウォールを製造する装置の構成を説明する概略図である。
【
図2】
図2(a)は、シリコン基板上に生成されたカーボンナノウォールのXPSスペクトルであり、
図2(b)は、カーボンナノウォールのXPSスペクトルであり、
図2(c)は、カーボンナノウォール片のXPSスペクトルである。
【
図4】
図4は、実施例1に係るカーボンナノウォールのSEM像である。
【
図5】
図5(a)は、実施例1に係るカーボンナノウォールのラマン散乱スペクトルであり、
図5(b)は、実施例1に係るカーボンナノウォールのXPSスペクトルであり、
図5(c)は、実施例1に係るカーボンナノウォール片のラマン散乱スペクトルであり、
図5(d)は、実施例1に係るカーボンナノウォール片のXPSスペクトルである。
【
図6】
図6(a)は、実施例2に係るカーボンナノウォールのラマン散乱スペクトルであり、
図6(b)は、実施例2に係るカーボンナノウォールのXPSスペクトルであり、
図6(c)は、実施例2に係るカーボンナノウォール片のラマン散乱スペクトルであり、
図6(d)は、実施例2に係るカーボンナノウォール片のXPSスペクトルである。
【
図7】
図7(a)は、実施例3に係るカーボンナノウォールのラマン散乱スペクトルであり、
図7(b)は、実施例3に係るカーボンナノウォールのXPSスペクトルであり、
図7(c)は、実施例3に係るカーボンナノウォール片のラマン散乱スペクトルであり、
図7(d)は、実施例3に係るカーボンナノウォール片のXPSスペクトルである。
【
図8】
図8は、実施例1〜3に係るカーボンナノウォールの触媒特性を表すグラフである。
【
図9】
図9(a)及び
図9(b)は、第2実施形態に係る酸素還元触媒で利用するカーボンナノウォールのSEM像である。
【
図10】
図10は、第2実施形態に係る酸素還元触媒で利用するカーボンナノウォールのXPSスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〈第1実施形態〉
第1実施形態に係る酸素還元触媒は、窒素がドープされたカーボンナノウォール又は窒素がドープされたカーボンナノウォール片である。また、第1実施形態に係る酸素還元電極は、ガス拡散層と、触媒層である酸素還元触媒とを備える。さらに、第1実施形態に係る燃料電池は、電解質膜と、ガス拡散層と、触媒層である酸素還元触媒と、セパレータとを備える。
【0017】
(酸素還元触媒)
第1実施形態に係る酸素還元触媒は、窒素がドープされたカーボンナノウォール又はカーボンナノウォールより微小な1又は複数のナノグラファイトで構成されるカーボンナノウォール片である。このカーボンナノウォール片は、窒素がドープされたカーボンナノウォールを粉砕して得られる。窒素がドープされたカーボンナノウォールは、例えば、シリコン基板等の基板上に生成されて窒素がドーピングされた後に、基板から剥離される。
【0018】
例えば、
図1に示す装置1を利用して、基板上に生成されるカーボンナノウォールに窒素をドープさせることができる。
図1に示す装置1は、密閉可能な空間である反応室10と、基板2を支持する支持手段11と、プラズマを発生して反応室10に供給するプラズマ発生装置12と、窒素を含むガス(以下、「窒素ガス」とする)を反応室10内に供給するガス供給装置13とを備えている。
【0019】
例えば、反応室10内の支持手段11にカーボンナノウォールが生成されている基板2を配置し、その後、ガス供給装置13によって窒素ガスを反応室10内に供給する。この反応室10は、基板2上のカーボンナノウォールに窒素をドーピングする際には外部から空気等の他のガスが入らないように構成されている。また、支持手段11は、基板2を固定可能であることが好ましい。さらに、ガス供給装置13が供給する窒素ガスは、窒素が含まれるとともにカーボンと化学反応を生じないガスであればよく、例えば、アルゴンと窒素の混合ガスである。
【0020】
次に、プラズマ発生装置12でプラズマを生成するための放電用ガスを用いてプラズマを発生し、発生したプラズマを反応室10に供給する。続いて、反応室10において、プラズマ発生装置12から供給されたプラズマによって、ガス供給装置13から供給された窒素ガスに含まれる窒素を基板2上のカーボンナノウォールにドーピングする。すなわち、プラズマによって窒素ガスの窒素原子が励起、イオン化されてカーボンナノウォールにドーピングされる。したがって、カーボンナノウォールを構成するカーボン構造に窒素を構成する原子を入れ込むことができる。
【0021】
また、カーボンナノウォールが生成されていない基板2を反応室10の支持手段11で支持して装置1を利用して基板2上にカーボンナノウォールを生成した後に、上述したように装置1を利用してカーボンナノウォールに窒素をドーピングさせることもできる。
【0022】
窒素をドープするカーボンナノウォールの基板2からの剥離方法は限定されないが、例えば、スクレーパを利用する方法がある。また、基板2から剥離したカーボンナノウォールの粉砕方法も限定されないが、以下では、メノウ乳鉢を利用して手動で20分間粉砕したカーボンナノウォール片の一例について説明している。
【0023】
例えば、第1実施形態に係る酸素還元触媒である窒素がドープされたカーボンナノウォールは、
図2(a)乃至
図2(c)に一例を示すようなXPSスペクトルが得られる。
図2(a)乃至
図2(c)に示す例において、横軸は結合エネルギー[eV]であって、縦軸は強度[arb.units]である。
【0024】
図2(a)は、窒素をドーピングしたカーボンナノウォールのXPSスペクトルであり、シリコン基板に生成されたカーボンナノウォールをそのまま測定したものである。
図2(a)に示すカーボンナノウォールは、装置1を使用して、条件A1でシリコン基板上にカーボンナノウォールを生成した後、条件A2でシリコン基板上のカーボンナノウォールに窒素をドーピングさせたものである。
【0025】
条件A1:圧力0.67Pa、加熱温度700℃、放電電流70A、アルゴンの流量80sccm、水素の流量10sccm、メタンの流量10sccm、成長時間360分
条件A2:圧力0.36Pa、加熱温度600℃、放電電流50A、アルゴンの流量80sccm、水素の流量10sccm、窒素の流量10sccm、処理時間5分
【0026】
図2(a)のカーボンナノウォールの成分比は、炭素(C1s)が97.08at%であり、窒素(N1s)が2.06at%であり、酸素(O1s)が0.86at%である。なお、
図2(a)に示す例において、カーボンナノウォールにドープする窒素の量は2.06at%であるが、酸素還元触媒にドープされる窒素の量は、0.5〜20.0at%程度であることが好ましい。
【0027】
また、
図2(b)は、
図2(a)と同一のカーボンナノウォールの窒素に関するXPSスペクトルである。さらに、
図2(c)は、
図2(a)のカーボンナノウォールを粉砕したカーボンナノウォール片の窒素に関するXPSスペクトルである。
図2(b)及び
図2(c)を比較すると、粉砕により、性質が変化していないことがわかる。なお、酸素還元触媒は、XPSスペクトルにおけるピリジン窒素とsp2窒素との面積比が1:0.4〜1:1.5となることが好ましい。また、酸素還元触媒は、ラマン散乱スペクトルにおいて、D−バンドとG−バンドの強度比で求められる結晶化度(ID/IG)が0.5〜3.5であることが好ましい。
【0028】
(電極)
図3に示すように、第1実施形態に係る電極35は、触媒層31とガス拡散層32とを備えている。触媒層31は、第1実施形態に係る酸素還元触媒である。また、ガス拡散層32は、触媒層31への空気等のガスを供給するものであって、例えば、カーボンペーパーやカーボンクロスである。電極35では、ガス拡散層32の片面に、酸素還元触媒を付着させて触媒層31が設けられている。ここで、触媒特性を好適にするためには、触媒層31の厚さは、1μm以上であることが好ましい。
【0029】
(燃料電池)
図3に示すように、第1実施形態に係る燃料電池3は、電解質膜30、電解質膜30の両側に位置する触媒層31、触媒層31の外側にそれぞれ位置するガス拡散層32及びガス拡散層32の外側にそれぞれ位置するセパレータ33を備えている。触媒層31は、第1実施形態に係る酸素還元触媒である。
【0030】
上述したように、第1実施形態に係る酸素還元触媒は、窒素がドープされたカーボンナノウォール又はカーボンナノウォール片を利用することで、安価に生成することができる。また、第1実施形態に係る酸素還元触媒を利用することで、電極や燃料電池も安価に生成することが可能となる。
【0031】
〈実施例1〉
図4に、実施例1に係るカーボンナノウォールのSEM像を示している。この窒素がドープされたカーボンナノウォールは、
図1を用いて上述した装置1を利用して条件B1でシリコン基板上にカーボンナノウォールを生成した後に、条件B2でシリコン基板上のカーボンナノウォールに窒素をドープしたものである。
【0032】
条件B1:圧力0.67Pa、加熱温度600℃、放電電流50A、アルゴンの流量80sccm、水素の流量10sccm、メタンの流量10sccm、成長時間360分
条件B2:圧力0.67Pa、加熱温度700℃、放電電流70A、アルゴンの流量80sccm、水素の流量0sccm、窒素の流量20sccm、処理時間1分
【0033】
図5(a)に、実施例1の窒素がドープされたカーボンナノウォールのラマン散乱スペクトルを示す。
図5(b)に、実施例1のカーボンナノウォールのXPSスペクトルを示す。
図5(c)に、実施例1のカーボンナノウォールを粉砕したカーボンナノウォール片のラマン散乱スペクトルを示す。
図5(d)に、実施例1のカーボンナノウォールを粉砕したカーボンナノウォール片のXPSスペクトルを示す。
【0034】
図5(a)及び
図5(c)のラマン散乱スペクトルにおいて、横軸はラマンシフト[cm-1]であって、縦軸はラマン散乱強度[arb.units]である。また、このラマン散乱スペクトルでは、具体的には、測定値、ピークフィットによるピーク積算値、D−バンド、G−バンド及びD’−バンドを表している。
【0035】
図5(b)及び
図5(d)のXPSスペクトルにおいて、横軸は結合エネルギー[eV]であって、縦軸は強度 [arb.units]である。また、このXPSスペクトルでは、具体的には、測定値、ピークフィットによるピーク積算値、ピリジン窒素、sp2窒素、酸素と結合した窒素(N−O)及びバックグラウンドを表している。
【0036】
図5(a)乃至
図5(d)に示す例では、粉砕前のカーボンナノウォールの窒素含有量は2.2at%、ピリジン窒素含有量は0.78at%、sp2窒素含有量は0.62at%、ピリジン窒素‐sp2窒素含有比は1.25、結晶化度(ID/IG)は1.42である。また、粉砕後のカーボンナノウォール片の窒素含有量は1.88at%、ピリジン窒素含有量は0.61at%、sp2窒素含有量は0.66at%、ピリジン窒素‐sp2窒素含有比は0.92、結晶化度(ID/IG)は1.89である。
【0037】
〈実施例2〉
実施例2の窒素がドープされたカーボンナノウォールは、
図1を用いて上述した装置1を利用して条件C1でシリコン基板上にカーボンナノウォールを生成した後に、条件C2でシリコン基板上のカーボンナノウォールに窒素をドープしたものである。
【0038】
条件C1:圧力0.67Pa、加熱温度800℃、放電電流50A、アルゴンの流量80sccm、水素の流量0sccm、メタンの流量20sccm、成長時間360分
条件C2:圧力0.67Pa、加熱温度800℃、放電電流50A、アルゴンの流量80sccm、水素の流量10sccm、窒素の流量10sccm、処理時間1分
【0039】
図6(a)に、実施例2の窒素がドープされたカーボンナノウォールのラマン散乱スペクトルを示す。
図6(b)に、実施例2のカーボンナノウォールのXPSスペクトルを示す。
図6(c)に、実施例2のカーボンナノウォールを粉砕したカーボンナノウォール片のラマン散乱スペクトルを示す。
図6(d)に、実施例2のカーボンナノウォールを粉砕したカーボンナノウォール片のXPSスペクトルを示す。
図6(a)及び
図6(c)は、
図5(a)及び
図5(c)と同様に横軸がラマンシフト、縦軸がラマン散乱強度である。
図6(b)及び
図6(d)は、
図5(b)及び
図5(d)と同様に横軸が結合エネルギー、縦軸が強度である。
【0040】
図6(a)乃至
図6(d)に示す例では、粉砕前のカーボンナノウォールの窒素含有量は2.88at%、ピリジン窒素含有量は0.72at%、sp2窒素含有量は0.87at%、ピリジン窒素‐sp2窒素含有比は0.82、結晶化度(ID/IG)は2.65である。また、粉砕後のカーボンナノウォール片の窒素含有量、ピリジン窒素含有量、sp2窒素含有量及びピリジン窒素‐sp2窒素含有比は確認できなかったが、結晶化度(ID/IG)は3.11である。
【0041】
〈実施例3〉
実施例3の窒素がドープされたカーボンナノウォールは、
図1を用いて上述した装置1を利用して条件D1でシリコン基板上にカーボンナノウォールを生成した後に、条件D2でシリコン基板上のカーボンナノウォールに窒素がドープされたものである。
【0042】
条件D1:圧力0.67Pa、加熱温度700℃、放電電流70A、アルゴンの流量80sccm、水素の流量10sccm、メタンの流量10sccm、成長時間360分
条件D2:圧力0.36Pa、加熱温度600℃、放電電流50A、アルゴンの流量80sccm、水素の流量10sccm、窒素の流量10sccm、処理時間5分
【0043】
図7(a)に、実施例3の窒素がドープされたカーボンナノウォールのラマン散乱スペクトルを示す。
図7(b)に、実施例3のカーボンナノウォールのXPSスペクトルを示す。
図7(c)に、実施例3のカーボンナノウォールを粉砕したカーボンナノウォール片のラマン散乱スペクトルを示す。
図7(d)に、実施例3のカーボンナノウォールを粉砕したカーボンナノウォール片のXPSスペクトルを示す。
図7(a)及び
図7(c)は、
図5(a)及び
図5(c)と同様に横軸がラマンシフト、縦軸がラマン散乱強度である。
図7(b)及び
図7(d)は、
図5(b)及び
図5(d)と同様に横軸が結合エネルギー、縦軸が強度である。
【0044】
図7(a)乃至
図7(d)に示す例では、粉砕前のカーボンナノウォールの窒素含有量は2.06at%、ピリジン窒素含有量は0.53at%、sp2窒素含有量は0.70at%、ピリジン窒素‐sp2窒素含有比は0.76、結晶化度(ID/IG)は1.49である。また、粉砕後のカーボンナノウォール片の窒素含有量は0.98at%、ピリジン窒素含有量は0.23at%、sp2窒素含有量は0.44at%、ピリジン窒素‐sp2窒素含有比は0.53、結晶化度(ID/IG)は1.43である。
【0045】
図8では、実施例1乃至3の各カーボンナノウォールの触媒特性を示している。
図8において、横軸は電位であって、縦軸は電流密度である。この
図8に示すグラフでは、曲線の落ち始めが右にあるほどカーボンナノウォールの触媒特性が高い。したがって、ここでは、実施例1のカーボンナノウォールの触媒特性が最も高いことがわかる。
【0046】
〈第2実施形態〉
第2実施形態に係る酸素還元触媒は、カーボンペーパー又はカーボンクロス上に生成された窒素がドープされたカーボンナノウォールである。
図9(a)及び
図9(b)に、この第2実施形態に係る酸素還元触媒のSEM像の一例を示している。また、第2実施形態に係る酸素還元電極は、ガス拡散層であるカーボンペーパー又はカーボンクロスと、このガス拡散層上に形成される触媒層である酸素還元触媒とを備える。さらに、第2実施形態に係る燃料電池は、電解質層と、ガス拡散層であるカーボンペーパー又はカーボンクロスと、このガス拡散層上に形成される触媒層である酸素還元触媒と、セパレータとを備える。以下の説明において、酸素還元触媒を生成する装置は第1実施形態に置いて
図1を用いて上述した装置1と同一であるため、
図1を用いて説明する。また、電極及び燃料電池については、
図3を用いて説明する。
【0047】
(酸素還元触媒)
第2実施形態に係る酸素還元触媒と第1実施形態に係る酸素還元触媒とを比較すると、第1実施形態に係る酸素還元触媒は、シリコン基板等の基板上にカーボンナノウォールを生成し、このカーボンナノウォールに窒素をドーピングした後に基板から剥離していた。これに対し、第2実施形態に係る酸素還元触媒は、カーボンペーパー又はカーボンクロス等のカーボン基板上に窒素をドープするカーボンナノウォールを生成している点で異なる。なお、カーボン基板上へのカーボンナノウォールの生成及びカーボンナノウォールへの窒素のドーピングには、
図1を用いて上述した装置を利用することができる。このとき、カーボン基板上に形成するカーボンナノウォールの高さは、1μm以上であることが好ましい。
【0048】
図9(a)及び
図9(b)は、第2実施形態に係る酸素還元触媒の一例のSEM像である。
図9(a)と
図9(b)の画像は、倍率が異なる。具体的には、カーボンペーパー上に生成される窒素がドープされたカーボンナノウォールのSEM像である。
図9(a)及び
図9(b)に示す酸素還元触媒は、
図1を用いて上述した装置1を利用して条件E1でカーボンペーパー上にカーボンナノウォールを生成した後に、条件E2でカーボンペーパー上のカーボンナノウォールに窒素をドープしたものである。
【0049】
条件E1:圧力0.67Pa、加熱温度700℃、放電電流70A、アルゴンの流量80sccm、水素の流量10sccm、メタンの流量10sccm、成長時間360分
条件E2:圧力0.67Pa、加熱温度700℃、放電電流70A、アルゴンの流量80sccm、水素の流量0sccm、窒素の流量20sccm、処理時間1分
【0050】
図10は、第2実施形態に係る酸素還元触媒のXPSスペクトルである。
図10に示す例において、横軸は結合エネルギー [eV]であって、縦軸は強度 [arb.units]である。
図10のカーボンナノウォールの成分比は、炭素97.12at%、窒素2.33at%、酸素0.55at%である。
【0051】
なお、第1実施形態に係る酸素還元触媒と同様に、第2実施形態に係る酸素還元触媒でも含有する窒素の量は、0.5〜20.0at%程度であることが好ましい。また、酸素還元触媒は、XPSスペクトルにおけるピリジン窒素とsp2窒素との面積比が1:0.4〜1:1.5となることが好ましい。さらに、酸素還元触媒は、ラマン散乱スペクトルにおいて、D−バンドとG−バンドの強度比で求められる結晶化度(ID/IG)が0.5〜3.5であることが好ましい。
【0052】
(電極)
図3に示すように、第2実施形態に係る電極35は、触媒層31とガス拡散層32とを備えている。触媒層31は、第1実施形態に係る酸素還元触媒である。また、ガス拡散層32は、カーボンナノウォールの生成のカーボン基板に利用したカーボンペーパー又はカーボンクロスである。ここで、触媒層31の厚さは、1μm以上であることが好ましい。
【0053】
(燃料電池)
図3に示すように、第2実施形態に係る燃料電池3は、電解質膜30、電解質膜30の両側に位置する触媒層31、触媒層31の外側にそれぞれ位置するガス拡散層32及びガス拡散層32の外側にそれぞれ位置するセパレータ33を備えている。触媒層31は、第2実施形態に係る酸素還元触媒である。また、ガス拡散層32は、触媒層31である酸素還元触媒の生成の際にカーボン基板として利用したカーボンペーパー又はカーボンクロスである。
【0054】
上述したように、第2実施形態に係る酸素還元触媒は、窒素がドープされたカーボンナノウォールを利用することで、安価に生成することができる。
【0055】
また、第2実施形態に係る電極35は、カーボンナノウォールの生成にカーボン基板として利用したカーボンペーパー又はカーボンクロスをガス拡散層32とし、カーボン基板であるガス拡散層32上に生成される酸素還元触媒を触媒層31とすることができる。したがって、第2実施形態に係る電極35は、基板から酸素還元触媒であるカーボンナノウォールを剥離する作業及びガス拡散層32に酸素還元触媒を付着する作業が不要であり、酸素還元触媒の生成と同時に電極35の生成を実現することができる。すなわち、容易に酸素還元電極である電極35を生成することができる。
【0056】
さらに、酸素還元触媒の生成と同時に電極35の生成が可能となるため、燃料電池3も容易に生成することができる。
【0057】
以上、実施形態を用いて本発明を詳細に説明したが、本発明は本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載及び特許請求の範囲の記載と均等の範囲により決定されるものである。