(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の撓み部は、平面視で前記操作部を中心としてそれぞれ前後左右の4方向に延設され、前記締結部材挿通孔は、前記操作部を中心として前記複数の撓み部の隣り合う同士の間の4方向に位置することを特徴とする請求項2に記載のポインティングスティック。
前記上側固定板は前記本体部を内側に挿入可能な円形開口部を備え、前記環状支持部は、前記円形開口部の縁部と前記下側固定板とで前記固定部において挟持されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のポインティングスティック。
【背景技術】
【0002】
ノート型コンピュータ等の携帯型電子機器において、傾倒させる力を加えて操作するポインティングスティックが入力操作に用いられている。ポインティングスティックは微小な変位を検出するものであって、正確な検出が非常に難しいものであり、検出特性の向上の努力が続けられている。また、携帯型電子機器の薄型化が進んでポインティングスティックも極限的な薄型化が求められている。
【0003】
特許文献1には、操作体(操作部)を上下の固定部材で固定するポインティングスティックの構造が開示されている。
【0004】
図11は、従来のポインティングスティック200を示す断面図である。ポインティングスティック200には、上下の固定部材である第1の支持材210と第2の支持材220との間にベースプレート500を挟んだ状態でこれを第1の支持材210と第2の支持材220とで挟持する挟持部に加えて、第1の支持材210には操作部201を外部に突出させるための開口部210aが備わっている。また、開口部210a近傍には第1の支持材210の立ち上がり部211が備わり、この立ち上がり部211と第2の支持材220との間に隙間を形成し、この隙間を利用して第1の支持材210と第2の支持材220とで操作部201を挟み込む操作部取付用挟持部233が備わっている。
【0005】
このような構成を有することで、操作部201を第2の支持材220へ溶着する作業を無くすことが可能になる。ベースプレート500へのポインティングスティック取り付け作業において、第1の支持材210と第2の支持材220を溶接又はかしめ構造で一体化すると同時に、ベースプレート500と操作部201を両支持材210、220で挟み込むことができる。これにより、作業工程の簡略化、ひいては製造コストの低減を達成できる。また、操作部201がベースプレート500に直接溶着されない構造とされているので、ベースプレート500の歪みが操作部201に配置された検出素子に伝わりにくくなっている。
【0006】
このように、従来のポインティングスティック200では、第1の支持材210と第2の支持材220を溶接又はかしめ構造で一体化することによって、操作部201を両支持材210、220で挟み込む押圧力を発生させていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、第1の支持材210と第2の支持材220は溶接又はかしめ構造で一体化されるので、操作部201を第1の支持材210と第2の支持材220とで挟持する押圧力がばらついてしまう。そのため、不均一な押圧力が加わることによって操作部201に歪みを生じ、その歪みが操作部201に配置された検出素子に伝達されてしまう。このために、操作部201の操作を検出する検出特性の安定性が悪化する、という問題があった。
【0009】
それを防止するためには、剛性の高い厚肉の支持材(固定板)を用い、さらに、操作部(操作体)201の被挟持部(固定部)を厚肉に形成すればよい。こうすれば、溶接等で一体化するときの支持材の歪みを生じにくくできるとともに、被挟持部を厚肉に形成しているので変形しにくくなり、歪みを抑制できる。しかしながら、第1の支持材210と第2の支持材220とで挟持される操作部取付用挟持部233の厚みが増して薄型化が困難になる、という問題があった。
【0010】
本発明は、上述した課題を解決して、検出特性の安定性が高く、薄型化を図ることができるポインティングスティックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、複数の撓み部が形成された基部と、前記基部から上方に突出する操作部と、前記基部を取り囲むように延設された環状支持部と、を有する操作体と、前記複数の撓み部のそれぞれの撓み量を検出する複数のセンサ素子と、前記環状支持部を挟んで固定する上側固定板及び下側固定板と、を備えたポインティングスティックにおいて、前記環状支持部は、前記下側固定板に支持される本体部と、前記下側固定板に沿って前記本体部の外周から外方に延設されるとともに前記本体部の上下方向の厚みより薄く形成された固定部とを有し、前記固定部において前記上側固定板及び前記下側固定板に挟持され
、前記下側固定板は平面視で前記環状支持部より外側に広がって形成されて、前記上側固定板は平面視で前記環状支持部より外側に広がって形成されていることを特徴とする。
【0012】
環状支持部は、下側固定板に沿って本体部の外周から外方に延設された固定部において上側固定板及び下側固定板に挟持されるので、剛性の高い固定部材を使用しても、固定部と基部の間に環状支持部の本体部が介在するため、固定部には歪みが生じるものの、撓み部には歪みが伝達されない。そのため、検出特性の安定性を向上させることができる。また、環状支持部の本体部は、上側固定板及び下側固定板に固定される固定部から離れていることにより歪みを生じないので、厚肉に形成する必要がない。そのため、環状支持部の薄型化を図ることができる。
下側固定板の外側エッジには切断時に発生したバリが残ることがある。また、上側固定板の外側エッジには切断時に発生したバリが残ることがある。操作体がそのバリの上に固定されていると、操作体を操作したときそのバリの影響により検出特性が悪化する。しかし、この構成によれば、操作体は常に外側エッジの内側に位置するので、バリによる検出特性の悪化を生じさせないようにすることができる。
【0013】
また本発明のポインティングスティックにおいて、前記上側固定板及び前記下側固定板を締結する締結部材を有し、前記固定部は、前記本体部の外周から外方に向かって突出する複数の突出片を有し、前記複数の突出片に締結部材挿通孔が形成されており、前記締結部材挿通孔に前記締結部材を挿通して、前記上側固定板と前記下側固定板との間に前記複数の突出片が締結されていることを特徴とする。
【0014】
一般的に、締結部材による固定はその近傍で大きな歪みを生じやすい。本構成によれば、固定部は本体部の外周から外方に向かって突出する複数の突出片であり、突出片に形成された締結部材挿通孔の位置で締結部材によって固定されるので、締結部材による歪みが撓み部に伝わりにくく、検出特性の安定性をより向上させることができる。
【0015】
本発明のポインティングスティックにおいて、前記複数の撓み部は、平面視で前記操作部を中心としてそれぞれ前後左右の4方向に延設され、前記締結部材挿通孔は、前記操作部を中心として前記複数の撓み部の隣り合う同士の間の4方向に位置することを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、締結部材挿通孔を平面視で4方向の撓み部の間の4方向に配置し、撓み部から離れた位置で締結部材により締結したので、締結部材による歪みが撓み部に伝わりにくく、検出特性の安定性をより一層向上させることができる。また、締結部材挿通孔を撓み部に近づけることなく、水平方向における小型化を図ることができる。
【0017】
本発明のポインティングスティックにおいて、前記上側固定板は前記本体部を内側に挿入可能な円形開口部を備え、前記環状支持部は、前記円形開口部の縁部と前記下側固定板とで前記固定部において挟持されていることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、円形開口部の縁部が、ほぼ全周に亘って固定部における操作部から距離が等しい地点を均一な力で挟持することになるので、本体部の外周に不均一な歪みが発生せず、検出特性の安定性をより向上させることができる。
【0019】
本発明のポインティングスティックにおいて、前記本体部の外周は前記円形開口部と略等しい円形に形成されるとともに外側方向に突出する突出部を有し、前記円形開口部の縁部には前記突出部が挿入される切欠部が形成されていることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、円形開口部の縁部に形成された切欠部に、本体部の外周に形成された突出部が挿入されるので、操作体を組み立てる際の部材の位置決めおよび回転止めをすることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、環状支持部は、下側固定板に沿って本体部の外周から外方に延設された固定部において上側固定板及び下側固定板に挟持されるので、撓み部には歪みが伝達されない。そのため、検出特性の安定性を向上させることができる。また、環状支持部の本体部は、上側固定板及び下側固定板に固定される固定部から離れていることにより歪みを生じないので、環状支持部の薄型化を図ることができる。
さらに、操作体は常に外側エッジの内側に位置するので、バリによる検出特性の悪化を生じさせないようにすることができる。したがって、検出特性の安定性が高く、薄型化を図ることができるポインティングスティックを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[第1実施形態]
以下に第1実施形態におけるポインティングスティック100について説明する。
【0028】
図1は、本発明の第1実施形態のポインティングスティック100を示す斜視図である。
図2は、第1実施形態のポインティングスティック100を示す平面図である。
図3は第1実施形態のポインティングスティック100を示す分解斜視図である。
図4は、
図3の反対方向から見た分解斜視図である。
図5は、
図3及び
図4に示す操作体10の説明図である。
図6は、
図5に示す操作体10の底面図である。
図7は、第1実施形態のポインティングスティック100を示す断面図であり、
図7(a)は
図2のA−A線で切断した断面図であり、
図7(b)は
図2のB−B線で切断した断面図である。
図8は、
図2のC−C線で切断した断面図である。
図9は、操作体10とフィルム基板20との配置を示す底面図である。なお、説明を分かりやすくするため、ここでは、
図1に示すZ1側を上方、Z2側を下方とする。
【0029】
図1に示すポインティングスティック100は、操作者によって入力操作される操作体10が上側固定板40及び下側固定板50に挟持された入力装置である。また、
図3及び
図4に示すように、ポインティングスティック100は、センサ素子21、22、23、24が実装されたフィルム基板20を備えている。
【0030】
操作体10は、樹脂を成形したものであり、
図2〜
図5に示すように、基部1と、基部1から上方(Z1側)に突出する操作部2と、基部1を取り囲むように延設された環状支持部3と、を有する。
【0031】
フィルム基板20は、センサ素子21、22、23、24が配設され、図示しない配線が設けられている。また、センサ素子21、22、23、24と配線とを保護するカバーフィルムが貼り付けられている。なお、センサ素子21、22、23、24の配置をより分かりやすく示すために、このカバーフィルムは図示していない。
【0032】
環状支持部3は、
図7及び
図8に示すように、基部1を取り囲むように下方(Z2側)に延設され、下側固定板50に当接して支持される部分となる。環状支持部3は、フィルム基板20を取り出すY1側以外の基部1を取り囲む本体部31と、下側固定板50に沿って本体部31の外周31aから外方に延設されるとともに本体部31の上下方向の厚みより薄く形成された固定部34と、を有している(
図5参照)。
【0033】
上側固定板40及び下側固定板50は、薄い金属板を加工したものであり、操作体10及びフィルム基板20を挟持するように、締結部材60によって固定される。さらに、上側固定板40は、図示しない取り付け部材を介して携帯型電子機器等に固定される。
【0034】
次に、本実施形態のポインティングスティック100の動作原理について説明する。
【0035】
本実施形態のポインティングスティック100において、操作体10は、基部1における操作部2が突出する側とは反対側(Z2側)に、
図5(b)に示すように、撓み部11、12、13、14と、有底凹部15、16、17、18と、を有している。
【0036】
図6に示すように、撓み部11、12、13、14は、平面視で操作部2を中心としてそれぞれ前後左右の4方向(X1方向、X2方向、Y1方向、Y2方向)に延設される。それぞれの撓み量を検出するセンサ素子21、22、23、24が撓み部11、12、13、14に対応するように配置されている(
図4参照)。
【0037】
センサ素子21、22、23、24は、歪みゲージの一種であり、フィルム基板20に設けられた配線(図示しない)が接続されている。この配線は図示しない回路部に接続され、センサ素子21、22、23、24に定常的に電流が流される。操作部2を傾倒させる力が加わる操作がなされると、センサ素子21、22、23、24の抵抗値が変化する。センサ素子21、22、23、24には電流が流されているため、抵抗値の変化による電圧の変化を検出することが可能である。この電圧の変化を回路部で演算することにより、操作部2が傾倒された方向や、押圧力(傾倒量)の大きさを検知することができる。
【0038】
次に、各部材の特徴を詳細に説明する。
【0039】
操作体10は、
図5に示すように、基部1の下面1cに撓み部11、12、13、14と有底凹部15、16、17、18とを有している。
図6に示すように、基部1の中央から見て、撓み部11、12、13、14は、それぞれX1方向、Y1方向、X2方向、Y2方向に配置され、有底凹部15、16、17、18はそれぞれX1方向、Y1方向、X2方向、Y2方向から45度ずれた方向に形成されている。すなわち、基部1は、Z2側からの平面視で、撓み部11、12、13、14の間に有底凹部15、16、17、18を有する。
【0040】
フィルム基板20は、基部1の有底凹部15、16、17、18を有する側(Z2側)に、センサ素子21、22、23、24が撓み部11、12、13、14に対応するように、接着材70で貼り付けられている。フィルム基板20は、撓み部11、12、13、14に密着するように、接着材70で接着される。
図8に示すように、接着材70の余分な量は近くの有底凹部15、17が逃げ場となるように流動可能である。なお、
図8以外の図面では接着材70を省略している。有底凹部16、18についても同様である。こうして、接着材70を介して、フィルム基板20を撓み部11、12、13、14に密着させることができるので、センサ素子21、22、23、24は撓み部11、12、13、14の撓みを安定して検出することができる。
【0041】
基部1の上面1bは、
図5(a)及び
図8に示すように、操作部2の裾部2aを囲むように環状支持部3側から裾部2a側に向かって窪んだ凹部1aを有し、凹部1aの最深部19が環状支持部3側より裾部2a側の位置に偏って形成されている。
図8に示すように、基部1の下面1cは、センサ素子21、22、23、24が最深部19に対応する位置に配置されている。
【0042】
環状支持部3は、基部1を取り囲むようにZ2側に延設され、基部1を取り囲む本体部31と、本体部31の外周31aから外方に延設された固定部34と、を有している。本実施形態においては、
図5に示すように、固定部34は本体部31の上下方向の厚みより薄く形成される。さらに、本体部31の外周31aから外方に向かって突出する突出片35、36、37、38を有し、突出片35、36、37、38に締結部材挿通孔35a、36a、37a、38aが形成されている。なお、突出片35、36、37、38は、それぞれX1方向、Y1方向、X2方向、Y2方向から45度ずれた方向に形成されている。すなわち、
図5に示すように、撓み部11、12、13、14は、平面視で操作部2を中心としてそれぞれ前後左右の4方向に延設され、締結部材挿通孔35a、36a、37a、38aは、複数の撓み部11、12、13、14の隣り合う同士の間の4方向に位置する。
【0043】
下側固定板50は、
図3及び
図4に示すように、下側固定孔55、56、57、58と、を備えている。また、下側固定板50は、
図9に示すように、平面視で環状支持部3より外側に広がって形成されている。なお、
図9は、重なり位置が分かるように、下側固定板50を透視した底面図となっている。
【0044】
上側固定板40は、
図9に示すように、平面視で環状支持部3より外側に広がって形成されている。また、
図3及び
図4に示すように、上側固定板40は、上側固定孔45、46、47、48と、本体部31を内側に挿入可能な円形開口部41と、を備えている。
【0045】
図2及び
図6に示すように、本体部31の外周31aは、上側固定板40の円形開口部41と略等しい円形に形成されるとともに、外側方向に突出する突出部32、33を有している。
【0046】
図2、
図3及び
図6に示すように、円形開口部41の縁部41aには突出部32、33が挿入される切欠部42、43が形成されている。切欠部42、43によって、ポインティングスティック100に操作体10を組み立てる際の、部材の位置決めおよび回転止めをすることができる。
【0047】
これにより、環状支持部3は、突出部32、33が切欠部42、43に挿入された状態で、固定部34が円形開口部41の縁部41aと下側固定板50とにそれぞれ当接している。突出片35、36、37、38の位置において、下側固定孔55、56、57、58から、締結部材挿通孔35a、36a、37a、38aと、上側固定孔45、46、47、48と、に締結部材60を挿通して、上側固定板40と下側固定板50とが締結される。本実施形態においては、締結部材60としてねじが用いられており、上側固定孔45、46、47、48はめねじになっている。したがって、環状支持部3の固定部34は、突出片35、36、37、38の位置において、ねじによって締結され、円形開口部41の縁部41aと下側固定板50とで挟持されることになる。円形開口部41の縁部41aが、ほぼ全周に亘って固定部34における操作部2から距離が等しい地点を均一な力で挟持することになるので、本体部31の外周31aに不均一な歪みが発生しない。
【0048】
本実施形態のポインティングスティック100は、図示しない電子機器に搭載されて、上側固定板40及び下側固定板50が固定される。上側固定板40及び下側固定板50として剛性の高い固定部材を使用することによって、電子機器にポインティングスティック100が固定されて、操作部2が安定して操作可能になる。なお、電子機器の内部に収納されて、操作部2が電子機器の外部に突出する構成であることが好ましく、操作部2の周囲には隙間を塞ぐようにクッション材が配置され、電子機器内部への水や埃の侵入を防止することが好ましい。また、操作感触を変えるために、操作部2にはゴム材の操作用キャップを被せることが好ましい。
【0049】
本実施形態において、基部1の上面1bは、操作部2の裾部2aを囲むように環状支持部3側から裾部2a側に向かって窪んだ凹部1aを有し、凹部1aの最深部19が環状支持部3側より裾部2a側の位置に偏って形成され、基部1の下面1cは、センサ素子21、22、23、24が最深部19に対応する位置に配置されている。操作部2を傾倒させる力が加わる操作がなされると、凹部1aの最深部19が環状支持部3側より裾部2a側の位置に偏って形成されているので、ここで撓み部11、12、13、14はもっとも撓み、この近傍に変位が集中する。平面視で、センサ素子21、22、23、24は、最深部19に対応する位置に配置されているため、撓みの中心が操作部2から近いので、他の場合に比べて撓み量が大きく、センサ素子21、22、23、24の抵抗値が、より大きく変化する。したがって、本実施形態のポインティングスティック100は、従来に比べ、検出感度の向上を図ることができる。
【0050】
本実施形態において、基部1は、操作部2が突出する側とは反対側に、平面視で撓み部11、12、13、14の間に有底凹部15、16、17、18を有する。撓み部11、12、13、14の間に形成された有底凹部15、16、17、18によって撓み部11、12、13、14の間の基部1が変形しやすくなっているので、有底凹部15、16、17、18が無いときに比べて撓み部11、12、13、14に応力が集中して精度の良い検出を行なうことができるとともに、貫通孔があるときに比べて液体物の侵入を防止することができる。
【0051】
一方、突出片35、36、37、38に設けられた締結部材挿通孔35a、36a、37a、38aは、操作部2を中心として撓み部11、12、13、14の隣り合う同士の間の4方向に位置する。撓み部11、12、13、14の方向に位置する場合に比べ、締結部材挿通孔35a、36a、37a、38aと撓み部11、12、13、14との距離を、より離して配置できる。一般的に、締結部材による固定はその近傍で大きな歪みを生じやすい。本実施形態では、撓み部11、12、13、14から離れた位置で締結部材60により締結されるので、締結部材60による歪みが撓み部11、12、13、14に伝わりにくい。
【0052】
また、本体部31は、上側固定板40及び下側固定板50に固定される固定部34から離れていることにより歪みを生じない。そのため、環状支持部3の本体部31を厚肉に形成する必要がない。すなわち、環状支持部3の薄型化を図ることができる。さらに、上側固定板40及び下側固定板50として剛性の高い固定部材を使用しても、環状支持部3は、固定部34と基部1の間に本体部31が介在するため、固定部34に歪みが生じたとしても、本体部31によって撓み部11、12、13、14に歪みが伝達されない。
【0053】
なお、製造上、下側固定板50の外側エッジには切断時に発生したバリが残ることがある。操作体10がそのバリの上に固定されていると、操作体10を操作したときそのバリの影響により、操作体10の変形、バリの操作体10への食い込み、バリの変形等が生じて、検出特性が悪化する。本実施形態のポインティングスティック100では、
図9に示すように、下側固定板50が平面視で環状支持部3より外側に広がって形成され、操作体10は常に外側エッジの内側に位置する。これにより、バリによる検出特性の悪化を生じさせない。
【0054】
同様に、上側固定板40の外側エッジには切断時に発生したバリが残ることがある。操作体10がそのバリの下に固定されていると、操作体10を操作したときそのバリの影響により、操作体10の変形、バリの操作体10への食い込み、バリの変形等が生じて、検出特性が悪化する。本実施形態のポインティングスティック100では、上側固定板40が、
図9に示すように、平面視で環状支持部3より外側に広がって形成され、操作体10は常に外側エッジの内側に位置する。これにより、バリによる検出特性の悪化を生じさせない。
【0055】
以下、本実施形態としたことによる効果について説明する。
【0056】
本実施形態のポインティングスティック100において、環状支持部3は、下側固定板50に支持される本体部31と、下側固定板50に沿って本体部31の外周31aから外方に延設されるとともに本体部31の上下方向の厚みより薄く形成された固定部34とを有し、固定部34において上側固定板40及び下側固定板50に挟持されている。この構成によれば、環状支持部3は、下側固定板50に沿って本体部31の外周31aから外方に延設された固定部34において上側固定板40及び下側固定板50に挟持されるので、剛性の高い固定部材を使用しても、固定部34と基部1の間に環状支持部3の本体部31が介在するため、固定部34には歪みが生じるものの、撓み部11、12、13、14には歪みが伝達されない。そのため、検出特性の安定性を向上させることができる。また、環状支持部3の本体部31は、上側固定板40及び下側固定板50に固定される固定部34から離れていることにより歪みを生じないので、厚肉に形成する必要がない。そのため、環状支持部3の薄型化を図ることができる。
【0057】
本実施形態のポインティングスティック100は、上側固定板40及び下側固定板50を締結する締結部材60を有し、固定部34は、本体部31の外周31aから外方に向かって突出する複数の突出片35、36、37、38を有し、複数の突出片35、36、37、38に締結部材挿通孔35a、36a、37a、38aが形成されており、締結部材挿通孔35a、36a、37a、38aに締結部材60を挿通して、上側固定板40と下側固定板50との間に複数の突出片35、36、37、38が締結されている。一般的に、締結部材による固定はその近傍で大きな歪みを生じやすい。本実施形態によれば、固定部34は本体部31の外周31aから外方に向かって突出する複数の突出片35、36、37、38を有し、突出片35、36、37、38に形成された締結部材挿通孔35a、36a、37a、38aの位置で締結部材60によって固定されるので、締結部材60による歪みが撓み部11、12、13、14に伝わりにくく、操作部2の操作を検出するポインティングスティック100の検出特性の安定性をより向上させることができる。
【0058】
本実施形態のポインティングスティック100において、複数の撓み部11、12、13、14は、平面視で操作部2を中心としてそれぞれ前後左右の4方向に延設され、締結部材挿通孔35a、36a、37a、38aは、操作部2を中心として複数の撓み部11、12、13、14の隣り合う同士の間の4方向に位置する。本実施形態によれば、締結部材挿通孔35a、36a、37a、38aを平面視で4方向の撓み部11、12、13、14の間の4方向に配置し、撓み部11、12、13、14から離れた位置で締結部材60により締結したので、締結部材60による歪みが撓み部11、12、13、14に伝わりにくく、検出特性の安定性をより一層向上させることができる。また、締結部材挿通孔35a、36a、37a、38aを撓み部11、12、13、14に近づけることなく、水平方向における小型化を図ることができる。
【0059】
本実施形態のポインティングスティック100において、上側固定板40は本体部31を内側に挿入可能な円形開口部41を備え、環状支持部3は、円形開口部41の縁部41aと下側固定板50とで固定部34において挟持されている。本実施形態によれば、円形開口部41の縁部41aが、ほぼ全周に亘って固定部34における操作部2から距離が等しい地点を均一な力で挟持することになるので、本体部31の外周31aに不均一な歪みが発生せず、検出特性の安定性をより向上させることができる。
【0060】
本実施形態のポインティングスティック100において、本体部31の外周31aは円形開口部41と略等しい円形に形成されるとともに外側方向に突出する突出部32、33を有し、円形開口部41の縁部41aには突出部32、33が挿入される切欠部42、43が形成されている。本実施形態によれば、円形開口部41の縁部41aに形成された切欠部42、43に、本体部31の外周31aに形成された突出部32、33が挿入されるので、操作体10を組み立てる際の部材の位置決めおよび回転止めをすることができる。
【0061】
本実施形態のポインティングスティック100において、下側固定板50は、平面視で環状支持部3より外側に広がって形成されている。下側固定板50の外側エッジには切断時に発生したバリが残ることがある。操作体10がそのバリの上に固定されていると、操作体10を操作したときそのバリの影響により、操作体10の変形、バリの操作体10への食い込み、バリの変形等が生じて、検出特性が悪化する。本実施形態によれば、操作体10は常に外側エッジの内側に位置するので、バリによる検出特性の悪化を生じさせないようにすることができる。
【0062】
本実施形態のポインティングスティック100において、上側固定板40は、平面視で環状支持部3より外側に広がって形成されている。上側固定板40の外側エッジには切断時に発生したバリが残ることがある。操作体10がそのバリの下に固定されていると、操作体10を操作したときそのバリの影響により、操作体10の変形、バリの操作体10への食い込み、バリの変形等が生じて、検出特性が悪化する。本実施形態によれば、操作体10は常に外側エッジの内側に位置するので、バリによる検出特性の悪化を生じさせないようにすることができる。
【0063】
本実施形態のポインティングスティック100において、基部1の上面1bは、操作部2の裾部2aを囲むように環状支持部3側から裾部2a側に向かって窪んだ凹部1aを有し、凹部1aの最深部19が環状支持部3側より裾部2a側の位置に偏って形成され、基部1の下面1cは、センサ素子21、22、23、24が最深部19に対応する位置に配置されている。本実施形態によれば、撓み部11、12、13、14は最深部19でもっとも撓み、その最深部19に対応する位置にセンサ素子21、22、23、24が配置されている。撓みの中心が操作部2から近いので、撓み量が大きく、検出感度の向上を図ることができる。
【0064】
本実施形態のポインティングスティック100において、基部1は、操作部2が突出する側とは反対側に、平面視で撓み部11、12、13、14の間に有底凹部15、16、17、18を有する。撓み部11、12、13、14の間に形成された有底凹部15、16、17、18によって撓み部11、12、13、14の間の基部1が変形しやすくなっているので、有底凹部15、16、17、18が無いときに比べて撓み部11、12、13、14に応力が集中して精度の良い検出を行なうことができるとともに、貫通孔があるときに比べて液体物の侵入を防止することができる。
【0065】
本実施形態のポインティングスティック100において、センサ素子21、22、23、24が実装されたフィルム基板20を備え、フィルム基板20は、基部1の有底凹部15、16、17、18を有する側において、センサ素子21、22、23、24が撓み部11、12、13、14に対応するように、接着材70で貼り付けられた。撓み部11、12、13、14に対応するように接着材70で貼り付けられたときに、撓み部11、12、13、14の近くに位置する有底凹部15、16、17、18が余った接着剤の逃げ場となる。そのため、余った接着剤による不具合を防止することができる。
【0066】
以上のように、本実施形態のポインティングスティック100を具体的に説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施することが可能である。例えば次のように変形して実施することができ、これらの実施形態も本発明の技術的範囲に属する。
【0067】
(1)本実施形態において、操作体10の環状支持部3において、本体部31の外周31aから外方に延設される固定部34が突出片35、36、37、38を有している形状としたが、この形状に限定されるものではない。例えば、
図10は、第1実施形態の変形例における操作体10とフィルム基板20との配置を示す底面図である。
図10に示すように略矩形の外形を有する固定部34としてもよい。なお、本変形例の操作体10は、固定部34が突出片35、36、37、38を備えていないことを除き、他の部分は
図1〜
図9に示す形状と同じであるため、同じ符号を用いている。
【0068】
(2)本実施形態において、締結部材60としてねじが用いられているが、かしめ等の締結部材に変更してもよい。ねじは取り付けが面倒であるが、締結力を容易に調整できる利点を有する。一方、例えば、かしめを用いる場合には、製造工程の自動化が容易になるだけでなく、長期間に亘り緩みを心配する必要がない。
【0069】
(3)本実施形態において、突出部32、33と対応する切欠部42、43とが、X1側及びX2側に配置されているが、これに限定されるものではない。また、2組であることに限定されず、例えば4組としてもよい。なお、1組あれば、回転止めの効果を有する。なお、突出部32、33と切欠部42、43とを備えていない場合であっても、締結部材60によって固定するときに部材同士の固定位置に注意すれば、固定部34を挟持する構造に支障は無い。また、上側固定板40の円形開口部41と、環状支持部3の本体部31の外周31aとが、円形以外の形状であれば回転止めは不要であるが、操作感触や検出特性の安定性を優先する場合には円形であることが好ましい。
【0070】
(4)本実施形態において、フィルム基板20は基部1に接着材70で貼り付けられているが、両面テープで貼り付けてもよい。両面テープを用いると、接着材が流動する心配がないので、製造が容易である。