(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記液だめ領域における前記内容器の外周面と前記外容器の内周面との距離は、前記毛管領域における前記内容器の外周面と前記内周面との距離よりも大きい、請求項1記載の分離容器。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の分離容器は、前述のように、液体試料から分離対象物を分離するための分離容器であって、
内容器および外容器を有し、
前記内容器は、
上端および下端が開口した筒状であり、
前記外容器は、
上端が開口し、下端が閉口した有底筒状であり、
前記内容器および前記外容器は、
それぞれの上下方向を揃えた状態で、前記外容器の内部に前記内容器を挿入可能であり、
前記分離容器は、
前記外容器に前記内容器を挿入した状態において、前記内容器の下端から前記外容器の上端にわたって、前記内容器の外周面と前記外容器の内周面との間に、間隙を有し、
前記間隙は、
その下端から上端方向に向かって形成された毛管領域と、前記毛管領域の上方向に前記毛管領域と連結して形成された液だめ領域とを含むことを特徴とする。
【0012】
本発明の分離容器において、前記外容器および前記内容器は、それぞれ筒状であればよく、例えば、円筒状が好ましい。本発明の分離容器において、例えば、前記外容器の内部において、配置された前記内容器よりも下方の領域が、前記液体試料からの分離対象物の収容部となる。
【0013】
本発明の分離容器は、例えば、前記液だめ領域における前記内容器の外周面と前記外容器の内周面との距離が、前記毛管領域における前記内容器の外周面と前記外容器の内周面との距離よりも大きいことが好ましい。このように設定することで、例えば、前記毛管領域から移動してきた前記媒体を、前記液だめ領域で十分に捕捉できる。前記毛管領域における前記内容器の外周面と前記外容器の内周面との距離は、特に制限されず、毛管現象が誘発される大きさであればよい。
【0014】
本発明の分離容器において、前記液だめ領域の形状は、何ら制限されない。前記液だめ領域は、例えば、前記外容器の内周面および前記内容器の外周面の少なくとも一方に、溝部を形成することによって形成できる。前記溝部は、例えば、前記外容器の内周面のみに形成されてもよいし、前記内容器の外周面のみに形成されてもよいし、前記外容器の内周面と前記内容器の外周面の両方に形成されてもよい。
【0015】
具体例として、前記外容器の内周面は、例えば、その上端側において、前記外容器の外周面に向かう溝部を有してもよい。この場合、前記分離容器において、例えば、前記外容器の前記溝部と前記内容器の外周面とにより形成される空間が、前記液だめ領域となる。また、前記内容器の外周面は、例えば、前記外容器の上端側に対応する領域において、前記内容器の内周面に向かう溝部を有してもよい。この場合、前記分離容器において、例えば、前記内容器の前記溝部と前記外容器の内周面とにより形成される空間が、前記液だめ領域となる。
【0016】
本発明の分離容器において、前記間隙の容積、前記間隙における前記毛管領域と前記液だめ領域の各容積は、特に制限されない。前記各容積は、例えば、前記内容器の容積、前記分離容器に注入する液状媒体の液量等に応じて適宜設定できる。
【0017】
本発明の分離容器は、例えば、さらに、着脱可能なキャップを有してもよい。前記キャップは、例えば、前記内容器の上端開口部に対する嵌合部を有し、前記嵌合部は、前記内容器の上端開口部に嵌合することで、前記内容器の内部を液密状態にできることが好ましい。
【0018】
本発明において、「嵌合」は、例えば、差し込みによる嵌合(挿嵌)、ねじ作用による嵌合(螺合)の意味も含む。
【0019】
本発明の分離容器が、前記キャップを有する場合、例えば、前記内容器への前記キャップの嵌合により、前記内容器の内部の収容された液状媒体には、その上部から圧力がかかる。このため、前記外容器と前記内容器との間の間隙において、その下端からの前記液状媒体の侵入が促進される。しかしながら、本発明の分離容器は、前述のように、前記毛管領域と前記液だめ領域とを有するため、前記キャップを嵌合した場合でも、十分にオーバーフローを抑制できる。
【0020】
前記キャップの前記内容器に対する嵌合は、例えば、内嵌合でもよいし、外嵌合でもよい。本発明において、前記内容器に前記キャップを嵌合した際における、前記内容器の内部に位置する前記キャップの領域を、以下、前記キャップの嵌合内部領域という。
【0021】
本発明の分離容器が前記内嵌合のキャップを有する場合、前記間隙の容積は、例えば、特に制限されず、前記キャップの嵌合内部領域の体積以上であることが好ましい。また、前記間隙における前記液だめ領域の容積は、例えば、前記キャップの嵌合内部領域の体積以上であることが好ましい。
【0022】
前記キャップは、例えば、さらに、外容器の上端開口部に対する嵌合部を有してもよい、前記嵌合部は、前記外容器の上端開口部に嵌合することで、前記外容器の内部を液密状態にできることが好ましい。このようなキャップによれば、例えば、前記内容器に対する嵌合部(第1嵌合部)において前記内容器を嵌合し、前記外容器に対する嵌合部(第2嵌合部)において前記外容器を嵌合できる。具体的には、前記キャップを前記内容器に嵌合して、遠心等の処理を行った後、前記キャップを嵌合した状態で、前記外容器から前記内容器を取りだし、さらに、前記内容器から前記キャップを取り外して、前記分離した精子が回収された前記外容器の上端開口部に嵌合することもできる。
【0023】
前記キャップは、例えば、さらに、同形状のキャップに対する嵌合部(第3嵌合部)、および、同形状のキャップが嵌合可能な被嵌合部を有してもよい。本発明の分離容器セットにおいて、このようなキャップを、2つ以上備えることが好ましい。前記キャップは、例えば、使用時においては、それぞれ、前記内容器および前記外容器に使用でき、また、未使用時は、例えば、一方のキャップの前記第3嵌合部を、前記他方のキャップの前記被嵌合部に嵌合することで、前記同形状のキャップと連結可能である。
【0024】
前記内容器の外周面と前記外容器の内周面は、それぞれ、例えば、対応する係止部を有することが好ましい。このような形態とすることで、例えば、前記外容器の内部に前記内容器を挿入する際、互いの係止部を接触させることで、前記外容器と前記内容器とを係止可能である。
【0025】
前記内容器は、その上部の外周面に、突起部を有することが好ましく、前記突起部は、環状突起部であることがより好ましい。前記環状突起部は、その外周面の直径が、前記外容器の上端の外周面の直径よりも大きいことが好ましい。このような形態とすることで、例えば、前記外容器の内部に前記内容器を挿入する際、前記環状突起部の底面が、前記外容器の開口部の端面に接触することで、前記内容器の挿入位置を固定可能である。
【0026】
以下に、
図1〜
図4を用いて、本発明の一例を説明する。各図は、それぞれ同一箇所には同一符号を付している。なお、本発明は、以下の形態には制限されない。なお、各実施形態は、特に示さない限り、それぞれの記載の援用できる。
【0027】
図1は、本発明の分離容器の一例を示す断面図であり、(A)は、外容器、(B)は、内容器、(C)は、外容器に内容器を挿入した分離容器を示す断面図である。
図1(A)に示すように、外容器10は、上端に開口部104を有する有底の円筒状であり、本体部101、テーパー部102および先端部103から構成される。そして、外容器10は、内周面の上端領域に、溝部105を有する。
図1(B)に示すように、内容器11は、上端の開口部114および下端の開口部113を有し、本体部111、テーパー部112から構成され、本体部111の上部の外周面に、環状突起部115を有する。環状突起部115は、例えば、内容器11の把持部となる。そして、
図1(C)に示すように、外容器10の内部に内容器11が挿入され、分離容器1は、外容器10と内容器11との間に、間隙が形成される。間隙は、その下端から上端方向に向かって、すなわち、内容器11の下端の開口部113から外容器10の上端104方向に向かって、毛管領域116を有し、さらに、毛管領域116の上方向に、毛管領域116に連結した液だめ領域117を有する。
図1(C)において、液だめ領域117は、外容器10の上端104まで形成されている。液だめ領域117は、外容器10の溝部105と内容器11の外周面とによって、形成される。また、内容器11の環状突起部115は、その下面が、外容器10の開口部104の端面に接触するため、外容器10内への内容器11の挿入位置が固定化できる。
図1(C)において、外容器10に内容器11を挿入した際、外容器の先端部103であって、内容器11の下端の開口部113よりも下方向の領域は、収容部105となる。収容部105は、例えば、後述するように、内容器11内からの沈殿物を収容できる。
【0028】
図2は、本発明の分離容器におけるキャップの一例を示す概略図であり、(A)は平面図、(B)は断面図、(C)は下方向からの斜視図、(D)は上方向からの斜視図である。
図2(A)〜(D)に示すように、キャップ20は、円状基板24、第1環状壁21、第2環状壁22および第3環状壁23を有する。円状基板24の下表面において、同心円状に、内側に第1環状壁21、外側に第2環状壁22が形成され、円状基板24の上表面において、第3環状壁23が形成されている。そして、円状基板24の下面においては、第1環状壁21と第2環状壁22との間に、環状溝が形成される。第1環状壁21は、内容器11に対する第1嵌合部21であり、第2環状壁22は、外容器10に対する第2嵌合部22であり、第3環状壁23は、同形状のキャップの第2環状壁に対する第3嵌合部23である。
【0029】
図3は、本発明の分離容器の一例を示す断面図であり、具体的には、
図1の外容器10の内部に内容器11を挿入し、内容器11の上端開口部114に、
図2のキャップ20を内嵌合した状態を示す。
【0030】
各部材の大きさは、特に制限されない。各部材の大きさを、以下に例示する。本発明において、「軸方向」とは、内容器11、外容器10およびキャップ20の軸方向であって、上下方向を意味し、「垂直方向」とは、前記軸方向に対して垂直の方向を意味し、「高さ」とは、前記軸方向の長さをいい、「直径」とは、前記垂直方向の断面における直径を意味する。
【0031】
外容器10の大きさは、例えば、以下の条件が例示できる。全体の容量は、例えば、0.5〜100mLであり、好ましくは1.0〜50mLである。外容器10全体の内部の高さは、例えば、30〜200mmであり、好ましくは50〜120mmである。本体部101の高さは、例えば、80〜120mmであり、好ましくは105〜115mmである。テーパー部102の高さは、例えば、5〜20mmであり、好ましくは10〜15mmである。先端部103の高さは、例えば、5〜15mmであり、好ましくは8〜12mmである。本体部101において、溝部以外の内周面の直径は、例えば、10〜20mmであり、好ましくは13〜15mmであり、溝部105の深さ、すなわち、前記溝部以外の内周面から軸方向に対して垂直方向への深さは、例えば、0.05〜0.5mmであり、好ましくは0.1〜0.3mmである。また、テーパー部102の上端の内周の直径は、例えば、8〜18mmであり、好ましくは10〜13mmである。収容部105の上端の内周の直径は、例えば、5〜15mmであり、好ましくは6〜7mmである。収容部105の容量は、例えば、0.1〜0.5mLであり、好ましくは0.2〜0.4mLである。収容部105の内部の高さは、例えば、4〜10mmであり、好ましくは5〜8mmである。
【0032】
内容器11の大きさは、例えば、以下の条件が例示できる。全体の容量は、例えば、0.3〜100mLであり、好ましくは0.5〜50mLである。内容器11全体の高さは、例えば、60〜100mmであり、好ましくは80〜90mmである。本体部111の高さは、例えば、50〜90mmであり、好ましくは60〜70mmである。テーパー部112の高さは、例えば、5〜30mmであり、好ましくは10〜20mmである。上端の開口部114の内周の直径は、例えば、5〜20mmであり、好ましくは10〜14mmである。環状突起部115の外周直径は、例えば、10〜20mmであり、好ましくは14〜18mmである。テーパー部112の上端の外周の直径は、例えば、8〜18mmであり、好ましくは10〜15mmである。テーパー部112の下端の外周の直径、すなわち、下端の開口部113の外周の直径は、例えば、3〜8mmであり、好ましくは4〜7mmである。下端の開口部113の内周の直径は、例えば、2〜7mmであり、好ましくは3〜6mmである。
【0033】
内容器11に注入する液状媒体の量は、例えば、1〜10mLであり、好ましくは2〜5mLである。
【0034】
キャップ部20の大きさは、例えば、以下の条件が例示できる。円状基板24は、外周直径が、例えば、10〜25mmであり、好ましくは15〜22mmであり、厚みが、例えば、0.1〜5.0mmであり、好ましくは0.5〜3.0mmである。第1環状壁21は、外周直径が、例えば、5〜21mmであり、好ましくは10〜15mmであり、内周直径が、例えば、4〜20mmであり、好ましくは9〜14mmであり、高さが、例えば、1〜10mmであり、好ましくは2〜8mmであり、第2環状壁22は、外周直径が、例えば、11〜25mmであり、好ましくは15〜22mmであり、内周直径が、例え
ば、10〜22mmであり、好ましくは13〜16mmであり、高さが、例えば、1〜10mmであり、好ましくは2〜8mmである。キャップ20を内容器11に内嵌合した場合、内容器11の内部に位置するキャップ20の嵌合内部領域は、第1環状壁21となる。前記嵌合内部領域体積、すなわち、第1環状壁21の体積は、例えば、10〜300mm
3であり、好ましくは、30〜180mm
3である。第1環状壁21と第2環状壁22との間の環状溝の幅、つまり、第1環状壁21の外周面と第2環状壁22の内周面との距離は、例えば、0.5〜5mmであり、好ましくは0.8〜3mmである。第3環状壁23は、外周直径が、例えば、15〜35mmであり、好ましくは16〜24mmであり、内周直径が、例えば、11〜25mmであり、好ましくは15〜22mmであり、高さが、例えば、1〜10mmであり、好ましくは2〜8mmである。
【0035】
外容器10と内容器11との間の間隙は、例えば、以下の条件が例示できる。液だめ領域117における内容器11の外周面と外容器10の内周面との平均距離は、毛管領域116における内容器11の外周面と外容器10の内周面との平均距離に対して、例えば、2倍以上であることが好ましい。また、その上限は、特に制限されず、例えば、10倍以下、好ましくは5倍以下である。
【0036】
具体例として、毛管領域116は、外容器10の内周面と内容器11の外周面との平均距離は、例えば、0.1〜0.3mmである。また、液だめ領域117は、外容器10の内周面と内容器11の外周面との平均距離は、例えば、0.2〜0.6mmである。毛管領域116における前記距離と、液だめ領域117における前記距離との関係は、例えば、前述のとおりである。毛管領域116の容積は、例えば、0.1〜1mLであり、好ましくは、0.25〜0.5mLである。液だめ領域117の容積は、例えば、0.05〜1mLであり、好ましくは、0.1〜0.3mLである。毛管領域116と液だめ領域117とを含む前記間隙の容積は、例えば、0.15〜2mLであり、好ましくは、0.35〜0.8mLである。
【0037】
各部材を形成するための材料は、特に制限されない。前記材料は、例えば、合成樹脂材料、金属材料、ガラス材料等があげられる。これらの中でも、例えば、成形性、組立性、必要に応じて接着性等の材料の加工性;添加物の試料への溶出等の衛生面;視認性等の機能性;コスト面等の観点から、前記合成樹脂材料が好ましい。前記材料は、例えば、フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリメチルペンテン、メタクリル、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリ塩化ビニル、シリコーン、エチレン酢酸ビニル共重合体、合成ゴム、各種エラストマー等の合成樹脂があげられ、これらの中でも、フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネートが好ましい。前記フッ素樹脂は、例えば、疎水性フッ素樹脂が好ましく、特に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が好ましい。
【0038】
つぎに、
図4に基づいて、本実施形態の分離容器を用いて、遠心分離により、精子を含む試料から精子を分離する方法を説明する。
【0039】
図4は、本発明の分離容器の使用形態の一例を示す概略図であり、(A)は、外容器に内容器を挿入した分離容器の断面図、(B)は、前記分離容器に液体媒体を注入した状態を示す断面図、(C)は、前記分離容器にキャップを嵌合した状態を示す断面図、(D)は、前記(C)における点線四角で囲んだ領域の断面図である。
【0040】
まず、
図4(A)に示すように、外容器10の内部に内容器11を配置する。これによって、分離容器1は、外容器10の内周面と内容器11の外周面との間に、間隙が形成され、前記間隙は、内容器11の下端の開口部113側から毛管領域116を有し、外容器10の上端の開口部104側まで、毛管領域116に連結した液だめ領域117を有する。また、内容器11の環状突起部115の下面は、外容器10の開口部104の端面に接触する。
【0041】
つぎに、
図4(A)に示すように、内容器11の内部に、遠心処理液Aを注入する。内容器11の下端は、開口部113を有する。このため、内容器11に注入された遠心処理液Aは、まず、開口部113を通じて、外容器10の収容部105に導入され、収容部105を満たした後、
図4(B)に示すように、内容器11の内部に堆積される。遠心処理液Aの量は、特に制限されず、外容器10および内容器11の大きさに応じて適宜決定できる。遠心処理液Aは、例えば、1〜10mLであり、好ましくは2〜5mLである。
【0042】
つぎに、内容器11の内部に、精子を含む試料を導入する。前記試料は、内容器11の内部における前記遠心処理液に、重層することが好ましい。
【0043】
そして、
図4(C)に示すように、内容器11の開口部114に、キャップ20の第1環状壁21を挿入し、内嵌合により、内容器11の内部を液密状態にする。
【0044】
前述のように、内容器11の下端の開口部113側の間隙は、毛管領域116であるため、遠心処理液Aを内容器11に注入すると、毛管現象により毛管領域11に遠心処理液Aが侵入する。そして、さらに、内容器11へのキャップ20の装着により、内容器11内の遠心処理液Aに圧力がかかり、毛管領域116への遠心処理液Aの侵入が促進される。しかしながら、分離容器1は、毛管領域116に連結する液だめ領域117を有することから、侵入した遠心処理液Aは、内容器11と外容器10との間隙に捕捉され、前記間隙の上部からのオーバーフローが防止される。
【0045】
つぎに、分離容器1を遠心分離に供する。遠心分離の条件は、特に制限されず、例えば、1000G(1000×9.80665m/s
2)で20〜30分間の条件である。遠心分離によって、前記試料から精子が分離され、内容器11の開口部113から、外容器10の収容部105に、精子が沈殿する。
【0046】
遠心後、キャップ20を装着した状態で、内容器11を外容器10から取り出す。内容器11の内部には、前記試料の不要物が含まれる。しかしながら、キャップ20の装着により、内容器11の内部は液密状態となっている。このため、内容器11の内部から液体が漏れることなく、外容器10から内容器11を取り出すことができる。そして、外容器10の収容部105に、沈殿した精子を含む前記遠心処理液が回収される。
【0047】
前記遠心処理液は、特に制限されず、例えば、試料および分離対象物の種類に応じて適宜決定できる。前記遠心処理液は、例えば、密度勾配担体、培地、緩衝液等があげられる。前記密度勾配担体は、例えば、比重調整剤ということもできる。前記密度勾配担体は、特に制限されず、例えば、パーコール、修飾コロイドシリカ、ショ糖重合体、フィコール等があげられる。前記パーコールは、通常、ポリビニルピロリドン皮膜を持つコロイド状シリカゾルである。前記パーコールは、例えば、エンドトキシンを除去した後、前記培地を添加して等張化したパーコールが好ましい。パーコールの濃度は、特に制限されず、例
えば、90〜98%が好ましい。前記培地は、例えば、分離対象物が精子の場合、HEPES含有液等があげられる。
【0048】
本実施形態の分離容器は、例えば、さらに、スイムアップ法にも適用できる。まず、外容器10から内容器11を取り出した後、外容器10に、未使用の新たな内容器11を配置する。新たな内容器11には、予め、精子が遊泳可能な液体を充填しておくことが好ましい。この際、内容器11の開口部114に、未使用のキャップ20を内嵌合することが好ましい。キャップ20の挿入によって、液密状態を維持できるため、前記液体が開口部113から漏れることなく、内容器11を外容器10に配置可能である。この状態で放置する。運動性を示す精子は、放置の間に、外容器10の収容部105から、内容器11の開口部113を通じて、内容器11の内部にスイムアップしてくる。このため、運動性を示す精子のみを内容器11に移動させ、回収できる。
【0049】
放置後、内容器11に、再度、キャップ20を装着して、内部の液密性を保持した状態で、内容器11を外容器10から取り出す。これによって、内容器11により、運動性を示す精子のみを回収できる。また、取出した内容器11の内部の精子は、例えば、内容器11からキャップ20を取り外して液密性を解除し、前記内部から液体を導出させ、他の容器に回収してもよい。
【0050】
遠心分離は、通常、遠心ローターに分離容器をセットして行われる。この際、セットした本実施形態の分離容器1と、前記遠心ローターとの間に隙間が生じる場合、分離容器1にアジャスターを装着してもよい。
【0051】
つぎに、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、下記実施例により制限されない。
【実施例】
【0052】
[実施例1]
図1〜
図4に示す分離容器を使用して、内容器へのキャップ装着時におけるオーバーフローを確認した。
【0053】
比較例として、液だめ領域を有さない分離容器を準備した。具体的には、外容器として、
図1(A)において、溝部105が形成されていない容器を準備した。この容器は、本体部101の全体が同じ平均厚み1.2mmであり、本体部101の内径が14.7mmであり、全体長さが110mmであった。この容器を、溝部105を有さない比較例の外容器とした。
【0054】
内容器として、
図1(B)に示す容器を準備した。前記内容器は、前記外容器に挿入した際、前記外容器の内部に位置する本体部111の外径が14.3mmであった。前記外容器に前記内容器を挿入すると、前記外容器の内周面と前記内容器の外周面との間に間隙が形成された。前記間隙の距離(クリアランス)は、平均0.2mmであった。
【0055】
キャップとして、
図2に示すキャップを準備した。前記キャップは、嵌合内部領域にあたる第1嵌合部21の体積が、123mm
3であった。
【0056】
そして、前記外容器に前記内容器を挿入し、前記内容器に8mLの水を注入した。注入後の水の液面は、前記外容器の底部から89mmの位置であることから、8mLは、前記内容器への注入可能な最大量であることがわかった。そして、前記内容器に前記キャップを内嵌合し、前記外容器と前記内容器との間隙からオーバーフローした水の量を、測定した。前記測定は、まず、乾燥状態の紙タオルの重量を測定し、前記紙タオルで前記オーバーフローした水分を拭き取り、前記水分を拭き取った前記紙タオルの重量を測定し、前記水分を拭き取った後の増加重量を、オーバーフローした水の量(重量)として算出した。この結果を
図5に示す。
【0057】
他方、実施例として、
図4に示す、液だめ領域を有する分離容器を準備した。具体的には、前記比較例の外容器を使用し、その内周面における、上端開口部104から長さ20mmまでの領域について、0.2mmの厚み分を研磨して、溝部105を形成した。このように、
図1(A)に示す溝部105を形成した容器を、実施例の外容器とした。
【0058】
内容器は、前記比較例と同じ容器を使用した。前記外容器に前記内容器を挿入すると、
図1(C)に示すように、前記外容器の内周面と前記内容器の外周面との間に、毛管領域と液だめ領域からなる間隙が形成された。前記毛管領域において、前記外容器の内周面と前記内容器の外周面との距離(クリアランス)は、0.2mmであり、前記液だめ領域において、前記外容器の内周面と前記内容器の外周面との距離(クリアランス)は、0.4mmであった。前記液だめ領域の軸方向長さは20mmであるため、実施例の分離容器は、比較例の分離容器と比較して、0.18mLの容積の間隙が増加したことがわかった。
【0059】
そこで、前記実施例の分離容器と前記比較例の分離容器について、以下のような条件で、水を注入し、オーバーフローの水の量を測定した。まず、前記外容器に前記内容器を挿入し、所定量の水(5、6、7、8mL)を注入した。そして、前記内容器に前記キャップを内嵌合して、前記外容器と前記内容器との間隙からオーバーフローする水の量を、前述のようにして確認した(n=4)。
【0060】
この結果を、
図5に示す。
図5は、注入した水の量と、オーバーフローした水の量との関係を示すグラフである。
図5に示すように、実施例の分離容器によれば、比較例の分離容器と異なり、最大水量8mLであっても、オーバーフローは生じなかった。