(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
塩基が、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、ナトリウムtert−ブトキシド、カリウムtert−ブトキシド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、水酸化アンモニウム、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸バリウム、水酸化バリウム、水酸化セシウム、炭酸リチウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、ナトリウムアミド、及びリチウムアミド、並びにこれらの組合せから選択される請求項10に記載の方法。
開環重合が、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、及びN−メチルピロリドン、並びにこれらの組合せから選択される溶媒中で実施される、請求項9〜11のいずれか一項に記載の方法。
芳香族疎水性ポリマーセグメントが、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンオキシド、ポリカーボネート、ポリ(フタラジノンエーテルスルホンケトン)、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、及びポリアミド−イミドから選択される、請求項14に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】本発明の実施形態による、PES及びPES−PolyAGEのブレンドから製造された多孔質膜の横断面のSEM写真を示す。
【
図1B】
図1Aに示されている横断面の、より高倍率のSEM写真を示す。
【
図2A】本発明の実施形態による、PES及びPES−MPSのブレンドから製造された多孔質膜の横断面のSEM写真を示す。
【
図2B】
図2Aに示されている横断面の丸で囲まれた部分の、より高倍率のSEM写真を示す。
【
図3】親水性多孔質膜のミクロ構造を例示する。1は、芳香族疎水性ポリマーを表し、2は、本発明の実施形態によるブロックコポリマーの芳香族疎水性ポリマーセグメントを表し、3は、ブロックコポリマーの親水性ポリマーセグメントを表す。
【
図4A】本発明の実施形態による膜の横断面のSEM写真である。
【
図4B】
図4Aに示される写真の、より高倍率のSEM写真である。
【0010】
[発明の詳細な説明]
[0013]一実施形態によれば、本発明は、ブロックA及びBを含む、式:A−B−A(I)又はA−B(II)のブロックコポリマーであって、
ここで、ブロックAは、
(i)アリルグリシジルエーテルのポリマーであって、アリル基を有する前記ポリマー;又は
(ii)アリルグリシジルエーテルのポリマーであって、1つ以上のアリル基が、1,2−ジヒドロキシプロピル基、又は式:−(CH
2)
a−S−(CH
2)
b−Xの基で置き換えられた前記ポリマーであり、式中、aは3であり、bは1〜3であり、Xは、酸性基、塩基性基、カチオン、アニオン、両性イオン、ハロ、ヒドロキシル、アシル、アシルオキシ、アルキルチオ、アルコキシ、アルデヒド、アミド、カルバモイル、ウレイド、シアノ、ニトロ、エポキシ、式:−C(H)(COOH)(NH
2)の基、及び式:−C(H)(COOH)(NHAc)の基、若しくはこれらの塩から選択され;
ブロックBは芳香族疎水性ポリマーセグメントである、ブロックコポリマーを提供する。
【0011】
[0014]一実施形態によれば、アリルグリシジルエーテルのポリマーは、次の式:
【化1】
の繰返し単位を有し、式中、Rはアリルである。
【0012】
[0015]別の実施形態によれば、ブロックAは、アリルグリシジルエーテルのポリマーであって、1つ以上のアリル基が、1,2−ジヒドロキシプロピル基、又は式:−(CH
2)
a−S−(CH
2)
b−Xの基で置き換えられており、式中、a及びbは、独立nに1〜3であり、Xは、酸性基、塩基性基、カチオン、アニオン、両性イオン、ハロ、ヒドロキシル、アシル、アシルオキシ、アルキルチオ、アルコキシ、アルデヒド、アミド、カルバモイル、ウレイド、シアノ、ニトロ、エポキシ、式:−C(H)(COOH)(NH
2)の基、及び式:−C(H)(COOH)(NHAc)の基、若しくはこれらの塩から選択される基である。
【0013】
[0016]一実施形態によれば、両性イオンは、式:−N
+(R
1R
2)(CH
2)
cSO
3−の第4級アンモニウムアルキルスルホネート基であり、式中、R
1及びR
2はアルキル基であり、cは1〜3である。
【0014】
[0017]一実施形態によれば、ブロックコポリマーの芳香族疎水性ポリマーセグメントは、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンオキシド、ポリカーボネート、ポリ(フタラジノンエーテルスルホンケトン)、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、及びポリアミド−イミドから選択され、好ましくはポリエーテルスルホンである。
【0015】
[0018]疎水性ポリマーセグメントの実施形態には、ポリスルホン(PS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリ(フタラジノンエーテルスルホンケトン)(PPESK)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、及びポリエーテル−イミド(PEI)が含まれ、これらは、次の構造を有する。
【化2】
【化3】
【0016】
[0019]上記の芳香族疎水性セグメントの各々の中の、繰返し単位の数(n)は、約10〜約1000、好ましくは約30〜約300、より好ましくは約50〜約250であり得る。
【0017】
[0020]一実施形態によれば、本発明のブロックコポリマーは、ポリエーテルスルホンが芳香族疎水性セグメントである場合、次の構造:
【化4】
【化5】
【化6】
のいずれかを有し、式中、n、m
1、及びm
2は、独立に、約10〜約1000、好ましくは約30〜約300、より好ましくは約50〜約250である。
【0018】
[0021]任意の実施形態において、ブロックAは、ブロックコポリマーに、約20%〜約60mol%の量で存在し、ブロックBは、約40%〜80mol%の量で存在し、ブロックAが、約40%〜約55mol%の量で存在し、ブロックBが、約45%〜約60mol%の量で存在することが好ましい。
【0019】
[0022]本発明は、式:A−B−A(I)又はA−B(II)のブロックコポリマーを製造する方法であって、ここで、ブロックAは、アリルグリシジルエーテルのポリマーであって、アリル基を有する前記ポリマーであり、ブロックBは、芳香族疎水性ポリマーセグメントであり;前記方法は、(i)ヒドロキシ、メルカプト、及びアミノ基から選択される1つ又は複数の末端官能基を有する芳香族疎水性ポリマーセグメントを用意するステップ;及び(ii)芳香族疎水性ポリマーセグメントでアリルグリシジルエーテルの開環重合を実施するステップを含む、方法をさらに提供する。
【0020】
[0023]一実施形態によれば、芳香族疎水性ポリマーセグメントは、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンオキシド、ポリカーボネート、ポリ(フタラジノンエーテルスルホンケトン)、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、及びポリアミド−イミドから選択され、好ましくはポリエーテルスルホンである。芳香族疎水性ポリマーセグメントは、ヒドロキシ、メルカプト、又はアミノ基から選択される、1つ又は複数の、好ましくは1つ又は2つの、末端官能基を含む。
【0021】
[0024]官能基は、当業者に知られている方法によって芳香族疎水性セグメントに持たせることができる。例えば、ヒドロキシ−末端ポリエーテルイミドの合成が、米国特許第4611048号及び米国特許第7230066号に記載されている。こうして、例えば、ヒドロキシ−末端ポリエーテルイミドは、ビス−エーテル無水物及びジアミンの反応と、その後のアミノアルコールとの反応によって製造できる。例示すると、ヒドロキシ−末端ポリエーテルイミドは、ビス(4−(3,4−ジカルボキシ−フェノキシ)フェニル)プロパン二無水物及びm−フェニレンジアミンの反応と、その後のp−アミノフェノールとの反応によって製造できる。
【0022】
[0025]アミン−末端ポリエーテルイミドは、ビス−エーテル無水物とジアミンの反応によって製造できる。こうして、例えば、ビス(4−(3,4−ジカルボキシ−フェノキシ)フェニル)プロパン二無水物とm−フェニレンジアミンを反応させて、アミン末端ポリエーテルイミドが製造できる。例えば、米国特許第3847867号を参照。
【0023】
[0026]ヒドロキシ−末端PEEKが、Journal of Polymer Science Part B 2006, 44, 541、及び、Journal of Applied Science 2007, 106, 2936に記載されている。こうして、例えば、tert−ブチルペンダント基を有するヒドロキシ−末端PEEKは、触媒として炭酸カリウムを用いる、tert−ブチルヒドロキノンによる4,4’−ジフルオロベンゾフェノンの求核置換反応によって製造できる。
【0024】
[0027]ヒドロキシ−末端ポリカーボネートが、Journal of Polymer Science: Polymer Chemistry Edition 1982, 20, 2289に記載されている。こうして、例えば、ヒドロキシ−末端ポリカーボネートは、ビスフェノールAとホスゲンの反応によって、ホスゲン化の前か又はその間かのいずれかに、フェノール基のいくつかを元の位置でブロッキングして、製造できる。トリメチルクロロシラン、トリフルオロ酢酸無水物、又はトリフルオロ酢酸が、ブロッキングのために使用され得る。ブロッキング基は、重合の最後に除去できる。
【0025】
[0028]ヒドロキシ−末端PPOは、米国特許第3318959号に記載されているようにして製造できる。こうして、例えば、ポリ−2,6−ジメチルフェニレンエーテルを、水酸化ナトリウムと反応させて、2.3〜3個のヒドロキシル基/1分子のヒドロキシル含有量を有するPPOを得ることができる。
【0026】
[0029]一実施形態において、1つ又は複数のヒドロキシ基を有する芳香族疎水性ポリマーセグメントは、次の式:
【化7】
のものであり、式中、nは、約10〜約1000、好ましくは約50〜175、より好ましくは約60〜約100である。
【0027】
[0030]ポリエーテルスルホンは、例えば、Solvayから、式
【化8】
を有する、VIRANTAGE(商標)VW−10700として市販されており、これは、21000g/molのGPC分子量及び210μeq/gのOH末端基を有し;Solvayから、式
【化9】
を有する、VIRANTAGE(商標)VW−10200として市販されており、これは、44,200g/molのGPC分子量及び80μeq/gのOH末端基を有し;また、Sumitomoから、式
【化10】
を有する、スミカエクセル(SUMIKAEXCEL)(商標)5003PSとして市販されており、これは、0.50の還元粘度[DMFに溶解した1%PES]及び0.6〜1.4個/1分子の範囲のOH末端基を有する。
【0028】
[0031]グリシドールのエポキシドの開環は、求核剤、すなわち、芳香族疎水性ポリマーセグメントのオキシドアニオン、アミノ基、又はスルフィドアニオンによって開始され、これは、末端官能基として存在する(アミノ基)か、又は、芳香族疎水性ポリマーセグメントの末端基(terminal group)(OH若しくはSH)と反応に用いられる塩基との反応によって生成される。開環したエポキシドは、塩基の存在下で、次のアリルグリシジルエーテルのエポキシドを開環し続け、この様にしてアリルグリシジルエーテルの重合は進む。SHが求核剤として働く場合、塩基の使用は任意選択である。アミノ基が求核剤である場合、塩基は必要でない。
【0029】
[0032]開環重合は、適切な任意の塩基を用いて実施できる。例えば、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、ナトリウムtert−ブトキシド、カリウムtert−ブトキシド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、水酸化アンモニウム、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸バリウム、水酸化バリウム、水酸化セシウム、炭酸リチウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、ナトリウムアミド、及びリチウムアミド並びにこれらの組合せから塩基が選択される。
【0030】
[0033]開環重合は、適切な任意の溶媒中で実施できる。例えば、溶媒は、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、及びN−メチルピロリドン、並びにこれらの組合せから選択される。
【0031】
[0034]疎水性ポリマー及びアリルグリシジルエーテルの量は、適切な任意の濃度で、例えば、約5重量%〜約60重量%以上、好ましくは約10重量%〜約50重量%、より好ましくは約20重量%〜約40重量%の濃度で、重合媒体中に存在し得る。一実施形態において、濃度は、約30重量%である。
【0032】
[0035]開環重合は、反応混合物における疎水性ポリマーセグメントとアリルグリシジルエーテルの比が、好ましくは約1:0.1〜約1:2、より好ましくは約1:0.7〜約1:1.2、より一層好ましくは約1:0.8であるようにして実施される。
【0033】
[0036]開環重合は、適切な温度で、例えば、25℃〜約130℃、好ましくは約50℃〜約120℃、より好ましくは約90℃〜110℃で実施される。
【0034】
[0037]重合は、適切な任意の時間、例えば、約1時間〜約100時間、好ましくは約2時間〜約40時間、より好ましくは約3時間〜約20時間、実施され得る。重合時間は、とりわけ、望まれる重合度、及び反応混合物の温度に応じて変わり得る。
【0035】
[0038]ブロックコポリマーは、非溶媒、例えば、メタノール、エタノール又はプロパノールによる析出によって、反応混合物から単離できる。得られるポリマーは、何らかの残留溶媒又は非溶媒を除去するために、乾燥される。
【0036】
[0039]ブロックコポリマーは、適切な分析技法のいずれかによって評価され得る。例えば、疎水性ポリマーセグメントの量、及びアリルグリシジルエーテルブロックの量は、プロトンNMR分光法によって求めることができる。
【0037】
[0040]一実施形態において、ブロックBの芳香族疎水性ポリマーセグメントは、次の式:
【化11】
を有し、式中、nは約10〜約1000、好ましくは約50〜175、より好ましくは約60〜約100である。
【0038】
[0041]本発明は、式:A−B−A(I)又はA−B(II)のブロックコポリマーを製造する方法であって、ここで、ブロックAは、アリルグリシジルエーテルのポリマーであって、1つ以上のアリル基が、1,2−ジヒドロキシプロピル基、又は式:−(CH
2)
a−S−(CH
2)
b−Xの基で置き換えられており、式中、aは3であり、bは1〜3であり、Xは、酸性基、塩基性基、カチオン、アニオン、両性イオン、ハロ、ヒドロキシル、アシル、アシルオキシ、アルコキシ、アルキルチオ、アルデヒド、アミド、カルバモイル、ウレイド、シアノ、ニトロ、エポキシ、式:−C(H)(COOH)(NH
2)の基、及び式:−C(H)(COOH)(NHAc)の基、若しくはこれらの塩から選択される基であり;ブロックBは芳香族疎水性ポリマーセグメントであり;
前記方法は、
(i)ブロックAが、アリルグリシジルエーテルのポリマーであって、アリル基を有する前記ポリマーであり、ブロックBが、芳香族疎水性ポリマーセグメントである、式:A−B−A(Ia)又はA−B(IIa)のブロックコポリマーを用意するステップ;及び
(ii)(i)におけるブロックコポリマーのアリル基の1つ又は複数と、酸化剤、酸性基を有するアルカンチオール、塩基性基を有するアルカンチオール、両性イオンを有するアルカンチオール、ハロアルカンチオール、ヒドロキシアルカンチオール、アシルアルカンチオール、アルコキシアルカンチオール、アルキルチオアルカンチオール、アルデヒドアルカンチオール、アミドアルカンチオール、カルバモイルアルカンチオール、ウレイドアルカンチオール、シアノアルカンチオール、ニトロアルカンチオール、エポキシアルカンチオール、システイン、又はアシルシステインから選択される反応剤とを反応させるステップ
を含む、方法をさらに提供する。
【0039】
[0042]ブロックコポリマーIa及びIbの1つ又は複数のアリル基は、望まれる変化を実現するために、適切な反応剤と反応させることができる。例えば、アリル基は、四酸化オスミウム、アルカリ性過マンガン酸塩、又は過酸化水素のような酸化剤と反応させることによって、1,2−ジヒドロキシプロピル基に変換できる。
【0040】
[0043]アリル基は、アリル基と、酸性基を有するチオール、例えば、HS−(CH
2)
b−X(式中、Xは、COOH、PO
4H、PO
3H、又はSO
3Hであり、bは1〜3である)とを反応させることによって、式:−(CH
2)
a−S−(CH
2)
b−X(式中、aは3であり、bは1〜3であり、Xは酸性基である)の基に変換できる。
【0041】
[0044]アリル基は、アリル基と、塩基性基を有するチオール、例えば、HS−(CH
2)
b−X(式中、Xは、NH
2、NHR、又はNRRであり、RはC
1〜C
6アルキル基であり、bは1〜3である)とを反応させることによって、式:−(CH
2)
a−S−(CH
2)
b−X(式中、aは3であり、bは1〜3であり、Xは塩基性基である)の基に変換できる。
【0042】
[0045]アリル基は、アリル基と、カチオン基を有するチオール、例えば、HS−(CH
2)
b−X(式中、Xは、NH
3+、NHRR
+、又はNRRR
+であり、RはC
1〜C
6アルキル基であり、bは1〜3である)とを反応させることによって、式:−(CH
2)
a−S−(CH
2)
b−X(式中、aは3であり、bは1〜3であり、Xはカチオン基である)の基に変換できる。
【0043】
[0046]アリル基は、アリル基と、両性イオン基を有するチオール、例えば、HS−(CH
2)
b−X(式中、Xは、両性イオンを有する基、例えば、−N
+(R)
2−(CH
2)
c−SO
3−であり、ここで、RはC
1〜C
6アルキル基であり、b及びCは独立に1〜3である)とを反応させることによって、式:−(CH
2)
a−S−(CH
2)
b−X(式中、aは3であり、bは1〜3であり、Xは両性イオン基である)の基に変換できる。
【0044】
[0047]1つ又は複数のアリル基は、ハロアルカンチオール、例えば、フルオロアルカンチオール、クロロアルカンチオール、ブロモアルカンチオール、又はヨードアルカンチオールと反応することによって、代えられ得る。アシルアルカンチオールのアシル基は、ホルミル、アセチル、プロピオニル、又はブチルであり得る。アルコキシアルカンチオールのアルコキシ部分は、C
1〜C
6アルコキシ基であり得る。アルキルチオアルカンチオールのアルキルチオ部分は、C
1〜C
6アルキル基であり得る。
【0045】
[0048]一実施形態において、1つ又は複数のアリル基は、カルボキシル基含有アルカンチオール又はその塩、リン酸基含有アルカンチオール又はその塩、ホスホン酸基含有アルカンチオール又はその塩、スルホン基含有アルカン又はその塩、(ジアルキルアミノ)アルカンチオール又はその塩、アミノアルカンチオール又はその塩、アルキルアミノアルカンチオール、ジアルキルアミノアルカンチオール、及びスルホン基含有アルキルアンモニウムアルカンチオール又はその塩と反応させられ得る。
【0046】
[0049]一実施形態によれば、ブロックコポリマーの芳香族疎水性ポリマーセグメントは、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンオキシド、ポリカーボネート、ポリ(フタラジノンエーテルスルホンケトン)、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、及びポリアミド−イミドから選択され、好ましくはポリエーテルスルホンである。
【0047】
[0050]本発明は、上述の芳香族疎水性ポリマー及びブロックコポリマーを含む多孔質膜をさらに提供する。
【0048】
[0051]本発明は、上述の芳香族疎水性ポリマー及びブロックコポリマーを含む多孔質膜を製造する方法であって、
(i)溶媒及び前記芳香族疎水性ポリマー、並びに前記ブロックコポリマーを含むポリマー溶液を用意するステップ;
(ii)ポリマー溶液を薄いフィルムとしてキャストするステップ;
(iii)薄いフィルムを転相させて、多孔質膜を得るステップ;及び、任意選択で
(iv)多孔質膜を洗うステップ
を含む、方法もさらに提供する。
【0049】
[0052]ポリマー溶液は、ポリマーと、湿潤剤としてのブロックコポリマーとを含む。典型的なポリマー溶液は、少なくとも1種の溶媒を含み、少なくとも1種の非溶媒をさらに含み得る。適切な溶媒には、例えば、ジメチルホルムアミド(DMF);N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc);N−メチルピロリドン(NMP);ジメチルスルホキシド(DMSO)、メチルスルホキシド、テトラメチルウレア;ジオキサン;コハク酸ジエチル;クロロホルム;及びテトラクロロエタン;並びにこれらの混合物が含まれる。一実施形態によれば、ポリマー溶液は、溶媒として、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、又はこれらの混合物を含む。
【0050】
[0053]適切な非溶媒には、例えば、水;様々なポリエチレングリコール(PEG;例えば、PEG−200、PEG−300、PEG−400、PEG−1000);様々なポリプロピレングリコール;様々なアルコール、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、アミルアルコール、ヘキサノール、ヘプタノール、及びオクタノール;アルカン、例えば、ヘキサン、プロパン、ニトロプロパン、ヘプタン、及びオクタン;並びに、ケトン、エーテル及びエステル、例えば、アセトン、ブチルエーテル、酢酸エチル、及び酢酸アミル;酸、例えば、酢酸、クエン酸、及び乳酸;並びに様々な塩、例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、及び塩化リチウム;並びにこれらの混合物が含まれる。
【0051】
[0054]典型的なキャスト溶液は、約10wt%〜約35wt%の樹脂の範囲で細孔形成剤としてのポリマーを、約0.1%〜約10wt%、好ましくは約0.2%〜約2%、より好ましくは約0.3%〜約1%の範囲で本発明のブロックコポリマーを、約0〜約90wt%の範囲でNMPを、約0〜約90wt%の範囲でDMFを、また約0〜約90wt%の範囲でDMAcを含む。
【0052】
[0055]溶液の適切な成分は、当技術分野において知られている。ポリマーを含む例示的な溶液、及び例示的な溶媒と非溶媒には、例えば、米国特許第4629563号;米国特許第4900449号;米国特許第4964990号、米国特許第5444097号;米国特許第5846422号;米国特許第5906742号;米国特許第5928774号;米国特許第6045899号;及び米国特許第7208200号に開示されているものが含まれる。
【0053】
[0056]例えば、膜試料は、水蒸気拡散又は水中での直接クエンチのいずれかによる、非溶媒により誘発されるポリマーの析出を含む溶液法を通じて製造され得る。通常、ポリマー(例えば、PES又はPPESK)の溶液が、溶媒のDMAC又はDMAC/NMP、細孔形成剤のPEG400及び他の添加剤を用い、最初に製造される。この溶液は、10〜15ミルの間隙を有するドクターブレードを用い、ガラス板に塗布されて、ポリマードープのフィルムを一様に形成する。次いで、フィルムは、温度、風速、及び湿度の制御されたチャンバに入れられるか、又は、予め設定された温度を有する水浴に直接、浸漬されるかのいずれかで、ドープが固体フィルムに変換される時間、放置される。得られる固体フィルム試料は、50〜70%エタノール/水、50℃〜80℃の温度範囲の高温水中で、浸出され、次いで、50℃〜70℃の温度範囲のオーブン中で乾燥されて、多孔質ポリマー膜のシートを与える。
【0054】
[0057]例として、典型的な配合は、約15〜25wt%のPPESKポリマー樹脂、約200〜300phrの溶媒(NMP/DMAC)、通常の範囲は5〜25phrで、50phrまでのポリマー湿潤剤から構成される。細孔形成剤PEG400は、50phr〜100phrの範囲の濃度で導入される。それぞれの個々の配合に対して必要に応じて、0.5〜3.0%の低パーセンテージの他の添加剤が使用され得る。
【0055】
[0058]一実施形態によれば、ポリマー溶液は、芳香族疎水性ポリマー又はブロックコポリマーを、約20%〜約80% 対 約80%〜約20%の質量比で含む。
【0056】
[0059]キャスト溶液は、ガラス板上、又は移動式ベルトのような移動基材上に、平坦なシートとしてキャストされる。別法として、キャスト溶液は中空繊維としてキャストされる。
【0057】
[0060]転相は、知られている方法のいずれによって実施されてもよい。転相は、溶媒及び非溶媒の蒸発(ドライプロセス);露出した表面に吸収される非溶媒蒸気、例えば水蒸気への曝露(蒸気相に誘発される析出プロセス);通常は水である非溶媒液体中でのクエンチ(ウェットプロセス);又は、ポリマーの溶解性が突然大きく低下する、高温フィルムの熱的クエンチ(熱プロセス)を含む。
【0058】
[0061]一実施形態において、転相は、キャスト溶液を、非溶媒蒸気、例えば、制御された湿度の大気に曝すことによって実施され、その後、キャスト溶液は、水浴のような非溶媒浴に浸漬される。
【0059】
[0062]
図3に示されるように、本発明の実施形態による多孔質膜のミクロ構造は、膜の細孔表面に親水性セグメント3を含み、このため、膜の親水性が向上する。ブロックコポリマーの疎水性ポリマーセグメントB、2は、芳香族疎水性ポリマー1に沿って配向する。
【0060】
[0063]本発明の実施形態による多孔質膜は、精密濾過若しくは限外濾過膜としての、又はナノ濾過膜の製造、逆浸透膜、ガス分離膜、浸透気化又は蒸気透過膜、透析膜、膜蒸留、クロマトグラフィー膜、並びに/又は正浸透膜及び圧力浸透膜において用途がある。
【0061】
[0064]本発明の実施形態による多孔質膜は、約0.05μm〜約10μm以上の細孔径(pore size)を有し、精密濾過膜としての用途がある。本発明の特定の実施形態による多孔質膜は、約1nm〜約0.5μmの細孔径を有し、ナノ濾過膜としての用途がある。
【0062】
[0065]本発明による多孔質膜は、約70〜約90ダイン/cm以上、例えば、72、74、76、78、80、82、84、又は86ダイン/cmの臨界濡れ表面張力(CWST)を有する。
【0063】
[0066]本発明の実施形態による多孔質膜は、例えば、診断用途(例えば、試料調製及び/又は診断用ラテラルフローデバイスが含まれる)、インクジェット用途、医薬品業界のための流体の濾過、医療用途のための流体の濾過(在宅及び/又は患者使用のためを含めて、例えば、静脈内用途、また、例えば、血液のような生体流体の濾過(例えば、白血球を除去するため)が含まれる)、エレクトロニクス業界のための流体の濾過(例えば、マイクロエレクトロニクス業界におけるフォトレジスト流体の濾過)、食品及び飲料業界のための流体の濾過、清澄化、抗体−及び/又はタンパク質−含有流体の濾過、核酸含有流体の濾過、細胞検出(原位置でのものが含まれる)、細胞採取、並びに/或いは、細胞培養流体の濾過を含めて、様々な用途に使用できる。代わりに、又は追加として、本発明の実施形態による膜は、空気及び/又はガスを濾過するために使用できる、並びに/或いは、排出用途(例えば、膜を通して空気及び/又はガスは通過させるが、液体は通過させない)に使用できる。本発明の実施形態による多孔質膜は、外科用デバイス及び製品、例えば、眼科用外科製品を含めて、様々なデバイスに使用できる。
【0064】
[0067]本発明の実施形態によれば、多孔質膜は、平面状、平坦なシート状、プリーツ状、チューブ状、スパイラル状、及び中空繊維状を含めて、様々な構造形態を有し得る。
【0065】
[0068]本発明の実施形態による多孔質膜は、少なくとも1つの入口及び少なくとも1つの出口を備え、また入口と出口の間に少なくとも1つの流体流路を定めるハウジングに、通常は配置され、ここで、本発明の少なくとも1つの膜、又は本発明の少なくとも1つの膜を含むフィルターが、流体流路に交差していて、フィルターデバイス又はフィルターモデュールが形成されている。一実施形態において、入口及び第1出口を備え、また入口と第1出口の間に第1流体流路を定めるハウジング;並びに、本発明の少なくとも1つの膜、又は本発明の少なくとも1つの膜を備えるフィルターを備えるフィルターデバイスであって、本発明の膜、又は本発明の少なくとも1つの膜を備えるフィルターは、第1流体流路に交差してハウジングに配置される、フィルターデバイスが提供される。
【0066】
[0069]クロスフロー用途では、本発明の少なくとも1つの膜、又は本発明の少なくとも1つの膜を備えるフィルターは、少なくとも1つの入口と少なくとも2つの出口とを備え、また入口と第1出口の間の第1流体流路と、入口と第2出口の間の第2流体流路とを少なくとも定めるハウジングに配置され、ここで、本発明の膜、又は本発明の少なくとも1つの膜を備えるフィルターは、第1流体流路に交差していて、フィルターデバイス又はフィルターモデュールが形成されていることが好ましい。例示的な一実施形態において、フィルターデバイスは、クロスフローフィルターモデュールと、入口、濃縮物出口を備える第1出口、及び浸透物出口を備える第2出口を備え、また入口及び第1出口の間に第1流体流路を、入口及び第2出口の間に第2流体流路を定めるハウジングとを備え、ここで、本発明の少なくとも1つの膜、又は本発明の少なくとも1つの膜を備えるフィルターは、第1流体流路に交差してハウジングに配置される。
【0067】
[0070]フィルターデバイス又はモデュールは、滅菌可能であり得る。適切な形状で、入口と1つ又は複数の出口とがある任意のハウジングが用いられ得る。
【0068】
[0071]ハウジングは、不浸透性熱可塑性材料のいずれかを含めて、処理される流体に適合する任意の適切な堅い不浸透性材料から作成できる。例えば、ハウジングは、金属、例えば、ステンレス鋼、又はポリマー、例えば、透明若しくは不透明ポリマー、例えば、アクリル、ポリプロピレン、ポリスチレン、若しくはポリカーボネート樹脂から作成できる。
【0069】
[0072]以下の実施例は、本発明をさらに例示するが、言うまでもなく、決してその範囲を限定していると解釈されるべきではない。
【0070】
[0073]
実施例1
この実施例は、本発明の実施形態による、ポリエーテルスルホンとアリルグリシジルエーテルのブロックコポリマーの製造を例示する。
【0071】
[0074]ウルトラゾーン(ULTRASON)E6020(BASF)ポリエーテルスルホン(100g)を、110℃で、オーバーヘッドスターラーを有する1Lの反応器中のDMAc(250g)にゆっくりと加えた。ポリマーが完全に溶解した後で、K
2CO
3(2.5g)を加えた。110℃でさらに2.5時間撹拌した後、アリルグリシジルエーテル(100mL)を加え、反応混合物を110℃で19時間撹拌した。高温の反応混合物を、激しく撹拌しているIPA(3L)に加え、撹拌を、さらに3時間続けた。混合物を濾過し、得られた生成物を、IPA(1.5L)に再懸濁させた。さらに3時間撹拌した後、生成物を濾過し、30%(水中)IPA及びIPA(200mL)で洗った。得られた生成物を、真空オーブン中、50℃で終夜乾燥して、PESとアリルグリシジルエーテルのA−B−A型コポリマー(PES−PolyAGE)を105g得た。コポリマーのプロトンNMRによる評価は、10mol%のアリルグリシジルエーテル及び90mol%のPESの存在を示した。
【0072】
[0075]
実施例2
この実施例は、本発明の実施形態による、ポリエーテルスルホンとアリルグリシジルエーテルの別のブロックコポリマーの製造を例示する。
【0073】
[0076]ウルトラゾーンE7020(BASF)ポリエーテルスルホン(200g)を、110℃で、1Lの反応フラスコ中のDMAc(600mL)にゆっくりと加えた。ポリマーが完全に溶解した後で、K
2CO
3(10g)を加えた。110℃でさらに1時間撹拌した後、反応混合物を、窒素で10分間パージし、アリルグリシジルエーテル(200g)を加えた。反応混合物を110℃で72時間撹拌し、メタノール(2L)中で析出させ、濾過し、得られた固体を、メタノール(750mL)に再懸濁させた。さらに5時間撹拌した後、得られた生成物を濾過し、30%(水中)メタノール及びメタノール(100mL)で洗った。得られた生成物を、真空オーブン中、50℃で終夜乾燥して、260gの所望の生成物(PESとアリルグリシジルエーテルのA−B−A型コポリマー)を得た。プロトンNMRによる評価は、ブロックコポリマーが、62mol%のPES、及び38mol%のアリルグリシジルエーテルを有することを示した。
【0074】
[0077]
実施例3
この実施例は、本発明の実施形態による、親水性ブロックコポリマーである、PES−MAAの製造を例示する。
【0075】
[0078]実施例2によるコポリマーPES−PolyAGEの15gを、80℃で、DMAc(30mL)に溶かした。ポリマーが完全に溶解した後、溶液を、窒素で5分間パージし、チオグリコール酸(又は、メルカプト酢酸)(15mL)及び2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸(750mg)を加えた。反応混合物を80℃で終夜撹拌した。高温の溶液を、エタノール(250mL)に滴下して加え、得られた析出物を、エタノール中で2時間さらに撹拌した。析出物を濾過し、0.1MのNaOH(150mL)、水(300mL)、及びエタノール(100mL)ですすぎ洗いし、真空オーブン中、50℃で終夜乾燥して、17gの所望の生成物(PES−MAA)を得た。プロトンNMRによる評価は、62mol%のPES、30mol%のメルカプト酢酸、及び生成物(PES−MAA)中に残っている8mol%のアリルグリシジルエーテルの存在を示し、これは、チオール−エン反応の間の、メルカプト酢酸(MAA)による、PES−PolyAGEのアリル基の74%の変換に相当する。
【0076】
[0079]
実施例4
この実施例は、本発明の実施形態による、親水性ブロックコポリマーである、PES−MPSの製造を例示する。
【0077】
[0080]実施例2によるPES−PolyAGEの30gを、60℃で、DMAc(80mL)に溶かした。ポリマーが完全に溶解した後、溶液を、窒素で5分間パージした。メルカプトプロパンスルホン酸ナトリウム塩(15g)及び2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸(200mg)を加え、反応混合物を60℃で終夜撹拌した。高温の溶液を、イソプロパノール(IPA)(750mL)に滴下して加えることによって、析出を起こした。析出物を、IPA中で5時間さらに撹拌し、濾過し、真空オーブン中、50℃で終夜乾燥して、36gのPES−MPSを得た。プロトンNMRによる評価は、チオール−エン反応でアリル基が完全に消滅したことを確証した。PES−MPSコポリマーは、62mol%のPES、及び38mol%のメルカプトプロパンスルホン基を有していた。
【0078】
[0081]
実施例5
この実施例は、本発明の実施形態による、親水性ブロックコポリマーである、PES−MEDMAの製造を例示する。
【0079】
[0082]実施例2によるPolyAGEの16.1gを、80℃で、DMAc(60mL)に溶かした。ポリマーが完全に溶解した後、溶液を、窒素で5分間パージした。2−(ジメチルアミノ)エタンチオール塩酸塩(16.1g)及び2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸(80.5mg)を加え、反応混合物を80℃で終夜撹拌した。高温の反応混合物を、IPA(250mL)に滴下して加えることによって、析出を起こした。得られた析出物を、IPA(100mL)中で2時間さらに撹拌した。析出物を、濾過し、脱イオン水(1000mL)で、その後IPA(500mL)で洗った。得られた生成物を、真空オーブン中、50℃で終夜乾燥し、プロトンNMRによって求めて62mol%のPES、32mol%のジメチルアミノ−エーテルチオール基、及び残っている6mol%のアリルグリシジル基を有するPES−MEDMAを得た。
【0080】
[0083]
実施例6
この実施例は、本発明の実施形態による、親水性ブロックコポリマーである、PES−ACysの製造を例示する。
【0081】
[0084]実施例2によるPES−PolyAGEの3gを、100℃で、DMAc(10mL)に溶かした。ポリマーが完全に溶解した後、溶液を、窒素で5分間パージした。反応混合物に、アセチル−L−システイン(3g)及び2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸(50mg)を加え、混合物を100℃で終夜撹拌した。生成した生成物を、IPA(100mL)で析出させた。IPA(50mL)中で、さらに3時間撹拌した後、析出物を、濾過し、50%(水中)IPA(200mL)で洗い、真空オーブン中、50℃で終夜乾燥して、3.4gのPES−ACysを得た。プロトンNMRによる評価は、62mol%のPES、及び30mol%のアセチル−L−リシンと、残っている8mol%のアリル基の存在を示した。
【0082】
[0085]
実施例7
この実施例は、本発明の実施形態による、親水性ブロックコポリマーである、PES−MESの製造を例示する。
【0083】
[0086]実施例2によるPES−PolyAGEの15gを、80℃で、DMAc(40mL)に溶かした。ポリマーが完全に溶解した後、溶液を、5分間パージした。2−メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム(11.7g)及び2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸(250mg)を加え、反応混合物を80℃で終夜撹拌した。次いで、高温の溶液を、IPA(250mL)に滴下して加えることによって、析出を起こさせ、析出物を、IPA中で2時間さらに撹拌し、次に、濾過し、真空オーブン中、50℃で終夜乾燥した。プロトンNMRによって求めて62mol%のPES、25mol%のメルカプトエタンスルホン酸、及び13mol%のアリル基を有する、PES−MESを16g得た。
【0084】
[0087]
実施例8
この実施例は、本発明の実施形態による、親水性ブロックコポリマーである、PES−MEAの製造を例示する。
【0085】
[0088]実施例2によるPES−PolyAGEの3gを、80℃で、DMAc(10mL)に溶かした。ポリマーが完全に溶解した後、溶液を、窒素で5分間パージした。アミノエタンチオール塩酸塩(3g)及び2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸(50mg)を加え、反応混合物を80℃で21時間撹拌した。高温の溶液を、エタノール(250mL)に滴下して加えることによって、析出を起こした。得られた析出物を、エタノール(50mL)中に戻し、2時間さらに撹拌した。得られた析出物を、濾過し、真空オーブン中、50℃で終夜乾燥して、プロトンNMRによって求めて62mol%のPES、34mol%のアミノエタンチオール基、及び4mol%のアリル基を有するPES−MEAを3.3g得た。
【0086】
[0089]
実施例9
この実施例は、PESと実施例1のポリマー(PES−PolyAGE)のブレンド、又はPESと実施例4のブロックコポリマー(PES−MPS)のブレンドを含む多孔質膜の製造を例示する。
【0087】
[0090]膜キャスト溶液を、下の表1に記載されている通りに、ポリマー、溶媒、非溶媒、及び細孔形成剤を混合することによって準備した。
【0088】
【表1】
【0089】
[0091]キャスト溶液を、30℃のキャスト温度、70%の相対湿度、及び25℃の乾球温度で、蒸気に誘発される相分離法を用いる10ミルのドープの厚さで、薄いフィルムとしてキャストした。ドープは、水蒸気チャンバに15秒間入れ、13℃の温度で水浴に浸漬した。
【0090】
[0092]CWSTを、乾燥した膜で測定した。47mmの直径の6枚のディスクを80℃で1時間乾燥し、次にIPAにより、3時間ソックスレー抽出し、その後、80℃で最終の1時間の乾燥サイクルを行った。抽出物%を計算した。CWSTを、IPA抽出の後、いくつかのディスクで再び測定した。得られた結果は表2に記載されている。湿潤剤としてポリビニルピロリドンを用いて製造されたポリエーテルスルホン膜を、コントロールとして用いた。
【0091】
【表2】
【0092】
[0093]示されているように、実施例1によるPES−PolyAGEを用いて製造された多孔質膜は、59ダイン/cmのCWST、及び1.19%の低抽出物レベルを有していた;それは、水によって瞬時に濡れた。実施例4によるPES−MPSを用いて製造された多孔質膜は、77ダイン/cmのCWST、及び1.19%の低抽出物レベルを有していた;それもまた、水によって瞬時に濡れた。比較として、ポリビニルピロリドンを用いて製造されたポリエーテルスルホン膜は、87ダイン/cmのCWSTを有していた;しかしながら、IPA抽出物は、2.44%で多かった。
【0093】
[0094]膜のモルホロジーを、Hitachi−3400II SEMを用い、試料を白金/金で予めスパッタリングして、評価した。PESとPES−PolyAGEのブレンドから製造された膜の横断面のSEM写真が、
図1A及び1Bに示されている。PESとPES−MPSのブレンドから製造された膜の横断面のSEM写真が、
図2A及び2Bに示されている。
【0094】
[0095]
実施例10
この実施例は、PPESK及びPES−PolyAGEのブレンドを湿潤剤として含む多孔質膜の製造を例示する。
【0095】
[0096]25wt%でPPESK樹脂、300phrで溶媒のNMP/DMAc(v/v)、15wt%で実施例2のPES−PolyAGEを含むキャスト溶液を製造し、空気温度32℃、相対湿度72%で、28℃で15ミルの厚さのフィルムとしてキャストした。ドープを15秒間、環境チャンバに置き、室温で水に浸漬した。膜のモルホロジーを、SEMによって評価した。
図4Aは、本発明の実施形態による膜の横断面のSEM写真を示す。
図4Bは、
図4Aに示された写真の、より高倍率のSEM写真を示す。膜は、片面から片面へ、対称な細孔構造分布を有していた。細孔は相互連結が少ないセル状であった。
【0096】
[0097]出版物、特許出願、及び特許を含めて、本明細書において挙げられた全ての参考文献は、これによって、あたかも各参考文献が、参照によって組み込まれると、個々に、明確に指摘され、またその全体が本明細書に記載されているのと同じ程度に、参照によって組み込まれる。
【0097】
[0098]用語「ある1つの(「a」及び「an」」及び「この」及び「少なくとも1つの」並びに本発明の記載に関連する類似の指示(特に、後の特許請求の範囲に関連して)は、本明細書において特に断らなければ、又は関連を考慮することよって明瞭に矛盾するのでなければ、単数及び複数の両方を包含すると解釈されるべきである。1つ又は複数の項目の列挙を従える用語「少なくとも1つの」(例えば、「少なくとも1つのA及びB」)の使用は、本明細書において特に断らなければ、又は関連を考慮することよって明瞭に矛盾するのでなければ、列挙された項目から選択される1つの項目(A又はB)、又は列挙された項目の2つ以上の任意の組合せ(A及びB)を意味すると解釈されるべきである。用語「含む」、「有する」、「包含する」、及び「含有する」は、特に断らなければ、オープンエンドな用語(すなわち、「含むが、限定されない」を意味する)と解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の記述は、本明細書において特に断らなければ、その範囲内に入る別個の値の各々を個別に挙げることの速記法として使えることを意図しているにすぎず、別個の値の各々は、本明細書において個別に挙げられたかの如くに、本明細書に組み込まれる。本明細書において記載された方法は、本明細書において特に断らなければ、又は関連を考慮することよって明瞭に矛盾するのでなければ、適切な任意の順序で実施され得る。本明細書に記載された、いずれかの及び全ての例、又は例示の用語(例えば、「例えば」、「のような」)の使用は、単に、本発明をよりよく明らかにしようとするにすぎず、特に断らなければ、本発明の範囲を限定しない。本明細書における如何なる用語も、何らかの非請求要素(non−claimed element)を、本発明の実施にとって本質的であるとして指示していると解釈されるべきではない。
【0098】
[0099]本発明の好ましい実施形態が、本発明の実施にとって本発明者等に知られている最善の様式を含めて、本明細書に記載されている。好ましいこれらの実施形態の変形形態が、上記の記述を読むと、当業者には明らかとなり得る。本発明者等は、当業者が、このような変形形態を適切であるとして用いることを予期し、本発明者等は、本発明が、本明細書において具体的に記載されたものとは別の仕方で実施されることを意図する。したがって、本発明は、適用される法律によって許されているとして、本明細書に添付される特許請求の範囲において挙げられる主題の全ての改変及び同等のものを含む。さらに、上述した要素の、それらの全ての可能な変形形態における、任意の組合せは、本明細書において特に断らなければ、又は関連を考慮することよって明瞭に矛盾するのでなければ、本発明によって包含される。