特許第6080144号(P6080144)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6080144壁面構築用パネル、およびこの壁面構築用パネルにより構成される残存型枠の構築方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6080144
(24)【登録日】2017年1月27日
(45)【発行日】2017年2月15日
(54)【発明の名称】壁面構築用パネル、およびこの壁面構築用パネルにより構成される残存型枠の構築方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/10 20060101AFI20170206BHJP
【FI】
   E21D11/10 A
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-113248(P2016-113248)
(22)【出願日】2016年6月7日
【審査請求日】2016年6月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】393010215
【氏名又は名称】山下 譲二
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(72)【発明者】
【氏名】山下 譲二
【審査官】 大熊 靖夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−278494(JP,A)
【文献】 特開2003−074297(JP,A)
【文献】 特開2001−311395(JP,A)
【文献】 特開2006−207303(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/00−19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル覆工コンクリート打設用の残存型枠を兼用でき壁面構築用パネルであって、
構内火災によってトンネル躯体の性能劣化を防止する断熱性能を確保できる所定の板厚を有する矩形のパネル本体と
堀削により順次形成されたトンネルの内面の周方向の形状に合わせて設けられたフレームに接続され、前記パネル本体の裏面の長辺を左右2等分したそれぞれの領域のそれぞれの概ね重心位置、または前記裏面を上下左右4等分したそれぞれの領域のそれぞれの概ね重心位置に、端部が予め前記パネル本体の裏面に埋設され、先端が尖端加工された鉤の手状のフック継手、またはフック穴である接続部と、を備える
ことを特徴とする壁面構築用パネル。
【請求項2】
請求項1に記載の壁面構築用パネルを、接続穴や切欠き溝、または先端が尖端加工されている鉤の手状の継手が形成されているフレームに取り付け、前記残存型枠を構築するための残存型枠の構築方法であって、
順次形成された前記トンネルの内面に、前記フレームに対して交差する方向に所定の間隔を空けて、前記トンネルの周方向の形状に合わせて、前記フレームを設置するフレーム取付け工程と、
前記壁面構築用パネルを、前記フレームに対して交差する方向からスライドさせ、前記接続部を前記フレームに直接接続させることで、前記壁面構築用パネルを前記フレームに固定し、前記壁面構築用パネルを、任意の位置から下降する方向、または上昇する方向に向けて、前記フレームに順次取り付けるパネル取付け工程と、
前記トンネルの内面と前記壁面構築用パネルとの隙間に打設コンクリートを流し込むコンクリート打設工程と、を含む、
ことを特徴とする残存型枠の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、堀削により順次形成されたトンネルの内面に取り付けられる壁面構築用パネルおよび、その壁面構築用パネルを用いた残存型枠の構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トンネルの内面に構築するトンネル覆工コンクリートは、掘削蛇行修正、トンネル壁表面の仕上げ等の役割を担っている。そして、このトンネル覆工コンクリートの表面には、坑内火災によってトンネルの壁面に損傷を与えることを防止するために耐火パネルが敷設されている。
近年、トンネル覆工コンクリートの打設用の型枠に、セントル(覆工用セントル)と呼ばれる半円筒形の重機施行方式の巨大な型枠が用いられている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載の覆工用セントルは、コンクリートの吹き付けが完了したトンネルの内面に覆工用のコンクリートを施工する際に使用され、トンネルの内面に沿ってフォーム群を設置し、設置したフォーム群と内面との間に形成される打設空間に覆工用のコンクリートを打設する。そして、その状態を所定時間維持することで覆工コンクリートの養生を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−79773号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
引用文献1の覆工用セントルは、大がかりな装置であり、ある程度トンネルの形状が完成している穴の中に移動させて使用する。そのため、掘削したトンネルの内面に順次コンクリートを打設することはできない。また、引用文献1の覆工用セントルによって、コンクリートを打設する場合、標準的に2日に1回コンクリートが打設され、コンクリートの養生時間が18時間程度であり、養生時間が短い。
そのため、強度発現が低いうちに強引に脱型することによる打設コンクリート躯体の変形、およびひび割れが生じるおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、トンネルを掘削している途中段階でも、簡易的な方法でトンネルの内面に順次取り付けることができる壁面構築用パネルを提供することを目的とする。さらに、この壁面構築用パネルを用いて、掘削したトンネルの内面に順次構築できる残存型枠の構築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の壁面構築用パネルは、トンネル覆工コンクリート打設用の残存型枠を兼用でき壁面構築用パネルであって、構内火災によってトンネル躯体の性能劣化を防止する断熱性能を確保できる所定の板厚を有する矩形のパネル本体と、堀削により順次形成されたトンネルの内面の周方向の形状に合わせて設けられたフレームに接続され、パネル本体の裏面の長辺を左右2等分したそれぞれの領域のそれぞれの概ね重心位置、または裏面を上下左右4等分したそれぞれの領域のそれぞれの概ね重心位置に、端部が予めパネル本体の裏面に埋設され、先端が尖端加工された鉤の手状のフック継手、またはフック穴である接続部とを備えていることを特徴とする。
【0008】
本発明の壁面構築用パネルにおいて、接続部は、先端が尖端加工されている鉤の手状のフック継手であり、このフック継手がフレームに形成されている接続穴または切欠き溝に接続されることを特徴とする。
【0009】
本発明の壁面構築用パネルにおいて、フレームには、先端が尖端形状の鉤の手状の継手が形成され、接続部であるフック穴に継手が挿入されることを特徴とする。
【0010】
本発明の壁面構築用パネルにおいて、接続部は、裏面の長辺を左右2等分したそれぞれの領域のそれぞれの概ね重心位置、または、裏面を上下左右4等分したそれぞれの領域のそれぞれの概ね重心位置に設けられていることを特徴とする。
【0011】
本発明の壁面構築用パネルは、隣り合う外周縁に合いじゃくり構造が形成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明の壁面構築用パネルは、有機繊維材が混入された耐火コンクリート、またはキャスタブル耐火物で成形されていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の残存型枠の構築方法は、上記の壁面構築用パネルを、接続穴や切欠き溝、または先端が尖端加工されている鉤の手状の継手が形成されているフレームに取り付け、前記残存型枠を構築するものであり、順次形成されたトンネルの内面に、前記フレームに対して交差する方向に所定の間隔を空けて、トンネルの周方向の形状に合わせて、フレームを設置するフレーム取付け工程と、壁面構築用パネルを、フレームに対して交差する方向からスライドさせ、接続部をフレームに直接接続させることで、壁面構築用パネルをフレームに固定し、壁面構築用パネルを、任意の位置から下降する方向、または上昇する方向に向けて、フレームに順次取り付けるパネル取付け工程と、トンネルの内面と壁面構築用パネルとの隙間に打設コンクリートを流し込むコンクリート打設工程とを含むことを特徴とする。
【0014】
本発明の残存型枠の構築方法は、パネル取付け工程において、壁面構築用パネルは、任意の位置から下降する方向、または上昇する方向に向けて、フレームに取り付けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の壁面構築用パネルは、フレームに対して交差する方向からスライドさせ、フレームに形成された接続穴に接続部を挿入させ接続することで、フレームに取り付けることができる。そのため、壁面構築用パネルをフレームに容易に取り付けることができる。
【0016】
本発明の壁面構築用パネルにおいて、接続部は、先端が尖端加工されている鉤の手状のフック継手であり、このフック継手がフレームに形成されている接続穴または切欠き溝に接続されるため、壁面構築用パネルをフレームに容易に取り付けることができる。
【0017】
本発明の壁面構築用パネルにおいて、フレームには、先端が尖端加工されている鉤の手状の継手が形成され、接続部であるフック穴に継手が挿入されるため、壁面構築用パネルをフレームに容易に取り付けることができる。
【0018】
本発明の壁面構築用パネルの接続部は、裏面の長辺を左右2等分したそれぞれの領域のそれぞれの概ね重心位置、または、裏面の上下左右4等分したそれぞれの領域のそれぞれの概ね重心位置に設けられているため、上記の重心位置以外の部分に接続部が形成されたものよりも、安定してフレームに取り付けておくことができる。
また、本発明の壁面構築用パネルは、隣り合う外周縁に合いじゃくり構造が形成されているため、フレームに取り付けられた際、隣り合う壁面構築用パネルの合いじゃくり構造の部分が重なり合う。そうすると、壁面構築用パネルの間に隙間を生じることなく、緊密に壁面構築用パネルを敷き詰めることができる。そのため、隣り合う壁面構築用パネルの目地部の隙間が遮蔽されることにより、仮にトンネル内で火災が生じた場合でも、火炎がパネル裏面のコンクリート(躯体)に至らず、コンクリートの強度等の性能の劣化を防止できる。
【0019】
さらに、本発明の壁面構築用パネルは、耐熱性能機繊維材が混入された耐火コンクリート、またはキャスタブル耐火物で成形されているため、トンネルの内部で火災が起きた場合でも、壁面構築用パネルが燃焼して、強度等の性能が劣化すること防止できる。したがって、トンネル火災事故後に要する復旧期間を著しく短縮できる。
さらに、壁面構築用パネルは、機繊維材が混入された耐火コンクリート、またはキャスタブル耐火物で構成されているため、コンクリートの表面に耐火パネルを付設する工事を省略することができる。そのため、この壁面構築用パネルを用いることで、工事期間を短縮することができ、コストを削減できる。
【0020】
本発明の残存型枠の構築方法は、掘削過程で順次形成されるトンネルの内面の任意の位置に掘削速度に追随して壁面構築用パネルを、例えば、人力手作業で容易に取り付けることができる。従来のトンネル覆工コンクリート型枠(セントル)では、標準的に2日に1回コンクリートを打設しているが、本発明の残存型枠の構築方法では、毎日連続してコンクリート打設ができるため、コンクリート打設の施工効率が著しく向上する。
また、従来のトンネル覆工コンクリート型枠では、コンクリート養生時間が18時間程度と短いのに対し、本発明によって構築した壁面構築用パネルは、コンクリートを打設した後、恒久的に取り外すことがない。そのため、強度発現が低いうちに強引に脱型するために生じていた打設コンクリート躯体の変形、およびひび割れの要因を払拭できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係る壁面構築用パネルをトンネルの内面に取り付ける手順を説明する図である。
図2】本発明の実施形態に係る壁面構築用パネルを示す図である。(a)フック継手が2つ設けられた壁面構築用パネル、(b)フック継手が4つ設けられた壁面構築用パネル、(c)フック継手の部分拡大図
図3】本発明の実施形態に係る壁面構築用パネルの外周縁に合いじゃくりが形成されているもの示す図である。
図4】本発明の実施形態に係る壁面構築用パネルによって構成された残存型枠が形成されたトンネルの断面図である。
図5】本発明の実施形態に係る壁面構築用パネルのフック継手がフレームに接続された状態を示す図である。(a)断面図、(b)正面図
図6】本発明の実施形態に係る壁面構築用パネルがフレームに取り付けられている状態を示す図である。(a)側面図、(b)正面図
図7】本発明の実施形態に係る壁面構築用パネルのフック継手が切欠き溝に接続された状態を示す図である。(a)断面図、(b)正面図
図8】本発明の実施形態に係る壁面構築用パネルを示す図である。(a)リング部材が2つ設けられた壁面構築用パネル、(b)リング部材が4つ設けられた壁面構築用パネル、(c)リング部材の部分拡大図
図9】本発明の実施形態に係る壁面構築用パネルのリング部材のフック穴にフレームの継手が接続された状態を示す図である。(a)部分拡大図、(b)部分拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
本実施形態に係る壁面構築用パネル1、およびこの壁面構築用パネル1により構成される残存型枠9の構築方法を、図1図6を参照し説明する。
図1に示すように、壁面構築用パネル1は、地山6を堀削することにより、順次形成されたトンネル2の内面3の周方向に設けられたフレーム4に対して交差する方向からスライドさせて接続されて取り付けられる。
【0023】
[壁面構築用パネル1]
壁面構築用パネル1は、図2に示すように、所定の板厚を有する矩形である。この壁面構築用パネル1は、トンネル構築するときに求められる耐熱性能(900℃から1800℃)に合わせて、有機繊維材が混入された耐火コンクリート、またはキャスタブル耐火物で成形されている。
壁面構築用パネル1の裏面には、図2(a)に示すように、接続部としての鉤の手状のフック継手10が2つ形成されている。このフック継手10は、裏面の長辺を左右2等分したそれぞれの領域のそれぞれの概ね重心位置に設けられている。なお、図2(a)において、点線は、裏面の長辺を左右2等分する線を示している。
フック継手10は、板状の部材であり、壁面構築用パネル1に対して垂直方向に突出する突出部11と、突出部11の先端に壁面構築用パネル1と平行方向に設けられる挿入部12とから構成される。この挿入部12は、壁面構築用パネル1の長手方向に向けて設けられ、各挿入部12,12は同一の方向に向いている。
フック継手10は、側面視すると、L字状となっている。また、挿入部12の先端は、尖端加工されている(図2(c))。
【0024】
また、壁面構築用パネル1のサイズや重量が大きい場合、図2(b)示すように、フック継手10を4つ設けることもできる。この場合、フック継手10は、壁面構築用パネル1の裏面を上下左右4等分したそれぞれの領域のそれぞれの概ね重心位置に設ける。フック継手10を4つ設ける場合も、各挿入部12は壁面構築用パネル1と平行方向に設けられ、同一の方向を向いている。なお、図2(b)において、点線は、裏面の上下左右を4等分する線を示している。
【0025】
さらに、図3に示すように、壁面構築用パネル1の長辺および短辺にそれぞれ段差部13を備え、外周縁に合いじゃくり構造が形成された壁面構築用パネル1を使用することもできる。
合いじゃくり構造が形成されている場合も、フック継手10は、図3中の点線で示したように、裏面の長辺を左右2等分したそれぞれの領域のそれぞれの概ね重心位置に設けられる。さらに、各挿入部12は、壁面構築用パネル1と平行方向に設けられ、同一の方向を向いている。
【0026】
[フレーム4]
フレーム4は、掘削により順次形成されたトンネル2の内面から一定の間隔をあけて、内面の周方向に設けられる(図1)。フレーム4は、半円弧状であり、金属材料により構成されている。
このフレーム4は、複数のアンカー5によって、トンネル2の内部に固定される。アンカー5は、棒状の部材であり、一端がフレーム4に接続され、他端がトンネル2の地山6に埋め込まれる。
フレーム4には、フレーム4の形状に沿って、等間隔に接続穴20が形成されている。この間隔は、壁面構築用パネル1の短辺の長さとほぼ等しい。また、接続穴20の直径は、フック継手10の幅とほぼ同じ大きさに設計されている。なお、接続穴20の直径は、フック継手10が挿入できる大きさであればよい。
【0027】
次に、壁面構築用パネル1によって構成される残存型枠9の構築方法ついて、説明する。
残存型枠9の構築方法は、順次形成されたトンネル2の内面から所定の間隔を空けて、フレーム4を設置するフレーム取付け工程と、壁面構築用パネル1のフック継手10とフレーム4を接続させるパネル取付け工程と、トンネル2の内面3と壁面構築用パネル1との隙間に打設コンクリートを流し込むコンクリート打設工程とを含む。
この残存型枠9の構築方法は、トンネル2を掘削している途中の段階から順次残存型枠9を構築していくものである。
本実施形態では、段階的に地山6を掘削し、トンネル2の内面3に、段差部13(合いじゃくり構造)を有する壁面構築用パネル1によって残存型枠9を構築する方法について説明する。なお、残存型枠9の構築は、人力手作業で行っても、機械を用いて行っても良い。
【0028】
[フレーム取付け工程]
まず、図4に示すように、トンネル2の上側部分(以下、第1の領域A1と記す。)を切削する。次に、第1の領域A1の地山6に複数のアンカー5を取り付け、トンネル2の内面3から一定の間隔を空けて、フレーム4をトンネル2の内面に沿って設置する。そして、アンカー5の一端をフレーム4に取り付ける。同様の作業により、所定の間隔をあけて、複数のフレーム4を取りつける。この所定の間隔は、壁面構築用パネル1のフック継手10,10の間隔とほぼ同じとする。
【0029】
[パネル取付け工程]
次に、トンネル2の内面3に設けたフレーム4に壁面構築用パネル1を取り付ける。
壁面構築パネル1は、フレーム4の横側から内面3に沿ってスライドさせて(図1:矢印の向き)、図5(a)に示すように、挿入部12が接続穴20に挿入され、フック継手10が接続穴20に引っかかるように取り付ける。次にもう1枚の壁面構築用パネル1を同じように、フレーム4の横側から内面3に沿って、スライドさせて取り付ける。この際、図6に示すように、隣り合う壁面構築用パネル1の段差部13同士が重なり合う。このように、隣り合う壁面構築用パネル1の間に隙間を生じさせないように、トンネル2の内面3の所望の位置に壁面構築用パネル1を敷き詰める。
なお、この壁面構築用パネル1は、どの位置から取り付けてもよく、任意の位置から残存型枠9が下側に向けて構築、または残存型枠9が上側に向けて構築されるように、フレーム4に取り付けることができる。
【0030】
[コンクリート打設工程]
所望の位置に壁面構築用パネル1を設置後、地山6と壁面構築用パネル1の隙間にコンクリート7を打設し、このコンクリート7を養生させる。
第1の領域に残存型枠9を構築した後、トンネル2の下側部分(以下、第2の領域A2と記す。)を掘削する。掘削後、上述の工程と同じ工程により残存型枠9を順次構築する。
この第2の領域A2における残存型枠9の構築は、第1の領域A1におけるコンクリート7を養生させている間に行う。
【0031】
本実施形態に係る壁面構築用パネル1および壁面構築用パネル1によって構成される残存型枠9の構築方法の効果について説明する。
壁面構築用パネル1は、フレーム4に対して交差する方向(フレーム4の横)からスライドさせ、フック継手10をフレーム4に形成された接続穴20に挿入させ接続することで、フレーム4に取り付けることができる。そのため、壁面構築用パネル1をフレーム4に容易に取り付けることができる。
また、フック継手10は、壁面構築用パネル1の長辺を2等分した領域の概ね重心位置に形成されているため、重心位置以外の部分にフック継手10が形成されたものよりも、安定してフレーム4に取り付けておくことができる。また、同様に、フック継手10を、上下左右を4等分した領域の重心位置に設けた場合でも、安定してフレーム4に取り付けておくことができる。
【0032】
本実施形態に係る壁面構築用パネル1は、その外周縁に段差部13が形成されており、フレーム4に取り付けられた際、隣り合う壁面構築用パネル1の段差部13が重なり合う。そのため、隣り合う壁面構築用パネル1の間に隙間を生じることなく、トンネル2の内面3に緊密に壁面構築用パネル1を敷き詰めることができる。そのため、隣り合う壁面構築用パネル1の目地部の隙間が遮蔽されることにより、仮にトンネル2の内部で火災が生じた場合でも、火炎が壁面構築用パネル1の裏面のコンクリート7(躯体)に至らず、コンクリート7の強度等の性能の劣化を防止できる。
また、挿入部12の先端は尖端加工され、挿入部12が接続穴20に挿入されやすい構造を有している。そのため、壁面構築用パネル1をフレーム4に容易に取り付けることができる。
【0033】
さらに、本実施形態に係る壁面構築用パネル1は、求められる耐熱性能(900℃から1800℃)に合わせて、機繊維材が混入された耐火コンクリート、またはキャスタブル耐火物で成形されているため、仮にトンネル2の内部で火災が起きた場合でも、壁面構築用パネル1が燃焼して、コンクリート7の強度等の性能が劣化すること防止できる。
そのため、トンネル火災事故後に、コンクリート7を撤去したり、再度打設したりする必要がなくなり、復旧に要する期間を著しく短縮できる。
さらに、壁面1は、機繊維材が混入された耐火コンクリート、またはキャスタブル耐火物で構成されているため、コンクリート7の表面に耐火パネルを付設する工事を省略することができる。そのため、この壁面構築用パネル1を使用することで、工事期間を短縮することができ、コストを削減できる。
【0034】
本実施形態に係る残存型枠9の構築方法は、掘削過程で順次形成されるトンネル2の内面3の任意の位置に掘削速度に追随して壁面構築用パネル1を容易に取り付けることができる。
従来のトンネル覆工コンクリート型枠(セントル)では、標準的に2日に1回コンクリートを打設している。しかし、本実施形態に係る壁面構築用パネル1を用いた残存型枠9の構築方法では、トンネル2の掘削の途中段階であっても、残存型枠9を構築できるため、毎日連続してコンクリート7を打設することができる。
そのため、本実施形態に係る残存型枠9の構築方法は、従来のセントルを使用したものよりも、コンクリート7の打設の施工効率が著しく向上される。
【0035】
また、従来のトンネル覆工コンクリート型枠では、コンクリート養生時間が18時間程度と短いのに対し、本実施形態で構築した壁面構築用パネル1(残存型枠9)は、コンクリート7の打設後、恒久的に取り外すことがない。そのため、強度発現が低いうちに強引に脱型するために生じていた打設コンクリート7の変形、およびひび割れを防止することができる。
さらに、本実施形態に係る残存型枠9の構築方法は、セントルのような大型の機械を使用する必要がないため、コストを削減することができる。
【0036】
また、壁面構築用パネル1は、任意の位置から下降する方向、または上昇する方向に向けてフレーム4に取り付けることができるため、壁面構築用パネル1の取り付けの作業性が良く、内面3のどの位置からも容易に取り付けることができる。
【0037】
次に、本実施形態の変形例について、図7を参照し、説明する。
この変形例では、フレーム4に切欠き溝23を設け、この切欠き溝23にフック継手10の挿入部12の下面を引っ掛ける点に特徴がある。
フック継手10の突出部11は、フレーム4の幅よりも長くなるように設計されている。
また、切欠き溝23は、フレーム4の壁面構築用パネル1と対向する面の反対側の面に形成する。この切欠き溝23は、半円状に形成されている。なお、切欠き溝23の形状は、半円状に限らず、V字状やI字状に形成することもできる。
【0038】
この壁面構築用パネル1は、フレーム4に対して交差する方向からスライドさせて、挿入部12を切欠き溝23に引っかけて接続することにより、フレーム4に取り付けられる。
この場合、挿入部12を切欠き溝23に引っ掛けるのみでよいため、壁面構築用パネル1をフレーム4に容易に取り付けることができる。また、切欠き溝23が形成されているため、壁面構築用パネル1の位置決めを容易にすることができる。
【0039】
次に、本実施形態の他の実施例について、図8を参照し、説明する。
この実施例では、壁面構築用パネル1において、フック継手10の代わりに接続部としてのリング部材24が設けられている点、フレーム4に接続穴20の代わりに継手25が形成されている点で上述の壁面構築用パネル1と相違する。
リング部材24は、図8(a)に示すように、フック穴26を有し、裏面の長辺を左右2等分したそれぞれの領域のそれぞれの概ね重心位置に設けられている。
また、壁面構築用パネル1のサイズや重量が大きい場合、図8(b)に示すように、フック継手10を4つ設けることもできる。この場合、裏面の上下左右を4等分したそれぞれの領域のそれぞれの概ね重心位置に設ける。
なお、リング部材24を取り付けた壁面構築用パネル1の外周縁に合いじゃくり構造を形成させてもよい。
【0040】
リング部材24が設けられた壁面構築用パネル1は、図9に示すように、フレーム4に対して交差する方向から内面3に沿ってスライドさせて、継手25がフック穴26に挿入され、継手25がフック穴26に引っかかるように取り付ける。そして、順次壁面構築用パネル1を、フレーム4の横側から内面3に沿って、スライドさせて取り付ける。
【0041】
壁面構築用パネル1は、フレーム4に対して交差する方向からスライドさせ、継手25をフック穴26に挿入させ、フレーム4と接続することで、フレーム4に取り付けることができる。そのため、壁面構築用パネル1をフレーム4に容易に取り付けることができる。
【0042】
以上、本実施形態について説明したが、これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
本実施形態では、合いじゃくり構造を有する壁面構築用パネル1を使用した残存型枠9の構築方法について説明したが、外周縁に合いじゃくり構造を有さない壁面構築用パネル1を使用して、残存型枠9を構築することもできる。また、本実施形態では、板状のフック継手10を使用したが、円柱状や角柱状であってもよい。
また、本実施形態では、壁面構築用パネル1と内面3の隙間にコンクリート7を打設した例を示したが、コンクリート7に代えて、例えば、耐火性能を有する砂や廃棄材等を埋め込むこともできる。
【符号の説明】
【0043】
1 壁面構築用パネル
2 トンネル
3 内面
4 フレーム
5 アンカー
6 地山
7 コンクリート
9 残存型枠
10 フック継手
11 突出部
12 挿入部
13 段差部
20 接続穴
23 切欠き溝
24 リング部材
25 継手
26 フック穴
【要約】
【課題】トンネルを掘削している途中段階でも、簡易的な方法でトンネルの内面に順次取り付けることができる壁面構築用パネルを提供することを目的とする。
【解決手段】壁面構築用パネル1は、残存型枠9を兼用でき、所定の板厚を有する矩形であって、掘削により順次形成されたトンネル2の内面3の周方向に設けられたフレーム4に、このフレーム4に対して交差する方向からスライドさせて接続される接続部20が裏面に形成されている。この壁面構築用パネル1は、フレーム4に対して交差する方向からスライドさせ、フレーム4に形成された接続穴26に接続部20を挿入させ接続することで、フレーム4に取り付けることができため、壁面構築用パネル1をフレーム4に容易に取り付けることができる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9