(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
絶縁層の表面に電気配線およびこの電気配線を被覆して保護する絶縁性の配線カバー層が形成されている電気回路基板と、クラッド層の表面にコアがパターン形成されている光導波路とを備え、上記絶縁層の表面または裏面に上記クラッド層が接触した状態で、上記電気回路基板と上記光導波路とが積層されている光電気混載基板であって、その光電気混載基板の一部が屈曲予定部に設定され、その屈曲予定部では、上記配線カバー層と、上記光導波路とが重ならない状態で配置され、上記屈曲予定部以外の部分では、上記配線カバー層と上記光導波路とが重なった状態で配置されていることを特徴とする光電気混載基板。
【背景技術】
【0002】
最近の電子機器等では、伝送情報量の増加に伴い、電気配線に加えて、光配線が採用されている。そのようなものとして、例えば、
図7に示すような光電気混載基板が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このものは、絶縁性のフレキシブル基板(絶縁層)51の表面に電気配線52と、この電気配線52を被覆して保護する絶縁性のカバーレイ(配線カバー層)53とが形成されてなる電気回路基板E
0 の上記フレキシブル基板51の裏面(電気配線52の形成面と反対側の面)に、エポキシ樹脂等からなる光導波路(光配線)W
0 (アンダークラッド層56,コア57,オーバークラッド層58)を積層して形成されている。この光電気混載基板は、電気回路基板E
0 も光導波路W
0 も薄いため、フレキシブルであり、最近の電子機器等の小形化に対応して、小スペースで屈曲させた状態で使用されたり、ヒンジ部等の可動部で使用されたり等している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、上記光電気混載基板は、電気配線52を被覆保護するカバーレイ53と、光導波路W
0 とが重なる(
図7では上下に重なる)状態で配置されている。そのため、上記光電気混載基板の厚みは、電気回路基板E
0 の厚みと光導波路W
0 の厚みの合計厚みになっており、そのような光電気混載基板を屈曲させると、その厚みにより、その屈曲部分には、応力がかかる。その結果、屈曲部分に破断やクラックが発生して情報伝達が適正に行われなくなるおそれがある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、屈曲部分にかかる応力を大幅に低減することができる光電気混載基板の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明の光電気混載基板は、絶縁層の表面に電気配線およびこの電気配線を被覆して保護する絶縁性の配線カバー層が形成されている電気回路基板と、クラッド層の表面にコアがパターン形成されている光導波路とを備え、上記絶縁層の
表面または裏面に上記クラッド層が接触した状態で、上記電気回路基板と上記光導波路とが積層されている光電気混載基板であって、その光電気混載基板の一部が屈曲予定部に設定され、その屈曲予定部では、上記配線カバー層と、上記光導波路とが重ならない状態で配置され
、上記屈曲予定部以外の部分では、上記配線カバー層と上記光導波路とが重なった状態で配置されているという構成をとる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の光電気混載基板は、屈曲予定部において、配線カバー層と光導波路とが重ならない状態で配置されているため、その屈曲予定部での光電気混載基板の厚みは、電気回路基板の厚みと光導波路の厚みの合計厚みよりも薄くなっている。そのため、上記屈曲予定部で屈曲させても、その屈曲部分
にかかる応力を大幅に低減することができ、その屈曲部分に破断やクラックが発生せず、情報伝達を適正に行うことができる。
【0008】
すなわち、光電気混載基板の屈曲した状態での屈曲部分の厚みT
A が、電気回路基板の厚みT
E と光導波路の厚みT
W に対して、下記の式(1)を満たすようになっている場合には、その屈曲部分
にかかる応力を大幅に低減することができ、その屈曲部分に破断やクラックが発生せず、情報伝達を適正に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。
【0011】
図1は、本発明の光電気混載基板の第1の
参考形態を模式的に示す斜視図である。この
参考形態の光電気混載基板は、帯状に形成されており、その幅方向の両側部分の表面側(
図1では上側)に、長手方向に沿って、電気回路基板Eの電気配線2およびその電気配線2を被覆して保護する絶縁性のカバーレイ(配線カバー層)3が形成され、幅方向の中央部分の裏面側(
図1では下側)に、光導波路Wが形成されている。そして、この
参考形態では、帯状の長手方向の全体にわたって、カバーレイ3と光導波路Wとが重ならない状態で配置されている。
【0012】
より詳しく説明すると、上記電気回路基板Eは、帯状に形成された絶縁層1と、この絶縁層1の幅方向の両側部分の表面に、長手方向に沿って形成された電気配線2と、この電気配線2を絶縁保護するカバーレイ3とが形成されている。
【0013】
上記光導波路Wは、第1クラッド層(アンダークラッド層)6と、この第1クラッド層6の表面に所定パターン形成されたコア7と、このコア7を被覆した状態で上記第1クラッド層6の表面に形成された第2クラッド層(オーバークラッド層)8とを備えている。そして、上記第1クラッド層6は、その裏面(コア7の形成面と反対側の面)で上記電気回路基板Eの絶縁層1と接触している。
【0014】
すなわち、上記帯状の光電気混載基板は、長手方向の全体にわたって、カバーレイ3と光導波路Wとが重ならない状態で配置されているため、その長手方向のどの部分で長手方向に屈曲(図示の矢印B方向に屈曲)させても、その屈曲部分での光電気混載基板の厚み(T
A )は、電気回路基板E
の厚み(T
E )か、または光導波路W
の厚み(T
W )に絶縁層1の厚みを加えた厚みになり、電気回路基板Eと光導波路Wの合計厚み(T
E +T
W )よりも薄くなっている。そのため、上記屈曲部分
にかかる応力は小さくなっており、その屈曲部分に破断やクラックが発生せず、電気回路基板Eおよび光導波路Wによる情報伝達を適正に行うことができる。
【0015】
つぎに、上記光電気混載基板の製法について説明する〔
図2(a)〜(e)参照〕。
【0016】
まず、上記絶縁層1〔
図2(a)参照〕を準備する。この絶縁層1としては、樹脂シート等があげられ、その形成材料としては、屈曲性の観点から、ポリイミド等が好ましい。また、絶縁層1の厚みは、屈曲性の観点から、薄い方がよく、好ましくは100μm以下、より好ましくは20μm以下である。なお、電気回路基板Eと光導波路Wとの間で光通信する場合は、上記絶縁層1は、透光性が高いものであることが好ましい。
【0017】
ついで、
図2(a)に示すように、上記絶縁層1の幅方向の両側部分の表面に、上記電気配線2を、例えばセミアディティブ法により形成する。この方法は、まず、上記絶縁層1の表面に、スパッタリングまたは無電解めっき等により、銅やクロム等からなる金属膜(図示せず)を形成する。この金属膜は、後の電解めっきを行う際のシード層(電解めっき層形成の素地となる層)となる。ついで、上記絶縁層1およびシード層からなる積層体の両面に、感光性レジスト(図示せず)をラミネートした後、上記シード層が形成されている側の感光性レジストに、フォトリソグラフィ法により、上記電気配線2のパターンの孔部を形成し、その孔部の底に上記シード層の表面部分を露呈させる。つぎに、電解めっきにより、上記孔部の底に露呈した上記シード層の表面部分に、銅等からなる電解めっき層を積層形成する。そして、上記感光性レジストを水酸化ナトリウム水溶液等により剥離する。その後、上記電解めっき層が形成されていないシード層の部分をソフトエッチングにより除去する。残存したシード層と電解めっき層とからなる積層部分が上記電気配線2である。なお、上記電気配線2の厚みは、屈曲性の観点から、薄い方がよく、好ましくは100μm以下、より好ましくは20μm以下である。なお、上記電気配線2の形成は、上記セミアディティブ法の他、アディティブ法,サブトラクティブ法等により形成してもよい。
【0018】
つぎに、
図2(b)に示すように、上記電気配線2の部分に、ポリイミド樹脂等からなる感光性絶縁樹脂を塗布し、フォトリソグラフィ法により、カバーレイ3を形成する。このカバーレイ3の厚み(絶縁層1の表面からの厚み)は、屈曲性の観点から、薄い方がよく、好ましくは200μm以下、より好ましくは50μm以下である。このようにして、上記電気回路基板Eが形成される。
【0019】
そして、その電気回路基板Eの絶縁層1の裏面(図では下面)に光導波路W〔
図2(e)参照〕を形成するために、まず、
図2(c)に示すように、上記絶縁層1の裏面に、第1クラッド層(アンダークラッド層)6の形成材料である感光性エポキシ樹脂等の感光性樹脂を塗布した後、その塗布層の幅方向の中央部分を照射線により露光して硬化させ、第1クラッド層6に形成する。上記第1クラッド層6の厚みは、屈曲性の観点から、薄い方がよく、好ましくは80μm以下、より好ましくは40μm以下である。なお、光導波路Wの形成時〔上記第1クラッド層6,下記コア7,下記第2クラッド層(オーバークラッド層)8の形成時〕は、上記絶縁層1の裏面は上に向けられる。
【0020】
ついで、
図2(d)に示すように、上記第1クラッド層6の表面(図では下面)に、フォトリソグラフィ法により、所定パターンのコア7を形成する。上記コア7の厚みは、光損失を小さくする観点から、厚い方がよく、好ましくは5μm以上、より好ましくは20μm以上であり、屈曲性の観点から、薄い方がよく、好ましくは400μm以下、より好ましくは100μm以下である。
【0021】
上記コア7の形成材料としては、例えば、上記第1クラッド層6と同様の感光性樹脂があげられ、上記コア7が形成された状態で、上記第1クラッド層6および下記第2クラッド層8〔
図2(e)参照〕よりも屈折率が大きくなるような材料が用いられる。上記屈折率の調整は、例えば、上記第1クラッド層6,コア7,第2クラッド層8の各形成材料の種類の選択や組成比率を調整して行うことができる。
【0022】
つぎに、
図2(e)に示すように、上記コア7を被覆するよう、上記第1クラッド層6の表面(図では下面)に、フォトリソグラフィ法により、第2クラッド層8を形成する。この第2クラッド層8の厚み(コア7からの厚み)は、屈曲性の観点から、薄い方がよく、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下である。上記第2クラッド層8の形成材料としては、例えば、上記第1クラッド層6と同様の感光性樹脂があげられる。このようにして、上記絶縁層1の裏面に、光導波路Wが形成され、目的とする光電気混載基板が得られる。
【0023】
図3は、本発明の光電気混載基板の第2の
参考形態を模式的に示す正面図である。この
参考形態の光電気混載基板は、幅方向の片側(
図3では左側)部分の表面側(
図3では上側)に、電気配線2およびカバーレイ3が形成され、もう一方の片側(
図3では右側)部分の裏面側(
図1では下側)に、光導波路Wが形成されているものである。そして、この
参考形態でも、上記第1の
参考形態と同様の作用・効果を奏する。
【0024】
図4は、本発明の光電気混載基板の第3の
参考形態を模式的に示す正面図である。この
参考形態の光電気混載基板は、幅方向の両側部分の表面側(
図4では上側)に、電気配線2およびカバーレイ3が形成され、幅方向の中央部分でも、その表面側(
図4では上側)に、光導波路Wが形成されているものである。すなわち、
図1に示す第1の
参考形態において、絶縁層1の、電気配線2およびカバーレイ3の形成面に、光導波路Wが形成されたものである。そして、この
参考形態でも、上記第1の
参考形態と同様の作用・効果を奏する。さらに、この
参考形態では、光電気混載基板の全体の厚みを薄くすることができ、より小スペースでの使用を可能とすることができる。
【0025】
図5は、本発明の光電気混載基板の第4の
参考形態を模式的に示す正面図である。この
参考形態の光電気混載基板は、幅方向の中央部分の表面側(
図5では上側)に、電気配線2およびカバーレイ3が形成され、幅方向の両側部分の裏面側(
図5では下側)に、光導波路Wが形成されているものである。そして、この
参考形態でも、上記第1の
参考形態と同様の作用・効果を奏する。
【0026】
図6は、本発明の光電気混載基板の第5の
参考形態を模式的に示す正面図である。この
参考形態の光電気混載基板は、幅方向の中央部分の表面側(
図6では上側)に、電気配線2およびカバーレイ3が形成され、幅方向の両側部分でも、その表面側(
図6では上側)に、光導波路Wが形成されているものである。そして、この
参考形態でも、上記第3の
参考形態と同様の作用・効果を奏する。
【0027】
そして、上記各
参考形態では、帯状の長手方向の全体にわたって、カバーレイ3と光導波路Wとが重ならない状態で配置されているものとしたが、
本発明の光電気混載基板の第1〜5の実施の形態は、上記第1〜5の参考形態において、光電気混載基板の屈曲予定部のみ、上記のように、カバーレイ3と光導波路Wとが重ならないように配置し、それ以外の部分では、カバーレイ3と光導波路Wとが重なるように配置し
たものとなっている。
【0028】
また、上記各実施の形態では、第2クラッド層(オーバークラッド層)8を形成したが、場合によって、形成しなくてもよい。
【0029】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。但し、本発明は、実施例に限定されるわけではない。
【実施例】
【0030】
〔実施例1〜5〕
上記第1〜第5の実施の形態のも
のを実施例1〜5とした
〔屈曲部は図2(e),図3〜図6を参照〕。ここで、絶縁層を厚み5μmの透明ポリイミドフィルムとし、電気配線をアディティブ法により形成した厚み5μmの銅配線とし、カバーレイを厚み(銅配線の頂面からの厚み)5μmのポリイミド製のものとした。また、第1クラッド層をフォトリソグラフィ法により形成した厚み20μmのエポキシ樹脂製のものとし、コアをフォトリソグラフィ法により形成した厚み50μmのエポキシ樹脂製のものとし、第2クラッド層をフォトリソグラフィ法により形成した厚み(コアからの厚み)10μmのエポキシ樹脂製のものとした。
【0031】
〔比較例〕
カバーレイと光導波路とが
長手方向全体にわたって重なった状態で配置されているもの(
図7参照)を比較例とした。絶縁層等の厚みは、上記実施例1〜5と同様とした。
【0032】
〔屈曲試験〕
上記実施例1〜5および比較例の光電気混載基板を、光導波路が内側になるように屈曲させ、長手方向の一端側と他端側とを対面させ、その状態でスライド試験機にセットした。ついで、上記一端側と他端側とが互いに反対方向にスライドするよう、上記一端側と他端側とを繰り返し往復させた。その屈曲状態の光電気混載基板のギャップを2mmとし、上記スライドのストロークを20mmとした。そして、上記光電気混載基板が破断するまでの往復回数をカウントした。その結果、実施例1〜5では、1万回往復させても破断しなかったが、比較例では、350回で破断した。
【0033】
上記の結果から、カバーレイと光導波路とが重ならない実施例1〜5は、それらが重なる比較例と比較して、屈曲部分にかかる応力を大幅に低減できることがわかる。
【0034】
なお、上記屈曲試験では、光導波路を内側にして屈曲させたが、光導波路を外側にして屈曲させても、上記と同様の結果が得られた。