特許第6080157号(P6080157)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6080157ロックリテーナーを製造する方法およびロックリテーナー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6080157
(24)【登録日】2017年1月27日
(45)【発行日】2017年2月22日
(54)【発明の名称】ロックリテーナーを製造する方法およびロックリテーナー
(51)【国際特許分類】
   E05B 85/04 20140101AFI20170213BHJP
   E05B 15/02 20060101ALI20170213BHJP
【FI】
   E05B85/04
   E05B15/02 G
【請求項の数】12
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-545081(P2012-545081)
(86)(22)【出願日】2010年11月6日
(65)【公表番号】特表2013-515879(P2013-515879A)
(43)【公表日】2013年5月9日
(86)【国際出願番号】DE2010001303
(87)【国際公開番号】WO2011076161
(87)【国際公開日】20110630
【審査請求日】2013年11月6日
(31)【優先権主張番号】102009060375.1
(32)【優先日】2009年12月24日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102010011716.1
(32)【優先日】2010年3月17日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510222604
【氏名又は名称】キーケルト アクツィーエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100148596
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 和弘
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】コードウスキ、ベルンハルト
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルドマン、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ウェスターヴィック、フォルカー
(72)【発明者】
【氏名】シファー、ホルガー
【審査官】 渋谷 知子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−062802(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102007060626(DE,A1)
【文献】 実開昭63−89075(JP,U)
【文献】 特開平8−25965(JP,A)
【文献】 実開昭60−161630(JP,U)
【文献】 特開2000−071046(JP,A)
【文献】 特開平08−199870(JP,A)
【文献】 特開平09−176794(JP,A)
【文献】 特開2008−238847(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 85/04
E05B 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロック、好ましくは自動車用ロックのロックリテーナーを製造する方法であって、前記ロックリテーナーは、
固定用穴を有するベースプレートと、
2つの弓脚部と閉鎖部材とさらに開口部とを有するロック弓形部と
を有し、
前記ロックリテーナーは単一部品として製造され、前記開口部は自動車ドアの閉鎖中に自動車ドアロックの把持部の一部を受容するように構成され、前記単一部品に含まれる前記弓脚部は前記把持部に対応するように構成されるものであり、
前記ロックリテーナーは、好ましくは円形の原料から冷間押出しにより製造され、前記材料がT字状の半完成品に固体成形されて当該半完成品が主部の全体的形状に形成されたのち、前記半完成品から、前記固定用穴および前記ロック弓形部の前記開口部が打ち抜かれ、
前記ロック弓形部の前記開口部は冷間スタンピングにより形成され、
前記冷間スタンピング中に、所定の間隔で配置された複数の溝とそれらの溝の間の複数の領域とを有する表面加工処理された領域が前記弓脚部の把持部接触領域に設けられることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、前記原材料は、前記冷間押出し前に、円形の、角度を成した、または方形の固体棒状体から剪断することにより製造され、次に、前記ロック弓形部および前記ベースプレートとなるT字状の半完成品に冷間押出成形され、1つまたは好ましくは複数のダイを使って打ち抜きにより固定用穴が面取りされることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の方法において、第1に、前記ベースプレートが好ましくは円形の原材料から軸方向に形成されたのち、冷間押出しにより前記ロック弓形部が弓脚部とともに、且つ前記ベースプレートを伴わずに軸方向に固体成形され、次に、前記冷間スタンピングにより前記ロック弓形部の前記開口部が形成されると同時に回転ラッチとの係合に必要な四分円部分が前記弓脚部の各々の外周に形成されることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1〜3のうちのいずれか1つに記載の方法において、前記開口部および前記固定用穴は、冷間押出し中、クロスインサートにより製造されることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1〜4のうちのいずれか1つに記載の方法において、冷間据え込み鋼であって好ましくはホウ素重量%が0.009未満で最大引張強さRm580N/mm、好ましくはホウ素重量%が0.005の33B2材料番号1.5514が、円形の、角度を成した、または方形の原材料として使用されることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1〜5のうちのいずれか1つに記載の方法において、冷間据え込み鋼、具体的には最大ホウ素重量%が0.005で引張強さRm500〜650N/mmの35B2材料番号1.5511、またはステンレス鋼X5CrNi1810が、円形の、角度を成した、または方形の原材料として使用されることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6記載の方法において、前記ロックリテーナー全体が完成後、耐腐食層で覆われることを特徴とする方法。
【請求項8】
ロック、好ましくは自動車ドアロック用のロックリテーナーであって、
2若しくはそれ以上の固定用穴(3、4)を有するベースプレート(2)と、
閉鎖部材(6)と、
開口部(10)を画成し取り囲む弓脚部(5)および弓脚部(8)とを有するロック弓形部(9)を有し、
前記ベースプレート(2)および前記ロック弓形部(9)は、前記閉鎖部材(6)、前記弓脚部(5、8)、および前記ベースプレート(2)の特定の形状に基づいて、一体成形体として形成され
定の間隔で配置された複数の溝とそれらの溝の間の複数の領域とを有する表面加工処理された領域が前記弓脚部の把持部接触領域に設けられることを特徴とするロックリテーナー。
【請求項9】
請求項8記載のロックリテーナーにおいて、前記円形または方形のロッド形状の原材料は、冷間据え込み鋼、好ましくは最大ホウ素重量%が0.005で引張強さRm500〜650N/mmの35B2材料番号1.5511、または冷間据え込み鋼、好ましくはホウ素重量%が0.009未満で最大引張強さRm580N/mmの33B2材料番号1.5514であることを特徴とするロックリテーナー。
【請求項10】
請求項8記載のロックリテーナーにおいて、前記ベースプレート(2)は円形であり、前記ロック弓形部(9)は、当該ベースプレート(2)の中央からゲート状に隆起または突出することを特徴とするロックリテーナー。
【請求項11】
請求項8記載のロックリテーナーにおいて、前記弓脚部(5、8)は、前記ベースプレート(2)の隆起部(11)に一種のスタンド(12)を含むことを特徴とするロックリテーナー。
【請求項12】
請求項8記載のロックリテーナーにおいて、前記閉鎖部材(6)は、その片側または両側に、前記弓脚部(5、8)の外縁部(14、15)に向かって下向きに傾斜した肩部(16、17)を含み、前記弓脚部(5)または前記弓脚部(8)は、球状隆起部(18)を含むことを特徴とするロックリテーナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロック、好ましくは自動車用ロックのロックリテーナーを製造する方法に関し、当該ロックリテーナーは、固定用穴を有するベースプレートと、2つの弓脚部を有するロック弓形部と、閉鎖部材と、さらに開口部とを有し、単一部品として製造される。前記開口部は、自動車ドアの閉鎖中に自動車ドアロックの把持部の一部を受容するように設計され、前記部品に含まれた前記弓脚部は、前記把持部に対応するよう設計される。また、本発明は、ロック、好ましくは自動車ロック用のロックリテーナーにも関し、このロックリテーナーは、2若しくはそれ以上の固定用穴を有するベースプレート、閉鎖部材と、弓脚部と、当該弓脚部により取り囲まれることにより画成される開口部とを有するロック弓形部を有する。そのようなロックリテーナーは、自動車用ロックに使用できるが、建築物のドア、ゲート、およびロックシステムのロックにも使用できる。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車用ロックについては、各種タイプのロック用ロックリテーナーが、一般に知られている。独国特許出願公開第 20 2007 012 253 号明細書および独国特許出願公開第 10 2007 041 479 号明細書では、自動車用ロックのロックリテーナーについて開示し、示しており、このロックリテーナーは、比較的容易に製造できるよう設計されている。独国特許出願公開第 20 2007 012 253 号明細書によれば、平坦なストリップ(帯状体)の形態をした閉鎖部材は、ベースプレートのインレット領域を超えて突出する方法で設計されるため、結果的に閉塞状態、特に衝突の場合におけるロック機構の引張強度が高まる。このロックリテーナーは、弓形部およびリテーナーに取り外し不能に接続された別個の部分を構成する固定用ボルトを有する2つの部分から成る。実際の固定用ボルトは、端部においてつば部として作用する弓形部を含むことにより、この構成要素全体を安定させて、衝突の場合には当該ロックを確実に開けられるようにもする。欧州特許出願公開第 2 031 158 号明細書では、冷間成形で一体成形体として製造された自動車用ロックのロックリテーナーについて説明している。そのようなロックリテーナーは、冷間押出しにより、一般に2ピースとして製造される上述のロックリテーナータイプより費用効率よく製造されることが好ましい。ただし、それでも各ロックリテーナーは、複雑なプレス工程とその後処理により製造しなければならないため、著しい労力が必要とされる。国際公開第2006/053431号によると、ロックリテーナーは、プレスおよび打ち抜きにより製造され、特殊な幾何学的構成でも製造可能である。これら公知のロックリテーナーの欠点は、特に多くの場合弓形部が固定用ボルトとして使用される各リテーナーの複雑な設計にある。これら公知のロックリテーナーでは、自動車用ロックにおいて確実にロックリテーナーを安全に設置し、安全に動作させる上で、後処理が特に重要である。
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、以下のものがある(国際出願日以降国際段階で引用された文献及び他国に国内移行した際に引用された文献を含む)。
(先行技術文献)
(特許文献)
【特許文献1】 米国特許出願公開第2006/123619号明細書
【特許文献2】 英国特許第2424037号明細書
【特許文献3】 米国特許出願公開第2003/205904号明細書
【特許文献4】 西独国実用新案第202007012253号明細書
【特許文献5】 国際公開第2006/053431号
【特許文献6】 欧州特許出願公開第2031158号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そのため、本発明の課題は、後処理を必要とすることなく強固なロックリテーナーを簡略的に製造する方法と各ロックリテーナーとを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
当該方法は、好ましくは円形の原材料から冷間押出しにより製造されるロックリテーナーによって上記の課題を解決し、その場合、前記材料を固体成形してT字状の半完成品とし、そのT字状の半完成品を主な全体的形状にしたのち、高い冷間据え込み品質で提供されるこの半完成品から前記固定用穴および前記ロック弓形部の前記開口部を打ち抜く。
【0005】
そのような方法の実施中、完全なロックリテーナーは、冷間押出しを含む2〜5の作業工程で、円形の鋼鉄のモノリスから製造されることが好ましく、その冷間押出しにより後処理を必要とすることなく全体的な幾何学的形状を製造することができる。冷間押出しは、固体成形工程であり、多段成形機を使った多段階の製造工程で中空部品も中実部品も製造可能である。その材料は、著しい圧力下で流動化し、対象物内、すなわちロックリテーナー内で最高900℃の温度となり、すでに説明したように後処理を要しない形状を生じる。驚くべきことに、このような方法を使用すると、後処理の必要なく、ロックリテーナーを製造し、自動車用ロックに即時設置することができる。
【0006】
前記方法の別の開発形態によれば、原材料は、前記冷間押出し前に、円形の、角度を成した、または方形の固体棒状体を剪断することにより製造され、次に、T字状の半完成品に冷間押出成形されて、ロック弓形部、および1つまたは好ましくは複数のダイを使った打ち抜きにより面取りされた固定用穴を有するベースプレートとなる。前記方法のこの別の開発形態では、まず、本方法の開始点となる原材料が必ず同じ形態で成形され、同じ物質が同じ量含まれることを確実にするが、これは、原材料がダイまたは冷間成形工程に入る前に、好ましくは円形の棒状体から剪断されるためである。この方法では、すべての初期部品を同等に処理して、前記ロック弓形部および前記ベースプレートを含むT字状の半完成品を製造したのち、当該半完成品をさらに成形し、または望ましいロックリテーナーを成形して完成させる。主な工程である冷間押出しでは、すでに説明したように、表面を事後加工する必要なく上記のようなT字状の半完成品が製造されるが、そのT字状の半完成品は、特にロック内で使用するためのさらに別の処理用に形成および成形されることが理想的である。
【0007】
前記方法のさらに別の開発形態によれば、まず好ましくは円形の原材料から前記ベースプレートを軸方向に形成されたのち、冷間押出しにより前記ロック弓形部が弓脚部とともに、且つ前記ベースプレートを伴わずに軸方向に固体成形され、次に、冷間スタンピングにより前記ロック弓形部の前記開口部が形成されると同時に回転ラッチとの係合に必要な四分円部分が前記弓脚部の各々の外周に形成される。前記固定用穴および前記開口部は、打ち抜きまたはレーザー切断により製造される。これは後処理ではなく、前記製造工程の一環である。ロックリテーナーは、通常、大量生産されるため、これは大幅な製造コスト削減につながる。また、前記部品からは、より高い機械的強度が得られる。先行技術の諸実施形態と対照的に、本発明の方法により実現される前記ロックリテーナーの最終的な幾何学的構造は、一体成形体から製造できる。異なった断面積を可能にすることで断面積の形状が調整できるようになり、最終的に最適な全体的幾何学的構造が得られる。これは、ロックリテーナーにおいて、低い応力がかかる領域では材料を減らし、高い応力がかかる領域では材料をより厚くできるということを意味している。特に、例えば前記弓脚部の領域では部分的に断面積を30%超大きくすることが好ましい。断面積の寸法は、前記ロックリテーナーの表面の法線方向に測定される。鋼板で作製される公知のロックリテーナーでは、断面積がほぼ一定であり、使用される鋼板の厚さに等しいが、本発明の方法により製造される最終製品は、断面積が部分的に異なるため、より適切に応力に対応するようになっている。
【0008】
冷間押出し中、クロスインサートによって前記開口部および固定用穴を製造することにより、必要な製造工程を体系的に削減できる。そのような製造工程では、低い応力がかかる領域で材料を容易に減らし、高い応力がかかる領域で材料を容易に厚くできるため、上述した最適なロックリテーナーが得られる。前記開口部および固定用穴の製造に使用され、極めて高い応力がかかる前記クロスインサートを使用して、前記ロックリテーナーにおいて高い応力のかかる領域へ「余剰」材料を移動することができるため、後処理の必要なく、当該ロックリテーナーの特定箇所の強度を最適化することができる。
【0009】
前記方法のさらに別の開発形態によれば、冷間据え込み鋼であって好ましくはホウ素重量%が0.009未満で最大引張強さRm580 20N/mm、好ましくはホウ素重量%が0.005の33B材料番号1.5514が、円形の、角度を成した、または方形の原材料として使用される。ホウ素を加えると冷間押出しが容易になり、また当該構成要素全体にわたり表面を確実に最適な構造とすることができる。
【0010】
冷間据え込み鋼、具体的には、最大ホウ素重量%が0.005で引張強さRm500〜650N/mmの35B材料番号1.5511も、円形の、角度を成した、または方形の原材料として使用できる。このホウ素を加えた冷間据え込み鋼も、冷間押出しに理想的に適しており、上述の構成要素に有利な特性をもたらす。ステンレス鋼X5CrNi1810も使用できる。
【0011】
特に、冷間据え込み鋼を使用すると、前記ロックリテーナー全体が、仕上げ後、耐腐食層で覆われる場合、および/または特殊な表面構造をもたらす溝または縁部がプレス中、前記弓脚部の各々に適用される場合に有利である。耐腐食性コーティングは後処理の一種ではあるが、一層成膜するのみであり、全体的な幾何学的形状を変更する必要はないという意味で、付加的な処理ではない。この耐腐食層により、冷間据え込み鋼から製造されたロックリテーナーは、その機能を、自動車用ロックにおいて確実かつ効果的に果たすことができる。溝または縁部、あるいは単純な縞状の溝または網目を設けることにより、力が確実に均等に加わり、望ましくない背景雑音(軋み)が防止される。
【0012】
さらに、ステンレス鋼X5CrNi1810であって、好ましくはCが0.08〜0.12%、Siが1%、Crが16〜20%であるものも、円形の、角度を成した、または方形の原材料として使用できる。
【0013】
本発明の方法に基づいて製造されたロックリテーナーは、2若しくはそれ以上の固定用穴を含むベースプレートと、閉鎖部材および弓脚部により画成される開口部を有するロック弓形部とを有する。このロックリテーナーは、前記ベースプレートおよび前記ロック弓形部が、好ましくは円形のロッド形状の原材料から、前記閉鎖部材および前記弓脚部のほか前記ベースプレートの特定の形状に基づいて、冷間押出しにより一体成形体として形成され、次いで前記開口部および前記固定用穴が冷間スタンピングにより製造されることにより、本発明の課題を解決する。その結果、前記固定用穴および前記開口部の打ち抜き後、追加処理または後処理なく、ただちに使用可能になるロックリテーナーが得られる。後処理を省くことにより、付加的な編成工程または処理の工程が不要となり、特に製造時間が最低限に短縮されるため、重要な価格効果が生まれる。特に有利な点は、冷間押出しでは、ロックリテーナーで低い応力がかかる領域では材料を特に「弱め」、高い応力がかかる領域では材料を追加して特に強化する選択肢が得られるということである。もう1つの利点は、後処理が不要であるほか、表面粗さが12〜18μmという高い冷間据え込み品質が表面全体に得られることである。それに続く打ち抜き中には、応力のかかる弓脚部に特殊な表面構造が適用される。
【0014】
本発明によれば、前記ベースプレートおよび前記ロック弓形部は、多段プレスにより形成される。前記固体ロッド材料からの前記原材料ピースの剪断または切断は、全体的な工程に統合され、可能な場合、前記多段プレスの第1の段階に割り当てられる。有利な点として、前記材料は、剪断する代わりに切断することもできる。可能な場合、前記開口部および前記固定用穴の製造工程も、そのような多段プレスの最終部分として前記多段階工程に統合される。円形のロッド形状の冷間据え込み鋼、好ましくは最大ホウ素重量%が0.005の33B材料番号1.5514、またはステンレス鋼が、原材料として使用できる。
【0015】
上述のように、前記ベースプレートは、まずロッド形状の基材または原材料から作製され、ロック弓形部が冷間押出しにより形成される。処理、特に、前記開口部の作製は、前記ベースプレートが円形で、前記ロック弓形部が前記ベースプレートの中央からゲート状に隆起または突出する場合、有利である。次の工程では、前記開口部および前記固定用穴を形成して前記ロック弓形部をゲート形状に作製することが可能で、その間、前記開口部および前記固定用穴を形成する方法に応じて、前記多段プレスのそれまでの工程で何らかの理由により材料を正しく配置できなかった場合は、材料を再び理想的に移動させることができる。これがすべて可能になるのは、高圧により前記ロッド材料が成形可能になる温度が生じ、本工程の全体的な結果として一体成形体の強固なロックリテーナーが製造されるためである。
【0016】
前記ベースプレート、前記弓脚部、および前記閉鎖部材の形成中、一種の球状隆起部が好適に前記弓脚部の周囲に残され、本発明はこれを使って前記ベースプレートの球状隆起部内で一種の基部を前記弓脚部に提供する。前記球状隆起部は、前記ベースプレートおよび前記ロック弓形部の形成中に生じる。
【0017】
自動車用ロックの周囲の構成要素の寸法との良好な位置合わせを実現するため、本発明で提供するように、前記閉鎖部材の片側または両側には、前記弓脚部の外縁部へ向かって下向きに傾斜した肩部が含まれ、さらに一方または双方の弓脚部に球状隆起部が含まれると有利である。また、この形状は製造工程に利点をもたらすため、これらの理由および上記の有利な強度値から、このような形状は好都合である。上述のように、冷間押出しにより前記ロックリテーナー内で材料が「移動される」ことも有利である。この工程の一部として、低い応力がかかる領域で不要な材料は、高い応力がかかる領域へ移動されるため、結果的に例えば球状隆起部が前記弓脚部に生じる。
【0018】
特に、本発明の利点は、方法と、この方法に基づいて製造されたロックリテーナーとを提供することであり、これにより前記ロックリテーナーを一体成形体として製造でき、個々の工程が適切に選択されて、確実に少数のプレス工程または作業工程のみが必要とされるようになる。個々の前記ロックリテーナーは、すでに円形状の前記ベースプレートを形成している固体ロッド形状の材料から切断される。そのため、この丸いロッド形状の材料から単一ユニットを構成する前記ベースプレートおよびロック弓形部のみを形成して、前記ロック弓形部内の前記開口部と、前記固定用穴とを形成すればよい。前記方法は、このように比較的少数の作業工程を伴うが、付加的な工程なしで自動車用ロックなどに即時設置できる最終製品すなわちロックリテーナーを製造する。それと同時に、前記ロックリテーナーは、前記製造方法ですでに達成済みの全体的な幾何学形状である形状を提供することにより、動作時の応力および他の動作条件の双方の点から最適な機能性を確実なものにする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明の目的の他の詳細および利点は、以下、必要な細部および個々の部分を有する好適な一実施形態を示す添付図面の説明において開示している。
図1図1は、開口部および固定用穴を伴う完成したロックリテーナーを示した図である。
図2図2は、前記ロックリテーナーの上面図である。
図3図3は、前記ロックリテーナーの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、ロックリテーナー1の斜視図である。この図では、ベースプレート2は円形であり、固定用穴3、4を有する。この固定用穴3、4は、当該ベースプレート2から突出する他の構成要素が当該ベースプレート2の中央に配置されるように、当該ベースプレート2の外周に配置構成される。この図は、弓脚部5がより幅広の設計を有することを示している。弓脚部5は、閉鎖部材6を介して弓脚部8に連結され、これによりロック弓形部全体が強化される。閉鎖部材6とそれを取り囲む弓脚部8は、各々の自由端7で互いに連結され、または場合により互いに統合される。開口部10は、弓脚部5と弓脚部8との間に設けられ、把持部(図示せず)がこの開口部10に挿通されて弓脚部8または5の周囲で係合する。この図では、弓脚部5および弓脚部8が、一種の球状隆起部11により実際のベースプレート2と連結され、または前記球状隆起部11から形成されることを示している。これにより、より幅広の基部12が得られ、ロックリテーナー1全体を安定化させる一助となる。ロック弓形部9の前記弓脚部5、8は、この拡張された基部12から、前記ベースプレート2に均一的に一体化される。
【0021】
図1によれば、弓脚部5は耐腐食層20を含むが、これは、ステンレス鋼以外の材料が使用される場合に限り必要とされる。この耐腐食層20は、前記ベースプレート2および前記ロック弓形部9にも全体的に適用される。また、図1は、開口部10および固定用穴3、4を冷間スタンピングとともに、スタンピング中、把持部(図示せず)と係合する滑らかな四分円部分が、前記弓脚部8に(9時から12時の間)形成され、若しくは弓脚部5が前記把持部と係合する場合は弓脚部5に(12時から3時の間)形成されることを示している。また、弓脚部5と把持部との間の接触領域の応力に対応するため、特殊な表面構造20′が同様にスタンピング中に設けられる。また、弓脚部8は、この表面構造20′を含むことが好ましい。
【0022】
図1は、各ロックリテーナー1がロッド形状のモノリスから冷間押出しで形成されることを示している。第1の加工工程中には、このロッド形状のモノリスが剪断または切断され、そこから、所定の外形を伴う前記ベースプレート2が形成される。次のプレス工程中には、上述のように、弓脚部5、8から成るユニットと、このユニットから閉鎖部材6とが形成され、前記ベースプレート2との連結を保ちながら、冷間成形中に約900℃の温度に到達するため、それぞれの成形が容易になる。最後の工程中に、前記開口部10および前記固定用穴3、4の部分が取り除かれる。このある意味付加的な作業工程には、いくつかのオプションがあり、すなわち前記開口部は、打ち抜き、あるいはレーザーで焼き切りまたは切り抜くことができる。すでに本明細書で開示しているように、各追加ツールを使うと、前記弓脚部5、8および閉鎖部材6の形成中に少なくとも前記開口部10も生成できる。この場合、前記弓脚部5の内部19が追加材料で提供され、設計全体が強化される一方、球状隆起部18も形成されるという利点がある。
【0023】
図2は、この球状隆起部18を形成するために、前記固定用ボルト5の前記内部19上で材料を厚くした状態を再び示した上面図である。この図では、前記球状隆起部11が若干幅狭になっており、またこの場合、前記ベースプレート2は円形ではなく、やや楕円形の設計となっているが、この設計は特定の自動車用ロックに有利なためである。ただし、前記ベースプレート2には、このような特殊形状は一般に不要である。
【0024】
図3は、外縁部14、15へ向かって下向きに傾斜した肩部16、17を含む前記閉鎖部材6の特殊形状を実際に示したものである。図3は一定の丸みも示しているが、これは必ずしも必要なものではなく、上述のように設置を容易にする設計であってもよい。全体として図3では、特に、非常に強固なロックリテーナー1も示している。ここでも、前記弓脚部5がより幅広であることがわかる。弓脚部5は、弓脚部8より約20〜40%多くの質量が含まれる。図3では、図1で参照した前記球状隆起部も番号11で示しており、この球状隆起部11は、最終的に一種のアプローチ半径をもたらしており、前記ベースプレート2のこの領域で材料がより太い、したがって断面積がより大きいことに対応する。当然、同様のことが前記球状隆起部11の実際の固定用ボルト5の領域にも言え、図1では、前記弓脚部5と係合される前記弓脚部8との間に延在する球状隆起部11が弓脚部5へ向かって広がる印象を与えている。ただし、これは必ずしも必要なことではなく、弓脚部5の直径が弓脚部8の直径より大きい場合に限られる。
【0025】
図示したロックリテーナー1は、一体成形体として、また極めて強固な構成要素として設計されており、すでに説明したとおり、前記ベースプレート2の設置面積の少なくとも30%または場合により20%が異なる断面積を備えることが有利である。設置面積とは、前記ベースプレート2の上部および底部の面積をいい、当該ベースプレート2の側縁部を指すものではない。図1は、前記固定用穴3、4と異なる断面積を有した前記球状隆起部11の諸領域を示している。上記の冷間押出し工程中、前記金属材料は制限された熱で成形されるため、その強度および負荷の定格が高まる。また、すでに説明したように、冷間押出し中にすでに比較的高品質な表面が形成されるため、表面の後処理は不要である。強度に影響を及ぼす高価な後続加熱処理も必要とされないため、さらにコストが削減される。
【0026】
負荷補正を行うため、把持部接触領域でのスタンピングにより表面構造20′が適用される。これらは、前記弓脚部5、8の外面上または外面より内側の縞状の溝または網目、山または溝、あるいは縁部であり、負荷だけでなく望ましくない雑音を軽減する。この表面構造20′は、前記開口部10の打ち抜き中に形成されるため、別個の工程を必要としない。
【0027】
以上、説明したすべての特徴は、図示したものも含め、個別に、または全体として本発明に不可欠なものである。
図1
図2
図3