(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
金属板上の片面又は両面上に、プライマー塗膜を形成し、プライマー塗膜の少なくとも片面上に請求項1〜4のいずれか1項に記載の塗料組成物による塗膜を形成してなることを特徴とする塗膜形成方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の塗料組成物 本発明の塗料組成物は、水酸基含有樹脂(a)、架橋剤(b)、スルホン酸基又はスルホン酸基塩基含有のアニオン性界面活性剤(c)、ポリオキシアルキレン鎖を含有する非イオン界面活性剤(d)、及び必要に応じて尿素樹脂粒子(e)を含む塗料組成物である。以下、詳細に説明する。
【0012】
水酸基含有樹脂(a) 水酸基含有樹脂(a)は、1分子中に2個以上の水酸基を有する樹脂であり、必要に応じてカルボキシル基を有していてもよい。水酸基含有樹脂(a)の具体例としては、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられるが、耐汚染性や塗膜硬度、加工性の向上の面から水酸基含有アクリル樹脂、水酸基含有ポリエステル樹脂等が好ましく、なかでも水酸基含有ポリエステル樹脂が特に好ましい。上記、水酸基含有アクリル樹脂は、水酸基含有アクリルモノマーとその他のモノマーを共重合反応して得られる共重合体樹脂である。
【0013】
該水酸基含有モノマーとしては、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシイコシル(メタ)アクリレートなどの炭素数2〜20のグリコールと(メタ)アクリル酸とのモノエステル化物などが挙げられる。
【0014】
水酸基含有モノマー以外のその他のモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸の炭素数1〜22のアルキルエステル、(メタ)アクリル酸の炭素数2〜18のアルコキシアルキルエステル、エポキシ基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー、1分子中にイソシアネート基及び重合性不飽和基を併存するモノマー、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、塩化ビニル等を使用することができる。
【0015】
上記(メタ)アクリル酸の炭素数1〜22のアルキルエステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸の炭素数2〜18のアルコキシアルキルエステルとしては、例えば、メトキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。エポキシ基含有モノマーとしては、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、メサコン酸、及びこれらの無水物やハーフエステル化物等が挙げられる。水酸基含有モノマー以外のその他のモノマーは、1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0016】
上記の水酸基含有アクリル樹脂の数平均分子量は、1,000〜50,000程度が好ましく、2,000〜20,000程度がより好ましい。また、該樹脂の水酸基価は20〜200mgKOH/g程度が好ましく、50〜150mgKOH/g程度がより好ましい。
【0017】
水酸基含有ポリエステル樹脂は、通常、多塩基酸成分(a1)及びアルコール成分(a2)とのエステル化反応又はエステル交換反応によって製造することができる。上記多塩基酸成分(a1)は、ポリエステル樹脂の製造に際して多塩基酸成分として通常使用される化合物を使用することができる。多塩基酸成分(a1)としては、例えば、脂環族多塩基酸、脂肪族多塩基酸、芳香族多塩基酸等を使用することができる。
【0018】
脂環族多塩基酸は、一般に、1分子中に1個以上の脂環式構造(主として4〜6員環)と2個以上のカルボキシル基を有する化合物、該化合物の酸無水物及び該化合物のエステル化物である。該脂環族多塩基酸としては、例えば、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、3−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸等の脂環族多価カルボン酸;これら脂環族多価カルボン酸の無水物;これら脂環族多価カルボン酸の低級アルキルエステル化物等が挙げられる。脂環族多塩基酸は、単独でもしくは2種以上を組合せて使用することができる。
【0019】
脂環族多塩基酸としては、特に、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物を好適に使用することができる。上記のうち、耐加水分解性の観点から、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物を特に好適に使用することができる。
【0020】
脂肪族多塩基酸は、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する脂肪族化合物、該脂肪族化合物の酸無水物及び該脂肪族化合物のエステル化物であって、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、オクタデカン二酸、クエン酸等の脂肪族多価カルボン酸;これら脂肪族多価カルボン酸の無水物;これら脂肪族多価カルボン酸の低級アルキルエステル化物等が挙げられる。脂肪族多塩基酸は、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0021】
脂肪族多塩基酸としては、炭素数4〜18のアルキル鎖を有するジカルボン酸を使用することが好ましい。上記炭素数4〜18のアルキル鎖を有するジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、オクタデカン二酸等が挙げられ、なかでもアジピン酸を好適に使用することができる。
【0022】
芳香族多塩基酸は、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物、該芳香族化合物の酸無水物及び該芳香族化合物のエステル化物であって、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族多価カルボン酸;これら芳香族多価カルボン酸の無水物;これら芳香族多価カルボン酸の低級アルキルエステル化物等が挙げられる。芳香族多塩基酸は、単独でもしくは2種以上組合せて使用することができる。
【0023】
アルコール成分(a2)としては、1分子中に2個以上の水酸基を有する多価アルコールを好適に使用することができる。上記多価アルコールとしては、例えば、脂環族ジオール、脂肪族ジオール、芳香族ジオール等を挙げることができる。
【0024】
脂環族ジオールは、一般に、1分子中に1個以上の脂環式構造(主として4〜6員環)と2個の水酸基を有する化合物である。該脂環族ジオールとしては、例えば、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF等の2価アルコール;これらの2価アルコールにε−カプロラクトン等のラクトン化合物を付加したポリラクトンジオール等が挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上組合せて使用することができる。
【0025】
脂肪族ジオールは、一般に、1分子中に2個の水酸基を有する脂肪族化合物である。該脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、3−メチル−1,2−ブタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2,3−ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、ネオペンチルグリコール等が挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上組合せて使用することができる。
【0026】
芳香族ジオールは、一般に、1分子中に2個の水酸基を有する芳香族化合物である。該芳香族ジオールとしては、例えば、ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート等のエステルジオール化合物;ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上組合せて使用することができる。
【0027】
前記脂環族ジオール、脂肪族ジオール及び芳香族ジオール以外の多価アルコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテルジオール化合物;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ソルビトール、マンニット等の3価以上のアルコール;これらの3価以上のアルコールにε−カプロラクトン等のラクトン化合物を付加させたポリラクトンポリオール化合物等が挙げられる。
【0028】
上記のうち、高分子量化及び脂肪酸を用いる場合の脂肪酸との変性反応の反応性向上の観点から、3価以上のアルコールを好適に使用することができる。上記3価以上の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニット等の3価以上のアルコール;これらの3価以上のアルコールにε−カプロラクトン等のラクトン化合物を付加させたポリラクトンポリオール化合物;トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−ヒドロキシプロピル)イソシアヌレート、トリス(2−ヒドロキシブチル)イソシアヌレート等のトリス(ヒドロキシアルキル)イソシアヌレート等が挙げることができる。これらのうち、特に、トリメチロールプロパンが好ましい。
【0029】
また、上記多価アルコール以外のアルコール成分(a2)として、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ステアリルアルコール、2−フェノキシエタノール等のモノアルコール;プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル(商品名「カージュラE10」HEXION Specialty Chemicals社製)等のモノエポキシ化合物と酸とを反応させて得られたアルコール化合物等も必要に応じて使用することができる。
【0030】
水酸基含有ポリエステル樹脂の製造は、特に限定されるものではなく、通常の方法に従って行なうことができる。例えば、前記多塩基酸成分を必須成分とする酸成分とアルコール成分とを窒素気流中、150〜250℃で5〜10時間反応させて、エステル化反応又はエステル交換反応を行なうことにより製造することができる。
【0031】
上記エステル化反応又はエステル交換反応では、上記酸成分及びアルコール成分を一度に添加してもよいし、数回に分けて添加してもよい。また、はじめにカルボキシル基含有ポリエステル樹脂を合成した後、上記アルコール成分を用いて、該カルボキシル基含有ポリエステル樹脂中のカルボキシル基の一部をエステル化してもよい。さらに、はじめに水酸基含有ポリエステル樹脂を合成した後、酸無水物を反応させて、水酸基含有ポリエステル樹脂をハーフエステル化させてもよい。
【0032】
前記エステル化又はエステル交換反応の際には、反応を促進させるために、触媒を用いてもよい。触媒としては、ジブチル錫オキサイド、三酸化アンチモン、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、酢酸コバルト、酢酸カルシウム、酢酸鉛、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート等の既知の触媒を使用することができる。
【0033】
また、水酸基含有ポリエステル樹脂は、該樹脂の調製中、もしくはエステル化反応後又はエステル交換反応後に、脂肪酸、油脂、モノエポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物等で変性することができる。
【0034】
上記脂肪酸は、例えば、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等の脂肪酸;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等を挙げることができる。油脂は、例えば、ヤシ油、綿実油、麻実油、米ぬか油、魚油、トール油、大豆油、アマニ油、桐油、ナタネ油、ヒマシ油、脱水ヒマシ油、サフラワー油等が挙げられる。
【0035】
上記変性に用いられるポリイソシアネート化合物としては、例えば、リジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物;水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,6−ジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネート化合物;トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物;リジントリイソシアネート等の3価以上のポリイソシアネート等の有機ポリイソシアネートそれ自体、又はこれらの各有機ポリイソシアネートと多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂もしくは水等との付加物、あるいは上記した各有機ジイソシアネート同士の環化重合体(例えば、イソシアヌレート)、ビゥレット型付加物等を挙げることができる。これらは、単独でもしくは2種以上組合せて使用することができる。
【0036】
水酸基含有ポリエステル樹脂の数平均分子量は、得られる塗膜の塗膜硬度、加工性、仕上り性の観点から、2,000〜30,000が好ましく、特に3,000〜25,000の範囲内の数平均分子量を有することが好適である。
【0037】
なお、本明細書において、数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定した数平均分子量及び重量平均分子量を、標準ポリスチレンの分子量を基準にして換算した値である。具体的には、ゲルパーミュエーションクロマトグラフとして、「HLC8120GPC」(商品名、東ソー社製)を使用し、カラムとして、「TSKgel G−4000HXL」、「TSKgel G−3000HXL」、「TSKgel G−2500HXL」及び「TSKgel G−2000HXL」(商品名、いずれも東ソー社製)の4本を使用し、移動相テトラヒドロフラン、測定温度40℃、流速1mL/min及び検出器RIの条件下で測定することができる。
【0038】
水酸基含有ポリエステル樹脂の水酸基価は、得られる塗膜の硬化性の観点から、5〜250mgKOH/gが好ましく、特に10〜200mgKOH/gの範囲内が好適である。また、水酸基含有ポリエステル樹脂の酸価は、加工性及び耐水性等の観点から、好ましくは30mgKOH/g以下、さらに好ましくは20mgKOH/g以下の範囲内であることが好適である。
【0039】
架橋剤(b)
本発明の塗料組成物における架橋剤(b)は、加熱により水酸基含有樹脂(a)の水酸基と反応して、硬化させることができるものであれば特に制限なく使用することができ、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂及びブロック化ポリイソシアネート等を挙げることができる。
【0040】
上記メラミン樹脂としては、メチロール化メラミンのメチロール基の一部又は全部を炭素数1〜8の1価アルコール、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、2−エチルブタノール、2−エチルヘキサノール等で、エーテル化した部分エーテル化又はフルエーテル化メラミン樹脂が挙げられる。
【0041】
メラミン樹脂の市販品としては、例えばサイメル202、サイメル232、サイメル235、サイメル238、サイメル254、サイメル266、サイメル267、サイメル272、サイメル285、サイメル301、サイメル303、サイメル325、サイメル327、サイメル350、サイメル370、サイメル701、サイメル703、サイメル1141(以上、日本サイテックインダストリーズ社製)、ユーバン20SE60(三井サイテック株式会社製)等が挙げられる。
【0042】
ベンゾグアナミン樹脂は、ベンゾグアナミンとアルデヒドとの反応によって得られるメチロール化ベンゾグアナミン樹脂が挙げられる。アルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。また、このメチロール化ベンゾグアナミン樹脂を1種又は2種以上のアルコールによってエーテル化したものも上記ベンゾグアナミン樹脂に包含される。エーテル化に用いられるアルコールとしては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、2−エチルブタノール、2−エチルヘキサノール等の1価アルコールが挙げられる。これらのうち、なかでもメチロール化ベンゾグアナミン樹脂のメチロール基の少なくとも一部を炭素数1〜4の1価アルコールでエーテル化してなるベンゾグアナミン樹脂が好適である。
【0043】
上記ベンゾグアナミン樹脂の具体例としては、例えば、マイコート102、マイコート105、マイコート106[以上、いずれも三井サイテック社製]、ニカラックSB−201、ニカラックSB−203、ニカラックSB−301、ニカラックSB−303、ニカラックSB−401[以上、いずれも三和ケミカル社製]などのメチルエーテル化ベンゾグアナミン樹脂;サイメル1123[以上、三井サイテック社製]などのメチルエーテルとエチルエーテルとの混合エーテル化ベンゾグアナミン樹脂;マイコート136[以上、三井サイテック社製]、ニカラックSB−255、ニカラックSB−355、ニカラックBX−37、ニカラックBX−4000[以上、いずれも三和ケミカル社製]などのメチルエーテルとブチルエーテルとの混合エーテル化ベンゾグアナミン樹脂;マイコート1128[以上、三井サイテック社製]などのブチルエーテル化ベンゾグアナミン樹脂などを挙げることができる。
【0044】
尿素樹脂は、尿素とホルムアルデヒドとの縮合反応で得られ、溶剤又は水に溶解又は分散できる。ポリイソシアネート化合物は、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物であり、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート;メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート及びシクロペンタンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート;該ポリイソシアネートのビユーレットタイプ付加物、イソシアヌル環タイプ付加物;これらのポリイソシアネートと低分子量もしくは高分子量のポリオール化合物(例えば、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールなど)とをイソシアネート基過剰で反応させてなる遊離イソシアネート基含有プレポリマーなどが挙げられる。さらに、これらのポリイソシアネート化合物の遊離イソシアネート基をフェノール化合物、オキシム化合物、活性メチレン化合物、ラクタム化合物、アルコール化合物、メルカプタン化合物、酸アミド系化合物、イミド系化合物、アミン系化合物、イミダゾール系化合物、尿素系化合物、カルバミン酸系化合物、イミン系化合物などのブロック剤で封鎖したブロックポリイソシアネートも使用することができる。
【0045】
水酸基含有樹脂(a)と架橋剤(b)との混合割合としては、両者の固形分合計100質量部に基づき、固形分量で水酸基含有樹脂(a)60〜95質量部、好ましくは70〜90質量部、架橋剤(b)5〜40質量部、好ましくは10〜30質量部であることが、下地素材との付着性、硬化性の点から好適である。
【0046】
スルホン酸基又はスルホン酸塩基を含有するアニオン性界面活性剤(c) 本発明の塗料組成物は、スルホン酸基又はスルホン酸塩基含有のアニオン性界面活性剤(c)を含有する。本発明の塗料組成物による塗膜中にスルホン酸基又はスルホン酸塩基を含有するアニオン性界面活性剤(c)が存在することによって、塗膜表面に固着した汚染物質の洗浄性を高めることができる。
【0047】
スルホン酸基又はスルホン酸塩基を含有するアニオン性界面活性剤(c)としては、例えば、モノアルキルスルホコハク酸エステル塩、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、スルホコハク酸アルキル二塩、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸二塩、アルキルアミンオキサイドビストリデシルスルホコハク酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ジシクロヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ジアミルスルホコハク酸ナトリウム、ジイソブチルスルホコハク酸ナトリウム、イソデシルスルホコハク酸ジナトリウム、N-オクタデシルスルホコハク酸アミドジナトリウム、N-(1,2-ジカルボキシエチル)-N-オクタデシルスルホコハク酸アミドテトラナトリウム等のスルホコハク酸系のアニオン性界面活性剤;例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸系のアニオン性界面活性剤;ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等のアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸系のアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム塩、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸アンモニウム塩等のポリオキシアルキレン基を有する硫酸エステルアンモニウム塩系のアニオン性界面活性剤;モノ又はジドデシルジフェニルオキシドジスルホン酸ナトリウム、ジイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム、アルキルスルホ酢酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩等が挙げられる。これらのスルホン酸基又はスルホン酸塩基を含有するアニオン性界面活性剤(c)は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】
上記のスルホン酸基又はスルホン酸塩基を含有するアニオン性界面活性剤(c)の中でも、スルホコハク酸系のアニオン性界面活性剤、特に下記一般式(1)で表される構造式のジアルキルスルホコハク酸ナトリウム塩が、耐汚染性の向上に特に好ましい。
【0050】
式(1)
(式(1)中のR
1、R
2は、それぞれ同一又は異なって炭素数1〜15のアルキル基を表す)
なお、スルホコハク酸系のアニオン性界面活性剤の市販品としては、ペレックスOT−P、ペレックスTR、ペレックスCS、ペレックスTA(以上、花王社製)、ニューコール290−A、ニューコール290−M、ニューコール291−M、ニューコール291−PG、ニューコール291−GL、ニューコール292−PG、ニューコール293(以上、日本乳化剤社製)、ネオコールSW−C、ネオコールYSK、ネオコールP(以上、第一工業製薬(株)製)が挙げられる。
【0051】
なお、スルホン酸基又はスルホン酸塩基を含有するアニオン性界面活性剤(c)の配合量は、水酸基含有樹脂(a)と架橋剤(b)との固形分合計100質量部に対して、スルホン酸基又はスルホン酸塩基含有のアニオン性界面活性剤(c)を1〜20質量部、好ましくは2〜10質量部であることが、耐汚染性、塗膜硬度、加工性に優れた塗膜を得ることができる点から好適である。
【0052】
ポリオキシアルキレン鎖を含有する非イオン界面活性剤(d)
本発明の塗料組成物中に、ポリオキシアルキレン鎖を含有する非イオン界面活性剤(d)を含有することによって、得られた塗膜中にアニオン性界面活性剤(c)が保持される効果が得られ、長期間に渡って耐汚染性を持続できる。
ポリオキシアルキレン鎖を含有する非イオン界面活性剤(d)としては、例えば、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンステアリン酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレンオレエート、ポリオキシエチレンアルキルアミンエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、オレイン酸ポリオキシエチレングリセリル、ポリオキシエチレンクミルフェニルエーテルなどが挙げられる。
また前記した以外の、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアリールエーテルなども使用することもできる。
【0053】
なお、ポリオキシアルキレン鎖を含有する非イオン界面活性剤(d)の市販品としては、エパン410、エパン610、エパン750、エパンU−103、ノイゲンDKS NL−15、ノイゲンDKS NL−30、ノイゲンDKS NL−80、ノイゲンTDX−50、ノイゲンTDX−80、ノイゲンTDX−1000、ノイゲンLP−70、ノイゲンLP−100、ノイゲンEN、ノイゲンEN−10、ノイゲンGOL−4M、ノイゲンHC−400、ノイゲンHC−800(以上、第一工業製薬)、ニューコールB10、ニューコールB13、ニューコールCMP−1、ニューコールCMP−6、ニューコール3240、ニューコール170、ニューコールDMH−20、ニューコールLA−407、ニューコールOD−410(以上、日本乳化剤社製、商品名)が挙げられる。
【0054】
このようなポリオキシアルキレン鎖を含有する非イオン界面活性剤(d)の配合量は、水酸基含有樹脂(a)と架橋剤(b)との固形分合計100質量部に対して、0.1〜20質量部、好ましくは2〜16質量部、さらに好ましくは3〜10質量部であることが、耐汚染性と塗膜硬度、加工性に優れた塗膜を得ることができることから好適である。
【0055】
尿素樹脂粒子(e) 本発明の塗料組成物は、尿素樹脂粒子(e)を配合することで、塗膜の光沢を低下させることができ、例えば60度鏡面光沢度が1〜65、好ましくは60度鏡面光沢度が5〜55の艶消塗膜を得ることができる。
【0056】
上記尿素樹脂粒子(e)は、尿素とアルデヒド成分との縮合反応により得られた樹脂を粉砕処理した粉末状のもので、平均粒子径1〜10μm、好ましくは2〜8μmのものが適している。上記平均粒子径は、マイクロトラック粒度分布測定装置(商品名「MT3300」、日機装社製)を使用し、レーザー回折散乱法により測定された体積基準粒度分布のメジアン径(d50)の値である。
アルデヒド成分としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、ベンズアルデヒド等が使用可能である。この中でもホルムアルデヒドを用いた場合、縮合反応が進み易く好都合である。
尿素樹脂粒子(e)の市販品としては、パーゴパックM3、パーゴパックM4、パーゴパックM5(以上、ロンザジャパン社製、商品名)、SOOFINE JJ POWDER(杭州精彩化工社製、商品名)等が挙げられる。
【0057】
本発明の塗料組成物に、必要に応じて配合される尿素樹脂粒子(e)は、艶消し塗膜とする場合に、所望の艶消塗膜の度合に応じて配合され、水酸基含有樹脂(a)と架橋剤(b)との固形分合計100質量部に対して通常、尿素樹脂粒子(e)量が1〜50質量部、好ましくは2〜30質量部、さらに好ましくは3〜15質量部の範囲内であることが、塗料安定性、艶消塗膜を得る面から望ましい。
【0058】
また、本発明の塗料組成物には、必要に応じて、潤滑性付与剤、着色顔料、体質顔料などの顔料、硬化触媒、顔料分散剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、消泡剤、表面調整剤、界面活性剤、脱水剤等の塗料添加剤、シリカ微粉末等のその他の艶消し剤、有機溶剤等、その他の樹脂、従来から塗料に使用されている公知の材料も使用できる。
本発明の塗料組成物は、貯蔵安定性が良好であるが、脱水剤を添加することによって、さらに貯蔵安定性を向上できる。脱水剤としては、オルト酢酸メチル、オルト蟻酸メチルが挙げられる。
【0059】
上記潤滑性付与剤としては、塗面外観を劣化させず、塗膜表面に滑り性を付与することができるものであれば、従来、塗料分野で既知の潤滑剤を使用することができ、代表例として、例えば、ポリエチレンワックスなどのポリオレフィンワックス;ポリエーテル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸エステル変性シリコーンオイル、高級アルコキシ変性シリコーンオイルなどの変性シリコーンオイル;マイクロクリスタリンワックスなどパラフィンワックス;モンタンワックス、ラノリンワックス、カルナウバワックス、蜜ロウ、鯨ロウなどの脂肪酸エステルワックス、四フッ化エチレンなどのフッ素系ワックスを挙げることができる。
【0060】
上記顔料としては、具体的には、チタン白、亜鉛華などの白色顔料;シアニンブルー、インダスレンブルーなどの青色顔料;シアニングリーン、緑青などの緑色顔料;アゾ系やキナクリドン系などの有機赤色顔料、ベンガラなどの無機赤色顔料;ベンツイミダゾロン系、イソインドリノン系、イソインドリン系及びキノフタロン系などの有機黄色顔料、チタンイエロー、黄鉛、黄色酸化鉄などの無機黄色顔料;カーボンブラック、黒鉛、松煙などの黒色顔料等の着色顔料;クレー、タルク、バリタ、炭酸カルシウム等の体質顔料;トリポリリン酸アルミニウム、モリブデン酸亜鉛、五酸化バナジウムなどの防錆顔料;を挙げることができる。
【0061】
例えば、硬化触媒は、水酸基含有樹脂(a)と架橋剤(b)との反応を促進するために必要に応じて配合されるものであり、架橋剤(b)がアミノ樹脂である場合には、スルホン酸化合物又はスルホン酸化合物のアミン中和物が好適に用いられる。
【0062】
上記スルホン酸化合物の代表例としては、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸などを挙げることができる。スルホン酸化合物のアミン中和物におけるアミンとしては、1級アミン、2級アミン、3級アミンのいずれであってもよい。これらのうち、塗料安定性、反応促進効果、得られる塗膜物性などの点から、p−トルエンスルホン酸のアミン中和物及び/又はドデシルベンゼンスルホン酸のアミン中和物が好適である。
【0063】
架橋剤(b)が、ブロック化ポリイソシアネート化合物である場合には、硬化触媒としては、オクチル酸錫、ジブチル錫ジ(2−エチルヘキサノエート)、ジオクチル錫ジ(2−エチルヘキサノート)、ジオクチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、モノブチル錫トリオクテート、2−エチルヘキン酸鉛、オクチル酸亜鉛などの有機金属化合物を挙げることできる。硬化触媒は、水酸基含有樹脂(a)と架橋剤(b)との固形分合計量100質量部に対して、0.1〜5.0質量部、好ましくは0.2〜1.5質量部が適している。
【0064】
本発明の塗料組成物は、水酸基含有樹脂(a)、架橋剤(b)、スルホン酸基又はスルホン酸塩基含有のアニオン性界面活性剤(c)、ポリオキシアルキレン鎖を含有する非イオン界面活性剤(d)、及び必要に応じて、尿素樹脂粒子(e)、上記その他の成分を均一に混合して得ることができる。
【0065】
本発明の塗膜形成方法 本発明の塗料組成物を塗装するに際しては、フォードカップNo.4(20℃)で10〜100秒間の範囲の粘度が得られるよう、固形分濃度を20〜60質量%の範囲内に調整することが好ましい。
【0066】
本発明の塗料組成物を用いた塗膜形成方法は、金属板上の片面又は両面上に、プライマー塗膜を形成し、プライマー塗膜の少なくとも片面上に、塗料組成物による上塗塗膜を形成することを特徴とする。
【0067】
詳細には、被塗物である金属板は、冷延鋼板、溶融亜鉛メッキ鋼板、電気亜鉛メッキ鋼板、合金亜鉛メッキ鋼板(鉄−亜鉛、アルミニウム−亜鉛、ニッケル−亜鉛などの合金亜鉛メッキ鋼板)、アルミニウム板、ステンレス鋼板、銅板、銅メッキ鋼板、錫メッキ鋼板等が挙げられる。
【0068】
金属板に塗装する場合に被塗装材である金属表面が油等汚染物質で汚染されていなければそのまま塗装してもかまわないが、塗膜との間の付着性、耐食性を改善するために公知の金属表面処理を施すのが望ましい。これら公知の表面処理方法としてリン酸塩系表面処理、クロム酸塩系表面処理、ジルコニウム系表面処理などが挙げられる。
【0069】
金属板上にプライマー塗膜を形成するプライマーとしては、着色カラー鋼板塗装分野、産業用機械塗装分野、金属部品塗装分野等で用いられる公知のプライマーを適用することができる。環境保護の観点から、クロム系防錆成分を含有しないクロムフリープライマー塗料を使用することが好ましい。
【0070】
クロムフリープライマー塗料は、被塗装材の種類、金属表面処理の種類によって適宜選択されるが、特にエポキシ系、ポリエステル系プライマー塗料及びそれらの変性プライマー塗料が好適であり、加工性が特に要求される場合はポリエステル系プライマー塗料が好適である。プライマー塗料は、プライマー塗膜厚が、1〜30μm、好ましくは2〜20μmとなるようにロール塗装、スプレー塗装等公知の塗装方法により塗装され、通常、雰囲気温度80〜300℃の温度で5秒間〜1時間程度、コイルコート塗装する場合には、好ましくは、素材到達最高温度が140〜250℃となる条件で15秒間〜120秒間加熱して硬化させる。
【0071】
プライマー塗膜は一層であってもよいし、第1のプライマー塗膜の上に第2のプライマー塗膜(中塗塗膜)が形成された二層であってもよい。プライマー塗膜を二層とする場合、第1のプライマー塗膜に防食機能を持たせ、第2のプライマー塗膜(中塗塗膜)に、加工性、耐チッピング性能を持たせるなど、二層のプライマー塗膜に異なる機能を持たせることもできる。
【0072】
本発明の塗膜形成方法における本塗料組成物は、上記プライマー塗膜の少なくとも片面上に塗装される。塗装方法としては、カーテン塗装、ロールコータ塗装、浸漬塗装及びスプレー塗装等を挙げることができ、通常、乾燥後の塗膜厚が5〜50μm、好ましくは8〜25μmの範囲内となるように塗装される。
【0073】
本発明の塗料組成物をコイルコート塗装する場合、その塗装方法に制限はないがコイルコート塗装の経済性からカーテン塗装、ロールコーター塗装が推奨される。ロールコーター塗装を適用する場合には、実用的には通常の2本ロールによるボトムフィード方式(いわゆる、リバース塗装、ナチュラル塗装)が好適に行われるが、塗面の均一性を最良のものにするため3本ロールによるトップフィードもしくはボトムフィード方式を行うこともできる。
【0074】
本発明に係る塗膜の形成方法は、上記工程で得られた本発明の塗料組成物の塗膜を硬化する工程を含んでいてもよい。本発明の塗料組成物による塗膜の硬化条件は、通常、素材到達最高温度120〜260℃で15秒間〜30分間程度である。コイルコーティングなどによって塗装するプレコート塗装分野においては、通常、素材到達最高温度160〜260℃で焼付時間15〜90秒間の範囲で行なわれる。
【0075】
さらに、本発明組成物中に、尿素樹脂粒子(e)を添加した塗料組成物による艶消し塗膜は、汚染物質が固着し難く、艶消し塗膜においても耐汚染性を向上することができたものである。
【実施例】
【0076】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下、「部」及び「%」はいずれも質量基準によるものとする。
【0077】
水酸基含有ポリエステル樹脂(a)の製造
製造例1 ポリエステル樹脂溶液の製造(a1成分) 温度計、攪拌機、加熱装置及び精留搭を具備した反応装置に、イソフタル酸1079部、アジピン酸407部、ネオペンチルグリコール466部及びトリメチロールプロパン802部を仕込み、160℃まで昇温し、さらに160℃〜230℃まで3時間かけて徐々に昇温した。
次いで、230℃で30分間反応を続けた後、精留搭を水分離機と置換し、内容部にキシレン124部を加え水分離機にもキシレンを入れて、水とキシレンとを共沸させて縮合水を除去し、酸価が10mgKOH/gになるまで反応させ、冷却し、反応物にシクロヘキサノン855部を加えて、固形分55%のポリエステル樹脂溶液を得た。得られた樹脂は、水酸基価184mgKOH/g、数平均分子量3,400を有していた。
【0078】
製造例2 アクリル樹脂溶液の製造(a2成分)
温度計、サーモスタット、攪拌機、還流冷却機及び滴下装置をつけた反応容器に、酢酸ブチル480部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら130℃に加熱した後、その温度を保持しながら滴下装置から、スチレン200部、メチルメタクリレート290部、シクロヘキシルメタクリレート250部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート260部及び2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル50部)の混合溶液を3時間かけて滴下した。
滴下終了後、反応物を130℃で1時間熟成し、シクロヘキサノンで固形分を調整して樹脂固形分55%のアクリル樹脂溶液を得た。得られた樹脂は、水酸基価107mgKOH/g、数平均分子量8,000を有していた。
【0079】
実施例1 塗料組成物No.1の製造 製造例1で得たポリエステル樹脂溶液80部(固形分)、サイメル303(注2)20部(固形分)、ニューコール291−GL(注4)5部、ノイゲンDKS NL−80(注7)5部(固形分)、タイペークCR−95(注12)120部、ドデシルベンゼンスルホン酸0.5部、及び有機溶剤(シクロヘキサノン/スワゾール1500=40/60(質量比)の混合溶剤)を加えて希釈し、粘度80秒(フォードカップ#4、25℃)の塗料組成物No.1を得た。
【0080】
実施例2〜21 塗料組成物No.2〜No.21の製造 表1及び表2に示す配合内容する以外は、実施例1と同様にして、塗料組成物No.2〜No.21を得た。
【0081】
【表1】
【0082】
【表2】
【0083】
(注1)バイロンKS−1430V:東洋紡績(株)社製、ポリエステル樹脂、数平均分子量12,000、水酸基価11mgKOH/g、ガラス転移点1℃
(注2)サイメル303:日本サイテックインダストリーズ株式会社製、商品名、メチルエーテル化メラミン樹脂(注3)ブロックポリイソシアネート化合物A:ヘキサメチレンジイソシアネート3量体のオキシムブロック化物、固形分37質量%、NCO含有率3.6%
(注4)ニューコール291-GL:商品名、日本乳化剤株式会社、前記式(1)で示される構造式のジアルキルスルホコハク酸ナトリウム塩
(注5)ニューコール292-PG:商品名、日本乳化剤株式会社、前記式(1)で示される構造式のジアルキルスルホコハク酸ナトリウム塩
(注6)ニューコール293:商品名、日本乳化剤株式会社、下記式(2)で表される構造式のモノアルキルスルホコハク酸ジナトリウム塩
【0084】
【化2】
式(2)
(式(2)中のR
3は、炭素数1〜15のアルキル基を表す)
(注7)ノイゲンDKS NL−80:第一工業製薬社製、商品名、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシアルキレン鎖を含有する非イオン界面活性剤
(注8)エパン410:第一工業製薬社製、商品名、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシアルキレン鎖を含有する非イオン界面活性剤
(注9)ニューコールDMH−20:日本乳化剤社製、商品名、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン鎖を含有する非イオン界面活性剤
(注10)SOOFINE JJ POWDER:杭州精彩化工社製、商品名、尿素樹脂粒子、平均粒子径2.5μm
(注11)サイリシア445:富士シリシア化学社製、商品名、シリカ微粉末、艶消し剤(注12)タイペークCR−95:石原産業社製、商品名、チタン白。
【0085】
比較例1 塗料組成物No.21
製造例1で得たポリエステル樹脂溶液80部(固形分)、サイメル303(注2)20部(固形分)、タイペークCR−95(注12)120部、ドデシルベンゼンスルホン酸0.5部、及び有機溶剤(シクロヘキサノン/スワゾール1500、40/60の混合溶剤)を加えて希釈し、粘度80秒(フォードカップ#4、25℃)の塗料組成物No.21を得た。
比較例2〜10 塗料組成物No.22〜No.31
表3に示す配合内容する以外は、比較例1と同様にして、塗料組成物No.22〜No.31を得た。
【0086】
【表3】
【0087】
(注13)貯蔵安定性:
各塗料組成物を500mLのガラス容器に400mLの塗料組成物を入れて、40℃の恒温室に密閉貯蔵し、90日間貯蔵した後の状態を次の基準により評価した。
◎は、ヘラを用いて手攪拌すると、塗料組成物が直ぐに貯蔵前の状態に戻り問題なし
○は、塗料組成物が沈降してケーキ層がみられるが、10分間未満の攪拌(直径2cmの撹拌羽根を用い500rpm)にて、凝集ブツもなく貯蔵前の状態に戻る。
△は、塗料組成物が沈降してケーキ層がみられるが、10〜60分間の攪拌(直径2cmの撹拌羽根を用い500rpm)にて、凝集ブツもなく貯蔵前の状態に戻る。
×は、塗料組成物が沈降してケーキ層がみられ、60分間を越えて攪拌(直径2cmの撹拌羽根を用い500rpm)しても凝集ブツが残る。
【0088】
試験板の作成
乾燥膜厚3μmのプライマー塗膜を形成した亜鉛−アルミニウム合金メッキ鋼板(GL材、板厚0.35mm)上に、ロールコーターにて、上記実施例及び比較例で得た塗料組成物No.1〜No.31を乾燥膜厚18μmとなるように塗装し、素材到達最高温度が220℃となる条件で40秒間焼き付けて試験板を得た。各試験板を用いて、後記の試験条件に従って、試験した結果を前記表2〜表4に示す。なお表2〜表4における試験の試験条件は、下記のとおりである。
【0089】
(注14)初期の塗面外観:
○は、塗面に、ハジキ、凹みなどの塗面異常が認められず、また、曇りも認められない。
△は、ハジキ、凹みなどの塗面異常が認められないが、塗面に曇りが認められる。
×は、塗面にハジキ、凹みなどの塗面異常が認められる。
【0090】
(注15)鉛筆硬度:試験板の塗膜について、JIS K 5600−5−4(1999)に規定する鉛筆引っかき試験を行い、塗膜の破れによる評価を行った。硬度が高いほうが好ましい。
【0091】
(注16)屋外曝露試験:試験板を屋外曝露試験片(100×300mm)として、軒先をモデル化した設置台に、塗膜が北側に面するように、垂直から4度の角度を付けて取り付け、東京都大田区の関西ペイント(株)屋上にて曝露試験を行い、「暴露開始から2ヶ月後」及び「暴露開始から12ヶ月後」において、初期塗板との色差(△E)をJIS Z8370に基づいて、スガ試験機(株)製の多光源分光測色計MSC−5Nを用いて測定し、以下の基準により評価した。
◎は、△Eが1未満
○は、△Eが1以上かつ2未満
△は、△Eが2以上かつ5未満、
×は、△Eが5以上。
【0092】
(注17)加工性:20℃の室内において、塗面を外側にして万力にて試験板を180度折曲げて、折曲げ部分の塗膜にワレ発生程度を評価した。
◎は、2T折曲げ加工において、ワレが認められない
○は、2T折曲げ加工ではワレが認められるが、4T折曲げ加工においてワレが認められない
△は、4T折曲げ加工ではワレが認められるが、6T折曲げ加工においてワレが認められない
×は、6T折曲げ加工において、ワレが認められる。
【0093】
(注18)60度鏡面光沢度:
JIS Z 8741(1997)に規定の60度鏡面光沢度に従い、60度鏡面反射率を測定した。