(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
昨今、119番通報等の緊急通報システムにおいて、出動指令を送出するための有線回線に障害が発生した場合に、自動的に無線回線に対して指令音声を送出することが可能になっている。例えば、特許文献1には、重要回線ダウン時の無線によるバックアップ方式に関する技術が開示されている。
【0003】
特許文献1では、緊急指令通信装置などの本部機器と複数の端末機器とが有線回線(重要回線)で接続されている。例えば、通常、消防署等の本部機器で受け付けた緊急通報に応じて複数の拠点へ緊急車両の出動指令等を送出する場合、本部機器は、有線回線経由で指令を送出する。
【0004】
また、特許文献1では、各端末機器は、本部機器が有する無線制御機から送信される無線信号を無線回線を介して受信できる。本部機器と複数の端末機器とはそれぞれ重要回線の障害を監視する。そして、重要回線の障害時には指令内容を無線回線を介して本部機器から端末機器へ通知する。特に、複数の重要回線のうち1回線がダウンした場合、ダウンした回線に接続されている回線指令部がその旨を検出する。そして、回線指令部が有線/無線接続装置内部のリレーを動作させ、接点から重要回線が無線制御機へ引き込まれて端末へ送信される。
【0005】
このとき、本部機器は、障害が検出された重要回線が接続された端末機器に対して、登録された無線周波数により無線信号をバックアップ指令として送出する。例えば、本部機器が有する無線制御機は、一定周波数の無線信号として起動トーン信号を送出する。当該起動トーン信号を受信した無線受信機は、拡声器制御装置におけるアンプ起動信号をONする。これにより、障害が検出された重要回線が接続された端末機器が属する拠点においても、無線指令を全館に放送することが可能となる。
【0006】
また、特許文献2には、デジタル地域防災無線システムに関する技術が開示されている。特許文献2にかかるシステムは、複数の基地局無線装置が有線回線又は無線回線により互いに接続されている。各基地局無線装置は、それぞれの回線異常を監視し、有線回線が断線した場合には、回線の切り替えを行うものである。
【0007】
特許文献3には、建物の防犯や施設の保全を監視するとともに、有線回線や無線回線によって遠隔の監視センタに異常を通報する警備端末装置に関する技術が開示されている。特許文献3にかかる警備端末装置は、有線回線及び無線回線を監視し、通常時には、有線回線に接続するが、有線回線が通信不能である場合に無線回線に接続する。
【0008】
特許文献4には、無線呼出システム用自動回線バックアップシステム及びその無線呼出局と中央制御局に関する技術が開示されている。特許文献4にかかる技術は、中央制御局と無線呼出局間を接続する伝送路として有線回線を用いる無線呼出システムの前記有線回線障害時の回線バックアップ制御を行うものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
一般に、無線経由での指令に基づく処理を終了させる場合、本部機器は、起動トーン信号と同様に、同一の無線周波数に対して無線信号の復旧トーン信号を送出する。そして、復旧トーン信号を受信した無線受信機は、拡声器制御装置におけるアンプ復旧信号をONする。これにより、指令に基づく処理を終了させることができる。
【0011】
しかし、特許文献1の場合には、障害が発生していない有線回線に接続された拠点内の指令受信装置(端末機器)においても、無線指令により動作が影響を受けてしまうおそれがあるという問題点がある。
【0012】
消防機関で使用可能な無線周波数の数は限られており、一般的には、拠点数に比べて無線周波数の種類は少ない。そのため、各拠点ごとに別々の無線周波数を割り当てることができない。よって、有線回線の障害時に所定の無線周波数による無線信号を送出した場合、障害が発生している有線回線に接続された拠点だけでなく、障害が発生していない有線回線に接続された拠点においても同一の無線信号が受信されてしまう。それゆえ、有線回線を経由した指令に基づき動作している最中に、無線信号による指令により動作が影響を受けるおそれがある。
【0013】
例えば、A拠点に接続された有線回線にのみ障害が発生している状態で、A拠点管内で救急事案、B拠点管内で火災事案がほぼ同時に発生したと仮定する。この場合、本部機器は、A拠点向けに救急指令、B拠点向けの火災指令をほぼ同時に送出することになる。この時、B拠点は有線回線が正常なため、本部機器は、有線回線を介して指令を送信する。一方、A拠点は有線回線が障害のため、本部機器は、無線回線を介して無線バックアップ指令を送信する。
【0014】
ここで、A拠点の指令内容がB拠点の指令内容より短かった場合は、A拠点の指令が先に終了する。例えば、救急指令の場合、出動車両が救急車のみであるため指令音声の長さは相対的に短い。一方、火災指令の場合、出動車両には、複数台の複数種類の消防車が含まれるため指令音声の長さは相対的に長い。そのため、救急指令と火災指令がほぼ同時に発せられた場合、指令音声の終了は救急指令の方が早く終了することが起こり得る。
【0015】
この場合、本部機器は、無線バックアップ指令(例えば、救急指令)の復旧トーン信号を送出することとなる。しかし、この復旧トーン信号は、A拠点とB拠点とで共通する無線周波数が用いられているため、B拠点の無線受令機においても受信されてしまう。そのため、B拠点の火災指令の指令音声の放送が終了する前に当該指令音声の放送が終了し、火災指令に対する各種処理を復旧させてしまうことが起こり得る。
【0016】
このように、特許文献1では、無線の周波数が複数の端末機器で共通であれば、ダウンした有線回線に接続された端末機器に向けて送信された無線信号が、ダウンしていない有線回線に接続された端末機器においても受信されてしまい、動作に影響を与えてしまうおそれがある。尚、特許文献2乃至4にはこれらを解決する手段が開示されていない。
【0017】
本発明は、上述した問題点を考慮してなされたものであり、有線回線及び無線回線を介して信号を受信可能な信号処理装置において、有線回線の障害状況にかかわらず、適切に信号処理を実行させるための信号処理装置、受信信号処理システム及び受信信号処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の第1の態様にかかる信号処理装置は、
外部と接続された有線回線を監視し、その障害を検出する障害検出部と、
無線回線からの無線信号に基づいて信号経路が形成される第1の回路との接続を制御する接続制御部とを備え、
前記接続制御部は、
前記障害検出部が前記有線回線の障害を検出するまでの間、前記第1の回路と接続せず、
前記障害検出部が前記有線回線の障害を検出した場合、前記第1の回路との接続を行う。
【0019】
本発明の第2の態様にかかる受信信号処理システムは、
入力される信号に基づいて放送の開始及び終了を制御する放送制御装置と、
外部と接続された有線回線の障害を監視し、当該有線回線を介して受信した所定の信号に基づいて前記放送制御装置に対して制御信号を出力する信号処理装置と、
無線回線を介して受信した所定の無線信号に応じて接点端子を閉じて前記信号処理装置との間の信号経路である第1の回路を形成する無線受信装置と、を備え、
前記信号処理装置は、
前記有線回線の障害を検出するまでの間、前記第1の回路と接続せず、
前記有線回線の障害を検出した場合、前記第1の回路との接続を行う。
【0020】
本発明の第3の態様にかかる受信信号処理方法は、
有線回線と接続された信号処理装置における無線回線からの無線信号に基づいて信号経路が形成される第1の回路との接続を制御するための受信信号処理方法であって、
前記有線回線の障害を監視し、
前記有線回線の障害を検出するまでの間、前記第1の回路と接続せず、
前記有線回線の障害を検出した場合、前記第1の回路との接続を行う。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、有線回線及び無線回線を介して信号を受信可能な信号処理装置において、有線回線の障害状況にかかわらず、適切に信号処理を実行させるための信号処理装置、受信信号処理システム及び受信信号処理方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下では、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図面において、同一要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略する。
【0024】
<発明の実施の形態1>
図1は、本発明の実施の形態1にかかる受信信号処理システム100の構成を示すブロック図である。受信信号処理システム100は、信号処理装置110と、無線受信装置120と、放送制御装置130とを備える。信号処理装置110は、外部と接続された有線回線140の障害を監視し、有線回線140を介して受信した所定の信号に基づいて放送制御装置130に対して制御信号を出力する。無線受信装置120は、無線回線150を介して受信した所定の無線信号に応じて接点端子を閉じて信号処理装置110との間の信号経路である第1の回路160を形成する。放送制御装置130は、信号処理装置110から入力される信号に基づいて放送の開始及び終了を制御する。
【0025】
ここで、信号処理装置110は、障害検出部111と、接続制御部112とを備える。障害検出部111は、外部と接続された有線回線140を監視し、その障害を検出する。接続制御部112は、第1の回路160との接続を制御する。特に、接続制御部112は、障害検出部111が有線回線140の障害を検出するまでの間、第1の回路160と接続せず、障害検出部111が有線回線140の障害を検出した場合、第1の回路160との接続を行う。
【0026】
図2は、本発明の実施の形態1にかかる受信信号処理の流れを示すフローチャートである。まず、障害検出部111は、有線回線140の障害を監視する(S11)。次に、障害検出部111は、有線回線140に障害が発生したか否かを判定する(S12)。例えば、障害検出部111は、所定の間隔で有線回線140の障害の有無を判定する。ステップS12において、有線回線140に障害が発生していないと判定した場合、ステップS11へ戻る。一方、ステップS12において、有線回線140に障害が発生したと判定した場合、接続制御部112は、第1の回路160との接続を行う(S13)。すなわち、障害検出部111は、有線回線140の障害を検出した場合、第1の回路160との接続を行う。そのため、接続制御部112は、障害検出部111が有線回線140の障害を検出するまでの間、第1の回路160との接続を行わない。
【0027】
このように、信号処理装置110は、有線回線140に障害が発生していなければ、有線回線140を介して外部からの信号を受信し、所定の処理を行うことができる。一方、有線回線140に障害が発生した場合には、信号処理装置110は、無線受信装置120が無線回線150を介して受信した無線信号に応じて所定の処理を行うことができる。つまり、信号処理装置110は、有線回線140及び無線回線150を介して信号を受信可能である。そして、外部から通常は有線回線140を介して所定の指令を示す信号を受信する場合であっても、有線回線140の障害時には、無線回線150経由で無線信号による所定の指令を受け付けることができる。
【0028】
さらに、有線回線140に障害が発生していない場合において、他の無線受信装置向けの無線信号による動作の影響を回避することが
できる。例えば、無線受信装置120が他の無線受信装置と共通の無線周波数により無線信号を受信可能であり、当該他の無線受信装置に向けた他の指令の信号が発信された場合には、無線受信装置120は当該他の指令を受信できてしまう。しかし、第1の回路160が接続されていないため、信号処理装置110は、無線受信装置120により受信された他の指令による影響を受けることなく動作することができる。このように、本発明の実施の形態1により、有線回線及び無線回線を介して信号を受信可能な信号処理装置において、有線回線の障害状況にかかわらず、適切に信号処理を実行させることができる。
【0029】
<発明の実施の形態2>
図3は、本発明の実施の形態2にかかる緊急指令システム200の構成を示すブロック図である。緊急指令システム200は、本部20に設置された指令装置21及び無線装置22と、本部20とは離れた各拠点、署所に設置された指令受信処理システム30及び40とを備える。署所とは、例えば、消防署、警察署、分団、分署等の本部20以外の拠点をいう。つまり、署所は、本部20からの指令先であり、緊急指令の受信側である。
【0030】
指令装置21は、火災や救急等の情報を取得した場合に、必要に応じて指令受信処理システム30や40へ緊急時の指令を通知するものである。緊急時の指令としては例えば、緊急車両の出動を伴う救急、火災もしくは救助、または、緊急車両の出動を伴わない通知等が挙げられる。指令装置21は、交換機211を備える。交換機211は、指令受信処理システム30の指令受信装置32と有線指令回線51で接続されている。また、交換機211は、指令受信処理システム40の指令受信装置42と有線指令回線52で接続されている。ここで、有線指令回線51及び52は、
図1の有線回線140の一例である。有線指令回線51及び52は、専用線であるか、VoIP(Voice over Internet Protocol)等を利用可能なインターネット回線等である。尚、
図3では、有線指令回線52に障害55が発生しているものとする。有線指令回線52がインターネット回線である場合には、障害55は、物理的な信号線の切断等に限らず、例えばインターネット回線、中継サーバ、指令受信処理システム40側のルータ等を原因とした通信障害を含むものとする。
【0031】
また、指令装置21は無線機221と接続されている。指令装置21は、原則としては有線指令回線51及び52を介して指令受信処理システム30及び40へ緊急指令を通知するが、有線指令回線51又は52に障害が検出された場合には、無線経由で緊急指令を通知する。そのため、指令装置21は、無線機221へ無線用の緊急指令を通知する。
【0032】
無線装置22は、無線機221と、無線基地局222とを備える。また、無線機221は、交換機211からの通知に応じて無線基地局222へ無線信号の発信を指示する。無線基地局222は、所定の周波数により無線信号を発信する。つまり、無線基地局222は、指令受信処理システム30の無線受令機33及び指令受信処理システム40の無線受令機43へ無線信号を送信可能である。ここで、無線受令機33及び43は、同一の周波数による無線信号を受信可能であるものとする。
【0033】
ここで、指令装置21から指令受信処理システム30及び40へ有線回線又は無線回線を介して通知する指令信号としては、指令処理を開始させるための指令開始信号、指令処理に基づく音声信号、指令処理からの復旧処理を指示する復旧指示信号等が含まれる。以下では、指令開始信号を起動トーン信号、音声信号を指令音声信号、復旧指示信号を復旧トーン信号と呼ぶ。また、ここでは、有線回線及び無線回線からの信号は、上述した通り、緊急時の指令に関するものとする。
【0034】
指令受信処理システム30は、放送制御装置31と、指令受信装置32と、無線受令機33とを備える。また、指令受信処理システム40は、放送制御装置41と、指令受信装置42と、無線受令機43とを備える。尚、指令受信処理システム30及び40は、上述した実施の形態1の受信信号処理システム100の一実施例であり、その構成は共通するため、以下では代表して、指令受信処理システム30の構成を説明する。
【0035】
図5は、本発明の実施の形態2にかかる指令受信処理システム30の構成を示すブロック図である。指令受信装置32は、アンプ起動制御回路321と、指令音声制御回路322と、復旧制御回路323と、指令回線障害検出回路324と、起動端子325と、指令音声端子326と、外部確受端子327と、指令回線障害通知接点端子328とを備える。尚、指令回線障害通知接点端子328は、初期状態において開放されている。また、無線受令機33は、起動トーン信号検出回路331と、指令音声伝送回路332と、復旧トーン信号検出回路333と、起動通知接点端子334と、指令音声端子335と、復旧通知接点端子336とを備える。
【0036】
まず、無線受令機33の内部構成について説明する。起動トーン信号検出回路331は、無線指令回線53を介して受信される起動トーン信号を検出した場合に、起動通知接点端子334を閉じる。ここで、起動端子325と起動通知接点端子334とは各端子が接続されている。起動通知接点端子334が閉じられることにより、アンプ起動制御回路321におけるアンプ起動信号341をONにするための回路が形成される。
【0037】
指令音声伝送回路332は、無線指令回線53を介して受信される指令音声信号を指令音声端子335及び指令音声端子326を介して指令音声制御回路322へ出力する。ここで、指令音声端子335と指令音声端子326とは各端子が接続されている。
【0038】
復旧トーン信号検出回路333は、無線指令回線53を介して受信される復旧トーン信号を検出した場合に、復旧通知接点端子336を閉じる。ここで、外部確受端子327の一端と復旧通知接点端子336の一端とが接続され、復旧通知接点端子336の他端と指令回線障害通知接点端子328の一端とが接続され、指令回線障害通知接点端子328の他端と外部確受端子327の他端とが接続されている。指令回線障害通知接点端子328及び復旧通知接点端子336が閉じられることにより、復旧制御回路323におけるアンプ停止信号343をONにするための回路が形成される。ここで、当該形成される回路は、上述した第1の回路160に相当する回路ということができる。そして、指令回線障害通知接点端子328は、第1の回路と接続するための接点端子ということができる。つまり、復旧トーン信号検出回路333が復旧トーン信号を検出したとしても、指令回線障害通知接点端子328が閉じられていない限り、アンプ停止信号343がONになることはない。このことから、第1の回路は、無線回線53を介して無線信号を受信する無線受令機33が復旧トーン信号を受信した場合に形成される回路といえる。
【0039】
次に、指令受信装置32の内部構成について説明する。アンプ起動制御回路321は、原則として、有線指令回線51を介して入力される起動トーン信号を検出した場合に、放送制御装置31に対してアンプ起動信号341をONとして出力する。また、アンプ起動制御回路321は、指令回線障害検出回路324から有線指令回線51の障害検出通知を受け付けた場合には、無線受令機33と接続するための起動端子325を閉じる。この場合、アンプ起動制御回路321は、有線指令回線51経由の起動トーン信号を検出したとしてもアンプ起動信号341をONとはしない。つまり、アンプ起動制御回路321は、無線受令機33が無線指令回線53を介して起動トーン信号を受信した場合に、アンプ起動信号341をONとして出力する。
【0040】
指令音声制御回路322は、原則として有線指令回線51を介して入力される指令音声信号を指令音声信号342として放送制御装置31へ出力する。また、指令音声制御回路322は、指令回線障害検出回路324から有線指令回線51の障害検出通知を受け付けた場合には、無線受令機33と接続するための指令音声端子326と接続する。この場合、指令音声制御回路322は、有線指令回線51経由の指令音声信号を放送制御装置31へ出力しない。つまり、指令音声制御回路322は、無線受令機33が無線指令回線53を介して指令音声信号を受信した場合に、指令音声信号342を出力する。
【0041】
復旧制御回路323は、原則として有線指令回線51を介して入力される復旧トーン信号を検出した場合に、放送制御装置31に対してアンプ停止信号343をONとして出力する。また、復旧制御回路323は、外部確受端子327と接続されている。
【0042】
指令回線障害検出回路324は、有線指令回線51を所定の間隔で監視し、有線指令回線51の障害を検出する。指令回線障害検出回路324は、有線指令回線51の障害を検出した場合、アンプ起動制御回路321及び指令音声制御回路322へ障害検出通知を出力する。また、指令回線障害検出回路324は、有線指令回線51の障害を検出した場合、指令回線障害通知接点端子328を閉じる。逆にいうと、指令回線障害検出回路324は、有線回線51の障害を検出するまでの間、指令回線障害通知接点端子328の開放を維持する。尚、指令回線障害検出回路324は、上述した障害検出部111と接続制御部112の機能を有するものである。
【0043】
放送制御装置31は、上述した放送制御装置130の一実施例である。放送制御装置31は、指令受信処理システム30が設置されている拠点、つまり署所内における指令の放送を制御する放送設備である。放送制御装置31は、指令受信装置32からのアンプ起動信号341に応じて起動し、指令音声制御回路322からの指令音声信号342に応じて音声を放送し、復旧制御回路323からのアンプ停止信号343に応じて放送を停止する。
【0044】
ここで、本発明の実施の形態2にかかる有線指令回線の監視処理について説明する。
図4は、本発明の実施の形態2にかかる有線指令回線監視処理の流れを示すシーケンス図である。尚、
図4では、例として交換機211と
指令受信装置42との間の監視処理について説明する。
【0045】
まず、交換機211は、
指令受信装置42に対して有線指令回線52を介してPB信号を送出する(S21)。そして、
指令受信装置42は、交換機211に対して有線指令回線52を介して応答信号を送出する(S22)。その後、交換機211は、ステップS21から一定時間である周期Taの経過後に、
指令受信装置42に対して有線指令回線52を介してPB信号を送出する(S23)。そして、
指令受信装置42は、交換機211に対して有線指令回線52を介して応答信号を送出する(S24)。
【0046】
その後、有線指令回線52に障害55が発生したものとする(S25)。そして、交換機211は、ステップS23から周期Ta経過後に、
指令受信装置42に対して有線指令回線52を介してPB信号を送出する(S26)。但し、障害55のために、
指令受信装置42は、当該PB信号を受信できず、それ故、応答信号も送出しない。
【0047】
指令受信装置42は、直前にPB信号を受信してから時間Tb経過するまでに次のPB信号を受信できないために、有線指令回線52に何らかの障害55が発生したことを検出する(S27)。ここで、時間Tbは周期Taより長いものとする。
【0048】
また、交換機211は、ステップS26から周期Ta経過後に、
指令受信装置42に対して有線指令回線52を介してPB信号を送出する(S28)。ここでも、障害55のために、
指令受信装置42は、当該PB信号を受信できず、それ故、応答信号も送出しない。その後、交換機211は、ステップS26から時間Tc経過するまでに
指令受信装置42から応答信号を受信できないために、有線指令回線52に何らかの障害55が発生したことを検出する(S29)。ここで、時間Tcは周期Taより長いものとする。指令受信処理システム40に対して緊急車両出動のための無線バックアップ指令により通知すべく、無線装置22に対して指示を行い、無線基地局222から無線指令回線53及び54を介して無線信号が送出される。
【0049】
続いて、障害55が発生した有線指令回線52と接続された指令受信処理システム40における動作について
図6、
図7、
図8及び
図9を用いて説明する。尚、
図7〜
図9は、指令受信処理システム40の詳細な構成について符号を付して記載している。具体的には、指令受信装置42は、アンプ起動制御回路421、指令音声制御回路422、復旧制御回路423、指令回線障害検出回路424、起動端子425、指令音声端子426、外部確受端子427、指令回線障害通知接点端子428を備える。これらは、指令受信装置32の各構成要素と同等の機能を有する。また、無線受令機43は、起動トーン信号検出回路431、指令音声伝送回路432、復旧トーン信号検出回路433、起動通知接点端子434、指令音声端子435、復旧通知接点端子436を備える。これらは、無線受令機33の各構成要素と同等の機能を有する。
【0050】
図6は、本発明の実施の形態2にかかる障害が発生した有線指令回線と接続された指令受信処理システムの動作の流れを示すシーケンス図である。まず、指令回線障害検出回路424は、有線指令回線52の障害55を検出する(S301)。そして、指令回線障害検出回路424は、指令回線障害通知接点端子428を閉じる(S302、
図7の接続C1)。ここで、
図7は、本発明の実施の形態2にかかる指令回線障害検出回路の動作を説明するための図である。併せて、指令回線障害検出回路424は、アンプ起動制御回路421及び指令音声制御回路422へ障害検出通知を出力する。
【0051】
続いて、起動トーン信号検出回路431は、無線指令回線54を介して受信された起動トーン信号を検出する(S303)。そして、起動トーン信号検出回路431は、起動通知接点端子434を閉じる(S304、
図8の接続C2)。ここで、
図8は、本発明の実施の形態2にかかる起動トーン検出回路の動作を説明するための図である。これにより、起動端子425と起動通知接点端子434とを用いた回路が形成され、アンプ起動信号441がONとなる。よって、アンプ起動制御回路421から放送制御装置41へアンプ起動信号441が出力される(S305)。その結果、放送制御装置41は、アンプを起動する(S306)。
【0052】
その後、指令音声伝送回路432は、無線指令回線54を介して受信された指令音声信号を検出し(S307)、指令音声制御回路422へ指令音声信号を送出する(S308)。そして、指令音声制御回路422は、指令音声信号442を放送制御装置41へ出力する。その結果、放送制御装置41は、無線バックアップ指令に基づく指令音声を放送する(S309)。
【0053】
続いて、無線指令音声が終了すると無線受令機43は、復旧トーン信号を受信する。復旧トーン信号検出回路433は、無線指令回線54を介して受信された復旧トーン信号を検出する(S310)。そして、復旧トーン信号検出回路433は、復旧通知接点端子436を閉じる(S311、
図9の接続C3)。ここで、
図9は、本発明の実施の形態2にかかる復旧トーン検出回路の動作を説明するための図である。このとき、指令受信装置42の指令回線障害通知接点端子428及び無線受令機43の指令音声端子426が指令受信装置42の外部確受端子427にループ接続されており、接続回路が全て閉じることとなる。つまり、第1の回路が形成され、アンプ停止信号443がONとなる。よって、復旧制御回路423から放送制御装置41へアンプ停止信号443が出力される(S312)。その結果、放送制御装置41は、アンプを停止する(S313)。併せて、復旧制御回路423は、回線を開放等する(S314)。つまり、復旧制御回路423は、放送制御装置41に対して強制復旧制御により復旧処理を行い無線バックアップ指令を復旧し、完了する。
【0054】
続いて、障害が発生していない有線指令回線51と接続された指令受信処理システム30における動作について
図10、
図11、
図12及び
図13を用いて説明する。ここでは、交換機211は、指令受信処理システム40とは異なる指令、特に、より長い音声指令を指令受信処理システム30に対して有線指令回線51を介して送信するものとする。つまり、指令受信処理システム30は、無線指令回線53と有線指令回線51とで異なる指令が通知されるものとする。例えば、交換機211は、指令受信処理システム40に対しては、音声指令が相対的に短い救急指令を無線基地局222により無線バックアップ指令として送出しており、指令受信処理システム30に対しては、音声指令が相対的に長い火災指令を有線指令回線51を介して送出している場合を示す。つまり、指令受信処理システム30は、有線回線51を介して受信する指令開始信号に基づく指令処理の種類(例えば、火災指令)と、無線回線53を介して受信された復旧指示信号により指示される復旧処理の対象となる指令処理の種類(例えば、救急指令)とが異なるものとする。
【0055】
図10は、本発明の実施の形態2にかかる正常な有線指令回線と接続された指令受信処理システムの動作の流れを示すシーケンス図である。まず、指令回線障害検出回路324は、有線指令回線51を所定の間隔で監視するが、障害が検出されないため、指令回線障害通知接点端子328を閉じない(
図11の未接続C4)。すなわち、指令回線障害検出回路324は、指令回線障害通知接点端子328の開放を維持する。そのため、第1の回路は開いた状態となる。ここで、
図11は、本発明の実施の形態2にかかる指令回線障害検出回路の動作を説明するための図である。
【0056】
次に、起動トーン信号検出回路331は、無線指令回線53を介して受信された起動トーン信号を検出する(S401)。そして、起動トーン信号検出回路331は、起動通知接点端子334を閉じる(S402、
図12の接続C5)。ここで、
図12は、本発明の実施の形態2にかかる起動トーン検出回路の動作を説明するための図である。
【0057】
このとき、指令受信装置32の指令回線障害検出回路324が有線指令回線51の障害を検出していないので、無線受令機33からの起動トーン信号によるアンプ起動制御は行われない(S403)。そこで、アンプ起動制御回路321は、起動トーン信号を検出する(S404)。これにより、アンプ起動信号341がONとなる。よって、アンプ起動制御回路321から放送制御装置31へアンプ起動信号341が出力される(S405)。その結果、放送制御装置31は、アンプを起動する(S406)。
【0058】
その後、指令音声伝送回路332は、無線指令回線54を介して受信された指令音声信号を検出し(S407)、指令音声制御回路322へ指令音声信号を送出する(S408)。しかし、このときも当該指令音声信号は放送制御装置31へ出力されない。一方、指令音声制御回路322は、有線指令回線51を介して受信された指令音声信号を検出し(S409)、指令音声信号342を放送制御装置31へ出力する。その結果、放送制御装置31は、有線指令回線51を介して受信された指令音声を放送する(S411)。
【0059】
ここで、ステップS411により放送制御装置31が指令音声を放送中に、無線基地局222が指令受信処理システム40向けの復旧トーン信号を送出する場合がある。このとき、復旧トーン信号検出回路333は無線指令回線53を介して受信した復旧トーン信号を検出する(S412)。そして、復旧トーン信号検出回路333は、復旧通知接点端子336を閉じる(S413、
図13の接続C6)。ここで、
図13は、本発明の実施の形態2にかかる復旧トーン検出回路の動作を説明するための図である。
【0060】
このとき、上述の通り、指令受信装置32の指令回線障害通知接点端子328な及び無線受令機33の復旧通知接点端子336が指令受信装置32の外部確受端子327にループ接続されている。しかし、上述の通り、指令回線障害通知接点端子328は開放が維持されており、回路が開いている。そのため、無線受令機33が復旧トーン信号を受信しても、アンプ停止信号343はONにならず、強制復旧制御が有効にならない。よって、放送制御装置31に対して無線バックアップ指令による復旧処理が行われない。
【0061】
放送制御装置31における指令音声の放送終了後、交換機211は、指令受信処理システム30向けの復旧トーン信号を有線指令回線51を介して送出する。そのため、復旧制御回路323は、有線指令回線51を介して受信した復旧トーン信号を検出し(S414)、アンプ停止信号343がONとなる。よって、復旧制御回路323から放送制御装置31へアンプ停止信号343が出力される(S415)。その結果、放送制御装置31は、アンプを停止する(S416)。併せて、復旧制御回路323は、回線を開放等する(S417)。つまり、復旧制御回路323は、復旧トーン信号により放送制御装置31に対して強制復旧制御により復旧処理を行い、有線指令回線からの復旧により指令を完了する。
【0062】
本発明の実施の形態2により、実施の形態1の効果に加え、既存の指令受信装置に対して、指令回線障害通知接点端子328を流用することが可能なため、容易に実現ができるという効果を奏する。指令受信装置32の内部も指令回線障害検出回路324を修正することだけで実現できる。
【0063】
<発明の実施の形態3>
本発明の実施の形態3は、上述した本発明の実施の形態2の変形例である。上述した本発明の実施の形態2にかかる構成においては、例えば、指令受信装置32の外部確受端子327が強制復旧制御を行うことを指令回線障害通知接点端子328を用いることで、有線指令回線の障害が発生していない署所に対して無線バックアップ指令による強制復旧処理が行われないようにしている。一方、本発明の実施の形態3では、接続制御部が、障害検出部が有線回線の障害を検出するまでの間、有線回線からの復旧指示信号に応じて信号経路を形成する第2の回路との接続を維持し、障害検出部が有線回線の障害を検出した場合、第2の回路との接続から第1の回路との接続へ切り替えるものである。
【0064】
図14は、本発明の実施の形態3にかかる指令受信処理システム30aの構成を示すブロック図である。
図5との違いとしては、指令受信装置32aは、指令回線障害検出回路324aは、有線指令回線51の障害を検出した場合、障害検出通知を復旧制御回路323aに対してもさらに通知する点である。そのため、
図5に比べて指令回線障害通知接点端子328が不要となり、外部確受端子327及び復旧通知接点端子336との接続も不要となる。つまり、指令受信装置32aの指令回線障害検出回路324aにて有線指令回線51による復旧トーン信号または無線バックアップによる復旧トーン信号のどちらかを有効にする機能を備えることで課題を解消することが可能である。そして、指令回線障害検出回路324aによる障害の検出による処理が一元化される。
【0065】
<発明の実施の形態4>
本発明の実施の形態4は、上述した本発明の実施の形態2の変形例である。すなわち、本発明の実施の形態4では、接続制御部は、無線受信装置が指令開始信号を受信した場合に形成される第3の回路との接続と、無線受信装置が受信した音声信号を信号処理装置へ入力する第4の回路との接続とを、第1の回路との接続と共に制御するものである。
【0066】
図15は、本発明の実施の形態4にかかる指令受信処理システム30bの構成を示すブロック図である。
図5との違いとしては、指令受信装置32bは、指令回線障害通知接点端子328に代えて、指令回線障害通知接点端子328a〜328b及び回路328dを有する。また、指令回線障害検出回路324bは、アンプ起動制御回路321b、指令音声制御回路322b及び復旧制御回路323bに対して有線指令回線51の障害検出通知を出力しない。以下に各接続端子の接続関係を説明する。
【0067】
すなわち、起動端子325の一端と起動通知接点端子334の一端とが接続され、起動通知接点端子334の他端と指令回線障害通知接点端子328aの一端とが接続され、指令回線障害通知接点端子328aの他端と起動端子325の他端とが接続されている。起動通知接点端子334及び指令回線障害通知接点端子328aが閉じられることにより、アンプ起動制御回路321bにおけるアンプ起動信号341をONにするための回路が形成される。また、指令音声端子326の一端と指令音声端子335の一端とが接続され、指令音声端子335の他端と指令回線障害通知接点端子328bの一端とが接続され、指令回線障害通知接点端子328bの他端と指令音声端子326の他端とが接続される。指令回線障害通知接点端子328bが閉じられることにより、無線受令機33において無線指令回線53を介してい受信された指令音声信号を指令音声制御回路322bから指令音声信号342として放送制御装置31へ出力することができる。さらに、外部確受端子327の一端と復旧通知接点端子336の一端とが接続され、復旧通知接点端子336の他端と指令回線障害通知接点端子328cの一端とが接続され、指令回線障害通知接点端子328cの他端と外部確受端子327の他端とが接続される。復旧通知接点端子336及び指令回線障害通知接点端子328cが閉じられることにより、復旧制御回路323bにおけるアンプ停止信号343をONにするための回路が形成される。
【0068】
また、指令回線障害検出回路324bは、有線指令回線51の障害を検出した場合、回路328dを閉じることにより、指令回線障害通知接点端子328aから328cを閉じる。これにより、指令回線障害検出回路324bによる障害の検出による処理が一元化される。
【0069】
以上のように本実施の形態である緊急指令システムの各署所に設置される指令受信装置と無線受令機の間の復旧処理用接続回路に指令回線障害通知接点端子をループ回路に加えた構成をとることで、無線バックアップ指令による復旧処理を有線指令回線に障害のある署所にのみ実行することが可能である。
【0070】
<その他の発明の実施の形態>
さらに、本発明は上述した実施の形態のみに限定されるものではなく、既に述べた本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは勿論である。