(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記波状面が、前記基材フィルムの第1の面と、第1の面上に第2の方向に沿って互いに平行に配置された複数の帯状凸部とによって構成されている、請求項1又は請求項2のいずれか記載のフレキシブル性を有する電極シート。
前記複数の透明電極が、第1の方向に沿って互いに平行に配置された複数の第1電極と、第2の方向に沿って互いに平行に配置され、前記複数の第1電極と絶縁された複数の第2電極と、を備えて静電容量方式タッチパネルの電極構造を形成している、請求項1〜8のいずれかに記載のフレキシブル性を有する電極シート。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
タッチパネル101の複数の透明電極110,120が形成された領域の周囲には、
図16、
図17に示すように、複数の透明電極110,120の各々に電気的に接続された複数の引回し配線125が存在する。この引回し配線125は、透明電極110、120の透明導電材料より高い導電性を有する材料でなければならず、上述の導電性高分子やカーボンナノチューブ等のフレキシブル性を有する導電材料は不向きである。通常、引回し配線125には低抵抗材料である金属ペーストが用いられることが多いが、これらは湾曲等の機械的負荷には弱く、タッチパネルを湾曲させると、クラック300が入ったり、電気抵抗が大幅に大きくなったりする(
図18参照)。つまり、上述のようなフレキシブル性を有する透明導電材料を用いて透明電極110,120を形成しても、実際にはタッチ面が曲面であるタッチパネルは実用化できていない。
【0007】
なお、基材フィルム104上に複数の透明電極110,120及び引回し配線125を備えた構成(以下、「電極シート」と呼ぶ)は、タッチパネル用途以外でも用いられている。例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ、照明装置、太陽電池等の各種の光学デバイスにも用いられており、これらについても同様のフレキシブル性に関する問題を有する。
【0008】
従って、本発明の目的は、上記問題を解決することにあって、金属ペーストで形成された引回し配線であっても1方向に十分に湾曲可能な、フレキシブル性を有する電極シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
【0010】
本発明の第1態様によれば、フレキシブル性を有する基材フィルムと、前記基材フィルムの第1の面上にフレキシブル性を有する透明導電材料にて形成された複数の透明電極と、前記複数の透明電極が形成された領域の周囲に金属ペーストにて形成され、前記複数の透明電極の各々に電気的に接続された複数の引回し配線とを備え、前記引回し配線のうち第1の方向に沿って形成された部分が、第1の方向と交差する第2の方向に沿って延在する山谷を繰り返す波状面に密着して形成されている、フレキシブル性を有する電極シートを提供する。
【0011】
本発明の第2態様によれば、前記波状面の山と谷の高低差Dが0.1〜100μm、山の幅Wが0.1〜5mmである、第1態様のフレキシブル性を有する電極シートを提供する。
【0012】
本発明の第3態様によれば、前記波状面が、前記基材フィルムの第1の面と、第1の面上に第2の方向に沿って互いに平行に配置された複数の帯状凸部とによって構成されている、第1態様又は第2態様のフレキシブル性を有する電極シートを提供する。
【0013】
本発明の第4態様によれば、前記帯状凸部の材料が、電気絶縁性を有する感光性樹脂である、第3態様のフレキシブル性を有する電極シートを提供する。
【0014】
本発明の第5態様によれば、前記波状面が、前記基材フィルムの第1の面に形成された凹凸部によって構成されている、第1態様又は第2態様のいずれかのフレキシブル性を有する電極シートを提供する。
【0015】
本発明の第6態様によれば、前記凹凸部の材料が、電気絶縁性を有する感光性樹脂である、第5態様のフレキシブル性を有する電極シートを提供する。
【0016】
本発明の第7態様によれば、前記引回し配線の前記金属ペーストの金属材料が、銀、銅、アルミニウム又はニッケルである、第1〜6態様のいずれかのフレキシブル性を有する電極シートを提供する。
【0017】
本発明の第8態様によれば、前記引回し配線の厚みが、0.1〜50μmである、第1〜7態様のいずれかのフレキシブル性を有する電極シートを提供する。
【0018】
本発明の第9態様によれば、前記複数の透明電極が、第1の方向に沿って互いに平行に配置された複数の第1電極と、第2の方向に沿って互いに平行に配置され、前記複数の第1電極と絶縁された複数の第2電極と、を備えて静電容量方式タッチパネルの電極構造を形成している、第1〜8態様のいずれかのフレキシブル性を有する電極シートを提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の電極シートによれば、引回し配線のうち第1の方向に沿って形成された部分が、第1の方向と交差する第2の方向に沿って延在する山谷を繰り返す波状面に密着して形成されているので、電極シートを波状面の山どうしの間の距離を広げるように湾曲させたときに、波状面およびその表面に沿って固定された引回し配線は、より緩やかな波形状になるように変形する。この波形状の変形によって電極シートの湾曲で生ずる応力を吸収することができるので、金属ペーストで形成された引回し配線であってクラックが入ったり、電気抵抗が大幅に大きくなったりすることがない。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明にかかる実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0022】
[第1実施形態]
(電極シートの構成)
まず、本実施形態にかかる電極シートの構成について、相互静電容量方式タッチパネル用途のものを例として挙げ、説明する。
図1は本発明にかかる電極シートの一実施例を示す斜視図であり、
図2は
図1に示す電極シートの非変形時における引回し配線上のA−A線断面図、
図3は
図1に示す電極シートの非変形時における電極構造上のB−B線断面図である。
【0023】
図1〜3に示すように、電極シート1は、基材フィルム4と、基材フィルム4の第1の面上に形成された相互静電容量方式タッチパネルの電極構造9と、電極構造9が形成された領域の周囲に形成された複数の引回し配線25とを備え、引回し配線25のうちX方向に沿って形成された部分が、Xの方向と交差(直交)するY方向に沿って延在する山谷を繰り返す波状面26に密着して形成されている。
【0024】
基材フィルム4は、フレキシブル性を有する両面の平坦な樹脂フィルムであって、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、PC(ポリカードネート)フィルム、COP(シクロオレフィンポリマー)フィルム、PVC(ポリ塩化ビニル)フィルム、COC(シクロオレフィンコポリマー)フィルムなどでよい。とくにCOPフィルムは、光学等方性に優れているだけでなく、寸法安定性、延いては加工精度にも優れている点で好ましい。なお、厚みは、一般に20μm〜0.5mmである。
【0025】
図1、
図3に示す相互静電容量方式タッチパネルの電極構造9は、X方向に沿って互いに平行に配置された複数のX電極10と、その上方に位置してY方向に沿って互いに平行に配置され、複数のX電極10と絶縁された複数のY電極20とで構成されている。また、
図1、
図3において基材フィルム4の前面にX電極10及びY電極20が位置する。
【0026】
図4の模式図に示すように、下方に位置するX電極10は発信側の電極として機能し、上方に位置するY電極20は受信側の電極として機能する。指などの物体200がY電極20側、すなわちタッチ面側に接触していないあるいは近づいていない状態では、発信側のX電極10から受信側のY電極20へ電気力線Lが向かうような電界が形成されている。指などの物体200がこの電界に対して影響する程度にY電極20に近づくと、電気力線Lの一部がY電極20の周囲を回り込んで指などの物体に吸収される。その結果、相互静電容量に変化が生じ、この変化が生じた座標を検知点として検出することができる。なお、LCDからのノイズの影響を取り除くために、X電極10の幅はY電極20よりも広く設定されており、逆にX電極10どうしの間隙はY電極20どうしの間隙よりも狭く設定されている。
【0027】
X電極10とY電極20は、フレキシブル性を有する透明導電材料にて形成されている。透明導電材料としては、光硬化性の樹脂バインダーと導電性ナノ繊維からなる材料が挙げられる。導電性ナノ繊維としては、金、銀、白金、銅、パラジウムなどの金属イオンを担持した前駆体表面にプローブの先端部から印加電圧又は電流を作用させ連続的にひき出して作製した金属ナノワイヤや、ペプチド又はその誘導体が自己組織化的に形成したナノ繊維に金粒子を付加してなるペプチドナノ繊維などがあげられる。また、カーボンナノチューブなどの黒っぽい導電性ナノ繊維であっても、影との色または反射性などに差が認められる場合は使用できる。また、光硬化性樹脂バインダーとしては、ウレタンアクリレート、シアノアクリレートなどが挙げられる。また、透明導電材料として、PEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)等の導電性高分子で形成することができる。
【0028】
基材フィルム4上へのX電極10の形成方法としては、公知技術を用いることができる。例えば、上記の透明導電材料からなるインキを用いて、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、インクジェット印刷法などの印刷法により形成することができる。
【0029】
また、ディップコーティング、スピンコーティング、ロールコーティング、スプレーコーティングなどのコーティング法により、透明導電膜を形成した後、エッチング等により不要な部分を除去するようにしてもよい。さらには、支持フィルム111の上に導電層、接着性を有する感光性樹脂層を積層してなる感光性導電フィルム(ドライフィルムレジスト)を用い、露光・現像することによって電極パターンを形成してもよい。
【0030】
一方、基材フィルム4及びX電極10X上へのY電極20の形成方法としては、X電極10と同様に各種印刷法により形成することができる。また、X電極10と同様に感光性導電フィルム(ドライフィルムレジスト)を用い、露光・現像することによってY電極20を形成してもよい。
【0031】
X電極10とY電極20との絶縁は、両者間にY電極20を支持するように、Y電極20ど同一形状で配置された絶縁膜3によって行なう(
図1、
図3参照)。
【0032】
絶縁膜3を構成する材料としては、感熱接着性又は感圧接着性樹脂に光硬化性を付与した樹脂を用いるとよい。例えば、アクリル樹脂、スチレン樹脂、エポキシ樹脂、アミド樹脂、アミドエポキシ樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂、エステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応で得られるエポキシアクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂と酸無水物の反応で得られる酸変性エポキシアクリレート樹脂等が挙げられる。
【0033】
引回し配線25は、
図1に示すように、X電極10及びY電極20と図示しない制御部との間の電気的信号を伝達する役割を遂行するものであり、電極構造9が形成された領域の周囲、すなわち基材フィルム4の周辺部に配設される。引回し配線25の一端は第1のX電極10及びY電極20の端部と各々接続しており、他端はフレキシブル回路(FPC)等と接続するための接続端子(図示せず)と接続している。
【0034】
引回し配線25は、表示領域外に形成されるので透明性は必要ないが、抵抗値の小さい材料から形成される必要がある。それゆえ、引回し配線25の材料として、好ましくは、X電極10及びY電極20の透明導電材料より高い導電性を有する材料が用いられる。具体的には、金属材料と樹脂材料からなるペースト状の導電性材料によって形成されている。
【0035】
引回し配線25の金属材料に用いられるものとしては、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、クロム、プラチナ、又はこれらの金属のうちのいずれか1種類以上の金属を含む合金、例えばAPC(銀、パラジウム、銅の合金)、MAM(モリブデン、アルミニウム、モリブデンの合金)などが挙げられる。
【0036】
また、引回し配線25の樹脂材料に用いられるものとしては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、ビニルエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、オリゴエステルアクリレート樹脂、キシレン樹脂、ビスマレイドトリアジン樹脂、フラン樹脂、尿素樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、シリコン樹脂、アクリル樹脂、オキセタン樹脂、オキサジン樹脂、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂、ケトン樹脂、ポリスチレン、ポリエステルなどが挙げられる。
【0037】
本発明における引回し配線25の形成方法としては、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷などの印刷方法又は刷毛塗法などが挙げられる。また、引回し配線25として、より細い回路を形成する場合は、ディスペンサーを使用することも出来る。
【0038】
引回し配線25の厚みは、0.1〜50μmとするのが好ましい。引回し配線25の厚みが0.1μmより小さいと、抵抗値が高くなり、タッチパネル性能が十分得られなくなる。また、引回し配線25の厚みが50μmより大きいと、山谷の高低差を埋め。フレキシブル性が得られなくなる。
【0039】
このような引回し配線25のうちX方向に沿って形成された部分が、Y方向に沿って延在する山谷を繰り返す波状面26に密着して形成される(
図1、
図2参照)。本第1実施形態において、波状面26は、基材フィルム4の第1の面と、第1の面上にYの方向に沿って互いに平行に配置された複数の帯状凸部27とによって構成されている。
【0040】
帯状凸部27の材料は、上述の絶縁膜3と同じ電気絶縁性を有する感光性樹脂である、すなわち、感熱接着性又は感圧接着性樹脂に光硬化性を付与した樹脂を用いるとよい。例えば、アクリル樹脂、スチレン樹脂、エポキシ樹脂、アミド樹脂、アミドエポキシ樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂、エステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応で得られるエポキシアクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂と酸無水物の反応で得られる酸変性エポキシアクリレート樹脂等が挙げられる。
【0041】
図2に示す帯状凸部27は、断面形状が台形であり、平坦な山頂面27aと長辺を共有する勾配付き側面27bを備えている。勾配付き側面27bは、勾配付き側面27bの上辺から下辺に向けて次第に帯状凸部27の断面幅が拡大する勾配をなしている。また、帯状凸部27間の間隙には基材フィルム4の平坦な表面が露出している。
【0042】
上記したように引回し配線25のうちX方向に沿って形成された部分が、Y方向に沿って延在する山谷を繰り返す波状面26に密着して形成されているので、電極シート1を波状面26の山頂間の距離を広げるように湾曲させたときに、波状面26およびその表面に沿って固定された引回し配線25は、より緩やかな波形状になるように変形する(
図5参照)。このとき、引回し配線25の山頂間の距離は広がった波形状になっているが、引回し配線25の長さ自体は変わらない。このような波形状の変形によって電極シート1の湾曲で生ずる応力を吸収することができるので、金属ペーストで形成された引回し配線25であってクラックが入ったり、電気抵抗が大幅に大きくなったりすることがない。
【0043】
波状面26は、山と谷の高低差Dが0.1〜100μm、山の幅Wが0.1〜5mmの波とするのが好ましい。山と谷の高低差Dが0.1μmより小さいと、電極シート1を湾曲した時の帯状凸部27の応力吸収効果が十分に得られなくなる。また、山と谷の高低差Dが100μmより大きいと、波状面26に沿って引回し配線25を形成することが難しくなる。一方、山の幅Wが0.1mmより小さいと、波状面26に沿って引回し配線25を形成することが難しくなる。また、山の幅Wが5mmより大きいと、電極シート1を湾曲した時の帯状凸部27の応力吸収効果が十分に得られなくなる。
【0044】
また、帯状凸部27の勾配付き側面27bは、
図2に示す例では、断面が直線状になるように形成されている。なお、勾配付き側面27bは、断面が直線状になるように形成する他に、凸面状または凹面状に形成することもできる。
【0045】
(波状面を形成する方法)
次に、図面を参照しつつ、本実施形態の波状面を形成する方法について説明する。
【0046】
図6は、波状面を形成する工程の一例を示した図である。具体的には、支持フィルム101と、支持フィルム11の上に積層された接着性を有する感光性樹脂層13を含むドライフィルムレジスト14を、相互静電容量方式タッチパネルの電極構造9が形成された基材フィルム4の電極構造9側の面上に感光性樹脂層13が密着するようにラミネートする工程(
図6の(a)参照)と、基材フィルム4上の感光性樹脂層13の所定部分に活性光線L2を照射する露光工程(
図6の(b)参照)と、露光した感光性樹脂層13を現像することにより波状面を形成する現像工程とを備える(
図6の(c)参照)。
【0047】
支持フィルム11は、離型処理を施された表面を有するプラスチックフィルムである。プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、及びポリイミドフィルム等が挙げられる。これらの中で特に好ましいのは寸法安定性に優れる2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムである。離型処理を施された2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、市販されており、それらを使用することができる。離型処理は、シリコーン系離型処理表面の他、非シリコーン系離型処理表面であっても差し支えない。
【0048】
ラミネート工程は、例えば、ドライフィルムレジスト14を、保護フィルムがある場合はそれを除去した後、加熱しながら感光性樹脂層13側を基材フィルム4及び電極構造9の上に圧着することにより積層する方法により行なわれる。なお、この作業は、密着性及び追従性の見地から減圧下で積層することが好ましい。
【0049】
露光工程での露光方法としては、マスク露光法が挙げられる。活性光線L2の光源としては、公知の光源、例えば、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノンランプ等の紫外線、可視光などを有効に放射するものが用いられる。また、Arイオンレーザ、半導体レーザ等の紫外線、可視光などを有効に放射するものも用いられる。更に、写真用フラッド電球、太陽ランプ等の可視光を有効に放射するものも用いられる。
【0050】
露光に用いるマスク5の形状は、上述の帯状凸部27の山頂面27aに対応して型抜きされた複数の透光部5aと、上述の帯状凸部27を形成しない部分を覆う遮光部5dと、上述の勾配付き側面27bに対応する部分を覆い露光量を徐々に変化させるグラデーション部5bと、を備えている(
図7参照)。なお、
図1において波状面26はL字状の領域に形成されているが、
図7のマスクでは便宜的に長方形状の領域として説明している。
【0051】
上記のようなマスク5を用いることにより、未硬化状態の感光性樹脂層13について露光量を部分毎にコントロールする。すなわち、マスク5の透光部5aで覆われた部分の感光性樹脂層13を硬化させ、マスク5の遮光部5dで覆われた部分の感光性樹脂層13は未硬化のまま残す。そしてグラデーション部5bで覆われた部分の感光性樹脂層13を透光部5aから離れるに従い次第に硬化程度が低くなるように半硬化させる。
【0052】
また、レーザ露光法などを用いた直接描画法により、マスク露光法と同様に活性光線L2を照射する方法を採用してもよい。
【0053】
支持フィルム11が活性光線に対して透明である場合には、支持フィルム11を通して活性光線L2を照射することができ、支持フィルム11が遮光性である場合には、支持フィルム11を除去した後に感光性樹脂層13に活性光線L2を照射する。
【0054】
また、電極構造9および基材フィルム4が活性光線に対して透明である場合には、基材フィルム4側から基材フィルム4を通して感光性樹脂層13に活性光線L2を照射することができるが、解像度の点で、感光性樹脂層13に基材フィルム4とは反対側より活性光線L2を照射することが好ましい。
【0055】
本実施形態の現像工程では、感光性樹脂層13が露光量に反比例して除去される。具体的には、感光性樹脂層13上に透明な支持フィルム11が存在している場合には、まず支持フィルム11を除去し、その後、ウェット現像により感光性樹脂層13を露光量に反比例して除去する。これにより、マスク5の透光部5aで覆われていた部分の感光性樹脂層13の硬化部分はそのまま残り、帯状凸部27の山頂面27aが形成される。また、マスク5の遮光部5dで覆われていた未硬化部分は全て除去され、帯状凸部27は形成されない。
【0056】
そしてグラデーション部5bで覆われていた半硬化部分は、硬化程度に応じて残り、帯状凸部27の勾配付き側面27bが形成される。なお、半硬化部分は現像時に潰れるように変形することで、水平方向の変化から垂直(厚み)方向の変化に転換する。
【0057】
ウェット現像は、例えば、アルカリ性水溶液、水系現像液、有機溶剤系現像液等の感光性樹脂に対応した現像液を用いて、スプレー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッピング等の公知の方法により行われる。
【0058】
現像液としては、アルカリ性水溶液等の安全かつ安定であり、操作性が良好なものが用いられる。上記アルカリ性水溶液の塩基としては、例えば、リチウム、ナトリウム又はカリウムの水酸化物等の水酸化アルカリ、リチウム、ナトリウム、カリウム若しくはアンモニウムの炭酸塩又は重炭酸塩等の炭酸アルカリ、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム等のアルカリ金属リン酸塩、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム等のアルカリ金属ピロリン酸塩などが用いられる。また、水又はアルカリ水溶液と一種以上の有機溶剤とからなる水系現像液を用いることができる。さらに、上述した現像液は、必要に応じて、2種以上を併用してもよい。
【0059】
現像の方式としては、例えば、ディップ方式、バトル方式、スプレー方式、ブラッシング、スラッピング等が挙げられる。これらのうち、高圧スプレー方式を用いることが、解像度向上の観点から好ましい。
【0060】
本実施形態の波状面を形成する方法においては、現像後に必要に応じて、露光を行うことにより更に帯状凸部27を硬化してもよい。
【0061】
[第2実施形態]
また、第1実施形態の電極シート1では、波状面26が、基材フィルム4の第1の面と、第1の面上にYの方向に沿って互いに平行に配置された複数の帯状凸部27とによって構成されている場合を例としたが、本発明はこれに限定されない。例えば、波状面26が、基材フィルム4の第1の面に形成された凹凸部28によって構成されるようにしても良い(第2実施形態)。
【0062】
(電極シートの構成)
以下、本実施形態にかかる電極シート31の構成について説明する。なお、第1実施形態に示す電極シート1と同じ構成には同じ参照番号を付してその説明を省略する。以下、第1実施形態の電極シート1との相違点についてのみ説明する。
図8は本発明にかかる電極シートの一実施例を示す斜視図であり、
図9は
図8に示す電極シートの引回し配線上のB−B線断面図である。
【0063】
図8に示すように、電極シート31は、基材フィルム4と、基材フィルム4の第1の面上に形成された相互静電容量方式タッチパネルの電極構造9と、電極構造9が形成された領域の周囲に形成された複数の引回し配線25とを備え、引回し配線25のうちX方向に沿って形成された部分が、Xの方向と交差(直交)するY方向に沿って延在する山谷を繰り返す波状面126に密着して形成されている。なお、本実施形態においては、波状面126が基材フィルム4の第1の面に形成された凹凸部28のみによって構成される点が第1実施形態と相違する。
【0064】
凹凸部28の材料は、第1実施形態の帯状凸部27と同様である。
【0065】
図8及び
図9に示す凹凸部28の凸部は、断面形状が台形であり、平坦な山頂面28aと長辺を共有する勾配付き側面28bを備えている。勾配付き側面28bは、勾配付き側面28bの上辺から下辺に向けて次第に凹凸部28の凸部の断面幅が拡大する勾配をなしている。また、凹凸部28の凸部間には、第1実施形態のように基材フィルム4の平坦な表面が露出することはなく、凹凸部28の凹部底面28cが存在する。
【0066】
上記したように引回し配線25のうちX方向に沿って形成された部分が、Y方向に沿って延在する山谷を繰り返す波状面126に密着して形成されているので、電極シート31を波状面の山頂間の距離を広げるように湾曲させれば、電極シート31を波状面の山頂間の距離を広げるように湾曲させたときに、波状面126およびその表面に沿って固定された引回し配線25は、より緩やかな波形状になるように変形する。このとき、引回し配線25の山頂間の距離は広がった波形状になっているが、引回し配線25の長さ自体は変わらない。このような波形状の変形によって電極シート31の湾曲で生ずる応力を吸収することができるので、金属ペーストで形成された引回し配線25であってクラックが入ったり、電気抵抗が大幅に大きくなったりすることがない。
【0067】
また、凹凸部28のみから構成される波状面126は、第1実施形態のように基材フィルム4を露出していないので、基材フィルム4に引回し配線25が直接固定されていない分、電極シート31の湾曲で生ずる応力の影響がより少なくなる。
【0068】
なお、本実施形態においても、波状面126は、第1実施形態同様に、山と谷の高低差Dを0.1〜100μm、山の幅Wを0.1〜5mmの波とするのが好ましい。山と谷の高低差Dが0.1μmより小さいと、電極シート31を湾曲した時の凹凸部28の応力吸収効果が十分に得られなくなる。また、山と谷の高低差Dが100μmより大きいと、波状面126に沿って引回し配線25を形成することが難しくなる。一方、山の幅Wが0.1mmより小さいと、波状面126に沿って引回し配線25を形成することが難しくなる。また、山の幅Wが5mmより大きいと、電極シート31を湾曲した時の凹凸部28の応力吸収効果が十分に得られなくなる。
【0069】
凹凸部28の勾配付き側面28bは、
図9に示す例では、断面が直線状になるように形成されているが、第1実施形態の帯状凸部27と同様に、凸面状または凹面状に形成することもできる。
【0070】
(波状面を形成する方法)
次に、図面を参照しつつ、本実施形態の波状面を形成する方法について説明する。なお、第1実施形態に示す形成工程と同じ構成には同じ参照番号を付してその説明を省略する。
【0071】
図9は、波状面を形成する工程の別の例を示した断面図である。具体的には、第1実施形態と同様のドライフィルムレジスト14を、相互静電容量方式タッチパネルの電極構造9が形成された基材フィルム4の電極構造9側の面上に感光性樹脂層13が密着するようにラミネートする工程(
図9の(a)参照)と、基材フィルム4上の感光性樹脂層13の所定部分に活性光線L2を照射する露光工程(
図9の(b)参照)と、露光した感光性樹脂層13を現像することにより波状面を形成する現像工程とを備える(
図9の(c)参照)。
【0072】
本実施形態のラミネート工程は、第1実施形態と同じである。
【0073】
本実施形態の露光工程は、第1実施形態と使用するマスクが異なる。本実施形態で用いるマスク6の形状は、上述の凹凸部28の山頂面28aに対応して型抜きされた複数の透光部6aと、上述の凹凸部28を形成しない部分を覆う遮光部6dと、上述の凹部底面28cに対応する部分を覆い低露光量をなす低透光部6cと、上述の勾配付き側面28bに対応する部分を覆い、透光部6aと低透光部6cとの間で露光量を徐々に変化させるグラデーション部6bと、を備えている(
図12参照)。なお、
図8において波状面126はL字状の領域に形成されているが、
図12のマスクでは便宜的に長方形状の領域として説明している。
【0074】
上記のようなマスク6を用いることにより、マスク6の透光部6aで覆われた部分の感光性樹脂層13を硬化させ、マスク6の遮光部6dで覆われた部分の感光性樹脂層13は未硬化のまま残す。そして低透光部6cで覆われた部分の感光性樹脂層13を一定の硬化程度で半硬化させ、またグラデーション部6bで覆われた部分の感光性樹脂層13を透光部5aから離れるに従い次第に硬化程度が低くなるように半硬化させる。
【0075】
本実施形態の現像工程では、マスク6の透光部6で覆われていた部分の感光性樹脂層13の硬化部分はそのまま残り、凹凸部28の山頂面28aが形成される。また、マスク6の遮光部6dで覆われていた未硬化部分は全て除去され、凹凸部28は形成されない。
【0076】
そして低透光部6cで覆われていた半硬化部分は、硬化程度に応じて残り、凹凸部28の凹部底面28cが形成される。なお、低透光部6cで覆われていた半硬化部分は現像時に潰れるように変形する。
【0077】
また、グラデーション部6bで覆われていた半硬化部分は、硬化程度に応じて残り、凹凸部28の勾配付き側面28bが形成される。なお、グラデーション部6bで覆われていた半硬化部分は現像時に潰れるように変形することで、水平方向の変化から垂直(厚み)方向の変化に転換する。
【0078】
[その他の変形例]
本発明の電極シートは、第1実施形態及び第2実施形態に示した実施の形態に限定されない。例えば、第1実施形態及び第2実施形態では、相互静電容量方式タッチパネルの電極構造9があらかしめ形成された基材フィルム4に対して波状面26,126を形成する例を示したが、電極構造9の形成と波状面26,126の形成を同時に行なってもよい。
【0079】
この場合の電極構造9の形成方法は、例えば、支持フィルム11の上に電極構造9を形成する領域内のみに積層される導電層12と、支持フィルム11及び導電層12上に積層され、接着性を有する感光性樹脂層13を含むドライフィルムレジスト15を用い、X電極10が形成された基材フィルム4のX電極10側の面上に感光性樹脂層13が密着するようにラミネートする工程と、基材フィルム4上の感光性樹脂層13の所定部分に活性光線L2を照射する露光工程と、露光した感光性樹脂層13を現像することにより導電パターンを形成する現像工程と、を備える。このような工程を経ることにより、Y電極20を形成させるとともに、X電極10とY電極20の間にY電極20を支持するように配置された絶縁膜3を形成させる。なお、X電極10の形成方法は、第1実施形態及び第2実施形態で挙げた各種の方法を用いることが可能である。
【0080】
帯状凸部27や凹凸部28は、第1実施形態及び第2実施形態で述べたように、導電層12を含まないドライフィルムレジスト14の感光性樹脂層13を露光・現像して形成している。したがって、上記した電極構造9を形成する際の露光・現像工程において、帯状凸部27や凹凸部28の形成を同時に行なうことができる。
【0081】
また、別の変形例として、次のような方法で帯状凸部27や凹凸部28を形成することができる。具体的には、感光性樹脂と溶剤とからなるインキ50を凹版ロール51の凹部内に充填し、基材フィルム4上にインキ50を転移させた後に溶剤を蒸発させて乾燥させ、未硬化状態の帯状凸部275を形成させる(
図13a参照)。次に、未硬化状態の帯状凸部275に活性光線L2を照射して硬化させることにより、硬化済みの帯状凸部27とする(
図13b参照)。
【0082】
凹凸部28の場合、同様に、感光性樹脂と溶剤とからなるインキ50を凹版ロール51上に塗布し、基材フィルム4上にインキ50を転移させた後に溶剤を蒸発させて乾燥させ、未硬化状態の凹凸部285を形成させる(
図14a参照)。次に、未硬化状態の凹凸部285に活性光線L2を照射して硬化させることにより、硬化済みの凹凸部28とする(
図14b参照)。
【0083】
さらに、賦形型54を用いて凹凸部28を形成することもできる。まず、上述の感光性樹脂層13を基材フィルム4上に形成した後、賦形型54を押し付けて感光性樹脂層13を変形し、未硬化状態の凹凸部285を形成させる(15a参照)。次に、未硬化状態の凹凸部285に活性光線L2を照射して硬化させることにより、硬化済みの凹凸部28とする。(
図15b参照)。
【0084】
また、別の変形例として、電極構造9と基材フィルム4の位置関係を入れ替えてもよい。第1実施形態及び第2実施形態では、基材フィルム4の前面にX電極10及びY電極20が位置するが、基材フィルム4の背面にX電極10及びY電極20が位置するようにしてもよい。
【0085】
また、別の変形例として、波状面26,126の形成方向を変えてもよい。例えば、第1実施形態及び第2実施形態では、引回し配線25のうちX方向に沿って形成された部分が、Xの方向と交差(直交)するY方向に沿って延在する山谷を繰り返す波状面26,126に密着して形成されているが、XYを逆にしてもよい。すなわち、引回し配線25のうちY方向に沿って形成された部分が、Yの方向と交差(直交)するX方向に沿って延在する山谷を繰り返す波状面26,126に密着して形成することができる。
【0086】
また、波状面26,126の山谷が延在する方向と引回し配線25の配線方向との交差は、直交でなく、斜めに交差していてもよい。
【0087】
また、第1実施形態及び第2実施形態では、波状面26,126を断面台形の山と断面逆台形の谷を交互に連続して並べた形状としているが、これに限定されずその他の波形状としてもよい。たとえば、波状面26,126を断面三角の山と断面V字の谷を交互に連続して並べた形状とすることができるが、第1実施形態及び第2実施形態で示した波形状の方が鋭角でないため、引回し配線25への負担が少なくて済む。
【0088】
最後に、本発明の電極シートは、パターン化された透明電極を有し、各透明電極が引回し配線に接続されていることから、各種の光学デバイスに好適に用いられる。このようなデバイスとしては、タッチパネルや、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ、照明装置、太陽電池等が挙げられる。第1実施形態及び第2実施形態では、タッチパネル用途として相互静電容量方式の例を示したが、自己静電容量方式、抵抗膜方式などのタッチパネル用途でも可能である。