特許第6080425号(P6080425)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6080425
(24)【登録日】2017年1月27日
(45)【発行日】2017年2月15日
(54)【発明の名称】心電波形出力方法及び心電計
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/044 20060101AFI20170206BHJP
【FI】
   A61B5/04 314G
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-178504(P2012-178504)
(22)【出願日】2012年8月10日
(65)【公開番号】特開2014-33940(P2014-33940A)
(43)【公開日】2014年2月24日
【審査請求日】2015年7月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000112602
【氏名又は名称】フクダ電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105050
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲田 公一
(72)【発明者】
【氏名】山田 剛
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 健一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 恒生
(72)【発明者】
【氏名】嶋井 洋介
(72)【発明者】
【氏名】後藤 仁
【審査官】 松本 隆彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−148105(JP,A)
【文献】 特開平11−216119(JP,A)
【文献】 特開2009−207528(JP,A)
【文献】 ホーム>Spring of 2011-モダリティWeb展示会 2011年新製品発表>日本光電工業,インナビネット,2011年,URL,http://www.innervision.co.jp/spring2011/nihonkohden/
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B5/044
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定期間の四肢誘導波形と胸部誘導波形とを、一部の区間の波形を削減して、同一画面に表示又は同一の記録用紙に印刷する削減波形出力ステップと、
前記所定期間の四肢誘導波形と胸部誘導波形とを、前記一部の区間の波形を削減せずに、同一画面に表示又は同一の記録用紙に印刷する非削減波形出力ステップと、
を含
前記削減波形出力ステップでは、前記四肢誘導波形を表示又は印刷する領域と、前記胸部誘導波形を表示又は印刷する領域との割合を可変にする、
心電波形出力方法。
【請求項2】
前記非削減波形出力ステップを行い、
ユーザによって印刷が指示された場合にのみ、前記削減波形出力ステップによって、所定期間の四肢誘導波形と胸部誘導波形とを、一部の区間の波形を削減して、同一の記録用紙に印刷する、
請求項1に記載の心電波形出力方法。
【請求項3】
前記削減波形出力ステップでは、コンティニュアス方式又はコヒーレント方式で、前記所定期間の四肢誘導波形と胸部誘導波形とを、一部の区間の波形を削減して、同一画面に表示又は同一の記録用紙に印刷する、
請求項1又は請求項2に記載の心電波形出力方法。
【請求項4】
測定した心電波形を、表示部に表示するとともに記録用紙に印刷する心電計であって、
前記表示部又は記録用紙に、
所定期間の四肢誘導波形と胸部誘導波形とを、一部の区間の波形を削減して、同一画面に表示又は同一の記録用紙に印刷するとともに、前記所定期間の四肢誘導波形と胸部誘導波形とを、前記一部の区間の波形を削減せずに、同一画面に表示又は同一の記録用紙に印刷し、かつ、前記四肢誘導波形を表示又は印刷する領域と、前記胸部誘導波形を表示又は印刷する領域との割合が可変である、
心電計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心電波形出力方法及び心電計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、心臓疾患の診断指標として、心電図が広く用いられている。心電図は、心臓の電気的な活動を体表面で検出し、それを心電波形として表したものである。この心電波形(心電図)を解析することで、心臓の活動に関する様々な情報を得ることができる。
【0003】
近年では、心電図をデータ化して記録するデジタル心電計の開発により、コンピュータを用いて心電図を自動解析することが可能となっている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−116207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、心電計では、画面サイズや用紙サイズに制限があるので、全ての心電波形を画面に表示したり、記録用紙に印刷するのではなく、一部の区間の波形を削減して、表示及び印刷を行うようになっている。例えば標準12誘導心電図(以下、単に「12誘導心電図」という)においても、解析に用いられる所定期間の心電波形のうちの一部の期間の心電波形のみを、表示及び印刷するようになっている。
【0006】
そのため、ユーザは、削除されて表示や印刷がされなかった波形がどのような状態なのかを、確認することができない。例えば、削除されて表示や印刷がされなかった波形にノイズが乗っていた場合でも、ユーザはそれを確認できないことが多い。
【0007】
この結果、例えば心電計がノイズを検出して「記録不良」と判断してこのことを表示しても、ユーザはそのノイズの乗った波形を見ることができず、その存在すら確認できないといった不都合が生じ得る。また「記録不良」となった場合は、後から12誘導心電図を取り直す必要があり、ユーザや被検者に大きな負担がかかる。
【0008】
本発明の目的は、複数の心電波形成分を一部の区間の波形を削減して同一画面に表示又は同一の記録用紙に印刷する場合でも、ユーザに提供する心電波形の情報の欠落を抑制できる、心電波形出力方法及び心電計を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の心電波形出力方法の一つの態様は、
所定期間の四肢誘導波形と胸部誘導波形とを、一部の区間の波形を削減して、同一画面に表示又は同一の記録用紙に印刷する削減波形出力ステップと、
前記所定期間の四肢誘導波形と胸部誘導波形とを、前記一部の区間の波形を削減せずに、同一画面に表示又は同一の記録用紙に印刷する非削減波形出力ステップと、
を含
前記削減波形出力ステップでは、前記四肢誘導波形を表示又は印刷する領域と、前記胸部誘導波形を表示又は印刷する領域との割合を可変にする
【0010】
本発明の心電計の一つの態様は、
測定した心電波形を、表示部に表示するとともに記録用紙に印刷する心電計であって、
前記表示部又は記録用紙に、
所定期間の四肢誘導波形と胸部誘導波形とを、一部の区間の波形を削減して、同一画面に表示又は同一の記録用紙に印刷するとともに、前記所定期間の四肢誘導波形と胸部誘導波形とを、前記一部の区間の波形を削減せずに、同一画面に表示又は同一の記録用紙に印刷し、かつ、前記四肢誘導波形を表示又は印刷する領域と、前記胸部誘導波形を表示又は印刷する領域との割合が可変である
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複数の心電波形成分を一部の区間の波形を削減して同一画面に表示又は同一の記録用紙に印刷する場合でも、ユーザに提供する心電波形の情報の欠落を抑制できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態の心電計の外観構成を示す斜視図
図2】心電計の要部構成を示すブロック図
図3】コンティニュアス方式の心電波形を示す図
図4】全波形表示を示す図
図5】分割ラインの位置を変化させた様子を示す図
図6】分割ラインの位置を変化させた様子を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0014】
<概略構成>
図1は、本実施の形態の心電計の外観構成を示す斜視図である。心電計100は、本体部110と、表示部120と、から構成されている。本体部110には、入力キー104やプリンタ部105が設けられている。表示部120にはタッチパネル121が設けられている。
【0015】
本実施の形態の場合、タッチパネル121のサイズは、15インチとなっている。15インチのサイズは、概ねA4の用紙サイズに相当する。これにより、本実施の形態の心電計100では、A4サイズの用紙に記録したのと同様のレイアウト及び大きさの心電波形を、タッチパネル121上で見ることができるようになる。
【0016】
図2は、心電計100の要部構成を示すブロック図である。本体部110は、演算部101、測定部102、記憶部103、入力キー104、プリンタ部105及び表示/印刷制御部106を有する。
【0017】
演算部101は、心電図データ処理プログラムを実行することにより、心電波形の形成、及び、心電波形の解析などを行う。また、演算部101は、心電図データ処理プログラムの実行開始、実行停止及び実行条件(閾値など)設定、測定部102などの各種計測機器制御、タッチパネル121やプリンタ部105などの各種周辺機器制御を、入力コマンドに従って行う。
【0018】
測定部102は、被検者(つまり、心電図計測の対象者)に装着される電極部に接続されており、電極部から入力される測定電圧に対して増幅処理などを施し、処理後の測定電圧を演算部101に出力する。因みに、測定部102には、通常、四肢用電極部及び胸部用電極部が接続されており、12誘導心電図を得るために必要な電圧が入力される。
【0019】
記憶部103は、ハードディスクドライブや半導体メモリなどにより構成される。記憶部103は、演算部101により得られた心電波形のデータ及びその解析データを記憶する。また、記憶部103は、測定部102から出力される測定データも記憶しておく。
【0020】
さらに、記憶部103には、タッチパネル121又は入力キー104からユーザによって入力された、心電計100の設定データも記憶される。心電計100は、記憶部103に記憶された設定データに基づいて動作する。
【0021】
タッチパネル121には、メニュー画面や各種の設定画面が表示され、ユーザは、タッチパネル121をタッチ操作することで、メニューの選択や各種の設定を行うことができるようになっている。また、タッチパネル121には、演算部101により得られた心電波形及び解析結果などが表示される。
【0022】
プリンタ部105は、レーザ式やサーマルヘッド式などのプリンタであり、演算部101により得られた心電波形及び解析結果などを、ユーザによる指示に従って印刷する。
【0023】
表示/印刷制御部106は、タッチパネル121の画面に表示する、及び、プリンタ部105で記録用紙に印刷する、心電波形のレイアウトを制御する。つまり、以下で説明する心電波形の表示及び印刷の制御は、主に表示/印刷制御部106によって行われる。
【0024】
<心電波形の表示及び印刷>
次に、本実施の形態の心電計100における、心電波形の表示及び印刷について説明する。ここでは、12誘導検査の心電波形を、15インチのタッチパネル121に表示し、及び、A4サイズの記録用紙に印刷する場合を例にとって説明する。
【0025】
図3は、本実施の形態の心電計100によって表示及び印刷される、コンティニュアス方式の心電波形を示す。図3に示すコンティニュアス方式の心電波形では、12誘導心電波形のうち、四肢誘導波形I、II、III、aVR、aVL、aVFが左側に配置され、胸部誘導波形V1、V2、V3、V4、V5、V6が右側に配置される。これは、波形の振幅を維持しつつ、12誘導波形を一括して1画面に表示及び1枚の記録用紙に印刷するために慣例的に行われている工夫である。
【0026】
そもそも標準的な心電図は、掃引速度25mm/sec、振幅10mm/mVとして表示及び印刷される。この波形サイズが、波形異常(波形1拍の形状の異常)や不整脈(波形1拍毎の間隔などの異常)を診断する際に使われる標準的な大きさである。
【0027】
印刷される用紙の大きさは、診療録(カルテ)の大きさ(A4サイズ)と同程度またはこれ以下であり、印刷されるレポートの枚数も合わせて数ページとすることが現実的である。また、12誘導心電図の波形レポート(心電図波形の数拍分の記録)は、四肢誘導6波形、胸部誘導6波形が必要であり、波形サイズや用紙の大きさを勘案して、A4サイズ1ページに記録する場合、左側に四肢誘導6波形、右側に胸部誘導6波形を印刷するようになっている。
【0028】
さらに具体的には、コンティニュアス方式では、10秒間の心電波形のうち、前半の0〜5秒の四肢誘導波形を左側に表示及び印刷し、続く後半の5〜10秒の胸部誘導波形を右側に表示及び印刷するようになっている。このように、コンティニュアス方式では、所定期間(例えば10秒間)の四肢誘導波形と胸部誘導波形とを、一部の区間(例えば前半5秒間、又は、後半5秒間)の波形を削減して、同一画面に表示又は同一の記録用紙に印刷するようになっている。
【0029】
ここで、コンティニュアス方式において、前半の5秒が四肢誘導、後半の5秒が胸部誘導となっているのは、A4サイズの記録紙に、たとえ誘導が切り替わったとしても全秒数(10秒)の波形をできるだけ記録したいという要求からである。
【0030】
因みに、心電波形の一部の区間の波形を削減して表示及び印刷する別の方式として、コヒーレント方式と呼ばれる方式がある。コヒーレント方式では、10秒間の波形のうち、前半の0〜5秒の四肢誘導波形を左側に表示及び印刷し、前半の0〜5秒の胸部誘導波形を右側に表示及び印刷するようになっている。
【0031】
このコンティニュアス方式及びコヒーレント方式は、限られた大きさの1画面及び1枚の記録用紙の中に、できるだけ波形の振幅を縮めずに、ユーザ(医師)が診断し易いよう、12誘導波形を一括して表示及び印刷可能に心電波形を配置したものであり、従来から広く用いられている表示・記録方式である。
【0032】
しかし、上述したように、これらの方式では、一部の区間の波形が削減されている。そのため、削除されて表示や印刷がされなかった波形がどのような状態なのかを、確認することができない。例えば、削除されて表示や印刷がされなかった波形にノイズが乗っていた場合でも、ユーザはそれを確認できないことが多い。この結果、例えば心電計がノイズを検出して「記録不良」と判断してこのことを表示しても、ユーザはそのノイズの乗った波形を見ることができず、その存在すら確認できないといった不都合が生じ得る。また「記録不良」となった場合は、後から12誘導心電図を取り直す必要があり、ユーザや被検者に大きな負担がかかる。
【0033】
そこで、本実施の形態では、図4に示すように、図3とは別画面で、コンティニュアス方式(又はコヒーレント方式)で削減した一部の区間の波形を削減せずに、つまり、所定期間内(例えば10秒間)の全波形を表示するようになっている。因みに、図4の例では、20秒間の波形が表示されているが、10秒間の波形を表示してもよい。要は、コンティニュアス方式やコヒーレント方式で削減された波形を含む心電波形を、コンティニュアス方式やコヒーレント方式で表示/印刷された画面/用紙とは、別の画面/用紙で出力すればよい。
【0034】
なお、図4の例では全波形(20秒間)を表示するために波形の振幅を小さくし、掃引速度を12.5mm/secとしている。1拍ごとの波形の形状の視認性は劣るが、ノイズの乗った波形の有無を確認することは可能である。
【0035】
このようにすることで、ユーザに提供する心電波形の情報の欠落を抑制でき、ユーザは必要に応じて、より詳細な心電波形の情報を取得できるようになる。
【0036】
加えて、本実施の形態では、四肢誘導波形を表示又は印刷する領域と、胸部誘導波形を表示又は印刷する領域との割合を変化させることができるようになっている。具体的には、図3図5及び図6に示すように、四肢誘導波形と胸部誘導波形とを分割する位置に分割ライン130を表示し、この分割ライン130の位置を変化させることで、四肢誘導波形と胸部誘導波形との割合を変化させるようになっている。分割ライン130の位置は、例えばユーザがタッチパネル121上で分割ライン130を指でドラッグすることで移動できるようにすればよい。
【0037】
図3は、四肢誘導波形と胸部誘導波形とが等しい割合で表示された例を示す。図5は、四肢誘導波形の割合が胸部誘導波形の割合よりも大きくされて表示された例を示す。図6は、四肢誘導波形の割合が胸部誘導波形の割合よりも小さくされて表示された例を示す。
【0038】
このようにすることで、表示の割合を多くすれば、本来削減されて表示されなかった波形を表示できるようになるので、ユーザは必要に応じて、より詳細な心電波形の情報を取得できるようになる。
【0039】
以上説明したように、本実施の形態によれば、一部の区間の波形を削減して表示及び又は印刷するのに加えて、その表示画面及び又は記録用紙とは別の表示画面及び又は記録用紙で、前記一部の区間の波形を削減せずに表示及び又は印刷を行うようにしたことにより、複数の心電波形成分を一部の区間の波形を削減して同一画面に表示又は同一の記録用紙に印刷する場合でも、ユーザに提供する心電波形の情報の欠落を抑制できるようになる。
【0040】
例えば、ユーザは、図4に示したような波形が削減されていない心電波形を見て、ノイズが乗っているか否かを確認し、ノイズが乗っている場合には、図3に示すような一部の波形が削減された波形レポートを印刷しないように操作すれば、無駄な印刷をしなくて済むようになる。また、心電波形を取り直さなければならないことがその場でわかり、迅速に対応できる。
【0041】
なお、上述の実施の形態では、タッチパネル121を採用したが、これに限らず、表示部と入力部が分かれて構成されていてもよい。例えば、上述の実施の形態のような画像を表示部に表示し、マウスカーソルを用いて分割ライン130の位置を移動させてもよい。
【0042】
以上、本発明の実施の形態について説明した。なお、以上の説明は本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されない。つまり、上記実施の形態において説明した装置の構成および動作は例であり、これらを本発明の範囲において部分的に変更、追加および削除できることは明らかである。
【符号の説明】
【0043】
100 心電計
101 演算部
102 測定部
103 記憶部
104 入力キー
105 プリンタ部
106 表示/印刷制御部
110 本体部
120 表示部
121 タッチパネル
130 分割ライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6