(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
動力付加制御手段は、第1回転数と第2回転数との間の回転数で駆動するエンジンの回転数が第1回転数に近づくに従ってアクチュエータに対して付加する電動機の動力を低下させる
ことを特徴とする請求項1に記載の作業機械。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1乃至
図4は、本発明の一実施形態を示すものである。
【0013】
本発明の作業機械としての移動式クレーン1は、
図1に示すように、走行する車両10と、クレーン装置20と、を備えている。
【0014】
車両10は、車輪11を有し、図示しないエンジン、または、エンジンおよび後述するモータジェネレータを動力源として走行する。また、車両10の前側および後側の左右両側には、クレーン作業時に車両10の転倒を防止するとともに、車両10を安定的に支持するためのアウトリガ12が設けられている。アウトリガ12は、幅方向外側に移動可能であるとともに、油圧式のジャッキシリンダ13によって下方に伸長可能である。アウトリガ12は、下端を接地させることにより車両10を地面に対して安定的に支持する。
【0015】
クレーン装置20は、車両10の前後方向略中央部に水平面上を旋回可能に設けられた旋回台21と、旋回台21に対して起伏可能に設けられるとともに、伸縮可能に設けられたブーム22と、ブーム22の先端側から垂下されるワイヤロープ23と、ワイヤロープ23の巻き込みまたは繰り出しを行うためのウインチ24と、旋回台21の前側に設けられ、車両10の走行およびクレーン装置20による作業に関する操作を行うためのキャビン25と、を備えている。
【0016】
旋回台21は、ボールベアリング式またはローラベアリング式の旋回サークル21aを介して車両10に対して旋回自在に設けられ、図示しない油圧式の旋回モータによって旋回する。
【0017】
ブーム22は、複数のブーム部材22a,22b,22cおよび最先端側のブーム部材22dからなり、各ブーム部材22a,22b,22cの内部に先端側に隣り合うブーム部材22b,22c,22dが収納可能なテレスコープ式に構成されている。最基端側のブーム部材22aは、基端部が旋回台21のブラケット21cに揺動自在に連結されている。ブーム部材22aとブラケット21cとの間には、油圧式の起伏シリンダ22eが連結されており、起伏シリンダ22eの伸縮動作によってブーム22を起伏させる。また、最基端側のブーム部材22aの内部には、図示しない油圧式の伸縮シリンダが設けられ、伸縮シリンダの伸縮によってブーム22を伸縮させる。
【0018】
フックブロック23aは、ワイヤロープ23の先端側に設けられ、ブーム22の先端部から垂下される。フックブロック23aには吊荷を係止可能であり、フックブロック23aに係止された吊荷がブーム22の先端部から吊り下げられる。
【0019】
ウインチ24は、ワイヤロープ23が巻き掛けられるドラム24aを有し、ドラム24aは図示しない油圧式のウインチモータによって正逆回転可能に構成されている。
【0020】
キャビン25は、旋回台21上のブラケット21cの側方に設けられ、旋回台21と共に旋回する。
【0021】
各ジャッキシリンダ13、旋回モータ、起伏シリンダ22e、伸縮シリンダおよびウインチモータ等のアクチュエータ60は、作動油によって作動する。
図2に示すように、各アクチュエータ60を作動させる作動油は、油圧供給装置30によって供給される。
【0022】
油圧供給装置30は、
図2に示すように、油圧を生じさせるための油圧ポンプ31と、油圧ポンプ31から吐出された作動油を各アクチュエータ60に供給するための作動油回路32と、を備えている。
【0023】
油圧ポンプ31は、
図2に示すように、車両10に設けられ、車両10を走行させる動力を発生させるとともに車輪11に伝達するための動力装置40から取出された動力によって駆動する。油圧ポンプ31は、例えば、斜板式のアキシャルプランジャ油圧ポンプであり、斜板の角度を変更可能な可変容量型の油圧ポンプである。つまり、油圧ポンプ31は、入力される所定の回転数に対して作動油の吐出量が可変に構成されている。本実施形態の油圧ポンプ31では、少なくとも容量を「大」および「小」の二段階に切換え可能である。
【0024】
作動油回路32には、クレーン装置20に設けられたアクチュエータ60(起伏シリンダ、伸縮シリンダ、ウインチモータ)がロータリージョイント33を介して接続されている。また、作動油回路32には、複数のコントロールバルブ(図示せず)が設けられ、各コントロールバルブによって各アクチュエータ60に流入する作動油の流量および流通方向が制御される。各コントロールバルブは、キャビン25内の操作レバーや操作ペダル等の後述する操作入力部51によって操作され、操作入力部51の操作量に応じて作動油の流量の調整が可能である。各コントロールバルブは、ソレノイド等の切換手段を有し、後述するコントローラ50からの信号によって操作が可能である。
【0025】
動力装置40は、動力を発生させるための動力源ユニット41と、動力源ユニット41から出力される動力を、トルクを転換して車輪11側に伝達するためのトルクコンバータ42と、トルクコンバータ42から出力される動力の回転速度およびトルクを変更するためのトランスミッション43と、トランスミッション43から出力される動力を車輪11に伝達するプロペラシャフト44と、プロペラシャフト44に設けられた電気式のリターダ45と、を備えている。
【0026】
動力源ユニット41は、主に車両走行用の動力源であるエンジン41aと、供給された電力によって電動モータとして機能するとともに、エンジン41aの動力によって、または走行中の減速時等に発電機として機能するモータジェネレータ41bと、モータジェネレータ41bで発電された電力を蓄えるとともに、モータジェネレータ41bを電動モータとして機能させる場合に電力を供給可能なバッテリ41cと、バッテリ41cの出力を制御したり、モータジェネレータ41bの動作を制御したりするためのモータジェネレータ駆動制御部41dと、エンジン41aの出力軸とモータジェネレータ41bの入出力軸との連結および連結の解除を切換可能なクラッチ41eと、を備えている。
【0027】
モータジェネレータ41bは、エンジン41aとトルクコンバータ42との間に設けられている。エンジン41aの動力は、クラッチ41eによってエンジン41aの出力軸とモータジェネレータ41bの入出力軸とを連結することにより、モータジェネレータ41bの入出力軸を介してトルクコンバータ42に伝達される。
【0028】
モータジェネレータ駆動制御部41dは、インバータ、昇圧コンバータ、モータ制御部、ジェネレータ制御部等を有している。モータジェネレータ駆動制御部41dは、バッテリ41cの出力を制御してモータジェネレータ41bに電力を供給したり、後述するコントローラ50からの信号に応じてモータジェネレータ41bの機能を発電機または電動モータに切換えたりする。また、モータジェネレータ駆動制御部41dには、外部電源に接続するための電源ケーブル41fが接続可能に設けられている。モータジェネレータ駆動制御部41dは、モータジェネレータ41bを電動モータとして機能させる場合に、電源をバッテリ41cまたは外部電源に切換えることが可能である。
【0029】
トルクコンバータ42は、入力軸に設けられたポンプインペラと、出力軸に設けられたタービンライナと、ポンプインペラとタービンライナとの間に固定されたステータと、を有し、入力軸に入力された動力がオイルを介してトルクが増幅されて出力軸から出力されるものである。トルクコンバータ42の出力側には、トランスミッション43に伝達される動力を取出し可能なPTO(パワーテイクオフ)機構46が設けられ、PTO機構46を介して油圧ポンプ31が連結可能である。PTO機構46は、油圧ポンプ31に対するエンジン41aの出力軸およびトルクコンバータ42の入出力軸との連結と連結の解除の切換えが可能に設けられている。
【0030】
また、移動式クレーン1は、車両10の走行時やクレーン装置20による作業時における油圧供給装置30および動力装置40の制御を行うためのコントローラ50を有している。
【0031】
コントローラ50は、CPU、ROM、RAM等を有している。コントローラ50は、入力側に接続された装置からの入力信号を受信すると、CPUが、入力信号に基づいてROMに記憶されたプログラムを読み出すとともに、入力信号によって検出された状態をRAMに記憶したり、出力側に接続された装置に出力信号を送信したりする。
【0032】
コントローラ50には、各アクチュエータ60に対応するコントロールバルブ(図示せず)と、油圧ポンプ31と、動力源ユニット41と、操作レバーやアクセルペダル等の車両10およびクレーン装置20の操作を行うための操作入力部51と、油圧ポンプ31から吐出される作動油の流量を検出するための流量検出器52と、油圧ポンプ31の吐出側の圧力を検出するための圧力検出器53と、が接続されている。ここで、車両10とクレーン装置20との間で信号を伝達するための信号線は、ロータリージョイント33に備えられたスリップリングを介して接続されている。
【0033】
コントローラ50は、動力源ユニット41から入力されたエンジン41aの回転数に関する信号、油圧ポンプ31の作動油の吐出流量に関する信号および油圧ポンプ31の吐出側の圧力に関する信号に基づいてモータジェネレータ41bの動作を制御するための制御信号を出力する。また、コントローラ50は、エンジン41aの回転数に関する信号に基づいて油圧ポンプ31の容量を「大」または「小」に切換える。
【0034】
以上のように構成された作業機械としての移動式クレーン1において、車両10による走行を行う場合には、主にエンジン41aの動力がプロペラシャフト44に伝達される。また、車両10の走行中において、車速を上げる場合や坂道を上る場合等、大きな出力を要する場合には、電力によってモータジェネレータ41bを駆動させることによりモータジェネレータ41bの動力をアシスト出力としてプロペラシャフト44に伝達する。さらに、車両10の走行中において、車速を下げる場合や坂道を下る場合等、エンジン41aに対する負荷が負となる場合には、プロペラシャフト44によってモータジェネレータ41bを駆動させて発電し、発電された電力をモータジェネレータ駆動制御部41dを介してバッテリ41cに充電する。また、車両10の停車中等のエンジン41aのアイドリング状態では、エンジン41aの動力によってモータジェネレータ41bを駆動させ、発電された電力をモータジェネレータ駆動制御部41dを介してバッテリ41cに充電してもよい。その際、PTO機構46は、油圧ポンプ31に対してエンジン41aの出力軸およびモータジェネレータ41bの入出力軸の連結が解除された状態とする。また、エンジン41aは、モータジェネレータ41bの動力によって始動される。さらに、車両10の走行中に減速させる際には、リターダ45において発電してもよく、この場合発電された電力は、モータジェネレータ駆動制御部41dを介してバッテリ41cに充電される。
【0035】
また、クレーン装置20による作業を行う場合には、トランスミッション43をニュートラルの状態とし、クラッチ41eによってエンジン41aとモータジェネレータ41bとを連結した状態で、PTO機構46によって油圧ポンプ31に対してエンジン41aの出力軸とモータジェネレータ41bの入出力軸を連結した状態とする。
【0036】
クレーン装置20による作業を行う場合のエンジン41aの回転数は、使用者の操作入力部51に対するアクセル操作によって調整され、使用者の操作入力部51に対するアクセル操作がない状態では後述する作業アイドリング回転数で駆動される。クレーン装置20による作業を行う場合の作業の合間の待機状態には、作業アイドリング回転数で駆動するエンジン41aの動力によってモータジェネレータ41bを駆動させ、発電された電力をモータジェネレータ駆動制御部41dを介してバッテリ41cに充電する。また、クレーン装置20による作業を行う場合において、バッテリ41cは外部電源の電力によっても充電が可能である。
【0037】
クレーン装置20による作業を行う場合における油圧ポンプ31は、エンジン41aの出力と必要な作動油の吐出量との関係において容量が変更される。特に、油圧ポンプ31は、後述する第2回転数N2の間の回転数ときに、容量が「大」に設定される。これにより、エンジン41aの回転数を低下させた場合に、作動油の吐出量を大きくすることで、各アクチュエータ60の動作速度の低下を防止する。
【0038】
クレーン装置20による作業を行う場合には、通常の作業時に選択される通常作業モードと、静音性が要求される作業時に選択される低騒音作業モードと、が使用者によって切換え可能である。通常作業モードは、アクセル操作がない状態において、エンジン41aを走行時におけるアイドリング回転数(例えば、500rpm)よりも高い作業アイドリング回転数としての第1回転数N1(例えば、1200rpm)で駆動させるモードである。また、低騒音作業モードは、アクセル操作がない状態において、エンジン41aを走行時におけるアイドリング回転数と第1回転数N1との間の作業アイドリング回転数としての第2回転数N2(例えば、700rpm)で駆動させるモードである。
【0039】
低騒音作業モードにおける第1回転数N1と第2回転数N2との間の回転数でエンジン41aを駆動させる場合には、各アクチュエータ60の動作速度の低下を防止するため、油圧ポンプ31の容量が「大」側に設定される頻度が高くなる。油圧ポンプ31の容量が「大」側に設定された状態では、容量が「小」側に設定された状態よりもエンジン41aに作用する負荷が大きくなる。しかし、低騒音作業モードにおける第1回転数N1と第2回転数N2との間の低回転で駆動するエンジン41aのトルクは、
図3のエンジン41aの回転数とトルクとの関係に示すように、第1回転数N1よりも高回転で駆動するエンジン41aのトルクよりも小さくなる。このため、第1回転数N1と第2回転数N2との間の回転数で駆動するエンジン41aは、不用意にエンジン41aが停止する所謂エンストが生じやすい状態となる。また、エンジン41aの動力によって油圧ポンプ31を駆動させる場合に、モータジェネレータ41bの動力をアシスト出力として付加することが可能であるが、モータジェネレータ41bの駆動率が上昇するとバッテリ41cの電力の消費量が増加する。このため、コントローラ50は、エンジン41aが第1回転数N1と第2回転数N2との間の低回転で駆動している状態で、且つ、エンジン41aから油圧ポンプ31に伝達されるトルクが不足する場合に、油圧ポンプ31の駆動にモータジェネレータ41bの動力を付加するモータジェネレータ駆動制御処理を行う(
図3の斜線の領域)。このときのコントローラ50の動作を
図4のフローチャートを用いて説明する。
【0040】
(ステップS1)
ステップS1においてCPUは、低騒音作業モードが設定されているか否かを判定する。低騒音作業モードが設定されていると判定した場合にはステップS2に処理を移し、低騒音作業モードが設定されていると判定しなかった場合にはモータジェネレータ駆動制御処理を終了する。
【0041】
(ステップS2)
ステップS1において低騒音作業モードが設定されていると判定した場合に、ステップS2においてCPUは、エンジン41aの回転数が第1回転数N1以下であるか否かを判定する。エンジン41aの回転数が第1回転数N1以下であると判定した場合にはステップS3に処理を移し、第1回転数N1以下であると判定しなかった場合にはモータジェネレータ駆動制御処理を終了する。
【0042】
(ステップS3)
ステップS2においてエンジン41aの回転数が第1回転数N1以下であると判定した場合に、ステップS3においてCPUは、エンジン41aから油圧ポンプ31に伝達されるトルクに対するクレーン作業に必要な油圧ポンプ31のトルクの割合が第1所定割合(例えば、80%)以上であるか否かを判定する。第1所定割合以上であると判定した場合にはステップS4に処理を移し、第1所定割合以上であると判定しなかった場合にはモータジェネレータ駆動制御処理を終了する。
ここで、クレーン作業に必要な油圧ポンプ31のトルクは、流量検出器52の検出流量および圧力検出器53の検出圧力を常時監視し、流量検出器52の検出流量および圧力検出器53の検出圧力に基づいて算出される。可変容量型の油圧ポンプ31において、クレーン作業の負荷が大きくなる方向に変化すると、油圧ポンプ31の吐出圧力が大きくなり、吐出流量が小さくなる。一方、クレーン作業の負荷が小さくなる方向に変化すると、油圧ポンプ31の吐出圧力が小さくなり、吐出流量が大きくなる。この油圧ポンプ31の吐出流量および吐出圧力の関係から、必要な油圧ポンプ31のトルクが算出される。
一方、エンジン41aから油圧ポンプ31に伝達されるトルクは、エンジン41aの回転数を常時監視することで、エンジン41aの回転数とトルクとの関係から得られる。また、エンジン41aの回転数に加えてエンジン41aの燃料噴射量を常時監視することにより、より正確なエンジン41aから油圧ポンプ31に伝達されるトルクを得ることが可能となる。
【0043】
(ステップS4)
ステップS3においてエンジン41aから油圧ポンプ31に伝達されるトルクに対するクレーン作業に必要な油圧ポンプ31のトルクの割合が所定割合以上であると判定した場合に、ステップS4においてCPUは、モータジェネレータ41bを駆動してステップS5に処理を移す。
ここで、油圧ポンプ31に対して付加するモータジェネレータ41bの動力は、第1回転数N1と第2回転数N2との間の回転数で駆動するエンジン41aの回転数が第1回転数N1に近づくに従って低下させる。
【0044】
(ステップS5)
ステップS5においてCPUは、エンジン41aから油圧ポンプ31に伝達されるトルクに対するクレーン作業に必要な油圧ポンプ31のトルクの割合が第2所定割合(例えば、80%)以下であるか否かを判定する。第2所定割合以下であると判定した場合にはステップS6に処理を移し、第2所定割合以下であると判定しなかった場合にはステップS5の処理を繰り返す。
【0045】
(ステップS6)
ステップS5においてエンジン41aから油圧ポンプ31に伝達されるトルクに対するクレーン作業に必要な油圧ポンプ31のトルクの割合が第2所定割合以下であると判定した場合に、ステップS6においてCPUは、モータジェネレータ41bの駆動を停止してモータジェネレータ駆動制御処理を終了する。
【0046】
このように、本実施形態の作業機械によれば、低騒音作業モード時に、走行時のアイドリング状態よりも高い第1回転数N1と第1回転数N1よりも低い第2回転数N2との間の回転数でエンジン41aを駆動させているときに、クレーン作業の動力としてモータジェネレータ41bの動力を付加可能とし、第1回転数N1よりも高い回転数でエンジン41aを駆動させているときに、クレーン作業の動力としてモータジェネレータ41bの動力の付加を制限している。これにより、低回転数で駆動するエンジン41aの動力によるクレーン作業時に、作業負荷による不用意なエンジン41aの停止を防止することができるとともに、モータジェネレータ41bを駆動させる頻度を低減することが可能となるので、バッテリ41cの容量が不足した状態となる頻度を低減することができ、静音性の向上および燃料消費量の低減が可能な作業を継続的に行うことができる。
【0047】
加えて、低騒音作業モード時において、エンジン41aのアクセル操作が行われない状態では、エンジン41aを第2回転数N2で駆動させている。これにより、低い作業負荷の作業であれば、アクセル操作をせずに作業を行うことが可能となるので、クレーン作業時における静音性を向上させることができる。
【0048】
また、油圧ポンプ31は、エンジン41aが第2回転数N2で駆動している状態において、少なくとも、第1回転数N1で駆動している場合に比べて容量が大きく設定される。これにより、低回転で駆動するエンジン41aの動力によって油圧ポンプ31を駆動させる場合にも、油圧ポンプ31の作動油の吐出量を低下させることがないので、作業効率の低下を防止することが可能となる。
【0049】
また、低騒音作業モード時において、第1回転数N1と第2回転数N2との間の回転数でエンジン41aが駆動している状態で、エンジン41aの動力のみによって油圧ポンプが駆動している場合に、エンジン41aから油圧ポンプ31に伝達されるトルクに対するクレーン作業に必要な油圧ポンプ31のトルクの割合が第1所定割合以上になると、モータジェネレータ41bの動力を付加して油圧ポンプ31を駆動し、エンジン41aおよびモータジェネレータ41bの動力によって油圧ポンプ31が駆動している場合に、エンジン41aから油圧ポンプ31に伝達されるトルクに対するクレーン作業に必要な油圧ポンプ31のトルクの割合が第2所定割合以下になると、モータジェネレータ41bを停止している。これにより、クレーン作業に必要な油圧ポンプ31のトルクの急激な変動が生じる場合にも、意図せずエンジン41aが停止することはないので、作業効率を向上させることが可能となる。また、モータジェネレータ41bが継続的に運転される状態を防止できるので、バッテリ41cの残容量不足となる状態を生じにくくして静音性の高い作業を行うことが可能となる。また、必要なトルクを安定的に油圧ポンプ31に伝達することができるので、油圧ポンプ31に伝達されるトルクの増減が繰り返される状態を防止することができ、クレーン作業時における操作性を向上させることが可能となる。
【0050】
また、第1回転数N1と第2回転数N2との間の回転数で駆動するエンジン41aの回転数が第1回転数N1に近づくに従って油圧ポンプ31に対して付加するモータジェネレータ41bの動力を低下させている。これにより、モータジェネレータ41bの駆動によって消費される電力量を低減できるとともに、アクセル操作によってエンジン41aの回転数を上昇させる際に、モータジェネレータ41bの駆動を停止する際の油圧ポンプ31に伝達されるトルクの急激な変動を防止することができる。
【0051】
図5は本発明の他の実施形態を示すものである。なお、前記実施形態と同様の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0052】
本実施形態の移動式クレーン1において、低騒音作業モード時におけるコントローラ50は、エンジン41aが第1回転数N1と第2回転数N2との間の低回転で駆動している場合に、油圧ポンプ31の駆動にモータジェネレータ41bの動力を付加するモータジェネレータ駆動制御処理を行う。このときのコントローラ50の動作を
図5のフローチャートを用いて説明する。
【0053】
(ステップS11)
ステップS11においてCPUは、低騒音作業モードが設定されているか否かを判定する。低騒音作業モードが設定されていると判定した場合にはステップS12に処理を移し、低騒音作業モードが設定されていると判定しなかった場合にはモータジェネレータ駆動制御処理を終了する。
【0054】
(ステップS12)
ステップS11において低騒音作業モードが設定されていると判定した場合に、ステップS12においてCPUは、エンジン41aの回転数が第1回転数N1以下であるか否かを判定する。エンジン41aの回転数が第1回転数N1以下であると判定した場合にはステップS13に処理を移し、第1回転数N1以下であると判定しなかった場合にはステップS14に処理を移す。
【0055】
(ステップS13)
ステップS12においてエンジン41aの回転数が第1回転数N1以下であると判定した場合に、ステップS13においてCPUは、モータジェネレータ41bを駆動してモータジェネレータ駆動制御処理を終了する。
このとき、油圧ポンプ31に対して付加するモータジェネレータ41bの動力は、エンジン41aの回転数と第1回転数N1との差が小さくなるに従って、小さくなるように制御する。
【0056】
(ステップS14)
ステップS12においてエンジン41aの回転数が第1回転数N1以下であると判定しなかった場合に、ステップS14においてCPUは、モータジェネレータ41bの駆動を停止してモータジェネレータ駆動制御処理を終了する。
【0057】
このように、本実施形態の作業機械によれば、前記実施形態と同様に、低騒音作業モード時に、走行モード時のアイドリング状態よりも高い第1回転数N1と第1回転数N1よりも低い第2回転数N2との間の回転数でエンジン41aを駆動させているときに、クレーン作業の動力としてモータジェネレータ41bの動力を付加可能とし、第1回転数N1よりも高い回転数でエンジン41aを駆動させているときに、クレーン作業の動力としてモータジェネレータ41bの動力の付加を制限している。これにより、低回転数で駆動するエンジン41aの動力によるクレーン作業時に、作業負荷による不用意なエンジン41aの停止を防止することができるとともに、モータジェネレータ41bを駆動させる頻度を低減することが可能となるので、バッテリ41cの容量が不足した状態となる頻度を低減することができ、静音性の向上および燃料消費量の低減が可能な作業を継続的に行うことができる。
【0058】
なお、前記実施形態では、主にエンジン41aの動力で駆動し、モータジェネレータ41bの動力をアシスト出力として付加可能なクレーン装置20を備えた移動式クレーン1を作業機械として示したがこれに限られるものではない。主にエンジンの動力で駆動し、電動機の動力をアシスト出力として付加可能な作業装置を備えたものであれば、例えば、高所作業車や掘削機等の作業機械に本発明を適用可能である。
【0059】
また、前記実施形態では、作動油の油圧によってアクチュエータ60を駆動させるようにしたものを示したが、これに限られるものではない。例えば、空気圧によってアクチュエータを駆動させるようにしてもよいし、エンジンの出力軸および電動機の出力軸に直接アクチュエータを連結してアクチュエータを駆動させるようにしてもよい。
【0060】
また、前記実施形態では、可変容量型の油圧ポンプ31の容量を、「大」と「小」の二段階に切換えるようにしたものを示したがこれに限られるものではなく、容量を3段階以上の多段階に切換えるようにしてもよいし、容量を無段階に変更するようにしてもよい。
【0061】
また、前記実施形態では、エンジン41aから油圧ポンプ31に伝達されるトルクに対するクレーン作業に必要な油圧ポンプ31のトルクの割合が第1所定割合以上と判定した場合に、モータジェネレータ41bの駆動を開始し、エンジン41aから油圧ポンプ31に伝達されるトルクに対するクレーン作業に必要な油圧ポンプ31のトルクの割合が第2所定割合以下であると判定した場合に、モータジェネレータ41bの駆動を停止するようにしている。第1所定割合および第2所定割合は、互いに同じ割合であっても異なる割合であってもよい。
【0062】
また、前記実施形態では、クレーン作業に必要な油圧ポンプ31のトルクを、流量検出器52の検出流量および圧力検出器53の検出圧力に基づいて算出するようにしたものを示したがこれに限られるものではない。クレーン作業に必要な油圧ポンプ31のトルクは、例えば、油圧ポンプ31によって駆動される各アクチュエータ60に流量検出器および圧力検出器を設け、各アクチュエータ60の流量検出器の検出流量および圧力検出器の検出圧力に基づいてクレーン作業に必要な油圧ポンプ31のトルクを算出するようにしてもよい。また、各アクチュエータ60を操作するための操作レバーやフットペダル等の操作部の操作量を検出し、検出された操作部の操作量に基づいてクレーン作業に必要な油圧ポンプ31のトルクを算出するようにしてもよい。さらに、通常のクレーン装置に設けられている過負荷防止装置の機能を利用して、ブーム22の起伏角度および伸縮長さ、ブーム22の先端部に作用する荷重を検出し、検出されたブーム22の起伏角度および伸縮長さ、ブームの先端部に作用する荷重に基づいてクレーン作業時に必要な油圧ポンプ31のトルクを推定するようにしてもよい。
【0063】
また、前記実施形態では、PTO機構46をトルクコンバータ42に設けたものを示したが、エンジン41aおよびモータジェネレータ41bの動力が取出し可能であれば、例えば、トランスミッション43やその他ギヤボックスにPTO機構を設けてもよい。また、駆動機構としては、トルクコンバータ42を有さないトランスミッション方式であってもよい。