【実施例1】
【0019】
実施例1について、
図1〜6に基づいて説明する
本実施例では、走行可能な基台部1と、この基台部1に搭載され且つ旋回可能な本体部2等を備えた船舶用走行ジブクレーンJ(荷役装置)を例にして説明する。
このジブクレーンJは、船舶の居住区(図示略)とエンジンケーシング(図示略)との間の上甲板上に走行可能に装備され、食糧やエンジン部品等の揚重物を昇降移動可能に構成されている。
【0020】
まず、基台部1について簡単に説明する。
図1に示すように、船体には幅方向に亙って延びる上下1対のレール部3a,3bが設けられ、これらレール部3a,3bに沿って基台部1が船体の幅方向に走行する。
基台部1は、基台フレーム4と、レール部3aの上部を走行する4つの走行車輪5と、レール部3aの両側部を挟み込む8つのガイド車輪6と、レール部3bの下部を走行する4つの支持車輪7と、レール部3bの両側部を挟み込む8つのガイド車輪8と、走行車輪5を駆動する駆動モータ9等を備えている。
【0021】
基台フレーム4は、基台部1の進行方向両側端部に上下方向に延びる1対の車輪フレーム4aと、進行方向中間部に本体フレーム4bを備えている。
図1に示すように、1対の車輪フレーム4aには、上端部分に走行車輪5とガイド車輪6とが夫々回転可能に枢着され、下端部分に支持車輪7とガイド車輪8とが夫々回転可能に枢着されている。基台部1の進行方向のうち一方側の車輪フレーム4aの上部には、駆動モータ9と、基台部1の走行移動量に応じたケーブルの巻取り又は巻戻しを実行可能なケーブルリール10が搭載されている。
本体フレーム4bの上部には、本体部2が搭載され、この本体部2を上下方向に延びる旋回軸に対して旋回可能な旋回モータ11が配設されている。
【0022】
4つの走行車輪5のうち駆動用の走行車輪5は、片側の車輪フレーム4aに枢着され、この車輪フレーム4aに搭載された駆動モータ9によって回転駆動可能に構成されている。この走行車輪5には、ピニオン12aが設けられ、レール部3aの上部に設けられたラック12bと走行車輪5のピニオン12aとが噛合することによって、基台部1が船体幅方向に走行することができる。駆動モータ9の回転制御は、制御装置(図示略)によって制御される。
【0023】
次に、本体部2について説明する。
本体部2は、基台部1の上部に旋回支持部4cを介して旋回可能に支持され、揚重物を昇降移動する昇降速度が切替え可能に構成されている。本実施例では、揚重物の吊り下げ力が高く且つ昇降速度が低い低速仕様(
図2参照)と、この低速仕様よりも揚重物の吊り下げ力が低く且つ昇降速度が高い高速仕様(
図3参照)の2段階の仕様に切替え可能な本体部2について説明する。
図2,
図3に示すように、この本体部2は、ジブ21と、第1,第2定滑車22,23と、フック付き第1動滑車ブロック30と,第2動滑車ブロック40と、連結機構24(連結手段)と、ワイヤロープ25(ロープ部材)と、ウインチ26等を備えている。
【0024】
ジブ21は、本体フレーム4bから斜め上方に延び、その上部において屈曲して先端方向に向けて水平状に延びる水平部21aが形成されている。この水平部21aが、第1,第2定滑車22,23の固定部を構成している。
水平部21aの略中間部下端には、上限位置において第2動滑車ブロック40を
所定姿勢に位置決めする位置決め部材27が設けられている。この位置決め部材27は、水平部21aの下端から下方へ突出した1対の係合部27aによって構成され、これら1対の係合部27aの向かい合う面は、下方程離間するように傾斜状に形成されている。それ故、1対の係合部27aの向かい合う面と水平部21aの下端面とは台形形状を構成している。
【0025】
第1定滑車22は、水平部21aの基端部に相当するジブ21上部の屈曲部近傍位置に枢支された定滑車によって構成され、第2定滑車23は、第1定滑車22と同様の定滑車によって構成され、水平部21aの先端近傍位置に枢支されている。
【0026】
図2〜
図4に示すように、第1動滑車ブロック30は、所定間隔離隔して対向配置され一体的に連結された1対の側板31と、これら1対の側板31に直交状に支持された回転軸32aに回転自在に枢支された第1動滑車32等を備えている。
第1動滑車ブロック30には、下端部分に正面視にて台形状の台形部31a、上端部分に上方へ突出した突出部31bが夫々形成されている。1対の台形部31aの下端には、揚重物を吊り下げ可能なフック33が固着され、1対の突出部31bには、貫通状のピン孔34が夫々形成されている。
【0027】
図2〜
図4に示すように、第2動滑車ブロック40は、第1動滑車ブロック30に連結機構24を介して連結解除可能に連結され、第2動滑車ブロック40の重量は第1動滑車ブロック30の重量よりも軽量に設定されている。
この第2動滑車ブロック40は、所定間隔離隔して対向配置され一体的に連結された1対の側板41と、これら1対の側板41を直交状に支持された回転軸42aに回転自在に枢支された第2動滑車42等を備えている。
【0028】
第2動滑車ブロック40には、下端部分に下方へ突出し且つ1対の突出部31b内側へ挿入可能な突出部41a、
上部に正面視にて台形状の台形部41b
(上方ほど水平方向幅が減少する台形部41b)が夫々形成されている。1対の突出部41aには、貫通状のピン孔44が夫々形成されている。
第2動滑車ブロック40が上昇移動するとき、第2動滑車ブロック40は、台形部41bの
両側の傾斜部が1対の係合部27aの傾斜面と係合する。これにより、第2動滑車ブロック40は、上限位置まで誘導され、台形部41bの上端が水平部21aの下端に当接し
且つ水平方向へ移動しないように規制された上限姿勢
(所定姿勢)の状態に保持される。
【0029】
図4に示すように、連結機構24は、ピン部材28と、1対の側板31に形成された1対のピン孔34と、1対の側板41に形成された1対のピン孔44とで構成されている。
図2に示す低速仕様に切替えるとき、突出部41aを突出部31bの内側に嵌入させ、ピン部材28をピン孔34,44に挿通させて第1動滑車ブロック30と第2動滑車ブロック40を連結する。その反対に、
図3に示す高速仕様に切替えるとき、ピン部材28をピン孔34,44から取り外して第1動滑車ブロック30と第2動滑車ブロック40を連結解除する。
【0030】
ウインチ26によるワイヤロープ25の巻取り・巻戻し速度をVとし、ウインチ26により駆動されるワイヤロープ25の最大張力をTとし、第1,第2動滑車ブロック30,40の自量を無視して説明すると、次のようになる。
図2に示す低速仕様のとき、揚重物を吊るワイヤロープ25の数(第1,第2動滑車ブロック30,40を吊るワイヤロープ25の数)が4本であるため、最大吊り上げ力は4Tとなり、揚重物を昇降させる昇降速度はV/4になる。
図3に示す高速仕様のとき、揚重物を吊るワイヤロープ25の数(第1,第2動滑車ブロック30,40を吊るワイヤロープ25の数)が2本であるため、最大吊り上げ力は2Tとなり、揚重物を昇降させる昇降速度はV/2になる。つまり、高速仕様のときは、低速仕様のときの2倍の速度で揚重物を昇降させることができる。
【0031】
ワイヤロープ25は、水平部21aにおいて、先端が第2定滑車23よりも基端側且つ1対の係合部27aのうち基端側係合部27aに対応した部分に固着されている。
このワイヤロープ25は、先端側から順に第2動滑車42、第2定滑車23、第1動滑車32、第1定滑車22に巻回され、他端がウインチ26の巻取りドラム26aに連結されている。
ウインチ26は、動力源として回転速度一定の一般的な交流汎用モータ(図示略)を備え、ワイヤロープ25を巻取り又は巻戻し操作可能に構成されている。
【0032】
次に、ジブクレーンJの昇降速度を切替える変更手順について
図5、
図6に基づいて説明する。
図5(a)〜
図5(d)は、低速仕様から高速仕様への切替え手順、
図6(a)〜
図6(d)は、高速仕様から低速仕様への切替え手順を示している。
低速仕様から高速仕様へ変更する場合、
図5(a)に示すように、第1動滑車ブロック30のフック33が地面に到達した基準位置までワイヤロープ25を巻戻して連結状態の第1,第2動滑車ブロック30,40を下降する。第1動滑車ブロック30が基準位置に達した後、ピン部材28をピン孔34,44から取り外し、第1動滑車ブロック30と第2動滑車ブロック40の連結を解除する。
【0033】
次に、ワイヤロープ25を巻取る。ここで、第1動滑車ブロック30の重量は第2動滑車ブロック40の重量よりも重く設定されているため、
図5(b)に示すように、第1動滑車ブロック30が地面に達した基準位置に停止した状態で、ワイヤロープ25の巻取りに同期して第2動滑車ブロック40が単独で上昇移動する。
図5(c)に示すように、ウインチ26の巻取り操作によって第2動滑車ブロック40が上限位置まで上昇されて位置決め部材27に係合してジブ21の水平部21aに位置決めされたとき、第2動滑車ブロック40の上昇移動は停止する。これにより、第2動滑車42が、動滑車から静止状態の定滑車になる。
図5(d)に示すように、第2動滑車ブロック40が上限位置のとき、単一の第1動滑車32を備えた高速仕様のクレーンになる。
【0034】
次に、高速仕様から低速仕様へ変更する場合、
図6(a)に示すように、第1動滑車ブロック30のフック33が地面に達した基準位置までワイヤロープ25を巻戻す。
図6(b)に示すように、第1動滑車ブロック30が基準位置に達した後、ワイヤロープ25を更に巻戻すと、ワイヤロープ25に同期して第2動滑車ブロック40が下降移動を開始する。これにより、第2動滑車42は、ジブ21に連結された静止状態の定滑車から動滑車へ機能が変更される。
【0035】
図6(c)に示すように、第1動滑車ブロック30の1対のピン孔34と第2動滑車ブロック40の1対のピン孔44とを一致させ、ピン部材28をピン孔34,44に夫々挿通して、第1動滑車ブロック30と第2動滑車ブロック40を連結する。
図6(d)に示すように、第1動滑車ブロック30と第2動滑車ブロック40が連結された状態では、第1,第2動滑車30,40を備えた低速仕様のクレーンになる。
【0036】
次に、実施例1に係るジブクレーンJの作用・効果について説明する。
このジブクレーンJによれば、連結機構24の連結・連結解除によって、フック側(揚重物側)の動滑車数を増減でき、これにより、揚重物を巻き上げる最大巻き上げ力と揚重物を昇降させる昇降速度を簡単に迅速に変更できるため、昇降速度切替え作業を容易化でき、作業能率を向上できる。連結機構24を連結解除する際、ウインチ26の巻き上げ力を利用して第2動滑車42を静止状態の定滑車に切替えるため、専用の速度制御回路や速度毎の専用のフック付き動滑車ブロック等を省略することができ、コストを抑制できる。これにより、回転速度切換え機能を具備してない格汎用モータを用いたウインチ26であっても、作業能率向上とコスト抑制とを両立しつつ、揚重物の昇降速度を簡単な機構を介して簡単に切替えることができる。
【0037】
ワイヤロープ25の先端部が、第2定滑車23よりも基端側に固着され、第2動滑車ブロック40を第1動滑車ブロック30の上側近傍に上下配置した状態で、第1,第2動滑車ブロック30,40を連結機構24で連結するように構成している。
これにより、ジブ21の水平部21aの長さを短縮化することができると共に第1動滑車ブロック30と第2動滑車ブロック40とを上下方向に縦2連配置状態にすることができるため、ジブクレーンJをコンパクト化することができる。
【0038】
第1動滑車ブロック30から連結解除された第2動滑車ブロック40をジブ21の水平部21aの直下において所定姿勢に保持する位置決め部材27を水平部21aに設けたため、連結機構24の連結解除操作によって第2動滑車ブロック40を静止状態に切替えたとき、第2動滑車42をジブ21に対して確実に位置決めすることができる。
【0039】
連結機構24が、第1動滑車ブロック30の上端部分と第2動滑車ブロック40の下端部分に形成されたピン孔34,44と、これらピン孔34,44に着脱可能なピン部材28とを備えている。これにより、連結機構24の連結・連結解除をピン部材28の2対のピン孔34,44に対する着脱によって実行できるため、昇降速度切替え作業を一層容易化することができる。
【実施例2】
【0040】
次に、実施例2に係るジブクレーンJAについて
図7〜
図11に基づいて説明する。尚、前記実施例1のジブクレーンJと異なる構成についてのみ説明し、実施例1と同一の部材には同一の符号を付して説明を省略する。
【0041】
実施例1との主な相違点は、実施例1では連結機構24の連結・連結解除を作業者が直接手作業によって行なっていたのに対し、実施例2では直接的に人手を介することなくウインチ26の操作によって連結機構24Aの連結・連結解除を行う点である。
本実施例では、揚重物の吊り下げ力が高く且つ昇降速度が低い低速仕様(
図7参照)と、この低速仕様よりも揚重物の吊り下げ力が低く且つ昇降速度が高い高速仕様(
図8参照)の2段階の仕様に切替え可能な本体部2Aについて説明する。
【0042】
図7,
図8に示すように、第1動滑車ブロック30Aは、所定間隔離隔して対向配置され一体的に連結された1対の側板31Aと、これら1対の側板31Aに直交状に支持された回転軸32aに回転自在に枢支された第1動滑車32等を備えている。
第1動滑車ブロック30Aには、下端部分に正面視にて台形状の台形部31a、上端部分に正面視にて上方突状の突出部31cが夫々形成されている。1対の突出部31cの頂部近傍には、これら1対の突出部31cを直交状に連結する連結ピン35が設けられている。
【0043】
図7,
図8に示すように、第2動滑車ブロック40Aは、第1動滑車ブロック30Aに連結機構24Aを介して連結解除可能に形成され、第2動滑車ブロック40Aの重量は第1動滑車ブロック30Aの重量よりも軽量に設定される。
この第2動滑車ブロック40Aは、所定間隔離隔して対向配置され一体的に連結された1対の側板41Aと、これら1対の側板41Aに直交状に支持された回転軸42aに回転自在に枢支された第2動滑車42と、係合フック50等を備えている。
第2動滑車ブロック40Aには、下端部分に下方へ突出した突出部41c、上端部分に正面視にて台形状の台形部41bが夫々形成されている。1対の突出部41cの頂部近傍には、これら1対の突出部41cに直交状に支持された回動軸45が設けられている。
【0044】
図9に示すように、係合フック50は、回動軸45に回動可能に枢支されたフック本体部51と、このフック本体部51の中段部に搖動可能に枢支されたガイド部材52等を備えている。フック本体部51は、所定間隔離隔して対向配置され一体的に連結された1対の側板によって構成され、連結ピン35に係合可能な係合部51aと、ガイド部材52を搖動可能に枢支する搖動軸53の軸支部51b等が設けられている。
係合部51aは、フック本体部51の片側部分を略U字状に切り欠いて形成されている。軸支部51bは、係合部51aの上側部分に構成され、1対の側板に直交状に支持された搖動軸53が懸架されている。
【0045】
図9に示すように、ガイド部材52は、フック本体部51の1対の側板の外側に略平行状に設けられた1対の枠部52aと、1対の枠部52aの両側端部を夫々連結する搖動規制部52b,52cとを備えている。
1対の枠部52aは、係合部51a側部分の寸法がその反対側部分の寸法よりも短く設定された位置において搖動軸53に枢着されている。それ故、
図9において実線で示すように、ガイド部材52がその自重によって反時計回りに搖動したとき、搖動規制部52bがフック本体部51の下側部分に当接して搖動が制限される。このとき、ガイド部材52は、係合部51aを開放状態にする。また、
図9において仮想線で示すように、連結ピン35の下降動作によってガイド部材52が時計回りに搖動したとき、搖動規制部52cは係合部51aの下部に当接して搖動が制限される。このとき、ガイド部材52は、係合部51aを閉鎖状態にする。
【0046】
本実施例では、連結機構24Aが、連結ピン35と、係合フック50と、ガイド部材52等によって構成されている。
図7に示す低速仕様に切替えるとき、ウインチ26の操作により第1動滑車ブロック30Aを第2動滑車ブロック40Aに対して相対的に上昇させて、連結ピン35を係合部51aよりも高く且つガイド部材52よりも低い高さ位置まで上昇させる。次に、第1動滑車ブロック30Aを下降させることによって、連結ピン35を開放状態の係合部51aに係合する。
【0047】
図8に示す高速仕様に切替えるとき、第1動滑車ブロック30Aを第2動滑車ブロック40Aに対して相対的に上昇させて、連結ピン35をガイド部材52よりも高い高さ位置まで上昇させる。次に、第1動滑車ブロック30Aを下降させることによって、連結ピン35がガイド部材52を時計回りに搖動させて係合部51aを閉鎖状態にする。
これにより、連結ピン35が係合部51aに係合することなく下降され、第1動滑車ブロック30Aが第2動滑車ブロック40Aから連結解除される。
【0048】
次に、ジブクレーンJAの昇降速度を切替える変更手順について
図10、
図11に基づいて説明する。
図10(a)〜
図10(d)は、低速仕様から高速仕様への切替え手順、
図11(a)〜
図11(d)は、高速仕様から低速仕様への切替え手順を示している。
低速仕様から高速仕様へ変更する場合、
図10(a)に示すように、第1動滑車ブロック30Aに連結された第2動滑車ブロック40Aが位置決め部材27に位置決めされた上限位置(基準位置)に到達するまでワイヤロープ25を巻取って第1,第2動滑車ブロック30A,40Aを上昇する。
【0049】
更にワイヤロープ25の巻取りを継続すると、
図10(b)に示すように、第1動滑車ブロック30Aが第2動滑車ブロック40Aに対して相対的に上昇移動し、連結ピン35が係合部51aから係合解除され、ガイド部材52を乗り越えた高さ位置に達する。
連結ピン35がガイド部材52を乗り越えた時点で、ワイヤロープ25の巻取りを停止し、ワイヤロープ25の巻戻しを開始する。
【0050】
図10(c)に示すように、ワイヤロープ25の巻戻しによって、連結ピン35がガイド部材52を時計回りに搖動するため、係合部51aすは閉鎖状態になる。
連結ピン35は、係合部51aを閉鎖したガイド部材52上を下降するため、係合部51aに係合することなく係合部51aを通過する。ガイド部材52は、連結ピン35が係合部51aを通過した時点で、自重により反時計回りに搖動するため、係合部51aは開放状態に戻る。
【0051】
連結ピン35と係合部51aが係合解除されるため、
図10(d)に示すように、第1動滑車ブロック30Aと第2動滑車ブロック40Aの連結が解除され、単一の第1動滑車32を備えた高速仕様のクレーンになる。
【0052】
次に、高速仕様から低速仕様へ変更する場合、
図11(a)に示すように、ワイヤロープ25を巻取り、第1動滑車ブロック30Aを上昇させる。
尚、第1動滑車ブロック30Aの重量が第2シーブブロック40Aの重量よりも重く設定されているため、第2動滑車ブロック40Aが上限位置に到達していない場合、第2動滑車ブロック40Aが第1動滑車ブロック30Aに先行して上昇移動する。
【0053】
図11(b)に示すように、第2動滑車ブロック40Aが停止状態において、ワイヤロープ25の巻取りを継続すると、第1動滑車ブロック30Aが第2動滑車ブロック40Aに対して相対的に上昇移動する。連結ピン35が係合部51aよりも高く且つガイド部材52を乗り越えない高さ位置まで上昇した時点で、ワイヤロープ25の巻取りを停止し、ワイヤロープ25の巻戻しを開始する。
【0054】
図11(c)に示すように、第1シーブブロック30Aが第2動滑車ブロック40Aに対して相対的に下降移動し、これに伴って連結ピン35がガイド部材52に誘導されて開放状態の係合部51aに係合する。
【0055】
図11(d)に示すように、連結ピン35が係合部51aに係合したとき、第1動滑車ブロック30Aと第2動滑車ブロック40Aが連結されるため、第1,第2動滑車30,40を備えた低速仕様のクレーンになる。
【0056】
以上のように、連結機構24Aが、第1動滑車ブロック30Aの上端部分に設けられた連結ピン35と、第2動滑車ブロック40Aに回動可能に装備され且つ連結ピン35と係合可能な係合フック50と、この係合フック50に搖動可能に枢着されたガイド部材52とを備え、ガイド部材52は、係合フック50に係合した連結ピン35が係合フック50に対して相対的に上昇移動するとき、係合フック50からの連結ピン35の係合解除を許容し、係合フック50から係合解除された連結ピン35が係合フック50に対して相対的に下降するとき、連結ピン35の下降動作によって連結ピン35と係合フック50との係合を禁止するように構成されている。それ故、連結機構24Aの連結・連結解除を直接的に人手を介することなくウインチ26の操作によって実行できるため、昇降速度切替え作業を効率化することができる。
【0057】
次に、前記実施例を部分的に変更した変形例について説明する。
1〕前記実施例においては、船舶用走行ジブクレーンの例を説明したが、陸上用ジブクレーンでも良い。また、ジブクレーン以外にも、デリッククレーン、天井クレーン、門型クレーン、トラッククレーン、ホイスト装置(例えば、荷役用、レスキュー用等)、牽引用ウインチ(例えば、車両用、工事用等)等に適用することができる。
【0058】
2〕前記実施例においては、第1動滑車ブロックと第2シーブブロックとを備えた2連式動滑車ブロックの例を説明したが、動滑車を備えた動滑車ブロックを3つ設けてもよく、4つ以上のシーブブロックを設けることも可能である。この場合、夫々の動滑車ブロックに対応した定滑車を設け、ワイヤロープの先端部を最もジブ先端側の定滑車よりも基端側に固定する。動滑車ブロック同士の連結機構は、任意に設定することができる。また、フックが装備された第1動滑車ブロックの重量を連結解除される複数の動滑車ブロックの総重量よりも重く設定する。
【0059】
3〕前記実施例においては、第1動滑車ブロックと第2シーブブロックとが上下方向に配置された縦2連式動滑車ブロックの例を説明したが、第1動滑車ブロックと第2シーブブロックとが横方向に配置された横2連式シーブブロックでも良く、横3連以上の動滑車ブロックも可能である。この場合、夫々の動滑車ブロックに対応した定滑車を設け、ワイヤロープの先端部を最もジブ先端側の定滑車よりも先端側に固定する。また、フックが装備された第1動滑車ブロックを最もジブ基端側のシーブブロックに設定し、第1動滑車ブロックの重量を連結解除される複数の動滑車ブロックの総重量よりも重く設定する。
【0060】
4〕その他、当業者であれ
ば本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施例に種々の変更を付加した形態で実施可能
で、本発明はそのような変更形態も包含するものである。