(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記移動手段を駆動させることによって、または前記把持手段を駆動させることによって前記記録媒体もしくは前記載置部を移動させる駆動力を発生する駆動手段を備えること
を特徴とする請求項1記載のインクジェット記録装置。
【背景技術】
【0002】
インクジェットヘッド(記録ヘッド)のノズルからインクを吐出して、記録媒体に所望の文字や図形を記録(印刷)するインクジェット記録装置(インクジェットプリンタ)について、従来より種々の構成のものが知られている。
【0003】
インクジェット記録装置において記録媒体を搬送する搬送機構には種々の構成が採用されている。一例としてベルト搬送方式は、布や紙等のメディアを搬送する可撓性を有する無端状のベルトを一対のローラに掛け回して、当該ローラを駆動モータにより回転させることで当該ベルトを移動させて、載置した記録媒体を搬送する構成である。
【0004】
他の例として、ロール状の記録媒体を用いる場合等においては、当該ロール状記録媒体が搬送用のベルトを用いずに、繰り出しローラから繰り出され、巻取りローラに巻き取られて搬送される構成も知られている。
【0005】
ところで、上記のベルト搬送においては、ベルトの実際の移動量(フィード量)は、ローラの偏芯やベルトの厚さの不均一により指定フィード量に対してばらつきが生じるため、ローラの回転を検出するロータリーエンコーダを設けて実際の移動量を検出し、その検出信号によってモータの駆動信号を補正する技術が知られている。
【0006】
例えば、記録媒体の搬送に際してローラの偏芯変動やベルトの厚さ変動を補正する技術として特許文献1に開示されたベルト装置が知られている。このベルト装置は、駆動ローラである第1のローラと、従動ローラである第2のローラと、第1のローラ及び第2のローラとの間に掛け回されている無端状のベルトと、第1のローラに前記ベルトを介して対向させて設けた対向ローラとを備えている。第1のローラと対向ローラにはそれぞれロータリーエンコーダが設けられた構成を備えている。これによれば、第1のローラ及び対向ローラにそれぞれ設けたロータリーエンコーダにより検出したベルトの厚さ変動、第1ローラ及び対向ローラの偏芯変動を記憶させておき、この記憶させた変動成分に基づいて駆動モータの駆動信号の補正を行い、ベルトの移動速度変動又は移動速度距離変動が小さくなるように、第1のローラを回転させることができるというものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に例示される構成においては、ベルトの両端を突き合わせて連結し、全体として環状にした構造となっている。このため、無端状のベルトには繋ぎ目が存在し、当該繋ぎ目におけるベルトの厚さ変動は他の部分の厚さ変動に比べて大きくなってしまう。このようなベルトの厚さ変動、さらには、ベルトの表面粗さに起因するすべりの発生、あるいは、ベルトの蛇行等の原因によって、ロータリーエンコーダによる検出値には誤差が生じ、正確な移動量を得ることが困難であるという課題があった。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、記録媒体を搬送するベルトもしくは記録媒体自身の厚さ変動、すべりの発生、蛇行等に影響されることなく、記録媒体の実際の移動量を正確に検出することができる。その検出値に基づいて記録媒体の移動の補正を精緻に行って、インクジェットヘッドからインクが吐出される記録媒体の位置決めを正確に行うことで、高画質の記録が可能なインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施形態として、以下に開示するような解決手段により、前記課題を解決する。
【0011】
開示のインクジェット記録装置は、インクの液滴を吐出する記録ヘッドを備え、該記録ヘッドからインクの液滴を吐出して記録媒体に記録を行うインクジェット記録装置において、前記記録媒体もしくは該記録媒体を載置する載置部を移動させる移動手段と、前記記録媒体もしくは前記載置部の移動を連続的に検出する検出手段と、前記移動手段および前記検出手段の制御を行う制御手段と、を備え、前記検出手段は、前記記録媒体もしくは前記載置部を把持する把持部が設けられた把持手段と、該把持手段の移動を連続的に検出する検出部と、を有し、前記把持手段は、前記把持部によって前記記録媒体もしくは前記載置部を把持することにより、前記記録媒体もしくは前記載置部の移動に連動して移動し、前記制御手段は、
前記移動手段によって前記記録媒体もしくは該記録媒体を載置する載置部が移動する場合に、前記把持手段が前記記録媒体もしくは該記録媒体を載置する載置部を把持するように制御し、前記把持手段が移動したときの前記検出部による検出結果に基づいて、前記移動手段の移動の制御を行うことを特徴とする。
これによれば、把持手段は、把持部によって載置部を把持することにより、載置部の移動に連動して移動することとなる。したがって、このときの把持手段の移動量を検出部によって連続的に検出することにより、極めて正確に載置部の移動量を検出することが可能となる。当該検出値に基づいて移動手段の移動を補正しながら制御することによって、載置部に載置された記録媒体の正確な位置決めが可能となるため、高画質の記録を行うことが可能となる。
なお、上記の作用効果は、載置部に記録媒体を載置して搬送する場合に限定されるものではなく、載置部を備えずに記録媒体を直接搬送する構成の場合にも同様に奏されるものである。
【0012】
また、本発明において、前記移動手段を駆動させることによって、または前記把持手段を駆動させることによって前記載置部を移動させる駆動力を発生する駆動手段を備えることが好ましい。これによれば、駆動手段により移動手段を駆動させて、記録媒体もしくは載置部を移動させることができる。または、駆動手段により把持手段を駆動させ、把持部によって記録媒体もしくは載置部を把持させて移動させることができる。
【0013】
また、本発明において、前記移動手段は、一対のローラであり、前記載置部は、前記一対のローラに掛け回されたベルトであることが好ましい。これによれば、移動手段としてのローラを駆動することによって載置部としてのベルトを移動させることができる。すなわち、把持手段を駆動させない構成とすれば、当該把持手段の構造を駆動力の伝達を行うことを前提とする強固で複雑な構成にする必要がない。したがって、構造の簡素化が可能となる。さらに、把持手段を駆動させて載置部を移動させる場合には、把持部によって把持された箇所において負荷による滑りが発生して、検出精度が低下してしまうおそれがある。しかし、上記の構成によれば、駆動手段の駆動力は移動手段に伝達させ、且つ、把持手段は載置部の移動に連動して移動される構成として、駆動する構成と連動移動する構成とで機能的に分離することによって、把持手段は駆動を行わずに移動量検出のみに専念する構成とすることができるため、当該検出値の精度を向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
開示のインクジェット記録装置によれば、記録媒体を搬送するベルトもしくは記録媒体自身の厚さ変動、すべりの発生、蛇行等に影響されることなく、記録媒体の実際の移動量を正確に検出することができる。したがって、その検出値に基づいて記録媒体の移動の補正を精緻に行うことができるため、インクジェットヘッドからインクが吐出される記録媒体の位置決めを正確に行うことができ、高画質の記録を行うことが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第一の実施形態)
以下、図面を参照して、本発明の第一の実施形態について詳しく説明する。
図1に、本実施形態に係るインクジェット記録装置10の概略図(斜視図)を示す。また、
図2に、当該インクジェット記録装置10のヘッドユニット20周辺の概略図(斜視図)を示す。説明の便宜上、各図において矢印方向でインクジェット記録装置10の前後、左右、および上下方向を示す。
なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0017】
インクジェット記録装置10は、紙、布、樹脂シート(例えば、塩化ビニル、ポリエステル等からなる)等の記録媒体Mの記録面(印刷面)に対して記録ヘッド(インクジェットヘッド)のノズルから液体(ここでは、インク)を吐出することにより文字や図形等の印刷加工を行う装置である。なお、インクには、UV(紫外線)の照射によって硬化するUVインク、水性昇華転写インク等の水性インク、もしくはソルベントインク等の溶剤系インクといった種々のインクを用いることができる。
【0018】
ここで、本実施形態は、記録媒体Mを載置する載置部(ここでは、ベルト)を移動させる移動手段(一対のローラ)を備える構成の例である。
【0019】
本実施形態に係るインクジェットプリンタ10は、
図1、2に示すように、支持脚11により支持された中央ボディ部12と、中央ボディ部12の左側に設けられた左ボディ部13と、中央ボディ部12の右側に設けられた右ボディ部14と、左右ボディ部13、14を繋ぐとともに中央ボディ部12の上側に平行に延びた上ボディ部15とを備えて構成される。中央ボディ部12には、載置部(ここでは、ベルト)30を移動させる移動手段31としての一対のローラ(第1ローラ31Aおよび第2ローラ31B)が設けられている。また、ベルト30の移動を連続的に検出する検出手段40が設けられている(詳細は後述)。
【0020】
左ボディ部13には、その前面側に操作スイッチ類や表示装置類が設けられ、その内部に後述するヘッドユニット20(
図2参照)を左右に移動させる左右移動機構(不図示)、ヘッドユニット20の洗浄等を行うメンテナンスステーション(不図示)、および各構成部材の作動制御を行う制御手段としてのコントロールユニット28等が設けられている。
【0021】
ここで、
図2に示すように、上ボディ部15の内部には左右に延びたガイドレール16が設けられ、このガイドレール16に対して左右に往復移動可能にヘッドユニット20が取り付けられている。このヘッドユニット20は、左右移動機構により駆動されて上ボディ部15の内部においてガイドレール16に沿って左右に搬送移動されるようになっている。
【0022】
一方、
図1に示すように、右ボディ部14の内部には、カートリッジ取付部17が設けられており、このカートリッジ取付部17に対して、インクの色ごとに複数のカートリッジ式のインクタンク18が前面側から着脱可能に取り付けられている。カートリッジ取付部17の内部には、インクタンク18を受容してインクを受け入れる接続部(不図示)が設けられている。そして、この接続部から右ボディ部14および上ボディ部15の内部に設けられたインクチューブ(不図示)が色ごとに記録ヘッドとしてのインクジェットヘッド22(後述)と繋がっており、インクタンク18のインクがインクチューブを介して記録ヘッド22に供給されるようになっている。
【0023】
ヘッドユニット20は、
図2に示すように、キャリッジ21および記録ヘッド22を主体に構成される。キャリッジ21は、その後面がガイドレール16と嵌合しており、ガイドレール16に沿って左右に往復移動自在となっている。記録ヘッド22は、例えばマゼンタ、イエロー、シアンおよびブラックの色毎に構成されており、各記録ヘッドの下面には、下方に向けてインクを吐出する複数のノズル(不図示)が形成されている。
【0024】
次に、載置部としてのベルト30、および移動手段としての一対のローラ31A、31Bについて説明する。
図1、2に示すように、本実施形態においては移動手段31としての第1ローラ31Aおよび第2ローラ31B間に無端状のベルト状部材であるベルト30が掛け回され、第1ローラ31Aを駆動ローラ、第2ローラ31Bを従動ローラとして回転駆動することにより、ベルト30が周回移動する構成となっている。これにより、記録媒体Mはベルト30上に載置されて、ベルト30の移動により搬送される。
【0025】
ここで、ベルト30は、長尺短冊状のベルトの両端をフィンガー状に加工して当該両端を突き合わせ、その上から接着シートをラミネートした構造である。そのため、搬送方向に直交する方向に一定の幅を有する帯状の繋ぎ目(不図示)を有している。当該繋ぎ目の厚さは、それ以外の部分よりも厚くなっている。
【0026】
また、第1ローラ31Aの回転軸には、駆動手段としての電気モータ35が伝達手段(ここでは、ギア)36を介して連結されている。ここで、変形例として、電気モータ35と第1ローラ31Aの回転軸とは、直接、連結される構成としてもよく、あるいは、他の伝達手段(例えば、駆動ベルト)を介して連結される構成としてもよい(不図示)。
なお、駆動手段はステッピングモータ等の電気モータに限定されるものではなく、例えばソレノイド等の他の駆動源を用いてもよい。
【0027】
電気モータ35は、コントロールユニット28により制御されて駆動される。本実施形態においては、後述の検出手段40によるベルト30の実際の移動量の検出信号がコントロールユニット28に入力される。コントロールユニット28は、当該検出信号に基づいて電気モータ35の駆動信号の補正を行うことによって、第1ローラ31Aおよび第2ローラ31B間に掛け回されたベルト30が正確な移動量となるように移動手段31(ここでは、第1ローラ31A)の移動の制御を行う。なお、一例として電気モータ35にはステッピングモータが用いられる。
【0028】
次に、本実施形態に特徴的な検出手段40について、
図2〜4を用いて説明する。ここで、
図3は
図1において検出手段40が取り付けられている箇所(A部)の拡大図であり、
図4は検出手段40の概略図(斜視図)である。なお、本実施形態においては、検出手段40は、ベルト30を挟むように当該ベルト30の左右位置に二つ配設されているが、
図4は、左側の検出手段40(40A)の構成例である。一方、図示しない右側の検出手段40(40B)は、左側の検出手段40(40A)と対称形状となっている。
【0029】
図2〜4に示すように、検出手段40は、ベルト30を把持するための把持部44が設けられた把持手段42と、当該把持手段42の移動を連続的に検出する検出部48とを備えている。ここで、把持部44はベルト30を上下方向から挟持可能に構成されている。また、把持手段42を前後方向に移動させるための直動ガイド41が設けられており、これによって、把持手段42は、ベルト30の移動に連動して前後方向に移動可能に構成されている。
【0030】
ここで、把持部44は、上下方向に相互に密着・解離可能に配設された上グリップ44aと下グリップ44bとを備えている。一例として、上グリップ44aは、これを上下動させる作動ピン47に連結されており、当該作動ピン47に連結されたクリップ部46の一端部をカム45の回動によって上下動させることによって、上下動するように構成されている。下グリップ44bに関しても、上グリップ44aと上下対称の同様構成となっている。したがって、上グリップ44aと下グリップ44bとを上下方向に相互に密着させることによって、上グリップ44aと下グリップ44bとの間を通過するように配設されたベルト30を挟み込んでこれを把持させることができる。
【0031】
上記の構成によれば、移動手段31の駆動によりベルト30が移動する際に、コントロールユニット28からの制御信号によって把持部44でベルト30を把持させることにより、移動するベルト30に連動して把持手段42が前後方向に移動する作用が得られる。
【0032】
また、検出部48は、把持手段42が前後方向に移動する際に、当該移動(移動量)を連続的に検出する構成を備えている。より具体的には、本実施形態に係る検出部48としてのリニアスケールは、ヘッド部48aおよびスケール部48bを備えて構成されている。このリニアスケール48によって、把持手段42の前後方向の移動(移動量)が検出可能となっている。
【0033】
これによれば、把持手段42は把持部44によってベルト30を把持した状態で当該ベルト30と連動して前後方向に移動するため、把持手段42の移動量を検出することで、ベルト30の移動量を検出することができる。本実施形態においては上記の通り、リニアスケール48によって検出を行うことができるため、従来のエンコーダ等による検出機構と比較して、極めて正確にベルト30の移動量を検出することが可能となる。
【0034】
より詳しくは、例えば従来のエンコーダによる検出機構の場合、無端状のベルトには繋ぎ目が存在してベルトの厚さ変動が生じるため、当該ベルトの厚さ変動が原因となって検出値に誤差が生じてしまう課題があった。しかし、本実施形態によれば、ベルト30の移動量を把持手段42の移動量としてリニアスケール48によって検出することができるため、上記のような検出誤差の課題を解決することが可能となる。
また、従来の方式において課題となっていたベルトの表面粗さに起因するすべりの発生を原因とする検出誤差に対しても、本実施形態によれば、把持部44がベルト30を把持して当該ベルト30に連動して移動する構成によって解決することが可能となる。
さらには、従来の方式において課題となっていたベルトの蛇行を原因とする検出誤差に対しても、本実施形態によれば、把持部44がベルト30を把持して当該ベルト30に連動して移動する構成で、且つ、ベルト30の移動量を左右二つの検出手段40A、40Bによって検出する構成によって解決することが可能となる。
【0035】
このように、検出手段40によって極めて正確にベルト30の実際の移動量を検出することが可能となる。したがって、当該検出値に基づいて移動手段31の移動(すなわち電気モータ35の駆動)を精緻に補正しながら、ベルト30すなわちベルト30に載置された記録媒体Mが正確な位置となるように移動手段31の移動(すなわち電気モータ35の駆動)の制御を行うことが可能となる。その結果、記録媒体Mへの高画質の記録を行うことが可能となる。
【0036】
なお、本実施形態においては、検出部48としてリニアスケールを用いているために、長距離の移動量を検出できない問題も考えられなくはない。しかし、検出を行う移動量は、記録媒体Mに対して印刷を行う際の1パス分程度の距離が検出できれば十分であるため、そのような問題は生じない。
【0037】
続いて、以上の構成を備えるインクジェット記録装置10の動作について説明する。
【0038】
通常印刷時において、インクジェット記録装置10は、ベルト30に載置された記録媒体Mに対して、ヘッドユニット20をガイドレール16に沿って左右に往復移動させながら、記録ヘッド22の下面に設けられたノズルから下方に向けてインクの液滴を吐出させて、所望のパターンで記録媒体Mに付着させる。記録媒体M上の所定前後幅に対する印刷が完了すると、移動手段31(駆動ローラである第1ローラ31Aおよび従動ローラである第2ローラ31B)を駆動することによってベルト30を前後にスライド移動させ、再びヘッドユニット20を左右に往復移動させながら、インクの液滴を吐出させる。このような作動を繰り返すことにより、記録媒体Mの印刷領域全体に所望の文字や図柄が印刷される。
【0039】
ここで、記録媒体Mの搬送動作について説明する。
まず、駆動手段としての電気モータ35を駆動させて、駆動ローラである第1ローラ31Aを回転駆動させる。駆動ローラである第1ローラ31Aが回転駆動することによって、駆動ローラである第1ローラ31Aと従動ローラである第2ローラ31Bとの間に掛け回されたベルト30が移動する。これによって、ベルト30上に載置された記録媒体Mが当該ベルト30の移動に伴って搬送される。なお、本実施形態においては、第1ローラ31Aを駆動ローラとしたが、第2ローラ31Bを駆動ローラとして構成してもよい。
【0040】
ここで、ベルト30が移動する際の検出手段40による検出動作について
図5を用いて説明する。
先ず、ベルト30が移動を開始する前の検出手段40(ここでは、左側の検出手段40A)の状態を
図5(a)に示す。次いで、ベルト30が移動を開始するときには、
図5(b)に示すように把持部44によって当該ベルト30を把持させる。この動作は、上グリップ44aと下グリップ44bとを相互に上下方向に密着させることで行う。この状態で、ベルト30が移動を開始すると、ベルト30の移動に連動して、把持部44すなわち把持部44が設けられた把持手段42がベルト30の移動方向と同一方向(図中の前後方向)に移動する(
図5(c)の状態)。
なお、図示しない右側の検出手段40(40B)についても上記と同様の動作となる。
【0041】
ここで、検出手段40による検出値に基づく移動(駆動)制御について説明する。
先ず、上記のベルト30が移動する際に、当該ベルト30と連動して移動する把持手段42の移動量を検出部48(ここでは、リニアスケール)によって連続的に検出する。
【0042】
次に、リニアスケール48によって検出された検出信号に基づいて、移動手段31の移動すなわち電気モータ35の駆動に対して補正を行いながら、第1ローラ31Aおよび第2ローラ31B間に掛け回されたベルト30を移動させる制御を行う。
【0043】
本実施形態によれば、前述の通り、ベルト30の移動を極めて正確に制御できるため、インクの液滴が吐出される記録媒体Mを正確な位置となるように位置決めすることができる。したがって、ロータリーエンコーダ等を用いて移動量を検出して移動の補正を行っていた従来の場合と比較して、実際の移動量の検出値に含まれる誤差を大幅に低減できるため、記録精度を飛躍的に向上させることができるという顕著な効果が奏される。
【0044】
なお、上記の第一の実施形態においては、駆動手段(電気モータ35)による駆動力を駆動ローラ(第1のローラ31A)に伝達させて、移動手段31およびベルト30の移動を行う構成であった。したがって、把持手段42を駆動させない構成であるため、当該把持手段42の構造を駆動力の伝達を行うことを前提とする強固で複雑な構成にする必要がなくなり、構造の簡素化が可能となる。さらに、把持手段42を駆動させてベルト30を移動させる場合には、把持部44によって把持された箇所において負荷による滑りが発生して、検出精度が低下してしまうおそれがあるが、上記の構成によれば、駆動手段35の駆動力は移動手段31に伝達させ、且つ、把持手段42はベルト30の移動に連動して移動される構成として、駆動する構成と連動移動する構成とで機能的に分離することが可能となる。したがって、把持手段42は駆動を行わずに移動量検出のみに専念する構成とすることができるため、当該検出値の精度を向上させることが可能となる。
【0045】
一方、上記構成に対する変形例として、当該駆動力を伝達手段(例えば、駆動ベルト)を介して把持手段42に伝達させて、当該把持手段42を移動させることにより、ベルト30を移動させる構成としてもよい。
【0046】
(第二の実施形態)
続いて、本発明の第二の実施形態に係るインクジェット記録装置10について説明する。
本実施形態は、記録媒体Mを載置する載置部(例えば、第一の実施形態におけるベルト)を備えずに、記録媒体Mの繰り出しを行う繰り出しローラおよび巻き取りを行う巻取りローラを備えて、当該記録媒体Mを直接、搬送する構成の例である。
【0047】
したがって、本実施形態に係るインクジェット記録装置10は、前述の第一の実施形態と基本的な構成は同様であるが、前述の第一の実施形態が記録媒体Mをベルト30上に載置して搬送していたのに対して、記録媒体Mが直接、搬送される点で相違している。以下、当該相違点を中心に本実施形態について説明する。
【0048】
図6に示すように、本実施形態においては、記録前の記録媒体Mが巻回された繰り出しローラ33A、および記録後の記録媒体Mが巻回される巻き取りローラ33Bが設けられている。記録媒体Mは、繰り出しローラ33Aから繰り出されて、移動手段31としての一対のローラ(第1ローラ31Aおよび第2ローラ31B)に掛け渡され、巻き取りローラ33Bによって巻き取られる構成となっている。ここで、符号32は記録媒体Mを駆動ローラ(第1のローラ31A)との間で挟持するピンチローラである。この構成によって、駆動ローラ(第1のローラ31A)からの駆動力が記録媒体Mに伝達されて、当該記録媒体が移動(搬送)される。
【0049】
本実施形態において、検出手段40は、記録媒体Mが移動する際に、把持部44で記録媒体Mを把持させて、記録媒体Mの移動量の検出を行うこととなる。
【0050】
その他の構成、制御方法、および作用効果等については前述の第一の実施形態と同様であるため繰り返しの説明を省略する。
【0051】
なお、上記の第二の実施形態において、駆動手段(電気モータ35)による駆動力を駆動ローラ(第1のローラ31A)に伝達させて、記録媒体Mの移動を行う構成である。したがって、第一の実施形態と同様に把持手段42を駆動させない構成により構造の簡素化と検出精度の向上が可能となる。一方、変形例として、当該駆動力を伝達手段(例えば、駆動ベルト)を介して把持手段42に伝達させて、当該把持手段42を移動させることにより、記録媒体Mを移動させる構成としてもよい。
【0052】
上記の構成を備える第二の実施形態によれば、第一の実施形態と同様に、記録媒体Mの移動を極めて正確に制御できるため、インクの液滴が吐出される記録媒体Mを正確な位置となるように位置決めすることができる。したがって、ロータリーエンコーダ等を用いて移動量を検出して移動の補正を行っていた従来の場合と比較して、実際の移動量の検出値に含まれる誤差を大幅に低減できるため、記録精度を飛躍的に向上させることができるという顕著な効果が奏される。
【0053】
以上説明した通り、開示のインクジェット記録装置10によれば、記録媒体Mを搬送するベルト30もしくは記録媒体M自身の厚さ変動、すべりの発生、蛇行等に影響されることなく、記録媒体Mの実際の移動量を正確に検出することができる。したがって、その検出値に基づいて記録媒体Mの移動の補正を精緻に行うことができるため、インクジェットヘッド22からインクが吐出される記録媒体Mの位置決めを正確に行うことができ、高画質の記録を行うことが可能となる。
【0054】
また、特に、本実施形態によって以下の特徴的な作用効果が奏される。
【0055】
開示のインクジェット記録装置10は、インクの液滴を吐出する記録ヘッド22を備え、記録ヘッド22からインクの液滴を吐出して記録媒体Mに記録を行うインクジェット記録装置において、記録媒体Mもしくは該記録媒体Mを載置する載置部30を移動させる移動手段31と、記録媒体Mもしくは載置部30の移動を連続的に検出する検出手段40と、移動手段31および検出手段40の制御を行う制御手段28と、を備え、検出手段40は、記録媒体Mもしくは載置部30を把持する把持部44が設けられた把持手段42と、該把持手段42の移動を連続的に検出する検出部48と、を有し、把持手段42は、把持部44によって記録媒体Mもしくは載置部30を把持することにより、記録媒体Mもしくは載置部30の移動に連動して移動し、制御手段28は、把持手段42が移動したときの検出部48による検出結果に基づいて、移動手段31の移動の制御を行うことを特徴とする。
これによれば、把持手段42は、把持部44によって載置部30を把持することにより、載置部30の移動に連動して移動することとなる。したがって、このときの把持手段42の移動量を検出部48によって連続的に検出することにより、極めて正確に載置部30の移動量を検出することが可能となる。当該検出値に基づいて移動手段31の移動を補正しながら制御することによって、載置部30に載置された記録媒体Mの正確な位置決めが可能となるため、高画質の記録を行うことが可能となる。
なお、上記の作用効果は、載置部30に記録媒体Mを載置して搬送する場合に限定されるものではなく、載置部30を備えずに記録媒体Mを直接搬送する構成の場合にも同様に奏されるものである。
【0056】
また、本発明において、移動手段31を駆動させることによって、または把持手段42を駆動させることによって載置部30を移動させる駆動力を発生する駆動手段35を備えることが好ましい。これによれば、駆動手段35により移動手段31を駆動させて、記録媒体Mもしくは載置部30を移動させることができる。または、駆動手段35により把持手段42を駆動させ、把持部44によって記録媒体Mもしくは載置部30を把持させて移動させることができる。
【0057】
また、本発明において、移動手段31は、一対のローラ(第1ローラ31Aおよび第2ローラ31B)であり、載置部30は、一対のローラに掛け回されたベルトであることが好ましい。これによれば、移動手段としてのローラ(ここでは、第1ローラ31A)を駆動することによって載置部としてのベルト30を移動させることができる。すなわち、把持手段42を駆動させない構成とすれば、当該把持手段42の構造を駆動力の伝達を行うことを前提とする強固で複雑な構成にする必要がない。したがって、構造の簡素化が可能となる。さらに、把持手段42を駆動させてベルト30を移動させる場合には、把持部44によって把持された箇所において負荷による滑りが発生して、検出精度が低下してしまうおそれがある。しかし、上記の構成によれば、駆動手段35の駆動力は移動手段31に伝達させ、且つ、把持手段42はベルト30の移動に連動して移動される構成として、駆動する構成と連動移動する構成とで機能的に分離することによって、把持手段42は駆動を行わずに移動量検出のみに専念する構成とすることができるため、当該検出値の精度を向上させることが可能となる。
【0058】
なお、本発明は、以上説明した実施形態に限定されることなく、本発明を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。