【実施例1】
【0011】
図1は、本発明の実施例1に係る電力変換装置100の回路図である。電力変換装置100は、平滑部1・2、スナバ部3・4、U相インバータ部10・V相インバータ部20、W相インバータ部30及び制御部50などを有して構成される。
【0012】
なお、この
図1には、当該電力変換装置100電力を供給するための直流電源P、当該直流電源Pから電力変換装置100に供給される直流電源をオン・オフするスイッチSW1・SW2及び電力変換装置の負荷として電動機40が接続されているものとして説明する。
【0013】
平滑部1は、平滑コンデンサC1(第1の平滑コンデンサ)及このコンデンサC1に並列接続されたブリーダ抵抗R1(第1の抵抗)を有して構成される。スイッチSW1・SW2がオン時、直流電源Pから電力変換装置100に対して電圧±E[V]が供給される。この直流電源Pは、整流直後の電源が使用されるため、脈流含んでおり、当該平滑コンデンサC1でこの脈流を吸収して平滑にすると共に、負荷変動があった場合に当該コンデンサC1から変動電力を負荷に供給することにより電圧を一定に保持する効果がある。
【0014】
ブリーダ抵抗R1は、平滑コンデンサC1に並列に接続することにより、常時所定の電流を流し、平滑部1の出力が無負荷時あるいは軽負荷時の出力電圧を安定にする効果がある。
【0015】
スナバ部3は、U相インバータ部10のスイッチング素子Q1(第1のスイッチング素子)〜Q4(第4のスイッチング素子)のオン・オフ時のスパイク電圧を吸収する。スパイク電圧は、高周波成分を有しているため、コンデンサC11を通過した後、ダイオードD11及び抵抗R11で吸収される。
【0016】
インバータ部はU相インバータ部10、V相インバータ部20及びW相インバータ部30を有して構成される。これらのインバータ部の構成は共通であるため、U相インバータ10の構成を説明する。
【0017】
U相インバータ部10は、4個のスイッチング素子Q1〜Q4が、供給される直流電源+E、−Eの両端に対して直列に接続される。スイッチング素子としては、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)などが使用される。このスイッチング素子Q1〜Q4にはそれぞれ逆並列にダイオードD3〜D6(還流ダイオード)が接続される。また、本実施例に示す3レベルインバータには、各相の出力電圧(この場合U相)を中性点にクランプするためのクランプダイオードD1及びD2が接続される。図に示す場合は、スイッチング素子Q2(第2のスイッチング素子)及びQ3(第3のスイッチング素子)をオンすることによりU相の出力電圧(以下、U相電圧と称する。)Vuを中性点にクランプすることができる。詳細は後述する。
【0018】
本実施例ではスイッチング素子Q2及びQ3と並列にそれぞれ抵抗R3(第3の抵抗)及び抵抗R4(第4の抵抗)が接続されている。これは、U相電圧Vuと中性点の間にクランプダイオードD1及びD2を介して抵抗R3及びR4が接続されたことになり、スイッチング素子故障時などの際のU相インバータ出力電圧を安定にしている。
【0019】
V相インバータ部20及びW相インバータ部30もU相インバータ部10と同様であるため、その説明を省略する。
【0020】
制御部50は、U相インバータ部10、V相インバータ部20及びW相インバータ部30を構成する上記スイッチング素子Q1〜Q4のゲート端子と接続され、当該スイッチング素子Q1〜Q4のオン・オフ制御を行う。
【0021】
図2は、インバータ部(U相インバータ部10、V相インバータ部20及びW相インバータ部30の総称)の動作を説明するタイミングチャートである。横軸は各相の位相角[rad]を示す。Q1〜Q4は、U相インバータ部10のスイッチング素子Q1〜Q4のオン(ON)/オフ(OFF)状態を示す。スイッチング素子はオン時コレクタ端子とエミッタ端子が導通し、オフ時遮断される。
【0022】
スイッチング素子Q1〜Q4を、図示したタイミングでオン・オフ制御することにより、U相電圧Vuが得られる。その動作の一例を簡単に説明する。
【0023】
スイッチング素子Q1オン・Q2オン、Q3オフ、Q4オフの時(例えば、
図2のT1の時)、U相電圧Vuは+E[V]が出力される。
【0024】
スイッチング素子Q1オフ、Q2オン、Q3オン、Q4オフの時(例えば、
図2のT2の時)U相電圧Vuは0[V]が出力される。
【0025】
スイッチング素子Q1オフ、Q2オフ、Q3オン、Q4オフの時(例えば、
図2のT3の時)U相電圧Vuは−E[V]が出力される。
【0026】
スイッチング素子Q1オフ、Q2オン、Q3オン、Q4オフの時(例えば、
図2のT4の時)U相電圧Vuは0[V]が出力される。
【0027】
スイッチング素子Q1オン・Q2オン、Q3オフ、Q4オフの時(例えば、
図2のT5の時)U相電圧Vuは+E[V]が出力される。T5は1周期後のT1と同様であり、以下同様に繰り返して出力される。
【0028】
以上の説明で明らかなように、3レベルインバータは+E[V]、0[V]、−E[V]の3レベルの電圧を出力する。
【0029】
制御部50は、U相電圧Vuから2π/3遅れたV相電圧Vvが出力されるように制御する。
【0030】
同様に、制御部50は、V相電圧Vvからさらに2π/3遅れたW相電圧Vwが出力されるように制御する。
【0031】
また、各相の線間電圧は下式で示される。
【0032】
U−V間の線間電圧Vuv: Vuv=Vu−Vv・・・・・・(1)
V−W間の線間電圧Vvw: Vvw=Vv−Vw・・・・・・(2)
W−U間の線間電圧Vwu: Vwu=Vw−Vu・・・・・・(3)
図2から明らかなように、各線間電圧は、最大電圧±2E[V]を有する交流電圧が出力される。
【0033】
ここで、
図1を用いて実施例1に係る放電時間を短縮する方法を説明する。
【0034】
電力変換装置100が運転時は、スイッチSW1及びスイッチSW2がオン状態になっており、上述したとおり、平滑コンデンサC1が充電される。
【0035】
この状態で、電力変換装置100のスイッチSW1及びSW2をオフすると、平滑コンデンサC1の電荷は、ブリーダ抵抗R1を介して図示矢印A1方向に放電する。放電の時定数τ1は下式(4)で示される。
【0036】
τ1=C1・R1・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(4)
本実施例では、上記抵抗R1を介した放電と共に、抵抗R3及びR4を介した放電を行わせるために、制御部50によってスイッチング素子Q1オン、Q2オフ、Q3オフ、Q4オンにすることにより、平滑コンデンサC1に充電された電荷は、コンデンサC1→スイッチング素子Q1→抵抗R3→抵抗R4→スイッチング素子Q4→コンデンサC2の経路を経て放電する。この結果、平滑コンデンサC1の電荷を抵抗R3及びR4を介して図示矢印A2方法に放電させることができる。
【0037】
この時の放電の時定数τ2は、C1、C2が直列接続され、かつ、このコンデンサC1、C2に対して抵抗R3、R4が直列接続されているので下式(5)及び(6)で示される。
【0038】
τ2=(C1・C2/(C1+C2))・(R3+R4)・・(5)
C1=C2、R3=R4の場合
τ2=C1・R3・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(6)
上記(4)式及び(6)式より、コンデンサC1に対しては、抵抗R1及び抵抗R3が並列接続されたものと等価に扱うことができるため、時定数τは、下式(7)で示される。
【0039】
τ=C1・((R1・R3)/(R1+R3))・・・・・・(7)
図3は、実施例1に係る放電特性を示す図である。放電電圧Vは充電電圧をV
0とすると下式(8)で示される。
【数1】
【0040】
感電時の安全電圧V=50[v]
充電電圧V
0=2430[v]
安全電圧に到達するまでの時間(従来時間)ta=543[s]
このときの時定数τaは、上式(8)に数値を代入することにより下式(9)で示される。
【数2】
【0041】
本実施例では、上述した抵抗R3、R4を介した放電を行うことにより、安全電圧に到達するまでの時間taを296[s]にするこができた。このときの時定数τbは、(9)式のtb=296[s]とすることにより下式(10)で示される。
【0042】
τb=296/3.88=76.3・・・・・・・・・・(10)
時定数τでの放電電圧Vτは、上記(8)式のt=τのときの放電電圧であるから、下式(11)で示される。
【数3】
【0043】
図3には、上述した各値をプロットしており、従来の放電特性Aの時定数τa(=139.9)から、上述した抵抗R3、R4を介した放電を行うことにより実施例の放電特性Bの時定数τb(76.3)にすることができ、結果として、放電時間を安全電圧に到達するまでの時間543[s]から296[s]に約45%短縮することができる。
【0044】
実施例1による放電方法は、インバータ回路に内蔵されている抵抗を使用するため、外部に放電するための設備を必要としないだけでなく、放電時間が短縮されることにより、装置内部の点検・修理の際の感電防止の効果が得られる。