(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6080810
(24)【登録日】2017年1月27日
(45)【発行日】2017年2月15日
(54)【発明の名称】二酸化炭素外用剤調製用組成物、その製造方法及び評価方法、並びに二酸化炭素外用剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/73 20060101AFI20170206BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20170206BHJP
A61K 8/20 20060101ALI20170206BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20170206BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20170206BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20170206BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20170206BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20170206BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20170206BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20170206BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20170206BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20170206BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/19
A61K8/20
A61K8/49
A61K8/34
A61K8/02
A61Q19/00
A61K9/70 405
A61K47/36
A61K47/10
A61K47/02
A61K47/22
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-143729(P2014-143729)
(22)【出願日】2014年7月11日
(65)【公開番号】特開2016-20309(P2016-20309A)
(43)【公開日】2016年2月4日
【審査請求日】2015年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】512155803
【氏名又は名称】株式会社アイビーティジェイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大和谷 朱美
(72)【発明者】
【氏名】更家 勝
(72)【発明者】
【氏名】西 亮介
【審査官】
松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2006/080398(WO,A1)
【文献】
特開2003−089615(JP,A)
【文献】
特開昭57−058606(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/057456(WO,A1)
【文献】
特開2007−112726(JP,A)
【文献】
国際公開第2002/080941(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/73
A61K 8/02
A61K 8/19
A61K 8/20
A61K 8/34
A61K 8/49
A61K 9/70
A61K 47/02
A61K 47/10
A61K 47/22
A61K 47/36
A61Q 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも炭酸マグネシウム、塩化カルシウム、マグネシウムイオン又はカルシウムイオンによってゲル化するゲル化剤、加水分解されて酸を生じる物質であってその分子構造内に環状エステル結合を1以上有するもの、多価アルコール及び水を必須成分とする、二酸化炭素外用剤調製用組成物であって、
前記二酸化炭素外用剤調製用組成物全量に対する前記炭酸マグネシウムの含有量は0.3質量%以上12質量%以下であり、前記二酸化炭素外用剤調製用組成物全量に対する前記塩化カルシウムの含有量は0.003質量%以上0.05質量%以下であり、前記二酸化炭素外用剤調製用組成物全量に対する前記マグネシウムイオン又はカルシウムイオンによってゲル化するゲル化剤の含有量は1.0質量%以上7質量%以下であり、前記二酸化炭素外用剤調製用組成物全量に対する前記加水分解されて酸を生じる物質であってその分子構造内に環状エステル結合を1以上有するものの含有量は10質量%以上20質量%以下であり、前記二酸化炭素外用剤調製用組成物全量に対する前記多価アルコールの含有量は5質量%以上25質量%以下である、二酸化炭素外用剤調製用組成物。
【請求項2】
少なくとも前記炭酸マグネシウム及び前記加水分解されて酸を生じる物質であってその分子構造内に環状エステル結合を1以上有するものを別に配合するように、2以上に分けた前記二酸化炭素外用剤調製用組成物を混合後に皮膚上に塗布した場合、混合から塗布時までに塗布表面が固まらず、かつ、使用終了時までに二酸化炭素外用剤調製用組成物が皮膚から剥離可能なようにゲル化する、請求項1に記載の二酸化炭素外用剤調製用組成物。
【請求項3】
膜透過性二酸化炭素発生量が、炭酸マグネシウムを除き塩化カルシウムを炭酸カルシウムに変更してなる前記二酸化炭素外用剤調製用組成物を混合する場合の膜透過性二酸化炭素発生量を超える期間を備えるように、炭酸マグネシウム及び塩化カルシウムを配合した、請求項1又は2に記載の二酸化炭素外用剤調製用組成物。
【請求項4】
少なくとも炭酸マグネシウム、塩化カルシウム、マグネシウムイオン又はカルシウムイオンによってゲル化するゲル化剤、加水分解されて酸を生じる物質であってその分子構造内に環状エステル結合を1以上有するもの、多価アルコール及び水を必須成分とする、請求項1から3のいずれかに記載の二酸化炭素外用剤調製用組成物の製造方法。
【請求項5】
請求項1から3のいずれかに記載の、二酸化炭素外用剤調製用組成物を用いた二酸化炭素外用剤。
【請求項6】
請求項1から3のいずれかに記載の、二酸化炭素外用剤調製用組成物を用いた化粧用パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2以上の剤を使用時に混合する、二酸化炭素外用剤の調製に用いられる組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
美容や医療効果を目的として、炭酸塩を含有する塩基性組成物と水溶性酸等の酸性組成物とを水の存在下において混合し、炭酸ガスを発生させる技術が知られている(特許文献1等参照)。
また、加水分解されて酸を生じる物質、炭酸塩、増粘剤、水、カルシウムイオンによってゲル化するゲル化剤及び水不溶性又は水難溶性カルシウム塩を必須成分にすることにより、二酸化炭素が持続的に経皮・経粘膜吸収され、美容及び医療効果がより強力な二酸化炭素外用剤を容易に調製できることも知られている(特許文献2等参照)。
【0003】
二酸化炭素外用剤調製用組成物は、2以上の剤を使用時に混合し反応させて二酸化炭素を発生させるものである。
さらに、二酸化炭素外用剤調製用組成物を化粧用パック剤に使用する場合は、二酸化炭素外用剤調製用組成物にカルシウムイオンによってゲル化するゲル化剤と、水不溶性又は水難溶性カルシウム塩を添加することで、二酸化炭素外用剤調製用組成物を固めることが可能であることが知られている。
【0004】
しかしながら、前記ゲル化剤と前記水不溶性又は水難溶性カルシウム塩の種類や配合比により、二酸化炭素外用剤調製用組成物のゲル化の速度やゲルの硬さが適度にならない問題があった。すなわち、ゲル化が速すぎると、二酸化炭素外用剤調製用組成物は皮膚等に対する塗布時に伸びが悪くなり、かつ、十分な二酸化炭素を発生させることができないという問題があった。逆に、ゲル化が遅すぎると、二酸化炭素外用剤調製用組成物は皮膚表面から手できれいに剥がすことができず、パック剤として使用しにくいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4248878号公報
【特許文献2】特許第4595058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、2以上の剤の混合直後である皮膚等への塗布時には伸びがよく、従来より知られている成分からなる二酸化炭素外用剤調製用組成物から発生する膜透過性二酸化炭素量よりも多くの膜透過性二酸化炭素を発生させ、かつ、使用時間経過までに固まる新規な二酸化炭素外用剤調製用組成物を提供することを課題とする。また、本発明は、この新規な二酸化炭素外用剤調製用組成物から得られる二酸化炭素外用剤及び化粧用パックを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記事情に鑑みて鋭意検討した結果、マグネシウム塩、水溶性カルシウム塩、マグネシウムイオン又はカルシウムイオンによってゲル化するゲル化剤、炭酸塩、加水分解されて酸を生じる物質、多価アルコール及び水を必須成分とする、二酸化炭素外用剤調製用組成物を見出した。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、マグネシウム塩、水溶性カルシウム塩、マグネシウムイオン又はカルシウムイオンによってゲル化するゲル化剤、炭酸塩、加水分解されて酸を生じる物質、多価アルコール及び水を含有させることで、少なくとも前記炭酸塩及び前記加水分解されて酸を生じる物質を別に配合するように2以上の剤に分けた前記二酸化炭素外用剤調製用組成物を混合後に皮膚上に塗布した場合、混合から塗布時までに塗布表面を触れた手に二酸化炭素外用剤調製用組成物が付着しなくなるような状態に該塗布表面が固まらず、かつ、使用終了時までに二酸化炭素外用剤調製用組成物が肌に残らず剥離可能なようにゲル化する二酸化炭素外用剤調製用組成物を提供することができる。すなわち、二酸化炭素外用剤調製用組成物の皮膚等への塗布時には伸びが良く、使用時間経過後には手で剥離可能な程度に固まる、二酸化炭素外用剤調製用組成物を提供することができる。
また、本発明の二酸化炭素外用剤調製用組成物によれば、マグネシウム塩、水溶性カルシウム塩、マグネシウムイオン又はカルシウムイオンによってゲル化するゲル化剤、炭酸塩、加水分解されて酸を生じる物質、多価アルコール及び水を含有させることで、特許文献2等で知られている成分からなる二酸化炭素外用剤調製用組成物から発生する膜透過性二酸化炭素量を超える量の膜透過性二酸化炭素を発生することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例1及び比較例3における膜透過性二酸化炭素発生量の経時変化を示すグラフ。
【
図2】実施例1及び比較例3におけるpH値の経時変化を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の二酸化炭素外用剤調製用組成物は、2以上の剤を使用時に混合する二酸化炭素外用剤を調製するものであり、マグネシウム塩、水溶性カルシウム塩、マグネシウムイオン又はカルシウムイオンによってゲル化するゲル化剤、炭酸塩、加水分解されて酸を生じる物質、多価アルコール及び水を少なくとも含有し、必要に応じてその他の成分をさらに含有させてもよい。
【0011】
前記マグネシウム塩は、その化学構造式中にマグネシウムを有するものであって水中でマグネシウムイオンを生成するものであれば特に制限はなく、目的により適宜選択することができる。例えば、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、L−アスコルビン酸−2−リン酸エステルマグネシウム、ケイ酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酢酸マグネシウム、リンゴ酸マグネシウム、クエン酸マグネシウムなどが挙げられる。これらは1種で単独使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、炭酸塩などの他の必須成分と兼ねてもよい。中でも炭酸マグネシウムや酸化マグネシウムなどが好ましく、二酸化炭素外用剤調製用組成物の成分として必須である炭酸塩を兼ねる炭酸マグネシウムがさらに好ましい。
【0012】
前記マグネシウム塩の前記二酸化炭素外用剤調製用組成物全量に対する含有量は、特に制限はなく、目的により適宜選択することができる。前記含有量が12質量%を超えると、塗布表面が固まり始める時間もゲル全体が肌に残らず剥がせる程度に固まる時間も短くなりすぎることがある。一方、前記含有量が0.3質量%未満であると、塗布表面が固まり始める時間もゲル全体が肌に残らず剥がせる程度に固まる時間も長くなりすぎるため、0.3質量%以上12質量%未満であることが好ましく、0.5質量%以上11質量%以下であるとさらに好ましい。
【0013】
前記水溶性カルシウム塩は、その化学構造式中にカルシウムを有するものであって水溶性を有し水中でカルシウムイオンを生成するものであれば特に制限はなく、目的により適宜選択することができる。例えば、塩化カルシウム、乳酸カルシウムなどが挙げられる。これらは1種で単独使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、他の必須成分と兼ねてもよい。中でも使用終了時までに二酸化炭素外用剤調製用組成物が手で剥離可能なようにゲル化するカルシウム塩が好ましく、水への溶解度の面から塩化カルシウムがさらに好ましい。
【0014】
前記水溶性カルシウム塩(該水溶性カルシウム塩中の水を除く)の前記二酸化炭素外用剤調製用組成物全量に対する含有量は、特に制限はなく、目的により適宜選択することができる。前記含有量が0.003質量%未満であると、使用終了時間までに二酸化炭素外用剤調製用組成物が十分にゲル化せず剥離しづらくなる。一方、前記含有量が0.05質量%を超えると、混合から塗布時までに塗布表面が固まりやすくなるため、0.003質量%以上0.05質量%以下であることが好ましく、0.003質量%以上0.03質量%以下であるとさらに好ましい。
【0015】
前記マグネシウムイオン又はカルシウムイオンによってゲル化するゲル化剤は、前記マグネシウム塩から生じるマグネシウムイオンや前記水溶性カルシウム塩から生じるカルシウムイオンなどによってゲル化するものであれば特に制限はなく、目的により適宜選択することができる。例えば、カラギーナン、キサンタンガム、タラガム、アルギン酸ナトリウムなどが挙げられる。これらは1種で単独使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。中でも塗布状態のなめらかさや使用しやすさの面から、アルギン酸ナトリウムやキサンタンガムが好ましい。
【0016】
前記マグネシウムイオン又はカルシウムイオンによってゲル化するゲル化剤の前記二酸化炭素外用剤調製用組成物全量に対する含有量は、特に制限はなく、目的により適宜選択することができる。前記含有量が1.0質量%未満であると、前記二酸化炭素外用剤調製用組成物のゲル化が十分でなく、皮膚外用剤としての効果が得にくくなる。一方、7質量%を超えると混合から塗布時までに塗布表面を触れた手に二酸化炭素外用剤調製用組成物が付着しなくなるような状態に該塗布表面が固まりやすくなるため、1.0質量%以上7質量%以下であることが好ましく、2質量%以上5質量%以下であることがさらに好ましい。
【0017】
前記炭酸塩は、前記二酸化炭素外用剤調製用組成物に含まれる加水分解されて酸を生じる物質と反応して二酸化炭素を発生する炭酸塩であれば、特に制限はなく、目的により適宜選択することができる。例えば、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸バリウムなどが挙げられる。これらは1種で単独使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、マグネシウム塩やカルシウム塩などの他の必須成分と兼ねてもよい。中でもマグネシウムイオンの生成を兼ねる炭酸マグネシウムがより好ましい。
【0018】
前記炭酸塩の前記二酸化炭素外用剤調製用組成物全量に対する含有量は、特に制限はなく、目的により適宜選択することができる。前記含有量が0.3質量%未満であると、二酸化炭素の発生量が少なくなり二酸化炭素発生により得られる外用剤としての効果が十分に発揮されにくくなる。一方、前記含有量が12質量%を超えると、前記二酸化炭素外用剤調製用組成物のpHが高くなり発生した二酸化炭素が炭酸イオンとして存在しやすく膜透過性二酸化炭素発生量が少なくなるため、0.3質量%以上12質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上11質量%以下であることがさらに好ましい。
【0019】
前記加水分解されて酸を生じる物質は、その分子構造内に環状エステル結合を1以上有するものであれば特に制限はなく、目的により適宜選択することができる。例えば、グルコノデルタラクトン、パントラクトン、D,L―又はL―ラクチド(3,6―ジメチル―1,4−ジオキサン―2,5―ジオン)、D,L―又はL―グリコリド、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水コハク酸などが挙げられる。これらは1種で単独使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。中でもグルコノデルタラクトンやD,L―ラクチドなどが好ましく、加水分解速度及び炭酸塩と反応する酸の生成速度の面や化合物の入手しやすさの面からもグルコノデルタラクトンがさらに好ましい。
【0020】
前記加水分解されて酸を生じる物質の前記二酸化炭素外用剤調製用組成物全量に対する含有量は、特に制限はなく、目的により適宜選択することができる。前記含有量が10質量%未満であると、加水分解した酸と炭酸塩との反応による二酸化炭素の発生量が少なくなり、二酸化炭素発生により得られる外用剤としての効果が十分に発揮されにくくなる。一方、前記含有量が20質量%を超えると、他成分と撹拌混合しにくくなるため、10質量%以上20質量%以下であることが好ましく、13質量%以上18質量%であるとさらに好ましい。
【0021】
前記多価アルコールは、その分子構造内に水酸基を2以上有するアルコールであれば特に制限はなく、目的により適宜選択することができる。例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、1,8−オクタンジオールや、糖アルコールでもあるグリセリン、ソルビトール、糖でもあるトレハロースなどが挙げられる。これらは1種で単独使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。中でもゲル化時間を短縮する効果や保湿の面から、1,3−ブチレングリコールが好ましい。
【0022】
前記多価アルコールの前記二酸化炭素外用剤調製用組成物全量に対する含有量は、特に制限はなく、目的により適宜選択することができる。前記含有量が5質量%未満であると、前記二酸化炭素外用剤調製用組成物は2以上の剤を混合後にゲル化する時間が長くなり、使用終了時間までに二酸化炭素外用剤調製用組成物が手で剥離可能なようにゲル化することができなくなる。一方、前記含有量が25質量%を超えると、混合から塗布時までに塗布表面を触れた手に二酸化炭素外用剤調製用組成物が付着しなくなるような状態に該塗布表面が固まるため、5質量%以上25質量%以下であることが好ましく、5質量%以上20質量%以下であるとさらに好ましい。
【0023】
前記二酸化炭素外用剤調製用組成物に含まれる水は、通常の化粧品、医薬品等に用いられる水であれば、特に制限はなく、目的により適宜選択することができる。例えば、蒸留水、膜透過水、イオン交換水が挙げられる。これらは1種で単独使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、塩化カルシウム水溶液など他の成分の水溶液として含まれていてもよい。
【0024】
前記水の前記二酸化炭素外用剤調製用組成物全量に対する含有量は、特に制限はなく、目的により適宜選択することができる。また、前記含有量は、前記水及び前記水溶性カルシウム塩などの他の成分に含まれる水を合計したものであり、前記二酸化炭素外用剤調製用組成物全量が100質量%となるように調製される。また、前記含有量が55質量%未満であると粘性が高くなり流動性、柔軟性、さらには他の成分の溶解性等に欠けるため、前記含有量は55質量%以上であることが好ましい。
【0025】
前記二酸化炭素外用剤調製用組成物のその他の成分は、化粧品や皮膚外用剤に用いられる成分であれば特に制限はなく、目的により適宜選択することができる。例えば、界面活性剤、pH調整剤、保湿剤、防腐剤、酸化防止剤、香料、分散剤、紫外線吸収剤、色素などが挙げられる。これらは1種を単独使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0026】
前記二酸化炭素外用剤の使用形態は、特に制限はなく、目的により適宜選択することができる。例えば、ジェル状の2以上の剤を皮膚等への塗布時に混合することにより使用する形態、ジェル状及び顆粒状の2以上の剤を皮膚等への塗布時に混合することによる使用する形態、顆粒状の剤を水で溶解後にジェル状の剤を皮膚等への塗布時に混合することによる使用する形態などが挙げられる。
【0027】
前記二酸化炭素外用剤調製用組成物の皮膚等への塗布時の伸びの良さの評価方法は、塗布したジェルの伸びの良さを示すことができる方法であれば、特に制限はなく、目的により選択することができる。例えば、2以上の剤を混合後皮膚等へ塗布してから「塗布表面を触った時にジェルが手指に付着しないようになるまでの時間」を「塗布表面が固まり始める時間」と定義し、該「塗布表面が固まり始める時間」の長短で伸びの良さを評価する方法が挙げられる。
【0028】
前記二酸化炭素外用剤調製用組成物の皮膚等への塗布後、使用終了時点での剥がしやすさの評価方法は、塗布したジェルの剥がしやすさ、固まりやすさを示すことができる方法であれば、特に制限はなく、目的により選択することができる。例えば、2以上の剤を混合後皮膚等へ塗布してから「剥がした時にジェルが肌に残らないようになるまでの時間」を「剥がせる時間」と定義し、該「剥がせる時間」の長短を使用時間と対比して評価する方法が挙げられる。
【0029】
前記二酸化炭素外用剤調製用組成物の膜透過性二酸化炭素の発生量の評価方法は、人の皮膚環境を模した膜を透過する二酸化炭素量を計測することができる方法であれば、特に制限はなく、目的により適宜選択することができる。例えば、多孔性高分子膜を油脂に浸し、該膜を透過する二酸化炭素量を計測する方法が挙げられる。人の皮膚の環境に近づけるため、前記多孔性高分子膜にはマイクロポーラスフィルム(住友スリーエム社製、3Mマイクロポーラスフィルム、孔径0.3μm以下)を使用し、前記油脂にはオリーブスクワラン(岸本特殊肝油工業所製、植物スクワラン)を使用し、前記膜透過二酸化炭素量計測には炭酸ガス濃度計(東亜ディーケーケー(株)製、型番CGP−31)を用いる方法が特に好ましい。
【0030】
前記二酸化炭素外用剤調製用組成物の膜透過性二酸化炭素の発生量の評価は、具体的には、2以上の剤を撹拌混合したジェル1gを炭酸ガス濃度計専用の容器に入れ、その上からオリーブスクワラン0.1gを塗布したマイクロポーラスフィルムを被せ、該専用容器に炭酸ガス濃度計の検出器を取り付ける。前記容器と検出器の間を満たすように注射器を用いて所定量の水を加え、直後から1分ごとに60分間、膜透過性二酸化炭素発生量を測定し記録して行う。
【0031】
前記二酸化炭素外用剤調製用組成物の評価方法として、膜透過性二酸化炭素発生時に二酸化炭素外用剤調製用組成物のpHをさらに測定することにより、二酸化炭素外用剤調製用組成物から発生する二酸化炭素の状態を確認することができる。
前記pHの測定方法は、前記二酸化炭素外用剤調製用組成物のpHの経時変化を測定できる方法であれば、特に制限はなく、目的により適宜選択することができる。例えば、2以上の剤を撹拌混合し、日常防水型pH計(HANNA instruments製、pHep4 HI98127)を使用して二酸化炭素外用剤調製用組成物のpHを経時的に測定する方法が挙げられる。
【実施例】
【0032】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0033】
(実施例1〜9及び比較例1〜3)
表1に記載した組成に従い、二酸化炭素外用剤調製用組成物を調製した。なお、マグネシウム塩及び炭酸塩を兼ねる炭酸マグネシウムを配合した実施例においては、表中に記載された炭酸マグネシウムの配合量で二酸化炭素外用剤調製用組成物を調製したが、請求項4、段落0034及び0035等の必須成分の配合条件においては、マグネシウム塩及び炭酸塩がそれぞれ同量配合されているものとみなした。
表2に記載した配合量に従い、2つに分かれた剤を、使用直前に目視で均一になるまで撹拌混合した。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
実施例1〜9及び比較例1〜3で調製して得られた二酸化炭素外用剤調製用組成物について、以下に示す評価方法により、該二酸化炭素外用剤調製用組成物の、混合後皮膚等への塗布時の伸びの良さ及び使用終了時点での剥がしやすさの評価を行った。
2以上の剤を混合後皮膚等へ塗布してから「塗布表面を触った時にジェルが手指に付着しないようになるまでの時間」を「塗布表面が固まり始める時間」とし、該「塗布表面が固まり始める時間」を計測した。次に2以上の剤を混合後皮膚等へ塗布してから「剥がした時にジェルが肌に残らないようになるまでの時間」を「剥がせる時間」とし、該「剥がせる時間」を計測した。そして、2以上の剤を混合後皮膚等へ塗布する時間をもとに適切な「塗布表面が固まり始める時間」を規定し、また、使用時間をもとに適切な「剥がせる時間」を規定した。「塗布表面が固まり始める時間」及び「剥がせる時間」の両方が規定時間内にある場合には「良い(◎)」と評価し、両方とも規定時間内にない場合は「悪い(△)」と評価し、一方が規定時間内にありもう一方が規定時間にない場合は「ふつう(○)」と評価し、混合後60分経過しても固まらないあるいは剥がせない場合は「使用不可(×)」と評価した。
記載の実施例及び比較例において、二酸化炭素外用剤調製用組成物の2以上の剤を混合後皮膚等へ塗布する時間は5分以内であったので、前記適切な塗布表面が固まり始める時間は5〜10分と規定した。また、記載の実施例及び比較例において二酸化炭素外用剤調製用組成物の使用時間は10〜15分であったので、前記適切な剥がせる時間は10〜15分と規定した。
混合後皮膚等への塗布時の伸びの良さ及び使用終了時点での剥がしやすさの評価結果を表3に示す。
【0037】
【表3】
【0038】
表3より、良い(◎)評価であった実施例1、2及び6と比較し、水溶性カルシウム塩の含まれない比較例2では使用終了後に剥がせず、又、水溶性カルシウム塩である塩化カルシウムの配合量が多くなる実施例3及び4では塗布表面が固まり始める時間が短く塗布時の伸びがよくないことが分かった。また、炭酸マグネシウムを炭酸水素ナトリウムに変更した比較例1では塗布表面も内部も固まらず、さらに炭酸マグネシウムの配合量を増やした実施例7及び8では塗布表面が固まり始める時間も剥がせる時間も短くなることが分かった。
【0039】
実施例1及び比較例3で調製して得られた二酸化炭素外用剤調製用組成物について、膜透過性二酸化炭素発生量の評価は、以下の方法により行った。
実施例及び比較例について、表2に記載の2剤を混合したジェル1gを炭酸ガス濃度計専用の容器に入れ、その上からオリーブスクワラン0.1gを塗布したマイクロポーラスフィルムを被せ、該専用容器に炭酸ガス濃度計の検出器を取り付ける。前記容器と検出器の間を満たすように注射器を用いて所定量の水を加え、直後から1分ごとに60分間、膜透過二酸化炭素発生量を測定し記録した。
膜透過性二酸化炭素発生量の試験結果を表4に示す。
【0040】
【表4】
【0041】
表4に基づき、実施例1及び比較例3の膜透過性二酸化炭素発生量の経時変化を
図1に示す。
表4及び
図1より、実施例1と、マグネシウムイオン及び水溶性カルシウム塩を含まない比較例3とを比較した場合、混合後実施例1の想定使用時間である15分までにおける膜透過性二酸化炭素発生量は比較例3の膜透過性二酸化炭素発生量の約1.2倍になっていることが分かる。
【0042】
前記pHの測定は、以下の方法により行った。実施例1及び比較例3に記載の2剤を撹拌混合し、日常防水型pH計(HANNA instruments製、pHep4 HI98127)を使用して二酸化炭素外用剤調製用組成物のpHを経時的に測定した。
pHの測定結果を表5及び
図2に示す。
【0043】
【表5】
【0044】
表5及び
図2より、実施例1においては2剤の混合後直後にpHが下がり、60分経過するまで、膜透過性二酸化炭素が発生しやすいpH4.0〜6.5に保持されていることが分かった。
【0045】
表3〜5及び
図1〜2より、2以上の剤に分けた前記二酸化炭素外用剤調製用組成物を混合後に皮膚上に塗布した場合、混合から塗布時までに塗布表面を触れた手に二酸化炭素外用剤調製用組成物が付着しなくなるような状態に該塗布表面が固まらず、かつ、使用終了時までに二酸化炭素外用剤調製用組成物が手で剥離可能なようにゲル化する二酸化炭素外用剤調製用組成物を提供できることが分かった。すなわち、二酸化炭素外用剤調製用組成物の皮膚等への塗布時には伸びが良く、使用時間経過後には手で剥離可能な程度に固まることが分かった。
また、本発明の二酸化炭素外用剤調製用組成物は、マグネシウム塩、水溶性カルシウム塩、マグネシウムイオン又はカルシウムイオンによってゲル化するゲル化剤、炭酸塩、加水分解されて酸を生じる物質、多価アルコール及び水を含有させることで、使用開始直後から使用終了までの期間において、pHが4〜6.5に維持され、かつ、特許文献2等で知られている成分からなる二酸化炭素外用剤調製用組成物から発生する膜透過性二酸化炭素量を超える量の膜透過性二酸化炭素を発生させることが分かった。
【0046】
以上の効果はいくつかの要因に基づく。まず、前記効果は、炭酸マグネシウムなどのマグネシウムイオンを生じる成分を配合することで、カルシウムイオンを生じる成分を配合した場合よりも、アルギン酸ナトリウムやキサンタンガムなどのゲル化剤のイオン架橋を緩やかにすることに基づく。マグネシウムイオンの配合は、混合直後の二酸化炭素外用剤調製用組成物の伸びをよくし、又、ジェル全体を固めることに寄与する。さらに、前記効果は、カルシウムイオンを生じる成分として水溶性カルシウム塩である塩化カルシウムを配合することで、水不溶性又は水難溶性の炭酸カルシウムを配合した場合よりも、アルギン酸ナトリウムやキサンタンガムなどのゲル化剤のイオン架橋を早めることに基づく。水溶性カルシウムイオンの配合は、混合直後より二酸化炭素外用剤調製用組成物の塗布表面を固めることに寄与する。また、前記効果は、多価アルコールであるブチレングリコールの配合量を多くすることで、ゲル化剤のイオン架橋を早めることができることに基づく。ブチレングリコールの配合は、混合直後の二酸化炭素外用剤調製用組成物の伸びの良さや剥がせる時間の調節に寄与する。
そして、前記効果は、炭酸マグネシウムなどのマグネシウムイオンを生じる成分及び水溶性カルシウム塩を適量配合することで、塗布表面が固まり始める時間や剥がせる時間を調節し、二酸化炭素外用剤調製用組成物から発生する膜透過性二酸化炭素を二酸化炭素外用剤調製用組成物の外へ放出できることに基づく。マグネシウムイオンを生じる成分及び水溶性カルシウム塩の適量な配合は、カルシウムイオンを生じる成分として水不溶性又は水難溶性カルシウム塩の適量に配合しマグネシウムイオンを生じる成分を配合しない従来より知られている成分からなる二酸化炭素外用剤調製用組成物から発生する膜透過性二酸化炭素量よりも多くの膜透過性二酸化炭素を発生させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の二酸化炭素外用剤調製用組成物は、2以上の剤の混合調製が容易な上、混合直後皮膚上への塗布時までに塗布表面が固まることなく伸びがよく、かつ、使用時間終了までに肌に残らないように剥がせ、そして、使用時間内には十分な量の膜透過性二酸化炭素の発生を持続することができるものである。したがって、肌への適度な刺激を継続できる化粧用パックにおいては、塗布時には伸びがよく、終了時にはきれいに剥がせ、かつ、いわゆる炭酸ガスパックとしての効果を有するが、化粧用パックのみならず、ピーリング剤などの化粧品、皮膚用外用剤、毛髪用剤等の医薬部外品、医薬品、ペット用品のいずれにも好適に使用することができる。
【0048】
本発明の二酸化炭素外用剤調製用組成物は、特に、美容業界におけるジェル状のいわゆる炭酸ガスパックでは両立しないといわれた、塗布時に伸びがよく使用終了時に剥がせる特徴を有する。このため、今までは使用終了時に剥がしきれない固まりかけのジェルをタオルで拭き取る必要があり、固まりかけのジェルを拭き取ったタオルの洗濯処理にも副次的な課題が生じていたが、本発明はそのような副次的課題も解決するものでもある。