(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記吸着材が、繊維状活性炭、粒子状活性炭、ゼオライト、ケイ酸チタニウム、アルミノ珪酸塩、酸化チタン、イオン交換樹脂、キレート樹脂、イオン交換繊維およびキレート繊維よりなる群から選択される少なくとも1種を含有する請求項1または2に記載の成形吸着体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の成形吸着体の製造方法は、吸着材と繊維状バインダーとを含有し、長手方向に湾曲した成形吸着体を製造する方法である。前記製造方法は、前記吸着材と繊維状バインダーと水とを混合して材料スラリーを調製する工程(混合工程)、前記材料スラリーを用いて湿式成形により、前駆体を作製する工程(成形工程)、前記前駆体を長手方向に湾曲させる工程(湾曲工程)、および、湾曲させた前駆体を加熱乾燥して、湾曲した成形吸着体を得る工程(乾燥工程)を有する。
【0013】
本発明の製造方法では、湿式成形においては長手方向に湾曲していない吸引用成形型を使用するため、吸引用成形型の表面に均一に混合材料を堆積させることができる。また、吸引用成形型が湾曲していない場合、表面に堆積した混合材料を容易に均一に圧縮することができ、成形吸着体の密度を容易に高めることができる。
【0014】
[混合工程]
前記混合工程では、吸着材と繊維状バインダーとを含有する混合材料と、水とを混合して材料スラリーを調製する。
【0015】
前記吸着材は、物理吸着性能または化学吸着性能を有するものであれば特に限定されず、従来用いられているものが使用できる。前記吸着材としては、例えば、活性炭(繊維状活性炭、粒子状活性炭)、ゼオライト、ケイ酸チタニウム、アルミノ珪酸塩、酸化チタン、イオン交換樹脂、キレート樹脂、イオン交換繊維、キレート繊維などが挙げられる。
【0016】
前記吸着材は、活性炭を含有することが好ましい。前記吸着材中の活性炭の含有率は、80質量%以上が好ましく、より好ましくは83質量%以上、さらに好ましくは85質量%以上である。活性炭の含有率が80質量%以上であれば、遊離残留塩素、2−メチルイソボルネオール(2−MIB)、クロロホルムなどの活性炭により除去できる物質の吸着性能が向上する。前記活性炭とは、比表面積が800m
2/g以上の炭素物質である。前記活性炭としては、繊維状活性炭、粒子状活性炭のいずれも使用できる。なお、本発明において、活性炭粒子のアスペクト比(長径/短径)が3以下のものを粒子状活性炭、アスペクト比が3超のものを繊維状活性炭とする。
【0017】
前記活性炭の体積基準の中心粒子径(小径側を0とした体積累積分布における累積50%に対応する粒子径)は、30μm以上が好ましく、より好ましくは35μm以上、さらに好ましくは40μm以上であり、80μm以下が好ましく、より好ましくは60μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。中心粒子径が上記範囲内であれば、後述する湾曲工程において前駆体に亀裂が生じにくくなる。本発明において、体積基準の中心粒子径は、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置により測定する。
【0018】
前記粒子状活性炭のD
10(小径側を0とした体積累積分布における累積10%に対応する粒子径)は、10μm以上が好ましく、より好ましくは15μm以上であり、35μm以下が好ましく、より好ましくは25μm以下である。前記粒子状活性炭のD
90(小径側を0とした体積累積分布における累積90%に対応する粒子径)は、60μm以上が好ましく、より好ましくは100μm以上であり、220μm以下が好ましく、より好ましくは150μm以下である。
【0019】
前記活性炭の比表面積(BET法)は、900m
2/g以上が好ましく、より好ましくは950m
2/g以上であり、1200m
2/g以下が好ましく、より好ましくは1150m
2/g以下である。前記活性炭の細孔容積(BET法)は、0.40ml/g以上が好ましく、より好ましくは0.45ml/g以上であり、0.70ml/g以下が好ましく、より好ましくは0.65ml/g以下である。前記活性炭の平均細孔径(BJH法)は、1.0nm以上が好ましく、より好ましくは1.3nm以上であり、2.5nm以下が好ましく、より好ましくは2.2nm以下である。前記活性炭のヨウ素吸着量は、800mg/g以上が好ましく、より好ましくは900mg/g以上であり、1500mg/g以下が好ましく、より好ましくは1400mg/g以下である。
【0020】
前記粒子状活性炭の体積基準の中心粒子径(D
50)、D
10、D
90は、活性炭の粉砕、分級によって調整できる。粉砕方法は、特に限定されず、ジェットミル、ボールミル、スタンプミルなどが挙げられる。分級方法は、特に限定されず、気流分級、篩による分級などが挙げられる。また、粒子状活性炭の比表面積、細孔容積、平均細孔径、ヨウ素吸着量は、活性炭製造時の賦活条件、粒子径分布などによって調整できる。
【0021】
前記活性炭は、炭素原料を炭化した後、水蒸気賦活、アルカリ賦活することで得られる。炭素原料としては、フェノール樹脂などの合成樹脂、ヤシ殻、木質、もみ殻、石炭などを用いることができる。これらの中でも、成形した際の充填密度を高くできることから、合成樹脂、ヤシ殻、石炭が好ましい。特に、不純物が少なく、粉砕後にも良好な吸着性能を有することからフェノール樹脂などの合成樹脂やヤシ殻が好ましい。
【0022】
また、前記活性炭として、表面に銀が添着された銀添着活性炭を用いてもよい。銀添着活性炭を使用することで、成形吸着体に抗菌性能を付与できる。銀添着活性炭としては、銀添着粒子状活性炭、銀添着繊維状活性炭のいずれも使用できる。全活性炭中の銀添着活性炭の含有率は、1.0質量%以上が好ましく、より好ましくは1.2質量%以上、さらに好ましくは1.5質量%以上であり、2.5質量%以下が好ましく、より好ましくは2.3質量%以下、さらに好ましくは2.0質量%以下である。
【0023】
上記活性炭以外の吸着材において、イオン交換繊維、キレート繊維のような繊維状物質を配合すると、成形吸着体中に適度に空隙を形成することができ、また、繊維状物質が活性炭と絡み合うことで成形吸着体の機械的強度も高めることができる。よって、吸着材中の繊維状物質の含有率は、1質量%以上が好ましく、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上であり、15質量%以下が好ましく、より好ましくは13質量%以下、さらに好ましくは11質量%以下である。なお、本発明において、繊維状物質の中でも、濾水度が250ml以下の物質は繊維状バインダーに分類する。
【0024】
材料スラリーの固形分(100質量%)中の吸着材の含有率は、80質量%以上が好ましく、より好ましくは83質量%以上、さらに好ましくは85質量%以上であり、97質量%以下が好ましく、より好ましくは95質量%以下である。吸着材の含有率が80質量%以上であれば、成形吸着体の吸着性能が向上し、97質量%以下であれば、相対的に繊維状バインダーの含有量が増加し、成形吸着体の機械的強度が向上する。
【0025】
前記繊維状バインダーは、活性炭などの吸着材を絡め捕ることで保持する。繊維状バインダーとしては、アクリル繊維、セルロース繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリアクリロニトリル繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維などが挙げられる。これらの中でも、吸着材を保持しやすいことからアクリル繊維、セルロース繊維が好ましく、特に成形吸着体の機械的強度を向上できることからアクリル繊維が好適である。
【0026】
前記繊維状バインダーとしては、フィブリル化繊維が好ましい。フィブリル化繊維とは、摩擦作用などによって、繊維内部に存在するフィブリル(小繊維)を繊維表面に現させ、繊維表面を毛羽立ちささくれさせた繊維である。繊維状バインダーのフィブリル化は、リファイナー処理、ビーティング処理により行うことができる。
【0027】
前記繊維状バインダーの使用量は、吸着材100質量部に対して1質量部以上が好ましく、より好ましくは3質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上であり、20質量部以下が好ましく、より好ましくは15質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。繊維状バインダーの含有量が1質量部以上であれば、成形吸着体の機械的強度が向上し、20質量部以下であれば、成形吸着体の通水圧力損失がより低減される。
【0028】
前記吸着材および繊維状バインダーを含有する混合材料と、水とを混合する方法は特に限定されないが、ビーターを用いることができる。前記材料スラリーの固形分濃度は、0.5質量%以上が好ましく、より好ましくは1.0質量%以上、さらに好ましくは1.5質量%以上であり、10質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。材料スラリーの固形分濃度が0.5質量%以上であれば生産性が向上し、10質量%以下であれば成形吸着体密度の向上ができる。
【0029】
[成形工程]
前記成形工程では、前記材料スラリーを用いて湿式成形により、成形吸着体の前駆体を作製する。前記湿式成形としては、吸引成形、抄紙成形などが挙げられる。前記吸引成形では、吸引用成形型を材料スラリー中に浸漬し、ポンプを用いて材料スラリーを吸引し、成形型の表面に材料を堆積させ前駆体を成形する。
【0030】
前記吸引用成形型は、材料スラリーを吸引できるように吸引用の貫通孔が形成されており、この貫通孔に連通するノズルにポンプが接続される。なお、前記吸引用成形型の貫通孔は、材料スラリー中の固形分を通過させないように構成されている。前記吸引用成形型は、可撓性材料から構成されていることが好ましい。前記吸引用成形型が可撓性であれば、後述する湾曲工程において、吸引用成形型とともに前駆体を湾曲させることができる。
【0031】
前記吸引用成形型は、成形工程後に前駆体から取り外してもよいし、取り外さなくてもよい。例えば、後述するような軸部材を備えた浄水カートリッジを作製する場合には、吸引用成形型に代えて軸部材を使用し、軸部材の表面に混合材料を堆積させてもよい。
【0032】
材料スラリーを吸引する時間(成形時間)は、特に限定されないが、50秒以下が好ましく、より好ましくは40秒以下、さらに好ましくは35秒以下である。成形時間が短いほど生産性が向上する。成形時間の下限は特に限定されないが、通常5秒程度である。
【0033】
前記前駆体の形状は特に限定されず、円柱形状、多角柱形状、円筒形状、多角筒形状などが挙げられる。なお、湿式成形において、厚さが均一な前駆体を得やすいことから、前駆体の形状は筒形状が好ましい。前駆体を筒形状とする場合、前記吸引用成形型としては、円筒状、多角柱筒状が挙げられる。
【0034】
また、前記前駆体は長手方向に湾曲していないことが好ましい。前駆体が長手方向に湾曲していない場合、後述する圧縮工程で、前駆体の長手方向全体を容易に均一に圧縮することができる。
【0035】
[圧縮工程]
本発明の製造方法は、成形工程と湾曲工程との間に、圧縮工程を有してもよい。圧縮工程では、前記成形工程で作製した前駆体を圧縮する。圧縮工程を有することで、最終的に得られる成形吸着体の密度をより高めることができ、一層吸着性能に優れた成形吸着体が得られる。特に、前駆体が長手方向に湾曲していない場合、前駆体の長手方向全体を容易に均一に圧縮することができる。前駆体を圧縮する方法は特に限定されないが、例えば、前駆体にローラーを圧接させて圧縮する方法が挙げられる。前駆体の圧縮率は、最終的に得られる成形吸着体の密度に応じて適宜調節すればよい。
【0036】
[湾曲工程]
湾曲工程では、前記前駆体を長手方向に湾曲させる。前駆体は水分を含んでおり、容易に変形させることができる。そのため、前駆体の状態で長手方向に湾曲させ、この湾曲形状を維持したまま乾燥させることにより、容易に長手方向に湾曲した成形吸着材が得られる。
【0037】
前記前駆体を長手方向に湾曲させる方法は特に限定されず、例えば、前駆体の長手方向両端部を保持して、前駆体を湾曲させる方法;前駆体を、湾曲形状を有する成形型に入れて湾曲させる方法;が挙げられる。また、前駆体が筒形状を有する場合には、例えば、前駆体の筒孔に湾曲部材を挿通することで、前駆体を長手方向に湾曲させる方法;前駆体の筒孔に湾曲していない軸部材を挿通した後、この軸部材を湾曲させて、前駆体を長手方向に湾曲させる方法;が挙げられる。
【0038】
前記前駆体が筒形状を有する場合には、前駆体の筒孔に湾曲部材を挿通することで、前駆体を長手方向に湾曲させることが好ましい。この方法であれば、前駆体の筒孔に挿通する湾曲部材を変更することで、容易に成形吸着体の湾曲度合いを調整することができる。すなわち、湾曲度合いの異なる成形吸着体が容易に作製できる。
【0039】
前記湾曲部材は、前駆体を前記吸引用成形型から外した後、この前駆体の筒孔に挿通してもよい。なお、前記吸引用成形型として可撓性材料からなる筒状のものを使用し、外表面に前駆体が形成された吸引用成形型の筒孔に湾曲部材を挿通することが好ましい。こうすることで、前駆体を湾曲させる際の型崩れを抑制できる。
【0040】
前記湾曲部材としては、前駆体または吸引用成形型の筒孔に挿通でき、前駆体を湾曲させ得るものであれば特に限定されないが、例えば、円弧状に湾曲した棒が挙げられる。湾曲部材として円弧状に湾曲した棒を用いる場合、その円弧状の円弧半径Rは、120mm以上が好ましく、より好ましくは140mm以上、さらに好ましくは180mm以上である。前記円弧半径Rが120mm以上であれば、前駆体のひび割れや破損の発生を抑制でき、また、前駆体の内部空隙を良好に保持できるため、得られる成形吸着体の吸着性能がより良好となる。湾曲部材の円弧半径Rの上限は特に限定されないが、通常500mmである。
【0041】
[乾燥工程]
前記乾燥工程では、湾曲させた状態の前駆体を加熱乾燥して、湾曲した成形吸着体を得る。乾燥後の混合材料を吸引用成形型から取り外すことで、成形吸着体が得られる。乾燥温度は100℃〜120℃、乾燥時間は4時間〜6時間が好ましい。なお、吸引用成形型に代えて軸部材を用いている場合には、堆積物を乾燥すれば、浄水カートリッジが得られる。
【0042】
なお、繊維状バインダーの種類や堆積物の乾燥条件によっては、乾燥工程において繊維状バインダーが溶融又は変形する場合がある。繊維状バインダーの変形等の程度が大きくなると、成形吸着体中の空隙の体積が縮小し、浄水カートリッジの通水圧力損失が高くなったり、寸法安定性が低下したりする傾向がある。そのため、繊維状バインダーの種類に応じて堆積物の乾燥条件を選択することが好ましく、特に乾燥温度を低く設定することがより好ましい。繊維状バインダーの変形等を抑制する方法としては、繊維状バインダーとしてアクリル樹脂製繊維(アクリロニトリルを主成分(85質量%以上)とする共重合体製の繊維)を使用し、且つ、乾燥温度100℃〜120℃の条件で乾燥工程を行う事により、繊維状バインダーの変形等を充分に抑止することができる。
【0043】
以下、
図1〜6を参照して、成形吸着体の製造方法の一例を説明する。
図1および
図2は湿式成形(吸引成形)の一例を示す断面模式図である。
図3は圧縮工程の一例を示す斜視図である。
図4は湾曲工程の一例を示す断面模式図である。
図5は湾曲工程の一例を示す断面模式図である。
図6は成形吸着体の一例を示す断面模式図である。各図面において、同じ部材には同じ符号を付している。
【0044】
図1に示すように、湿式成形を行う際は、容器30に材料スラリー1を入れる。可撓性材料から形成された筒状の吸引用成形型2の両端に、ポンプ(図示せず)に接続されたチューブ31を接続し、このチューブ31が接続された吸引用成形型2を材料スラリー1に浸漬する。そして、ポンプを駆動して材料スラリー1を吸引し、
図2に示すように、吸引用成形型2の外表面に混合材料を堆積させることにより、長手方向に湾曲していない円筒状の前駆体3を得る。
【0045】
前記前駆体3を容器30から引き揚げた後、ローラー32を用いて前駆体3を圧縮する。具体的には、
図3に示すように、吸引用成形型2の筒孔に軸4を通し、この軸4を回転自在に支持する(支持部材は図示せず)。そして、この軸4と平行な回転軸33を有するローラー32(支持部材は図示せず)を、吸引用成形型2の表面に形成された前駆体3に圧接させ、ローラー32を回転させる。ローラー32を回転させると、このローラー32によって吸引用成形型2も回転し、吸引用成形型2の周囲の前駆体3の全体が均一に圧縮される。
【0046】
前駆体3を圧縮した後、吸引用成形型2の筒孔から軸4を抜き、
図4に示すように、吸引用成形型2の筒孔に湾曲部材5を挿通してゆく。そして、
図5に示すように、吸引用成形型2の筒孔に湾曲部材5を挿通することにより、前駆体3を長手方向に湾曲させる。このように前駆体を湾曲させた状態で加熱乾燥させた後、湾曲部材を抜けば、
図6に示すような長手方向に湾曲した成形吸着体6が得られる。
【0047】
[成形吸着体]
本発明の製造方法により作製される成形吸着体の形状は特に限定されず、使用用途に応じて適宜調節すればよい。成形吸着体の形状としては、長手方向に湾曲した円柱形状、多角柱形状、円筒状、多角筒状が挙げられる。湾曲形状としては長手方向に円弧状に湾曲している形状が好ましい。例えば、成形吸着体を水栓一体型の浄水器に使用する場合、成形吸着体の形状は、内径4mm〜20mm、外径20mm〜50mm、全長50mm〜250mmの円筒状が好ましい。
【0048】
[浄水カートリッジ]
本発明の成形吸着体は、浄水器に用いられる浄水カートリッジに好適に使用できる。浄水カートリッジの構成としては、例えば、筒状の軸部材と、この軸部材の外表面に積層された成形吸着材とを備え、長手方向に湾曲した筒形状を有する構成が挙げられる。軸部材を有することにより、成形吸着体の機械的強度を高めることができる。前記軸部材としては、貫通孔を有する多孔性筒部材が好ましい。多孔性筒部材の形状は特に限定されず、円筒状、多角柱状が挙げられる。多孔性筒部材の材質としては樹脂、金属などが使用できる。また、活性炭粒子が軸部材内部へ入り込むことを防止できることから、軸部材としては、外表面に不織布を巻き付けた多孔性筒部材が好ましい。
【0049】
浄水カートリッジの具体的な構成の一例を、
図7を参照して説明する。なお、浄水カートリッジは、
図7に記載された態様に限定されるものではない。浄水カートリッジ11は、筒状の軸部材12と、この軸部材の外表面に積層された成形吸着材13と、前記軸部材12の一方の端部に取り付けられた接続部材14と、前記多孔性軸部材の他方の端部に取り付けられたカバー15とを有する。前記軸部材12は、円筒状であり、複数の貫通孔12aが形成されている。軸部材12の外表面には、不織布16が巻き付けられている。接続部材14は、浄水器本体に接続可能に形成されている。また、前記成形吸着体13の周囲には、成形吸着体13を保護する不織布17が巻き付けられている。
【0050】
図7に示した浄水カートリッジ11は、成形吸着体13の外側を原水流路とする。原水は成形吸着体13を通過し、軸部材12の内部に流入する。この際、成形吸着体13に含まれる吸着材(図示せず)により浄化され、浄水となる。得られた浄水は、接続部14から排出される。
【0051】
[浄水器]
本発明の浄水器は、前記浄水カートリッジを用いたものであれば特に限定されない。前記浄水器とは、ろ材を用いて水道水中または井戸水中の溶存物質を減少させる機能を有する水処理器具である。浄水器としては、例えば、水道の蛇口の先端に直接取り付ける蛇口直結型;蛇口または蛇口に設けた分岐水栓からホースまたは配管などで接続して、蛇口近傍に設置する据え置き型;蛇口に浄水カートリッジが組み込まれた蛇口一体型(水栓一体型);シンクの下に設置するアンダーシンク型などが挙げられる。本発明の浄水器は、飲料水の浄化に好適に使用できる。
【0052】
図8は、浄水器の好ましい態様を示す側面図である。浄水器20は、蛇口内部に浄水カートリッジ11が交換可能に内蔵された水栓一体型浄水器である。浄水器20は、分離可能な頭部21と胴部22とを有し、前記胴部22は長手方向に湾曲している。頭部21と胴部22とを分離して、浄水器20の内部に浄水カートリッジ1を装着する。
【実施例】
【0053】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、前・後記の趣旨に適合しうる範囲で適宜変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0054】
1.評価方法
[活性炭の粒度]
活性炭のD
10、D
50(中心粒子径)、D
90は、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(島津製作所製、型式「SALD−2300」)を用いて測定した。粒子径分布は、粒子径0.017μm〜2500μmの範囲を対数スケールで101分割して、各区間の粒子径を有する活性炭粒子の体積を計測した。
【0055】
[比表面積、細孔容積、平均細孔径]
活性炭の比表面積、細孔容積、平均細孔径は、比表面積測定装置(日本ベル社製、BELSORP(登録商標)−18PLUS HT)を用いて測定した。なお、比表面積および細孔容積はBET法により算出し、平均細孔径はBJH法により算出した。
【0056】
[ヨウ素吸着量]
活性炭のヨウ素吸着量は、JIS K 1474(2007)の6.1.1.1ヨウ素吸着性能に準拠して測定した。具体的には、活性炭にヨウ素溶液(0.05mol/L)を50mL加え、室温(20〜30℃)で吸着させた後、上澄み液を分離した。上澄み液10mLに指示薬としてでんぷん溶液(10g/L)を加え、チオ硫酸ナトリウム溶液(0.1mol/L)で滴定した。残留しているヨウ素濃度から活性炭の単位質量当たりの吸着量を求め、吸着等温線を作成し、その吸着等温線からヨウ素の残留濃度2.5g/Lのときの吸着量を求めた。
【0057】
[密度]
成形吸着体の密度は、成形吸着体の質量を見かけ体積で除することで求めた。なお、見かけ体積は、ノギスを用いて成形吸着体の寸法を測定し、算出した。
【0058】
[通水圧力損失]
成形吸着体の通水圧力損失は、成形吸着体に対して2.5L/分の流量で通水したときの圧力損失を測定した。なお、成形吸着体の形状は、カートリッジNo.2、8は、内径が7.5mmφ、外径が26mmφ、全長が118.2mmの長手方向に湾曲していない円筒状とした。カートリッジNo.1、3〜7、9、10は、内径が7.5mmφ、外径が26mmφ、全長が118.2mmであり、表2の円弧半径で長手方向に湾曲している円筒状とした。円筒状成形吸着体の外周面から径方向内方に向けて通水した。
【0059】
[吸着性能]
浄水カートリッジの吸着性能は、JIS S 3201(2010)の「6.4除去性能試験」に準拠して測定した。具体的には、被除去物を含む水を、浄水カートリッジに2.5L/分の流量で1200L通水し、ろ過水中の被除去物の除去率を求めた。
【0060】
2.活性炭
吸着材として、表1に示す物性を有する活性炭を用いた。
【0061】
【表1】
【0062】
3.浄水カートリッジの製造
浄水カートリッジNo.1〜10は下記のようにして作製した。なお、軸部材には、いずれも樹脂製多孔性円筒部材の外表面に不織布を巻き付けたもの(内径:6mm、外径:7.5mm、全長:118.2mm)を使用した。また、軸部材の外表面に形成する成形吸着体の形状はいずれも、湾曲させずに乾燥させた場合の形状が、内径が7.5mmφ、外径が26mmφ、全長が118.2mm(見かけ体積57.5mL)の円筒状体となるように調整した。
【0063】
3−1.浄水カートリッジNo.1
吸着材として、粒子状活性炭を91質量%、鉛除去剤(中部キレスト社製、キレストファイバー IRW−SW)を4質量%、繊維状バインダーとしてアクリル繊維(東洋紡績社製、「BiPUL(登録商標)」、ビーターにより濾水度を160mLに調製したもの)を5質量%含有する混合材料を調製した。この混合材料を、水に分散させてスラリー(混合材料の濃度;5質量%)を調製した。
【0064】
このスラリーを用いて湿式成形により成形吸着体を成形した。具体的には、軸部材の両端に、ポンプに接続されたチューブを接続した。このチューブを接続した軸部材を、スラリーを満たしたタンクに浸漬した後、ポンプを駆動してスラリーを吸引し、軸部材の表面に混合材料を堆積させた。この際、乾燥後の成形吸着体の外径が26mmとなるようにポンプの駆動時間を調整した。混合材料が堆積した軸部材をタンクから引き揚げ、長手方向に湾曲していない円筒状の前駆体を得た。この前駆体が形成された軸部材の筒孔に湾曲部材(円弧半径R:280mm)を挿通し、120℃で4時間乾燥させ、軸部材の外表面に湾曲形状の成形吸着体が積層した浄水カートリッジを得た。得られた浄水カートリッジNo.1は、成形吸着体の通水圧力損失が0.015MPa、密度が0.354g/cm
3であった。
【0065】
3−2.浄水カートリッジNo.2
前記浄水カートリッジNo.1の製造方法と同様にして、軸部材の表面に混合材料を堆積させた。混合材料が堆積した軸部材をタンクから引き揚げた後、堆積物をローラーを用いて圧縮して、長手方向に湾曲していない円筒状の圧縮前駆体を得た。具体的には、引き揚げた軸部材を回転可能に支持しておき、この軸部材と平行な回転軸を有するローラーを軸部材表面の堆積物に圧接させながら、このローラーを回転させた。この圧縮前駆体が形成された軸部材の筒孔に直線部材を挿通し、120℃で4時間乾燥させ、軸部材の外表面に成形吸着体が積層した浄水カートリッジを得た。得られた浄水カートリッジNo.2は、成形吸着体の通水圧力損失が0.033MPa、密度が0.380g/cm
3であった。
【0066】
3−3.浄水カートリッジNo.3
前記浄水カートリッジNo.2の製造方法と同様にして、圧縮前駆体を得た。この圧縮前駆体が形成された軸部材の筒孔に湾曲部材(円弧半径R:280mm)を挿通し、120℃で4時間乾燥させ、軸部材の外表面に湾曲形状の成形吸着体が積層した浄水カートリッジを得た。得られた浄水カートリッジNo.3は、成形吸着体の通水圧力損失が0.032MPa、密度が0.386g/cm
3であった。
【0067】
3−4.浄水カートリッジNo.4
前記浄水カートリッジNo.3の製造方法において、湾曲部材の円弧半径Rを200mmに変更したこと以外は同様にして浄水カートリッジNo.4を得た。得られた浄水カートリッジNo.4の成形吸着体は通水圧力損失が0.032MPa、密度が0.387g/cm
3であった。
【0068】
3−5.浄水カートリッジNo.5
前記浄水カートリッジNo.3の製造方法において、湾曲部材の円弧半径Rを160mmに変更したこと以外は同様にして浄水カートリッジNo.5を得た。得られた浄水カートリッジNo.5の成形吸着体は通水圧力損失が0.031MPa、密度が0.389g/cm
3であった。
【0069】
3−6.浄水カートリッジNo.6
前記浄水カートリッジNo.3の製造方法において、湾曲部材の円弧半径Rを120mmに変更したこと以外は同様にして浄水カートリッジNo.6を得た。得られた浄水カートリッジNo.6の成形吸着体は通水圧力損失が0.030MPa、密度が0.387g/cm
3であった。
【0070】
3−7.浄水カートリッジNo.7
前記浄水カートリッジNo.3の製造方法において、湾曲部材の円弧半径Rを100mmに変更したこと以外は同様にして浄水カートリッジNo.7を作製した。しかし、円弧半径Rが小さくなったことにより、軸部材の筒孔に湾曲部材を挿通した際に、圧縮前駆体に亀裂が生じた。
【0071】
3−8.浄水カートリッジNo.8
吸着材として、繊維状活性炭を77質量%、鉛除去剤(中部キレスト社製、キレストファイバー IRW−SW)を10質量%、繊維状バインダーとしてアクリル繊維(東洋紡績社製、「BiPUL(登録商標)」、ビーターにより濾水度を160mLに調製したもの)を13質量%含有する混合材料を調製した。この混合材料を、水に分散させてスラリー(混合材料の濃度;5質量%)を調製した。
【0072】
このスラリーを用いて前記浄水カートリッジNo.1の製造方法と同様にして、軸部材の表面に混合材料を堆積させた。混合材料が堆積した軸部材をタンクから引き揚げた後、前記浄水カートリッジNo.2の製造方法と同様にして、堆積物をローラーを用いて圧縮して、長手方向に湾曲していない円筒状の圧縮前駆体を得た。この圧縮前駆体が形成された軸部材の筒孔に直線部材を挿通し、120℃で4時間乾燥させ、軸部材の外表面に成形吸着体が積層した浄水カートリッジを得た。得られた浄水カートリッジNo.8の成形吸着体は通水圧力損失が0.008MPa、密度が0.261g/cm
3であった。
【0073】
3−9.浄水カートリッジNo.9
前記浄水カートリッジNo.8の製造方法と同様にして、圧縮前駆体を得た。この圧縮前駆体が形成された軸部材の筒孔に湾曲部材(円弧半径R:280mm)を挿通し、120℃で4時間乾燥させ、軸部材の外表面に湾曲形状の成形吸着体が積層した浄水カートリッジを得た。得られた浄水カートリッジNo.9は、成形吸着体の通水圧力損失が0.008MPa、密度が0.263g/cm
3であった。
【0074】
3−10.浄水カートリッジNo.10
前記浄水カートリッジNo.9の製造方法において、湾曲部材の円弧半径Rを200mmに変更したこと以外は同様にして浄水カートリッジNo.10を得た。得られた浄水カートリッジNo.10の成形吸着体は通水圧力損失が0.008MPa、密度が0.262g/cm
3であった。
【0075】
得られた浄水カートリッジ、成形吸着体の評価結果を表2に示した。
【0076】
【表2】
【0077】
表2に示したように、本発明の製造方法により作製された長手方向に湾曲した成形吸着体(浄水カートリッジNo.1、3〜7、9、10)は、いずれも長手方向に湾曲していない成形吸着体(浄水カートリッジNo.2、8)と同様に、遊離残留塩素に対して高い除去率を示した。また、浄水カートリッジNo.3〜6に示すように、湾曲部材の円弧半径Rを変更するだけで、湾曲度合いの異なる成形吸着体が容易に作製できることがわかる。なお、湾曲部材の円弧形状Rが100mmである浄水カートリッジNo.7では、湾曲工程において、前駆体に亀裂が生じた。
【0078】
また、本発明の製造方法では、吸引用成形型(軸部材)が長手方向に湾曲していないため、ローラーを用いて前駆体を容易に圧縮することができる。そのため、本発明の製造方法によれば、長手方向に湾曲しない成形吸着体(浄水カートリッジNo.2、8)を製造する場合と同様に、圧縮により前駆体の密度を高めることができる。よって、本発明の製造方法によれば、長手方向に湾曲した形状を有し、かつ、吸着性能(クロロホルム除去性能、溶解性鉛除去性能)にも優れた成形吸着体が得られる。