【文献】
Ind. Eng. Chem. Prod. Res. Dev.,1984年,Vol. 23,586-590
【文献】
Mary R. Thomas,Isocyanatoethyl Methacrylate: A Heterofunctional Monomer for Polyurethane And Vinyl Polymer Systems,Journal of Coatings Technology,1983年,Vol. 55, No. 703,55-61
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0049】
≪イミドブロック体≫
本発明のイミドブロック体は、下記式(1)または(1')で表される基を有する、化合物(以下「化合物(I)」ともいう。)または重合体(以下「重合体(I)」ともいう。)である。
このような基を有する化合物および重合体は、従来のイソシアネートのブロック体に比べて低温・短時間の加熱条件でも容易に該ブロック体からイソシアナト基を再生させることができる。
【0050】
【化12】
(式中、*は結合手を示す。)
【0051】
前記式(1)および(1')中、R
2は独立に、水素原子またはメチル基であり、R
3は独立に、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキレン基、または、該アルキレン基の少なくとも1つの−CH
2−をエーテル結合、エステル結合もしくはフェニレン結合で置換してなる基である。
本発明においてアルキレン基とは、脂肪族飽和炭化水素中の炭素原子に結合する任意の2個の水素原子を除いて生ずる基を意味する。
【0052】
前記式(1)および(1')中、R
3における置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキレン基としては、炭素数1〜8のアルキレン基が好ましく、炭素数1〜6のアルキレン基がより好ましく、炭素数1〜4のアルキレン基が好ましい。
【0053】
前記R
3における、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキレン基、または、該アルキレン基の少なくとも1つの−CH
2−をエーテル結合、エステル結合もしくはフェニレン結合で置換してなる基として具体的には、−CH
2−、−C
2H
4−、−(CH
2)
3−、−(CH
2)
4−、−(CH
2)
5−、−(CH
2)
6−、−C
2H
4−O−CH
2−、−C
2H
4−COO−CH
2−などが挙げられる。
【0054】
前記置換基としては、炭化水素基、ニトロ基、シアノ基、−OR'、−COR'、−COOR'(R'はアルキル基である。)等が挙げられる。
前記R
3が置換基を有する基の場合、前記アルキレン基またはフェニレン結合における任意の水素原子を前記置換基で置換した基などが挙げられる。
【0055】
前記置換基における炭化水素基としては、特に制限されないが、例えば、炭素数1〜10の炭化水素基が挙げられ、好ましくは炭素数1〜6の炭化水素基が挙げられ、より好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、シクロペンチル基、ビニル基、シクロヘキシル基、フェニル基などが挙げられる。
【0056】
また、前記R'におけるアルキル基としては、例えば、炭素数1〜10のアルキル基が挙げられ、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基が挙げられ、より好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、シクロペンチル基などが挙げられる。
【0057】
前記R
3としては、中でも炭素数1〜8のアルキレン基または該アルキレン基の少なくとも1つの−CH
2−を−O−で置換してなる基が好ましく、炭素数1〜6のアルキレン基または該アルキレン基の少なくとも1つの−CH
2−を−O−で置換してなる基がより好ましく、炭素数1〜4のアルキレン基または該アルキレン基の少なくとも1つの−CH
2−を−O−で置換してなる基が最も好ましい。中でも好ましいのは−CH
2−、−C
2H
4−、−(CH
2)
3−、−C
2H
4−O−C
2H
4−である。
【0058】
前記式(1)および(1')中、Xは下記式(2)または(3)で表される基である。
前記Xはイソシアナト基を保護あるいはブロックし、解離することによってイソシアナト基を再生させる基(以下「イソシアナト保護基」ともいう。)であって、イミドブロック体がブロック剤を用いて合成された場合には、Xはブロック剤残基である。
【0059】
【化13】
(式中、*は結合手を示す。)
【0060】
前記式(2)中、R
4およびR
5は各々独立に、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基、または、置換基を有してもよい、該アルキル基の少なくとも1つの−CH
2−を2価の芳香族環を含む基、−NH−、−O−もしくは−CO−で置換してなる基である。R
4とR
5は同一の基でも異なる基でもよいが、同一の基であることが好ましい。
【0061】
前記2価の芳香族環としては、ベンゼン環、ビフェニル環、ナフタレン環、酸素原子、硫黄原子および/または窒素原子等を含む2価の複素環、または、これらが縮合した2価の縮合環などが挙げられる。
前記2価の芳香族環を含む基としては、前記2価の芳香族環の少なくとも1つの水素原子を活性水素基を有しない置換基によって置換した基であってもよいが、中でも、非置換のフェニレン基が特に好ましい。
【0062】
前記式(2)中、R
4およびR
5における、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基としては特に制限されないが、炭素数1〜5のアルキル基が好ましい。
前記R
4およびR
5における、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基、または、置換基を有してもよい、該アルキル基の少なくとも1つの−CH
2−を2価の芳香族環を含む基、−NH−、−O−もしくは−CO−で置換してなる基として具体的には、メチル基、メトキシ基、エチル基、エトキシ基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基などが挙げられる。
これらの中でも、ブロック剤残基の解離性、ブロック剤の入手容易さ、およびイミドブロック体合成の容易性などの点からメチル基、エチル基、プロピル基であることが好ましく、メチル基、エチル基であることがより好ましい。
【0063】
前記式(2)中、R
4およびR
5は非置換であることが好ましいが、置換基を有していてもよい。具体的には、前記で例示した基の任意の水素原子を、ハロゲン原子、炭化水素基、ニトロ基、−OR
13、−COR
13、−COOR
13(R
13はアルキル基である。)等の置換基で置換した基などが挙げられる。
【0064】
前記R
4およびR
5の置換基における炭化水素基、およびR
13におけるアルキル基としては、特に制限されないが、それぞれ、前記R
3の置換基における炭化水素基およびR'におけるアルキル基で例示した基と同様の基などが挙げられる。
【0065】
【化14】
(式中、*は結合手を示す。)
【0066】
前記式(3)中、R
6は、芳香族環、窒素原子および酸素原子からなる群より選ばれる少なくとも1つを含んでもよい2価の有機基である。該有機基としては、特に制限されないが、炭素数1〜10の有機基が好ましく、炭素数1〜6の有機基がより好ましい。
【0067】
前記R
6における2価の有機基としては、−C
2H
4−、−CH=CH−、−N(CH
3)−CH
2−、−N=CH−、−O−CH
2−、−(CH
2)
3−、−CH=CH−CH
2−、−N(CH
3)−C
2H
4−、−CH
2−N(CH
3)−CH
2−、−N=CH−CH
2−、−N(CH
3)−CH=CH−、−CH=N−CH
2−、−O−C
2H
4−、−ph−、−CH
2−ph−、シクロヘキサンジイル基、シクロペンタンジイル基などが挙げられる(なお、−ph−はフェニレン基を表し、1,2−フェニレン基が好ましい。シクロヘキサンジイル基としては、1,2−シクロヘキシサンジイル基が好ましい。シクロペンタンジイル基としては、1,2−シクロペンタンジイル基が好ましい。)。
これらの中でも、−ph−、−CH=CH−、−(CH
2)
3−、−C
2H
4−、−N(CH
3)−CH
2−がより好ましい。
【0068】
前記式(3)中、R
6は非置換であることが好ましいが、置換基を有していてもよい。具体的には、R
6における2価の有機基の任意の水素原子を、ハロゲン原子、炭化水素基、ニトロ基、−OR
14、−COR
14、−COOR
14(R
14はアルキル基である。)等の置換基で置換した基などが挙げられる。
【0069】
前記R
6の置換基における炭化水素基、およびR
14におけるアルキル基としては、特に制限されないが、それぞれ、前記R
3の置換基における炭化水素基およびR'におけるアルキル基で例示した基と同様の基などが挙げられる。
【0070】
前記式(3)で表される基としては、下記式(3−1)および(3−2)で表される群より選ばれる基であることが、基Xの解離性、イミドブロック体合成の容易性などの点から好ましい。
【0071】
【化15】
(式中、*は結合手を示す。)
【0072】
前記式(3−1)中、Rは独立に、水素原子または炭素数1〜10の1価の炭化水素基であり、好ましくは水素原子または炭素数1〜4の1価の炭化水素基である。R
11は独立に、水素原子または炭素数1〜10の1価の炭化水素基であり、好ましくはメチル基である。aは独立に1または2であり、bは独立に1〜3の整数である。
前記炭素数1〜4の1価の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ビニル基などが挙げられる。
【0073】
【化16】
(式中、*は結合手を示す。)
【0074】
前記式(3−2)中、R
12とR
12に隣接する2個の炭素原子とからなる2価の基は、1,2−シクロペンタンジイル基、1,2−シクロヘキサンジイル基、1,2−シクロヘプタンジイル基、シクロペンテニレン基、シクロヘキセニレン基または1,2−フェニレン基である。
R
12は置換基を有していてもよく、置換基としては、式(1)および(1')中、R
3の置換基における炭化水素基等が挙げられる。
【0075】
前記式(3)としては、(3')で表される群より選ばれる基であることが、基Xの解離性、イミドブロック体合成の容易性などの点から好ましい。
【0076】
【化17】
(式中、*は結合手を示す。)
【0077】
前記R
9は、炭素数1〜10のアルキル基、または、該アルキル基の少なくとも1つの−CH
2−を−O−もしくは−CO−で置換してなる基である。
R
9としては、炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
【0078】
本発明のイミドブロック体は、通常、触媒(ブロック剤を解離させるための触媒)の有無によってイソシアナト保護基の解離温度に大きな差異があり、触媒が存在する場合には解離温度が低く、触媒が存在しない場合には解離温度が高い。このため、触媒と共存していない状態では、保存安定性がよく、触媒と共存している状態では、比較的低温でイソシアナト保護基を解離させることが可能である。
【0079】
特に、本発明の化合物(I)としては、触媒(ブロック剤を解離させるための触媒)の存在下、110℃以下でイソシアナト保護基が解離する化合物が好ましく、90℃以下でイソシアナト保護基が解離する化合物がより好ましい。
【0080】
なお、「110℃以下でブロック剤残基が解離する化合物」とは、触媒存在下、110℃以下の温度で30分以内の加熱を行ったとき、化合物からイソシアナト保護基が90%以上解離することをいう。
【0081】
前記化合物(I)としては、基Xの解離性、(共)重合性、該化合物を含む組成物の硬化性などの点から、重合性基(例:(メタ)アクリロイル基、アルケニル基、アルキニル基などの不飽和結合を有する基、エポキシ基、オキセタニル基、オキソラニル基)および前記式(1)または(1')で表される基を有する化合物であることが好ましく、中でも(メタ)アクリロイル基を有する化合物であることが好ましく、下記式(1A)または(1'A)で表される化合物(以下「化合物(II)」ともいう。)がより好ましい。
なお、「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基またはメタクリロイル基を意味する。また、本発明において、「(メタ)」との記載は、前記(メタ)アクリロイル基の場合と同様の意味を有する。
【0083】
前記式(1A)および(1'A)中、R
2、R
3およびXは各々独立に、式(1)中のR
2、R
3およびXと同義であり、好ましいR
2、R
3およびXも前述のとおりである。また、R
1は独立に、水素原子またはメチル基である。
【0084】
さらに、前記化合物(II)としては、下記式(5)〜(7)で表される化合物が、基Xの解離性、(共)重合性、該化合物を含む組成物の硬化性などの点から好ましい。
【0088】
前記式(5)中、R
1は水素原子またはメチル基であり、式(5)〜(7)中、Xは前記式(1)および(1')中のXと同義であり、好ましいXは前述のとおりである。
【0089】
前記化合物(II)は、(メタ)アクリロイル基部分で(共)重合反応が可能であり、イソシアナト保護基を解離させイソシアナト基を再生させれば、該イソシアナト基部分で架橋反応やウレタン結合形成反応などが可能である。つまり、前記化合物(II)によれば、所望の用途に応じ、2種類の反応を使い分けることができる。特に、前記化合物(II)は、分子内に(メタ)アクリロイル基を有するイソシアネートのイミドブロック体であるため、該(メタ)アクリロイル基部分での(共)重合反応を先ず行い、その後にイソシアナト基を再生させ、該イソシアナト基部分を反応させる、という選択的な反応が可能である。また、常温においてはイソシアナト基がブロックされた状態にあるため、活性水素基等を含有する主剤と混合した状態でも安定性よく保存することができるなどの効果を有する。
【0090】
前記重合体(I)としては、前記式(1)または(1')で表される基を複数有する重合体が好ましく、イソシアナト保護基の解離性、該重合体を含む組成物の硬化性などの点から、前記化合物(I)、さらには前記化合物(II)を含むモノマー成分を重合して得られる重合体がより好ましく、前記化合物(II)を含むモノマー成分を重合して得られる共重合体がさらに好ましい。
【0091】
前記重合体(I)としては、イソシアナト保護基の解離性、該重合体を含む組成物の硬化性などの点から、好ましくは下記式(9)で表される構造を含む重合体が挙げられる。
【0093】
前記式(9)中、R
1〜R
3およびXはそれぞれ独立に、前記式(1)中のR
1〜R
3およびXと同義あり、好ましいR
1〜R
3およびXも前述のとおりである。
前記式(9)中、R
10は水素原子、または、下記式(10−1)もしくは(10−2)で表される基である。
【0095】
前記式(10−1)および(10−2)中、R
1およびR
3はそれぞれ独立に、前記式(9)中のR
1およびR
3と同義あり、好ましいR
3も前述のとおりである。
なお、式(10−1)および(10−2)中の*が式(9)におけるR
10が結合する炭素原子と結合する。
【0096】
<イミドブロック体の合成方法>
1.化合物(I)の合成方法
前記化合物(I)を合成する方法は各種考えられ、特に限定されないが、例えば、イソシアナト基含有化合物とブロック剤とを反応させる方法が挙げられる。好ましくは、工業的に製造されている下記式(8)または(8')で表される化合物とブロック剤とを反応させる方法が挙げられる。
【0099】
前記式(8)および(8')中、R
1〜R
3は各々独立に、前記式(1)中のR
1〜R
3と同義である。
【0100】
前記式(8)で表される化合物としては、特に制限されないが、前記例示したR
1〜R
3を有する化合物が挙げられ、好ましくは、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−(2−メタクリロイルオキシエチルオキシ)エチルイソシアネートなどが挙げられる。
【0101】
前記式(8')で表される化合物としては、特に制限されないが、前記例示したR
1〜R
3を有する化合物が挙げられ、好ましくは1,1−(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネートなどが挙げられる。
【0102】
これらの中でも、高純度品の入手の容易さ、取り扱いの容易さおよび反応性などの点から、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネートが特に好ましい。
【0103】
前記式(8)および(8')で表される化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0104】
前記ブロック剤としては、イミド化合物であることが好ましく、より好ましくは前記例示したXの構造を有する化合物などが挙げられる。さらに好ましくは、ジアセトアミド、ジプロピオンアミド;置換されていてもよい、スクシンイミド類、フタルイミド類、マレイミド類、グルタルイミド類、1−メチルヒダントイン類;が挙げられる。これらの化合物が置換基で置換されている場合には、該置換基としては、前記式(3)中、R
6における置換基と同様の基等が挙げられる。
【0105】
なお、本発明において、「スクシンイミド類」とは、スクシンイミド、およびスクシンイミドの任意の水素原子(但し、イミド基を構成する窒素原子に結合した水素原子を除く。)を前記置換基で置換した化合物のことをいう。また、本発明において、「類」との記載は、前記スクシンイミド類の場合と同様に、任意の水素原子を前記置換基で置換した化合物を意味する。
【0106】
前記ブロック剤としては、スクシンイミド、フタルイミド、マレイミド、グルタルイミド、ジアセトアミド、1−メチルヒダントインがより好ましく、イミドブロック体からのブロック剤残基の解離温度の点から、スクシンイミド、フタルイミド、マレイミド、ジアセトアミド、1−メチルヒダントインがさらに好ましく、フタルイミドおよびスクシンイミドが反応性などの点で最も好ましい。
【0107】
前記ブロック剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0108】
イソシアナト基含有化合物と前記ブロック剤とを反応させる方法としては、具体的には、ブロック剤単独またはブロック剤を不活性溶媒に懸濁させた懸濁液に、イソシアナト基含有化合物またはそれを不活性溶媒に溶かした溶液を加えた後、しばらくそのまま反応させて反応を完結させる方法が挙げられる。
【0109】
ブロック剤とイソシアナト基含有化合物との配合モル比率は、1:1かあるいはイソシアナト基含有化合物が若干過剰であることが好ましい。イソシアナト基含有化合物が過剰の場合は、ブロック剤のモル数1に対してイソシアナト基含有化合物のモル数が1より多く1.05以下であることが好ましく、反応を完結させやすくするなどの点から、1.005〜1.05であることがより好ましい。
ブロック剤の配合比率が前記範囲を超える場合には、反応は優位には進行せず経済上メリットがない傾向にある。また、ブロック剤の配合比率が前記範囲を下回る場合には、反応完結までの時間が長くなる場合や、反応が完結しない場合がある。
【0110】
前記反応の反応温度は、イソシアナト基含有化合物やブロック剤の種類、触媒の有無などによって異なるが、だいたい室温から80℃くらいまでが好ましい。反応温度が低すぎると反応が進行しない場合があり、反応温度が高すぎると、イソシアナト基含有化合物に含まれ得るC=C(二重結合)等の重合性基の重合により、得られる化合物がゲル化するおそれがある。また、反応温度が高すぎるとイミドブロック体の生成率が低くなるおそれがあるため、このような場合には、反応の進行が止まった場合は徐々に反応温度を下げていくことでイミドブロック体の生成率を上げることが好ましい。
なお、反応の進行度合は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて確認することができる。
【0111】
前記反応を円滑に進めるためには、反応触媒を用いることが望ましい。反応触媒としては3級アミンや金属アルコキシドが好適に用いられ、これらの中でもナトリウムメトキシドおよびトリエチルアミンが好ましい。前記反応触媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0112】
前記反応触媒の使用量は、特に制限されず、反応が円滑に進むような量で使用すればよいが、イソシアナト基含有化合物に対し、0.1mol%以上であることが好ましい。反応触媒の使用量が前記範囲を下回ると、反応が遅くなる傾向にある。
【0113】
前記不活性溶媒としては、イソシアナト基含有化合物やブロック剤と反応しないものなら特に制限されず、例えばトルエン、キシレン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、酢酸n−ブチル、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。またこれらの溶媒のいくつかを混合して用いてもよい。
【0114】
前記不活性溶媒の使用量は、特に制限されず、反応が円滑に進むような量で使用すればよいが、前記イソシアナト基含有化合物およびブロック剤の合計モル数を1molとした時に、好ましくは100〜1000mLであり、より好ましくは100〜400mLである。
前記不活性溶媒の使用量が前記範囲を下回ると、攪拌できなくなる傾向があり、前記範囲を上回ると、反応の進行が遅くなる傾向があり、反応が最後まで進行しないおそれがある。
【0115】
前記反応の反応系には重合を防止するために、本発明の効果を損なわない範囲で重合禁止剤を添加しておくことが望ましい。重合禁止剤としては、フェノチアジン、p−メトキシフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)など、一般に重合禁止剤として使用されているものを用いることができるが、特にフェノチアジンおよびBHTが重合禁止効果の点で適している。前記重合禁止剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0116】
2.重合体(I)の合成方法
前記重合体(I)を合成する方法は各種考えられ、特に限定されないが、好ましくは、前記化合物(I)、さらには前記化合物(II)を含むモノマー成分を重合する方法が挙げられる。
このような重合体(I)としては、化合物(II)の単独重合体であってもよいが、前記化合物(II)およびエチレン性不飽和基を有する化合物を含むモノマー成分を用い、前記化合物(II)の(メタ)アクリロイル基部分とエチレン性不飽和基を有する化合物のエチレン性不飽和基部分とを共重合(ビニル重合)させた共重合体がより好ましい。
【0117】
前記エチレン性不飽和基を有する化合物としては、活性水素基を有さず、ラジカル重合が可能なエチレン性不飽和基を有する化合物、ならびに、活性水素基およびエチレン性不飽和基の両方を有する化合物などが挙げられ、製造しようとする重合体(I)の用途などに応じて適宜選択すればよい。前記エチレン性不飽和基を有する化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0118】
前記活性水素基を有さずエチレン性不飽和基を有する化合物としては、(メタ)アクリル酸エステル系化合物、芳香族ビニル系化合物、(メタ)アクリロニトリル系化合物、有機カルボン酸のビニルエステル系化合物、有機カルボン酸のアリルエステル系化合物、フマル酸のジエステル系化合物、マレイン酸のジエステル系化合物、イタコン酸のジエステル系化合物、有機カルボン酸のN−ビニルアミド誘導体、環状エーテル含有ビニル化合物系化合物、マレイミドおよびその誘導体、末端が不飽和炭化水素基である化合物およびその誘導体等が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸エステル系化合物、芳香族ビニル系化合物が好ましく、(メタ)アクリル酸エステル系化合物がより好ましい。
【0119】
前記(メタ)アクリル酸エステル系化合物の代表的な例として、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレートなどの化合物(4')が挙げられる。
中でも、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0120】
前記芳香族ビニル系化合物としては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、2,6−ジメチルスチレン、3,4−ジメチルスチレン、3,5−ジメチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、2,4,5−トリメチルスチレン、ペンタメチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、o−ブロモスチレン、m−ブロモスチレン、p−ブロモスチレン、o−メトキシスチレン、m−メトキシスチレン、p−メトキシスチレン、2−ビニルビフェニル、3−ビニルビフェニル、4−ビニルビフェニル、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、4−ビニル−p−ターフェニル、1−ビニルアントラセン、α−メチルスチレン、o−イソプロペニルトルエン、m−イソプロペニルトルエン、p−イソプロペニルトルエン、2,4−ジメチル−α−メチルスチレン、2,3−ジメチル−α−メチルスチレン、3,5−ジメチル−α−メチルスチレン、p−イソプロピル−α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、α−クロロスチレン、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジイソプロピルベンゼン等が挙げられる。中でも、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレンが好ましい。
【0121】
前記(メタ)アクリルニトリル系化合物およびその誘導体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびその誘導体等が挙げられる。
【0122】
前記有機カルボン酸のビニルエステル系化合物およびその誘導体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、アジピン酸ジビニルおよびその誘導体等が挙げられる。
【0123】
前記有機カルボン酸のアリルエステル系化合物およびその誘導体としては、酢酸アリル、安息香酸アリル、アジピン酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、フタル酸ジアリルおよびその誘導体等が挙げられる。
【0124】
前記フマル酸のジエステル系化合物およびその誘導体としては、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジイソプロピル、フマル酸ジ−sec−ブチル、フマル酸ジイソブチル、フマル酸ジ−n−ブチル、フマル酸ジ−2−エチルヘキシル、フマル酸ジベンジルおよびその誘導体等が挙げられる。
【0125】
前記マレイン酸のジエステル系化合物およびその誘導体としては、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジイソプロピル、マレイン酸ジ−sec−ブチル、マレイン酸ジイソブチル、マレイン酸ジ−n−ブチル、マレイン酸ジ−2−エチルヘキシル、マレイン酸ジベンジルおよびその誘導体等が挙げられる。
【0126】
前記イタコン酸のジエステル系化合物およびその誘導体としては、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジイソプロピル、イタコン酸ジ−sec−ブチル、イタコン酸ジイソブチル、イタコン酸ジ−n−ブチル、イタコン酸ジ−2−エチルヘキシル、イタコン酸ジベンジルおよびその誘導体等が挙げられる。
【0127】
前記有機カルボン酸のN−ビニルアミド誘導体としては、N−メチル−N−ビニルアセトアミド等が挙げられる。
【0128】
前記環状エーテル含有ビニル化合物系化合物としては、3〜5員の環状エーテル基を有するビニル単量体が挙げられ、具体的にはオキシラン環(エポキシ基)含有重合性不飽和化合物、オキセタン環(オキセタニル基)含有重合性不飽和化合物、オキソラン環(オキソラニル基)含有重合性不飽和化合物等が挙げられる。
【0129】
前記マレイミドおよびその誘導体としては、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。
【0130】
前記末端が不飽和炭化水素基である化合物およびその誘導体としては、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、ビニルシクロヘキサン、塩化ビニル等が挙げられる。
【0131】
前記活性水素基およびエチレン性不飽和基の両方を有する化合物としては、活性水素基として水酸基、アミノ基、カルボキシル基およびメルカプト基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を有し、かつ、ラジカル重合が可能なエチレン性不飽和基を有する化合物等が挙げられる。
前記活性水素基としては、水酸基が好ましい。
【0132】
前記活性水素基およびエチレン性不飽和基の両方を有する化合物として具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート(但し、アルキレンの炭素数は1〜25である)、アミノエチル(メタ)アクリレート等の化合物(4'');2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル等のビニルエーテル系化合物;ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのモノエステル化物;ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのモノエステル化物にε−カプロラクトンを開環重合させた化合物やエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを開環重合させたヒドロキシル基含有化合物;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等のα,β−不飽和カルボン酸およびその酸無水物(無水マレイン酸、無水イタコン酸等);アリルアルコール等の不飽和アルコール系化合物;o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン等の不飽和フェノール系化合物;などが挙げられる。
【0133】
前記エチレン性不飽和基を有する化合物としては、下記式(4)で表される化合物であることが化合物(II)との反応性等の点から好ましい。
【0135】
前記R
7は、水素原子またはメチル基であり、R
8は、窒素原子、酸素原子および硫黄原子からなる群より選ばれる少なくとも1つの原子を含んでもよい炭素数1〜25の有機基である。
【0136】
R
8における炭素数1〜25の有機基として、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基等のアルキル基;シクロヘキシル基、ジシクロペンタニル基、イソボルニル基等の脂環式炭化水素基;フェニル基等のアリール基;ベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基等のアラルキル基;これらが2つ以上結合した基;ヘキサデシル(セチル)基、ヘプタデシル基、オクタデシル(ステアリル)基、ノナデシル基、イコシル基、ドコシル(ベヘニル)基等のアルキル基;10−シクロヘキシルデシル基、12−シクロヘキシルドデシル基、14−シクロヘキシルテトラデシル基、16−シクロヘキシルヘキサデシル基等の脂環式炭化水素基とアルキル基とが結合した基;10−フェニルデシル基、12−フェニルドデシル基、14−フェニルテトラデシル基、16−フェニルヘキサデシル基等のアラルキル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基(例えば、炭素数1〜10のアルコキシ基);フェノキシ基等のアリールオキシ基;シクロヘキシルオキシ基、ジシクロペンタニルオキシ基等の脂環式炭化水素基置換オキシ基;ベンジルオキシ基等のアラルキルオキシ基などの炭素数1〜25の炭化水素基置換オキシ基;ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、ヒドロキシヘキシル基、ヒドロキシオクチル基等のヒドロキシアルキル基;ヒドロキシメチルシクロヘキシル基;アミノエチル基;メルカプトエチル基;などが挙げられる。中でも炭素数が15以下である基が好ましく、炭素数7以下の基がより好ましい。
【0137】
前記式(4)で表される化合物としては、具体的には、例えば、前記化合物(4')および化合物(4'')が挙げられる。
【0138】
前記モノマー成分における、化合物(II)およびエチレン性不飽和基を有する化合物の割合は任意でよい。
前記共重合体中でそれぞれのモノマー成分に由来するモノマーユニットの占める質量の割合の例としては、化合物(II)由来のユニット:活性水素基を有さずエチレン性不飽和基を有する化合物由来のユニット=0.5〜20:80〜99.5(各ユニットの合計を100とする)のような割合が挙げられる。
また、化合物(II)由来のユニット、活性水素基を有さずエチレン性不飽和基を有する化合物由来のユニット、活性水素基およびエチレン性不飽和基の両方を有する化合物由来のユニットの3種のユニットを含む共重合体における各ユニットが占める割合は、前記3成分の合計を100質量%としたとき、化合物(II)由来のユニットが0.5〜20質量%、活性水素基を有さずエチレン性不飽和基を有する化合物由来のユニットが60〜99質量%、活性水素基およびエチレン性不飽和基の両方を有する化合物由来のユニットが0.5〜20質量%程度であることが好ましい。
前記モノマー成分における、化合物(II)およびエチレン性不飽和基を有する化合物の割合は、共重合体中の各ユニットの量が前記範囲となるよう調整すればよい。
【0139】
前記重合は、溶液重合、塊状重合、懸濁重合、塊状−懸濁重合、乳化重合(エマルジョン重合)など、スチレン系ポリマーやアクリル系ポリマーを製造する際に用いる慣用の方法により行うことができる。これらの中でも溶液重合および乳化重合が好ましい。
また、前記重合は、加熱して行ってもよいし、紫外線等を照射して行ってもよい。
【0140】
モノマーおよび必要により用いられる重合開始剤等は、それぞれ、反応系に一括供給してもよく、その一部または全部を反応系に滴下してもよい。例えば、一定温度に保持したモノマーと重合溶媒との混合液中に、重合開始剤を重合溶媒に溶解した溶液を滴下して重合する方法や、予めモノマーおよび重合開始剤を重合溶媒に溶解させた溶液を、一定温度に保持した重合溶媒中に滴下して重合する方法(滴下重合法)などを採用できる。
【0141】
重合に用いてもよい重合開始剤としては、通常のラジカル開始剤が使用できる。例えば、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル、2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2′−アゾビス(イソ酪酸)ジエチル、2,2′−アゾビス(イソ酪酸)ジブチル等の油溶性アゾ化合物;2,2′−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2′−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二硫酸塩二水和物、2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩等の水溶性アゾ化合物;メチルエチルケトンパーオキシド、メチルイソブチルケトンパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシド、アセチルアセトンパーオキシド、イソブチルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキシド、o−メチルベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、p−クロロベンゾイルパーオキシド、2,4,4−トリメチルペンチル−2−ヒドロパーオキシド、ジイソプロピルベンゼンパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、トリス(t−ブチルパーオキシ)トリアジン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシトリメチルアジペート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等のパーオキサイド系化合物;過酸化水素;などが挙げられる。過酸化物をラジカル重合開始剤として使用する場合、還元剤を組み合わせてレドックス型の開始剤としてもよい。
【0142】
前記の中でもアゾ化合物が好ましく、特に、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス(イソ酪酸)ジメチルが好ましい。
【0143】
前記重合反応を紫外線等を照射して行う場合には、ラジカル重合開始剤を用いてもよい。
該ラジカル重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、4−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、4,4'−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、ベンゾフェノン、メチル(o−ベンゾイル)ベンゾエート、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインオクチルエーテル、ベンジル、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、ジアセチル等のカルボニル化合物、メチルアントラキノン、クロロアントラキノン、クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン等のアントラキノンまたはチオキサントン誘導体、ジフェニルジスルフィド、ジチオカーバメート等の硫黄化合物が挙げられる。
【0144】
また、前記重合反応では、ラジカル重合において一般的に使用されている連鎖移動剤を併用してもよい。具体例としては、チオール系化合物(n−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、tert−ブチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、メルカプトエタノール、メルカプトプロパノール、トリエチレングリコールジメルカプタン等);チオール酸系化合物(メルカプトプロピオン酸、チオ安息香酸、チオグリコール酸、チオリンゴ酸等);アルコール系化合物(イソプロピルアルコール等);アミン系化合物(ジブチルアミン等);次亜燐酸塩系化合物(次亜燐酸ナトリウム等);α−メチルスチレンダイマー、タービノーレン、ミルセン、リモネン、α−ピネン、β−ピネンなどが挙げられる。連鎖移動剤を使用する場合は、予めモノマー成分に混合させておくことが好ましい。
【0145】
前記重合反応は、無溶媒または重合溶媒存在下に行うことができる。重合溶媒は用いるモノマー等に応じて適宜選択できる。使用できる有機溶媒としては、イソシアネートと反応性が低いものであればよく、例えば、エーテル(ジエチルエーテル、エチレングリコールモノまたはジアルキルエーテル、ジエチレングリコールモノまたはジアルキルエーテル(ジエチレングリコールメチルエチルエーテル等のジエチレングリコールジアルキルエーテルなど)、プロピレングリコールモノまたはジアルキルエーテル、プロピレングリコールモノまたはジアリールエーテル、ジプロピレングリコールモノまたはジアルキルエーテル(ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のジプロピレングリコールジアルキルエーテルなど)、トリプロピレングリコールモノまたはジアルキルエーテル、1,3−プロパンジオールモノまたはジアルキルエーテル、1,3−ブタンジオールモノまたはジアルキルエーテル、1,4−ブタンジオールモノまたはジアルキルエーテル、グリセリンモノ,ジまたはトリアルキルエーテル等のグリコールエーテル系化合物などの鎖状エーテル;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテルなど)、エステル(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソアミル、乳酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、C
5-6シクロアルカンジオールモノまたはジアセテート、C
5-6シクロアルカンジメタノールモノまたはジアセテート等のカルボン酸エステル系化合物;エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、エチレングリコールモノまたはジアセテート、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノまたはジアセテート、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノまたはジアセテート、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノまたはジアセテート、1,3−プロパンジオールモノアルキルエーテルアセテート、1,3−プロパンジオールモノまたはジアセテート、1,3−ブタンジオールモノアルキルエーテルアセテート、1,3−ブタンジオールモノまたはジアセテート、1,4−ブタンジオールモノアルキルエーテルアセテート、1,4−ブタンジオールモノまたはジアセテート、1,6−ヘキサンジオールモノまたはジアセテート、グリセリンモノ,ジまたはトリアセテート、グリセリンモノまたはジC
1-4アルキルエーテルジまたはモノアセテート、トリプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノまたはジアセテート等のグリコールアセテート系化合物、グリコールエーテルアセテート系化合物、γ−ブチロラクトンなど)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、3,5,5−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−オン、イソホロンなど)、アミド(N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドなど)、スルホキシド(ジメチルスルホキシドなど)、炭化水素(トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ニトロベンゼン等の芳香族炭化水素、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素)、N−メチル−2−ピロリドン、クロロホルム、塩化メチレン等、またこれらの混合溶媒などが挙げられる。
【0146】
前記重合反応は、窒素等の不活性ガス雰囲気下や脱水条件下で行うことが望ましい。反応温度としては、使用する重合開始剤に合わせて最適な温度を選定することが望ましいが、化合物(I)のイソシアナト基が再生しない程度の温度(イソシアナト保護基の解離温度以下)が好ましく、20〜80℃がより好ましい。
【0147】
また、前記重合反応は、化合物(I)と必要に応じてエチレン性不飽和基を有する化合物を含むモノマー成分に光を照射させてもよい。この場合、例えば、紫外線等を照射すればよく、該成分の組成などに応じて適宜照射量等を調節すればよい。
【0148】
前記方法で得られる前記重合体(I)の数平均分子量は、好ましくは3,000〜200,000、より好ましくは5,000〜100,000である。数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定し、ポリスチレンに換算した値である。
【0149】
≪硬化性組成物≫
本発明の硬化性組成物は、前記化合物(I)または重合体(I)を含む。
このような硬化性組成物は、一液性で保存安定性がよく、塗料や接着剤として使用したとき穏和な条件で硬化させることができると考えられる。
【0150】
本発明の硬化性組成物は、前記反応で得られた化合物(I)または重合体(I)と、それら合成の際に必要により用いられる触媒および溶媒等とを含む組成物をそのまま、またはさらに他の成分を添加して本発明の硬化性組成物として用いることができる。また、本発明の硬化性組成物は、前記反応で得られた前記化合物(I)または重合体(I)を固体分として単離した後、他の成分を混合したものであってもよい。
【0151】
本発明の硬化性組成物は、具体的には、(i)化合物(I)を含む組成物;(ii)化合物(I)を含むモノマー成分からなる単独重合体を含む組成物;(iii)化合物(I)と活性水素基を有さずエチレン性不飽和基を有する化合物とを含むモノマー成分からなる共重合体を含む組成物;(iv)化合物(I)と活性水素基およびエチレン性不飽和基の両方を有する化合物とを含むモノマー成分からなる共重合体を含む組成物;ならびに(v)前記(i)〜(iv)に記載の組成物に、さらに活性水素基を有する化合物を含む組成物などが挙げられる。
前記組成物に含まれる成分は、それぞれ1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0152】
前記組成物(v)にさらに配合する活性水素基を有する化合物としては、活性水素基を複数有する化合物(以下「化合物(A)」ともいう。)が、前記組成物の硬化性等の点から好ましい。
【0153】
前記組成物に硬化性をもたせるためには、化合物(I)として、活性水素基を有しない化合物を用いる場合であって、前記(i)〜(iii)の場合、化合物(A)をこれらの組成物中に含むことは必須であるが、(iv)の場合は必須ではない。
【0154】
前記化合物(A)における活性水素基としては、水酸基、アミノ基、カルボキシル基およびメルカプト基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基が挙げられる。分子内に異なる種類の活性水素基を有しても、同じ種類の活性水素基を複数有してもよいが、後者が好ましい。
【0155】
前記化合物(A)としては、多官能性アルコール化合物、多官能性カルボン酸、多官能性アミン、多官能性チオール化合物などが挙げられる。これらの中でも特に、多官能性アルコール化合物または多官能性チオール化合物が好ましい。
なお、「多官能性化合物」とは、官能基(ここでは活性水素基)を2つ以上有する化合物のことをいう。
【0156】
多官能性アルコール化合物としては、ヒドロキシル基を2個以上有する化合物であればよく、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、D−グルコース、D−グルシトール、イソプレングリコール、ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール等のポリオール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリカプロラクトンジオール、ポリカプロラクトントリオール、ポリカーボネートジオールなどのポリマーポリオール系化合物;等が挙げられる。
【0157】
中でも、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールが好ましい。
【0158】
ポリマーポリオール系化合物としては、例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアルコールなどの水酸基を有するオレフィンと他のオレフィンとを共重合させたポリオールや、重合時の仕込みモル比を調整して末端に水酸基を残したポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、さらには樹脂を変性して水酸基を導入したポリブタジエンポリオールまたは水酸基末端ポリオレフィンポリオール等や、これらから誘導されるポリオールなどが挙げられる。
【0159】
前記ポリマーポリオール系化合物の中でも、入手の容易さ、取り扱いの容易さ、および反応性などの点から、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールが特に好ましい。
【0160】
ポリエーテルポリオールとしては、具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、テトラメチレングリコールとネオペンチルグリコールとの共重合体、テトラメチレングリコールと2−メチル−1,4−ブタンジオールとの共重合体等が挙げられる。
【0161】
また、ポリエステルポリオールとしては、2価の有機酸とジオールとの縮重合物であってよく、具体的にはアジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等と1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール等との重縮合物で末端に水酸基を有する化合物およびポリカプロラクトンジオール、ポリブチロラクトンジオール等のポリラクトン系ジオールなどが挙げられる。
【0162】
ポリカーボネートポリオールとしては、具体的には、ヘキサメチレンカーボネート、ペンタメチレンカーボネート、テトラメチレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール等に由来の単位を構成単位として含むポリカーボネート系ジオールがある。
【0163】
ポリブタジエンポリオールとしては、1,4−繰り返し単位を主に有する水酸化ポリブタジエン、水酸化水素化ポリブタジエン、1,2−繰り返し単位を主に有する水酸化ポリブタジエン、水酸化水素化ポリブタジエン、水酸基末端ポリイソプレン、水素化ポリイソプレンが挙げられる。
【0164】
水酸基末端ポリオレフィンポリオールとは、末端に水酸基を有するポリオレフィン系化合物のことを指し、具体的な製品としては、ポリテールH、ポリテールHA(以上、三菱化学(株)製)、エポール(出光石油化学(株)製)、NISSO−PBG−1000(日本曹達(株)製)(以上いずれも商品名)等が挙げられる。
【0165】
また、前記多官能性アルコール化合物として、前記ポリオールと必要に応じて低分子ジオールを、ポリイソシアネート化合物と反応させて、重合時の仕込みモル比を調整して末端に水酸基を残したポリマーポリオールを使用することもできる。
この反応に使用できるポリイソシアネートとしては、具体的には、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−トリメチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,9−ノナメチレンジイソシアネート、1,10−デカメチレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、2,2'−ジエチルエーテルジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアネート、(o,mまたはp)−キシレンジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、シクロヘキサン−1,3−ジメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジメチレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、3,3'−メチレンジトリレン−4,4'−ジイソシアネート、4,4'−ジフェニルエーテルジイソシアネート、テトラクロロフェニレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水素化(1,3−または1,4−)キシリレンジイソシアネート等のジイソシアネートが挙げられる。これらのポリイソシアネートは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0166】
前記ポリイソシアネートの1分子当たりのイソシアナト基は通常2個であるが、ゲル化をしない範囲でトリフェニルメタントリイソシアネートのようなイソシアナト基を3個以上有するポリイソシアネートを少量使用することもできる。
【0167】
前記ポリイソシアネートのうちでも、特に、イソシアナト基(NCO基)以外の炭素原子数が6〜30である脂環式化合物あるいは芳香族化合物を用いることが好ましく、これらの芳香族および/または脂環式化合物としては1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、シクロヘキサン−1,3−ジメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジメチレレンジイソシアネート、水素化(1,3−または1,4−)キシリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアネート等が挙げられる。
【0168】
多官能性チオール化合物としては、メルカプト基を2個以上有する化合物であればよく、例えば、ヘキサンジチオール、デカンジチオール、1,4−ブタンジオールビスチオプロピオネート、1,4−ブタンジオールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート、トリメルカプトプロピオン酸トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、1,4−ジメチルメルカプトベンゼン、2,4,6−トリメルカプト−s−トリアジン、2−(N,N−ジブチルアミノ)−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、テトラエチレングリコールビス3−メルカプトプロピオネート、トリメチロールプロパントリス3−メルカプトプロピオネート、トリス(3−メルカプトプロピニルオキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラキス3−メルカプトプロピオネート、ジペンタエリスリトールテトラキス3−メルカプトプロピオネート、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、1,3,5−トリス(3−メルカブトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)などが挙げられる。
【0169】
多官能性アミンとしては、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,2−ジアミノ−2−メチルプロパン、1,5−ジアミノペンタン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,12−ジアミノドデカン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,2−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン、1,4−フェニレンジアミン、α,α’−ジアミノ−p−キシレン等が挙げられる。
【0170】
多官能性カルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、メチルマロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、1,7−ヘプタンジカルボン酸、1,8−オクタンジカルボン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,2−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,2,3−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸等が挙げられる。
【0171】
本発明の硬化性組成物における化合物(A)の含有量は、活性水素基の数が、硬化性組成物に含まれる化合物(I)または重合体(I)における活性水素基と反応可能な基の数に対して、0.1〜5倍となるように調整することが好ましく、より好ましくは0.3〜3倍、さらに好ましくは0.8〜1.5倍となるように調整する。
【0172】
また、前記硬化性組成物には感放射線性成分を配合することもできる。感放射線性成分としては、多官能性ウレタン(メタ)アクリレート、多官能性エポキシ(メタ)アクリレート(エポキシ基にアクリル酸を付加したタイプ)を含む多官能性(メタ)アクリレート、多官能性エポキシ化合物等が挙げられる。
多官能性(メタ)アクリレートを用いる場合には、熱または放射線重合開始剤を組み合わせて配合してもよく、多官能性エポキシ化合物を用いる場合には、熱または放射線酸発生剤を組み合わせて配合してもよい。これら感放射線性成分や熱または放射線重合開始剤、熱または放射線酸発生剤はそれぞれ1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0173】
多官能性(メタ)アクリレートの具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルキレングリコールのジ(メタ)アクリレート系化合物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコールのジ(メタ)アクリレート系化合物、両末端ヒドロキシポリブタジエン、両末端ヒドロキシポリイソプレン、両末端ヒドロキシポリカプリラクトンなどの両末端ヒドロキシル化重合体のジ(メタ)アクリレート系化合物、グリセリン、1,2,4,−ブタントリオール、トリメチロールアルカン、テトラメチロールアルカン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどの3価以上の多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート系化合物、3価以上の多価アルコールのポリアルキレングリコール付加物のポリ(メタ)アクリレート系化合物、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−ベンゼンジオール系化合物などの環式ポリオールのポリ(メタ)アクリレート系化合物、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、アルキッド樹脂(メタ)アクリレート、シリコン樹脂(メタ)アクリレート、スピラン樹脂(メタ)アクリレート等のオリゴ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。多官能性(メタ)アクリレートは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0174】
多官能性エポキシ化合物としては、例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3',4'−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート構造を有する脂環式エポキシ化合物などを使用できる。多官能性エポキシ化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0175】
本発明の硬化性組成物には、前述以外に、必要により硬化触媒、溶媒、重合禁止剤、硬化剤、触媒(ブロック剤を解離させるための触媒)、添加剤(充填剤、消泡剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、低応力化剤、可とう性付与剤、ワックス系化合物、樹脂、架橋剤、ハロゲントラップ剤、レベリング剤、濡れ改良剤等)、ガラス微粒子、金属酸化物微粒子、ゴム微粒子、セラミック微粒子等の微粒子、ガラス繊維、ファイバー繊維、ケプラ繊維等の繊維などの任意成分を加えてもよい。
これらの任意成分は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0176】
本発明の硬化性組成物は、場合によっては硬化触媒を含んでもよい。より低温・短時間で組成物を硬化させるためには、本発明の硬化性組成物は硬化触媒を含むことが好ましい。
前記硬化触媒としては、熱酸発生剤、光酸発生剤、光ラジカル開始剤などが挙げられる。
硬化触媒の添加量は、硬化性組成物中の前記化合物(I)または重合体(I)に対して、例えば0.05〜10質量%、好ましくは0.5〜5質量%である。
【0177】
前記硬化触媒のうち、熱酸発生剤、光酸発生剤としては、例えば、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、セレニウム塩、オキソニウム塩、アンモニウム塩等を使用できる。
【0178】
光ラジカル開始剤としては、例えばベンゾフェノン、アセトフェノンベンジル、ベンジルジメチルケトン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ジメトキシアセトフェノン、ジメトキシフェニルアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ジフェニルジサルファイト、オルトベンゾイル安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、2,4−ジエチルチオキサントン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、3,3',4,4'−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、4,4−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、2,2'−ビス(2−クロロフェニル)−4,5,4',5'−テトラフェニル−1,2'−ビイミダゾ−ル等を単独、もしくは混合して使用することができる。
なお、光ラジカル開始剤を用いる場合には、必要に応じて光増感剤を加えてもよい。
【0179】
また、本発明の硬化性組成物は溶媒を含んでいてもよい。溶媒としては、特に制限されないが、前記した化合物(I)や重合体(I)を合成する際に用いる不活性溶媒やn−オクタノール等が好ましい。溶媒の使用量は、特に制限されず、所望の用途、膜の形成方法、基材の種類等に応じて適宜調整すればよい。
【0180】
前記硬化剤としては、例えば、フェノール樹脂、酸無水物などが挙げられる。フェノール樹脂としては、例えば、フェノールまたはクレゾールをホルムアルデヒドを用いて重合させた樹脂を使用できる。この樹脂は、ジシクロペンタジエン、ナフタレン、ビフェニルなどの脂環式化合物または芳香族化合物を共重合させたものであってもよい。フェノール樹脂の添加量は、前記化合物(I)または重合体(I)100質量部に対して、通常0〜200質量部程度、例えば5〜200質量部の範囲で適宜選択できる。
【0181】
前記酸無水物としては、多塩基酸無水物が挙げられ、具体的には、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、Δ4−テトラヒドロ無水フタル酸、4−メチル−Δ4−テトラヒドロ無水フタル酸、3−メチル−Δ4−テトラヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸、無水メチルナジック酸、水素化メチルナジック酸無水物、4−(4−メチル−3−ペンテニル)テトラヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸、無水アジピン酸、無水マレイン酸、無水セバシン酸、無水ドデカン二酸、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物、ドデセニル無水コハク酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、3−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体、アルキルスチレン無水マレイン酸共重合体などが挙げられる。酸無水物の配合量は、前記化合物(I)または重合体(I)100質量部に対して、通常0〜160質量部程度、例えば20〜160質量部の範囲で適宜選択できる。
【0182】
前記ブロック剤を解離させるための触媒、すなわち硬化促進剤の役割を果たすものとしては、一般に使用されるものであれば特に制限されないが、ジアザビシクロウンデセン系硬化促進剤(ジアザビシクロアルケン系化合物)、リン酸エステル、ホスフィン系化合物、テトラ−n−ブチルホスホニウム−O,O−ジエチルホスホロジチオエートなどの芳香族を含まないリン化合物(ホスホニウム塩等)などのリン系硬化促進剤や、3級アミンもしくは4級アンモニウム塩などのアミン系硬化促進剤が挙げられる。
【0183】
3級アミンとしては、具体的にはベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン等の化合物が挙げられる。
【0184】
ジアザビシクロウンデセン系硬化促進剤としては、例えば、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)およびその塩(オクチル酸塩、スルホン酸塩、オルソフタル酸塩、石炭酸塩等の有機酸塩)を挙げることができる。
さらに、該ジアザビシクロアルケン系化合物の有機酸塩とともに、金属有機酸塩を併用することができる。金属有機酸塩としては、例えば、オクチル酸スズ、ナフテン酸スズ、オクチル酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛が挙げられる。
【0185】
前記以外の硬化促進剤としては、例えば、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール系化合物、オクチル酸スズ、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド等の有機スズ化合物、オクチル酸ビスマス、デカン酸ビスマス等の有機ビスマス化合物などの公知の化合物を挙げることができる。
【0186】
本発明の硬化性組成物における硬化促進剤の配合量は、前記化合物(I)、重合体(I)および活性水素基を有する化合物などのモノマー成分の合計量100質量部に対して、例えば0.00001〜5質量部の範囲で適宜選択できる。
【0187】
本発明の硬化性組成物は、例えば、液状レジスト、フィルムレジスト、カラーフィルターレジスト、半導体用テープ、粘着剤、接着剤などに用いる電子材料として;印刷(刷版、カラー校正)に用いる組成物として;ソフトコンタクトレンズ材料、歯科材料などの医療材料として;繊維、紙、木材などの表面処理剤として;トップコート、補修用塗料、部品塗料などの自動車用材料として;家電などの電化製品に用いられる基板材料、絶縁材料などとして;セメントプライマー、塗料、接着剤などの建築用材料として好適に用いることができる。
【0188】
本発明の硬化性組成物を加熱することで硬化させ、得られる硬化物を使用する場合であって、特に工場のラインでの加熱ではなく、現場施工する場合(例として構造物・コンクリートなどの塗装や、接着など)、現場で加熱できる温度は、ヒーターを使用しても塗膜温度としては120℃程度である。よって、低温でイソシアナト基を再生させることができる前記化合物(I)または重合体(I)を含む本発明の硬化性組成物は、このような用途にも好適に用いることができる。
【0189】
≪硬化物の形成方法≫
前記硬化性組成物を塗料や接着剤などの用途に用いる際には、前記硬化性組成物を基材(塗布・接着の対象物)上に塗布し、硬化させる工程を含むことが好ましい。
【0190】
前記硬化性組成物は、比較的低温で化合物(I)や重合体(I)からイソシアナト保護基が解離し硬化する傾向にあるため、変性温度が比較的低い基材であってもその上で加熱硬化させることができる。
【0191】
前記基材としては、変性温度が70℃以上である基材が好ましく、90℃以上である基材がより好ましい。
基材の変性温度の上限値は特になく、変性温度が高温である基材を用いてもよい。しかし本発明のイミドブロック体の、低温でブロック剤残基を解離できるという利点が大いに発揮されるのは、好ましくは変性温度が130℃以下の基材、より好ましくは110℃以下の基材に用いる場合である。
なお、「変性温度」とは、基材の透明性などの物性が変化する温度のことのみならず、基材の形状が変化する温度のことも含む。
【0192】
前記基材としては、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、ポリエチレン、ポリアセタール、またはポリカーボネートなどからなる樹脂製基材、シリコンなどからなる金属製基材、ガラス基材等が挙げられる。これらの中でも、本発明の効果がより発揮されることなどから、前記樹脂製基材が好ましい。
【0193】
前記硬化性組成物を基材上に塗布する方法としては、ロールコート法、グラビアコート法、スピンコート法、スリットコート法、ディッピング法およびドクターブレード、ダイス、コーター、スプレー、ハケ、ロールなどを用いて塗布する方法等が挙げられる。なお、塗布の繰り返しにより膜の厚みや表面平滑性などを制御してもよい。
【0194】
基材上に塗布した組成物を硬化させる方法としては、該組成物を加熱する方法や、該組成物に光を照射する方法などが挙げられる。この中でも、該組成物に含まれる化合物(I)や重合体(I)は、比較的低温で反応性のイソシアナト基を再生することができるため、加熱する方法が好ましい。
【0195】
前記加熱の温度や時間は、用いる基材等に応じて適宜選択すればよいが、温度としては例えば60℃〜220℃が好ましく、硬化時間としては、0.01〜10時間が好ましい。
なお、前記加熱は、減圧下で行ってもよく、不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。
【0196】
また、前記組成物に光を照射する場合には、紫外線等を照射すればよく、組成物の組成や基材の種類などに応じて適宜調節すればよい。
【0197】
このようにして得られた硬化物は、基材から剥離して所望の用途に用いてもよく、基材から剥離せずにそのまま所望の用途に用いてもよい。
【0198】
本発明の硬化物は、電子材料(フィルムレジスト、カラーフィルターレジスト、半導体用テープ)、医療(ソフトコンタクトレンズ、歯科材料)、自動車用塗膜、家電材料(基板、絶縁材料)、建築用材料(塗膜)などに好適に用いられる。
【実施例】
【0199】
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能なものである。
【0200】
[実施例1]MOI−フタルイミドブロック体(MOI−PI)の合成
攪拌機、コンデンサーおよび温度計を備えた1Lセパラブルフラスコにフタルイミド147g、トリエチルアミン1.0g、および酢酸エチル300mLを入れ、室温で30分攪拌した。30分後、別の200mL容器に入った2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工(株)製、カレンズMOI(登録商標))155gを30分かけて滴下した。滴下終了後24時間攪拌し、得られた反応液をろ過し、ろ物を酢酸エチル50mLで洗浄した。得られた粉末を真空乾燥機で乾燥し、目的の2−[(フタルイミド)カルボニルアミノ]エチルメタクリレート(MOI−PI)を収率95%で得た。得られた生成物を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析し、純度を決定するとともにNMR(製造元:日本電子(株)製、型番:AL−400)測定により構造を確認した。得られたNMRスペクトルを
図1に示す。なお、純度は99.5%であった。
【0201】
[実施例2]MOI−スクシンイミドブロック体(MOI−SI)の合成
フタルイミドの代わりにスクシンイミド99gを用いた以外は、実施例1と同じように反応を行い、目的の2−[(スクシンイミド)カルボニルアミノ]エチルメタクリレート(MOI−SI)を収率95%で得た。実施例1と同様に生成物の構造および純度を確認した。得られたNMRスペクトルを
図2に示す。なお、純度は99.5%であった。
【0202】
[実施例3]MOI−マレイミドブロック体(MOI−MI)の合成
フタルイミドの代わりにマレイミド97gを用いた以外は、実施例1と同じように反応を行い、目的の2−[(マレイミド)カルボニルアミノ]エチルメタクリレート(MOI−MI)を収率80%で得た。実施例1と同様に生成物の構造および純度を確認した。得られたNMRスペクトルを
図3に示す。なお、純度は92.1%であった。
【0203】
[実施例4]MOI−グルタルイミドブロック体(MOI−GI)の合成
フタルイミドの代わりにグルタルイミド113gを用いた以外は、実施例1と同じように反応を行い、目的の2−[(グルタルイミド)カルボニルアミノ]エチルメタクリレートを収率75%で得た。実施例1と同様に生成物の構造および純度を確認した。得られたNMRスペクトルを
図4に示す。なお、純度は90.0%であった。
【0204】
[実施例5]MOI−ジアセトアミドブロック体(MOI−AI)の合成
フタルイミドの代わりにジアセトアミド101gを用いた以外は、実施例1と同じように反応を行い、目的の2−[(ジアセトアミド)カルボニルアミノ]エチルメタクリレート(MOI−AI)を収率50%で得た。実施例1と同様に生成物の構造および純度を確認した。得られたNMRスペクトルを
図5に示す。なお、純度は93.0%であった。
【0205】
[実施例6]AOI−フタルイミドブロック体(AOI−PI)の合成
攪拌機、コンデンサーおよび温度計を備えた1Lセパラブルフラスコにフタルイミド147g、トリエチルアミン1.0g、およびテトラヒドロフラン(THF)300mLを入れ、室温で30分攪拌した。30分後、別の200mL容器に入った2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工(株)製、カレンズAOI(登録商標))141gを30分かけて滴下した。滴下終了後24時間攪拌し、得られた反応液をろ過し、ろ物をTHF50mLで洗浄した。得られた粉末を真空乾燥機で乾燥し、目的の2−[(フタルイミド)カルボニルアミノ]エチルアクリレート(AOI−PI)を収率72%で得た。得られた生成物の純度および構造を実施例1と同様に確認した。得られたNMRスペクトルを
図6に示す。なお、純度は99.5%であった。
【0206】
[実施例7]AOI−スクシンイミドブロック体(AOI−SI)の合成
フタルイミドの代わりにスクシンイミド99gを用いた以外は、実施例6と同じように反応を行い、目的の2−[(スクシンイミド)カルボニルアミノ]エチルアクリレート(AOI−SI)を収率70%で得た。実施例1と同様に生成物の構造および純度を確認した。得られたNMRスペクトルを
図7に示す。なお、純度は99.5%であった。
【0207】
[実施例8]AOI−マレイミドブロック体(AOI−MI)の合成
フタルイミドの代わりにマレイミド97gを用いた以外は、実施例6と同じように反応を行い、目的の2−[(マレイミド)カルボニルアミノ]エチルアクリレート(AOI−MI)を収率70%で得た。実施例1と同様に生成物の構造および純度を確認した。得られたNMRスペクトルを
図8に示す。なお、純度は92.8%であった。
【0208】
[実施例9]MOI−EG−フタルイミドブロック体(MOI−EG−PI)の合成
攪拌機、コンデンサーおよび温度計を備えた1Lセパラブルフラスコにフタルイミド147g、トリエチルアミン1.0g、およびTHF300mLを入れ、室温で30分攪拌した。30分後、別の200mL容器に入った2−(2−メタクリロイルオキシエチルオキシ)エチルイソシアネート(昭和電工(株)製、カレンズMOI−EG(登録商標))170gを30分かけて滴下した。滴下終了後24時間攪拌し、得られた反応液から溶媒を除去し、目的の2−[(フタルイミド)カルボニルアミノエチルオキシ]エチルメタクリレート(MOI−EG−PI)を収率99%<で得た。得られた生成物の純度および構造を実施例1と同様に確認した。得られたNMRスペクトルを
図9に示す。なお、純度は89.2%であった。
【0209】
[実施例10]MOI−EG−スクシンイミドブロック体(MOI−EG−SI)の合成
フタルイミドの代わりにスクシンイミド99gを用いた以外は、実施例9と同じように反応を行い、目的の2−[(スクシンイミド)カルボニルアミノエチルオキシ]エチルメタクリレート(MOI−EG−SI)を収率70%で得た。実施例1と同様に生成物の構造および純度を確認した。得られたNMRスペクトルを
図10に示す。なお、純度は91.7%であった。
【0210】
[比較例1]
比較例1として、下記式(11)で表される化合物を用いた。
「MOI−BM」・・・メタクリル酸 2−(0−[1'−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル(昭和電工(株)製、カレンズMOI−BM(登録商標))
【0211】
【化27】
【0212】
[比較例2]
比較例2として、下記式(12)で表される化合物を用いた。
「MOI−BP」・・・2−[(3,5−ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]エチルメタクリレート(昭和電工(株)製、カレンズMOI−BP(登録商標))
【0213】
【化28】
【0214】
[比較例3]AOI−メチルエチルケトンN−オキシムブロック体(AOI−BM)の合成
攪拌機、コンデンサーおよび温度計を備えた500mL三つ口フラスコにカレンズAOI(240g)およびBHT0.2gを入れ10℃とした。そこに、別の200mL容器に入ったメチルエチルケトンN−オキシム148.2gを5時間かけて滴下した。滴下終了後、1時間室温で攪拌し、目的のアクリル酸 2−(0−[1'−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル(AOI−BM)を得た。収率は99%<であった。得られた生成物を高速液体クロマトグラフィーにて分析し、純度を決定した。(純度99.5%)
【0215】
[比較例4]AOI−3,5−ジメチルピラゾールブロック体(AOI−BP)の合成
攪拌機、コンデンサーおよび温度計を備えた500mL三つ口フラスコに3,5−ジメチルピラゾール96gおよびBHT0.2gを入れ、これらをトルエン200mLで溶かし、得られた溶液を10℃にした。そこに、別の200mL容器に入ったカレンズAOI(141g)を2時間かけて滴下した。滴下終了後1時間攪拌し、得られた反応液をろ過し、目的の2−[(3,5−ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]エチルアクリレート(AOI−BP)得た。収率は90%であった。得られた生成物を高速液体クロマトグラフィーにて分析し純度を決定した(純度99%<)。
【0216】
≪脱ブロック化反応の進行度の測定≫
実施例1で合成したイミドブロック体5.0g、フェノチアジン0.14g、および、触媒としてジブチルスズラウレート0.14gを、該ブロック体に対して4当量のn−オクタノール中で混合した。得られた組成物を90℃および110℃において、表1に示す時間加熱した時の、残存しているブロック体量を、HPLC(製造元:Agilent Technologies、型番:1200Sreies)を用いて測定し、下記式に従って脱ブロック化反応の進行度(%)を求めた。
脱ブロック化反応の進行度(%)=[[(加熱前のイミドブロック体量(モル))−(残存しているブロック体量(モル)]/(加熱前のイミドブロック体量(モル))]×100(%)
結果を表1に示す。なお、HPLCの測定条件は以下のとおりである。
カラム:KF−801×4
溶媒:THF
流速:0.8mL/min
オーブン温度:40℃
検出器:RIおよびUV
【0217】
実施例1で合成したイミドブロック体の代わりに、実施例2、6および7で合成したイミドブロック体を使用した以外は、前記と同様にして、脱ブロック化反応の進行度の測定を行った。結果を表1に示す。
【0218】
実施例1で合成したイミドブロック体の代わりに、比較例1〜4のブロック体を使用し、加熱温度を100℃または120℃にし、加熱時間を30分にした以外は前記と同様にして、脱ブロック化反応の進行度の測定を行った。結果を表2に示す。
【0219】
実施例の化合物はいずれも、90℃の条件下、15分以内の短時間にて90%以上脱ブロック化反応が進行していた。比較例の化合物はいずれも、100℃で30分間の加熱を行っても脱ブロック化反応は十分に進行していなかった。
【0220】
【表1】
【0221】
【表2】
【0222】
[実施例11] AOI−PIの共重合体(溶液重合)
攪拌機、コンデンサーおよび温度計を備えた1Lセパラブルフラスコ内に窒素を適量流して窒素雰囲気とし、メチルエチルケトン100gを入れ、撹拌しながらメチルエチルケトンが還流するまで加熱した。次いで該フラスコ内に、アクリル酸ブチル155.4g、メタクリル酸メチル108.7g、実施例6で得られたAOI−PI(13.9g)、および2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル)1gをメチルエチルケトン170gに40℃で溶解して得られたモノマー混合液を、滴下ポンプを用いて約2時間かけて滴下した。滴下終了後、モノマー混合液の容器内壁の付着物をメチルエチルケトン15gで該フラスコ内に洗い流した。そのまま0.5時間加熱を続けた後、2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル)0.5gをメチルエチルケトン5gに溶解したものを滴下し、そのままさらに1時間加熱を続けた後、2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル)0.5gをメチルエチルケトン5gに溶解したものを滴下した。そのままさらに3時間加熱を続けた後、室温まで冷却し、メチルエチルケトン125gで希釈した後、ろ過してろ液(共重合体液(A))を得た。共重合体液(A)は固形分濃度が41.6%であった。なお、共重合体液(A)における固形分はすべて共重合体である。
なお、以下の実施例および比較例においても、得られた共重合体液中の固形分は、同様にすべて共重合体であった。
【0223】
[実施例12] AOI−PIの共重合体(溶液重合)
攪拌機、コンデンサーおよび温度計を備えた1Lセパラブルフラスコ内に窒素を適量流して窒素雰囲気とし、メチルエチルケトン100gを入れ、撹拌しながらメチルエチルケトンが還流するまで加熱した。次いで該フラスコ内に、アクリル酸ブチル147.0g、メタクリル酸メチル102.8g、2−ヒドロキシエチルメタアクリレート14.4g、AOI−PI(13.9g)、および2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル)1gをメチルエチルケトン170gに40℃で溶解して得られたモノマー混合液を、滴下ポンプを用いて約2時間かけて滴下した。滴下終了後、モノマー混合液の容器内壁の付着物をメチルエチルケトン15gで該フラスコ内に洗い流した。そのまま0.5時間加熱を続けた後、2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル)0.5gをメチルエチルケトン5gに溶解したものを滴下し、そのままさらに1時間加熱を続けた後、2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル)0.5gをメチルエチルケトン5gに溶解したものを滴下した。そのままさらに3時間加熱を続けた後、室温まで冷却し、メチルエチルケトン125gで希釈した後、ろ過してろ液(共重合体液(B))を得た。共重合体液(B)は固形分濃度が39.9%であった。
【0224】
[実施例13] AOI−PIの共重合体(エマルジョン重合)
攪拌機、コンデンサーおよび温度計を備えた1Lセパラブルフラスコ内に窒素を適量流して窒素雰囲気とし、無水第2リン酸ナトリウム0.99g、イタコン酸3.0gおよびイオン交換水290.7gを入れ、攪拌しながら50℃に昇温させた。
一方、1L容器中に界面活性剤であるアクアロンKH−10(10%水溶液、第一工業製薬(株)製)158.6g、イオン交換水79.5g、ヒドロキシエチルメタクリレート14.9g、AOI−PI(21.8g)、メタクリル酸メチル159.4g、およびアクリル酸エチル239.4gを入れ、ホモミキサーで乳化させた液のうち67.1gを、前記50℃に昇温させた1Lセパラブルフラスコへ添加した。さらに、過硫酸カリウム0.60gおよび重亜硫酸ナトリウム0.30gを該1Lセパラブルフラスコへ添加し、50℃で0.5時間加熱を継続した。
続いて、予め過硫酸カリウム0.60gおよび重亜硫酸ナトリウム0.30gを温水10.8gに溶解させた水溶液と前記0.5時間加熱後の乳化液とを5時間かけて別々に滴下ポンプを用いて空の1Lセパラブルフラスコへ滴下した。滴下終了後、50℃で1.5時間加熱を継続した後、室温まで冷却し、ろ過してろ液(共重合体液(C))を得た。共重合体液(C)は固形分濃度が44.9%であった。
【0225】
[比較例5] MOI−BMの共重合体(溶液重合)
AOI−PIの代わりに、カレンズMOI−BM(13.9g)を用いた以外は、実施例11と同様の処理を行い、共重合体液(D)を得た。共重合体液(D)は、重合固形分濃度が40.6%であった。
【0226】
[比較例6] MOI−BPの共重合体(溶液重合)
AOI−PIの代わりに、カレンズMOI−BP(13.9g)を用いた以外は、実施例11と同様の処理を行い、共重合体液(E)を得た。共重合体液(E)は、固形分濃度が41.2%であった。
【0227】
[比較例7] MOI−BMの共重合体(溶液重合)
AOI−PIの代わりに、カレンズMOI−BM(13.9g)を用いた以外は、実施例12と同様の処理を行い、共重合体液(F)を得た。共重合体液(F)は、固形分濃度が40.3%であった。
【0228】
[比較例8] MOI−BMの共重合体(エマルジョン重合)
AOI−PIの代わりに、カレンズMOI−BM(21.8g)を用いた以外は、実施例13と同様の処理を行い、共重合体液(G)を得た。共重合体液(G)は、固形分濃度が44.1%であった。
【0229】
[比較例9] MOI−BPの共重合体(エマルジョン重合)
AOI−PIの代わりに、カレンズMOI−BP(21.8g)を用いた以外は、実施例13と同様の処理を行い、共重合体液(H)を得た。共重合体液(H)は、固形分濃度が44.8%であった。
【0230】
[比較例10] AOI−BMの共重合体(エマルジョン重合)
AOI−PIの代わりに、比較例3で得られたAOI−BM(21.8g)を用いた以外は、実施例13と同様の処理を行い、共重合体液(I)を得た。共重合体液(I)は、固形分濃度が44.6%であった。
【0231】
[比較例11] MOIブロック体なしの共重合体(エマルジョン重合)
AOI−PIを用いなかった他は、実施例13と同様の処理を行い、共重合体液(J)を得た。共重合体液(J)は、固形分濃度が44.1%であった。
【0232】
上記実施例11〜13および比較例5〜11で用いたモノマー成分について表3に整理した。
【0233】
【表3】
【0234】
[実施例14〜18および比較例12〜22]
前記実施例11〜13および比較例5〜11にて作製した共重合体液(A)〜(J)、2つの活性水素基を有する化合物であるトリエチレングリコールおよび硬化促進剤であるジブチルスズジラウレートを表4に示すように配合し、適宜混合して、硬化性組成物とした。
【0235】
片面にシリコーン系の離型剤が塗布されたポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム、厚さ25μm)の離型剤塗布面上に、硬化性組成物を塗布(固形分として0.37kg/m
2に相当する量)し、40℃で16時間乾燥させ、厚さ0.4mmの被膜を形成した。得られた被膜付フィルムを乾燥後、室温に戻して、20mm平方に裁断した。裁断後の被膜付フィルムを、表5〜9に示す各硬化温度で1時間加熱したのち、再度室温に戻して、質量を測定した。その後、恒温槽にて23℃のトルエンに前記被膜付フィルムを18時間浸漬し引き上げた後、105℃で2時間乾燥させたのち、再度質量を測定した。測定結果に基づき、以下の式から溶出率(%)を算出した。それぞれの実施例および比較例の溶出率の測定結果を表5〜9および
図11〜
図14に示す。
溶出率(%)=[1−(トルエン浸漬の後の質量/トルエン浸漬前の質量)]×100
【0236】
【表4】
【0237】
【表5】
【0238】
【表6】
【0239】
【表7】
【0240】
【表8】
【0241】
【表9】
【0242】
例えば表5および
図11に示すとおり、200℃で硬化させた場合、実施例14においては溶出率が16%であるが、比較例12および13では溶出率がそれぞれ31%および40%であった。つまり比較例12および13で用いた硬化性組成物に含まれる共重合体中のイミドブロック体から導かれる構造単位に含まれるブロック剤残基は200℃では十分に解離せず、イソシアネート基が十分に再生しないので、200℃はこれらの組成物を硬化させるのに十分な温度ではない。これに対し、実施例14で用いた硬化性組成物に含まれる共重合体中のイミドブロック体から導かれる構造単位に含まれるブロック剤残基は同じ温度でもより多く解離しイソシアナト基が再生するので、該組成物は他のブロック体を用いた場合に比べ、よりよく硬化する。つまり実施例14の硬化性組成物に含まれる共重合体は低温硬化性に優れ、硬化させるのが容易かつ低コストである。
【0243】
表5〜9に示したいずれの場合でも、同様に各実施例で使用された共重合体は低温硬化性に優れていることがわかる。