(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6080840
(24)【登録日】2017年1月27日
(45)【発行日】2017年2月15日
(54)【発明の名称】ワイヤレスセンサリーダ
(51)【国際特許分類】
A61B 5/00 20060101AFI20170206BHJP
A61B 5/0215 20060101ALI20170206BHJP
【FI】
A61B5/00 102C
A61B5/02 610Z
A61B5/00ZDM
【請求項の数】52
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-508513(P2014-508513)
(86)(22)【出願日】2012年4月25日
(65)【公表番号】特表2014-519359(P2014-519359A)
(43)【公表日】2014年8月14日
(86)【国際出願番号】US2012034979
(87)【国際公開番号】WO2012149008
(87)【国際公開日】20121101
【審査請求日】2015年4月23日
(31)【優先権主張番号】13/423,693
(32)【優先日】2012年3月19日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/478,647
(32)【優先日】2011年4月25日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】310013680
【氏名又は名称】エンドトロニックス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ナギー マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ローランド ハリー
(72)【発明者】
【氏名】ワトキンス ロジャー
(72)【発明者】
【氏名】サンドラム バラムルガン
【審査官】
伊知地 和之
(56)【参考文献】
【文献】
特表2008−532590(JP,A)
【文献】
特表2009−519779(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0189741(US,A1)
【文献】
特開2001−112728(JP,A)
【文献】
特表昭60−500599(JP,A)
【文献】
特表2010−530769(JP,A)
【文献】
特開平01−119729(JP,A)
【文献】
特表2006−518264(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0100215(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00 − 5/01
A61B 5/02 − 5/03
H04B 5/00 − 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤレスセンサにリング信号を送出させるための励起パルスを生成するように構成された送信回路と、
前記励起パルスを送信するとともに前記リング信号を受信するように構成されたアンテナと、
前記リング信号の周波数に関連する周波数のカウント信号を生成するように構成された電圧制御発振器を含む、前記リング信号を受信するように構成された位相ロックループ回路と、
個々の読み取りのための前記リング信号における可能な周波数の値の組を特定するための回路と
を備えるワイヤレスセンサリーダであって、
前記位相ロックループ回路は、前記リング信号を受信するとともに前記リング信号の周波数に基づいて前記カウント信号の周波数を調整するサンプルモードとすることが可能であり、
前記送信回路、前記位相ロックループ回路、前記アンテナ、および前記電圧制御発振器の少なくとも1つが、前記特定された可能な周波数の値の組に調整可能であり、
前記位相ロックループ回路は、前記カウント信号の周波数を決定するのに十分な時間の間、前記カウント信号の周波数を一定に保持するホールドモードとすることが可能であり、
さらに、前記可能な周波数の値の組を特定するための前記回路が、前記ワイヤレスセンサによって測定されているパラメータに関連するパラメータを測定する第2のセンサである、ワイヤレスセンサリーダ。
【請求項2】
前記第2のセンサが周囲圧センサであり、前記ワイヤレスセンサが血圧センサである、請求項1に記載のワイヤレスセンサリーダ。
【請求項3】
前記アンテナが、前記リング信号における前記可能な周波数の値の組に基づいて選択された周波数を有する励起パルスを送信するように調整することが可能である、請求項1に記載のワイヤレスセンサリーダ。
【請求項4】
前記アンテナが、前記可能な周波数の値の組に基づく通過帯域の周波数を受信するように調整することが可能である、請求項1に記載のワイヤレスセンサリーダ。
【請求項5】
前記受信信号を調整するための前記回路が、前記可能な周波数の値の組に基づく通過帯域の外側にある周波数を阻止するように調整することが可能なフィルタを備える、請求項1に記載のワイヤレスセンサリーダ。
【請求項6】
前記フィルタが、デジタル変換回路とデジタルフィルタを備える、請求項5に記載のワイヤレスセンサリーダ。
【請求項7】
前記デジタルフィルタが、一組の離散サンプルを平均化することを含む、請求項6に記載のワイヤレスセンサリーダ。
【請求項8】
前記受信信号を調整するための回路をさらに備え、前記受信信号を調整するための前記回路が、前記リング信号における周波数の可能な値における前記サブセットに基づく通過帯域の外側にある周波数を阻止するように調整することが可能な増幅器を備える、請求項1に記載のワイヤレスセンサリーダ。
【請求項9】
前記電圧制御発振器における開始周波数の値が、前記リング信号における前記可能な周波数の値の組に基づいて選択される、請求項1に記載のワイヤレスセンサリーダ。
【請求項10】
前記リング信号における可能な周波数の値の組を特定するための前記回路がアルゴリズムを含む、請求項1に記載のワイヤレスセンサリーダ。
【請求項11】
通過帯域窓の位置を決定するための前記ワイヤレスセンサによって測定されたパラメータに関連する別のパラメータを測定することにより、個々の読み取りのための遠隔センサにおける可能な周波数の値の組を特定する工程と、
前記可能な周波数の値の組によって定義された前記通過帯域窓で動作するように回路を調整する工程と、
励起パルスを前記遠隔センサに送信する工程と、
前記励起パルスに応答した前記遠隔センサからリング信号を受信する工程と、
前記リング信号を増幅する工程と、
カウント信号を生成する工程と、
前記リング信号の周波数に一致するように前記カウント信号の周波数を調整する工程と、
前記カウント信号の周波数を決定するための時間の間、前記カウント信号の周波数を一定に保持する工程と
を含む、遠隔センサを読み取る方法。
【請求項12】
前記別のパラメータが周囲圧であり、前記ワイヤレスセンサによって測定されている前記パラメータが血管内圧である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記励起パルスが、前記遠隔センサにおける前記可能な周波数の値の組に基づく周波数の値に調整される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記リング信号が、前記遠隔センサにおける前記可能な周波数の値の組に基づく通過帯域の周波数を受信するように調整することが可能であるアンテナ回路によって受信される、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記遠隔センサにおける前記可能な周波数の値の組に基づいて前記リング信号をフィルタにかける工程をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記リング信号の前記増幅の間に、前記遠隔センサにおける前記可能な周波数の値の組によって表される帯域の外側にある周波数を阻止する工程をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記カウント信号の初期値が、前記遠隔センサにおける前記可能な周波数の値の組に基づいて選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記カウント信号の周波数の調整され得る範囲が、前記遠隔センサにおける前記可能な周波数の値の組によって規定される、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
遠隔位置から測定値を得る方法であって、
個々の読み取りのためのワイヤレスセンサにおける可能な周波数の値の組を、前記遠隔位置から得られる前記測定値に関連する別の測定値から特定する工程であり、前記別の測定値が周囲圧である工程と、
前記可能な周波数の値の組によって定義された通過帯域で動作するようにリーダの回路を調整する工程と、
固定周波数のみの励起パルスを前記ワイヤレスセンサに送信する工程と、
前記励起パルスに応答した前記ワイヤレスセンサから信号を受信する工程と、
前記受信信号をサンプルホールドする工程と、
前記受信信号の周波数を確定する工程と
を含み、
前記ワイヤレスセンサが、感知された少なくとも1つのパラメータに比例して自身の共振周波数を変更するように構成されている、方法。
【請求項20】
前記遠隔位置から得られる前記測定値が血管内圧である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記励起パルスにおける前記固定周波数が、前記組の可能な周波数の値に基づいて選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記リング信号が、前記ワイヤレスセンサにおける前記可能な周波数の値の組に基づく通過帯域の周波数を受信するように調整することが可能であるアンテナ回路によって受信される、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記ワイヤレスセンサにおける前記可能な周波数の値の組に基づいて前記ワイヤレスセンサからの前記信号をフィルタにかける工程をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記受信信号の周波数を確定する処理が、前記ワイヤレスセンサにおける前記可能な周波数の値の組によって影響を及ぼされる、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
感知された少なくとも1つのパラメータに比例して自身の共振周波数を変更するように構成されたワイヤレスセンサと、
共振周波数の値からなる帯域を定義し、前記帯域に基づく動作のために自身を最適化し、固定周波数のみの励起パルスを前記ワイヤレスセンサに送信し、前記励起パルスに応答した前記ワイヤレスセンサから信号を受信し、前記受信信号をサンプルホールドするように構成されたリーダと
を備え、
前記リーダが、共振周波数の値からなる前記帯域を定義するために、前記感知された少なくとも1つのパラメータに関連するパラメータを測定する第2のセンサを含む、遠隔位置から測定値を得るためのシステム。
【請求項26】
前記第2のセンサが周囲圧センサであり、前記感知された少なくとも1つのパラメータが血圧である、請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記励起パルスにおける前記固定周波数が、共振周波数の値からなる前記帯域に基づいて選択される、請求項25に記載のシステム。
【請求項28】
前記最適化が、以下の回路、すなわち、送信アンテナ、受信アンテナ、アナログフィルタ、デジタルフィルタ、増幅器、電圧制御発振器のうちの1つまたは複数を調整することを含む、請求項25に記載のシステム。
【請求項29】
感知された少なくとも1つのパラメータに比例して自身の共振周波数を変更するように構成されたワイヤレスセンサと、
共振周波数の値からなる帯域を定義し、前記帯域に基づく動作のために自身を最適化し、固定周波数のみの励起パルスを前記ワイヤレスセンサに送信し、前記励起パルスに応答した前記ワイヤレスセンサから信号を受信するように構成されたリーダと
を備え、
前記リーダが、共振周波数の値からなる前記帯域を定義するために、前記感知された少なくとも1つのパラメータに関連するパラメータを測定する第2のセンサを含む、遠隔位置から測定値を得るためのシステム。
【請求項30】
前記第2のセンサが周囲圧センサであり、前記感知された少なくとも1つのパラメータが血圧である、請求項29に記載のシステム。
【請求項31】
前記励起パルスにおける前記固定周波数が、共振周波数の値からなる前記帯域に基づいて選択される、請求項29に記載のシステム。
【請求項32】
前記最適化が、以下の回路、すなわち、送信アンテナ、受信アンテナ、アナログフィルタ、デジタルフィルタ、増幅器、電圧制御発振器のうちの1つまたは複数を調整することを含む、請求項29に記載のシステム。
【請求項33】
遠隔位置から測定値を得る方法であって、
前記測定値に対する予測値の範囲を定義する工程であり、前記予測値の範囲が、前記遠隔位置からの前記測定値に関連する別のパラメータを測定することによって定義される工程と、
前記予測値の範囲内で動作するように回路を最適化する工程と、
励起パルスをワイヤレスセンサに送信する工程と、
前記励起パルスに応答した前記ワイヤレスセンサから信号を受信する工程と、
カウント信号を生成する工程と、
前記受信信号の周波数に一致するように前記カウント信号の周波数を調整する工程と、
前記カウント信号の周波数を確定するために前記カウント信号の前記周波数を一時的に一定に保持する工程と、
前記カウント信号の周波数を確定する工程と
を含み、
前記ワイヤレスセンサが、感知された少なくとも1つのパラメータに比例して自身の共振周波数を変更するように構成されている、方法。
【請求項34】
前記別のパラメータが周囲圧であり、前記遠隔位置からの前記測定値が血圧である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記回路を最適化する工程が、前記予測値の範囲に基づく周波数の値に前記励起パルスを調整する工程を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記回路を最適化する工程が、前記予測値の範囲に基づく通過帯域の周波数を受信するように受信アンテナ回路を調整する工程を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記回路を最適化する工程が、前記受信信号を前記予測値の範囲に基づいてフィルタにかける工程を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記回路を最適化する工程が、前記受信信号を増幅する増幅器を前記予測値の範囲に基づいて調整する工程を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項39】
前記回路を最適化する工程が、前記カウント信号の初期値を前記予測値の範囲に基づいて選択する工程を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項40】
前記回路を最適化する工程が、前記カウント信号における前記周波数が調整され得る範囲を前記予測値の範囲に基づいて制限する工程を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項41】
前記カウント信号の周波数を確定する処理が、前記予測値の範囲によって規定される、請求項33に記載の方法。
【請求項42】
前記処理を規定する工程が、複数の個々の測定を行う工程と、前記予測値の範囲に基づいて測定値を保持または捨てる工程と、前記保持された測定値を平均化する工程とを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
ワイヤレスセンサの周波数出力におけるすべての可能な値の組を定義するように構成された回路であり、前記ワイヤレスセンサによって測定されているパラメータに関連するパラメータを測定する第2のセンサを含む回路と、
感知された少なくとも1つのパラメータに比例した周波数を有する信号を前記ワイヤレスセンサに送出させるための励起パルスを生成するように構成された送信回路と、
前記励起パルスを送信するとともに前記送出信号を受信するように構成された少なくとも1つのアンテナと、
カウント信号を生成するように構成された第1の回路と、
前記送出信号の周波数に一致するように前記カウント信号の周波数を調整するように構成された第2の回路と
を備え、
前記カウント信号における前記周波数を確定するために前記カウント信号を一時的に一定に保持するように構成された、ワイヤレスセンサリーダ。
【請求項44】
前記第2のセンサが周囲圧センサであり、前記ワイヤレスセンサが血圧センサである、請求項43に記載のワイヤレスセンサリーダ。
【請求項45】
前記アンテナが、前記可能な値の組に基づいて周波数が選択される励起パルスを送信するように再構成されることが可能である、請求項43に記載のワイヤレスセンサリーダ。
【請求項46】
前記アンテナが、前記可能な値の組に基づく通過帯域の周波数を受信するように再構成されることが可能である、請求項43に記載のワイヤレスセンサリーダ。
【請求項47】
前記受信信号を調整するための回路をさらに備え、該回路は、前記可能な値の組に基づく通過帯域の外側にある周波数を阻止するように調整することが可能なフィルタを含む、請求項43に記載のワイヤレスセンサリーダ。
【請求項48】
前記フィルタが、デジタル変換回路とデジタルフィルタを含む、請求項47に記載のワイヤレスセンサリーダ。
【請求項49】
前記デジタルフィルタが、離散サンプルの組を平均化することを含む、請求項48に記載のワイヤレスセンサリーダ。
【請求項50】
前記受信信号を調整するための回路をさらに備え、該回路は、前記可能な値の組に基づく通過帯域内の周波数を増幅するように最適化されることが可能な増幅器を含む、請求項43に記載のワイヤレスセンサリーダ。
【請求項51】
前記第1の回路が、前記カウント信号の初期周波数の値を前記可能な値の組に基づいて選択する、請求項43に記載のワイヤレスセンサリーダ。
【請求項52】
前記第2の回路が、前記カウント信号の前記調整を前記可能な値の組に基づいて最適化する、請求項43に記載のワイヤレスセンサリーダ。
【発明の詳細な説明】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2012年3月19日に出願された「ワイヤレスセンサリーダ」という名称の米国特許出願第13/423,693号の一部継続出願であるとともに、2011年4月25日に出願された「周囲条件に基づくワイヤレスセンサリーダの調整」という名称の仮特許出願第61/478,647号の優先権を主張するものであり、上記の出願は全体においてそれぞれが参照によって本明細書に組み込まれている。
【技術分野】
【0002】
本発明は、概してセンサからのワイヤレス信号を測定するための装置およびデバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
ワイヤレスセンサとリーダのシステムは、遠隔センサの状態をワイヤレスで監視するために設計され得る。このような一部のワイヤレスシステムには、物理的パラメータを信号の周波数に変換するセンサが含まれる。リーダは、センサ信号の周波数を受信および測定するように構成されている。
【0004】
図1は、ワイヤレスセンサ/リーダシステムにおける動作周波数の帯域幅と、対応するパラメータとの例を示す。図示されているように、対応するパラメータは圧力であるが、本明細書で説明される概念は、変換される任意のパラメータに適用し得ることが理解されよう。図示されているワイヤレスセンサにおける例示的な周波数範囲は13MHzから14MHzであり、これは絶対圧である550mmHg〜900mmHgに相当する。
図1に示されている例では、周波数は圧力に反比例している。
【0005】
ワイヤレスセンサ/リーダシステムでは、センサはリーダからの送信パルスによって刺激され、その刺激が除かれると自身の共振周波数におけるリングバック、すなわち「リング」信号を送出する。リーダは、リング信号の周波数を測定することができ、また感知された圧力を求めるためにキャリブレーションテーブルや式を用いてもよい。
【0006】
リーダで受信されるリング信号は低電力である場合があり、特にセンサとリーダの距離が大きい場合には極めて早く減衰し得る。このことは、システムが、固定された送信信号を利用しようが掃引される送信信号を利用しようが、同様なすべてのワイヤレスセンサシステムに関係する問題である。たとえばグリッドディップ技術(grid−dip technique)に基づく他の種類のワイヤレスセンサシステムは、可能な共振周波数の範囲が広い場合には特に、センサの共振周波数を特定するのに比較的長い時間と多くの送信サイクルを要する場合がある。
【0007】
一部のワイヤレスリーダ/センサシステムの設計では、局所的な大気圧に対する相対的な圧力を意味するゲージ圧の読み取りが必要となる。しかしこのような設計では、センサは、大気圧を得ることができないためにゲージ圧の読み取り値を直接出力することができない位置に配置されることが多い。たとえば、肺動脈に埋め込まれた血圧センサは、大気圧を直接得ることができない。臨床医は多くの場合、特定の医学的状態に対処するために、100mmHgの範囲にわたる肺動脈のゲージ圧を知りたがっている。しかし、埋め込まれたセンサは、局所的な大気圧が何であるかを知る術を有していない。言い換えれば、埋め込まれたセンサは、絶対圧を感知することができるにすぎない。
【0008】
解決策の1つは、リーダの中に周囲圧センサを配置することである。そうすればリーダは、自身の周囲圧センサからの、絶対圧である大気の周囲圧に加え、埋め込まれたセンサからの絶対圧を測定し、その絶対圧から周囲圧を差し引いてゲージ圧を取得する。
【0009】
図1の例は、絶対圧である550mmHg〜900mmHgの圧力範囲を示している。地球における生息域の周囲圧は、通常、絶対圧である550mmHg〜800mmHgの範囲である。このため、0〜100mmHgのゲージ圧を測定するために、センサの絶対圧の範囲は、550mmHg(最低の周囲圧550mmHg+最低のゲージ圧0mmHg)から、900mmHg(最高の周囲圧850mmHg+最高のゲージ圧100mmHg)である必要がある。
【0010】
したがって、信号のフルスケール範囲は広いものの、そのフルスケール範囲のわずかなサブセットだけが任意の個々の測定に用いられる場合における、微弱な信号の周波数を測定する必要がある。
【0011】
リーダ内部の様々な回路は、センサ信号の周波数を求めるために用いられる方法にかかわらず、自然雑音または人工雑音などのセンサ以外のソースからの不要なエネルギーを取り込むことなく、センサ信号における最大量のエネルギーを取り込むように適応しているか、または調整している必要がある。たとえば、リーダのレシーバアンテナと、アナログフィルタまたはデジタルフィルタなどの内部のフィルタとは、ある通過帯域に調整していてもよく、その通過帯域は、センサが共振し得る可能なあらゆる周波数を通過させ、またその通過帯域の外側にあるすべての周波数を阻止する。しかし、アンテナとフィルタの通過帯域を広げることは、大きい減衰と、低い信号対雑音比と、不要な干渉信号に対する感受性の増加とを含む問題を引き起こす恐れがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
固定周波数のシステムは、これらの問題を克服することが困難である。一部の掃引周波数のシステムは、送信されている瞬時周波数に一致するようにレシーバとフィルタを常に再調整させることによって、これらの問題を克服する試みが可能である。しかし、これは一般に、著しく増加した回路と処理を要する。
【0013】
したがって、方法と装置の改善が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
ワイヤレスセンサと接続するためのリーダデバイスが提供される。このリーダは、ワイヤレスセンサをリングさせるために、短いパルスのエネルギー、または短いバーストの無線周波数のエネルギーを送出する。リーダは、送信後直ちにセンサ信号を受信して増幅し、次にその信号を位相ロックループ(「PLL」)に送り、PLLはセンサのリング周波数にロックする。PLLがリング周波数にロックすると、PLLの電圧制御発振器(「VCO」)はホールドモードにおかれ、VCOの周波数をロックされた周波数で保持する。このVCOの周波数は、センサの共振周波数を求めるためにカウントされる。
【0015】
リーダは、リング信号における可能な周波数の値の組を求めるために、たとえば第2のセンサであるデバイスを含み得る。リーダデバイスの構成要素は、特定された上記可能な周波数の値の組に調整し得る。
【0016】
本発明における動作とともに目的と利点は、以下の図に関連して行われる詳細な説明を参照することによってさらに良く理解することができるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】センサにおける動作周波数の帯域幅と、対応するパラメータとのグラフである。
【
図2】ワイヤレスセンサシステムの実施形態である。
【
図3】センサにおける動作周波数の帯域幅と、対応するパラメータと、帯域通過窓とのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、添付図面に例が示されている本発明の例示的実施形態への言及を詳細に行う。他の実施形態が利用されてもよく、また本発明における対応する範囲から逸脱することなく構造的および機能的な変更がなされてもよいことを理解されたい。
【0019】
概してワイヤレスシステム10が提供される。このワイヤレスシステム10は、ワイヤレスリーダ12とワイヤレスセンサ14を含み得る。ワイヤレスセンサ14は、コンデンサ16とインダクタ18を含むデバイスなどの受動デバイスでもよく、または能動デバイスでもよい。ワイヤレスセンサ14は、たとえば生物の中に埋め込むことが可能な埋め込み可能なものであってもよい。ワイヤレスセンサ14は、たとえば人体内部の状態またはパラメータを監視するために人体の中に埋め込まれていてもよい。
【0020】
リーダ12は、センサ14を励起するための励起パルス20を送信するように構成され得る。この励起パルス20は、センサ14をリングさせること、すなわち、センサ自身の共振周波数におけるリング信号22をセンサ14に送出させることができる。センサ14の共振周波数は、センサ14によって感知されたパラメータに基づいて変化し得る。リーダ12は、リング信号22の周波数を測定して、感知されたパラメータを求めることができる。たとえば、リーダ12は、感知されたパラメータを求めるために、式、参照テーブル、またはキャリブレーションテーブルを利用することができる。
【0021】
リーダ12は、センサ14からのリング信号22を受信するためのレシーバを含み得る。このレシーバは、アンテナ24、または他の任意の信号受信デバイスを備え得る。さらにレシーバは、センサ14から受信した信号22をフィルタにかけるために、アナログフィルタまたはデジタルフィルタなどの1つまたは複数のフィルタを含み得る。これらのフィルタは、所望の周波数帯域幅がリーダ12によって受信され得るように通過帯域に調整し得る。この通過帯域は、
図3に示されている、関心のある特定のパラメータ範囲26に対応する周波数帯だけを通過させるように狭められてもよい。
【0022】
本明細書で説明される例示的実施形態では、圧力などの特定のパラメータを監視および感知することへの言及がなされ得る。しかし、本明細書に明記されているシステムと方法は、圧力、温度、または他の任意のパラメータなどの、測定または感知されるあらゆるパラメータに適用され得ることが理解されよう。
【0023】
限定的ではない例として、血圧などの圧力を感知するように適応したワイヤレスシステム10は、ゲージ圧である100mmHgの範囲内の圧力に相当する周波数だけを受信するように通過帯域窓26を狭めるフィルタを含み得る。
図3には、この通過帯域範囲26の例が示されている。ゲージ圧である100mmHgの範囲内の圧力に相当する周波数は、最適なデータ、または最も有益なデータを提供する、「通過帯域窓」すなわち「関心窓」26の周波数であってもよい。しかし、この通過帯域窓26は、感知されるパラメータにおける適切な任意の範囲に対応し得ることが理解されよう。
【0024】
すべての範囲の絶対圧における通過帯域窓26のスペクトル位置は、所望のデータを取り込むために変化し得る。たとえば、通過帯域窓26の位置は、リーダ12がセンサ14からリング信号22を受信するときの周囲圧に基づいて決定されてもよい。そのためにリーダ12は、圧力などの周囲条件を感知するために周囲圧センサなどの周囲センサ25を含み得る。この周囲センサ25は、リーダ12の中に組み込まれていてもよく、またはリーダ12の上に配置されていてもよい。また周囲センサ25は、リーダ12から離れたところに位置していてもよく、たとえば、通過帯域窓26の位置を決定するために周囲センサ25の周囲の読み取り値をリーダ12、またはサードパーティのプロセッサに伝える別のデバイス、または別のシステムの一部であってもよい。
【0025】
通過帯域窓26は、
図3のグラフに示されているように、リーダの周囲圧センサ25によって測定された周囲圧に基づいて最適に配置され得る。たとえば、センサが、人間の肺動脈に埋め込まれたワイヤレスの圧力センサである実施形態では、関心のある圧力範囲は周囲圧の0〜100mmHg上方にある。したがって、リーダにおけるプロセッサは、
図3に示されているように、通過帯域窓26の両方のエッジが、周囲圧の読み取り値と、その周囲圧の読み取り値より100mmHg高い圧力とに対応する周波数になるように通過帯域窓26を配置するようプログラムされることになる。それに応じてリーダ12は、通過帯域窓26の中心を周囲圧付近に合わせるために、内部の回路とアルゴリズムに加え、リーダ12自身のアンテナ24を調整させることができる。
【0026】
一実施形態では、ワイヤレスセンサ14は、630mmHgの絶対圧付近の周囲圧を有する高度などの、比較的高い高度にいる人間の中に埋め込まれていてもよい。したがって、関心のある圧力範囲は、630mmHg〜730mmHgの絶対圧でもよく、この範囲は13.831MHz〜13.546MHzの周波数通過帯域窓26に対応している。リーダ12は、自身の周囲圧センサ25を用いて周囲圧を測定することができる。次にリーダ12は、周囲圧の測定値から、遠隔センサの周波数を含むことになる、フルスケールの周波数範囲におけるサブセットを求め得る。次にリーダ12は、所望のサブセットを通過させるとともに不要な範囲の部分をブロックするために、アンテナ24等の自身のレシーバ、フィルタ、増幅器、他の回路、またはアルゴリズムを調整させ得る。たとえば、リーダ12は、周波数窓26に一致するように自身の受信アンテナの帯域幅を狭めることによって、その受信アンテナのQ値を高くすることができる。さらにリーダ12は、受信系統における1つまたは複数の増幅器を通過帯域窓26に調整させることによって、それらの増幅器のゲインと信号対雑音比とを高めることができる。またリーダ12は、通過帯域窓26に一致するように受信系統におけるフィルタを調整させることによって、通過帯域窓26の外側にあるあらゆるノイズまたは干渉をフィルタで除去することができる。リーダ12は、精度をさらに向上させるために、センサから数多くの圧力の読み取りを行い、(自身の組み込みプロセッサ、または遠隔プロセッサにおいて)それらを平均化することができる。平均化を行うプロセッサは、通過帯域窓26の外側にあるすべての読み取り値をスプリアスである異常値と見なし、それらの読み取り値を平均に含めないアルゴリズムを実行することができる。
【0027】
説明されるこのシステムと方法によって、公知のシステムと方法にまさるいくつかの利点がもたらされる。たとえば、受信されるリング信号22の通過帯域窓26を制限することによって、高いQ値を有するセンサ14の使用が可能となる場合があり、そのため長い減衰時間と、リング信号22における大きい振幅とがもたらされる。また、通過帯域窓26を制限することによって、高いQ値を有するレシーバアンテナ24とフィルタの使用が可能となり、そのため信号対雑音比が向上する。さらに、固定周波数の励起パルス20を利用するシステムでは、センサ14が自身の動作周波数範囲のエッジ付近にある場合に、センサにおける伝達関数のロールオフが影響してリング信号22が弱まる可能性がある。この影響は、帯域の中心をエッジ付近に合わせるようにリーダの回路を適応させることによって補償され得る。
【0028】
通過帯域窓26が決定されると、リーダ内部の構成要素の多くは、通過帯域窓26の範囲のみに中心を合わせるように調整し得る。たとえば、リーダの受信アンテナ24は、リング信号22を含む通過帯域窓26に調整し得る。このことは、アンテナ24の部品を含むアンテナ回路に無効分をスイッチによって入れたり切り離したりすることによって実現されてもよく、または、当技術分野で知られている他の方法によって実現されてもよい。
【0029】
ワイヤレスシステム10は、増幅部を含み得る。この増幅部は、フィルタおよび増幅器を含み得る。このフィルタおよび増幅器は、リング信号22を含む周波数通過帯域窓26に適応して調整し得る。このことは、増幅器とフィルタの回路に無効分をスイッチによって入れたり切り離したりすることによって実現されてもよく、または、当技術分野で知られている他の方法によって実現されてもよい。
【0030】
ワイヤレスシステム10は、リング周波数にロックするとともにリング周波数の特定の助けとなる少なくとも1つの位相ロックループ(PLL)を含み得る。このPLL用の初期基準周波数は、周波数通過帯域窓26のほぼ中心に設定されてもよい。このことは、PLLがリング信号22の周波数にロックするのに要する時間を低減することになる。たとえば、リーダ12のプロセッサは、リーダの周囲圧センサ25によって定義された通過帯域窓26の中心に対応する、PLLの電圧制御発振器(VCO)における制御電圧を計算または参照することができる。PLLをロックおよびプリロックするための他の方法と回路が、本明細書で説明されるシステムと方法に関連して用いられてもよい。
【0031】
リーダ12によって送出される励起パルス20は、ほぼ一定の周波数で保持されてもよい。この固定の励起パルス20は、リング信号22を含む通過帯域窓26の中心付近に位置するように適応していてもよい。そのためシステムは、より強く、より長く続くリング信号22を提供し得る、より高いQ値を有するセンサを利用することができる。
【0032】
ワイヤレスシステム10は、掃引周波数の励起パルス20を利用してもよい。掃引周波数の励起パルス20の帯域幅は、リング信号22を含む通過帯域窓26に制限されてもよい。このように励起パルス20を制限することによって、リング信号22を取り込むのに必要な時間が低減され、所与の圧力の場合に対する、より多くのサンプルの取り込みが可能となり得る。
【0033】
センサ14によって測定されるパラメータは、測定の速度と比較して静的(static)でもよく、または準静的(quasi−static)でもよい。限定的ではない例として、測定される血圧の波形は、測定の速度と比較して静的でもよく、または準静的でもよい。このような状況では、リーダ12は、センサ14の測定における多数の読み取りを行い、処理アルゴリズムを用いてそれらを平均化することができる。たとえば、リング信号22が弱まって信号対雑音比(SNR)が低下すると、ノイズを伴う、スプリアスである読み取り値の数が増加し得る。リーダ12は、平均化処理中に通過帯域窓26の外側のあらゆる測定値を無視して外側の不正確なデータを除くように構成されていてもよい。
【0034】
リーダ12は、入力されるリング信号22をサンプリングし、入力データを通過帯域窓26と比較することができる。この比較に基づき、リング信号22からの入力データは記憶されてもよく、または捨てられてもよい。さらにリーダ12は、フィルタのかけられた通過帯域窓26に基づく許可された周波数帯にある信号部分だけをFFT法などを用いて処理することによって、信号の処理を最適化または強化することができる。許可される周波数帯を周囲の測定値と一致するように狭めることに基づいて受信信号の測定を向上させる他の方法が、同様に利用されてもよい。
【0035】
本明細書で用いられた例は、絶対値の読み取りに向けて狭められる帯域幅を決定し、リーダ12の回路および/またはアルゴリズムをその帯域幅に適応させるための、周囲圧の読み取りに関するものである。しかし、この方法は、2つのセンサの測定が行われるとともに、一方の測定結果が他方の測定値における可能な出力の制限に用いられ得るどのような状況において用いられてもよいことが理解されよう。感知されるパラメータは、圧力に限定されず、どのようなパラメータであってもよい。さらに、ワイヤレスセンサ14と周囲センサは、必ずしも同じ量または同じパラメータを測定する必要はなく、代わりに別の量または別のパラメータを測定してもよい。
【0036】
本発明の実施形態が添付図面において例示され、上記の詳細な説明において説明されたが、本発明は、開示された実施形態だけに限定されることはなく、また本明細書で説明された発明は、以下の特許請求の範囲から逸脱することなく多数の再構成、変更、および代用が可能であることを理解されたい。以下の請求項は、すべての変更および改変が、本特許請求の範囲に含まれるか、または本特許請求の範囲と等価である限り、それらすべての変更および改変を含むように意図されている。