特許第6080844号(P6080844)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6080844
(24)【登録日】2017年1月27日
(45)【発行日】2017年2月15日
(54)【発明の名称】エフェクタ機能を低下させたFc変異株
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20170206BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20170206BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20170206BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20170206BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20170206BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20170206BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20170206BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20170206BHJP
【FI】
   C12N15/00 AZNA
   C07K16/00
   C12P21/08
   C12N1/15
   C12N1/19
   C12N1/21
   C12N5/10
   A61K39/395 Z
【請求項の数】12
【全頁数】43
(21)【出願番号】特願2014-516393(P2014-516393)
(86)(22)【出願日】2012年6月25日
(65)【公表番号】特表2014-519836(P2014-519836A)
(43)【公表日】2014年8月21日
(86)【国際出願番号】EP2012062273
(87)【国際公開番号】WO2012175751
(87)【国際公開日】20121227
【審査請求日】2015年6月24日
(31)【優先権主張番号】11305811.9
(32)【優先日】2011年6月24日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511216008
【氏名又は名称】ラボラトワール フランセ デュ フラクショヌマン エ デ ビオテクノロジ
(74)【代理人】
【識別番号】100092277
【弁理士】
【氏名又は名称】越場 隆
(72)【発明者】
【氏名】フォンテーヌ, アレクサンドラ
(72)【発明者】
【氏名】ジョリユ, シルヴィ
(72)【発明者】
【氏名】モネ−マルス, セリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】モンドン, フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】カラ, アブデルアキム
(72)【発明者】
【氏名】ブアヤディ, カリル
【審査官】 宮岡 真衣
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/106180(WO,A1)
【文献】 AN Z.,IgG2m4, an engineered antibody isotype with reduced Fc function.,MAbs,1(6)(2009),p.572-579
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
C12P 21/08
C07K 16/00−16/46
A61K 39/395
C12N 1/15
C12N 1/19
C12N 1/21
C12N 5/10
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
PubMed
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Fc領域を有する親ポリペプチドの変異株の生産方法であって、上記変異株は親ポリペプチドに比べてタンパクC1qおよび/または少なくとも一つのレセプタFcγRに対する結合性が低下しており、下記(i)〜(iii)
(i) 294Del、
(ii) 293Del、
(iii) 293Del/294Del、
の中から選択されるアミノ酸変異を親ポリペプチドのFc領域(ここで、Fc領域のアミノ酸の番号はKabat et alに記載のEU指数に従う数え方である)に導入し、上記(i)〜(iii)の中から選択されるアミノ酸変異が親ポリペプチドのFc領域に導入される唯一のアミノ酸変更であることを特徴とする方法。
【請求項2】
親ポリペプチドのFc領域が、SEQ ID NO1のFc領域、SEQ ID NO2のFc領域、 SEQ ID NO3のFc領域、SEQ ID NO4のFc領域およびその断片から成る群の中から選択されるIgG Fc領域である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
親ポリペプチドのFc領域が、434Y、378V、2591/315D/434Yおよび256N/378V/383N/434Yから選択されるアミノ酸変更を有する野生型IgGFc領域の変異株である請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
変異株をFc融合タンパク、Fcコンジュゲートおよび抗体から成る群の中から選択する請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
上記アミノ酸変更を親ポリペプチドのFc領域に導入する段階が下記(i)〜(iii)を含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法:
(i) 親ポリペプチドをコードする核酸を用意する段階、
(ii) 段階(i)で用意した核酸を改質して上記変異株をコードする核酸を作る段階、
(iii) 段階(ii)で得られた核酸を宿主細胞で発現させて上記変異株を回収する。
【請求項6】
親ポリペプチドに比べてタンパクC1qおよび少なくとも一つのレセプタFcγRに対する結合性が低下した、Fc領域を有する親ポリペプチドの変異株であって、親ポリペプチドのFc領域(Fc領域のアミノ酸の番号はKabat et alに記載のEU指数に従う数え方である)に下記(i)〜(iii)
(i) 294Del、
(ii) 293Del、
(iii) 293Del/294Del、
の中から選択されるアミノ酸の変更が導入されており、この(i)〜(iii)の中から選択されるアミノ酸変異が親ポリペプチドのFc領域に導入される唯一のアミノ酸変更であり、親ポリペプチドのFc領域はSEQ ID NO1のFc領域、SEQ ID NO2のFc領域、 SEQ ID NO3のFc領域およびSEQ ID NO4のFc領域ら成る群の中から選択されるIgG Fc領域であることを特徴とする変異株。
【請求項7】
上記変異株が、膜レセプタ、ヒト可溶性タンパク、トキシン、ウイルス、細菌および真菌タンパクから成る群の中から選択される標的分子に対する中和抗体である請求項6に記載の変異株。
【請求項8】
請求項6または7に記載の変異株をコードする単離された核酸。
【請求項9】
請求項8の核酸を含むベクター。
【請求項10】
請求項9のベクターを含む宿主細胞。
【請求項11】
ADCCおよび/またはCDC応答の誘導が望ましくない病的状態の予防または治療に使用される親ポリペプチドの変異株であって、この変異株はタンパクC1qおよび少なくとも一つのレセプタFcγRに対する結合性が親ポリペプチドより低く且つそのFc領域内にその親ポリペプチドのFc領域と比較した時に294Del、293Delおよび293Del/294Delから選択されるアミノ酸の変更を含み、上記の294Del、293Delおよび293Del/294Delから選択されるアミノ酸の変更が親ポリペプチドのFc領域(Fc領域のアミノ酸の番号はKabat et alに記載のEU指数に従う数え方である)に導入される唯一のアミノ酸変更であり、親ポリペプチドのFc領域はSEQ ID NO1のFc領域、SEQ ID NO2のFc領域、 SEQ ID NO3のFc領域およびSEQ ID NO4のFc領域から成る群の中から選択されるIgG Fc領域であることを特徴とする変異株。
【請求項12】
請求項6、7または11に記載の変異株を含む医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エフェクタ活性を低下させたFc変異株の調製方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
種々の病的状態、例えば癌、自己免疫性疾患、移植拒絶反応や感染症の治療で抗体を用いた治療方法が使用されることが増えている。2010年には37種以上の抗体および誘導タンパクが臨床用途で承認され、1,137種以上が臨床開発中である。この1,137種の71%が完全IgGであった。その大部分(91%)はIgGからのFc領域を含み、モノクローナル完全長抗体(mAbs)またはイムノアドヘシンともよばれる融合タンパクに対応する(非特許文献1:Thompson Pharma August 2010)。
【0003】
種々の研究から、抗体のエフェクタ機能は免疫療法の効率、特に標的細胞の破壊が求められる癌の治療効率に極めて重要であることが分かっている。標的細胞を根絶することができるエフェクタ機能の大部分は抗体依存細胞介在細胞毒性(antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity)(ADCC)、補体依存細胞毒性(complement-dependent cytotoxicity)(CDC)および抗体依存細胞介在食作用(antibody-dependent cellular phagocytosis )(ADCP)を含む。CDCは主としてFc領域と第1補体成分C1q との直接結合(バイン遺伝子)によってトリガーされ、ADCPおよびADCCはFc領域とFcガンマーレセプタ(FcγR)との結合によってトリガーされる。さらに、抗体のFc領域は新生Fcレセプタ(FcRn)との相互作用による血清持続性に関与する。従って、過去10年間にわたって非常に多くの研究はADCCおよびCDC応答を誘導し且つFcRnに対する親和性の改善によってその血清半減期を増やす抗体能力の向上に焦点を合わせたものである。
【0004】
しかし、ある特定状態の治療には治療効果を発揮するのにADCC,CDCおよび/またはADCPの誘導を必要としない。あるケース、例えば進行中の移植拒絶反応を抗CD3モノクローナル抗体オルソクローンOKT3で治療するケースのように、副作用を減らし且つIgG細胞毒性を防ぐために、上記の誘導は避けなければならない。オルソクローンOKT3の投与は、オルソクローンOKT3をFcγレセプタに結合した結果である炎症誘発性サイトカインの全長性大量放出を誘導することが示されている。さらに、FcγRの活性化は治療、例えばEGFR標的抗体、セツキシマブに関する治療に悪影響がある可能性があることもわかっっている。この悪影響は発癌促進M2マクロファージを活性化し、患者の無進行生存を低下させることを示唆している(非特許文献2:Pander J. et al., 2011)。
【0005】
一般に、内因性または感染性の標的に対する遮断剤または中和剤として、または、細胞レセプタのアゴニストまたはアンタゴニストとして抗体またはイムノアドヘシンのみを用いるときは、上記抗体のFc領域またはイムノアドヘシンのFcγRおよびC1qへの結合による免疫系の補充は、免疫療法の治療効率にとって重要ではない上に、避けなければならない。
【0006】
この点において、4つのヒトIgGサブクラスは互いに異なるエフェクタ機能を示すことがわかっている。すなわち、IgG1およびlgG3はADCCとCDC活性の両方をトリガーし、lgG2はCDC活性を誘発するが、ADCC活性は誘発せず、lgG4はC1qおよびFcガンマーレセプタに対する親和性が低いために補体および細胞の活性化を誘導する能力は極めて低い。従って、lgG4は宿主エフェクタ機能の補充が望ましくない免疫療法に好ましいサブクラスになった。lgG4抗体の中和は特定状態の治療で既に承認されている。例えば、ナタリズマブは多発性硬化症の治療での抗cc4インテグリンmAbである。このような事実にもかかわらず、そのインビボ不安定性および動態のために、免疫療法でのlgG4の使用に関しては依然として消極的である。
【0007】
変形例ではlgG4Fc変異株がアミノ酸変更を有するS228Pが考えられた。この変異は重鎖ダイマー形成を安定化させ、依然として低い比率(<8,3%)でFabアーム交換できることが示された(非特許文献3:Labrijn et al., Nature Biotech, 2009, 27, 767-771)。低エフェクタ活性および改善された薬理学的特性を有する新規な治療的mAbsを産生するためにIgGハイブリッドも設計された(非特許文献4:Reddy et al., The journal of Immunology, 2000, 164, 1925-1933)。
【0008】
アレキシオン ファーマスーティカル(Alexion Pharmaceuticals)社はエクリズマブとよばれる補体成分C5に対するヒト化lgG2/4カッパ抗体を開発した。エクリズマブの重鎖は定常部1(CH1)におけるヒトlgG2配列、定常部2(CH2)のヒンジおよび隣接部およびCH2の残部および定常部3(CH3)におけるヒトlgG4配列から成る。エクリズマブは欧州医薬品庁によって発作性夜間ヘモグロビン尿症および溶血性尿毒症症候群の治療用として承認されている。
【0009】
lgG2とlgG4の間の構造の違いに基づいて、An達はlgG4からの4つのアミノ酸(すなわち268Q/309L/330S/331S)をlgG2主鎖における対応位置に導入することによって変更されたエフェクタ機能を有するlgG2変異株を考えた。得られたIgGは、C1q,FcγRIおよびFcγRlllaに対する検出可能な結合性を全く示さず且つFcγRllb/cに対する不十分な親和性を示し、一方で、依然として野生型lgG2と同様な血清半減期を有している(非特許文献5:An et ai, mAbs, 2009,1 :6,572-579)。
【0010】
さらに、IgG1のFc領域における種々の部位特異的突然変異およびランダムな突然変異を生成するの研究によって、IgG1のC1qへの結合性に関与する重要なアミノ酸が同定され、種々のADCC促進レセプタが見出された(非特許文献6:Strohl, Current opinion in Biotechnol, 2009, 20, 685-691参照)。低ヒンジ領域におけるアミノ酸、特に、位置234および235のロイシン残基はC1q,FcγRI,FcγRIIとFcγRIIIの両方に対するIgG1Fc領域の親和性にとって重要であることが示された。決定位置もCH2領域で発見された。例えばアミノ酸位置327、330および331。このアミノ酸位置の突然変異はADCCとCDC応答の両方を誘導する能力を大幅に低下させる。
【0011】
Xu達はヒトIgG1ベースのOKT3抗体における突然変異234A/235Aの導入によって、FcγRI,FcγRIIおよびC1qに対する結合性が大幅に低下することを示した。これらFcγRI,FcγRIIおよびC1qは未変更のOKT3抗体で観察されたサイトカイン放出症候群を阻止し、進行中の移植拒絶反応を食い止める能力を維持する(非特許文献7:Xu et al., Cell Immunol, 2000, 1 :16-26)。
【0012】
Hezareh達は抗HIV−1IgG1変異株が突然変異234A/235Aを含む場合にエフェクタ分子に対する親和性に関して上記と同じ観察結果を得ている(非特許文献8:Hezareh et al., Journal of virology, 2001 , 12161 -1 2168)。
【0013】
同様に、Oganesyan達は、三重変異体234F/235E/331Sを抗−CD19IgG1に導入することによって、複数のエフェクタ分子、すなわちFcγRI,FcγRllaおよびFcγRIIIおよびC1qに対する結合性が完全に失われたことを報告している(非特許文献9:Oganesyan et al. Acta cryst., 2008, D64, 700-704)
【0014】
同様に、InvivoGen社は、突然変異体233P/234V/235A/236Del/327G/330S/331Sを含む遺伝子操作IgG1Fc変異株をコードするプラスミドを販売した。このような突然変異体はADCCおよびCDCを誘導するIgG1 Fc変異株の能力を劇的に低下させる。
【0015】
上記の全ての発明はこれらの位置で予期しない残基によるヒトアミノ酸の置換を示唆し、これらのヒトアミノ酸を患者に投与されるmAb中で使用したときに免疫応答を生じる可能性がある。
【0016】
さらに、Fc領域の位置297でのアスパラギン上のグリコシル化が、モノクローナル抗体のFcγRに結合し、ADCCをトリガーする能力に対する直接的影響を有することが示されている(非特許文献10:Abes et al., Pharmaceuticals, 2010, 3, 146-157参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Thompson Pharma August 2010
【非特許文献2】Pander J. et al., 2011
【非特許文献3】Labrijn et al., Nature Biotech, 2009, 27, 767-771
【非特許文献4】Reddy et al., The journal of Immunology, 2000, 164, 1925-1933
【非特許文献5】An et ai, mAbs, 2009,1 :6,572-579
【非特許文献6】Strohl, Current opinion in Biotechnol, 2009, 20, 685-691
【非特許文献7】Xu et al., Cell Immunol, 2000, 1 :16-26
【非特許文献8】Hezareh et al., Journal of virology, 2001 , 12161 -1 2168
【非特許文献9】Oganesyan et al. Acta cryst., 2008, D64, 700-704
【非特許文献10】Abes et al., Pharmaceuticals, 2010, 3, 146-157
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上記の従来技術にはADCCおよびCDCに対する低活性を示すFc変異株が記載されてはいるが、C1qおよびFcガンマレセプタに対する親和性を低下させた新規なFc変異株の調製方法に対するニーズが依然としてある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、Fc領域を有する親ポリペプチドの変異株の生産方法であって、その変異株は親ポリペプチドと比べてタンパクC1qおよび少なくとも一つのレセプタFcγRに対する結合性が低下し、294Del、293Delおよび293Del/294Delから成る群の中から選択されるアミノ酸の変異を親ポリペプチドのFc領域に導入することを特徴とする方法に関するものである(ただし、Fc領域のアミノ酸の番号はEUインデックスに従う数え方またはKabatでの相当物(Kabat numbering)である)。
【0020】
本発明の他の対象は、Fc領域を含む親ポリペプチドの変異株であって、親ポリペプチドと比べてタンパクC1qおよび少なくとも一つのレセプタFcγRに対する結合性が低下し、且つ、親ポリペプチドのFc領域と比べてFc領域内に294Del,293Delおよび293Del/294Delの中から選択されるアミノ酸変更を含む変異株にある(ただし、Fc領域のアミノ酸の番号はEUインデックスに従う数え方またはKabatでの相当物である)。
【0021】
本発明のさらに他の目的は、上記変異株を含む医薬組成物、および、ADCCおよび/またはCDC応答の誘導が望ましくない病的状態の予防または治療での上記変異株の使用にある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】は天然ヒトIgG1配列の位置216−447(EUインデックスに従う)とヒトlgG2 (SEQ I D NO:7)、ヒトlgG3 (SEQ I D NO:8)およびヒトlgG4 (SEQ I D NO:9)の対応配列との整合性(アランメント)を示す図。IgG1配列はG1m1,17アロタイプ(SEQ I D NO:5)およびG1m3アロタイプ(SEQ I D NO:6)である。IgG1の「低部ヒンジ−CH2−CH3」領域は位置226から開始する(矢印参照)。
図2】はヒトIgG1重鎖(Fc226, SEQ No 1 )に由来するアミノ酸残基226−447(EUインデックス)をコードするヒトFc遺伝子が2つの制限サイトBamHIおよびEcoRI制限の間にクローンされたプラスミドベクターpMGM05-R603を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
a.定義
以下、本発明をより完全に理解できるようにするために、いくつかの定義をする。以下の定義は文法的に均等なものを含む。
本明細書および特許請求の範囲でFc領域の残基の番号付けは非特許文献11(Sequences of Proteins of Immunological Interest、5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md.、1991)に記載のKabat et al.,のEUインデックスに従った免疫グロブリン重鎖の数え方である。非特許文献11の内容は本明細書の一部を成す。「EUインデックス(指数)」または「相当Kabat」とはヒトIgG1 EU抗体の残基の数え方である。
【非特許文献11】Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest、5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md.、1991
【0024】
「ポリペプチド」または「タンパク」とは、少なくとも2つの共有結合で結合されたアミノ酸を意味し、タンパク、ポリペプチド、オリゴペプチドおよびペプチドを含む。
「アミノ酸」とは特定の定義された位置に存在する20の天然または類似の非天然のアミノ酸を意味する。
【0025】
「アミノ酸の変更、変異」とはポリペプチドのアミノ酸配列の変化を意味する。この「アミノ酸変更、変異」は「アミノ酸変化」ともよばれ、アミノ酸の置換、挿入および/またはポリペプチド配列の欠失を含む。「アミノ酸の置換」または「置換」とは親ポリペプチド配列の特定の位置でのアミノ酸を他のアミノ酸と置換することを意味する。例えば、置換N434Sとは位置434でのアスパラギンがセリンと置換した変異ポリペプチド、この場合Fc変異株を意味する。「アミノ酸の挿入」または「挿入」とは親ポリペプチド配列の特定位置でのアミノ酸の付加を意味する。例えば、挿入G>235−236とは位置235と236の間にグリシンを挿入することを示す。「アミノ酸欠失」または「欠失」とは親ポリペプチド配列の特定位置のアミノ酸を取り去ることを意味する。例えば、E294delまたは294delは位置294でのアミノ酸(ここではグルタミン酸)の欠失を示す。アミノ酸変更は定時性突然変異または突然変異の組合せを意味する。
【0026】
アミノ酸突然変異の組合せの場合の好ましいフォーマットは以下である:294Del/259l/315D/434YまたはE294Del/V259l/N315D/N434Y。これは変異株のFc領域中にその親ポリペプチドと比べて4つのアミノ酸変異(一つは位置294、一つは位置259、一つは位置315、一つは位置434)が存在することを意味する。すなわち、位置294のアミノ酸すなわちグルタミン酸が欠失し、親ポリペプチドの位置259のアミノ酸すなわちグルタミン酸がイソロイシンに置換され、親ポリペプチドの位置315のアミノ酸すなわちアスパラギンがアスパラギン酸に置換され、親ポリペプチドの位置434のアミノ酸すなわちアスパラギンがチロシンに置換されることを意味する。同様に、アミノ酸変更293Del/294Delとはポリペプチド親と比べて位置293および294のアミノ酸が欠失をしていることを意味する。
【0027】
「抗体」という用語はここで最も広い意味で使われる。「抗体」は少なくとも(i) Fc領域および(ii) 免疫グロブリンの可変部に由来する結合ポリペプチド領域を含む任意のポリペプチドを意味する。この結合ポリペプチド領域は一つの所定標的抗原または一群の標的抗原に特異的に結合できる。免疫グロブリンの可変部から生じる結合ポリペプチド領域は一つ以上のCDRを有する。抗体には完全長の免疫グロブリン、モノクローナル抗体、多くの特異抗体、少なくとも一つの可変部を有するFc-融合タンパク、合成抗体(ここでは「ミメティック抗体」ともいう)、キメラ抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、抗体−融合タンパク、抗体複合体および各々の断片が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
「完全長の抗体」または「免疫グロブリン」とは抗体の天然の生物構造を構成する構造を意味し、変数領域および定常領域を含む。「完全長の抗体」はモノクローナル完全長抗体、野性型完全長抗体、キメラの完全長抗体、ヒト化完全長抗体を含むが、これらに限定されるものではない。
【0029】
ヒトおよびハツカネズミを含む大部分の哺乳類では、完全長の抗体の構造は一般にテトラマである。このテトラマは2つの全く同じ一組のポリペプチド鎖から成り、その1つの「軽」鎖(一般に約25kDaの分子量を有する)であり、その1つは「重」鎖(一般に約50-70kDaの分子量を有する)である。いくらかの哺乳類、例えばラクダおよびラマでは、完全長の抗体が2つの重鎖だけから成り、各重鎖はFc領域に付いた変数領域から成る。
【0030】
各連鎖のアミノ末端部分は主として抗原認識に関与する少なくとも約100〜110のアミノ酸の可変部を含む。可変部では3つの輪状構造が重鎖および軽鎖の各々のV領域と集まり、抗原結合部位を形成する。輪状構造の各々をコンプレメンタリティ-決定領域(以下に「CDR」)という。ここでのアミノ酸配列の変異が最も重大である。
【0031】
各鎖のカルボキシ末端部分は主としてエフェクタ機能に関与する定常部を定義する。
【0032】
ヒト免疫グロブリンの場合、軽鎖はカッパ軽鎖およびラムダ軽鎖に分類される。重鎖はミュー、デルタ、ガンマ、αまたはエプシロンに分類され、それぞれIM、ID、IgG、IAおよびIEとして抗体のアイソタイプを定義する。
【0033】
「IgG」は認識された免疫グロブリン・ガンマ遺伝子によって実質的にコードされる抗体のクラスに属するポリペプチドを意味する。ヒトではIgGはサブクラスまたはアイソタイプIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4から成る。ハツカネズミではIgGはIgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3から成る。完全長のIgGはテトラマで、2対の全く同じ2つの免疫グロブリン鎖から成り、1つの軽鎖と1つの重鎖とを有する各一組から成り、各軽鎖は免疫グロブリン・領域VLおよびCLから成り、各重鎖は免疫グロブリン領域VH、Cγ1(CH1とも呼ばれる)、Cγ2(CH2とも呼ばれる)およびCγ3(CH3とも呼ばれる)から成る。ヒトIgG1では、「CH1」は位置118−215、CH2領域は位置231−340、CH3領域は位置341−447にある(EUインデックスに従う)か、またはそれぞれ114−223、244−360および361−478(Kabatの数え方に従う)にある。IgG1も位置216−230(EUインデックスに従う)または226−243(Kabat)と称するヒンジ領域にある。
【0034】
「Fc」または「Fc領域」とは第1定常免疫グロブリン領域を除く抗体の定常部から成るポリペプチドを意味する。従って、FcはIgA、IgD、IgGの最後の2つの定常部の免疫グロブリン領域、IgEおよびIgMの最後の3つの定常部の免疫グロブリン領域、これら領域への可撓性ヒンジN末端を意味する。IgAおよびIgMの場合、FcはJ鎖を含むことができる。IgGの場合、Fcは免疫グロブリン領域CH2、CH3およびCH2とCH3の間の低部ヒンジ領域を含む。換言すれば、IgG1のFc領域は「低部ヒンジCH2−CH3」領域、すなわちアミノ酸C226からカルボキシル末端までの領域から成る(ここで、数え方はEUインデックスまたはKabatでの同等物に従う)。他のIgGサブクラスの類似領域はヒトIgG1のそれとIgGサブクラスの重鎖または重鎖断片のアミノ酸配列のアラインメントで決定できる。
【0035】
「Fcポリペプチド」とはFc領域の全部または一部のポリペプチドを意味する。Fcポリペプチドには抗体、Fc融合体、単離されたFc、Fc-共役およびFc断片を含むが、これらに限定されるものではない。
【0036】
「親ポリペプチド」または「ペアレントポリペプチド」とは変異株を発生するために修正される未変更のポリペプチドを意味する。このポリペプチドは単一ポリペプチド鎖または共有結合ではなく一緒にリンクした複数のポリペプチド鎖から成ることができる。親ポリペプチドは天然由来のポリペプチド(野生型ポリペプチド)、天然由来のポリペプチドの変異株または遺伝子操作物または合成ポリペプチドにすることができる。天然由来のポリペプチドの変異株または遺伝子操作物は天然由来の遺伝子によってコードされないポリペプチドである。例えば、遺伝子操作ポリペプチドはキメラ抗体またはヒト化抗体にできる。
【0037】
親ポリペプチドはそれをコードするポリペプチド自体またはアミノ酸配列を表すこともできる。本発明での親ポリペプチドはFc領域が野生型Fc領域、その断片およびそのミュータントから成る群の中から選択される。従って、親ポリペプチドは野生型Fc領域と比べてそのFc領域中に既存のアミノ酸突然変異(すなわちFcミュータント)を含むことができる。親ポリペプチドは抗体、免疫グロブリン、Fc融合ポリペプチド、Fc共役であるのが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0038】
「変異株ポリペプチド」、「ポリペプチド変異株」または「変異株」とは少なくとも一つのアミノ酸突然変異によって親ポリペプチド配列とは異なるポリペプチド配列を有するものを意味する。
【0039】
「野生型またはWT」とは天然のアミノ酸配列またはヌクレオチド配列を意味し、対立遺伝子の(allelic)変異を含む。WTタンパク、ポリペプチド、抗体、免疫グロブリン、IgG、その他は突然変異生成のような分子生物学的手法によって修正されていないアミノ酸配列またはヌクレオチド配列を有する。例えば、「野生型Fc領域」としては、IgG1のFc領域(SEQ ID:NO1)、IgG2のFc領域(SEQ ID:NO2)、IgG3のFc領域(SEQ ID:NO3)およびIgG4のFc領域(SEQ ID:NO4)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
「Fcレセプタ」または「FcR」という用語はFc領域(例えば抗体のFc領域)に結合するレセプタを表すのに用いられる。
「Fcガンマレセプタ」、「Fcγレセプタ」または「FcγRs」は、IgG抗体のFc領域を結合するヒトレセプタを意味する。本明細書のFcγRsは対立遺伝子の(allelic)変異株を含むFcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)、FcγRIII(CD16)サブクラスまたこれらのレセプタのスプライスされた形態のものを含む。
【0041】
これらのFcγRsはさらに、免疫機能を誘発または抑制するので活性化レセプタ(FcγRI、FcγRlla/c、FcγRllla/b)または抑制性レセプタ(FcγRllb)として定義される。
FcγRIファミリは3つの遺伝子(FCGRIA、FCGRIBおよびFCGRIC)から成るが、FCGRIAの産物のみが完全長の表面レセプタとして同定されている。この産物、すなわちFcγRIは樹状細胞(DC)、マクロファージ、さらに活性化好中球によって発現する。
【0042】
FcγRIIファミリは、FcγRlla、FcγRllbおよびFcγRllcタンパクをコードする3つの遺伝子(FCGR2A、FCGR2BおよびFCGR2C)から成る。FcγRllaは単球、ある樹状細胞および好中球で発現する。FcγRllcはナチュラルキラー(NK)細胞で発現する。FcγRllbはで広く発現されたFcγRである。FcγRllbはNK細胞およびT細胞を除く全ての白血球に実質的に存在する。
【0043】
FcγRIIIは、FcγRlllaおよびcγRlllbをコードする2つの遺伝子FCGR3AおよびFCGR3Bから成る。FcγRlllaタンパクは、単球、組織特異性マクロファージ、樹状細胞、δ/γΤ細胞およびナチュラルキラー細胞で膜貫通タンパクとして発現する。FcγRlllbは好中球および好塩基球の表面で発現したGPIアンカー型レセプタである。
【0044】
FcγRllaをコードする遺伝子の2つの対立遺伝子は、位置131で2つの変異株(低応答FcγRllaR131および高応答FcγRllaH131)を産生する。同様に、FcγRlllaをコードする遺伝子の2つの対立遺伝子は位置158で2つの変異株(低応答FcγRlllaF158および高応答FcγRIIIaV158)を産生する。
【0045】
抗体依存細胞毒性の重要な媒介物と考えられているNK細胞は、FcγRlllaおよびFcγRllcのみを発現し、他のFcγRs、特に抑制性FcγRllbはどれも発現しないことは注目に値する。
各FcγRタンパクはIgGサブクラスに対して優先的に結合する特異的リガンドおよびIgGサブクラスに対して明白な親和性を有する。
【0046】
FcγRsの活性化は、種々の免疫応答、例えば食作用、呼吸バースト、および、抗原提示細胞(APC)によるサイトカイン産生(TNF−a,IL−6)、抗体依存細胞毒性(ADCC)および、好中球およびNK細胞による脱顆粒をトリガーする。FcγRsの活性化はさらに、免疫複合体のクリアランスにおいて重要な役割を果たす。一方で、抑制性レセプタFcγRllbはB−細胞ホメオスタシスにおいて重要な調節要素である。これは細胞活性化の閾値および程度を管理する。
【0047】
本明細書の「抗体依存細胞介在細胞毒性」またはADCCとは、免疫系のエフェクタ細胞が、特異抗体によって結合されている標的細胞を能動的に溶解する細胞性免疫の機構を意味する。ADCCは大抵の場合、NK細胞とその他の免疫細胞、例えば好中球および好酸球によって介在される。一般に、ADCCはNK細胞の活性化で生じる。NK細胞の活性化は、そのFcレセプタを、標的細胞の表面に存在する抗原に結合したIgGのFc領域に結合することに関与する。このような相互作用はNK細胞によるサイトカインおよび細胞毒性顆粒の放出を誘導する。ADCCを誘導する抗体の能力を評価するために非特許文献12(de Romeuf et al. Br J Haematol. 2008 Mar;140(6):635-43)に記載のアッセイを実行できる。
【非特許文献12】de Romeuf et al. Br J Haematol. 2008 Mar;140(6):635-43
【0048】
本明細書のC1qは、分子量が460,000 kDaで、6つのコラーゲンの「茎」が6つの球状頭部領域に結合したチューリップの花束にたとえられる構造を有する約六価の分子である。C1qは2つのセリンプロテアーゼC1rおよびC1sと一緒に形成し、複合体C1は補体カスケード経路の第1成分である。
【0049】
「補体依存細胞毒性」またはCDCとは補体の存在下での標的細胞の溶解を意味する。古典的補体経路の活性化は、同種抗原に結合した抗体にC1qを結合することによってイニシエートする。補体カスケードを活性化するために、C1qはIgG1、lgG2またはlgG3の少なくとも2つの分子に結合しなければならないが、IgMの分子は一つだけである。抗体がCDCを誘導する能力を評価するために、非特許文献13(Romeuf et al., Br J Haematol. 2008 Mar;140(6) :635-43)に記載のアッセイを実行できる。
【非特許文献13】Romeuf et al., Br J Haematol. 2008 Mar;140(6) :635-43
【0050】
Fcガンマレセプタおよびその機能は非特許文献14(Nimmerjahn and Ravetch, Nature reviews Immunology, 2008, 8, 34-47)に説明されている。
【非特許文献14】Nimmerjahn and Ravetch, Nature reviews Immunology, 2008, 8, 34-47
【0051】
C1qおよびその機能は例えば非特許文献15(Kishore et al., Immunopharmacology, 2000, 49:1 59-1 70)および非特許文献16(Sjoberg et al. Trends Immunol. 2009 30(2) :83-90)に説明されている。
【非特許文献15】Kishore et al., Immunopharmacology, 2000, 49:1 59-1 70
【非特許文献16】Sjoberg et al. Trends Immunol. 2009 30(2) :83-90
【0052】
「FcRn」または「新生Fcレセプター」はIgG抗体Fc領域を結合し、少なくともFCRN遺伝子によっ、部分的にコードされるタンパクを意味する。FcRnはヒト、ハツカネズミ、ラット、ウサギおよびサルを含む任意のものからのものにすることができる。公知のように、機能性FcRnタンパクは2つのポリペプチド、大抵は重鎖および軽鎖から成る。軽鎖はβ-2-ミクログロブリンであり、重鎖はFCRN遺伝子によってコードされる。FcRnまたはFcRnタンパクはβ-2ミクログロブリンを有するα鎖の錯体を言う。ヒトではFcRnをコードする遺伝子はFCGRTと呼ばれる。FcRnは母親から新生児への受動液性免疫の伝達に関与し、且つIgGのクリアランスの管理にも関与する。
【0053】
FcRnおよびその機能は例えば非特許文献17(Roopenian, Nature Reviews Immunology, 2007, 7, 71 5-725)に説明されている。
【非特許文献17】Roopenian, Nature Reviews Immunology, 2007, 7, 715-725
【0054】
b.FcのC1qおよびFcγRへの結合性を低下させる方法
本発明は、親ポリペプチドと比べてC1qおよび/または少なくとも一つのFcγレセプタに対する親和性の低下を示すFc変異株の調製方法に関するものである。
【0055】
本発明者は、野生型と遺伝子操作されたIgGの両方のFc領域に、単一のアミノ酸変異を導入することによって、C1qとFcγの両方で上記IgGの結合性を大幅に低下させることができることを示した。この単一の変異は位置294でのアミノ酸の欠失(以下、294Delという)に対応する。アミノ酸の番号付けはEUインデックスに従う数え方またはKabatでのその同等物である。
【0056】
より正確には、、ELISAアッセイ(実施例のIII.2.1およびIII.2.2参照)を通じて、野生型Fc領域(すなわちSEQ ID Νー1のアミノ酸配列を有するFc領域)を含むIgG1のアミノ酸配列に294Delを導入することによって得られたIgG1変異株は、結合できなかった、あるいは、対応する野生型IgG1変異株と比べて、C1qタンパク、FcγRllb(CD32bともよばれる)、FcγRlla(CD32aともよばれる)、FcγRllla(CD16aともよばれる)およびFcγRI(CD64ともよばれる)への結合性が低下するということを本発明者は示した。変異294Delの導入によって野生型IgG1と比べてFcRnに対する親和性が増加するように初期に設計されたIgG1ポリペプチド中のC1qおよびFcγレセプタに対する結合親和性を無効にするまたは制限することができたことは注目に値する。
【0057】
例えば、野生型IgG1と比べて変異294Del/256N/378V/383N/434Yを有するIgG1変異株はC1qおよびFcγRレセプタの両方に結合できなかった。
【0058】
逆に、そのIgG1親、従って変異256N/378V/383N/434Yを有するIgG1親は野生型IgG1と比べてC1qおよびFcγRlllaに結合する能力が増加した。
【0059】
変異株294Del/259l/315D/434Yと、アミノ酸変更2591/315D/434Yを含むその親ポリペプチドとの比較によって、同様の結果が得られた。この親ポリペプチドはIgG1野生型と比べてC1qおよびFcγRlllaに結合する能力は同等である。
【0060】
同様に、294Del、293Del、293Del/294Del、294Del/256N/378V/383N/434Y、294Del/259l/315D/434Y、294Del/397M、294Del/302A、294Del/434S、294Del/315D、294Del/230S、294Del/307A、294Del/228R、230S/315D/428L/434Y、294Del/378Vおよび294Del/434Y変異株は、それぞれの親ポリペプチドと比べて、C1qおよびFcγレセプタから選択される少なくとも一つのタンパクに対する結合性が低下する。逆に、上記親ポリペプチドは、野生型IgGIと比べてC1qおよびFcγレセプタから選択される少なくとも一つのタンパクを結合する能力が増加した。本発明者はさらに、野生型Fc領域を含むIgG1のアミノ酸配列に294Delを導入して得られるIgG1変異株は、それぞれの親IgG1と比べてFcRnに対して同等の結合性を示すことができることを示した。同等の結合性とは、294Delアミノ酸変更の導入、変異によって生じる、変異株に対するFcRn結合性の変更がその親IgG1と比べてわずか35%以下であることを意味する。35%以下とは、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下および5%以下を意味する。
【0061】
C1qおよびFcγRsを結合する能力を低下させることによって、変異294Delのの導入は、IgG1変異株のCDCおよびADCC活性に、それぞれ親IgG1と比べて影響を与えることが予想される。
【0062】
位置293のアミノ酸はさらにグルタミン酸である。その欠失は、位置294のグルタミン酸の欠失と同じヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を導く。従って、変異株293Delおよび294Delは同じポリペプチドである。従って、本発明の第1の対象は、親ポリペプチドと比べてClqおよびFcγから選択される少なくとも一つのタンパクに対する結合性が低下した、Fc領域を含む親ポリペプチドの変異株を生産する方法であって、294Delまたは293Delおよび293Del/294Delから成る群の中から選択されるアミノ酸変更を、親ポリペプチドのFc領域内に導入する方法を提供することにある。Fc領域のアミノ酸の数え方はEUインデックスに従う数え方またはKabatでのその同等物である。
【0063】
好ましい実施例では、この変異株は親ポリペプチドに比べてタンパクC1qおよび少なくとも一つのFcγレセプタに対する低下した結合性を示す。
「定義」と題した上記パートで説明したように、親ポリペプチドはFc領域を含むポリペプチドを意味する。この親ポリペプチドは天然由来のポリペプチド(野生型ポリペプチド)、天然由来のポリペプチドの変異株、天然由来のポリペプチドの遺伝子操作物または合成ポリペプチドにすることができる。親ポリペプチドとしては、抗体、Fc融合タンパク、Fc−共役、Fc由来ポリペプチド、単離されたFcおよびFc断片が挙げられるが、これらに限定されるものではない。例えば、設計されたポリペプチドはキメラ抗体またはヒト化抗体にすることができる。
【0064】
親ポリペプチドのFc領域は、ヒトIgGサブクラスの野生型Fc領域、その断片およびそのミュータントから成る群の中から選択されるのが好ましい。本発明では、ヒトIgGのFc領域は「低部ヒンジCH2−CH3」領域に対応する。野生型ヒトIgG1の「低部ヒンジCH2−CH3」領域とは、EUインデクサまたはKabatでの同等物に従う位置226から位置447までのアミノ酸を意味する。他のIgGサブクラスの類似領域は[図1]に示すようにヒトIgG1のそれとIgGサブクラスの重鎖のアミノ酸配列のアラインメントで決定できる。
【0065】
ヒトIgGサブクラスは、IgG1、lgG2、lgG3、lgG4およびその種々のアロタイプを含む。IgG1、lgG2、lgG3およびlgG4のFc領域の配列はそれぞれSEQ ID Νー1、SEQ ID NO 2、SEQ ID NO 3およびSEQ ID NO 4の配列と相関する。
【0066】
Fc領域の断片は、野生型Fc領域に由来の一つまたは複数のポリペプチドを含むポリペプチドとして定義される。Fc領域の上記断片は野生型Fc領域からの少なくとも100の連続残基を含むのが好ましい。野生型Fc領域からの少なくとも100の連続残基には少なくとも140、少なくとも160、少なくとも200、少なくとも210が含まれる。
【0067】
上記のように、親ポリペプチドは野生型Fcミュータントから成ることができる。すなわち、Fc領域は野生型Fc領域と比べて既存のアミノ酸突然変異、例えば付加、挿入および/または置換を有することができる。
【0068】
既に述べたように、「変異株ポリペプチド」または「変異株」とは少なくとも一つのアミノ酸変更によって親ポリペプチドのそれと異なるポリペプチド配列を意味する。本発明の場合には、少なくとも一つのアミノ酸変更は、変異294Del、変異293Delおよび変異293Del/294Delの組合せから選択されるアミノ酸変更を必然的に含む。
【0069】
本発明の変異ポリペプチドはその親ポリペプチドと比べて第1補体成分C1qに対する低下した結合性を示すことができる。換言すれば、C1qに対する変異株の親和性は親ポリペプチドのそれより低い。
本発明の変異株ポリペプチドも、その親ポリペプチドのそれより低い少なくとも一つのFcγレセプタに対する親和性を示すことができる。本発明のFcγレセプタとはFcγRI、FcγRIIIおよびFcγRIIレセプタである。少なくとも一つのFcγRはFcγRllla、FcγRlla、FcγRIおよびFcγRllbから成る群から選択されるのが好ましい。
【0070】
本発明のある実施例では、変異株ポリペプチドはその親ポリペプチドと比べて、C1qとFcγRlllaの両方に対する低下した結合性を示す。
特定の実施例では、変異株ポリペプチドはその親ポリペプチドと比べて、C1q、FcγRllaおよびFcγRlllaに対する低下した結合性を示す。
他の実施例では、変異株ポリペプチドはその親ポリペプチドと比べて、C1q、FcγRllla、FcγRllaおよびFcγRIに対する低下した結合性を示す。
さらに他の実施例では、変異株ポリペプチドはその親ポリペプチドと比べて、C1q、FcγRllla、FcγRlla、FcγRIおよびFcγRllbに対する低下した結合性を示す。
【0071】
C1qまたはFcガンマレセプタに対する結合性は、従来技術の周知な方法、例えばELISAアッセイ、フローサイトメトリーおよび表面プラズモン共鳴(SPR)によって評価できる。
【0072】
例えば、所定のタンパク(例えば、C1qまたはFcγR)に対する本発明の変異株の結合強度とその親ポリペプチドのそれとを比較することができる。実施例のセクションIIIに記載のELISAアッセイによって得られるその特定信号の比を計算する。本発明では、変異株の特定信号を親ポリペプチドの特定信号で割ることで得られる比が0.50である場合に変異株はその親ポリペプチドと比べて、所定のタンパク、例えばC1qまたはFcγRに対する低下した結合性を示す。この特定信号はELISAアッセイで測定される。換言すれば、変異株の特定信号はその親ポリペプチドの特定信号より0.50倍弱い。0.50以下の比とは、0.45以下の比、0.40以下の比、0.35以下の比、0.30以下の比、0.25以下の比、0.20以下の比、0.15以下の比、0.10以下の比、0.05以下の比、0.01以下の比を含む。
【0073】
好ましい実施例では、比は0.20以下である。
ELISAアッセイに好ましいフォーマットは所定のタンパクの被覆を含む。
変形例では、所定のタンパクに対する変異株の結合性とその親ポリペプチドの結合性を、適当なELISAアッセイによるEC50の測定を通して比べることができる。EC50とは、変異株の濃度の対数の関数としての所定の結合タンパクの百分率に関する曲線の50%飽和を示す信号を供給する変異株の濃度を意味する。一般に、変異株はそのEC50がそのポリペプチド親のEC50より少なくとも1.5倍高い場合に、その親ポリペプチドと比べて、所定のタンパクに対する低下した結合性を示すことは認められている。
【0074】
所定のタンパクに対する変異株の結合性も、解離定数(KD)の測定を通してSPRによって評価できる。一般に、変異株はそのKDがそのポリペプチド親のEC50より少なくとも1.5倍高い場合に、その親ポリペプチドと比べて、所定のタンパクに対する低下した結合性を示すことは認められている。
【0075】
C1qまたはFcγRに対する変異株の親和性は、非常に弱く、ELISAアッセイによる特定信号さらにはSPRによるKdまたはELISAアッセイによるEC50は、結合信号が暗雑音中または検出の閾値以下であるため、正確に測定できない可能性がある。このような場合には、変異株は所定のタンパクを結合しないとみなされる。
【0076】
例えば、本発明方法で得られる変異株は少なくとも一つのFcγRに結合することができず、C1qに対する低下した結合性を示す。このような変異株は本発明の実施例にはっきりと説明されている。ある実施例では、本発明の変異株はC1qおよびFcγレセプタから選択される少なくとも一つのタンパクに結合しない。
【0077】
本発明者は、C1qおよびFcγレセプタに対する結合性を大きく損なうためには、294Delを導入するだけで十分であることを示した。換言すれば、C1qおよび/またはFcγレセプタに対する適切に低下した結合性を有する変異株を得るためには、294Del以外の変異をポリペプチド親のFc領域内に導入してはならない。
【0078】
このような結果は特に驚くべきものである。なぜなら、本発明者の知る限りでは、従来技術には大抵、Fc変異株は、そのポリペプチド親と比べてそのFc領域で少なくとも2つのアミノ酸変異を有するC1qおよびFcγレセプタに対する低下した結合性を示すと記載されているからである。
【0079】
本発明のある実施例では、変異294Delが上記の変異株を得るために親ポリペプチドのFc領域に導入される唯一のアミノ酸変更である。
本発明の他の実施例では、変異293Delが、上記の変異株を得るために親ポリペプチドのFc領域に導入される唯一のアミノ酸変更である。
さらに他の実施例では、上記の変異株を得るためにアミノ酸変更del293/del294が、親ポリペプチドのFc領域に導入される唯一のアミノ酸変更である。
【0080】
従って、本発明の特定の実施例には下記の方法が含まれる:変異株が親ポリペプチドと比べてタンパクC1qおよび/または少なくとも一つのレセプタFcγRに対する結合性が低下し、Fc領域を有する親ポリペプチドの変異株の生産方法であって、
(i)294Del(ここで、上記アミノ酸変更294delは親ポリペプチドのFc領域に導入される唯一のアミノ酸変更である)
(ii)293Del、
(iii)293Del/294Del、
から成る群の中から選択されるアミノ酸の変異を親ポリペプチドのFc領域に導入する方法(ただし、Fc領域のアミノ酸の数え方はEUインデックスに従う数え方またはKabatでのその同等物である)。
【0081】
本発明の他の実施例には、下記の方法が含まれる:変異株が親ポリペプチドと比べてタンパクC1qおよび/または少なくとも一つのレセプタFcγRに対する結合性が低下し、Fc領域を有する親ポリペプチドの変異株の生産方法であって、
(i)294Del(ここで、上記アミノ酸変更294delは親ポリペプチドのFc領域に導入される唯一のアミノ酸変更である)
(ii)293Del(ここで、上記アミノ酸変更293Delは親ポリペプチドのFc領域に導入される唯一のアミノ酸変更である)、
(iii)293Del/294Del、
から成る群の中から選択されるアミノ酸の変異を親ポリペプチドのFc領域に導入する方法(ただし、Fc領域のアミノ酸の数え方はEUインデックスに従う数え方またはKabatでのその同等物である)。
【0082】
本発明の特定実施例では、本発明の方法は、E294Del/T307P/N434Yを含む変異株とは異なる変異株を提供する。
【0083】
いかなる理論に縛られるものではないが、本発明者は本発明によって提供される方法はFc領域内の大きな構造上の再配列を有意に引き起こさず、それによって、場合によっては、C1qおよびFcγRに対する結合性によって介在される他の機能がポリペプチド親の機能と比べて有意に変化しないと考える。本発明者がそれぞれ異なる親ポリペプチドに関して、そのFc領域への変異294Delの導入が、新生Fcレセプタ(FcRn)に対するその親和性を有意に損なうものではないことを示したことは注目に値する。例えば、IgG1変異株256N/294Del/378V/383N/434Yの特定信号はその親ポリペプチド256N/378V/383N/434Yのそれの0.75倍に等しく、IgG1変異株307A/294Delの特定信号はそのポリペプチド親307Aのそれの0.97倍に等しい。
【0084】
上記変異株が野生型IgG1と比べてFcRnに対する増加した結合性を示すことは注目に値する(実施例の[表1]〜[表4]参照)。換言すれば、場合によって、Fcポリペプチド親および本発明の方法で得られた変異株はFcRnに対する近い結合特性を示すことができる。
【0085】
本発明方法によって得られる変異株は、ここで使用したように、変異株の特異信号がその親ポリペチドでの特異信号の少なくとも0.6倍に等しい。この特異信号はELISAにより決定され、このELISAでは実施例のセクションIIIで説明するようにFcRn分子を固定するのが好ましい。少なくとも0.6倍とは0.6倍、0.65倍、0.70倍、0.75倍、0.80倍、0.85倍、0.90倍および0.95倍であることを意味する。
【0086】
既に述べたように、親ポリペチドのFc領域はヒトIgGの野生型Fc領域、その断片およびそのミュータント(突然変異体)から成る群の中から選択することができる。
【0087】
ヒトIgGの野生型Fc領域にはSEQ ID No.1、SEQ ID NO 2のポリペチド、SEQ ID NO 3のポリペチド、SEQ ID NO 4のポリペチド、SEQ ID NO 5のポリペチドが含まれる。
【0088】
本発明の好ましい実施例では、親ポリペチドのFc領域は、IgG1およびlgG2からの野生型Fc領域、その断片およびそれのミュータントから成る群の中から選択する。より好ましい実施例では、ポリペチドペアレンドのFc領域は、野生型ヒトIgG1、その断片およびそのミュータントのFc領域である。
【0089】
上記にように、親ポリペチドのFc領域は既存のアミノ酸の一つ以上のアミノ酸の欠失、挿入および置換の中から選択される変異から成ることができる。換言すれば、親ポリペチドのFc領域は野生型Fc領域のミュータント、好ましくはヒトIgG、すなわちIgG1、lgG2、lgG3およびlgG4の野生型Fc領域のミュータントでもよい。
【0090】
本発明の実施例では、親ポリペチドのFc領域は約1〜約20のアミノ酸突然変異、好ましくその対応する野生型Fc領域と比較して約1〜約10のアミノ酸突然変異を有する。
【0091】
上記の約1〜約20のアミノ酸突然変異には、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19および20のアミノ酸突然変異を含む。
【0092】
ポリペチドペアレントのFc領域は一般にその対応する野生型Fc領域と少なくとも約90%のアミノ酸同一性を有する。この少なくとも90%のアミノ酸同一性には少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%および99.5%のアミノ酸同一性が含まれる。
【0093】
第1のポリペチド(A)と第2のポリペチド(B)との間の同一性の百分比を決定するためには偶発的なギャップ(すなわちポリペチド(B)と比較したポリペチド(A)の配列中に存在する偶発的な欠失および挿入)を取り入れたNeedleman-Wunschのグローバルアランメント・アルゴリズムのような公知の方法を使用してそれらの配列を整合させる。下記パラメータを用いてEMBL−EBIウェブサイト(www.ebi.ac.uk/Tools/emboss/align/)に記載のアランメント・ツール「EMBOSS Pairwise Alignment Algorithms」を利用できる:(i)方法:EMBOSS:Needle(グローバル)、(ii)ギャップ延び:0.5、(iii)ギャップ開き:10.0、(iv)分子:タンパク、(v)マトリックス:Blosum62。
【0094】
グローバルなアランメントが得られたら、同一性の百分比を従来法で決定でき、好ましくは、(A)と(B)のアランメントのマッチした残基を、そして、(A)と(Bとの間の最も長いポリペチド配列のアミノ酸数で割って求める。
【0095】
親ポリペチドが既存のアミノ酸の突然変異から成るときには、その親ポリペチドはその基準ポリペチドすなわち野生型Fc領域から成る類似したポリペチドと比べて一つ以上の減少または増加するエフェクタ機能を示すであろう。ここで使用するエフェクタ機能にはADCC、ADCP、CDCおよびFcRnへの結合が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0096】
所望のエフェクタ機能プロフィールに依存する親ポリペチド中に存在する既存のアミノ酸の突然変異を決定することは公知の研究から当業者が行い得ることである。例えば、親ポリペチドは下記の中から選択されるアミノ酸位置に少なくとも一つのアミノ酸突然変異を有することができる:Fc領域の227、228、230、231、233、234、239、241、243、246、250、252、256、259、264、265、267、269、270、276、284、285、288、289、301、302、303、305、307、308、309、311、315,317、320、322、325、327、330、332、334、335、338、340、342、343、345、347、350、352、354、355、356、359、360、361、362、369、370、371、375、378、380、382、383、384、385、386、387、389、390、392、393、394、395、396、397、398、399、400、401、403、404、408、411、412、414、415、416、418、419、420、421、422、424、426、428、433、434、438、439、440、443、444、445、446および447。ここで、Fc領域のアミノ酸の番号の教え方はEU指数または相当Kabatである。
【0097】
親ポリペチドはさらに、下記のアミノ酸位置に一つだけのアミノ酸突然変異を有することができる:Fc領域の227、228、230、231、233、234、239、241、243、246、250、252、256、259、264、265、267、269、270、276、284、285、288、289、301、302、303、305、307、308、309、311、315,317、320、322、325、327、330、332、334、335、338、340、342、343、345、347、350、352、354、355、356、359、360、361、362、369、370、371、375、378、380、382、383、384、385、386、387、389、390、392、393、394、395、396、397、398、399、400、401、403、404、408、411、412、414、415、416、418、419、420、421、422、424、426、428、433、434、438、439、440、443、444、445、446および447。ここで、Fc領域のアミノ酸の番号の教え方はEU指数または相当Kabである。「一つだけのアミノ酸突然変異」とは上記位置に一つ以上の突然変異を含まないことを意味する。例えば、親ポリペチドはFc領域の位置307と434の両方の位置にアミノ酸の突然変異を含まない。従って、ポリペチドペアレントのFc領域に唯一の突然変異が導入ささる本発明実施例では294Delまたは293Delであり、その変異株は上記のアミノ酸位置に複数のアミノ酸突然変異を有することはできない。特に、変異株はFc領域の位置307と434にアミノ酸突然変異を有することはできない。Fc領域のアミノ酸の位置の数え方はEU指数またはその対応Kabatである。
【0098】
本発明の一つの実施例は、Fc領域を有する親ポリペチドの変異株の製造方法を示し、この変異株はC1qおよびFeyリセプタから選択される少なくとも一つのタンパクに対する結合性(ビン遺伝子)が親ポリペチドと比べて低下し、294Delまたは293Delおよび293Del/294Delから成る群の中から選択されるアミノ酸突然変異が親ポリペチドのFc領域内に導入される。ただし、得られる変異株は294Del/T307P/N434Yまたは293Del/T307P/N434Y突然変異から成ることはない。
【0099】
本発明の他の実施例では、Fc領域を有する親ポリペチドの変異株の製造方法が示され、この変異株はC1qおよびFeyリセプタから選択される少なくとも一つのタンパクに対する結合性が親ポリペチドと比べて低下し、294Delまたは293Delおよび293Del/294Delから成る群の中から選択されるアミノ酸が親ポリペチドのFc領域に導入される。ただし、親ポリペチドの上記突然変異は294Delまたは293Delを有する突然変異と307および434の両方の位置の突然変異とを組み合わせて有するものではない。Fc領域のアミノ酸の位置の数え方はEU指数またはその対応Kabatである。同様に、ポリペチドペアレントはFc領域の290から292までの位置と、295から300までの位置に少なくとも一つのアミノ酸突然変異を有するか、有することはない。Fc領域のアミノ酸の位置の数え方はEU指数またはその対応Kabatである。
【0100】
従って、本発明のある実施例では、ポリペチドペアレントはFc領域の290から292まで位置と295から300までの位置のいずれにもアミノ酸突然変異を有しない。Fc領域のアミノ酸の位置の数え方はEU指数またはその対応Kabatである。
【0101】
上記の290から292までおよび295から300までのアミノ酸位置には290、291、292、295、296、297、298、299および300が含まれる。
【0102】
本発明の他の実施例では、ポリペチドペアレントはそのFc領域に野生型Fc領域と比べていかなる突然変異も含まない。この種の実施例では、親ポリペチドはヒトIgGの野生型Fc領域およびその断片から成る群から選択されるFc領域を含む。
【0103】
念のため、ヒトIgGの野生型Fc領域はSEQ ID NO 1のFc領域、SEQ ID NO 2のFc領域、SEQ ID NO 3のFc領域およびSEQ ID NO 4のFc領域を含む。
【0104】
本発明の他の実施例では、親ポリペチドのFc領域は434Y、378V、397M、302A、434S、315D、230S、307A、228R、230S/315D/428L/434Y、2591/315D/434Yおよび256N/378V/383N/434Yから成る群の中から選択される少なくとも一つのアミノ酸突然変異を含む野生型IgGのFc領域の変異株である。
【0105】
本発明のある実施例では、親ポリペチドのFc領域が434Y、378V、397M、302A、434S、315D、230S、307A、228R、230S/315D/428L/434Y、2591/315D/434Yおよび256N/378V/383N/434Yから成る群の中から選択される野生型IgGの変異株のFc領域である。
【0106】
特定実施例では、タンパクC1qおよび少なくとも一つのリセプタFcγRに対する結合性が親ポリペチドと比較して低下した、Fc領域を有する親ポリペチドの変異株の製造するための本発明方法が下記で特徴づけられる:
(i)親ポリペチドのFc領域に294Del、293Delおよび293Del/294Delから選択されるアミノ酸突然変異を導入し、
(ii)親ポリペチドのFc領域に導入される294Del、293Delおよび293Del/294Delの中から選択されるアミノ酸突然変異が変異株を得るために導入される唯一のアミノ酸突然変異であり、
(iii)親ポリペチドのFc領域はIgGの野生型Fc領域およびその断片トの群の中から選択する。
Fc領域のアミノ酸の位置の数え方はEU指数またはその対応Kabatである。
【0107】
本発明の一つの実施例では、親ポリペチドのFc領域に導入される294Del、293Delおよび293Del/294Delの中から選択されるアミノ酸突然変異の導入工程が下記の段階から成る:
(a)親ポリペチドをコードする核酸を提供し、
(b)階段(i)で与えられた核酸を変成して上記変異株をコードする核酸を得て、
(c)階段(ii)で得られた核酸を宿主細胞で発現して上記変異株を回収する。
【0108】
本発明方法のいくつかの実施例では、親ポリペチドのFc領域に導入したアミノ酸突然変異が294Delである。他の実施例ではこの突然変異は293Delである。
【0109】
この方法は分子生物学の従来のプラクティスで実行できる。本発明方法を実行するために当業者は例えば下記非特許文献18〜20に記載の周知の手順を利用できる。
【非特許文献18】Molecular Cloning-A Laboratory Manual、第3版(Maniatis, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, 2001 )
【非特許文献19】The condensed protocols from Molecular cloning: a laboratory manual (Sambrook, Russell, CSHL Press, 2006)
【非特許文献20】Current Protocols in Molecular Biology (John Wiley & Sons, 2004).
【0110】
親ポリペチドの核酸は商用のものでも、分子生物学または化学合成の古典的手順で得られるものでもよい。階段(b)の変異株をコードする核酸は公知の各種方法を使用して親ポリペチドの核酸を変成して得ることができる。これらの方法に部位特異的突然変異、ランダム突然変異生成、PCR突然変異生成およびカセット突然変異生成を含むが、これに限定されるものではない。
【0111】
変異株をコードする核酸は宿主細胞中での発現のために発現ベクターに組み込むことができる。
【0112】
発現ベクターは制御または調節配列、選択可能なマーカー、フィージョンパートナーおよび/または追加要素とリンク可能、換言すれば機能関係を付けることが可能なタンパクを一般に有する。本発明の変異株は上記核酸を用いて形質転換した宿主細胞、好ましくは上記タンパクを発現または誘発するのに適した条件下に変異株をコードする核酸を含む発現ベクターを培養することで製造できる。多種多様な適当な宿主細胞系を使うことができ、哺乳動物細胞、植物細胞、バクテリア、昆虫細胞およびイーストが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、細胞なしの翻訳系でインビトロ合成することもでき、例としてはウサギ網状赤血球、コムギ胚および大腸菌からの抽出物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0113】
例えば、American Type Culture Collectionから入手可能なATCC細胞系カタログに記載の各種の哺乳動物細胞系を使用できる。宿主細胞は下記にすることができるが、これらに限定されるものではない:YB2/0(YB2/3HL.P2.GII.IGAg.20細胞、American Type Culture Collectio寄託番号ATCC CRL−1662)、SP2/0、YE2/0、1R983F、Namalwa、PERC6、CHO細胞株、特にCHO−K−1、CHO−LecIO、CHO−Lecl、CHO−Lecl3、CHOPro−5、CHO dhfr−、Wil−2、Jurkat、Vera、Molt−4、COS−7、293−HEK、BHK、KGH6、NSO、SP02/0−Ag14、P3X63Ag8.653、C127、JC、LA7、ZR−45−30、hTERT、NM2C5、UACC−812等。宿主細胞に外部核酸を入れる方法は公知で、各宿主細胞で異なる。
【0114】
宿主細胞は人間以外の遺伝子導入動物または遺伝子導入植物に属するものにすることができる。この場合、変異株はトランスジェニック生物から得られる。
【0115】
人間以外の遺伝子導入動物は受精卵に所望の遺伝子を直接注射することで得ることができる(非特許文献21:Gordon et a/., 1980 Proc Natl Acad Sci U S A. ;77:7380-4)。人間以外の遺伝子導入動物にはハツカネズミ、ウサギ、ラット、ヤギ、ウシまたは家禽等が含まれる。所望の遺伝子を有する人間以外の遺伝子導入動物は所望遺伝子を胎生期幹細胞に入れ、会合キメラ方法または注射キメラ法によって動物を調製することで得られる{非特許文献22:Manipulating the Mouse Embryo, A Laboratory Manual, Second edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1994); 非特許文献23:Gene Targeting, A Practical Approach, IRL Press at Oxford University Press (1993)。胎生期幹細胞の例にはハツカネズミの胎生期幹細胞(非特許文献24:Evans and Kaufman, 1981 , Nature; 292:154-156)、ラット、ヤギ、ウサギ、サル、家禽、ウシ等が含まれる。さらに、人間以外の遺伝子導入動物をクローン技術を使用して調製することもできる。この場合には所望遺伝子を細胞核を取り除かれた卵子に移植する(非特許文献25:Ryan et a/., 1997 Science; 278: 873 - 876 ; 非特許文献26:Cibelli et a/., 1998 Science, 280 : 1256-1258)。記の方法で得た動物に異なる分子をコードするDNAを導入し、異なる分子を形成し、蓄積させ、動物からポリペチド変異株を集めてポリペチド変異株を製造することもできる。ポリペチド変異株は動物の乳汁、卵等に形成され、蓄積できる。
【非特許文献21】Gordon et a/., 1980 Proc Natl Acad Sci U S A. ;77:7380-4
【非特許文献22】Manipulating the Mouse Embryo, A Laboratory Manual, Second edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1994)
【非特許文献23】; Gene Targeting, A Practical Approach, IRL Press at Oxford University Press (1993)
【非特許文献24】Evans and Kaufman, 1981 , Nature; 292:154-156
【非特許文献25】Ryan et a/., 1997 Science; 278: 873 - 876
【非特許文献26】Cibelli et a/., 1998 Science, 280 : 1256-125
【0116】
上記で引用した全ての実施例で、親ポリペチドは自然に生じるポリペチド(野生型ポリペチド)、自然に生じるポリペチドの変異株または遺伝子操作産物または合成ポリペチドにすることができる。
【0117】
本発明の一つの実施例では、親ポリペチドはFc−融合タンパク、Fc−コンジュゲートおよび抗体から成る群から選択する。本発明で使用するように、Fc−融合タンパクおよびFc−コンジュゲートはパートナーとリンクしたFc領域を有する。Fc領域はパートナーにスペーサを介するか、介さずにリンクできる。
【0118】
本発明ではFc融合タンパクは単一遺伝子によってコードされるタンパクであり、タンパク、ポリペチドまたはFc領域にリンクされた小さいペプチドから成る。Fc融合タンパクは任意成分としてペプチド・スペーサを含むことができる。任意のタンパクまたは小さいペプチドをFc領域にリンクして、Fc融合させることができる。タンパク融合パートナーはリセプタ、接着分子、リガンド、酵素、サイトカイン、ケモキン(chemokine)またはその他のタンパクまたはタンパクドメインを含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0119】
特に、Fc−融合タンパクは免疫接着物すなわちヘテロな「接着」タンパク(リセプタ、リガンドまたは酵素)を免疫グロブリン不変領域(すなわちFc領域)の断片に結合する抗体様タンパクにすることができる(免疫接着物に関しては非特許文献27:Ashkenazi A, Chamow SM. 1 997, Curr Opin Immunol. ;9(2):1 95-200参照)。
【非特許文献27】Ashkenazi A, Chamow SM. 1 997, Curr Opin Immunol. ;9(2):1 95-200
【0120】
小さいペプチドは、治療の標的にFc融合を送る任意の治療薬を含むが、これに限定されるものではない。
【0121】
本発明では、FcコンジュゲートはFc領域をコンジュゲートパートナーに結合することで得られ、必要に応じてFc領域をパートナーに結合するスペーサを含むことができる。コンジュゲートパートナーはタンパク性(proteinaceous)でも非タンパク性でもよい。このカップリング反応には一般にFc領域上またはコンジュゲートパートナー上の官能基を使用する。
【0122】
適したコンジュゲートパートナーはポリペプチド製剤、ラベル(ラベルの例は下記を参照)、医薬品、細胞障害能薬剤、細胞毒(例えば化学療法剤)、トキシンおよびトキシンの能動断片を含むが、これらに限定されるものではない。適したトキシンおよびその対応断片にはジプテリア(diptheria)A鎖、エキソトキシンA鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖等が含まれるが、これらに限定されるものではない。細胞毒剤はFc変異株に直接コンジュゲートできる、または、Fc変異株に共有結合で結合できるキレート剤によって配列できる任意の放射性核種にすることができる。追加実施例では、コンジュゲートパートナーはカリケアミシン(calicheamicin)、オウリスタチン(auristatins)、ゲルダナマイシン、メイタンシンおよびデュオカルミシアス(duocarmycins)およびその類似体から成る群の中から選択できる。
【0123】
既に述べたように、「抗体」という用語は最も広い意味で使われる。本発明では「抗体」は少なくとも(i)Fc領域および(ii)免疫グロブリンの可変領域から得られる結合ポリペチド領域を有する任意のポリペチドを意味する。上記の結合ポリペチド領域は特に一つの所定標的抗原または一群の標的抗原を結合できる。免疫グロブリンの可変部から生じる結合ポリペチド領域は少なくとも一つのCDRを有する。抗体は全長抗体、多重特異性抗体、少なくとも一つの可変部を有するFc−融合タンパクまたは合成抗体(「抗体ミメティックス」とよばれる)、抗体−融合タンパク、抗体複合体およびその各々の断片を含むが、これらに限定されるものではない。
【0124】
少なくとも一つの可変部を有するFc−融合タンパクとは(i)Fc領域および(ii)免疫グロブリンの可変領域から得られる結合ポリペチド領域を有する遺伝子工学で設計されたタンパクを意味する。特に重要な抗体には:(a)本発明のFc変異株および(b)免疫グロブリンの可変部から得られる下記のポリペチド領域(すなわち、それは少なくとも一つのCDRを含む)の一つが含まれる:(i)VL、VH、CLおよびCH1領域を有するFab断片、(ii)VHとCH1領域を有するFd断片、(iii)単一の抗体のVLとVH領域を有するFv断片、(iv)単利CDR領域、(v)F(ab')断片、2つの連結したF(ab)断片を有する二価の断片、(vi)単一鎖Fv分子(scFv)、ここで、VH領域とVL領域は2つの断片を連結して抗原結合部位を作るペプチド・リンカーによってリンクささる、(vii)二特異性な単一鎖Fvおよび(viii)遺伝子融合によって得られる「二抗体(diabodies)」または「酸抗体(triabodies)」、多価または多重特異性(multispecific)な断片。しかし、これらに限定されるものではない。
【0125】
「全長(フルレングス)抗体」とは可変部と定常部とを含む抗体の自然に生じる生物学的形態を有する抗体を意味する。全長抗体は野生型抗体、野生型抗体のミュータント(例えば、既存の突然変異から成る)、野生型抗体の遺伝子操作物(例えば例えば、キメラ、ヒト化抗体または完全ヒト抗体、下記参照)にすることができるが、これらに限定されるものではない。一般に全長抗体の構造はテトラマであるが、ラマやラクダのようないくつかの哺乳類の抗体の構造は免疫グロブリンがダイマーであることは周知である。
【0126】
全長抗体の足場(スキャフォルド)成分は異なる生物種からの混合物にすることができる。この種の抗体変異株はキメラ抗体および/またはヒト化抗体にすることができる。一般に「キメラ抗体」および「ヒト化抗体」の両方とも複数の生物種からの領域を結合した抗体である。例えば「キメラ抗体」は一般に、非ヒト動物、一般にはハツカネズミ(場合によってはラット)からの可変領域とヒトの定常領域とから成る。大抵の場合、ヒト化抗体は非ヒト免疫グロブリンから来る最小配列を含むキメラ抗体である。一般に、ヒト化抗体ではCDR以外の全抗体がヒト起源のポリヌクレオチドによってコードされるか、CDRs以外はヒト抗体と同一であるヒト以外の生物起源の核酸によってコードされるCDRのいくつかまたは全てはヒト抗体の可変部のβ−シートフレームにグラフトされる。その特異性はCDRによって決まる。この種の抗体の調製方法は周知で、例えば下記文献に記載されている。
【特許文献1】国際公開第WO92/11018
【非特許文献28】Jones, 1986, Nature 321 :522-525
【非特許文献29】Verhoeyen et al., 1 988, Science 239:1 534-1 536,
【非特許文献30】Tsurushita & Vasquez, 2004, Humanization of Monoclonal Antibodies, Molecular Biology of B Cells, 533-545, Elsevier Science (USA))
【0127】
ここで使用する「全長ヒト抗体」または「完全ヒト抗体」とはヒト遺伝由来の配列を完全に有する抗体を意味する。場合によっては、これはここで説明した突然変異を有するヒト染色体由来の抗体の遺伝子配列を有するヒト抗体でもよい。あるいは、抗体成分がヒトであるが、単一遺伝子由来でなくてもよい。従って、1つの抗体からのヒトCDRは例えば一つ以上のヒト抗体からの配列、例えば足場の配列と組み合わせることができる。また、例えば、いろいろな生殖細胞系(germline)配列を組み合わせてヒト抗体またはヒト足場を形成することもできる。
【0128】
共有結合変成を含む全長抗体も本発明の範囲に含まれる。この種の突然変異はグリコシル化、標識化および共役を含むが、これらに限定されるものではない。
【0129】
標識(ラベル)化は全長抗体と検出可能なラベルとのカップリングといわれる。ここで使用するラベルには下記が含まれるが、下記に限定されるもではない:(a)放射性または安定な同位元素である同位体ラベル、(b)磁性ラベル、例えば磁性粒子、(c)レドックス活性種、(d)光学色素、例えば発色団、リン光体および蛍光団、酵素基、例えばワサビペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、(e)ビオチニル化(biotinylated)基、(f)二次性リポータで認識される所定のポリペチドエピトープ、例えばロイシン・ジッパーペアー配列、二次性抗体様結合部、金属結合領域、エピトープタグ、その他。
【0130】
コンジュゲート(共役)とは全長抗体とポリペチドまたは非ペプチド分子、例えばリセプタの標的−結合領域、接着分子、リガンド、酵素、サイトカイン、ケモキン(chemokine)、医薬、細胞毒剤(例えば化学療法剤)またはトキシンとのカップリングをいう。
【0131】
一つの実施例では、ポリペチドペアレントがキメラな免疫グロブリン、ヒト化免疫グロブリン、全ヒト免疫グロブリンから成る群の中から選択される。免疫グロブリンは活用化またはラベル化されていてもよいIgGの中から選択するのが好ましい。
【0132】
c.本発明の変異株
本発明の他の対象は、Fc領域を有する親ポリペチドの変異株であって、この変異株は親ポリペチドと比べてタンパクC1qおよびリセプタFcγRsから選択される少なくとも一つのタンパクに対する結合性が低下しており、ポリペチドペアレントのFc領域と比較したときにそのFc領域に294Del、293Delおよび293Del/294Delから選択されるアミノ酸突然変異を有する変異株にある。この変異株は本発明方法によって獲得できる。
【0133】
上記変異株はタンパクC1qおよびリセプタFcγRsから選択される少なくとも一つのタンパクに対する結合性が親ポリペチドと比べて低下しており、そのポリペチドペアレントのFc領域と比較した時にそのFc領域内に294Del、293Delおよび293Del/294Delから選択されるアミノ酸突然変異を有する。
【0134】
本発明の一つの実施例では、上記変異株は親ポリペチドと比べてC1qおよび少なくとも一つのリセプタFeyに対する接合性が低下している。
【0135】
本発明の一つの実施例では、上記変異株は親ポリペチドのFc領域と比べた唯一の突然変異がFc領域の然変異294Delである。
【0136】
本発明の他の実施例では、上記変異株は親ポリペチドのFc領域と比べた唯一の突然変異がFc領域の突然変異293Delである。
【0137】
本発明の他の実施例では、上記変異株は親ポリペチドのFc領域と比べた唯一の突然変異がFc領域のアミノ酸突然変異293Del/294Delである。
【0138】
上記変異株の構造上および機能特性はそれを製造するのに使用した方法の特色から直接きたものである。この方法は「C1qおよびFcγRsに対するFc結合を減少させる方法」と題したbに記載の方法である。
【0139】
変異株の特性はC1qおよびFeyリセプタに対する結合性以外の点では一般に親ポリペチドの特性から推論できるということは理解できよう。すなわち、C1qおよびFeyリセプタに対する変異株の結合性は位置294でおよび/または位置293のアミノ酸突然変異によって管理される。
【0140】
従って、本発明の一つの実施例では、変異ポリペチドはポリペチドペアレントと比較してC1qおよびFcγRllla、FcγRla、FcγRIおよびFcγRIlbから選択される少なくとも一つのFcγリセプターに対する結合性が低下する。
【0141】
ここで、変異株が親ポリペチドと比較してC1qまたはFcγRに対する結合性が低下するとは、その変異株の特異信号を親ポリペチドの特異信号で割って得られる比が0.5以下であることを意味する。上記の特異信号は例えばELISAアッセーで求めることができる。換言すれば、変異株の信号は親ポリペチドの特異信号の最大でも0.5倍である。
【0142】
変異株のFc領域は、野生型Fc領域と比べて294Delおよび293Del以外に一つ以上のアミノ酸突然変異を有することができる。一般に変異株のFc領域は対応する野生型Fc領域と比べて約1〜約21のアミノ酸突然変異、好ましくは約1〜約11のアミノ酸突然変異を有し、その突然変異は294Del、293Delまたは293Del/294Delを含む。
【0143】
親ポリペチドと同様に、上記変異株は野生型Fc領域と比べてFc領域に227、228、230、231、233、234、239、241、243、246、250、252、256、259、264、265、267、269、270、276、284、285、288、289、301、302、303、305、308、309、311、315、317、320、322、325、327、330、332、334、335、338、340、342、343、345、347、350、352、354、355、356、359、360、361、362、369、370、371、375、378、380、382、383、384、385、386、387、389、390、392、393、394、395、396、397、398、399、400、401、403、404、408、411、412、414、415、416、418、419、420、421、422、424、426、428、433、438、439、440、443、444、445、446および447から選択するるアミノ酸位置に更に少なくとも一つのアミノ酸突然変異を有することができる。Fc領域のアミノ酸の位置はEU指数または対応Kabatである。
【0144】
変異株はさらに、野生型Fc領域と比較して、Fc領域に227、228、230、231、233、234、239、241、243、246、250、252、256、259、264、265、267、269、270、276、284、285、288、289、301、302、303、305、307、308、309、311、315、317、320、322、325、327、330、332、334、335、338、340、342、343、345、347、350、352、354、355、356、359、360、361、362、369、370、371、375、378、380、382、383、384、385、386、387、389、390、392、393、394、395、396、397、398、399、400、401、403、404、408、411、412、414、415、416、418、419、420、421、422、424、426、428、433、434、438、439、440、443、444、445、446および447から選択されるアミノ酸位置に一つのアミノ酸突然変異のみを有することができる。Fc領域のアミノ酸の位置はEU指数または対応Kabatである。
【0145】
「一つのアミノ酸突然変異のみ」とは変異株が上記の位置の一つの変異以外に突然変異を含まないということを意味する。例えば、野生型Fc領域と比べて変異株がFc領域の位置307および434の両方の位置にアミノ酸突然変異を有しない。従って、本発明の一つの実施例では、変異株は294Del/T307P/N434Yまたは293Del/T307P/N434Yから成るるアミノ酸突然変異は有するしない。特に、本発明の実施例では変異株は294Del/T307P/N434Yまたは293Del/T307P/N434Y変異株から成ることはない。
【0146】
本発明の他の実施例では、変異株は294delまたは293delから成るアミノ酸突然変異と、位置307および434の突然変異とを組み合わせたものではない。従って、本発明の一つの実施例はポリペチドペアレントのFc領域と比較して、そのFc領域内に294Del、293Delおよび293Del/294Delから選択されるアミノ酸突然変異を有する親ポリペチドに対してタンパクC1qおよび少なくとも一つのリセプタFcγRに対するFc領域を有する親ポリペチドの変異株であって、親ポリペチドの変異株は位置307および434の突然変異と294delまたは293delから成るアミノ酸の突然変異とを組み合わせたものを除いたものである。
【0147】
本発明の他の実施例では、本発明変異株は378V、434Y、397M、302A、434S、315D、230S、307A、228R、230/315D/428L/434Y、(2591/315D/434Yから選択される少なくと一つのアミノ酸突然変異とアミノ酸突然変異256N/378V/383N/434YとをFc領域に有する。
【0148】
本発明の他の実施例では、本発明変異株のFc領域はFc領域の294Del、293Del、293Del/294Del、294Del/256N/378V/383N/434Y、294Del/259l/315D/434Y、294Del/397M、294Del/302A、294Del/434S、294Del/315D、294Del/230S、294Del/307A、294Del/228R、230S/315D/428L/434Y、294Del/378Vおよび294Del/434Yから成る群の中から選択される少なくとも一つの突然変異を有する野生型IgGの変異株Fcの領域である。アミノ酸の番号の教え方はEU指数または相当Kabatである。
【0149】
同様に、上記変異株は野生型Fc領域と比べてFc領域の290から292までおよび295から300まで位置のいずれか一つのアミノ酸突然変異を有していてもいなくてもよい。アミノ酸の番号の教え方はEU指数または相当Kabatである。
【0150】
本発明の一つの実施例では、変異株はC1qおよび少なくとも一つのFcγRに野生型Fc領域と比べて結合性が低下させることのできる294Delまたは293Del以外の任意の突然変異をそのFc領域に有することもできる。
【0151】
本発明の他の実施例では、変異株は野生型Fc領域と比べて294Delまたは293Del以外の突然変異をそのFc領域に有しない。
本発明の一つの実施例では、変異株のFc領域はIgGの野生型Fc領域に由来する。
【0152】
本発明の他の実施例では、変異株のFc領域は293Del,294Del,293Del/294Del,378V/294Del,434Y/294Del,294Del/397M,294Del/302A,294Del/434S,294Del/315D,294Del/230S,294Del/307A,294Del/228R,230S/315D/428L/434Y,2591/315D/434Y/294Delおよび256N/378V/383N/434Y/294Delから成るIgG野生型Fc領域の変異株の群から選択される。アミノ酸の番号の教え方はEU指数のFcアミノ酸番号または相当Kabatである。
【0153】
本発明の他の実施例では、変異株はFc−融合タンパク質類、Fc−コンジュゲートおよび抗体から成る群から選択する。
【0154】
本発明の他の実施例では、変異株はキメラ免疫グロブリン、ヒト化免疫グロブリンおよび全長−ヒト免疫グロブリンから選択される抗体であ。免疫グロブリンはIgGの中から選択するのが好ましい。
【0155】
本発明の他の対象は、上記定義の変異株をコードする単離された核酸にある。本発明はさらに、上記変異株をコードする核酸を有するベクターと、このベクターを有する宿主細胞とに関するものである。好ましい実施例では上記ベクターをコードする核酸は宿主細胞のゲノム中に安定して統合される。本発明はさらに、上記核酸またはそのゲノム内に安定して統合されたベクターを有するヒト以外のトランスジェニック動物にも関するものである。
【0156】
d.本発明の変異株の使用
本出願人は、Fc領域の突然変異294DelはC1qおよびFcγリセプタ、例えばFcγRI、FcγRlla、FcγRllbおよびFcγRlllaに対してFc変異株の親和性を著しく低下させるということを示した。これらのエフェクタ分子に対する親和性の低下はある場合には著しく大きく、C1qおよび/または一定のFcγRへのFc変異株の結合が通常のELISAアッセイではインビトロで観測できない。C1qに対するFc領域の結合はインビボでのCDCの誘起にとって重要である。同様に、FcγRllaおよびFcγRlllaへのFc領域の結合は、インビボでのADCCおよびADCP誘起のためのキー階段である。
【0157】
本発明変異株はC1qに対する親和性が低いため、親ポリペチドおよび一般に突然変異294Delまたは突然変異293Delを有しないFc領域を有するポリペチドと比較して、CDC活性を有しないか、生体内でCDC応答をほとんど誘発しないと考えられる。同様に、一定のFcγRs(特にFcγRllaおよびFcγRllla)に対する親和性が低いため、本発明の変異株はその親ポリペチドおよび一般に突然変異294Delまたは突然変異293Delを有しないFc領域を有するポリペチドと比較して、ADCC活性を有しないか、生体内でADCC応答をほとんど誘発をしないと考えられる。インビトロなCDCおよびADCCアッセイでも同じ結果である。
【0158】
事実、野生型Fc領域(すなわちSEQ ID No. 1のアミノ酸配列を有するFc領域)を有するIgG1のアミノ酸配列の294Delを導入することによって得られたIgG1変異株はADCCおよび/またはCDC活性を示さないか、活性が低下することを本発明者は示した。
【0159】
特に、野生型IgG1と比べてFcRnに対する親和性が増加するように最初に遺伝子操作したIgG1ポリペチドでのFcRnに対する親和性を好ましく保存したまま、突然変異294Delの導入によってADCCおよび/またはCDC活性を制限することができる。
【0160】
例えば、突然変異294Del/256N/378V/383N/434Yを有するIgG1変異株はADCC活性もCDC活性も示さないが、少なくともそのIgG1ペアレントに類似したFcRnに対する親和性を示す(実施例のセクションIIIおよびのIVのELISAおよびSPRの結果参照)。
【0161】
同様な結果はアミノ酸突然変異2591/315D/434Yを有する親ポリペチドと比べて、変異株294Del/259l/315D/434Yでも得られた。
【0162】
本発明の変異株はそのエフェクタ活性プロフィールによって、広範囲の科学的分野にその用途を見付けることができる。本発明変異株は研究試薬、診断薬または治療薬として使うことができる。
【0163】
これらの用途ではADCCまたはCDCの活性化は必要ないので、例えば、本発明変異株は蛍光団または同位元素、例えばイリジウム111またはテクネチウム99mでラベル化してインビボでのイメージングで使うことができる。
【0164】
治療で使用する場合には、本発明変異株を治療薬、例えば放射性核種、トキシン、サイトカインまたは酵素を標的細胞、例えば癌細胞へ運ぶために用いることができる。この場合、変異株を抗体と細胞毒剤との間のコンジュゲートにすることができる。その治療活性は細胞毒剤に依存する(例えば非特許文献31)。
【非特許文献31】Gilliland et al. PNAS、1980、77、4539-4543
【0165】
ポリペチド変異株は標的抗原を有する細胞を殺さずに標的分子のブロッキング剤または中和剤としても機能できる。また、標的分子をアゴナイズ、アンタゴナイズまたは抑制することもできる。
【0166】
これらの場合、標的細胞の喪失は望ましくなく、副作用とみなされる。例えば、T細胞上でCD4リセプタをブロックする抗−CD4抗体の能力は抗炎症を効果的にし、FcγRsを作る能力は標的細胞、結果的にはT細胞に対する免疫攻撃に向かう。また、エフェクタ機能はラジオコンジュゲート(radioconjugates)とよばれる放射性同位元素でラベル化した抗体に対する問題(イムノトキシンとよばれる)およびトキシン渡航体の抗体のコンジュゲートの問題になる。これらの医薬品は癌細胞を破壊するがFcγRsとFcとの干渉によって免疫細胞を作り、健康な免疫細胞に致命的なペイロード(照射またはトキシン)を与え、目標癌細胞とともに正常リンパ系組織も失われる結果になる。本発明の変異株はC1qおよび少なくとも一つのFcγリセプタに対する結合性を変えるが、抗原認識またはFcRn親和性等の類似した他の機能は示すということを本発明者は示した。従って、他の重要な抗体特性、例えば抗体安定性、構造の保全またはFcRnおよびタンパクAおよびGのような他の重要なFcリガンドと相互作用能力は失わない。
【0167】
標的分子は任意の種類にすることができ、外因および内因性の分子を含む。標的分子(ポリペチド変異株が抗体の場合は抗原とよばれる)に制限はなく、イルス、細菌および菌類タンパク、プリオン、トキシン、酵素、膜受容器、医薬品および可溶タンパクにすることができる。
【0168】
膜受容器は下記にすることができるが、これらに限定されるものではない:RhD抗原、CD3、CD4、CD19、CD20、CD22、CD25、CD28、CD32B、CD33、CD38、CD40、CD44、CD52、CD71(トランスフェリンリセプタ)、CD80、CD86、CTLA−4、CD147、CD160、CD224、リセプタErbB1、ErbB2、ErbB3、ErbB4(EGFR、HER2/neu、HER3、HER4)等のErbBファミリーに属するような生長因子レセプタ、VEGF−R1、VEGF−R2、IGF−R1、PIGF−R、MHCクラスおよびMHCクラスのII分子、例えばHLA−DR、タイプIインターフェロン・リセプタ、IL−1R、IL−2Rα、IL−2RβおよびIL−2Rガンマ、IL−6Rのようなインターロイキンレセプタ、ミューレリアン(Mullerian)抑制物質タイプのIIリセプタのようなホルモンレセプタ、LDL受容体、NKp44L、CXCR4のようなchemokineリセプタ、CCR5、TNFR、CD137、インテグリン、CD2のような接着分子、ICAM、EpCAM、GTP結合タンパク質−連結リセプタ。
【0169】
膜タンパク質もGD2、GD3、CA125、MUC−1、MUC−16のような腫瘍マーカー、癌胎児性(carcinoembrionic)抗原(CEA)、Tn、グリコプロテイン72、PSMA、HMW−MAA、DC細胞特異性BDCA−2のような他のタンパク、グルカゴン(glucagon)様ペプチド(例えばGLP−1等)、酵素(例えばグルコセレブロシダーゼ、イデュロネート(iduronate)−2−スルファターゼ(sulfatase)、α−ガラクトシアーゼ(galactosidase)−A、アガルシダーゼ(agalsidase)αおよびβ、α−Lイズロニダーゼ、ブチルコリンエステラーゼ、キチナーゼ、グルタミン酸デカルボキシラーゼ、イミグルセラーゼ(imiglucerase)、リパーゼ、ウリカーゼ、血小板活性化因子アセチル・ヒドロラーゼ、中性エンドペプチダーゼ、ミエロペルオキシダーゼ等)、インターロイキンおよびサイトカイン結合タンパク(例えばIL−18bp、TNF−結合タンパク質等)、マクロファージ活性化因子、マクロファージ・ペプチド、B細胞因子、T細胞因子、プロテインA、アレルギー・インヒビター、細胞壊死グリコプロテイン、イムノトキシン、リンホトキシン、腫瘍壊死因子、腫瘍サプレッサにすることができる。
【0170】
可溶タンパクには下記が含まれるが、下記に限定されるものではない:IL−1β、IL−2、IL−6、IL−12、IL−23、TGFβ、TNFα、IFNガンマ、ケモキンのようなサイトカイン、VEGF、G−CSF、GM−CSF、EGF、PIGF、PDGF、IGFのような成育因子、ホルモン、FVIIのような阻害抗体、転移成育因子、α−1抗トリプシン、アルブミン、α−ラクトアルブミン、アポリポタンパク−E、エリトロポエチン、高度グリコシル化エリトロポエチン、アンギオポエチン、ヘモグロビン、トロンビン、アンチトロンビンIII、トロンビンレセプター活性化ペプチド、トロンボモジュリン、因子VII、因子VIIa、因子VIII、因子IX、因子XIII、プラスミノーゲン活性化因子、フィブリン−結合ペプチド、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、ヒルディン、プロテインC、C反応性タンパク、B細胞、リセプタ・アンタゴニスト(例えばIL1−Ra)、補体タンパク、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、H因子、フィブリノゲン、因子P、CSAPのような他のタンパク、CD137−リガンド、レクチン、シアル酸付加タンパク。
【0171】
本発明の変異株は微生物のトキシン(例えばテタヌストキシンまたは炭疽)中性化または肝炎、パピロナウイルスまたはRSウィルスによるウィルス感染を防止するために使うことができる。本発明の中性化変異株は中毒の場合にも使用できる。最後に、本発明の中性化変異株は癌または加齢野よる黄斑変成(degenerescence)のような他の病理の治療のためのVEGFのような自己抗原にも使用できる。
【0172】
本発明変異株はさらに、サイトカイン受容体、生長因子レセプタ、インテグリンのような膜受容体に用いることもできる。例えば、本発明変異株はリンパ球T増殖を抑制する抗−IL−2R(CD25)のような移植における免疫抑制剤として使うことができる。本発明変異株はさらに、炎症性プロセス(炎症性腸疾患、アテローム性動脈硬化、リウマチ様関節炎)を制限するため、例えばリウマチ様関節炎の場合のIL−6リセプタのα鎖に対する抗体に用いることもできる。また、本発明変異株は癌の成長を抑制する、例えば抗−EGFR抗体または抗−HER−2レセプター抗体として用いることができる。本発明の抗−インテグリン変異株は血栓の発生抑制として、例えば激しい冠状血管遺伝的症候群または乾癬の処理に使うことができる。本発明の他の実施例では、本発明変異株を多発性硬化症の処理で使用できる。
【0173】
従って、本発明変異株は癌、炎症性無秩序、感染症、自己免疫性疾患または中毒を処理または防ぐための標的分子の中和、アンタゴニストまたはアゴニストとして使うことができる。
【0174】
「自己免疫性疾患」には、ここではアロジェニック島状移植片拒絶、脱毛症、強直性脊椎炎、抵リン脂質遺伝症候群、自己免疫アジソン病、抗好中球細胞質自己抗体(ANCA)、副腎自己免疫性疾患、自己免疫溶血性貧血、自己免疫肝炎、自己免疫心筋炎、自己免疫好中球減少症、自己免疫卵巣炎、自己免疫精巣炎、自己免疫血小板減少症、蕁麻疹、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、カッスルマン(Castleman)遺伝症候群、小児脂肪便症患、スプルース(spruce)-皮膚炎、慢性疲労免疫機能不全遺伝症候群、慢性炎症性脱髄性多発性神経炎、チュルグ−ストラウセ(Churg-Strauss)遺伝的症候群、慢性天疱瘡、CREST遺伝症候群、寒冷凝集素症、クローン病、皮膚筋炎、円板状狼瘡、基本的混合クリオグロブリン血症、第VIII因子欠失、線維筋痛−線維筋炎(fibromyalgia-fibromyositis)、糸球体腎炎、グラーブ(Grave)疾患、ギラン・バレー症候群、グッドパスチャー症候群、GVH病(GVHD)、橋本甲状腺炎、血友病A、特発の肺線維症、特発血小板減少症紫斑病(ITP)、IgA神経病、IgM多発性神経炎、免疫性性血小板減少症、若年性関節炎、川崎病、苔癬プランタス(plantus)、狼瘡、エリテマトーデス、メニエール病、混合性結合組織病、多発性硬化症、タイプ1真正糖尿病、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、悪性貧血、結節性多発動脈炎、多発性軟骨炎、多腺遺伝症候群、リウマチ性多発性筋痛、多発性筋炎、一次性皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、胆汁性肝硬変症、乾癬、乾癬性関節炎、レオナルド(Reynauld)現象、ライター症候群、リウマチ様関節炎、サルコイドーシス、強皮症、スジョル源(Sjorgen)遺伝症候群、器官移植拒絶反応、遺伝的症候群、全長性エリテマトーデス、タカヤス(takayasu)動脈炎、一時性動脈炎/巨細胞動脈炎、血栓性血小板減少症紫斑病、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、疱疹状皮膚炎脈管炎、な脈管炎、白斑およびワグナー(Wegner)肉芽腫症が含まれる。
【0175】
「炎症性無秩序」とは急性呼吸不全症候群(ARDS)、激性関節炎、アジュバント関節炎、アレルギー性脳脊髄炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性脈管炎、アレルギー、喘息、アテローム性動脈硬化、慢性細菌性またはウイルス性慢性炎症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、冠状動脈疾患、脳炎、炎症性腸疾患、炎症性骨変性、激性および遅延型過敏症反応関連炎症、吹出物関連炎症、末梢神経傷害または脱髄疾患、熱傷や乏血等の組織外傷関連炎症、髄膜炎、多器官外傷遺伝的症候群、肺線維症、敗血症、未分化敗血症性ショック、スティーヴンズ−ジョンソン遺伝的症候群、関節炎症、未分化脊椎関節炎を含む。
【0176】
「感染症」とはウィルス、バクテリア、菌類、原生動物および寄生生物等の病原に起因する疾患を含む。この感染症はアデノウィルス、サイトメガロウィルス、デング熱、Epstein-Barr、hanta、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、単純ヘルペス・タイプI単純ヘルペス、タイプII単純ヘルペス、ヒト免疫不全ウィルス(HIV)、ヒト乳頭腫ウィルス(HPV)、風邪、はしか、お多福風邪、パポバ・ウィルス、小児麻痺、RSウィルス、牛疫、ライノウィルス、ロタウィルス、風疹、SARSウィルス、痘瘡、ウイルス性髄膜炎を含むウィルスによって起こる。また、感染疾患はバシラスアントラシス、ライム病ボレリア(Borrelia burgdorferi)、カンピロバクタージェジュニ(Campylobacter jejuni)、トラコーマ病原体、ボツリヌス菌、クロストリジウムテトラニー、ジフテリア、大腸菌、レジオネラ属、ヘリコバクター属、マイコバクテリア・リケッチア、マイコプラズマメシセリア、百日咳、緑膿菌、S肺炎、ストレプトコッカス、ブドウ球菌、コレラ菌(Vibria cholerae)、ペスト菌等を含むバクテリアに起因するものを含む。感染症はさらに菌類、例えばアスペルギルス‐フミガーツス Aspergillus fumigatus)、ブラストマイセス‐デルマチチジス(Blastomyces dermatitidis)、カンジダアルビカンス、コシイオディデス(Coccidioides immitis)、クリプトコックス‐ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、ヒストプラスマ‐カプスラーツム (Histoplasma capsulatum)、ペニシリウムマルネフェに起因するものがある。また、原生動物および寄生生物、例えばクラミジア、コクジディオ(kokzidioa)、ライシェマニア、マラリア、リケッチア、トリパノソーマ(trypanosoma)によって生じる感染症もある。
【0177】
本発明の変異株はさらに、追加の条件、例えば心臓条件、例えば、うっ血性心不全(CHF)、心筋炎、心筋の他の条件、皮膚の条件、例えばロゼセア(rosecea)、座瘡および湿疹、硬骨および歯牙条件、例えば硬骨減失、骨粗鬆症、パジェット病、ランゲハウス(Langerhans)細胞組織球症、歯周疾患、活動停止オステオペニア、骨軟化症、単発性線維性異形成、多骨性線維骨異形成症、骨転移、骨痛管理、液性悪性高カルシウム血症、歯周再構成、脊髄損傷および骨折、ゴーシェ病のような代謝の条件、クッシング症候群のような内分泌条件、神経条件(これらに限定されない)の予防または治療に用いることができる。
【0178】
本発明の一実施例では、本発明の抗−RhD変異株を赤毛猿(rhesus)不適合の治療または予防に使うことができる。
【0179】
他の実施例では、本発明の抗−CD20変異株をリンパ性白血病の治療に使うことができる。
【0180】
他の実施例では、本発明変異株を自己免疫性疾患、例えば免疫性血小板減少性紫斑病、血栓性血小板減少性紫斑病、リウマチ様多発性関節炎および狼瘡エリトマトーデスの治療および/または予防に使うことができる。
【0181】
他の実施例では、親ポリペチドを商用抗体、抗−RhD抗体(フランス特許第FR 09 5141 2に記載のEMAB2(登録商標)またはZLB、チューリッヒのMonoRho(登録商標)または抗−CD20(国際公開第WO2006064121号公報参照)の中から選択できる。
【0182】
親ポリペチドはさらに、アバスチン(Avastin、登録商標)(抗−VEGF)、レミカデ(Remicade、登録商標)(抗−TNF−α)、エルビツクス(Erbitux、登録商標)(抗−EGFR)、ベクティビックス(Vectibix、登録商標)(抗−EGFR)、ディサビリ(Tysabri、登録商標)(インテグリンの抗−α4鎖)、ヘルセプチン(Herceptin、登録商標)(抗−HER2/neu)であってもよい。これらに限定されるものではない。
【0183】
他の実施例では、変異株は膜受容器、ヒト可溶タンパク、トキシン、ウイルス性、細菌および菌類タンパク類の群の中から選択される標的分子に対する中和抗体である。
【0184】
本発明の変異株はC1qおよびある種のFcγRsに対する結合性が低いため、ADCCまたはCDCを介した免疫系の構成が治療の交換効率に重大でない条件の治療に使うのが特に適している。
【0185】
本発明のポリペチド変異株の投与によって副作用およびIgG介在細胞毒性を誘発する危険は大部分の抗体およびFc領域に294Delまたは293Delを含まないイムノアドヘシン(immunoadhesins)より少ないと予期される。
【0186】
本発明のさらに他の対象は、ADCCおよび/またはCDC応答の誘起が望ましくない病的状態を予防または治療での本発明変異株の使用にある。
【0187】
本発明の他の実施例では、ADCCおよび/またはCDC応答の誘起が望ましくない病的状態の予防または治療のための親ポリペチドの変異株に関するものであり、その変異株はFc領域を有し、親ポリペチドと比較してタンパクC1qおよび少なくとも一つのリセプタFcγRに対する結合性が低下しており、294Del、293Delおよび293Del/294Delから成る群の中から選択されたアミノ酸突然変異をそのFc領域内に有する。ただし、そのポリペチドペアレントのFc領域と比較して、上記親ポリペチド変異株は294delまたは293delのアミノ酸突然変異と位置307および434の突然変異とを組み合わせて有することはない。Fc領域のアミノ酸の数え方はEU指数または相当Kabatに従う。
【0188】
本発明の他の実施例は、ADCCおよび/またはCDC応答の誘起が望ましくない病的状態の予防または治療に用いられる親ポリペチドの変異株に関し、この変異株は親ポリペチドと比較してタンパクC1qおよび少なくとも一つのリセプタFcγRに対する結合性が低下したFc領域を有し、親ポリペチドのFc領域と比較した時に294Del、293Delおよび293D/294Delから選択されるアミノ酸突然変異をそのFc領域内に有する。ただし、上記の親ポリペチドの変異株は294Del/T307P/N434Yまたは293Del/T307P/N434Y変異株から成るものは除く。
【0189】
変異株の治療効力がエフェクター細胞の活性化またはCDC活性化を必要としないときにはADCCおよびCDC応答の誘起は望ましくない。そうした変異株には例えばブロッキングまたは中和抗体が含まれる。
【0190】
治療または予防にCDCおよびADCCの誘起を必要としない病的状態には移植片拒絶、自己免疫性疾患、炎症性の無秩序、感染症または癌が含まれるが、これらに限定されるものではない。本発明の別の対象は本発明の変異株の、医薬組成物調製での使用にある。
【0191】
本発明変異株の上記使用で用いられる変異株の具体例では、親ポリペチドと比較してタンパクC1qおよびリセプタFcγRsに対する結合性が低下した、ポリペチドペアレントのFc領域と比べて294Del、293Delおよび293De/294Delから選択される少なくとも一つのアミノ酸突然変異をそのFc領域内に有する。
【0192】
変異株は294Del/T307P/N434Yまたは293Del/T307P/N434Y変異株は本発明の具体例ではない。
【0193】
本発明の他の実施例では、本発明変異株は378V、434Y、397M、302A、434S、315D、230S、307A、228R、230S/315D/428L/434Y、2591/315D/434Yから選択される少なくとも一つのアミノ酸突然変異と256N/378V/383N/434Yのアミノ酸突然変異をFc領域にさらに含む。
【0194】
本発明の他の実施例では、本発明変異株のFc領域は、Fc領域の294Del、293Del、293Del/294Del、294Del/256N/378V/383N/434Y、294Del/259l/315D/434Y、294Del/397M、294Del/302A、294Del/434S、294Del/315D、294Del/230S、294Del/307A、294Del/228R、230S/315D/428L/434Y、294Del/378Vおよび294Del/434Yから成る野生型IgGの変異株群の中から選択される少なくとも一つの突然変異をFc領域に有する。Fc領域のアミノ酸の数え方はEU指数または対応Kabatの数え方である。
【0195】
本発明の他の実施例では、変異株のFc領域は294Del、293Del、293Del/294Del、378V/294Del、434Y/294Del、294Del/397M、294Del/302A、294Del/434S、294Del/315D、294Del/230S、294Del/307A、294Del/228R、230S/315D/428L/434Y、2591/315D/434Y/294Delおよび256N/378V/383N/434Y/294Delから成るIgG野生型Fc領域の変異株の群から選択される。ここで、アミノ酸の数え方はEU指数または対応KabatのFcアミノ酸の数え方である。
【0196】
本発明のさらに他の目的は、上記変異株を含む医薬組成物を提供することにある。上記変異株が抗体の場合、変異株はモノクローナルまたはポリクローナル抗体の形にできる。上記医薬組成物は所望純度のポリペチド変異株に任意成分の生理学滴に許容される担体、賦形剤または安定剤と混合し、凍結乾燥製剤または水溶液の形にすることができる。
【0197】
本発明の医薬組成物は下記非特許文献32に記載のような標準方法に従って作ることができる:
【非特許文献32】Remington: The Science and Practice of Pharmacy (Lippincott Williams & Wilkins; Twenty first Edition, 2005
【0198】
薬学的に許容される賦形剤は下記非特許文献33に記載されている:
【非特許文献32】Handbook of Pharmaceuticals Excipients, American Pharmaceutical Association (Pharmaceutical Press; 6th revised edition, 2009).
【0199】
患者の治療では治療有効量の変異株を投与することができる。「治療有効量」とは投与による効果が現れる服用量を意味する。正確な服用量は治療の目的に従って公知手技を使用して当業者が確認できる。その供与量は0.001から100mg/kg体重の範囲、例えば0.1、1.0、10または50mg/kg体重手あり、好ましくは1〜10mg/kg体重である。周知のようにタンパク劣化、全身または局所デリバリの差、プロテアーゼ合成速度の他に加齢、体重、健康状態、性、ダイエット、投与時間、薬物相互作用に対して調節することが必要であり、ルーチン実験によって当業者が確認することができる。
【0200】
変異株を含む上記医薬組成物の投与は種々の方法で行なうことができ、経口、静脈内、鼻腔内、眼口、皮下、経皮、非経口、臓器内、局所(例えばゲル)、経直腸、筋肉内、腹腔内、肺内が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0201】
本明細書に記載の変異株は他の治療、処置に付随して投与することができる。この場合の治療、処置は例えは小さな分子、他の生物学的製剤、放射線療法、外科を含むが含まれるが、これらに限定されるものではない。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0202】
Fc変異株をベースにしたIgG変異株の生産とこのIgGの特徴
I. 293F哺乳類細胞でのIgG変異株の生産
I.1 ベクター構築
ヒトIgG1 H鎖(Poul MA et al. Eur. J. Immunol. 25(7):2005-2009 1 995)からのアミノ酸残基226-447(EU指数またはKabat相当)すなわちFc断片(Fc226、SEQ ID No 1)を標準PCRプロトコールを使用してBamHI/Notl断片として成熟核発現ベクターpMGM05-R603(図2)にクローン化した。pMGM05-R603ベクターは、pCEP4(Invitrogen)に由来し、R603キメラ抗−CD20抗体(LFB-R603)のH鎖を含む。この抗体のL鎖はpCEP4(pMGM01-R603)に由来する類似ベクターに挿入された。このFc断片の全ての突然変異は、pMGM05-R603ベクターにオーバーラップPCRで挿入された。例えば、変異株294Delはプライマの2セットのプライマーを使用して得た。第1のPCRを実行するために5’プライマMG_619 5'-AGTACTGACTCTACCTAGGATCCTGCCCACCGTGC-3’(SEQSEQ ID No 10)と3’プライマMG_934 5’-GCTGTTGTACTGCTCCCGCGGCTT-3’(SEQSEQ ID No 11)を使用し、第2のPCRでは5’プライマMG_933 5’ -AAGCCGCGGGAGCAGTACAACAGC-3’(SEQSEQ ID No 12)と3’プライマMG_621 5’ -ACTGCTCGATGTCCGTAC TATGCGGCCGCGAATTC-3’(SEQSEQ ID No 13)を使用した(BamHIおよびNotl制限サイトには下線を引いた。イタリック部分はクローン化階段で除去される非特異的テイルに対応する)。次いで、各PCR断片画分を合わせ、得られた細長い断片をプライマMG_61 9およびMG_621を用いて標準プロトコルでPCRにより増幅した。PCR製品は1%(w/v)アガロースゲルで精製し、BamHIおよびNotl限定酵素で消化し、pMGM05-R603ベクターにクローン化した。突然変異を同じプライマ(MG_933およびMG_934)を用い、Quick-change Multiキット(Stratagene、La Jolia、 CA)を使用して生成させることもできる。
【0203】
I.2 細胞培養生産
フリースタイル(FreeStyle、登録商標)293F細胞(Invitrogen)をFreeStyle(登録商標) MAX試薬(1μΙ/ml)を用い標準プロトコール(Invitrogen)を使用して等量(250ng/ml)のpMGM01-R603およびpMGM05-R603ベクターと共形質移入(co-transfected)した。細胞はポスト-トランスフェクションのために無血清培地中に懸濁して7日培養した後、細胞を100gで10分間遠心分離し、IgGを含む上澄を回収した。上澄(1ml)を滴定(I.3)し、-20℃で凍結し、ELISAで結合(binding)特性を調べた(III.1.1)。
【0204】
I.3 製造したIgG変異株の滴定
上記で回収した上澄中に分泌されたIgG変異株を精製済みR603抗体を標準として使用して組換えタンパクL(Pierce)上でELISAアッセイを使用して定量した。上澄および標準抗体をPBS/0.05% Tween-20中に希釈し、予め0.25μgタンパクL/ウエルで被覆し、PBS中の5%スキムミルクでブロックしたMaxisorp immunoplates(Nunc)にテストした。37℃で1時間のインキュベーションした後、ウエルをPBS/0.05% Tween-20で3回洗浄した。た。結合したIgG変異株をHRPヤギ抗ヒトIgG(γ鎖特異)F(ab‘)2断片(Sigma)で定量した。生産されたIgG変異株(1〜4μg/ml)は精製したR603抗体で得た標準曲線を用いて定量した。
【0205】
II Y2B/O細胞でのIgG変異株の生産
II.1 ベクターの構築
Fc変異株2591/315D/434Y、2591/315D/434Y_294 Del、256N/378V/383N/434Yおよび256N/378V/383N/434Y_Del294はYB2/0細胞株特異性抗−CD20(R603)または抗−RhD+(R593)用いてIgGフォーマットで調整した。YB2/0細胞株での生産力を最大にするために、重鎖およびL鎖のフルレングスの相補DNAと、2591/315D/434Yおよび256N/378V/383N/434Y変異株をコードするFc断片とをドブネズミ(Rattus norvegicus)用コードン最適化(optimization)でネオ合成(neosynthesized)した。暗号スプライシング部位または制限サイトのような不必要なものは除去した。可変/定常結合部には制限サイト(Apalな)のみが存在した。
【0206】
必要な場合には下記を用いてアッセンブリーPCRによって294Del突然変異を導入した:
PCR1 501bpのアンプリコンに至るDELI294P1(5’プライマ 5’−CAACGCCAAGACCAAGCCCCGGGAGCAGTACAACAGCACCTACAGGG-3’、SEQ ID NO 14)+HCH20GA-Ascl(3‘プライマ 5’−AGCGGCGCGCCTCATCA-3’、SEQ ID NO 15)、
PCR2 541bpのアンプリコンに至るDEL294 P2(5‘プライマ 5’ACCAAGGGCCCAAGCGTGT-3’、SEQ ID NO 17)+HCH20GA-Apal(3‘プライマ 5’-CCCTGTAGGTGCTGTTGTACTGCTCCCGGGGCTTGGTCTTGGCGTTG-3’、SEQ ID NO 16)
PCR3 998bpのPCR製品に至るHCH20GA-AsclとHCH20GA-Apal。
【0207】
上記PCR製品はAsclおよびApalで消化され、精製された979bp断片は親のDNA配列の置換で発現構造に挿入された。
【0208】
II.2 細胞培養生産
トランスフェクションはYB2/0の安定したプールで行なった。YB2/O細胞系からの細胞をリニアーにした発現ベクターで電気穿孔(electroporate)し、EMS媒体+5%v/v希釈FCS(InvitroGen)中に25,000セル/mLで希釈し、24-ウエルプレートに1ml/ウエルで分配した。3日間の細胞回収後、EMS+5% FCS媒体中、最終2g/lのG418と最終1%のフェノールレッドを加え選択圧を加えた。10日間インキュベーション後、8つのP24ウエルの3つのプールを作り、細胞をF25で2.105cv/mlに分割した。抗体産生はEMS+5% FCS中で0.5g/l G418を用いて2〜8×105cv/mlの開始濃度でローラーボトルで実施した。最大細胞生産は5日間で得られ、上澄を回収し、FastElysa(RD Biotech)で滴定した。
抗体はプロテインA SepahroseタイプHiTrapプロテインA FF(GE-Helthcare)上で精製し、pH 3.0の25mMクエン酸ナトリウム緩衝液で溶出し、得られた画分を中和し、4℃で一晩、pH 6.0でPBS中に透析した。
【0209】
精製したIgGは非還元性および還元性条件下でSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動およびゲル濾過を用いて特徴付けし、会合物の含有量を推定した。いずれの突然変異体の場合でも、IgGは85%以上、大抵は95%以上に精製され、各IgGに対して特徴的な重鎖および軽鎖のバンドを表示した。エンドトキシンの存在を調べるために、LAL(Limulus Amebocyte Lysate)エンドトキシンテストGel Clot法を用いて精製したIgGをtestした。エンドトキシン・レベルおよび会合物の含有量が低いことから、製造された抗体は機能テストに適したものであることを証明した。
【0210】
III.ELISAによるIgG変異株の結合特徴
III.1 材料および方法
III.1.1 293F細胞の上澄中に産生されたIgG変異株のELISAテスト
ELISAによっIgG変異株の以下のいくつかのリセプタに対する結合性をテストした:C1 q補体(Calbiochem)、FcγRl llaV1 58(R & D System)、FcRn-p3(β2ミクログロブリン鎖とバクテリフージ(bacteriphage)タンパクp3およびCVDEタンパクに溶解したα−鎖とから成る融合タンパクと呼ばれるFcRn-p3 (Popovet al, Mol. Immuno. 1 996、33:521-530に記載のハクロウイルス系で製造される)、FcγRllaR1 31(R & D System)、FcγRI(R & D System)およびFcγRIポンド(R & D System)。FcRnを除いて、ELISA検査、全てのリセプタに対してPBSで実行した。FcRn/lgG結合はpHに依存し、pH6.0が最適であるので、FcRnではP6(100mMリン酸ナトリウム、50mM塩化ナトリウムpH6.0)で実施した。Maxisorp immunoplatesをPBS中のO.5μg C1 q補体/ウエル、PBS中の0.25μg FcγRlllaV158/ウエル、PBS中0.1μ9 FcγRIまたはP6中の0.1μg FcRn-p3/ウエルで被覆した。固定ニッケルキレートプレート(Nunc)には0.01M KCI中の0.1μ9 FcγRIlaR1 31/ウエルまたは0.4g FcγRIlb/ウエルをコーティングした。4℃で一晩放置後、PBS/0.05% Tween-20(FcRnの場合にはP6/0.05%Tween-20)で2回洗浄し、PBS/4% BSA(またはFcRnの場合にはP6/4%BSA)で37℃で2時間飽和させた。それと並行して、上澄をPBS中に希釈し、最終IgG濃度を0.5μg/ml(またはFcRn の結合テトスではP6中に0.3μg/mlとし、同じ濃度で室温で2時間、HRP F(ab')2ヤギ抗ヒトF(ab')2と混合する。次いで、F(ab')2-凝集IgGをC1 q、FcγRllaR1 31およびFcγRlの場合には希釈なし(すなわちIgG、0.5μg/ml)で、FcγRlllaV1 58およびFcγRIの場合にはPBS中に0.25μg/mlに希釈して、FcRn-p3の場合にはP6中に0.0375μg/mlに希釈して飽和したELISAプレート上で1時間、攪拌下に培養した。次いで、プレートをTMB(Pierce)で標示させ、450nmで吸光度を測定した。
【0211】
III.1.2 精製したIgG変異株のELISAテスト
Y2B/0で製造したIgG変異株の下記のいくつかのリセプタに対する結合性をELISAでテストした:FcRn-p3(II.1.1)、FcγRI(R&D System)、FcγRlllaV158(R&D System)、FcγRlllaFI58(HEK293F細胞でHis-タグ付きタンパクとして製造、PX Therapeutics)、FcγRllaR131(R&D System)、FcγRllaH131(HEK293F細胞でHis-タグ付きタンパクとして製造、PX Therapeutics)およびFcγRllb(R&D System)。ELISAテストはFcRnを除いて全てのリセプタに対してPBS中で実行した。FcRnではP6(100mMリン酸ナトリウム、50mM塩化ナトリウム、pH6.0)中で実行した。Maxisorp immunoplates(Nunc)をFcγRI、FcγRlllaV1 58、FcγRlllaFI 58およびFcγRllaH131の場合にはPBS中の100ng組換えタンパク/ウエルで被覆し、P6中では200ng のFcRn-p3/ウエルで被覆した。固定化ニッケルキレートプレート(Nunc)は0.01M KCI中の100ng FcγRIlaR131/ウエルまたは400ng FcγRllb/ウエルで被覆した。コーティング後、4℃で一晩放置した後、PBS/0.05% Tween-20(またはFcRnの場合にはP6/0.05% Tween-20)で2回洗浄し、37℃で2時間PBS/4%BSA(またはFcγRIの場合にははPBS/4%スキムミルクまたFcRnの場合にはP6/4%スキムミルク)で飽和させた。
【0212】
FcγRIIIaV158、FcγRlllaFI 58、FcγRllaR131、FcγRllaH131およびFcγRllbの結合テストのために、精製されたIgGをPBS中に最終濃度2〜4μg/mlで希釈し、同じ濃度で室温で2時間、HRP F(ab‘)2ヤギ抗ヒトF(ab‘)2と混合した。次いで、PBS中に段階的に希釈した後、F(ab‘)2-凝集IgGをゆっくり攪拌しながら1時間、飽和ELISAプレート上で30℃で培養した。各プレートでTMB(Pierce)で表示させ、450nmで吸光度を測定した。FcγRIおよびFcRnの場合には直接ELISAを実行した。精製されたIgGは、4%スキムミルクと0.01%Tween 20を補給したPBS(またはFcRnの場合にはP6)中に希釈し、2時間、プレート上で培養した。次いで、細胞結合抗体を同じ緩衝液に希釈(1/2500)したHRP F(ab‘)2ヤギ抗ヒトF(ab‘)2で検出した。37℃で2時間培養後、、プレートをTMB(Pierce)で表示させ、450nmで吸光度を測定した。
【0213】
III.2 結果
III.2.1 293F細胞の上澄で製造したIgG
各IgG変異株に対して2つの独立した実験を実行した(生産、上澄滴定および5つのリセプタのELISA)。ELISAの結果はIgG-WTの信号に対するIgG変異株で得られた特性信号(OD450nm)の比で表した。このELISAテトスは、突然変異294Delは各親ポリペチドと比べてC1q(比/lgG−WT<0.50)およびFcγRs(比/lgG−WT<0.25)に対する変異株の結合能がドラスチックに悪くなるということを示している。これに反して、上記突然変異は、294Delを少なくともさ他の突然変異と組み合わせた変異株の場合、FcRn結合性は約0〜35%減失するだけである。結果は下記[表1]および[表2]に示した。
【0214】
【表1】
【0215】
【表2】
[表2]は各タンパクの比を示す。
【0216】
III.2.2 精製済みIgGでのELISAの結果
ELISA結果は、単一抗体濃度(FcγRIaおよびFcγRIIIaV158ではO.5μg/ml、FcγRlllaF158、FcγRllaR131およびFcγRIIaH131では1μg/ml、FcγRllbでは2μg/ml、FcRnでは5μg/ml)でIgG-WT(R603、キメラな抗-CD20抗体およびR593、ヒト抗-RhD+抗体)の信号に対するY2B/0細胞から得られた精製済みIgG変異株で得られた特性信号(OD450nm)の比で表した。これらELISAテストの結果はFcRnに対応する野生型IgGに比べて突然変異294Delは変異株の結合性を大きく変えないことを示している。各親ポリペチド(R603またはR593 2591/315D/434YおよびR603またはR593 256N/378V/383N/434Y)から成る変異株IgGと比較したときに、上記の突然変異は変異株259l/294Del/315D/434Yおよび256N/294Del/378V/383N/434Yの場合のFcRn結合性の約0〜30%を減失するだけである(表4)。これに対して、然変異294Delは各親ポリペチドと比べて、FcγRsを結合する変異株のキャパシティを大きく悪くする。
【0217】
【表3】
【0218】
【表4】
【0219】
IV SPR(表面プラスモン共鳴)分析による結合特性
IV.1 材料および方法
IgG変異株(II.2参照)と固定FcRnとの相互作用をCM5センサーチップを備えたBIAcore X100機器(Biacore、GE Healthcare)を使用してモニターした。この方法はFc-FcRn相互作用を分析するための公知方法(Popov S.et al., Mol Immunol。33(6):521-530, 1996)と同様である。可溶性組換え型FcRnをアミン-カップリング化学反応を使用したセンサーチップのフローセル2にカップリングする。フローセルを30のμl/分の流速の0.1M N-ヒドロキシスシニミドと0.1M 3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピル-N-エチルカジボジイミドとの混合液(1:1)で3分間活性化させる。組換えヒトFcRn(5μg/ml、10mM酢酸ナトリウム中、pH 5.0)を、10μl/分で3分間、フローセル2に注入する。それによって表面密度は236レスポンスユニット(RU)になる。1Mエタノールアミン-HCI(pH 8.5)を30μI/分の速度で3分間注入して表面をずブロックする。フローセル1を FcRnなしの対象面として使用し、これもサンプルのフローセルと同様に調製した。このブランクのフローセル1からのデータをサンプル・データから差引いた。
【0220】
IgG変異株は、平衡結合実験での運転緩衝液として使用したPBS/Tween-20(50mMリン酸緩衝液、pH 6.0、150mM NaCI、0.02% NaN3、0.05% Tween-20)で希釈した。全ての測定はFc断片濃度を一般に0、8.75、35、70および200nMにして、25℃で10μΙ/分の流速で実行した。8分のデータを集め、0.05% Tween-20を含むpH 7.5のPBSを30sパルスを用いて表面再生した。センサーグラム(Sensorgrams)を作り、ソフトウェアBIAevaluation バージョン3.1を使用して分析した。各注射で観測される平衡RUをFc濃度に対してプロットし、上記BIA評価用ソフトに含まれる運動親和性モデルを使用してプロット解析によって平衡KD値が誘びかれる。
【0221】
IV.2 結果
R593およびR603抗体の結合能(KD値)はそれぞれ190および99nMであった。R603のコンテキストとの対比において、259V/315D/およびR603のコンテキスのKD値は259V/31/434Yの場合26nMで、pH 6.0でFcRnに対する親和性が3〜6倍増加することを示す。259V/294Del/315D/434YのKD値は28nM、R593およびR603では20nMであり、294Delはそれぞれの親ポリペチド変異株と比べてFcRnに対する親和性を余り変えないことを示している。
【0222】
【表5】
【0223】
V 機能特性
V.1 材料と方法
V.1.1 抗原結合性
2×105細胞(RhD+赤血球またはRaji)を30分間の4℃で100μlの抗体で異なる濃度(0〜100μl/ml、終濃度)で培養した。洗浄後、フィコエリトリン(1:100希釈、100μl)とカップリングしたヤギ抗ヒトFcガンマでmAbsを30分間の4℃で視覚化した。細胞を洗浄し、流れ血球計算器(FC500、Beckman Coulter)で調べた。
【0224】
IV.1.2 ADCCアッセイ抗-RhD+
3人の個体バフィーコートからFicol Plus(Pharmacia)上の密度勾配遠心分離によって得られる単核細胞分画からリンパ球を調製した。遠心分離(15分、190g)で血小板を除去し、残った細胞をNH4CI中に溶解させる。単核細胞は37℃で/FCS25%中でプラスチックの軟組織培養フラスコに2回の連続した粘着(2×30分)に枯渇させた。単核細胞の最終百分比は全細胞数の15%以下でなければならない。非粘着リンパ球は洗浄した後、IMDM 中に8×107細胞/ml で再懸濁させた。治療濃縮物からの赤血球(グループO、Rhesus+)をパパイン(1mg/ml)で10分間処理し、次いで食塩水で3回洗浄し、IMDM中に再懸濁した(4×107細胞/ml)。治療用IV Ig(Tegeline、LFB)からのヒト免疫グロブリン溶液をIMDM中に2 mg/mlおよび10mg/mlに希釈した。アッセイは96ウエルのミクロタイタープレート(NUNC)で実行した。培養上清または精製された抗D抗体(0.5%FCSを含むIMDM中200ng/mlで100μl)、エフェクター細胞(25μl)、赤血球(25μ赤血球(25μl)およびヒト免疫グロブリン(50μl)を湿ったC02リッチな雰囲気中で37℃で16時間培養した。エフェクタ細胞懸濁液の代わりテストした各サンプルに対してIMDMから成る非特異的リリースを培養した。プレートを遠心分離後、各ウエルに60μlの上澄を集め、60μlの2.7-ジアミノフルオロレン(diaminofluorenee)(DAF、Sigma)と混合した。5分後に、ODを620nmで測定した。赤血球(NH4Cl)の各種細胞溶解希釈度(溶解の100、75、50、25および0%に対応)で再構成した較正曲線を使用して細胞溶解のパーセントを推定した。
【0225】
IV.1.3 ADCC分析 抗−CD20
1人の個体バフィーコートからFicol Plus(Pharmacia)上の密度勾配遠心分離によって得られる単核細胞分画からリンパ球を調製した。遠心分離(15分、190g)で血小板を除去し、残った細胞をNH4CI中に溶解させる。ネガティブセレクション単離キット(Miltenyi Biotec、Bergisch Gladbach、ドイツ)を使用してNK細胞を精製した。精製後の細胞は少なくとも90% CD56+であった。PE-コンジュゲート抗-CD14、抗-CD3、抗-CD19抗体で染色された細胞は3%以下であった。上記の方法(Dall'Ozzo et al, 2003) でFCγRIIIA多相性(polymorphism)を求めた。RPMI-1 640中で培養したRajiリンパ芽B細胞(標的)に10%FCS、2mmol/lの L-グルタミンおよび1mmol/lのナトリウム・ピルベート(完全培地)を補充した。標的細胞に単クローン抗体(500-5ng/mlの範囲)の存在でエフェクタ-標的(E/T)比15/1でNK細胞を混合した。ミクロプレート分光蛍光計(Tecan、Mannedorf-Zurich、スイス)を使用した蛍光定量法(Roche Applied Sciences Cytotoxicity Detection Kit ref 1 1 644793001)によって上澄のLDH中のリリースを測定した。データは任意光学単位または蛍光単位(AFU)で表した。パーセント溶解度は以下の式:%溶解度= 100×(ER-SR)/(MR-SR)で計算した。ここで、ER、SR、MRはそれぞれ実験リース、自生リースおよび最大リリースを表す。ADCC値は% ADCC=(mAbの存在下での%溶解度)-(mAbないの%溶解度)として表される。
【0226】
IV.1.4 CDCアッセイ
標的ASC-1細胞株を補体供給源としてのベビー・ウサギ血清(1/10に希釈)の存在下で抗-AMHRI抗体の濃度を増加させて(0〜2500ng/ml)で培養した。37℃で1時間培養した後、溶解された標的細胞によって上澄中にリリースされたLDHの量を蛍光定量機(Roche Applied Sciences Cytotoxicity Detection Kit ref.11 644793001)で測定して、各抗体を介して出された補体依存性細胞毒性の百分比を計算した。パーセント細胞溶解度(リシス)は以下の式に従って計算した:%細胞溶解度=ER-SA。ここでERは実験応答であり、SAは標的細胞を抗体なしに補体の存在下で培養した時に得られる自然活性値である。結果は抗体濃度の関数としての細胞溶解度パーセントで表した。Emax(最大リシスの百分比)およびEC50(最大リシスの50%を誘発する抗体量)はPRISMソフトウェアを使用して計算した。
【0227】
IV.2 結果
抗原認識テストの結果は、wt中または変異株の親の抗-RhD+IgG1中へのDel294突然変異体の導入は、得られたIgG1変異株の抗原結合特性に影響を及ぼさないことを示している。事実、全ての抗-RhD+(R593)IgG変異株は[表6]に示すようにRhD+ RBCs(赤血球)に結合する。
【0228】
【表6】
【0229】
さらに、Feyリセプタに対する259l/294Del/5D 31/434Yおよび256N/294Del/378V/383N/434Yおよび294Del変異株の低親和性は一貫しており、これら変異株は[表7]に示すようにR593または親変異株IgGと比較してADCC活性を示さない。
【0230】
【表7】
【0231】
さらに、Del294突然変異の導入([表8]参照)はwt抗-CD20(R603)IgG1またはV259l/N315D/N434Y抗-CD20(R603)IgG1変異株の結合に影響を及ぼさない。
【0232】
【表8】
【0233】
予想どおり、C1 qタンパクおよびFeγリセプタの両方に対してR603_259l/294Del/315D/434Y性およびR603_294DelIgG変異株の低親和性から見て、下記[表9][表10]に示すように、R603または親の変異株IgGと比較して上記変異株せADCC活性もCDC活性も示さない。
【0234】
【表9】
【0235】
【表10】
【0236】
【表11】
図1
図2
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]