特許第6080849号(P6080849)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6080849
(24)【登録日】2017年1月27日
(45)【発行日】2017年2月15日
(54)【発明の名称】抽出システムのカートリッジチャンバ
(51)【国際特許分類】
   A47J 31/36 20060101AFI20170206BHJP
   A47J 31/40 20060101ALI20170206BHJP
   A47J 31/06 20060101ALI20170206BHJP
【FI】
   A47J31/36 122
   A47J31/40 107
   A47J31/06 328
【請求項の数】15
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-526474(P2014-526474)
(86)(22)【出願日】2012年8月21日
(65)【公表番号】特表2014-527441(P2014-527441A)
(43)【公表日】2014年10月16日
(86)【国際出願番号】EP2012066238
(87)【国際公開番号】WO2013026843
(87)【国際公開日】20130228
【審査請求日】2015年8月18日
(31)【優先権主張番号】11178789.1
(32)【優先日】2011年8月25日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599132904
【氏名又は名称】ネステク ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【弁理士】
【氏名又は名称】戸津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】ベッソン, フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】リテナー, ブレイズ
(72)【発明者】
【氏名】ラーズル, デーヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】シャランコン, ジュリエン
【審査官】 土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第00710462(EP,A1)
【文献】 特表2009−537269(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01219217(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 31/36
A47J 31/06
A47J 31/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料の原材料を含むカートリッジ(9)と、加熱水などの淹出用液体を前記カートリッジ内に供給することによって前記カートリッジ内で前記原材料を淹出するための装置(1)とを備えるシステムであって、前記装置が、前記カートリッジの挿入および/または除去を行うための開位置と、淹出中に前記カートリッジを収容する淹出チャンバ(11)を形成するための閉位置との間で相対的に移動可能である上流および下流のカートリッジ収容部(7、8)を有し、
前記淹出チャンバ(11)が、
前記カートリッジを収容する前記閉位置に前記カートリッジ収容部(7、8)があるときには前記カートリッジ(9)によって占有されず、
前記淹出用液体へ前記原材料をさらすことによって生じる前記カートリッジの膨張時には前記カートリッジによって占有される閉じ込め型の膨張空間(12)を有する、システムにおいて、
前記上流カートリッジ収容部(7)が、前記カートリッジ(9)内に液体を供給するための少なくとも1つの液体注入器(32)を備え、該液体注入器(32)が、前記カートリッジ(9)の外膜(9’)の上流部を穿孔するための穿孔器(34)と、前記カートリッジの穿孔時に前記カートリッジ内に液体を注入するための液体注入導管(38)とを有し、前記液体注入器が、特に、複数の前記穿孔器および/または複数の前記液体注入導管を有することを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記膨張空間(12)が、前記カートリッジの膨張前に前記カートリッジを囲むための閉位置に前記カートリッジ収容部(7、8)があるときに、前記淹出チャンバ(11)の容積または前記カートリッジ(9)の原材料キャビティ(9’’’)の容積の1〜10%の範囲内、特に、1〜5%、例えば1.5〜4%の範囲内の容積を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
膨張時に前記カートリッジ(9)が、前記膨張空間(12)の少なくとも50%、特に、前記膨張空間(12)の少なくとも60%または70%を占有する、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
膨張時に前記カートリッジ(9)が、前記膨張空間(12)の少なくとも80%、特に、前記膨張空間(12)の少なくとも90%、例えば前記膨張空間(12)の少なくとも95%または98%を占有する、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記膨張空間(12)が、前記下流カートリッジ収容部(8)によって形成されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記膨張空間(12)が、前記カートリッジ(9)の膨張前に前記カートリッジ(9)の対向面(9’)から離れる方へわずかに角度を、特に、10度以下の角度を、例えば5度以下の角度を付けられた面(12’)によって形成されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記穿孔器(34)が、概ね円筒形のおよび/もしくは円錐形の形状または角柱形のおよび/もしくはピラミッド形の形状、特に、穿孔端(34’)を形成する切断面(35)を伴う形状を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記穿孔器(34)の内部、または部分的に前記穿孔器(34)の内部に、前記液体注入導管(38)、特に、1対の液体注入導管(38)が形成されている、請求項1〜7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記穿孔器(34)が基部を有し、該基部が、突出した補強足、例えば、随意に著しい破断または切断なしに、前記カートリッジ(9)を変形させる足、特に、前記基部の外周全体の周囲に延在する本体(34’’)、および/または前記基部から半径方向にもしくは直径方向にもしくは対角線上に突出する本体(34’’’)を有する足を有する、請求項1〜8のいずれか一項のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記上流カートリッジ収容部(7)が、前記カートリッジ(9)の除去時に前記上流カートリッジ収容部から離れる方へ前記カートリッジを押圧するための上流カートリッジプッシャ(36)を備える、請求項1〜9のいずれか一項のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記下流カートリッジ収容部(8)が、穿孔部材(30)を支持している、請求項1〜10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記下流カートリッジ収容部が、特に、随意に破断または切断なしに、前記カートリッジを押圧し変形させることによって、前記穿孔部材(30)からの前記カートリッジ(9)の除去を補助するための下流カートリッジプッシャ(37)を備え、随意に、特に付勢ばね(37’)によって押圧方向に付勢されたカートリッジプッシャ、例えば、前記カートリッジの原材料キャビティ(9’’’)の外周部(9’’)を押圧するように構成されたプッシャを備える、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載のシステムであって、
前記淹出チャンバ(11)の形成前に前記開位置にある前記カートリッジ収容部同士の間へ、重力によって挿入され降下する際の前記カートリッジを受け入れ、重力に抗して保持するためのカートリッジ保持器(10)であって、特に、前記上流カートリッジ収容部(7)に固定されるか、または前記上流カートリッジ収容部(7)と一体であるカートリッジ保持器(10)と、
少なくとも1つのカートリッジ位置合わせ部品(39)、特に、1対のカートリッジ位置合わせ部品であって、前記上流カートリッジ収容部(7)と前記下流カートリッジ収容部(8)との間においてカートリッジを淹出位置合わせする際の前記カートリッジ保持器による受入れ時に、前記カートリッジ(9)を水平に案内し、特に、前記下流カートリッジ収容部(8)に固定されるか、または前記下流カートリッジ収容部(8)と一体である、カートリッジ位置合わせ部品(39)とを有し、
前記カートリッジ位置合わせ部品(39)が、前記上流カートリッジ収容部(7)と前記下流カートリッジ収容部(8)との間で前記カートリッジが位置合わせされたときに、特に、前記カートリッジの下方の外周部(9’’)に配置され、随意に、前記カートリッジ位置合わせ部品(39)が、前記上流カートリッジ収容部(7)および前記下流カートリッジ収容部(8)が前記閉位置に相対的に移動されるときに、閉鎖方向に前記カートリッジ(9)を変形させ、前記カートリッジ位置合わせ部品が、随意に前記下流カートリッジ収容部(8)に含まれる、システム
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載のシステムのためのカートリッジ(9)の使用または請求項1〜13のいずれか一項に記載のシステム内でカートリッジ(9)を抽出する方法。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれか一項に記載のシステムの前記装置(1)内の前記カートリッジ(9)の前記原材料を淹出する方法であって、
前記上流および下流のカートリッジ収容部(7、8)を前記開位置に移動し、前記カートリッジを挿入する工程と、
前記上流および下流のカートリッジ収容部(7、8)を、前記カートリッジ(9)を収容する淹出チャンバ(11)を形成するための閉位置に至らせ、これにより、前記淹出チャンバ(11)の前記閉じ込め型の膨張空間(12)が前記カートリッジ(9)によって占有されないようにする工程と、
前記カートリッジを膨張させ、且つ、前記淹出チャンバ(11)の前記閉じ込め型の膨張空間(12)が占有されるように前記淹出用液体へ前記原材料をさらす工程と、
を有し、
前記カートリッジ(9)の外膜(9’)の上流部が前記液体注入器(32)の前記穿孔器(34)によって穿孔され、前記カートリッジの穿孔時に前記液体が液体注入導管(38)によって前記カートリッジ内に液体が注入され、随意に、前記液体注入器が、複数の前記穿孔器および/または複数の前記液体注入導管を有する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カートリッジと、抽出チャンバを有するカートリッジ抽出装置とを含むシステムであって、抽出チャンバ内にカートリッジを挿入し抽出することができ、抽出チャンバからカートリッジを排除することができるシステムに関する。この抽出装置は、飲料調製マシンに組み込まれてもよい。
【0002】
目下の説明を行うために、「飲料」は、茶、コーヒー、ホットチョコレートまたはコールドチョコレート、ミルク、スープ、離乳食などの任意の液体食品を含むものとする。カートリッジは、事前に小分けされた原材料を収容するための軟質または可撓性の任意の容器(ポッドなど)であって、再生利用可能なまたは再生利用不可能な(生分解性のまたは非生分解性の)任意の材料(アルミニウムまたはプラスチックなど)から作られた容器(特に、アルミニウムポッドまたはアルミニウムカプセル)を指す。
【背景技術】
【0003】
原材料カートリッジシステムが直面する1つの問題は、抽出工程を行い、次に抽出装置からカートリッジを適切に排除するための、抽出装置内でのカートリッジの取扱いおよびカートリッジの周囲における抽出装置の閉鎖である。通常、カートリッジが使用者によってカートリッジ支持部にまたはハウジング内に位置合わせされ、次に、装置がカートリッジの周囲で手動または自動で閉鎖されなければならない。
【0004】
カートリッジの周囲を装置によって適切に閉鎖するようにカートリッジを適切に位置合わせし、良好なシールを形成して良好な抽出条件を確保することは重要である。悪い位置合わせは、カートリッジを損傷させ、それにより、抽出条件に影響を与える可能性がある。
【0005】
望ましくない漏れを生じることなくカートリッジ内に加圧液体を通過させることによって適切な抽出を可能にするための、カートリッジの周囲における装置の封止のために、カートリッジの周囲における装置の閉鎖は、高いレベルの精度で行われなければならない。このような装置の機械的閉鎖機構の閉鎖距離は、所望のレベルの精度を達成するために装置の製造工程中に通常は手動で調整される。また、カプセルの装填は、装置内でのカプセルの正確な位置合わせを何度も試みることのないように容易でなければならない。また、装填は、可能な限り迅速なものであり、過剰な操作を必要としないものでなければならない。
【0006】
国際公開第2005/004683号パンフレットは、第1の部分と、該第1の部分に対して相対的に移動され得る第2の部分と、カプセルのハウジングであって、固定部に対する可動部の閉位置においてハウジングの軸線に沿ってカプセルの抽出位置を規定するハウジングと、重力によってカプセルを挿入しカプセルを中間位置に位置合わせするように構成されたカプセル案内手段を備える挿入・位置合わせ部分と、飲料注入システムと、装置が閉鎖されたときにカプセルを中間位置から抽出位置へ移動させるように配置され構成された第2の可動部とを備えるカプセル淹出装置に関する。欧州特許第1721553号明細書は、カプセルを使用するコーヒーマシンのための淹出ユニットについて開示している。このユニットは、飲料出口を有する前部および温水入口を有する後部を有する。前部および後部は、1対の対向するショルダ案内部材間に取り付けられる。前部は、抽出されるカプセルを収容する淹出チャンバを後部と共に形成するために後部に対して移動するように、これらの案内部材間で移動可能であるが、これにより、占有されていない容積が、マシン内の案内部材間の前方部材の前方に残される。
【0007】
欧州特許第1659547号明細書は、抽出液(特に、エスプレッソコーヒー)を生成するための飲料マシンに関する。このマシンは、戻しばねを有する移動可能な前部と、アセンブリの外部ハウジング内を通って延在する飲料出口ダクトとを有する淹出ユニット内に、抽出液チャンバを含む。移動可能な前部は、後部と協働し、後部は、ハウジング内を移動可能であり、かつ移動可能な前部に対して押圧されて戻しばねを圧縮することができ、これにより、出口ダクトがアセンブリの外部ハウジング内を通って摺動する。ポッドは、硬質のポッド供給路を経由して外部ハウジングを通して抽出液チャンバへ通され、次に、ポッドは、後部を移動させるためのカム状の経路が設けられた淹出ユニットの移動可能な後部の外部ブッシングによって抽出液チャンバ内に移動される。この機構は、いくつかの問題を含んでいる。ポッドは、淹出チャンバの閉鎖中に移動されなければならず、このことは、遮断の原因となる可能性があり、さらにポッドの保持手段をより複雑なものとする。さらに、淹出チャンバの開放および閉鎖は、ハウジング内の移動可能な後部、ハウジング内の移動可能な前部、およびハウジングを通る出口ダクトの同時的かつ直線的な移動を含む。これは、過度の案内(hyper-guiding)および詰まりまたは互いに対して直線的に移動する様々な部分の不適切な位置合わせの危険性を高める。流体システムは、流体システムの組立てをより複雑にする移動アセンブリを備える。抽出淹出ユニットがポッドを除去するために再び開放されるとき、抽出液チャンバ内に含まれている加圧水が、ハウジングの外側へ射出される可能性がある。さらに、出口ダクトが後退位置にあるとき、占有されていない容積がマシン内において前方部材とケーシングとの間に残される。
【0008】
米国特許第3,260,190号明細書および国際公開第2005/072574号パンフレットは、コーヒーマシン内でコーヒー缶を位置合わせするための取り外し可能な引出しを有するコーヒーマシンについて開示している。引出しは、コーヒーマシン内へ水平に摺動され、水注入機構に向かって持ち上げられ得る。
【0009】
国際公開第2006/023309号パンフレットは、マシン内へのコーヒーカートリッジの導入のための摺動可能な引出しを有するコーヒーマシンについて開示している。引出しは、開位置と閉位置との間で移動可能であり、2つのカートリッジハーフシェルを有し、カートリッジハーフシェルは、引出しが閉位置にあるときは淹出チャンバを形成するように互いに対して枢動可能であり、引出しがマシンから外へ摺動されるときは互いに離れるように枢動可能である。
【0010】
米国特許第6,966,251号明細書は、コーヒーマシン内でカプセルを位置合わせするための水平に摺動可能な引出しを有するコーヒーマシンについて開示している。マシン内へ摺動されるとき、引出しは、カプセルのための淹出チャンバを形成するために固定カプセルケージに向かって上方へ移動され得る。欧州特許第1566126号明細書は、コーヒーポッドを収容するための垂直な淹出ユニットを有するコーヒーマシンについて開示している。淹出ユニットは、淹出ユニットを閉鎖するために引き上げられ、ポッドの挿入または除去のために降ろすことのできる、ポッドを保持するための固定された上部および移動可能な下部を有する。
【0011】
さらなる淹出ユニットは、欧州特許第0730425号明細書、欧州特許第0862882号明細書、欧州特許第1219217号明細書、欧州特許第1480540号明細書、欧州特許第1635680号明細書、欧州特許第1669011号明細書、欧州特許第1774878号明細書、欧州特許第1776026号明細書、欧州特許第1893064号明細書、仏国特許第2424010号明細書、米国特許第3,260,190号明細書、米国特許第4,760,774号明細書、米国特許第5,531,152号明細書、米国特許第6,904,840号明細書、米国特許第7,131,369号明細書、米国特許出願公開第2005/0106288号明細書、米国特許出願公開第2006/0102008号明細書、国際公開第2005/002405号パンフレット、国際公開第2005/016093号パンフレット、国際公開第2006/005756号パンフレット、国際公開第2006/066626号パンフレット、および国際公開第2007/135136号パンフレットに開示されている。
【0012】
原材料カートリッジの周囲における抽出装置の正確な機械的閉鎖に関する問題を回避するために、カートリッジ内の原材料の抽出に使用される加熱水が液圧式閉鎖機構を駆動するためにも使用される液圧式閉鎖システムを用意することが知られている。この場合、閉鎖距離は特別な調節を必要としない。なぜなら、液圧閉鎖力が、カートリッジの周囲で抽出装置のカートリッジ支持体を互いに組み付けるからである。このようなシステムの例は、例えば、国際公開第2008/037642号パンフレットに開示されている。様々なシステムが、この考えに沿って開発されており、例えば、欧州特許第1219217号明細書、欧州特許第1353591号明細書、欧州特許第1480540号明細書、欧州特許第1545278号明細書、欧州特許第1776026号明細書、欧州特許第1912542号明細書、国際公開第2005/115206号パンフレット、国際公開第2006/005736号パンフレット、および国際公開第2011/042400号パンフレットに開示されている。
【0013】
別の問題は、抽出装置内のカートリッジ内に供給された淹出可能な原材料の最適な抽出に関する。一方、カートリッジのサイズ/原材料の質量比を最小限に抑え、これにより、包装材料ならびに保管および輸送に関するカートリッジの容積が最小限に抑えられ得るように原材料によるカートリッジの充填を最大化する、という輸送上および生産上の必要性がある。この問題に対する解決策は、カートリッジ内に淹出可能な原材料をぎっしり詰めることである。一方、カートリッジを通して抽出用流体(例えば、加熱水)を流通させるために、淹出可能な原材料は、概ね不浸透性である集合体を形成するまでぎっしり詰められるべきではない。言うまでもなく、カートリッジ内の原材料の集合体によって形成された障壁に打ち勝つのに十分な程度まで、流通する抽出流体の圧力を高めることは可能である。しかしながら、この手法は、原材料の集合体内における圧力の低下に起因して抽出速度および飲料調製の大幅な減速につながる。さらに、淹出可能な原材料中に高い圧力で抽出流体を強制的に通過させることは、飲料の味に影響を与え、これをあまりに強くて粗雑にする、淹出可能な原材料の望ましくない固形複合物の抽出につながる。この後者の現象は、当該技術分野では「過抽出(over-extraction)」として知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明の好ましい目的は、上記した問題の少なくとも一部を解決すること、特に、原材料カートリッジの充填の最大化と過抽出の最小化との間の矛盾に対する解決策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、飲料の原材料を含むカートリッジと、加熱水などの淹出(抽出)用液体をカートリッジ内に供給することによってカートリッジ内で原材料を淹出するための装置とを備えるシステムに関する。本装置は、カートリッジの挿入および/または除去を行うための開位置と、淹出中にカートリッジを収容する淹出チャンバを形成するための閉位置との間で互いに相対的に移動可能な上流および下流のカートリッジ収容部を有する。
【0016】
一般に、カートリッジは、重力の作用により上方から装置内に挿入されてもよい。また、収容部の開放時におけるカートリッジの排除は、重力によって行われてもよい。
【0017】
一般に、この装置は、カプセルおよび/またはポッドなどの原材料カートリッジを受け入れるために飲料調製マシンに含まれる。例えば、マシンは、コーヒー、茶、チョコレート、またはスープの調製マシンである。具体的には、マシンは、調製される飲料の原材料(挽いたコーヒーまたは茶またはチョコレートまたはカカオまたはミルク粉末など)を含むカートリッジ中に温水または別の液体を通すことによって、抽出チャンバ内で飲料を調製するように構成される。
【0018】
例えば、調製マシンは、使用のためにカートリッジを受け入れ、使用時にカートリッジを排除するように構成された飲料調製ユニット(例えば、抽出装置)と、調製ユニットからカートリッジの排除領域に通じる開口を有するハウジングと、容器内のこの領域に排除されるカートリッジを一杯になるまで収集するための保管空間を形成するキャビティを有する容器とを備える。容器は、使用済みのカートリッジを収集するための領域に挿入可能であり、また、収集されたカートリッジを空にするためにこの領域から取外し可能である。このようなマシンの例は、国際公開第2009/074550号パンフレットおよび国際公開第2009/130099号パンフレットに開示されている。
【0019】
本発明によれば、淹出チャンバは、
カートリッジを収容する閉位置にカートリッジ収容部があるときにはカートリッジによって占有されず、
淹出用液体へ原材料をさらすことによって生じるカートリッジの膨張時にはカートリッジによって占有される
閉じ込め型(confining)の膨張空間を有する。
【0020】
膨張空間は、閉じ込め型の空間である。したがって、カートリッジ内で生成された飲料は、この空間を通してカートリッジから外へ流れ出るようにはなっていない。通常、カートリッジは、この膨張空間のレベルで開口されない(例えば、切断されないし、破断されない)。
【0021】
膨張空間は、淹出用液体による原材料の望ましくない過抽出を抑えるために、カートリッジの原材料キャビティ内の利用可能な淹出空間を増加させるように機能する。このような過抽出は、膨張を吸収するための対応する利用可能な空間がない場合に、特に、例えば、3〜25バール、一般に5〜20バールの範囲内で液体を加圧するポンプによって、淹出用液体がキャビティ内に加圧状態で供給されるとき、濡れた原材料の膨張によって生じる原材料中の過度の流れ抵抗によって生じ得る。
【0022】
本発明の他の態様は、このようなシステムのためのカートリッジの使用およびこのようなシステム内でカートリッジを抽出する方法に関する。
【0023】
本発明のさらなる特徴および利点は、詳細な説明および特許請求の範囲および図面から明らかとなる。
【0024】
次に、概略図を参照しながら、本発明について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1a】抽出装置および原材料カートリッジを有する従来技術のシステムの部分であって、本発明に係るシステムへの改良が施され得る部分を示している。
図1b図1aに示されている装置であって、本発明に係るシステムの実施形態の改良をさらに取り入れた装置の詳細な部分を示している。
図1c図1aに示されている装置であって、本発明に係るシステムの実施形態の改良をさらに取り入れた装置の別の詳細な部分を示している。
図1d図1aに示されている装置であって、本発明に係るシステムの実施形態の改良をさらに取り入れた装置のさらに別の詳細な部分を示している。
図2a】抽出装置および原材料カートリッジを有する従来技術のシステムであって、本発明に係るシステムに改良され得るシステムの部分を示している。
図2b図2aに示されている装置であって、本発明に係るシステムの実施形態の改良をさらに取り入れた装置の詳細な部分を示している。
図2c図2aに示されている装置であって、本発明に係るシステムの実施形態の改良をさらに取り入れた装置の別の詳細な部分を示している。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、図1a〜図2cに示されている特定の実施形態を参照しながら、本発明について説明する。
【0027】
これらの図は、原材料カートリッジ9を通して加熱液体(水などの)を流通させることによって飲料を調製するために淹出装置1およびカートリッジ9を組み込んでいるシステムの様々な態様を示している。なお、原材料カートリッジ9は、概ねぎっしり詰められた飲料原材料(例えば、例えばNESPRESSO(商標)として商品化されているような、挽いたコーヒー)を含む、おおよそ軟質であるか、または可撓性であるポッド(例えば、概ね封止された気密性かつ可撓性の外膜(プラスチックまたはアルミニウムの外膜など)から作られた)の形態をしている。
【0028】
図面に示されているカートリッジ9の特定の実施形態は、原材料キャビティ9’’’を囲んでいる、外周部9’’を有する外膜9’を有する概ね丸いタブレットの形状を有する。外周部9’’は、カートリッジ9の周囲の環状の封止フランジ9’’’’を形成する延在部を有する。このようなカートリッジ9の例は、国際公開第2011/000723号パンフレット、国際公開第2011/000724号パンフレット、および国際公開第2011/000725号パンフレットにより詳細に記載されている。
【0029】
装置1は、液体供給機構38を用いて加熱水などの淹出用液体をカートリッジ内に供給することによってカートリッジ9内の原材料を淹出するように構成されている。装置1は、上流カートリッジ収容部7および下流カートリッジ収容部8を有する。上流および下流の収容部7、8は、カートリッジ9の挿入および/または除去を行うための開位置と、淹出中にカートリッジ9を収容する淹出チャンバ11を形成するための閉位置との間で相対的に移動可能である。
【0030】
フレーバー飲料(例えば、茶またはコーヒー)は、カートリッジ9内で液体と原材料とを混合し、流路31’を経由して飲料出口31で飲料を収集することによって生成される。
【0031】
図1aおよび図2aに示されている特定の実施形態では、上流部7は、装置1への/からの挿入および/または除去を行うときにカートリッジ9を取り扱うための保持部材10を有する。あるいは、保持部材は、下流部8に固定されてもよいし、または双方の部分7、8に対して相対的に移動可能であってもよい。
【0032】
カートリッジ保持部材10は、上方から装置1内へ供給されるときに降下状態にあるカートリッジを受け入れ保持するために、収容部7、8の開位置に残された開放間隙に設けられる。
【0033】
保持部材10は、概ね円筒形のまたは「リング」の形態を有する。保持部材10は、淹出装置1が開位置にあるときにカートリッジ9を予備配置位置に受け入れ保持するように構成された第1のチャンバまたは保持チャンバ18を備える。また、保持部材10は、装置1が閉鎖されたときにカートリッジ9を受け入れ、これにより、装置1が再び開放されたときにすぐにカートリッジの除去を可能にするように構成された第2のチャンバまたは排出チャンバ19を備える。保持チャンバ18は、重力に抗してカートリッジの縁を保持する同軸保持面20によって形成されている。面20の横断面は、部分8が保持チャンバ18に対して横移動できるように、収容部8よりもわずかに大きくなっている。シリンダ20の部分は、カートリッジ9が実質的に垂直の姿勢でまたはわずかに傾斜した姿勢で起立することができるようにしている。
【0034】
チャンバ18の上部領域には、図1aに示されているように、重力の作用によりカートリッジ9をチャンバ18内に挿入できるように十分な幅を有する開口21が設けられている。
【0035】
排出チャンバ19は、保持チャンバ18に隣接して配置されている。排出チャンバ19は、装置1が淹出後に再び開放されたときに重力によってカートリッジ9を自由落下させるための下部開口22を、カートリッジ挿入開口21と実質的に正反対の位置に有する。
【0036】
保持部材10は、閉鎖中に保持部材10内で部分8を摺動させるために、下流部8の外径よりもわずかに大きな直径を有する円筒形の後部および円筒形の前部を有する。
【0037】
保持部材10の2つのチャンバ18、19は、摺動(閉鎖)方向を横切るように配置されたカートリッジリテーナ25によって区分けされている。リテーナ25は、カートリッジ9の縁9’’’’を支持することのできる1対の円弧形状のリッジを備える傾斜面であってもよい。この傾斜面は、収容平面に対してわずかに傾斜していてもよい。リッジの部分は、内側へ半径方向に突出しており、また、カートリッジの両面でカートリッジの縁を保持する寸法に形成されている。リッジのこの部分のサイズは、収容部材8の直径によって定められる。例えば、リッジのこの部分のサイズは、約1〜4mmであってもよい。
【0038】
保持部材10は、後方に突出している1対のアーム28によって上流部7の側方部に固定されている。したがって、保持部材10は、上流部7に固定され、すなわち、上流部7に対しては動かないが、閉鎖動作中に下流部8に対して移動可能である。
【0039】
カートリッジ9を取り扱うために上流部7および下流部8によって形成されたアセンブリ内で動作する保持部材10についての詳細な説明は、装置1のこの態様を実施するために参照してもよい国際公開第2007/135135号パンフレットに記載されている。
【0040】
開位置と閉位置との間で上流部および下流部を動かすことについては、上記の国際公開第2007/135135号パンフレットに詳細に示されている。装置1を動かすために使用することのできるこれ以外の変形形態は、国際公開第2011/042400号パンフレットに開示されている。
【0041】
収容部7、8は、実質的に長手方向の軸線に沿って往復運動させることのできるようにフレームに沿って取り付けられてもよい。カートリッジ9の周囲で収容部7、8を閉鎖するために、上流部および下流部7、8は、これらが、閉位置でカートリッジ9の縁9’’’’を間に挟みながら合わさり外周面で液密係合部を共に形成することのできる位置に向かって互いに接近させられる。
【0042】
通常、装置1は、液体注入機構を有する流体回路を含む飲料調製マシンに組み込まれる。
【0043】
したがって、抽出装置1は、液体(冷水(特に、リザーバに貯蔵された)など)の供給源と、リザーバから導管を経由して液体を圧送するためのポンプと、液体を加熱するための加熱器と、淹出チャンバ11において加熱液体をチャンバ11内に供給するための入口38とを含む液体注入機構を有する流体回路と関連付けられてもよい。
【0044】
チャンバ11において、加圧され加熱された液体は、カートリッジ9のキャビティ9’’’内に含まれている原材料の抽出によって飲料を生成するためにカートリッジ9内を通って流れ、飲料は、下流部8と関連付けられた出口31を経由して、例えば、出口31の下方に配置された使用者のカップまたはマグ内に供給され収集される。
【0045】
装置1が、封止されたカートリッジ9または部分的に封止されたカートリッジ9内に含まれている原材料を淹出するように構成されているとき、装置1は、カートリッジ開口器30、32を含んでもよい。例えば、上流部7は、上流カートリッジ開口器32を含んでもよく、および/または下流部8は、下流カートリッジ開口器30を有してもよい。
【0046】
図1b、図1c、および図1dに示されているように、淹出チャンバ11は、閉じ込め型の膨張空間12を有し、閉じ込め型の膨張空間12は、カートリッジ9を収容するための閉位置に収容部7、8があるときにはカートリッジ9によって占有されず、淹出用液体へ原材料をさらすことによって生じるカートリッジ9の膨張時にはカートリッジ9によって占有される。
【0047】
図1cおよび図1dにより詳細に示されているように、膨張空間12は、カートリッジ9が上流部7および下流部8によって収容されたときにカートリッジ9の外周部9’’に隣接する溝または凹部12’によって形成されてもよい。所望の膨張空間に応じて、溝または凹部12’は比較的浅くてもよい。言うまでもなく、膨張空間12の形状は、カートリッジ9の形状および淹出中のカートリッジ9の所望の膨張に依存する。したがって、膨張空間は、必ずしも、淹出チャンバから突出する凹部または溝の形態として設けられるわけではない。
【0048】
キャビティ9’’’内の原材料が淹出用液体へさらされる前に、外周部9’’は、膨張空間12内に配置されておらず、図1dに示されている点線12’’を辿っている。この事例では、外周部9’’は、概ね円錐台形の形状を有する。原材料が淹出用液体にさらされると、原材料は、液体によって濡らされ、キャビティ9’’’内で膨張し、これにより、外周部9’’は、膨張空間12内へ押し入れられ、溝もしくは凹部12’の形状に向かってまたは溝もしくは凹部12’の形状に一致するように膨張させられ得る。
【0049】
膨張空間12は、閉じ込め型の空間である。したがって、カートリッジ9内で生成された飲料は、空間12を通してカートリッジ9から外へ流れ出るようにはなっていない。通常、カートリッジ9は、膨張空間12のレベルで開口されない(例えば、切断されないし、破断されない)。
【0050】
膨張空間12は、特に、例えば、3〜25バール、一般には5〜20バールの範囲内で液体を加圧するポンプによって、淹出用液体が加圧状態でキャビティ9’’’内に供給されるときに、濡れた原材料の膨張により生じる原材料の過度の流れ抵抗に起因する、淹出用液体による原材料の望ましくない過抽出を抑えるために、キャビティ9’’’内の利用可能な淹出空間を増加させるように機能する。
【0051】
一般に、膨張空間12は、カートリッジ9の膨張の前にカートリッジ9を収容するように収容部7、8が閉位置にあるときに、淹出チャンバ11の容積またはカートリッジ9の原材料キャビティ9’’’の容積の1〜10%の範囲、特に1〜5%、例えば1.5〜4%の範囲の容積を有する。
【0052】
膨張時、カートリッジ9は、膨張空間12の少なくとも50%、特に、膨張空間12の少なくとも60%または70%を占有してもよい。一般に、膨張時、カートリッジ9は、膨張空間12の少なくとも80%、特に、膨張空間12の少なくとも90%、例えば、膨張空間12の少なくとも95%または98%を占有する。カートリッジ9による膨張空間12の占有は、カートリッジ9の可撓性、キャビティ9’’’内の原材料の特質および充填度、ならびにカートリッジ9内への液体の流れの圧力に依存する。
【0053】
膨張空間12は、例えば図面の特定の実施形態に示されているように下流部8に形成されてもよい。変形形態では、膨張空間は、上流部または双方の部分に形成されてもよい。
【0054】
膨張空間12の形成面12’は、カートリッジ9の膨張の前、カートリッジ9の対向面9’’から離れる方へわずかに角度を、特に、10度以下の角度を、例えば5度以下の角度を付けられてもよい。このようなわずかな角度、すなわち、この位置における鋭角の不在は、カートリッジ9がチャンバ11内で膨張したときにカートリッジ外膜9’が形成面12’の位置または形成面12’の周囲で破断されることまたは切断されることを防止する。
【0055】
図2bおよび図2cに示されているように、一般に上流部7は、液体をカートリッジ9内に供給するための少なくとも1つの液体注入器32を有する。カートリッジ外膜9’により、カートリッジの上流面が封止されているとき、このような注入器32は、外膜9’の上流部を穿孔するための穿孔器34およびカートリッジ9の穿孔時に液体をカートリッジ9内に注入するための液体注入導管38を有してもよい。液体注入器32は、特に、複数の穿孔器34および/または複数の注入導管38を有する。図示の実施形態では、穿孔器32は、注入器32上に環状かつ放射状に配置されている。具体的には、20個の穿孔器34が、この実施形態ではこのような方法で配置されている。
【0056】
注入穿孔器34は、概ね先細りの形状、特に、概ね円筒形のおよび/もしくは円錐形の形状または角柱形のおよび/もしくはピラミッド形の形状、例えば、穿孔端34’を形成する切断面35を伴う先細り形状を有してもよい。注入穿孔器34は、カートリッジ9内へ手動で動かされてもよい。
【0057】
穿孔器34の内部に、または部分的に穿孔器34の内部に、液体注入導管38が形成されていてもよい。具体的には、少なくとも1つの穿孔器34が、1対の流体導管38を形成してもよい。
【0058】
変形形態では、このような穿孔器は、液体注入導管から分離されてもよい。このような場合、穿孔器は、カートリッジを開口するための「単なる」穿孔器であり、液体をカートリッジ内に注入するための「注入」穿孔器34ではなく、液体は、穿孔器を通してカートリッジ内に注入されず、穿孔器の近傍から注入される。
【0059】
穿孔器34は、随意にカートリッジ9の外膜9’の著しい破断または切断なしに、カートリッジ9の外膜9’を変形させる足などの横方向に突出した補強足を伴う基部を有してもよい。穿孔器34を補強し、破壊による不具合を回避するために、このような足が使用されてもよい。このことは、カートリッジ9の開口能力(カートリッジに対する穿孔器の開口端および貫通角度)およびそのために必要な努力に影響を与えないという利点を有する。
【0060】
この足は、基部の外周全体の周囲に延在する本体34’’および/または半径方向にもしくは直径方向にもしくは基部から対角線上に突出する本体34’’’を有してもよい。
【0061】
図2bおよび図2cに示されているように、注入器32は、注入器32を上流部7内に固定するための固定機構32’、例えば、リベットおよび/またはねじを用いて注入器32を部分7に固定するために互いに離間され環状に配置された開口32’を有する。
【0062】
注入器32は、上流部7の浅い凹部に設けられてもよい。一般に注入器32は、装置1が堅く閉鎖されたときに加圧下でカートリッジ9内に水を注入するように構成される。注入部32は、少なくとも1つの水入口および可能ならば穿孔器34を備えてもよい。
【0063】
さらに、一般に上流部7は、カートリッジ9の除去時に上流部7から離れる方へカートリッジ9を押圧するための上流カートリッジプッシャ36を含む。したがって、特に穿孔器34からのカートリッジ9の容易かつ信頼できる除去のために、プッシャ36は、収容部7、8が再び開放されたときに注入器32から離れる方へカートリッジ9を押圧するように移動可能に構成されてもよい。結果として、カートリッジは、穿孔部品34から解放され、重力によってチャンバ11から落下する。プッシャ36の往復運動は、収容部7、8の駆動機構と連係されてもよい。このようなプッシャ36および抽出装置1へのその組込みは、国際公開第2007/135135号パンフレットにより詳細に開示されている。
【0064】
カートリッジ9の下流部を開口するための、および/または飲料を濾過するための機構30が設けられてもよい。例えば、機構30は、装置の閉鎖中に、または淹出動作中にカートリッジの内部で高まる圧力の作用によりカートリッジを穿刺する凸部品を備えるプレートから形成されてもよい。
【0065】
特にカートリッジ外膜9’の下流部が封止されている場合、下流部8は、開口機構30を組み込んでもよい。このような機構は、1つ以上の穿孔部品(例えば、円錐、ピラミッド、またはピンなどの形状の)を含んでもよい。
【0066】
一般に機構30は、プレートとして構成されてもよい。
【0067】
機構30は、例えば、環状の膨張空間12の中央に中心を合わせて配置された、下流部8の開口30’に固定されてもよい。
【0068】
カートリッジ開口器(例えば、穿孔器)を支持する円板形状の機構30が、図1aに示されており、図1dでは概略的に示されている。機構30を受け入れるためのキャビティ30’が、図1bおよび図1cに示されている。機構30のための取り付け開口30’’が、図1cに示されている。例えば、機構30の足は、開口30’’内に圧力嵌めされるか、クリッピングされるか、螺着されるか、接着されるか、または溶接されてもよい。
【0069】
下流穿孔機構30は、例えば、カートリッジ9内に流通される加圧液体に起因する、機構30に対するカートリッジ9の加圧下での膨張によってカートリッジ9を開口する遅延式の穿孔機構であってもよい。
【0070】
下流部8は、例えば、装置1内に挿入されるカートリッジ9の有無および/または種類を識別するためのカートリッジセンサ30’’’を受け入れるためのキャビティを有してもよい。このようなカートリッジセンサシステムは、国際公開第2011/000723号パンフレット、国際公開第2011/000724号パンフレット、および国際公開第2011/000725号パンフレットに開示されている種類のものであってもよい。
【0071】
図1b、図1c、および図1dに示されているように、下流部8は、特に、随意に破断または切断なしに、カートリッジ9を押圧し変形させることによる穿孔機構30からのカートリッジ9の除去を補助するための下流カートリッジプッシャ37を備えてもよい。カートリッジプッシャ37は、付勢ばね37’によって押圧方向に付勢されてもよい。
【0072】
図1b〜図1dに開示されている特定の実施形態では、プッシャ37は、カートリッジ9の原材料キャビティ9’’’の外周部9’’を押圧するように配置されている。したがって、プッシャ37は、カートリッジ9の原材料本体を押圧するのであって、(可能的に自由に変形可能な)カートリッジフランジ9’’’’だけを押圧するわけではない。
【0073】
具体的には、装置1が、上流カートリッジ穿孔器34および下流カートリッジ穿孔器30を有する場合、上流および下流の穿孔器30、34のそれぞれと関連付けられたカートリッジプッシャ36、37を設けることが好ましい。これにより、装置1の再開放時において装置1からのカートリッジ9の不適切な除去の危険性がなくなる。
【0074】
ピストン(特に、直線的に移動可能なピストン)の形状をした上流プッシャ36および/または下流プッシャ37が設けられてもよい。
【0075】
装置1(特に、下流部8)は、上流部7と下流部8との間におけるカートリッジの淹出位置合わせ3、3’の際にカートリッジ9を案内する少なくとも1つのカートリッジ位置合わせ部品39(特に、1対の位置合わせ部品)を有してもよい。
【0076】
したがって、カートリッジ9の軸線3’は、開放された状態の上流部7および下流部8の間で適切な高さに誘導されるだけでなく、これらの間で横方向にも位置合わせされる。カートリッジ9の軸線3’は、部分7、8の抽出軸線3と一致するように誘導される。軸線3は、チャンバ11の中心を通って伸びていてもよい。軸線3’は、図1aに示されているようにカートリッジ9の中心を通って伸びていてもよい。
【0077】
カートリッジ9が上流部7と下流部8との間で位置合わせされる場合、位置合わせ部品39は、特に、カートリッジ9の下方の外周部9’’に配置される。上流部7および下流部8が相対的に閉位置に移動されるとき、随意に位置合わせ部品39は、カートリッジ9を閉鎖方向に変形させてもよい。
【0078】
このようなカートリッジ位置合わせ部品39は、カートリッジ9が保持部材10のみによって保持される場合にカートリッジ9の位置合わせ不良を防止する。
【0079】
図1bおよび図1cに示されているように、位置合わせ部品39は、上流部7または下流部8からわずかに突出しており、これにより、カートリッジ9は、装置1の開放または閉鎖時に位置合わせ部品39によって保持されないようになっている。部品39は、弓形の接触部39’を有し、これにより、カートリッジ9の弓形の外膜9’(特に、部分9’’)が、部品39の単一の接触点または接触スポットによって位置合わせされるようになっている。したがって、1対のこのような接触部品39と保持器10とを組み合わせることによって、カートリッジ9の水平位置合わせおよびカートリッジ9と抽出装置1との位置合わせを確実にすることができる。
【0080】
添付の図面に示されているように、保持器10および位置合わせ部品39は、必ずしも、上流部7および下流部8の同じ部分に組み付けられるわけではない。保持器10および位置合わせ部品39は、同じ部分または異なる部分に組み付けられてもよい。しかしながら、保持器10および位置合わせ部品39の機能は、多少異なっている。すなわち、保持器10は、重力に抗してカートリッジ9を保持し、位置合わせ部品39は、これらの部分7、8間におけるカートリッジ9の適切な収容のためにカートリッジ9と上流部7および下流部8との位置合わせを調整する。
【0081】
また、本発明は、上述したようなシステム7、8、9のためのカートリッジ9の使用またはこのようなシステム内でカートリッジ9を抽出する方法に関する。
図1a
図1b
図1c
図1d
図2a
図2b
図2c