特許第6080856号(P6080856)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6080856周波数または圧力制御されるガス・パルスを実装したレーザによるレーザ切断のための装置および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6080856
(24)【登録日】2017年1月27日
(45)【発行日】2017年2月15日
(54)【発明の名称】周波数または圧力制御されるガス・パルスを実装したレーザによるレーザ切断のための装置および方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/142 20140101AFI20170206BHJP
   B23K 26/38 20140101ALI20170206BHJP
【FI】
   B23K26/142
   B23K26/38 Z
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-535076(P2014-535076)
(86)(22)【出願日】2012年10月11日
(65)【公表番号】特表2014-531984(P2014-531984A)
(43)【公表日】2014年12月4日
(86)【国際出願番号】EP2012070169
(87)【国際公開番号】WO2013053832
(87)【国際公開日】20130418
【審査請求日】2015年9月25日
(31)【優先権主張番号】1159277
(32)【優先日】2011年10月13日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アルフィーユ,ジャン−パスカル
【審査官】 本庄 亮太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−076088(JP,A)
【文献】 特開2001−138082(JP,A)
【文献】 特開2008−087028(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/142
B23K 26/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ切断によって作り出されるスラグおよびガスを一掃するためにガス流量を切断位置に吹き付けることを含み、その吹き付けがパルスによって実行される、自動レーザ切断方法であって、レーザ光の後方散乱強度を連続的に測定し、前記強度を最小に保つように前記パルスの周波数、圧力または周波数と圧力の両方を変更することを特徴とする自動レーザ切断方法。
【請求項2】
前記周波数または圧力が段階的に変更されることを特徴とする、請求項1に記載の自動レーザ切断方法。
【請求項3】
前記周波数刻み幅が1Hz〜3Hzの間にある値を有することを特徴とする、請求項2に記載の自動レーザ切断方法。
【請求項4】
前記圧力刻み幅が1barより小さい値を有することを特徴とする、請求項2に記載の自動レーザ切断方法。
【請求項5】
前記周波数または圧力が限界同士の間に含まれ、前記限界に達すると、前記レーザ出力の増大が強制されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の自動レーザ切断方法。
【請求項6】
前記周波数限界が2Hzと20Hzであることを特徴とする、請求項3に記載の自動レーザ切断方法。
【請求項7】
前記圧力限界が1barと15barであることを特徴とする、請求項4に記載の自動レーザ切断方法。
【請求項8】
前記レーザ出力の増大が一時的であることを特徴とする、請求項5に記載の自動レーザ切断方法。
【請求項9】
レーザヘッド(9)およびガス吹き付け補助装置を備える切断装置において、前記補助装置が、ガス供給ダクト(13、15)と、その供給ダクトの下流にガス吹き付けノズル(11、29)を備え、前記ノズルが切断位置に向けられ、前記補助装置が、吹き付けを不連続な反復パルスに分割するためのデバイス(12、4;141、142、143)を備える切断装置であって、前記レーザが1kWより高い出力を有する連続的ビーム・レーザであり、前記切断位置によって後方散乱された光強度を有する検出器(36)と、前記検出器の測定値に応答して前記パルスの周波数または圧力、あるいは周波数および圧力を制御するためのデバイス(39)を備えることを特徴とする切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、周波数または圧力制御されるガス・パルスを備えたレーザ切断装置および方法である。
【背景技術】
【0002】
COレーザおよびNd−YAGレーザなどの出力レーザを用いた、材料、詳細には金属材料の切断が、産業において技術的に十分に確立して数十年になる。
【0003】
従来の方法は、パルス・ビーム・レーザを使用して機能する。パルス(典型的には100J、パルス幅約5ms)ごとに、被切断材料が融点よりも局所的に高い温度に至り、非常に流動性を有する、低粘度の少量の金属がほぼ直ちに得られる。この装置はガス吹き付け補助装置をもって完成する。このガスは、切り口に向けられたレーザに随伴し、溶融された金属を微細スラグとして効率的に排出する。そのスラグは切り口の側面に付着することはない。上記のプロセスはほぼ即時であり、レーザの後続パルスが次の金属部分に取りかかる一方で、先行するスラグは切り口からなくなっている。したがってこの方法により、効率的な切断が可能になる。さらに、液体スラグは、その排出が速すぎて切り口に存在する間は吹き付けガスでは凝固せず、排出を全く妨げない。
【0004】
残念ながら、この方法は従来、発生パルスレーザの出力制限を受けている。2、3センチメートル程度の厚手部品の切断は、数キロワットのレーザの使用を要するはずである。現在、連続ビーム・レーザのみがこの出力を有する。この連続ビーム・レーザを前述の方法に適用すると、溶湯が絶えず形成されるため適当な結果が得られない。この連続的な溶湯は、吹き付けガスによって冷却され、それによって凝固に先だちその粘性が高められながらかろうじて排出されるので、蓄積してしまう傾向を有する。この場合、最初に溶融された金属は、レーザ出力を増やす改良を行わなければ、切り口に留まり、さらにはその切り口を局所的に塞いでしまう可能性がある。
【0005】
本発明ではまず、通例パルス・ビーム・レーザで到達する出力を超える、1kWを上回る出力を有する連続的ビーム・レーザの有用性を見いだす。
【0006】
少量の溶融物を次々に排出し、切り口からのスラグの効率的な排出を復活させるために、吹き付けガス流量のパルス化を有利に行うことができることが知られている(特許文献1または特許文献2)。
【0007】
この場合、上記方法は改善されるが、状況によってはこの改良は不十分であり、いくつかの切断不具合がそのまま残っていることが判明した。
【0008】
本発明が特定の用途を見いだす分野は、非常に過酷な媒体(原子力、生物学、化学)内における切断である。そこでは、切断ヘッドがロボットアームまたはその他任意の装置によって移動させられる。その移動はあまり正確ではなく、切断ヘッドから切断される部品までの距離やその速度などの切断パラメータは近似的である。さらにしばしば振動が認められ、被切断部品の特性(特にその厚さ)もやはり、近似的に分かる場合もあれば、非常に変動しやすい場合もある。これが原因で、切断パラメータの理想値が不明である、あるいは、そういった変化を上記の切断方法に適用できなければ絶えず変化する可能性があり、その結果、不十分な結果(不完全な切断を含む)が認められる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許第0533387号
【特許文献2】米国特許第2008/115862号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
切断条件はガス・パルスの周波数および圧力に強く依存していることが判明しており、その結果、本発明によると、適当な切断条件を確保するためにこの2つのパラメータのうちの少なくとも一方を調節するよう制御機構で決定される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、本発明は、切断によって作り出されるスラグおよびガスを一掃するためにガス流量を切断位置に吹き付けることを含み、その吹き付けがパルスによって実行される、自動レーザ切断方法であって、レーザ光の後方散乱強度を連続的に測定し、上記強度を最小に保つように上記パルスの周波数、圧力または周波数と圧力の両方を変更することを特徴とする自動レーザ切断方法に関する。
【0012】
上記周波数は、段階的に変更されると有利であり、その刻み値は1Hz〜3Hzの間にすることができる。
【0013】
上記吹き付け周波数は、限界同士の間に留まることができ、その限界を超えると、満足な切断を確保するために上記吹き付け設定以外の測定値を取得すべきと判断される。これらの限界は例えば2Hzと20Hzにすることができる。それらに達すると、レーザ出力の増大が強制される。この増大は一時的であると有利である。
【0014】
いくつかの任意選択の有利な調整形態によると、レーザビームは吹き付けノズルを通過することができ、レーザビームと吹き付けガスは平行な方向を有する。
【0015】
ただしこの場合、ノズルは横長開口断面を有すると有利であり、その端をレーザビームが通過する。この配置により、ビームの、溶融物がちょうど現れる箇所の直ぐ後方に、ガスを吹き付けることが可能になる。
【0016】
上記横長開口断面は、矩形、楕円などにすることができる。ただし、ノズルが絞りによって大きさの異なる2つの部分に分割された場合に好ましい形状が実現され、小さい方の部分をレーザビームが通過し、大きい方の部分を吹き付けガスが通過する。
【0017】
吹き付け補助装置はまた、全てが切断位置に向けられた複数のノズルを備えることができ、そのノズルのうちの1つがレーザビームと平行に方向付けられ、別のノズルがこのビームに対して傾斜して方向付けられる。したがって、それらのノズルの吹き付けは、異なる収束方向に方向付けられ、それがスラグ排出を改善する可能性がある。複数の傾斜ノズルもやはり、互いに平行な、レーザビームとそのビームの様々な部分で交差する各々の吹き付け流量を提供し、切断中のより深い部分に効率的な排出を働かせるために好ましい場合がある。
【0018】
複数のノズルが存在する場合、スラグの排出をさらに改善するために、吹き付けパルスはノズル間の位相シフトを用いて作られるように企図されるべきである。
【0019】
補助装置が供給ダクト内に回転部材ディスペンサを備えると、ガス・パルスを作り出す優れた方法が実現される。上記部材は、吹き付けパルスを可能にするために供給ダクトから周期的に延びる、供給ダクトを開くための少なくとも1つのポートを備える。上記ポートおよび供給ダクトは、供給ダクトの正面に、上記回転部材の動作方向と垂直な、平行な辺を備える矩形断面を有すると有利である。この配置により、より適切に設計されたパルスを得ることが可能になる。
【0020】
吹き付けパルスが互いに等しいかどうかを問わず周波数は、ノズルが複数存在する場合、より適した特性がはっきりと認められることがない限り、各ノズルに対して維持することができる。
【0021】
また、パルスのピーク圧力は3〜15barの間にすることができる。パルス間で0.5〜1barの中間圧力を促進できるように、パルス間の吹き付けの停止は避けたほうがよいことに留意すべきである。これらの圧力は全て、ノズルの、または場合に応じて各ノズルの出口に存在する。
【0022】
あるいは、ガス・パルスの周波数ではなくその圧力を制御することによって、またはそれらのパラメータの両方を同時に制御することによって、同じ切断改善効果を得ることができる。この圧力は、1〜15barの間で0.5bar刻み、またはより一般的には1bar未満の刻み幅で制御することができる。その制御方法は全く同じである。
【0023】
次に、本発明について、以下の各図に関連して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
[図1]レーザ切断装置の図である。
[図2]切断ヘッドの図である。
[図3]回転ガスディスペンサの図である。
[図4]図3で得られるA−Aの断面図である。
[図5]代替切断ヘッド端部の図である。
[図6]図6A、6B、6Cおよび6Dは、吹き付けノズルの断面図である。
図7】吹き付けのタイムチャートである。
図8】本発明の方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1に、レーザ切断装置およびその環境が略図で示されている。この装置は、いわゆる解体セル(breaking cell)(1)の中に収容されている。幾つかの産業で使用されるグローブボックスなどの被切断物が、セル(1)内のブラケット(3)上に置かれている。装置(4)は、5軸テーブル(5)を介してセル(1)の壁に吊り下げられている。テーブル(5)は、3本の主要平行移動軸X、Y、Zに沿った装置の移動を可能にするよう互いにスライドする部品群と、蝶番式に取り付けられたハンドル(6)からなる。ハンドル(6)は、装置(4)を2本の互いに垂直な軸回りの回転θおよびψを可能にするように取り付けられている。テーブル(5)の長手部分に吊り下げされた可撓性を有するケーブル(7)が装置(4)を制御設備(8)に接続する。ケーブル(7)は光ファイバおよびダクトを備え、光ファイバおよびダクトはそれぞれ、制御設備(8)内の発生装置(図示せず)から装置(4)にレーザ光と吹き付けガスを提供する。設備(8)はまた、装置(4)を移動させるために使用される。この移動は、ボックス(2)の全ての面の正面に装置(4)を配置し方向付けるように、テーブル(5)およびハンドル(6)に作用することによって行われ、ボックス(2)は交差した走行によって完全に切断される。これら要素は全て周知であることから、これ以上詳細に示さず、次に図2について説明する。
装置(4)は、ハンドル(6)で支持された、円錐形の端部を有する円筒形のヘッド(9)を備える。ヘッド(9)の上端は光ファイバ(10)の端の通過を可能にし、下端は吹き付けノズル(11)になっている。ヘッド(9)は、ガスダクトの第1の端部(13)が通じる第1のガスディスペンサ(12)と、ガスダクトの第2の端部(15)が通じる第2の供給ディスペンサ(14)を担持する。第1のディスペンサ(12)は、ヘッド(9)の壁を通過する出口端部を有するが、第2のディスペンサ(14)はヘッド(9)の外側に留まり、その出口端部は、ノズル(11)の円錐形の外壁に接線方向に掛けることで得られる角度を、上記ヘッド(9)となしている。レーザビーム(16)は、ヘッド(9)を下向きに通過し、ノズル(11)を通過してヘッド(9)から出る。このレーザビーム(16)は、ヘッド(9)の上端に位置するレンズ(17)によって、ノズル(11)よりやや下の、被切断プレート(19)の表面またはそのプレートの半分の深さのところに位置決めされた、絞った区画を占めるように焦点が合わせられる。レーザビーム(16)はさらに窓(20)を通過する。この窓(20)は、第1のディスペンサ(12)によって放出されたガスに対する障壁として機能するようにヘッド(9)の内部を分割する。
【0026】
この装置はさらに、レーザビーム(16)の経路上にビーム・スプリッタ(35)を備える。ビーム・スプリッタ(35)は光がプレート(19)まで進むのを可能にするが、このプレート(19)から後方反射された光を反射する。ビーム・スプリッタ(35)は傾斜しているので、その光は、ヘッド(9)の側部に位置する検出器(36)へ後方反射される。干渉フィルタ(38)と集点合わせレンズ(37)が、この後方反射光の焦点を検出器(36)に対して合わせ、レーザビーム(16)の波長のみが通過できるようにして、検出器(36)の正面に設けられる。検出器(36)は、制御デバイス(39)(詳細に図示せず)に接続される。この制御デバイス(39)は、ガスの吹き付けだけでなくレーザを、後ほど説明するように制御する。
【0027】
各ディスペンサ(12および14)は、図3に示されているように、円筒形のハウジング(22)に取り付けられた、モータ(23)の作用を受けて回転可能なバレル(21)を備える。バレル(21)は、出口ノズル(25)に通じる同軸の陥凹部(24)と、その周縁部の周りに分散配置された、陥凹部(24)と連通する1つまたは複数のスロット(26)を備える。バレル(21)の回転により、スロット(26)は、ガスダクトの端部(13または15)が接続するディスペンサの入口端部(27)の正面を規則的に通過する。図4に、スロット(26)が、長辺がバレル(21)の軸方向にある矩形断面を有し、入口ポート(27)の内側部分(28)も、やはり長辺がバレル(21)の軸に沿って方向付けられた矩形であることが示されている。ディスペンサ(14)は、粉末導入ダクト(29)をさらに備えること(ただしこれは任意選択である)を除き、ディスペンサ(12)と類似している(場合により寸法または比率は除く)。この粉末は、その運動エネルギーをスラグに伝えることによってその射出を補助することができる(このときその粉末はプレートと同じ材料のものである場合が多い)、あるいはその溶湯と接触して発熱反応を引き起こすことができ、それによってその溶湯の温度を上昇させる。図5に、図2から導き出される設計が略図で示されている。その図では、傾斜したディスペンサ(14)が複数の複製品(141、142、143など)に設けられ、それらの出口ポートは全て互いに平行に、ヘッド(9)の主方向と一定の角度をなして配置され、プレート(19)の様々な深さのところでレーザビーム(16)と交差するように重ねられる。
【0028】
レーザビーム(16)がプレート(19)に投射され、そのプレートに孔を穿つ。主要ガスが第1のディスペンサ(12)を通って流れ、ヘッド(9)が溶融スラグを下向に射出する。ディスペンサ(14)またはディスペンサ(141、142、143)がさらに、前方の切断境界に対して吹き付けを実行し、主要吹き付け動作を完了する。回転バレル(21)が各ディスペンサを繰り返し封止し、パルス特性を吹き付けガス流量に与えることによってそのガス流量をチョップする(細かく途切れさせる)。この特性によりプレート(19)の良好なスラグ排出が確保されることがわかった。このパルス化された流量の原理が満たされるならば、例えばディスペンサおよびその出口ポートの数および方向を変えることなどによって、適当な吹き付けを発生させる方法が多数ある。ただし、レーザビーム(16)がこのポートの前方にあるように、かつ、第1のディスペンサ(12)からのガス吹き付けが、レーザビーム(16)の、液体スラグが形成されている箇所よりやや後方で行われるように、ノズル(11)が切断方向に方向付けられた横長のポートを有すると有利であることが強調されるべきである。図6A、6B、6Cおよび6Dはそれぞれ、矩形ポート(30A)、丸みのある端部を備える横長ポート(30B)、楕円形のポート(30C)および複雑な鍵穴形状を有するポート(30D)を示している。ポート(30D)は、ガス吹き付けに割り当てられた矩形の主要部分と、レーザビーム(16)の直径に適合し、その通過のために使用される円形の前方部分を備え、これらの部分が絞り(31)によって接合される。
【0029】
この連続ビーム・レーザの出力は、切断される厚み(典型的には数センチメートル)の関数として数kWにすることができる。
【0030】
図7に、ノズル(11)と第2のディスペンサ(14)の出口ノズル(25)から伝わる圧力が示されている。この図7のグラフに示されているように、異なるディスペンサに対して別々の吹き付け位相を選択すると有利であるように思われる。この位相シフトは4π/3であり、周波数は一定であることが分かる。この圧力も変わらず、例えば3〜15barなどの値を有する上側のレベルと、例えば0.5および1barの値を有する下側のレベルとの間にある。実際に、ヘッド(9)またはその効率的動作にとって有害な、煙さらには液体スラグの上向き流を可能にしてしまう、吹き付けの中断は不利である。十分なパルス周波数があれば、あるいはバレル(21)を貫く追加のポートによって、残留圧力を実現することができる。ガスのパルスはそれぞれ、パルス幅1ms〜100msを有することができる。このパルス幅の調節もまた、バレル(21)のポート(26)がガスダクトの端部(13または15)の正面を通過するときのバレル(21)の回転速度を変えることによって実現することができる。このために、制御機構を、バレル(21)に角度位置エンコーダを設けることによって作ることができる。バレル(21)の平均回転速度を調節することによって、吹き付けパルスの周波数を調節することが可能になり、したがって、切断屑の排出の改善が可能になる。より正確には、バレル(21)の平均回転速度は2重であり、パルス幅が一定の、ガスダクトの端部(13または15)の正面にあるポート(26)を通過するために使用される第1の固定速度と、本発明の特徴に従って各ガス吹き付けパルス間の時間を変えるためにバレル(21)の他の角度位置に対して使用される第2の可変速度を有する。
【0031】
次に、本発明の最も重要な態様について説明する。幾多の現実の状況における不可避の不確定性および外乱により、最良の事前切断パラメータでの設定が失敗すること、その、スラグおよび溶融物の不十分な排出よって引き起こされる切断の失敗は排除できないことについてはすでに述べた。
【0032】
レーザビーム(16)からの光の大部分は、切断が不十分になると後方散乱され、その後方散乱された部分は、切断ヘッド(9)を貫きビーム・スプリッタ(35)によって反射された後、検出器(36)に到達する。制御デバイス(39)は、検出器(36)に到達する後方散乱光の強度を絶えず測定する。
【0033】
しかし、切断品質が最適となる吹き付けガス流量は存在すると思われる。ガス吹き付けが不十分ならば、ガス流量の全運動エネルギーが十分ではないため、スラグおよび溶融物の排出が困難になる。しかし、ガス流量が大きすぎると、溶融金属の冷却も強くなり、それによってその溶融金属の粘性が増大し、溶融金属が保持され排出路を再び塞ぐかもしれないリスクが高まって、溶融金属の再凝固が早まる可能性がある。
【0034】
したがって上記制御では、検出器(36)の信号を最低レベルに保とうとすることによって、ガス吹き付け流量、詳細にはパルス周波数の連続的に変化させることを利用する。しかしながら、このようにして得られた最低値が高すぎる値である場合は、切断をより活発なものにするためにレーザビーム(11)の出力が高められる。この制御は、ガス流量が複数存在する場合、全ガス流量に関係する。
【0035】
次に、図8について説明する。切断を行う前に実行される第1のステップE1は、予備設定を導入するものである。その設定から、レーザ出力(4)(例えば通常状況ではP1=6kW、例外的な状況ではP2=7〜8kW)、ガス・パルス周波数F=10Hz、ガス・パルス周波数の変動増分(PAS=2Hz)、最小周波数5Hz、最大周波数15Hzを示すことができる。これら値は全て例として与えられ、限界2Hzと20Hzも提供することができる。後続のステップE2で、周波数変調パラメータKが例えばK=1などに一時的に設定され、後続のステップE3で、検出器(36)によって測定された値S1が記録される。
【0036】
このプログラムの続きはループで実行される。初期化ステップE4およびE5でまず、ガス・パルスの周波数Fが最小値Fmin〜最大値Fmaxの間にあることが連続的にチェックされる。そのような場合には、このパルス周波数は変更され、F+K×PASと等しくなる(E6)。後続のステップE7で、検出器(36)の新しい測定値S2が記録される。そのS2が前の値S1よりも低い場合は(E8)、一掃パラメータKは1に保たれ、S1の値がS2の値と置き換えられ(E9)、新しいループがE4から実行される。S1がS2よりも低い逆の場合には(E10)、Kは−1と等しくなり、もう一度新しいループがE4から実行される。したがってこのループの効果とは、検出器(36)に対して後方散乱された光を測定しながら一掃パルスの周波数が絶えず変更されるということである。この測定値が低下する、つまり切断がより良好である場合、この一掃方向は好ましく、一掃が同じ条件下で継続される。これに対して測定値が上昇する場合、この一掃は、検出値の最小値を探すために、反対方向で再開される。
【0037】
ステップE4で、周波数が最小値を下回ったことが判明した場合は、パラメータKが1に設定され、レーザがより高い出力P2に設定され、次いで信号S1の取得が実行される(E11)。また、ステップE5で、周波数が最大周波数を上回ったことが判明した場合、Kは−1に設定され、出力P2が導入され、信号S1の取得が再度実行される(E12)。次いで、どちらの場合も、ステップE6が実行される。その結果、この方法で臨時の厚みまたは外乱が存在する場合でも、レーザ出力の増大により満足のいく切断が得られることを考慮することによって、検出器36の測定最小値を探索しようとする望ましい一掃区間に達する。この出力の増大は一時的であり、このプロセスが他の方法で変更されなければ決定された時間後にP1に復帰して自動的に終了する。
【0038】
本発明の別の実施形態では、切断品質に対するその効果は全く同じであり、パルス周波数は一定であるが、吹き付けノズルにおけるガス圧力が、例えば調節可能な弁の開度を変更するなどによって制御される。例えば公称圧力5barの場合、圧力限界を1barと15barにし、圧力増分を0.5barにすることができる。この方法は、上記の各値がP1、P2およびPASに置き換わること、バレル(21)の回転速度が一定のままであることを除いて、前述の方法と全く同じである。
【0039】
例えば順次交互など、パルスの周波数パラメータと圧力パラメータの両方を変更することによって、あるいは、一方のパラメータが閾値に達した、または一方のパラメータによって同じように迅速な改善が可能にならない場合に、もう一方のパラメータに対する作用を優先することによって、2重制御を実行することがさらに企図されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A-6D】
図7
図8