(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記相対位置が前記通常位置であることを示す前記データと、前記相対位置が前記異常位置であることを示す前記データと、が前記蓄積部において交互に蓄積されたとき、前記報知処理実行部は、前記蓄積部に直前の前記データが蓄積されてから所定時間が経過するまでの間に新たに前記データが蓄積されない場合に、前記免震装置が作動したことを前記建物内に居る人に通知するための情報を前記情報報知装置に報知させる前記報知処理を実行することを特徴とする請求項2に記載の免震装置管理システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の管理方法では、加速度センサ及び磁気センサの両方を用いるため、その分、管理に要するコストが高くなってしまう。特に、加速度センサは、比較的高価な機器であるため、加速度センサを用いなくとも適切に免震装置を管理し得ることが求められている。
【0006】
そこで、本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、より簡易な構成にて適切に免震装置を管理することが可能な免震装置管理システム及び免震装置管理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、本発明の免震装置管理システムによれば、建物の下方位置に配置された免震装置を管理するための免震装置管理システムであって、(A)前記免震装置が載置された基礎に対する前記建物の相対位置が通常位置であるときに第一信号を出力し、前記相対位置が前記通常位置からずれた異常位置であるときに第二信号を出力するセンサと、(B)該センサが出力した信号を受信する信号受信部と、(C)該信号受信部が前記信号を受信する度に、該信号の受信時点での前記相対位置が前記通常位置及び前記異常位置のいずれであるかを示すデータを蓄積する蓄積部と、(D)該蓄積部に蓄積された前記データに応じて、前記免震装置によって前記相対位置が変化した際に前記建物内に居る人に知らせるべき情報を、前記建物内に設置された情報報知装置に報知させる報知処理を実行する報知処理実行部と、
(E)前記免震装置に備えられた復帰機構を制御し、該復帰機構によって前記異常位置にある前記相対位置を前記通常位置へ復帰させる復帰処理を実行する復帰処理実行部と、を有
し、(F)前記センサは、前記相対位置が前記異常位置から前記通常位置へ変化した際に前記第一信号を出力し、前記相対位置が前記通常位置から前記異常位置へ変化した際に前記第二信号を出力し、(G)前記信号受信部が前記第一信号及び前記第二信号の双方を交互に受信する場合において、前記蓄積部は、前記信号が前記第一信号であることを示す前記データと、前記信号が前記第二信号であることを示す前記データと、を交互に蓄積し、前記蓄積部に蓄積された前記データのうち、前記信号受信部が前記双方を交互に受信している期間において最後に前記信号を受信したときの前記データが、前記相対位置が前記異常位置であることを示す前記データであるとき、前記報知処理実行部は、前記相対位置が前記異常位置にあることを前記建物内に居る人に通知するための情報を前記情報報知装置に報知させる前記報知処理を実行し、(H)前記蓄積部において前記信号が前記第一信号であることを示す前記データと、前記信号が前記第二信号であることを示す前記データと、が交互に蓄積されたとき、前記復帰処理実行部は、前記蓄積部に直前の前記データが蓄積されてから予め設定された設定時間が経過するまでの間に新たに前記データが蓄積されない場合に、前記復帰処理を実行することにより解決される。
【0008】
上記のように構成された本発明の免震装置管理システムでは、免震装置が載置された基礎に対する建物の相対位置が通常位置であるときに第一信号を出力し、相対位置が通常位置からずれた異常位置であるときに第二信号を出力するセンサのみを用いる。つまり、特許文献1に記載の管理方法のように加速度センサ及び磁気センサの両方を用いる場合と比較して、システム構成をより簡易化することが可能である。
また、本発明の免震装置管理システムが用いるセンサの出力信号からは、基礎に対する建物の相対位置を特定することが可能である。さらに、本発明の免震装置管理システムでは、センサの出力信号を受信した時点での相対位置を示すデータとして、当該相対位置が通常位置及び異常位置のいずれであるかを示すデータを蓄積する。そして、同データから相対位置の変動履歴を特定すれば、その特定結果から免震装置の作動状況(地震発生時に正常に作動したかどうか)を特定することが可能である。
さらに、本発明の免震装置管理システムでは、上記のデータに応じて、相対位置が変化した際に建物内に居る人に知らせるべき情報を、建物内に設置された情報報知装置に報知させることとしている。これにより、建物内に居る人は、報知された情報に従って適切な対処方法を講じることが可能となり、適切に免震装置を管理することが可能となる。
以上の結果、本発明の免震装置管理システムによれば、より簡易な構成にて適切に免震装置を管理することが可能となる。
【0009】
また
、上記の構成では、信号受信部が第一信号及び第二信号の双方を交互に受信する場合、すなわち、地震が発生した場合において地震終了時点での相対位置が異常位置にあるとき、そのことを建物内に居る人に通知する。これにより、地震終了時点での相対位置が通常位置に復帰していないとき(換言すると、免震装置に異常が有るとき)、そのことを建物内に居る人に確実に知らせることが可能となる。
さらに、上記の構成では、地震が発生した場合、蓄積部に直前のデータが蓄積されてから予め設定された設定時間が経過するまでの間に新たなデータが蓄積されないこと、つまり、地震が収まったことを条件として免震機構の復帰機構が作動し相対位置を通常位置に復帰させる。これにより、地震が起きている期間中に復帰機構を作動させるような状況を回避し、適正な免震装置の利用を図ることが可能となる。
【0010】
また、前述の課題は、本発明の第二の免震装置管理システムによれば、建物の下方位置に配置された免震装置を管理するための免震装置管理システムであって、(A)前記免震装置が載置された基礎に対する前記建物の相対位置が通常位置であるときに第一信号を出力し、前記相対位置が前記通常位置からずれた異常位置であるときに第二信号を出力するセンサと、(B)該センサが出力した信号を受信する信号受信部と、(C)該信号受信部が前記信号を受信する度に、該信号の受信時点での前記相対位置が前記通常位置及び前記異常位置のいずれであるかを示すデータを蓄積する蓄積部と、(D)該蓄積部に蓄積された前記データに応じて、前記免震装置によって前記相対位置が変化した際に前記建物内に居る人に知らせるべき情報を、前記建物内に設置された情報報知装置に報知させる報知処理を実行する報知処理実行部と、(E)前記免震装置に備えられた復帰機構を制御し、該復帰機構によって前記異常位置にある前記相対位置を前記通常位置へ復帰させる復帰処理を実行する復帰処理実行部と、を有し、(F)前記センサは、前記相対位置が前記異常位置から前記通常位置へ変化した際に前記第一信号を出力し、前記相対位置が前記通常位置から前記異常位置へ変化した際に前記第二信号を出力し、
(G)前記信号受信部が前記第一信号及び前記第二信号の双方を交互に受信する場合において、前記蓄積部は、前記相対位置が前記通常位置であることを示す前記データと、前記相対位置が前記異常位置であることを示す前記データと、を交互に蓄積し、
(H)前記相対位置が前記通常位置であることを示す前記データと、前記相対位置が前記異常位置であることを示す前記データと、が前記蓄積部において交互に蓄積されたとき、前記報知処理実行部は、前記免震装置が作動したことを前記建物内に居る人に通知するための情報を前記情報報知装置に報知させる前記報知処理を実行し、
前記復帰処理実行部は、前記蓄積部に直前の前記データが蓄積されてから予め設定された設定時間が経過するまでの間に新たに前記データが蓄積されない場合に、前記復帰処理を実行することにより解決される。
上記の構成によれば、より簡易な構成にて適切に免震装置を管理することが可能となる。
また、上記の構成では、信号受信部が第一信号及び第二信号の双方を交互に受信したときには、地震発生時に免震装置が作動したことを通知する。これにより、地震が発生したこと、及び、免震装置が正常に作動したことを建物内に居る人に確実に知らせることが可能となる。
さらに、上記の構成によれば、地震が発生した場合、蓄積部に直前のデータが蓄積されてから予め設定された設定時間が経過するまでの間に新たなデータが蓄積されないこと、つまり、地震が収まったことを条件として免震機構の復帰機構が作動し相対位置を通常位置に復帰させる。これにより、地震が起きている期間中に復帰機構を作動させるような状況を回避し、適正な免震装置の利用を図ることが可能となる。
【0011】
また、上記の免震装置管理システムにおいて、前記相対位置が前記通常位置であることを示す前記データと、前記相対位置が前記異常位置であることを示す前記データと、が前記蓄積部において交互に蓄積されたとき、前記報知処理実行部は、前記蓄積部に直前の前記データが蓄積されてから所定時間が経過するまでの間に新たに前記データが蓄積されない場合に、前記免震装置が作動したことを前記建物内に居る人に通知するための情報を前記情報報知装置に報知させる前記報知処理を実行すると、更に好適である。
上記の構成では、地震が発生したとき、蓄積部に直前のデータが蓄積されてから所定時間が経過するまでの間に新たなデータが蓄積されない場合、つまり、地震が収まった場合に免震装置が作動したことを通知する。これにより、地震が発生したこと、及び地震発生時に免震装置が正常に作動したことを地震終了後に、建物内に居る人に確実に知らせることができる。この結果、建物内に居る人は、地震終了後に適切な対処方法を講じることが可能となる。
【0012】
また、上記の免震装置管理システムにおいて、前記センサは、前記信号受信部からの要求に応じて、前記双方のうち、前記要求を受けた時点での前記相対位置と対応する前記信号を定期的に出力し、前記蓄積部は、前記信号受信部が前記センサから定期的に出力される前記信号を受信する度に前記データを蓄積し、前記蓄積部に蓄積された前記データのうち、前記センサから定期的に出力される前記信号中、前記信号受信部が最後に前記信号を受信したときの前記データが、前記相対位置が前記異常位置であることを示す前記データであるとき、前記報知処理実行部は、前記相対位置が前記異常位置にあることを前記建物内に居る人に通知するための情報を前記情報報知装置に報知させる前記報知処理を実行すると、より一層好適である。
上記の構成では、センサが定期的に信号を出力し、信号受信部がセンサから定期的に出力される信号を受信する度に蓄積部がデータを蓄積する。これにより、相対位置の現状、換言すると免震装置の状態を監視することが可能となる。そして、信号受信部が最後に信号を受信したときに蓄積部に蓄積されたデータが、相対位置が異常位置であることを示すデータであるとき、そのことを建物内に居る人に通知するための情報が報知される。これにより、免震装置に異常が生じて相対位置が通常位置に復帰していないときに、そのことを建物内に居る人に確実に知らせることが可能となる。
【0013】
また、上記の免震装置管理システムにおいて、前記センサは、水平方向において互いに異なる位置に配置されるように複数設けられていると、尚好適である。
上記の構成では、複数のセンサが水平方向において互いに異なる位置に配置されている。これにより、地震が発生した際に複数のセンサ中、あるセンサにて相対位置の変化を検知しなかったとしても(例えば、建物があるセンサの設置箇所を中心に回動するように揺れた場合であっても)、それ以外のセンサにて適切に相対位置の変化を検知することが可能となる。
【0015】
また、前述した課題は、本発明の免震装置管理方法によれば、建物の下方位置に配置された免震装置を管理するための免震装置管理方法であって、(A)センサが、前記免震装置が載置された基礎に対する前記建物の相対位置が通常位置であるときに第一信号を出力し、前記相対位置が前記通常位置からずれた異常位置であるときに第二信号を出力することと、(B)コンピュータが、前記センサが出力した信号を受信することと、(C)コンピュータが前記信号を受信する度に、該信号の受信時点での前記相対位置が前記通常位置及び前記異常位置のいずれであるかを示すデータを、蓄積部が蓄積することと、(D)コンピュータが、前記蓄積部に蓄積された前記データに応じて、前記免震装置によって前記相対位置が変化した際に前記建物内に居る人に知らせるべき情報を、前記建物内に設置された情報報知装置に報知させる報知処理を実行することと、(E)
コンピュータが、前記免震装置に備えられた復帰機構を制御し、該復帰機構によって前記異常位置にある前記相対位置を前記通常位置へ復帰させる復帰処理を実行することと、を有し、(F)前記センサは、前記相対位置が前記異常位置から前記通常位置へ変化した際に前記第一信号を出力し、前記相対位置が前記通常位置から前記異常位置へ変化した際に前記第二信号を出力し、(G)コンピュータが前記第一信号及び前記第二信号の双方を交互に受信する場合において、前記蓄積部は、前記信号が前記第一信号であることを示す前記データと、前記信号が前記第二信号であることを示す前記データと、を交互に蓄積し、前記蓄積部に蓄積された前記データのうち、コンピュータが前記双方を交互に受信している期間において最後に前記信号を受信したときの前記データが、前記相対位置が前記異常位置であることを示す前記データであるとき、コンピュータは、前記相対位置が前記異常位置にあることを前記建物内に居る人に通知するための情報を前記情報報知装置に報知させる前記報知処理を実行し、(H)前記蓄積部において前記信号が前記第一信号であることを示す前記データと、前記信号が前記第二信号であることを示す前記データと、が交互に蓄積されたとき、コンピュータは、前記蓄積部に直前の前記データが蓄積されてから予め設定された設定時間が経過するまでの間に新たに前記データが蓄積されない場合に、前記復帰処理を実行することにより解決される。
上記の方法によれば、従来の免震装置管理方法に比較して、より簡易な機器構成にて適切に免震装置を管理することが可能となる。
また、上記の方法では、第一信号及び第二信号の双方を交互に受信する場合、すなわち、地震が発生した場合において地震終了時点での相対位置が異常位置にあるとき、そのことを建物内に居る人に通知する。これにより、地震終了時点での相対位置が通常位置に復帰していないとき(換言すると、免震装置に異常が有るとき)、そのことを建物内に居る人に確実に知らせることが可能となる。
さらに、上記の方法では、地震が発生した場合、蓄積部に直前のデータが蓄積されてから予め設定された設定時間が経過するまでの間に新たなデータが蓄積されないこと、つまり、地震が収まったことを条件として免震機構の復帰機構が作動し相対位置を通常位置に復帰させる。これにより、地震が起きている期間中に復帰機構を作動させるような状況を回避し、適正な免震装置の利用を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の免震装置管理システム及び免震装置管理方法によれば、加速度センサを用いる従来の免震装置管理方法に比較して、より簡易な構成にて適切に免震装置を管理することが可能となる。具体的に説明すると、比較的高価な加速度センサを用いなくとも、地震発生時における免震装置の作動状況や免震装置における異常の有無を、建物内の人に知らせることが可能となる。これにより、より安価な構成にて免震装置の監視や保守を適切に行うことが可能となる。以上の結果、免震装置が設置された建物において、その内部空間に居る人(すなわち、ユーザ)は、免震装置を安心して利用し得るようになる。さらに、免震装置の提供者や保守管理者は、免震装置に異常が生じたときには迅速かつ適切に対応し得るようになる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態(以下、本実施形態)について説明する。ただし、本実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。また、
図7、8、9及び11に図示の画面例は、あくまでも一例に過ぎず、画面デザインや表示内容についてはユーザ仕様等に応じて適宜変更することが可能である。
【0019】
また、以下では、住宅Hを建物の一例として挙げ、住宅Hに対して設置された免震装置を管理する免震装置管理システム及び免震装置管理方法について説明することとする。ただし、あくまでも住宅Hは建物の一例に過ぎず、本発明は、住宅H以外の他の建物、例えば店舗や商業施設、工場内の建屋、学校や病院等の公共施設等においても適用可能である。
【0020】
先ず、本実施形態に係る免震装置管理システム(以下、本システム1)の概要について
図1乃至3を参照しながら説明する。
図1は、住宅H及び免震装置2を示す模式図である。
図2は、後述する免震センサ3の動作に関する説明図であり、図中の(a)は、センサ状態がオン状態にあるときの図であり、図中の(b)は、オフ状態にあるときの図である。
図3は、本システム1の構成を示すブロック図である。
【0021】
本システム1は、免震装置2を管理するために構築された通信システムである。免震装置2は、大きな地震が発生したときに基礎と住宅Hとの間にてエネルギーを吸収して揺れを軽減する装置であり、住宅Hの下方位置に設置されている。より具体的に説明すると、本実施形態に係る免震装置2は、免震装置本体2aと、復帰機構としてのアクチュエータ2bと、によって構成されている。
【0022】
本実施形態に係る免震装置本体2aは、基礎と住宅Hの間、より厳密には上部基礎Fuと下部基礎Fdとの間に介在した滑り支承によって構成されている。この免震装置本体2aは、地震が発生したときに水平方向に変位することで地震の振動エネルギーを軽減する。なお、免震装置本体2aが水平方向に変位することに伴い、免震装置本体2aの上に載置される上部基礎Fu及び住宅Hが、免震装置本体2aを載せている下部基礎Fdに対して相対的に水平移動するようになる。
【0023】
ちなみに、本実施形態では、免震装置本体2aが滑り支承によって構成されていることとしたが、これに限定されるものではない。免震装置本体2aについては、積層ゴム支承や転がり支承等、水平方向に変位することで地震の振動エネルギーを軽減するものであれば制限なく利用可能である。
【0024】
アクチュエータ2bは、上部基礎Fuと下部基礎Fdとの間に介在した駆動装置によって構成されており、不図示の外部電源からの供給電力によって作動する。このアクチュエータ2bは、下部基礎Fd上に固定され状態で作動し、上部基礎Fu及び住宅Hを水平方向に押し引きする。そして、地震終了時点において免震装置本体2aに残留変位があるときにアクチュエータ2bが作動すると、基礎に対する住宅Hの相対位置(厳密には、下部基礎Fdに対する住宅Hの相対位置)が異常位置から通常位置に復帰するようになる。ここで、通常位置とは、住宅Hが基礎に対して正規の位置にて据え付けられた状態にあるときの相対位置であり、分かり易く言うと、地震発生前の相対位置である。一方、異常位置とは、通常位置から水平方向に幾分ずれた相対位置であり、厳密には、後述する免震センサ3がオフ状態となるときの相対位置である。
【0025】
なお、アクチュエータ2bについては、異常位置にある相対位置を通常位置に復帰させるために能動的に住宅Hを押し引きするものであればよく、公知の装置を採用することが可能である。このため、アクチュエータ2bの構成については説明を省略することとする。
【0026】
本システム1の機器構成について説明すると、本システム1は、
図1に示すように、センサとしての免震センサ3、コンピュータとしてのホームサーバ10、及び、情報報知装置としてのモニタ20を主要構成機器として有する。
【0027】
免震センサ3は、地震等による住宅Hの相対位置の変化を検知するものであり、住宅Hと基礎との間に設置されている。より具体的に説明すると、本実施形態に係る免震センサ3は、磁気センサ等の近接センサからなり、
図2の(a)及び(b)に示すように、下部基礎Fd側に取り付けられた強磁性体からなる被検出体3aと、上部基礎Fu側に取り付けられて被検出体3aを検出するセンサ素子3bとを有する。センサ素子3bは、
図2の(a)に示す位置(被検出体3aの幅方向中心とセンサ素子3bの幅方向中心とが一致する位置)から水平方向に所定量だけずれた位置までの範囲にあれば、被検出体3aを検出することが可能である。一方、センサ素子3bは、
図2の(b)に示すように水平方向へのずれ量が所定量を超えてしまうと、被検出体3aを検出不能となる。
【0028】
ここで、住宅Hの相対位置が通常位置にあるとき、免震センサ3の状態は、センサ素子3bが被検出体3aを検出可能な状態(以下、オン状態)にある。また、相対位置が異常位置にあるとき、免震センサ3の状態は、センサ素子3bが被検出体3aを検出不能な状態(以下、オフ状態)にある。そして、免震センサ3は、オン状態にあるとき(換言すると、住宅Hの相対位置が通常位置にあるとき)に第一信号としてのオン信号を出力する。他方、免震センサ3は、オフ状態にあるとき(換言すると、住宅Hの相対位置が異常位置にあるとき)には第二信号としてのオフ信号を出力する。
【0029】
さらに、本実施形態に係る免震センサ3は、その状態が変化したとき、すなわち、住宅Hの相対位置が通常位置及び異常位置の間で切り替わったときに、対応する信号を自動的に出力する構成となっている。さらにまた、本実施形態に係る免震センサ3は、ホームサーバ10からの信号出力要求を受け付けたときには、別途、信号を出力する構成となっている。なお、ホームサーバ10が免震センサ3に対して信号出力要求を送るタイミングについては、後に説明する。
【0030】
また、本システム1では、
図1に示すように、免震センサ3が水平方向において互いに異なる位置に配置されるように複数設けられている。これにより、地震が発生した際に複数の免震センサ3のうち、あるセンサの設置箇所を中心にして住宅Hが回動するように揺れるために上記あるセンサが相対位置の変化を検知し得なかったとしても、それ以外のセンサにて適切に相対位置の変化を検知することが可能となる。なお、
図1に示すケースでは、免震センサ3が2箇所に設置されていることとしたが、免震センサ3の個数については任意の数に設定することが可能である。
【0031】
ホームサーバ10は、サーバコンピュータ、より具体的にはホームゲートウェイによって構成されている。すなわち、ホームサーバ10は、HEMS(Home Energy Management System)を構築するために住宅H内に設置され、住宅Hに設けられた各種の通信機器と通信する。例えば、ホームサーバ10は、住宅Hに設けられた各種のセンサと通信し、当該センサからの信号(デジタル信号)を受信する。その後、ホームサーバ10は、センサから受信した信号を解析することで、センサの検知結果を特定し、また、その特定結果を住宅H内に居る人(すなわち、住宅Hの居住者)に報知する。
【0032】
ここで、ホームサーバ10が通信可能なセンサには、前述の免震センサ3が含まれている。すなわち、ホームサーバ10は、免震センサ3が出力する信号、具体的にはオン信号やオフ信号を受信する。なお、本実施形態に係るホームサーバ10は、通信プロトコルとしてECHONET(登録商標)を採用している。一方、本実施形態に係る免震センサ3は、オン信号及びオフ信号をJEM−A(登録商標)規格のモニタ信号として出力する。このため、本実施形態では、
図3に示すようにホームサーバ10と免震センサ3との間にアダプタ60を配置し、このアダプタ60において、JEM−A規格のモニタ信号である免震センサ3の出力信号がECHONET対応のデジタル信号へ変換されるようになっている。ただし、これに限定されるものではなく、免震センサ3がホームサーバ10と同じ通信規格にて信号を出力してもよく、かかる場合には当然ながらアダプタ60が不要となる。
【0033】
また、ホームサーバ10は、住宅Hに設けられた制御対象機器を遠隔制御するために、当該制御対象機器に向けて制御信号を送信する機能を有する。制御対象機器側でホームサーバ10からの制御信号が受信されると、当該制御対象機器の運転状態が制御信号に従って制御されるようになる。ここで、制御対象機器には前述のアクチュエータ2bが含まれている。すなわち、ホームサーバ10は、地震が終了した後にアクチュエータ2bを制御することで、異常位置にある住宅Hの相対位置を通常位置へ復帰させることが可能である。
【0034】
なお、本実施形態に係るアクチュエータ2bは、JEM−A規格の通信規格となっており、JEM−A端子にてホームサーバ10からの制御信号を受信する。一方、本実施形態に係るホームサーバ10は、前述したように通信プロトコルとしてECHONETを採用している。このため、本実施形態では、
図3に示すようにホームサーバ10とアクチュエータ2bとの間にアダプタ60を配置し、このアダプタ60において、ECHONET規格の信号としてホームサーバ10から送信された制御信号がJEM−A規格の制御信号へ変換されるようになっている。ただし、これに限定されるものではなく、アクチュエータ2bがホームサーバ10と同じ通信規格を採用していてもよく、かかる場合には当然ながらアダプタ60が不要となる。
【0035】
また、ホームサーバ10は、住宅Hの居住者に向けて所定の情報を通知する機能を有する。より具体的に説明すると、ホームサーバ10は、住宅Hの居住者に知らせるべき情報を住宅H内に設置されたモニタ20に報知(表示)させることで、当該情報を居住者に知らせる。ここで、モニタ20とは、ホームサーバ10と有線又は無線にて通信可能な表示器であり、具体的には、テレビ、パソコン、専用ディスプレイ、PDA(Personal Digital Assistant)、スマートフォン、携帯電話、通信機能付きの卓上フォトフレーム等によって構成されている。
【0036】
なお、ホームサーバ10がモニタ20に表示させる情報については、予めホームサーバ10内の記憶装置(例えば、ハードディスクドライブ)にデータとして記憶されていてもよく、あるいは、ホームサーバ10と通信可能に接続された記憶装置(例えば、外部サーバ)に記憶されていてもよい。
【0037】
ホームサーバ10の構成についてより詳しく説明すると、ホームサーバ10は、CPU、ROMやRAM等のメモリ、ハードディスクドライブ及び通信用インタフェースを有しており、ハードディスクドライブには免震装置管理用のプログラムが格納されている。そして、免震装置管理用プログラムがCPUに読み取られて実行されることにより、ホームサーバ10は、免震装置管理用の機器として機能するようになる。つまり、ホームサーバ10は、本システム1の中核的機能を担っており、平常時には免震装置2を監視し、地震発生時には免震装置2の作動状況を確認する。
【0038】
具体的に説明すると、ホームサーバ10は、免震装置2を管理するに際して免震センサ3の出力信号を受信する。一方、免震センサ3は、前述したように、その状態が切り替わると、対応する信号を自動的に出力する。つまり、免震センサ3は、住宅Hの相対位置が通常位置から異常位置へ変化した際にはオン状態からオフ状態に切り替わるためにオフ信号を出力するようになり、反対に、相対位置が異常位置から通常位置へ変化した際にはオフ状態からオン状態に切り替わるためにオン信号を出力するようになる。したがって、地震が発生した場合、免震センサ3は、地震期間(地震が継続している期間)中、オン信号及びオフ信号を交互に出力するようになる。これに伴って、ホームサーバ10は、地震期間中、オン信号及びオフ信号を交互に受信するようになる。
【0039】
そして、ホームサーバ10は、地震期間中、免震センサ3の出力信号を受信する度に、当該出力信号の受信時点における免震センサ3の状態がオン状態及びオフ状態のいずれであるかを示すデータを生成する。このデータは、免震センサ3が住宅Hの相対位置の変化を検知して出力される信号に基づいて生成されるものであり、以下、検知データと呼ぶ。なお、検知データの詳細については後の項で説明することとする。
【0040】
そして、検知データは、ホームサーバ10によって生成されると、その都度、
図3に図示の第1データベース30(図中、「第1DB」と表記)に記憶されて蓄積される。この第1データベース30は、蓄積部に相当し、ホームサーバ10とは別体をなすデータベースサーバによって構成されている。ただし、これに限定されるものではなく、ホームサーバ10に内蔵若しくは外付けされた記憶装置に検知データを蓄積させてもよい。
【0041】
また、地震期間中、ホームサーバ10は、前述したように免震センサ3からオン信号とオフ信号を交互に受信する。このため、ホームサーバ10は、地震期間中、免震センサ3の状態がオン状態であることを示す検知データ(すなわち、相対位置が通常位置であることを示すデータ)と、免震センサ3の状態がオフ状態であることを示す検知データ(すなわち、相対位置が異常位置であることを示すデータ)と、を交互に生成することになる。これに伴い、地震期間中、第1データベース30には、免震センサ3の状態がオン状態であることを示す検知データと、免震センサ3の状態がオフ状態であることを示す検知データと、が交互に蓄積されるようになる。
【0042】
また、地震が終了した後、ホームサーバ10は、免震装置2に備えられたアクチュエータ2bを遠隔制御し、アクチュエータ2bによって異常位置にある住宅Hの相対位置を通常位置に復帰させる。さらに、ホームサーバ10は、地震終了後、第1データベース30に蓄積された検知データのうち、地震期間中(厳密には、直近で発生した地震の継続期間中)に記憶されたデータを参照する。さらにまた、ホームサーバ10は、参照した検知データに基づき、地震期間中の免震センサ3の状態変化の履歴を示すデータを生成する。このデータは、その後にホームサーバ10が免震装置2の作動状況を判定するために用いるデータであり、以下、判定用データと呼ぶ。なお、判定用データの詳細については後の項で説明することとする。
【0043】
そして、判定用データは、ホームサーバ10によって生成されると、その都度、
図3に図示の第2データベース40(図中、「第2DB」と表記)に記憶されて蓄積される。この第2データベース40は、ホームサーバ10とは別体をなすデータベースサーバによって構成されている。ただし、これに限定されるものではなく、ホームサーバ10に内蔵若しくは外付けされた記憶装置に判定用データを蓄積させてもよい。
【0044】
判定用データが第2データベース40に蓄積された後、ホームサーバ10は、第2データベース40に蓄積された判定用データのうち、直近のデータを参照する。そして、ホームサーバ10は、参照した判定用データに基づいて、地震期間中に免震装置2が正常に作動したか否かを判定すると共に、地震終了後に住宅Hの位置が通常位置へ正常に復帰したか否かを判定する。
【0045】
その後、ホームサーバ10は、上記の判定における結果に応じた情報をモニタ20に表示する。かかる情報は、地震期間中に免震装置2が作動することで住宅Hの相対位置が変化した際に住宅H内に居る居住者に知らせるべき情報に相当する。そして、情報が表示されたモニタ20を見ることで、住宅Hの居住者は、地震期間中に免震装置2が正常に作動したかどうか、並びに、地震終了後に住宅Hの位置が通常位置へ正常に復帰したかどうかを確認するようになる。なお、本実施形態では、判定結果に応じた情報として所定の文字情報をモニタ20に表示することとしている。ただし、これに限定されず、音、光又は振動等を用いて上記の情報を通知してもよい。
【0046】
以上までに説明してきたように、地震が発生した際、ホームサーバ10は、免震センサ3の状態が変化する度に出力される信号を免震センサ3から受信し、その信号から生成されるデータ(検知データ及び判定用データ)に基づいて免震装置2の作動状況等を判定し、その判定結果をモニタ20にて報知する。なお、判定結果については、住宅H内に設置されたモニタ20に表示する他、データ化して住宅H外の端末、例えば住宅Hの管理会社が保有するコンピュータに向けて送信してもよい。
【0047】
ところで、免震センサ3は、状態が切り替わった際に信号を自動出力すると共に、ホームサーバ10からの信号出力要求を受け付けた際には別途、信号を出力する。より詳しく説明すると、ホームサーバ10は、平常時(地震が発生していないとき)に免震センサ3に対して定期的に信号出力要求を送る。なお、本実施形態では、所定時間毎(例えば20秒毎)にホームサーバ10から免震センサ3に対して信号出力要求が送られることになっている。ただし、信号出力要求の送信間隔については、特に制限されるものではなく、任意の時間に設定することが可能である。
【0048】
ホームサーバ10から定期的に信号出力要求が送られるのに対し、免震センサ3は、要求に応じて、オン信号及びオフ信号のうち、要求を受けた時点でのセンサ状態(換言すると、その時点での住宅Hの相対位置)と対応する信号を定期的に出力する。したがって、ホームサーバ10は、平常時に免震センサ3の出力信号を一定時間毎(20秒毎)に受信することになる。
【0049】
そして、ホームサーバ10は、平常時に定期的に免震センサ3から出力される信号を受信する度に、当該出力信号の受信時点における免震センサ3の状態がオン状態及びオフ状態のいずれであるかを示すデータを生成する。このデータは、免震センサ3の状態を監視するために用いられるものであり、以下、監視用データと呼ぶ。なお、監視用データの詳細については後の項で説明することとする。
【0050】
そして、監視用データは、ホームサーバ10によって生成されると、その都度、
図3に図示の第3データベース50(図中、「第3DB」と表記)に記憶されて蓄積される。この第3データベース50は、蓄積部に相当し、ホームサーバ10とは別体をなすデータベースサーバによって構成されている。ただし、これに限定されるものではなく、ホームサーバ10に内蔵若しくは外付けされた記憶装置に監視用データを蓄積させてもよい。なお、本実施形態では、第3データベース50並びに既出の第1データベース30及び第2データベース40が互いに異なる機器(データベースサーバ)によって構成されているが、これに限定されず、同一機器によって上記3つのデータベースが構成されていてもよい。
【0051】
平常時、第3データベース50に監視用データが定期的に記憶されて蓄積される一方で、ホームサーバ10は、第3データベース50に順次蓄積される監視用データを参照する。そして、ホームサーバ10は、参照した監視用データに基づいて免震装置2の異常の有無を判定する。その後、ホームサーバ10は、上記の判定における結果に応じた情報をモニタ20に表示する。かかる情報は、平常時に何らかの理由にて免震装置2が作動して住宅Hの相対位置が変化した際に住宅H内に居る居住者に知らせるべき情報に相当する。そして、情報が表示されたモニタ20を見ることで、住宅Hの居住者は、免震装置2が正常な状態にあるかどうか(すなわち、住宅Hの相対位置を通常位置にて保持している状態にあるかどうか)を確認するようになる。
【0052】
以上までに説明してきたように、ホームサーバ10は、平常時、免震センサ3に対して定期的に信号出力要求を送る。そして、ホームサーバ10は、免震センサ3が要求に応じて出力する信号を受信し、その信号から生成されるデータ(監視用データ)に基づいて免震装置2の異常の有無を判定し、その判定結果をモニタ20にて報知する。なお、判定結果については、住宅H内に設置されたモニタ20に表示する他、データ化して住宅H外の端末、例えば住宅Hの管理会社が保有するコンピュータに向けて送信してもよい。
【0053】
また、本実施形態に係るホームサーバ10は、免震センサ3に対して定期的に信号出力要求を送る他、下記の場合にも信号出力要求を送ることになっている。ただし、信号出力要求の送信タイミングについては、下記の場合に限定されず、任意のタイミングにて信号出力要求を送ることとしてもよい。
(1)地震等によって停電が発生し、その後に電力供給が再開されたとき
(2)通信エラーが生じ、その後に通信可能状態に復帰したとき
(3)免震センサ3の出力信号を受信できなくなり、その後に正常状態に復帰したとき
(4)ユーザである住宅Hの居住者が免震センサ3の現在の状態を確認するために行う操作を受け付けたとき
【0054】
次に、既に説明したホームサーバ10の構成について、機能面から改めて説明することとする。ホームサーバ10は、
図4に示すように、信号受信部11、データ生成部12、報知処理実行部13及び復帰処理実行部14を有する。
図4は、ホームサーバ10の構成を機能面から示した図である。
【0055】
信号受信部11は、免震センサ3が出力した信号を、アダプタ60を介して受信するものであり、ホームサーバ10のCPU、メモリ、ハードディスクドライブ及び通信用インタフェースが免震装置管理用プログラムと協働することによって実現される。より具体的に説明すると、地震が発生した場合、免震センサ3からオン信号とオフ信号とが交互に出力されるため、信号受信部11は、オン信号及びオフ信号の双方を交互に受信することになる。一方、平常時、信号受信部11は、免震センサ3に対して信号出力要求を定期的に送る。これに応じて免震センサ3がオン信号及びオフ信号のうち、要求を受けた時点でのセンサ状態と対応した信号を出力する。この結果、信号受信部11は、平常時に免震センサ3の出力信号を定期的に受信することになる。
【0056】
データ生成部12は、前述した検知データ、判定用データ及び監視用データを生成し、それぞれのデータを対応するデータベースに記憶(蓄積)させるものである。なお、データ生成部12は、ホームサーバ10のCPU、メモリ、ハードディスクドライブ及び通信用インタフェースが免震装置管理用プログラムと協働することによって実現される。
【0057】
以下、データ生成部12によって生成される各種のデータについて
図5を参照しながら説明する。
図5は、データ生成部12によって生成されるデータであり、図中の(a)は、検知データを示し、図中の(b)は、判定用データを示し、図中の(c)は、監視用データを示している。
【0058】
検知データは、地震発生時に信号受信部11がオン信号及びオフ信号を交互に受信している間、受信した信号毎に生成されるデータである。この検知データは、
図5の(a)に示すように、各信号の受信時刻及び当該各信号の受信時での免震センサ3の状態を示している。ここで、免震センサ3の状態は、住宅Hの相対位置が通常位置であるか異常位置であるかに応じて変化するものである。したがって、検知データは、各信号の受信時点での相対位置が通常位置及び異常位置のいずれであるかを示すデータであると言える。なお、検知データは、新たに生成される都度、第1データベース30に記憶されて同データベースに蓄積される。
【0059】
判定用データは、地震終了後にデータ生成部12が第1データベース30に蓄積された検知データ中、直近の地震期間中に蓄積されたデータを読み出し、これらのデータを集計することで生成されるデータである。すなわち、判定用データは、直近の地震期間中において信号受信部11が免震センサ3の出力信号を受信した際の受信履歴を示すデータである。
【0060】
判定用データは、
図5の(b)に示すように、直近の地震期間において信号受信部11が最初に免震センサ3の出力信号を受信した時刻(すなわち、免震装置2の作動開始時刻)、直近の地震期間の終了直後に免震センサ3の出力信号を受信した時刻(すなわち、免震装置2の作動終了時刻)を示している。また、判定用データは、直近の地震期間中における信号受信回数(すなわち、センサ状態の切替回数)を示している。さらに、判定用データは、直近の地震期間の終了直後に免震センサ3の出力信号を受信した時点でのセンサ状態(以下、終了時点でのセンサ状態)を示している。この終了時点でのセンサ状態は、直近の地震期間の終了直後に第1データベース30に蓄積された検知データ(以下、直近の検知データ)から特定される。
【0061】
なお、本実施形態では、地震期間の終了直後に検知データ(すなわち、直近の検知データ)が生成されて第1データベース30に蓄積された後に、判定用データが生成されることになっている。より詳しく説明すると、信号受信部11が免震センサ3からオン信号及びオフ信号の双方を交互に受信している期間中、最後に受信した信号についての検知データが第1データベース30に蓄積される。かかる時点から所定時間が経過するまでの間に新たな検知データが蓄積されないとき、データ生成部12は、第1データベース30から直近の地震期間中に取得された検知データを読み出して判定用データを生成するようになる。そして、生成された判定用データは、第2データベース40に記憶され同データベースに蓄積される。
【0062】
監視用データは、平常時に信号受信部11が定期的に免震センサ3の出力信号を受信している間、受信した信号毎に生成されるデータである。この監視用データは、
図5の(c)に示すように、各信号の受信時刻及び当該各信号の受信時での免震センサ3の状態を示している。ここで、免震センサ3の状態は、住宅Hの相対位置が通常位置であるか異常位置であるかに応じて変化するものである。したがって、監視用データは、各信号の受信時点での相対位置が通常位置及び異常位置のいずれであるかを示すデータであると言える。なお、監視用データは、新たに生成される都度、第3データベース50に記憶されて同データベースに蓄積される。
【0063】
ちなみに、上述した3種類のデータは、いずれもモニタ20に表示させることが可能である。つまり、ホームサーバ10は、各データベースに蓄積されたデータ(検知データ、判定用データ及び監視用データ)の各々を読み出し、当該データが示す内容をモニタ20に表示させる機能を有する。これにより、住宅Hの居住者は、モニタ20を通じて、免震装置2の作動状況や異常の有無に関する過去のログ(履歴)を確認することが可能である。
【0064】
報知処理実行部13は、報知処理を実行するものであり、ホームサーバ10のCPU、メモリ、ハードディスクドライブ及び通信用インタフェースが免震装置管理用プログラムと協働することによって実現される。報知処理とは、各データベースに蓄積されたデータに応じて所定の情報をモニタ20に報知(表示)させる処理である。ここで、所定の情報とは、免震装置2によって相対位置が変化した際に住宅H内に居る居住者に知らせるべき情報のことであり、具体的には、免震装置2の作動状況や同装置の異常に関する情報である。
【0065】
報知処理について具体的に説明すると、地震が発生した場合、報知処理実行部13は、地震終了後に第2データベース40に蓄積された判定用データを読み出し、当該データに基づき、地震期間中の免震装置2の作動状況等を判定する。その後、報知処理実行部13は、判定結果に応じた情報をモニタ20に表示させる報知処理を実行する。すなわち、地震終了後に実行される報知処理では、第2データベース40に蓄積された判定用データ(厳密には、直近で記憶された判定用データ)を読み出し、当該判定用データが示す内容に応じて決まる情報をモニタ20に表示することになる。一方、判定用データは、前述したように、第1データベース30に蓄積された検知データ(厳密には、直近の地震期間の開始時から当該地震期間の終了直後までの間に蓄積された検知データ)に基づいて生成される。かかる意味で、地震終了後に実行される報知処理では、第1データベース30に蓄積された検知データに応じて決まる情報がモニタ20に表示されることになると言える。
【0066】
一方、平常時において、報知処理実行部13は、第3データベース50に蓄積された監視用データのうち、信号受信部11が最後に免震センサ3の出力信号を受信したときに生成されたデータを読み出す。その後、報知処理実行部13は、読み出した監視用データに基づき、免震センサ3の現在のセンサ状態を判定する。そして、報知処理実行部13は、判定結果に応じた情報をモニタ20に表示させる報知処理を実行する。すなわち、平常時には、第3データベース50に蓄積された監視用データ(厳密には、最後に記憶された監視用データ)を読み出し、当該監視用データが示す内容に応じて報知処理を実行することになる。
【0067】
復帰処理実行部14は、復帰処理を実行するものであり、ホームサーバ10のCPU、メモリ、ハードディスクドライブ及び通信用インタフェースが免震装置管理用プログラムと協働することによって実現される。復帰処理とは、免震装置2に備えられたアクチュエータ2bを遠隔制御し、住宅Hの相対位置が異常位置にあるときにアクチュエータ2bによって相対位置を通常位置へ復帰させる処理である。本実施形態において、復帰処理実行部14は、地震が発生した場合において当該地震の終了後に復帰処理を実行する。
【0068】
具体的に説明すると、地震発生時には、前述したように、免震センサ3のセンサ状態がオン状態であることを示す検知データと、センサ状態がオフ状態であることを示す検知データと、が交互に第1データベース30に蓄積される。一方、復帰処理実行部14は、第1データベース30に直前の検知データが蓄積されてから予め設定された設定時間が経過するまで待機する。そして、第1データベース30において上記の設定時間内に新たな検知データが蓄積されない場合、復帰処理実行部14は、復帰処理を実行する。
【0069】
以上のように本システム1では地震が収まってから復帰処理実行部14が復帰処理を実行するので、地震期間中にアクチュエータ2bを作動させるような状況を回避し、適正な免震装置2の利用を図ることが可能となる。また、本システム1では、免震センサ3の出力信号を受信することで得られるデータ、すなわち検知データのみによって地震の終了を判断する。これにより、加速度センサ等の高価な機器を用いなくとも、より簡単な構成にて地震の開始や終了を判断することが可能となる。
【0070】
次に、本システム1による免震装置管理フローについて説明する。なお、以下に説明する免震装置管理フローは、本発明の免震装置管理方法を適用したものである。すなわち、以下に説明する免震装置管理フロー中の各ステップは、本発明の免震装置管理方法を構成する各工程に相当することになる。
【0071】
本システム1による免震装置管理フローは、大きく2つのタイプに分かれる。そのうちの一つは、地震が発生したときに行われるフローであり、以下では、地震発生時フローと呼ぶこととする。もう一つは、平常時に行われるフローであり、以下では、平常時フローと呼ぶこととする。以下、それぞれのフローについて
図6乃至11を参照しながら説明する。
図6は、地震発生時フローの流れを示す図である。
図7及び
図8は、地震発生時フローの中で実行される報知処理において報知される情報を示す図である。
図9は、後述する非常時マニュアルの表示例を示す図である。
図10は、平常時フローの流れを示す図である。
図11は、平常時フローの中で実行される報知処理において報知される情報を示す図である。
【0072】
<地震発生時フロー>
地震発生時フローは、地震が発生することで住宅Hの相対位置が変化し、これに伴って免震センサ3のセンサ状態が切り替わって変化後の状態に対応した信号を出力するところから開始される。すなわち、地震発生時フローは、任意のタイミング(厳密には、平常時に免震センサ3が定期的に信号を出力するタイミングとは異なるタイミング)にて免震センサ3が信号を出力した際、これをトリガーとして開始される。
【0073】
以降、地震発生時フローは、
図6に示す流れに従って進行する。具体的に説明すると、ホームサーバ10は、免震センサ3の出力信号を受信すると、受信した信号に基づいて検知データを生成する(S001、S002)。そして、ホームサーバ10は、生成した検知データを第1データベース30に記憶し同データベースに蓄積させる(S003)。
【0074】
なお、地震期間中、免震センサ3は、オン信号及びオフ信号の双方を交互に出力する。このため、地震期間中、ホームサーバ10は、オン信号及びオフ信号の双方を交互に受信することになる。これに伴って、第1データベース30には、免震センサ3のセンサ状態がオン状態であることを示す検知データと、センサ状態がオフ状態であることを示す検知データと、が交互に蓄積されることになる。
【0075】
一方、地震期間の終了後、ホームサーバ10(具体的には復帰処理実行部14)が復帰処理を実行する。より具体的に説明すると、センサ状態がオン状態であることを示す検知データと、センサ状態がオフ状態であることを示す検知データと、が交互に第1データベース30に蓄積されている期間中、直前の検知データが第1データベース30に蓄積された後、ホームサーバ10は、予め設定された設定時間が経過するまで待機する(S004)。なお、本実施形態では上記の設定時間が数分間に設定されているが、これに限定されるものではなく、任意の時間に設定することが可能である。
【0076】
そして、上記の設定時間内に新たな検知データが第1データベース30に蓄積されなかった場合、ホームサーバ10は、復帰処理を実行してアクチュエータ2bを遠隔制御する(S005)。このとき、アクチュエータ2bが正常であれば、住宅Hの相対位置が異常位置から通常位置に復帰するようになる。また、これに伴い、免震センサ3の状態がオフ状態からオン状態に切り替わるため、免震センサ3からオン信号が送信されることになる(S006でYes)。かかる場合、ホームサーバ10は、上記のオン信号を受信して、センサ状態がオン状態であることを示す検知データを生成し、当該検知データを第1データベースに蓄積するようになる(S007、S008)。すなわち、アクチュエータ2bによって相対位置が正常に通常位置へ復帰した場合、直前の検知データは、免震センサ3の状態がオン状態であることを示すデータとなる。
【0077】
一方、アクチュエータ2bが正常に作動しない場合、住宅Hの相対位置が異常位置のままで維持されるようになる。したがって、アクチュエータ2bの故障等により相対位置が通常位置に復帰されない場合には、直前の検知データは、免震センサ3の状態がオフ状態であることを示すデータとなる。
【0078】
その後、ホームサーバ10は、直前のデータが第1データベース30に蓄積されてから所定時間が経過するまで待機する(S009)。かかる待機時間については、任意の時間に設定することができるが、本実施形態では数分間(具体的には3分間)に設定されている。
【0079】
そして、上記の待機時間が経過するまでの間に新たな検知データが第1データベース30に蓄積されなかった場合、ホームサーバ10は、第1データベース30に蓄積された検知データのうち、直近の地震期間中に蓄積されたデータ(直近の検知データを含む)を読み出す。その上で、ホームサーバ10は、読み出した検知データを集計して判定用データを生成する(S010)。さらに、ホームサーバ10は、生成した判定用データを第2データベース40に記憶し同データベースに蓄積させる(S011)。
【0080】
その後、ホームサーバ10は、第2データベース40に蓄積された判定用データのうち、直近のデータを参照する。また、ホームサーバ10は、参照した判定用データが示す内容のうち、終了時点でのセンサ状態がオフ状態であるかどうかを判定する(S012)。そして、終了時点でのセンサ状態がオフ状態でなくオン状態であると判定したとき(S012でNo)、ホームサーバ10(具体的には報知処理実行部13)は、第1メッセージをモニタ20に表示させる報知処理を実行する(S013)。ここで、第1メッセージとは、地震期間中に免震装置2が作動し地震終了後には住宅Hの相対位置が通常位置に復帰したことを住宅H内の居住者に通知するための情報であり、例えば、
図7に図示した文字情報である。
【0081】
これに対して、終了時点でのセンサ状態がオフ状態であると判定したとき(S012でYes)、ホームサーバ10(具体的には報知処理実行部13)は、第2メッセージをモニタ20に表示させる報知処理を実行する(S014)。ここで、第2メッセージとは、地震期間中には免震装置2が作動したものの地震終了後には住宅Hの相対位置が異常位置のままで復帰されないことを住宅H内の居住者に通知するための情報であり、例えば、
図8に図示した文字情報である。
【0082】
なお、ホームサーバ10が第2メッセージをモニタ20に表示させるケースは、前述したように、終了時点でのセンサ状態がオフ状態であると判定したケースである。また、かかるケースは、第1データベース30に蓄積された検知データのうち、直近のデータ(換言すると、ホームサーバ10が免震センサ3からオン信号及びオフ信号を交互に受信している期間において最後に信号を受信したときの検知データ)が、センサ状態がオフ状態であることを示すデータになったケースに該当する。
【0083】
そして、上記一連のステップが終了した時点で地震発生時フローが終了する。以上までに説明してきたように、地震発生時フローによれば、地震によって免震装置2が作動して住宅Hの相対位置が変化したときに、そのことを住宅H内に居る居住者に確実に知らせることが可能である。また、地震終了時点での相対位置が異常位置にあるとき、つまり、免震装置2の故障等により相対位置が通常位置に復帰していないときには、そのことを住宅H内の居住者に確実に知らせることが可能である。以上の結果、住宅H内の居住者は、地震終了後に適切な対処方法を講じることが可能となり、特に免震装置2に異常が有る場合には然るべき対応策を講じることで適切に免震装置2を管理することが可能となる。
【0084】
なお、本実施形態では、地震期間中に免震装置2が作動したかどうか、及び、地震終了時点で相対位置が通常位置に復帰したかどうかを判定するにあたり、第1データベース30に蓄積された検知データから判定用データを生成することとした。そして、本実施形態では、判定用データに基づいて上記の判定を行うこととした。ただし、これに限定されるものではなく、判定用データを生成せず検知データに基づいて上記の判定を行ってもよい。
【0085】
また、本実施形態では、第1データベース30に直前の検知データが蓄積されてから所定時間が経過するまでの間に新たな検知データが蓄積されないとき、つまり、住宅Hの揺れが収まったときに第1メッセージ又は第2メッセージがモニタ20に表示されることになっている。これにより、住宅H内の居住者は、地震終了後に免震装置2の作動状況や住宅Hの相対位置の復帰状況を確実に知り、その上で適切な対処方法を講じることが可能となる。
【0086】
ちなみに、本実施形態では、
図7及び8に示すように、モニタ20に第1メッセージ又は第2メッセージが表示されている間、これらのメッセージと併せて非常時マニュアル表示ボタンBが表示される。この非常時マニュアル表示ボタンBが住宅H内の居住者によってクリックされると、かかるクリック操作を受け付けた不図示の入力装置からホームサーバ10に向けてマニュアル表示指令が送られるようになる。そして、マニュアル表示指令を受け付けたホームサーバ10は、非常時マニュアルのデータを読み出して同データを展開する。これにより、
図9に示すように、非常時マニュアルがモニタ20に表示されるようになる。
【0087】
以上のように本実施形態では、地震後に第1メッセージ又は第2メッセージが表示されたモニタ20において非常時マニュアル表示ボタンBをクリックするだけで、同モニタ20に非常時マニュアルを表示させることが可能である。これにより、住宅H内に居る居住者は、モニタ20にて第1メッセージ又は第2メッセージを確認した後、同モニタ20にて非常時マニュアルを閲覧することができるため、簡単且つ簡便に非常時マニュアルを利用することが可能となる。
【0088】
<平常時フロー>
平常時フローは、平常時(すなわち、地震が発生していない期間)に継続して行われ、
図10に示す流れに従って進行する。具体的に説明すると、ホームサーバ10は、平常時、免震センサ3に対して定期的に信号出力要求を送信する。これに対して、免震センサ3は、要求に応じて定期的に信号を出力する。ここで、免震センサ3が出力する信号は、オン信号及びオフ信号のうち、ホームサーバ10から信号出力要求を受けた時点でのセンサ状態に対応する信号である。
【0089】
そして、ホームサーバ10は、免震センサ3が定期的に出力する信号を受信し、受信した信号に基づいて監視用データを生成する(S021、S022)。その後、ホームサーバ10は、生成した監視用データを第3データベース50に記憶し同データベースに蓄積させる(S023)。
【0090】
さらに、ホームサーバ10(具体的には報知処理実行部13)は、第3データベース50に蓄積された監視用データのうち、最後に蓄積されたデータを参照する。そして、ホームサーバ10は、参照した監視用データが示すセンサ情報がオフ状態であるかどうかを判定する(S024)。ここで、参照した監視用データが示すセンサ情報がオフ状態でなくオン状態であると判定した場合(S024でNo)、ホームサーバ10は、一定時間(本実施形態では20秒)が経過する度に(S026)、上述したステップS021〜S024を繰り返し行うようになる。
【0091】
これに対して、参照した監視用データが示すセンサ状態がオフ状態であると判定した場合(S024でYes)、ホームサーバ10(具体的には報知処理実行部13)は、第3メッセージをモニタ20に表示させる報知処理を実行する(S025)。ここで、第3メッセージとは、住宅Hの相対位置が異常位置にある状態でアクチュエータ2bが停止していることを住宅H内の居住者に通知するための情報であり、例えば、
図11に図示した文字情報である。
【0092】
以上までに説明してきたように、平常時フローによれば、免震装置2に異常が生じたために住宅Hの相対位置が異常位置のままで維持されている場合に、そのことを住宅H内に居る居住者に確実に知らせることが可能である。この結果、住宅H内の居住者は、免震装置2に異常が生じたときに適切な対処方法を講じることが可能となり、以て免震装置2を適切に管理することが可能となる。