特許第6080898号(P6080898)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6080898
(24)【登録日】2017年1月27日
(45)【発行日】2017年2月15日
(54)【発明の名称】シャープペンシル
(51)【国際特許分類】
   B43K 21/00 20060101AFI20170206BHJP
   B43K 21/027 20060101ALI20170206BHJP
   B43K 21/16 20060101ALI20170206BHJP
【FI】
   B43K21/00 F
   B43K21/027 Z
   B43K21/16 W
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-109894(P2015-109894)
(22)【出願日】2015年5月29日
(65)【公開番号】特開2016-221814(P2016-221814A)
(43)【公開日】2016年12月28日
【審査請求日】2015年6月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108328
【氏名又は名称】ゼブラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】月岡 之博
【審査官】 宮本 昭彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−001091(JP,A)
【文献】 特開2000−135723(JP,A)
【文献】 世界初のシャープペン『デルガード』,ゼブラ株式会社,2014年10月 7日,URL,http://www.zebra.co.jp/press/news/2014/1007.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 21/00 − 21/26
B43K 24/00 − 24/18
B43K 27/00 − 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒の前端側に、鉛芯から受ける軸筒径外方向の力により軸筒及び鉛芯に相対し前進するスライダーを具備し、鉛芯を前記スライダー前側の芯挿通孔の内壁面に摺接させながら前方へ繰り出すようにしたシャープペンシルにおいて、
前記芯挿通孔の前端側に、芯挿通孔内の後方へ向かって角部のない凸曲面状に縮径する面取り部を設けたことを特徴とするシャープペンシル。
【請求項2】
前記芯挿通孔の後端側に、芯挿通孔内の前方へ向かって角部のない凸曲面状に縮径する面取り部を設けたことを特徴とする請求項1記載のシャープペンシル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸筒の前端から鉛芯を繰出すようにしたシャープペンシルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の発明には、特許文献1に記載のもののように、軸筒(1)と、該軸筒の前端側で所定量スライドするスライダー(14)と、該スライダー内に固定されるとともに鉛芯を挿通した芯保護管(16)とを備え、鉛繰出し機構により繰り出される鉛芯を前記芯保護管(16)に挿通して前方へ突出させるようしたシャープペンシルがある。なお、前記括弧内の数字は特許文献1における符号を示す。
ところで、前記のような従来のシャープペンシルにおいては、筆記時に、鉛芯に対し軸筒後方への力が加わるとともに径方向の力も加わるため、鉛芯の外周面が芯保護管(16)内における芯挿通孔の前端の角部分に押し付けられて削られたり、このことに起因して鉛芯が折れ易くなったりする場合がある。また、鉛芯が芯保護管(16)に挿入される際に、鉛芯の外周面が芯挿通孔の後端の角部分に擦れて削れたり、落下衝撃に起因して鉛芯が外周部を芯挿通孔前後の角部分に当接させて折れたり等するおそれもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−39081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来事情に鑑みてなされたものであり、その課題とする処は、鉛芯の外周部が削れたり鉛芯が折れたりするのを低減することができるシャープペンシルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための一手段は、軸筒の前端側に、鉛芯から受ける軸筒径外方向の力により軸筒及び鉛芯に相対し前進するスライダーを具備し、鉛芯を前記スライダー前側の芯挿通孔の内壁面に摺接させながら前方へ繰り出すようにしたシャープペンシルにおいて、前記芯挿通孔の前端側に、芯挿通孔内の後方へ向かって角部のない凸曲面状に縮径する面取り部を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、以上説明したように構成されているので、鉛芯の外周部が削れたり鉛芯が折れたりするのを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係るシャープペンシルの一例を示す縦断面図である。
図2】同シャープペンシルの先口を示す縦断面図である。
図3】同シャープペンシルによる筆記状態を示す要部縦断面図である。
図4】先口の他例を示す縦断面図である。
図5】本発明に係るシャープペンシルの他例を示す要部縦断面図である。
図6】同シャープペンシルのスライダーを示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施の形態の特徴の一つは、鉛芯を軸筒前側の芯挿通孔の内壁面に摺接させながら繰り出すようにしたシャープペンシルにおいて、前記芯挿通孔の端部側に、芯挿通孔内へ向かって縮径する面取り部を設けた。
ここで、前記「芯挿通孔の端部側」には、前記芯挿通孔の前端側と後端側の双方を含む。
前記構成によれば、芯挿通孔の端部に擦れて鉛芯が削れたり折れやすくなったりするのを低減することができる。
【0009】
他の特徴としては、鉛芯の削れをより効果的に低減するために、前記面取り部を、芯挿通孔内へ向かって凸曲面状に縮径するように形成した(図2及び図6参照)。
【0010】
他の特徴としては、特に筆記時に鉛芯に加わる径方向の力により鉛芯の削れや芯折れが生じるのを低減するために、前記面取り部を、前記芯挿通孔の前端側に設けた(図3参照)。
【0011】
さらに、他の特徴としては、軸筒の前端側に、鉛芯から受ける軸筒径外方向の力により軸筒及び鉛芯に相対し前進するスライダーを具備したシャープペンシルであって、前記スライダーに前記芯挿通孔を設けるとともに、この芯挿通孔の端部側に前記面取り部を設けた(図5及び図6参照)。
【実施例】
【0012】
次に、上記特徴を有する好ましい実施例を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明に係るシャープペンシルの一例を示す。
このシャープペンシルAは、軸筒10と、該軸筒10内に収容された鉛芯繰出し機構20とを備え、軸筒10内の鉛芯1を、鉛芯繰出し機構20の動作により前進させ、軸筒10前端側の芯挿通孔12aの内壁面に摺接させながら、該芯挿通孔の前方へ繰り出す。
【0014】
軸筒10は、前軸及び後軸からなる長尺円筒状の軸筒本体11と、該軸筒本体の前端側に接続された先口部12とを具備する。
なお、図示例の軸筒10は、軸筒本体11を前軸及び後軸等の複数の筒状部材から構成し、これらの前端側に先口部12を着脱可能に接続しているが、この軸筒10の他例としては、単一の部材とすることも可能である。
【0015】
鉛芯繰出し機構20は、外部からの操作により芯タンク21内の鉛芯1を前進させて先口部12の前方へ繰り出す機構である。
図示例の鉛芯繰出し機構20は、軸筒10の後端から後方へ突出するノック部22のノック操作により、チャック23に挟持された鉛芯1を該チャック23の前方へ繰り出すようにした周知の機構である。
この鉛芯繰出し機構20は、外部から受ける操作により鉛芯1を繰出すようにした機構であればよく、例えば、軸筒側面に設けられるボタンを押す操作により鉛芯1を繰出すようにした機構や、当該軸筒全体を振る操作により鉛芯1を繰出すようにした機構、芯タンクの後端側を回転させる操作により鉛芯1を繰り出すようにした機構等に置換することも可能である。
【0016】
先口部12は、先細な略円錐筒状に形成され、その中心部の前端側に、芯挿通孔12aを有し、芯挿通孔12aよりも後側に、チャック23から繰り出される鉛芯1を弾性的に保持する芯ブレーカ24を嵌合している。
【0017】
芯挿通孔12aは、先口部12の最前端側で鉛芯1の外周面に対し近接又は接触する長尺円筒状の孔である。
この芯挿通孔12aの前端側には、後方へ向かって縮径された前側面取り部12a1が形成される。また、同芯挿通孔12aの後端側には、前方へ向かって縮径された後側面取り部12a2が形成される。
【0018】
前側面取り部12a1は、先口部12の前端面と、芯挿通孔12a内周面との交差部分において、後方へ向かって芯挿通孔12aを縮径する凸曲面状に形成される。
【0019】
また、後側面取り部12a2は、先口部12内における芯挿通孔12aよりも後ろ側の鉛芯導入面12bと、芯挿通孔12a内周面との交差部分において、前方へ向かって芯挿通孔12aを縮径する凸曲面状に形成される。
なお、鉛芯導入面12bは、鉛芯繰出し機構20により前進する鉛芯1を芯挿通孔12a内へ導きいれるようにした先細円錐状の面である。
【0020】
次に、上記構成のシャープペンシルAについて、その特徴的な作用効果を詳細に説明する。
鉛芯繰出し機構20の動作により鉛芯1が前進すると、この鉛芯1の前端部は、鉛芯導入面12bによって軸筒中心寄りに矯正されながら更に前進し、凸曲面状の後側面取り部12a2内を通過して、芯挿通孔12a内へ挿入される。したがって、従来技術のように鉛芯1の外周部が芯挿通孔後端の角部等に擦れることがなく、鉛芯1の外周部が削れるのを防止することができる。
【0021】
また、鉛芯1の前端部が芯挿通孔12aの前端部よりも前方に突出した状態で筆記が行われた場合(図3参照)は、鉛芯1の前端側に後方及び径外方向の力が加わり、鉛芯1の外周部が芯挿通孔12a内周面の前端側に押し付けられるが、芯挿通孔12a内周面の前端側には凸曲面状の前側面取り部12a1を有するため、従来技術のように鉛芯1の外周部が角部等に当たったり擦れたりすることがなく、鉛芯1の外周部が削れたり芯折れが生じたりするのを低減することができる。
また、落下衝撃等に起因して鉛芯1に径方向の比較的強い力が作用した場合も、芯挿通孔12a内周壁の前後端側に角部がないため、鉛芯1の外周部が角部等に押圧されて削れたり折れたりするようなことがない。
よって、上記構成のシャープペンシルAによれば、鉛芯1の繰り出し操作中や、筆記時、落下衝撃を受けた際等に、芯削れや芯折れが生じるのを防ぐことができる。
【0022】
なお、上記構成のシャープペンシルAでは、鉛芯の外周部が削れたり鉛芯が折れたりするのを効果的に防止する好ましい態様として、前側面取り部12a1及び後側面取り部12a2を凸曲面状に形成したが、他例としては、先口部12を図4に示す先口部12’に置換することも可能である。この先口部12’では、芯挿通孔12aの前端側と後端側に、それぞれ、全周にわたるC面取り状の前側面取り部12a1’と後側面取り部12a2’を有する。
この他例においても、C面取り状の前側面取り部12a1’及び後側面取り部12a2’によって鉛芯1の削れや折れを低減することができる。
【0023】
次に、第2の実施例であるシャープペンシルBについて説明する(図5及び図6参照)。
このシャープペンシルBは、軸筒30の前端側に、鉛芯1から受ける軸筒径外方向の力により軸筒30及び鉛芯1に相対し前進するスライダー40を具備し、スライダー40内の前端側に上述したものと同様の芯挿通孔12aを有する。
【0024】
軸筒30は、単数もしくは複数の部材から長尺筒状に形成され、その前端側の開口縁31から、内部に収納したスライダー40の前端側を突出させている。
【0025】
スライダー40は、略円筒状の部材であり、その外周部にカム斜面41を有し、内周部の前端側に芯挿通孔12aを有する。
【0026】
カム斜面41は、前方へ向かって拡径する円錐状に形成され、前述した開口縁31に摺接するように配置されている。
【0027】
芯挿通孔12aは、スライダー40内の前端側に配置され、上述したシャープペンシルAのものと同様に、前端側と後端側に、それぞれ、前側面取り部12a1と後側面取り部12a2を有する。
【0028】
前記構成のスライダー40は、カム斜面41を軸筒30前端の開口縁31に摺接させて前方斜め径外方向へ移動可能に保持されるとともに、通常状態においては軸筒30内の付勢部材51(図示例によればコイルバネ)により後方へ付勢されている。なお、図5中、符号52は、スライダー40に一体に接続されるとともに付勢部材51の後端部を受ける受け部材である。
付勢部材51の付勢力は、鉛芯1に後方及び径外方向への過剰な筆圧が加わった際に、スライダー40のカム斜面41を開口縁31に摺接させることで、スライダー40を鉛芯1及び軸筒30に相対し前進させ、前記筆圧が除去された際に同スライダー40を後方へ戻すように、適宜に設定される。
【0029】
また、スライダー40内の後部側には、鉛芯繰出し機構60が設けられる。
鉛芯繰出し機構60は、軸筒30の後端から後方へ突出するノック部(図示せず)のノック操作によりチャック61に挟持された鉛芯1を繰り出す機構である。この鉛芯繰出し機構60には、上述した鉛芯繰出し機構20についての説明と同様に他の機構を用いることが可能である。
この鉛芯繰出し機構60は、保持部材62を介して軸筒30内に係合することで、軸筒30に対し前進不能且つ後退可能であるとともに、スライダー40の移動に伴い径方向へ微動するように保持される。
また、鉛芯繰出し機構60は、軸筒30内に係止された付勢部材63(図示例によればコイルバネ)により前方へ付勢されている。付勢部材63の付勢力は、チャック61に挟持された鉛芯1に、軸筒後方への過剰な筆圧が加わった場合に、この力により鉛芯1及び鉛芯繰出し機構60を後退させるように、適宜に設定される。
【0030】
次に、上記構成のシャープペンシルBについて、その特徴的な作用効果を詳細に説明する。
先ず、鉛芯1が鉛芯繰出し機構60から繰出されて前進する際や、鉛芯1の前端部が芯挿通孔12aの前端部よりも前方に突出した状態で筆記が行われる際、落下衝撃が加わった際等には、上述したシャープペンシルAと同様に、芯挿通孔12aの前側面取り部12a1及び後側面取り部12a2によって鉛芯1の外周部が削れたり鉛芯1が折れたりするのを防ぐことができる。
【0031】
また、このシャープペンシルBの独特な作用として、通常の筆記姿勢で鉛芯1に後方及び径方向への過剰な筆圧が加わった場合は、スライダー40が軸筒30及び鉛芯1に相対し前進して、鉛芯1の前端側を覆い保護する。
このスライダー40の前進の際、芯挿通孔12aの前端側が角部のない凸曲面状の前側面取り部12a1になっているため、この芯挿通孔12aの前端側により鉛芯1の外周面が削られるようなことを低減することができる。
また、前記過剰な筆圧が除去されて、スライダー40が軸筒30及び鉛芯1に相対し後退する際には、芯挿通孔12aの後端側が角部のない凸曲面状の前側面取り部12a2になっているため、この芯挿通孔12aの後端側により鉛芯1の外周面が削られるようなことを低減することができる。
【0032】
さらに、このシャープペンシルBの独特な作用として、鉛芯1に軸筒後方への過剰な筆圧が加わった場合には、鉛芯1及び鉛芯繰出し機構60が、付勢部材63を収縮させながらスライダー40に相対し後退するため、鉛芯1の前端側をスライダー40によって覆い保護することができる。
この鉛芯1の後退の際、芯挿通孔12aの前端側が角部のない凸曲面状の前側面取り部12a1になっているため、この芯挿通孔12aの前端側により鉛芯1の外周面が削られるようなことを低減することができる。
また、前記軸筒後方への過剰な筆圧が除去された場合には、鉛芯1及び鉛芯繰出し機構60がスライダー40に相対し前進して元の状態に復帰する。この復帰動作の際、芯挿通孔12aの後端側が凸曲面状の後側面取り部12a2になっているため、この芯挿通孔12aの後端側により鉛芯1の外周面が削られるようなことを低減することができる。
【0033】
よって、上記構成のシャープペンシルBによれば、鉛芯1の繰り出し操作中や、筆記時、落下衝撃を受けた際、さらには、鉛芯1に対する過剰な筆圧に起因してスライダー40又は鉛芯1が進退する際等に、芯削れや芯折れが生じるのを防ぐことができる。
【0034】
なお、上記実施例では、具体的な好ましい一例として単機能のシャープペンシルを構成したが、多機能筆記具におけるシャープペンシル用リフィールに対し、上述した前側面取り部12a1(又は12a1’)や、後側面取り部12a2(又は12a2’)を設けることも可能である。
【0035】
また、上記実施例では、円錐筒状の先口部12や、スライダー40内の芯挿通孔12aに、上述した前側面取り部12a1(又は12a1’)や、後側面取り部12a2(又は12a2’)を設けたが、他例としては、細長パイプ状の芯挿通管の端部側に、同様の面取り部を設けることも可能である。
【0036】
また、上述したシャープペンシルBでは、特に好ましい態様として、前側面取り部12a1及び後側面取り部12a2を凸曲面状に形成したが、他例としては、これら面取り部の一方又は双方を、図4に示すC面取り状の前側面取り部12a1’や後側面取り部12a2’に置換することが可能である。
【符号の説明】
【0037】
1:鉛芯
10,30:軸筒
12,12’:先口部
12a:芯挿通孔
12a1,12a1’:前側面取り部
12a2,12a2’:後側面取り部
20,60:鉛芯繰出し機構
40:スライダー
A,B:シャープペンシル
図1
図2
図3
図4
図5
図6