特許第6080902号(P6080902)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6080902
(24)【登録日】2017年1月27日
(45)【発行日】2017年2月15日
(54)【発明の名称】背もたれ付き椅子
(51)【国際特許分類】
   A47C 7/46 20060101AFI20170206BHJP
【FI】
   A47C7/46
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-119369(P2015-119369)
(22)【出願日】2015年6月12日
(62)【分割の表示】特願2014-71778(P2014-71778)の分割
【原出願日】2008年10月21日
(65)【公開番号】特開2015-157224(P2015-157224A)
(43)【公開日】2015年9月3日
【審査請求日】2015年6月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000139780
【氏名又は名称】株式会社イトーキ
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】橋本 実
【審査官】 古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2007/0267905(US,A1)
【文献】 実開平05−034953(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 7/46
B60N 2/00−2/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
座と背もたれとを有しており、
前記背もたれは、前後に開口したバックフレームに可撓性のサポートシートが張られたた構造であり、前記バックフレームの左右両側部は上下長手の左右サイドメンバーで構成されている一方、前記サポートシートのうち着座した人の腰部に当たる部分はランバーサポート部になっており、前記ランバーサポート部のうち左右中間部を挟んだ左右両側の部位が、左右に分離したランバーパッドで後ろから個別に支持されている構成であって、
前記左右のランバーパッドは、正面視において左右横幅よりも上下長さが大きくて、側面視及び平面視において前向き凸状に湾曲した形態であって、全体を左右サイドメンバーの間に位置させつつ、外端面を前記サイドメンバーに寄せた状態に配置しており、
かつ、前記背もたれの左右中間部側に向いた内端面は、正面視で前記背もたれの左右中間部側に向けて凸状に緩く曲がった形状で、前記背もたれの左右外側に向いた外端面は、正面視で鉛直に近い形状になっている、
背もたれ付き椅子。
【請求項2】
前記サイドメンバーの前面は、左右内側に行くに従って後ろにずれるように平断面視で傾斜している一方、
前記サポートシートはサイドメンバーの外端面に取り付けられており、正面視において前記サイドメンバーの前面がサポートシートで覆われている、
請求項1に記載した背もたれ付き椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、背もたれにランバーサポート機能を持たせている椅子に関するもので、特に、背もたれに可撓性のサポートシート(ネット状材、メッシュ状材、網状材と呼ぶことも可能である)を使用しているランバーサポート機能付き椅子を好適な対象にしている。
【背景技術】
【0002】
椅子において、例えば特許文献1,2に例示するように、背もたれ又は座をフレームにネット状(或いはメッシュ状)のサポートシートが張られた構造として、使用者の身体をサポートシートで受けることが行われている。座や背もたれにサポートシートを使用する利点として、通気性に優れている点や適度の弾性があってクッション性に優れている点が挙げられる。
【0003】
他方、椅子においては、近年、使用者の腰部(特に第3腰椎を中心にした部分)を後ろから支えることの重要性が認識されており、そこで、背もたれの下部に、側面視で前向き凸状に湾曲したランバーサポート部を設けることが一般化している。
【0004】
そして、ネット状のサポートシートを使用した背もたれにランバーサポート機能を持たせることも行われており、この場合、基本的には、サポートシートが張られているバックフレームのうち着座した人の腰の当たりに位置する部分を側面視で前向き凸状に湾曲した形態とすることにより、サポートシートにランバーサポート部を形成しているが、ランバーサポート機能をより強く発揮させるために、サポートシートの裏側に押圧手段(押圧部材)を高さ調節可能に配置することも行われている。その一例が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−49658号公報
【特許文献2】特開2002−119366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献ではネット状のサポートシートを押す押圧部材を備えているが、この押圧部材はサポートシートの裏側に大きく広がる状態で配置されている。他方、ネット状のサポートシートは程度の差はあっても裏側が透けて見えるものであり、このため、特許文献1のようにネット状材の裏側にランバーサポート部材が配置されているとこれが前から透けて見え、また、裏側からは完全に露出して見えることになるが、このようにランバーサポート部材が目立ち過ぎると必ずしも美観が良くないという問題があった。
【0007】
本願発明は、このような現状に鑑み成されたものであり、より改善されたランバーサポート機構を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は、座と背もたれとを有している椅子に関し、
前記背もたれは、前後に開口したバックフレームに可撓性のサポートシートが張られたた構造であり、前記バックフレームの左右両側部は上下長手の左右サイドメンバーで構成されている一方、前記サポートシートのうち着座した人の腰部に当たる部分はランバーサポート部になっており、前記ランバーサポート部のうち左右中間部を挟んだ左右両側の部位が、左右に分離したランバーパッドで後ろから個別に支持されている」、
という基本構成になっている。
【0009】
そして、上記請求項1の発明は、上記基本構成において、
前記左右のランバーパッドは、正面視において左右横幅よりも上下長さが大きくて、側面視及び平面視において前向き凸状に湾曲した形態であって、全体を左右サイドメンバーの間に位置させつつ、外端面を前記サイドメンバーに寄せた状態に配置しており、かつ、前記背もたれの左右中間部側に向いた内端面は、正面視で前記背もたれの左右中間部側に向けて凸状に緩く曲がった形状で、前記背もたれの左右外側に向いた外端面は、正面視で鉛直に近い形状になっている。
【0010】
請求項2の発明では、請求項1において、前記サイドメンバーの前面は、左右内側に行くに従って後ろにずれるように平断面視で傾斜している。
【発明の効果】
【0011】
本願発明では、背もたれのランバーサポート部を支える押圧手段は左右のランバーパッドに分離しているため、椅子の背面視においてランバーパッドはさほど目立つことはなく、このため美感に優れている。
【0012】
また、背もたれにサポートシートを使用しているが、サポートシートが透けて見える素材であっても椅子の前方視(フロントビュー)においてランバーパッドが目立つことはないため、椅子を全体としてスッキリとしたデザインと成すことができるのであり、従って、本願発明の真価が発揮されると言える。また、本願発明ではランバーパッドは個別に配置されているため、高さ調節可能とした場合、上下動をスムースに行える利点もある(ランバーパッドが左右に長いと、上下動させるにおいてこじれる場合がある。)。
【0013】
さて、着座者の腰や背中は当然ながら背もたれに当たるが、一般に背もたれの横幅は人の胴部の横幅よりも大きい寸法に設定されており、このため、背もたれのうち左右両側の部分は人の背中が接触していないことが多い。また、人の背中や腰部は平面視で丸みを持っているものであり、この面から見ても、背もたれのうち左右両側の部分は人が接触していないことが多い。
【0014】
そして、従来は、ランバーサポート部を支える押圧部材は人の身体が背もたれに当てる部分に配置していることが多く、このため、人の背部や腰部は背もたれを介して押圧部材に当たっていることが多い。この場合、背もたれがインナーシェルにクッションを張った構造である場合は、押圧部材が人の身体に突き上げ感を与えることは少ないが、背もたれがメッシュ状等のサポートシート方式である場合は、サポートシートは薄いため押圧部材の当たりの感触が人の身体に伝わることになり、このため人に違和感を与えることが懸念される。
【0015】
他方、本願発明では押圧手段は左右のランバーパッドで構成されているため、ランバーパッドは背もたれのうち人の身体が殆ど当たらない左右端部に配置することができ、その結果、使用者がランバーパッドの当たりの感覚を受けることを防止又は著しく抑制して快適な使用感を得ることが可能になる。
【0016】
背もたれをサポートシート方式にした場合、サポートシートは狭い部分に荷重が集中すると破れ易くなる虞がある。この点、本願発明では、ランバーパッドに側面視と平面視との両方で丸みを持たせているため、サポートシートとランバーパッドとの接触面積を大きくできると共にサポートシートの撓みを緩くできるため、サポートシートの耐久性を向上できる。また、ランバーパッドを高さ調節できる場合は、ランバーパッドを上下動させるに際してサポートシートとの摩擦抵抗を小さくできるため、ランバーパッドの上下等操作もスムースに行える。
【0017】
また、本願発明では、ランバーパッドについて上下に長い形状を採用しているため、サポートシートを上下長い範囲にわたって適切な張り状態に保持できる利点がある。また、上下に長い形状を採用すると、ランバーパッドの当たり感を使用者に伝えることなくランバーパッドとサポートシートとの接触面積を大きくできるため、サポートシートの耐久性を確保する点で特に優れている。
【0018】
サポート材をバックフレームに取り付ける手段として様々の態様があるが、請求項2のように、サポートシートをサイドメンバー(バックフレーム)の外端面に取り付けると、背もたれの正面視での面積をそのままサポートシートによる身体の支持面積として活用できるため、肩幅の大きい人も安定的に支持できる利点がある。更に、ランバーパッドはサポートシートの支持機能を損なうことなく、できるだけ背もたれの左右外側寄りに配置することができるのであり、この面からも、使用者がランバーパッドの当たり感を受けることを防止して、快適な使用感を得ることができる。
更に、請求項2のように、サイドメンバーの前面は左右内側に行くに従って後ろにずれるように傾斜していると、人のもたれ掛かりによってサポートシートが後ろに伸び変形することが許容されていると共に、サポートシートへの負担も軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】(A)は実施形態に係る椅子の斜視図で(B)は背もたれの部分的な一部破断正面図である。
図2】椅子の側面図である。
図3】椅子の背面図である。
図4】前方から見た分離斜視図である。
図5】前方から見た分離斜視図である。
図6】ロッキング機構を説明するための分離斜視図である。
図7】(A)はバックフレームの側面図、(B)はランバーパッドの平面図、(C)はランバーパッドの正面図である。
図8】(A)は要部の分離側面図、(B)は要部の分離斜視図である。
図9】(A)は背支柱の上部の斜視図、(B)はバックフレームにおけるサイドメンバーの破断斜視図である。
図10】(A)は非ロッキング状態での部分側面図、(B)はロッキング状態での部分側面図である。
図11図10においてランバーパッドを少し下方にずらした状態での XI-XI視断面図である。
図12】第2実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、事務用に多用されている回転椅子に適用しており、図1図11では第1実施形態を示し、図12では第2実施形態を示している。本願では、方向を特定するため左右の文言を使用するが、この左右の方向は、着座した人が向いた方向を基準にしている。まず、第1実施形態を説明する。
【0021】
(1).第1実施形態の概要
まず、図1図6に基づいて第1実施形態に係る椅子の概要を説明する。図1のうち(A)は椅子の斜視図で(B)は背もたれの部分的な一部破断正面図、図2は側面図、図3は背面図、図4及び図5は前方から見た分離斜視図、図6はロッキング機構を説明するための分離斜視図である。
【0022】
例えば図1〜3に示すように、椅子は、主要要素として、脚支柱2(ガスシリンダ)を有する脚装置1、脚支柱2の上端に固定されたベース3、ベース3の上方に配置された座4、背もたれ5、オプション品として背もたれ5に取付けられたヘッドレスト装置6を備えている。脚1は放射状に延びる複数本の枝足7を備えており、各枝足7の先端にはキャスタを設けている。
【0023】
ベース3の左右両側には左右一対の揺動フレーム8が配置されている。図2図6のとおり、揺動フレーム8は、非ロッキング時に水平に近い姿勢で後傾している基部9と、この基部9の後端から立ち上がった背支柱10とから成っている。そして、揺動フレーム8はその前端部を中心にして後傾動(回動)するように、基部9の前端部がベース3に左右長手の支軸部11図4,5,6参照)で連結されている。揺動フレーム8は例えばアルミダイキャストのような金属成形品を採用しているが、樹脂成形品で良いし、或いは、板金製品を採用することも可能である。図3図6のとおり、左右の揺動フレーム8は、基部9と背支柱10とが連接したコーナー部においてジョイントフレーム12で連結されている。
【0024】
図1,3に示すように、背もたれ5は、正面視略四角形のバックフレーム13にサポートシート14が張られた構成であり、バックフレーム13は揺動フレーム10の支柱10にビスで固定されている(詳細は後述する。)。バックフレーム13は、着座者の腰部に当たる部分が側面視で最も前端となるように側面視で緩く湾曲しており、従って、サポートシート14(或いは背もたれ5)はランバーサポート部14a図2参照)を有している。サポートシート14におけるランバーサポート部14aの左右両側部には裏側からランバーパッド15が当たっている。なお、サポートシート14は平面視で前向き凹状に凹んでいる。また、本実施形態のサポートシート14は縦長の疎部と密部とが左右方向に交互に配置された縦縞模様の外観を呈しており、疎部では前後に透けて見える。
【0025】
バックフレーム13は樹脂の成形品であり、例えば図4に示すように、上下方向に長く延びる左右サイドメンバー13aと、左右サイドメンバー13aの上端に繋がったアッパーメンバー13bと、左右サイドメンバー13aの下端に繋がったロアメンバー13cとから成っている。従って、バックフレーム13は正面視で略四角形の形態を成している。アッパーメンバー13b及びロアメンバー13cは平面視で前向き凹状に緩く湾曲している。
【0026】
既述のとおり、揺動フレーム10はその前端部を中心にして後傾するようにベース3に支軸部11で連結されているが、本実施形態では、ロッキング用ばね手段として、支軸部11に内蔵したトーションバーを採用している。トーションバーはその左右中間部がベース3に回転不能に保持されており、左右両端部は揺動フレーム8の前端部に固定されている。このため、揺動フレーム8はトーションバーをねじり変形させながら後傾する。
【0027】
支軸部11はベース3の左右外側に大きく突出しており、このため揺動フレーム8もベース3のかなり外側に配置されている。但し、例えば図3から理解できるように、揺動フレーム8は座4の左右外側面よりも内側に位置している。従って揺動フレーム8が人の歩行の邪魔になるようなことはない。
【0028】
座4は、樹脂製のインナーシェル(図示せず)とその上面に張ったクッション、及びインナーシェルを支持するアウターシェル16(図6参照)を有している。本願発明との関係は薄いので詳細は省略するが、座4のアウターシェル16は、その下方に配置した中間部材17に前後位置可能に取り付けられており、中間部材17の前部には前ブラケット部18が形成されていて、この前ブラケット部18とベース3とがフロントリンク20で連結されている。フロントリンク20は、ベース3に挿通した前支軸20′に回動可能に取り付けられている。フロントリンク20の上端は、前後長手の補助枠材21に連結されている。補助枠材21は中間部材17によって前後スライド可能保持されており、かつ、補助枠材21は、座4(アウターシェル19)と一体に動く。
【0029】
図4〜6に示すように、揺動フレーム10の内側面にはリアリンク22が配置されている。リアリンク22図8も参照)は、揺動フレーム8に似た側面視略L形の形態であり、起立部22aが揺動フレーム8における背支柱10の内面に沿って延びており、かつ、リアリンク22は起立部22aの付け根よりもやや手前側の部位において枢支ピン23(図4参照)揺動フレーム8に連結されている。リアリンク22の前端は上向きに突出しており、これが補助枠材21の後端部にリアピン24で連結されている。
【0030】
従って、背もたれ5(及び揺動フレーム8)が後傾すると座4は後退しつつ後傾する。詳細は図示してないが、揺動フレーム8のおおよそ前後中間部の内側面には水平に対してやや後傾した姿勢のガイド長穴が空いている一方、座4が取り付けられている中間部材17には、ガイド長穴にスライド自在に嵌まるガイドピン25(図5,7参照)を設けている。ガイドピン25がガイド長穴でガイドされることにより、座4は独自に後退及び後傾することなく、揺動フレーム8との連動関係が強制されている。
【0031】
着座した人が背もたれ5にもたれ掛かると、リアリンク22の起立部22aも後傾するが、背支柱10に対しても相対的に後傾する。すなわち、背支柱10が後傾する割合よりもリアリンク22の起立部22aが後傾する割合が大きい。そして、リアリンク22における起立部22aの上端部に、既述したランバーパッド15を高さ調節可能に取り付けている。従って、ロッキングに際しては、ランバーパッド15は背支柱10に対して相対的に後退することになり、このため、サポートシート14はロッキングするとテンションが緩む。
【0032】
さて、非ロッキング状態で人がパソコン操作等の執務・作業を行う場合、上半身はサポートシート14のランバーサポート部14aで腰部を後ろから支えているのが好ましい。従って、非ロッキング状態では、ランバーサポート部14aは側断面視で前向き凸にかなり突出しているのが好ましい。他方、ランバーサポート部14aが大きく突出した状態のままでロッキング状態に移行すると、腰部が過度に突き上げられる虞がある。そこで本実施形態では、ロッキング時にランバーパッド15を背支柱10に対して相対的に後退させてサポートシート14のテンションを緩めているのである。
【0033】
例えば図4,5のとおり、ヘッドレスト装置6は、バックフレーム13におけるサイドメンバー13aの左右内側面から立ち上がった左右のヘッド支柱27を有しており(図1(A)や図4では片方のヘッド支柱13bしか表示していない)、ヘッド支柱27にヘッドレスト28が高さ調節可能に取り付けられている。
【0034】
ヘッド支柱27はその下端寄りの部位を中心にして前後に回動するようにピン(或いはン部)でサイドメンバー13aに連結されており、かつ、ヘッド支柱27の下端は、回動吸収装置29を介してリアリンク22の起立部22aに連結されている。ロッキングに際してはヘッド支柱27はその上部が手前に移動するように回動する。従って、着座した人は、ロッキング状態のままで頭を起こすことなくパソコンのディスプレイを楽に見ることができたり、読書に際して本を持ち上げる必要がないといった利点がある。また、回動吸収装置29にはばねが内蔵されており、ヘッド支柱27はばねに抗して後傾動させることができる。
【0035】
(2).ランバーパッドの周辺部
次に、従前の図に加えて図7以下の図面も参照してランバーパッド15の周辺部を説明する。図7のうち(A)はバックフレーム13の側面図、(B)はランバーパッド15の平面図、(C)はランバーパッド15の正面図、図8のうち(A)は要部の分離側面図、(B)は要部の分離斜視図、図9のうち(A)は背支柱10の上部の斜視図、(B)はバックフレーム13におけるサイドメンバー13aの破断斜視図、図10は(A)は非ロッキング状態での部分側面図、(B)はロッキング状態での部分側面図、図11図10においてランバーパッド15を少し下方にずらした状態での XI-XI視断面図である。まず、揺動フレーム8とバックフレーム13について説明する。
【0036】
既述のとおり揺動フレーム8はアルミの成形品であり、例えば図9(A)に示すように、揺動フレーム8の基部9は内側に開口した概ね樋状に形成されていてその内部に補強リブを設けている。また、揺動フレーム8の基部9のうち前後略中間部には、外向きに開口すると共にやや外側に突出した角形穴部31(図4参照)が形成されている。この角形穴部31は肘掛け装置を取り付けるためのものであり、肘掛け装置を取り付けない場合はカバー32(例えば図5参照)で塞がれている。
【0037】
例えば図6に示すよう、揺動フレーム8の基部9には、リアリンク22を覆うための下インサイドカバー34を設けている。例えば図9図11に明示するように、背支柱10は側板35と背面板36とを有している。側板35は平面視で前後方向に延びているが、背面板36は、平断面視において背もたれ5の中心に行くに従って後ろにずれるよう傾斜にしており、従って、背支柱10は平断面視において変形L形になっている。背支柱10における側板35の前端には低い内向きのフロントリブ37が形成されており、従って、側板35の内側は浅い溝状の形態を成している。そして、側板35の内側には、フロントリブ37と同じ程度の高さの補強リブ38の群を形成している。
【0038】
背支柱10を変形L形に形成しているのは、側板35と背面板36とで囲われた空間にリアリンク22の起立部22aを配置するためである。リアリンク22の起立部22aは上インサイドカバー39で覆われている。例えば図9(A)に示すように、背支柱10における背面板36の上部には、上インサイドカバー39を取り付けるためのブラケット部40を設けている。また、背支柱10における背面板36には、上下に長く延びる内向きのリアリブ41を形成している。
【0039】
既述のとおり、ヘッド支柱27はリアリンク22の後傾動に連動して前傾動するものでり、回動吸収装置29がリアリンク22にける起立部22aの上端に連結されている。そして、ヘッドレスト装置6を取り付けない場合もあり、この場合は、例えば図11(A)に示すように背支柱10の上端には天キャップ42が装着されている。背支柱10における背面板36の上端部内面にには、天キャップ42を取り付けるための係止部43を設けている。
【0040】
例えば図11に示すように、バックフレーム13のサイドメンバー13aは揺動フレーム8の背支柱10に左右外側から重なっている。サイドメンバー13aは左右外側に向けて前後幅が徐々に小さくなる略台形の平断面形状であり、かつ、前面も背面も背もたれ5の中心部に近づくほど後ろにずれるように後ろ向きに傾斜している。
【0041】
バックフレーム13を構成する各メンバーの外周面は平坦面になっている。そして、図11に代表して明示するように、各メンバーの外側面(バックフレーム13の外周面)には溝条46が長く延びて形成されており、サポートシート14の周縁に固定された縁部材47が溝条46に嵌め込まれている。なお、縁部材47は、各メンバーの箇所ごとに分断されている。
【0042】
サポートシート14がバックフレーム13の外周面に取り付けられているため、背もたれ5の前面の面積の全体が着座面になっており、このため、肩幅の大きい人も安定的に支持される。また、バックフレーム13はサポートシート14の後ろに隠れるため(透けては見える)、恰も背もたれ5の全体がサポートシート14で構成されているかのような外観を呈しており、このため独特の美感が顕れている。
【0043】
サポートシート14がバックフレーム13の外周面に取り付けられているため、背もたれ5の前面の面積の全体が着座面になっており、このため、肩幅の大きい人も安定的に支持される。また、バックフレーム13はサポートシート14の後ろに隠れるため(透けては見える)、恰も背もたれ5の全体がサポートシート14で構成されているかのような外観を呈しており、このため独特の美感が顕れている。
【0044】
そして、例えば図10に示すように、サイドメンバー13aのうち背支柱10に重なる部分は内向きに開口した溝状になっており、内部には多数の補強リブ48を設けている。これは、例えば肉厚をできるだけ均等化して成形時のヒケを防止するためである。
【0045】
図11に示すように、背支柱10はビス49とナット50とで背支柱10に締結されている。ビス49は背支柱10の側板35に内側から挿通されており、ナット50はサイドメンバー13aに形成した前向き開口のナット穴51に嵌め込まれて回転不能に保持されている。ナット穴51は手前に開口しているので、ナット穴51はサポートシート14で隠れて殆ど視認できず、従って美感上の問題はない。サイドメンバー13aは上下2カ所の位置で背支柱10に固定しており、例えば図5では、サイドメンバー13aのビス挿入穴52を示している。
【0046】
(4).ランバーパッド
次に、ランバーパッド15を説明する。ランバーパッド15は樹脂製品であり、例えば図7に示すように、上下長手で側面視及び平面視で前向き突状に湾曲している。このため、サポートシート14は特定部位に応力が集中することがない状態に支持されている。そして、ランバーパッド15のうち左右外端部にはリアリンク22の起立部22aに前から嵌まる溝形の受け部54が後ろ向きに突設されている。
【0047】
図8(B)に示すように、受け部54の内底面には山形のストッパー突起55が形成されている一方、リアリンク22の起立部22aにはストッパー突起55が嵌まる凹所56を多段に形成している。ランバーパッド15はサポートシート14のテンションによってリアリンク22の起立部22aに押されており、このため凹所56がごく浅くてもランバーパッド15は下向きずれ不能に保持されている。
【0048】
また、図8に明示するように、ランバーパッド15の背面には、操作部の一例として、人が指で摘まみ得る横向きの操作片57を一体に形成している。従って、椅子の使用者は、好みや体格等に応じてランバーサポート14の高さ位置を調節できる(操作片57は着座したまま後ろで操作できる。)。図7,8に示すように、受け部54を構成する一方の板材の下端部でかつ後端部に、内向きの規制爪58を形成している一方、リアリンク22における起立片22aには、規制爪58が上下動自在に移動しうる切欠き部59を形成している。
【0049】
切欠き部59にて規制爪58の上下移動範囲が規制されることにより、ランバーパッド15の上下動ストロークが規制されると共に、ランバーパッド15は落下不能に保持されている。従って、切欠き部59と規制爪58とはランバーパッド15のストローク規制手段と落下防止手段との機能を果たしている。上インサイドカバー39の内面には、ランバーパッド15が後退したときに受け部54を安定的に保持するスペーサ60を配置している。
【0050】
さて、図11に明示するように、正面視でランバーパッド15は背支柱10と部分的に重なるように配置されており、従って、ランバーパッド15は背もたれ5の左右端部に寄せて配置されている。従ってランバーパッド15が大きく目立つことはなくて美感に優れている。特に、椅子のバックビューにおいてランバーパッド15は目立たずにサポートシート14が強調されているため、シンプルな外観を呈している。また、バックフレーム13の前面は左右内側に行くに従って後ろにずれるように傾斜しているため、人のもたれ掛かりによってサポートシートが後ろに伸び変形することが許容されていると共に、サポートシート14への負担も軽減されている。
【0051】
また、ランバーパッド15が側面視と平面視とで湾曲していることと(特に側面視での湾曲が重要である)、ランバーパッド15が上下に長くて前面の面積が大きいこととにより、サポートシート14の狭い箇所に強い力が集中することがなくて、サポートシート14は高い耐久性を確保できる。また、ランバーパッド15は、最大幅に対して上下長さが3倍程度の上下に細長い形態であるが、図7(C)に示すように、正面視で外端面15aは鉛直に近い形態であるのに対して、背もたれ5の左右中間部側に向いた内端面15bは外向き凸条に緩く湾曲した形状であり、従って、正面視においても丸みを持っている。
【0052】
ランバーパッド15のこのような形状により、サポートシート14の形状に倣って適切な支持機能が発揮される。つまり、サポートシート14はバックフレーム13のリアリンク22の作用によって下に行くほど平面視での湾曲の度合いは大きくなっているが、実施形態のようにランバーパッド15に正面視においても丸みを持たせると、サポートシート14が後ろ向きに湾曲することが下に行くほど容易になっているのであり、このため、サポートシート14の立体的な曲がりの形態にフィットしているのである。
【0053】
(5).第2実施形態
図12では第2実施形態を示している。この実施形態も基本的には第1実施形態と同じであ、第1実施形態との違いとして、まず、バックフレーム13のロアメンバー13cがサイドメンバー13aとは別部材なっている点が挙げられる。また、この実施形態ではランバーパッド15は板状に形成されており、ランバーパッド15とサポートシート(図示せず)との間に、上下に長い可撓性シート62が配置されている。可撓性シート62はサイドメンバー13aにビス等で固定されているが、ランバーパッド15と一緒に上下動させても良い。
【0054】
(6).その他
本願発明は、上記の実施形態の他にも様々に具体化できる。例えば、適用対象は必ずしも回転椅子に限定されるものではなく、劇場用椅子やベンチのような固定式椅子にも適用できる。敢えて述べるまでもないが、ランバーパッド15はロッキング時に後退する必要はないのであり、従って、ランバーパッドをバックフレームのサイドメンバーに上下動自在に取り付けるといったことも可能である。ランバーパッドは、例えばブロック状に形成して人が手を掛け得るように形成することも可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 脚装置
3 ベース
4 座
5 背もたれ
8 揺動フレーム
10 揺動フレームの背支柱
13 バックフレーム
13a バックフレームのサイドメンバー
14 サポートシート
14a ランバーサポート部
15 ランバーパッドの外端面
15a ランバーパッドの外
54 受け部
57 操作部の一例としての操作片
図4
図5
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図11
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