(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
<防護服1の全体構成>
図1〜16には、本発明の第1実施形態に係る防護服1が示されている。
防護服1は、襟11と、この襟11の外方側に位置したフード12と、このフード12の前部に設けられたマスク13を有していても良い。
【0017】
又、防護服1を構成する布帛2端部に、表皮層4が内方側に露出する内表皮部14を有していても良い。
防護服1は、着用者Tを布帛2で覆うものであって、薬品(硫酸(希硫酸、濃硫酸(H
2 SO
4 ))や、苛性ソーダ(水酸化ナトリウム(NaOH))等の化学薬品)や細菌などが、着用者Tの身体に付着したり、体内に入ることを防ぐために着用する服である。
【0018】
この他、防護服1は、薬品など以外であっても、雨水等の液体Eが着用者Tの身体に付着することを防ぐ合羽(雨合羽(レインコート)、外衣、外套、アウターウェア等)も含まれる。
防護服1は、着用者Tを布帛2で覆うものであれば、何れの構成であっても良いが、例えば、2ピース式(上下セパレート式)であっても、1ピース式などであっても構わない。
【0019】
この1ピース式は、防護服1が1つの部材から構成されていれば、上着とズボンが一体となった(繋がった)繋ぎ状や、ロングコート状など、何れであっても良い。
又、1ピース式であれば、上着とズボンだけでなく、靴や手袋が一体となっていても構わない。
【0020】
一方、2ピース(上下セパレート)式であれば、防護服1が2つの部材から構成されていれば、上下(上着21とズボン22)それぞれを着用・脱衣自在な構成など、何れであっても良い。
更には、上述したフード12も上着21から着脱自在とした3ピース式など、防護服1を構成する部材の数は、幾つであっても構わない。
以下は、防護服1が、上着21とズボン22を有した2ピース式の場合を、主に述べる。
尚、防護服1の重さについても、特に限定はないが、例えば、1着当り約700g等であっても良く、従来の防護服等(1着当たり約1100g)と比べ、軽量化されていても構わない。
【0021】
<布帛2>
図4に示したように、布帛2は、複層構造であって(複数の層を有し)、基材層3と、この基材層3の一方面(表面)3a側に位置した表皮層4を少なくとも有している。
つまり、布帛2は、複数の層を有するのであれば、基材層3や表皮層4以外に、幾つの層を有していても良い。
布帛2の厚みは、当然、これを構成する各層の厚みの合計となるが、特に限定はなく、例えば、0.10mm以上5.00mm以下、好ましくは0.50mm以上3.00mm以下、更に好ましくは0.70mm以上2.00mm以下であっても良い。
【0022】
<基材層3>
図4に示した如く、基材層3は、複層構造の布帛2における1つの層であり、表皮層4を支える層である。
基材層3は、何れの構成であっても良いが、例えば、編物、織物、不織布等であったり、合成樹脂製のシート状物(フィルム、シート)でも構わない。
例えば、基材層3が編物であれば、経糸又は緯糸によって編成され、より具体的には、経糸のみで編成された経編であれば、筬1枚を用いるシングル・コード編や、筬2枚を用いるダブル・コード編や、筬3枚を用いるトリプル・コード編などでも良く、これらのコード編以外では、デンビー編(トリコット編とも言う。詳しくは、シングル・デンビー編、ダブルデンビー編等)や、バンダイク編(アトラス編とも言う。詳しくは、シングル・バンダイク編、ダブル・バンダイク編等)、糸抜き編(レース編)、パイル編など何れの経編組織であっても構わない。
この他、緯編であれば、平編、ゴム編、パール編、タック編、浮き編、両面編、透孔編(レース編)、パイル編など何れの緯編組織や、これら以外でも丸編組織であっても構わない。
【0023】
一方、基材層3が織物であれば、経糸及び緯糸によって織成され、より具体的には、経糸と緯糸を交互に交差させた平織や、綾織(斜文織)、朱子織をはじめ、これら平織、綾織、朱子織の三原組織を変化させた変化組織や、二重組織(経二重組織、緯二重組織)、二重より多い多重組織、紋織組織(ジャガード織)など、何れの織組織であっても構わない。
このような織物や編物、不織布である基材層3を構成する糸(繊維)の素材も、特に限定はないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)や、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル繊維、ナイロン(ポリアミド)繊維、コットン(綿)などであり、これらを単独又は組み合わせて(T/C(ポリエステル繊維とコットンの混紡)として)用いられても良い。
【0024】
上述以外にも、基材層3を構成する糸の素材としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系繊維、レーヨン繊維、キュプラ繊維、アセテート繊維、ポリアクリロニトリル(PAN)を主成分とするアクリル繊維、ポリビニルアルコール(PVA)繊維(ビニロン繊維)、ポリウレタン(PU)繊維、ガラス繊維、絹、麻などであり、これらを単独又は組み合わせて用いられても良い。
この他、基材層3がシート状物であれば、それを構成する合成樹脂に敢えて言及すると、ポリエチレンテレフタレート(PET)や、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル樹脂、ナイロン(ポリアミド)樹脂、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂、アセテート樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)を主成分とするアクリル樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)樹脂(ビニロン樹脂)、ポリウレタン(PU)樹脂などであり、これらを単独又は組み合わせて用いられても良い。
【0025】
基材層3の厚みも、特に限定はなく、例えば、0.05mm以上4.00mm以下、好ましくは0.08mm以上2.00mm以下、更に好ましくは0.10mm以上1.00mm以下であっても良い。
基材層3の目付も、特に限定はないが、例えば、80g/m
2 以上260g/m
2 以下、好ましくは110g/m
2 以上230g/m
2 以下、更に好ましくは140g/m
2 以上200g/m
2 以下(170g/m
2 )であっても良い。
又、基材層3は、吸水性を有し(吸水加工を施され)ていても良く、この場合、布帛2における内方側にある基材層3で、防護服1を着用した着用者Tの汗を吸収して、この吸収された汗は、布帛2における外方側にあり且つ透湿防水性(透湿性)を有した表皮層4から防護服1の外部へ蒸発され易くなり、着用感が上がる。
尚、基材層3は、パイルを有したパイル布帛であっても良く、その場合には、基材層3におけるパイルがある面(パイル面)が、内方側(防護服1の布帛2における着用者T側(着用者Tに近い側)に向くように、パイル面とは反対側の面にPTFEフィルムである表皮層4をラミネートして、布帛2を構成しても良い(その際、パイル面とは反対側の面が一方面(表面)3aとなり、パイル面が基材層3の他方面(裏面)3bとなる)。
【0026】
基材層3が編物等の糸(繊維)で構成されている場合は、基材層3に染色が可能であり、染色する色は、特に限定はないが、例えば、白等であっても良い。
尚、吸水加工とは、基材層3に吸水性が付与されるのであれば、何れの方法でも良いが、例えば、基材層3の表面(編物等の場合はそれを構成している糸(繊維)の表面、フィルム等の場合はその表面、又は、他方面(裏面)3b)に付着している不純物を除去したり、吸水性(親水性)物質を付着させる等の加工を言う。
【0027】
<表皮層4>
図4に示したように、表皮層4も、複層構造の布帛2における1つの層であり、基材層3上に積層され、防護服1の最も外方側に位置する層である。
表皮層4の厚みは、特に限定はなく、例えば、0.01mm以上2.00mm以下、好ましくは0.03mm以上0.80mm以下、更に好ましくは0.20mm以上0.60mm以下であっても良い。
表皮層4の目付も、特に限定はないが、例えば、5g/m
2 以上50g/m
2 以下、好ましくは10g/m
2 以上40g/m
2 以下、更に好ましくは20g/m
2 以上30g/m
2 以下(24g/m
2 )であっても良い。
【0028】
表皮層4は、基材層3にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のフィルムをラミネートして形成されている。
このラミネートは、基材層3にPTFEフィルムが表皮層4として固着するのであれば、熱処理の温度など、何れの条件等であっても良い。
【0029】
ラミネートされた表皮層4は、布帛2における一方面(表面)2a側で最も上に積層された層となり、当然、この表皮層4の一方面(表面)4a側に、他の層が存在せず(積層されず)、布帛2の表面2a側では表皮層4(表皮層4の一方面4aの全体又は一部分)が外方側に露出している。
よって、防護服1を布帛2で構成する際に、表皮層4を着用者Tの反対側(着用者Tから遠い側)に位置する向きで縫製すれば、表皮層4が防護服1の外方側で露出する。
【0030】
これにより、PTFEフィルム上に何れの表地層や織編布は存在せず、これら表地層等に薬品や細菌などが吸収されて、溜まった薬品などに着用者Tが触れる虞もない。
そして、表皮層4本来の撥水性・撥油性を十分に発揮でき、布帛2としての耐薬品性などを最大限発揮できる(「耐薬品性等の向上」)。
これと同時に、特許文献1のような表地層等が、防護服1の外方側全面に亘って存在せず、薬品などの液体Eが余計に溜まらないため、それらの分だけ防護服1の重さが減る(「軽量化」)。
つまり、「耐薬品性の向上と「軽量化」の両立が実現できる。
更には、表皮層4の露出により、防護服1内部の湿気を通過させるPTFEフィルムが、防護服1の外部(外気)に直接晒されて、防護服1内部の湿気が、表皮層4から蒸発し易くなり、着用者Tの快適性や、作業(荷役等)の効率が向上する。
【0031】
<布帛2の透湿防水性>
このような表皮層4と上述した基材層3を少なくとも有する布帛2の透湿度は、JIS−L−1099:2012(A法)で示される透湿度試験による値が、6000g/m
2 ・24hrsや、11000g/m
2 ・24hrsであっても良い。
尚、本発明における「JIS−L−1099:2012(A法)で示される透湿度試験」とは、当該JISに記載された通りの透湿度試験であると共に、当該JISに記載された透湿度試験に準じる(当該JISに記載された透湿度試験を準用する)透湿度試験も含む。
【0032】
又、布帛2の防水性としての耐水圧(耐水度)は、JIS−L−1092:2009で示される耐水度試験による値が、11000mmや、16000mmであっても良い。
尚、本発明における「JIS−L−1092:2009で示される耐水度試験」とは、当該JISに記載された通りの耐水度試験であると共に、当該JISに記載された耐水度試験に準じる(当該JISに記載された耐水度試験を準用する)耐水度試験も含み、以下、この試験を「耐水度試験」と言う。
このような透湿防水性(透湿度・耐水圧)を有することで、更に、防護服1外部からの液体Eを通さずに、防護服1内の水蒸気(湿気)Sを外に排出することが可能となる。
【0033】
<布帛2の洗濯>
このような表皮層4と上述した基材層3を少なくとも有する布帛2は、JIS−L−0217:1995の番号103で示される洗い方での洗濯を100回行った後も、表皮層4が基材層3から脱落しないものであっても構わない。
尚、本発明における「JIS−L−0217:1995の番号103で示される洗い方での洗濯」とは、当該JISに記載された通りの洗い方での洗濯であると共に、当該JISに記載された洗い方に準じる(当該JISに記載された洗い方を準用する)洗い方での洗濯も含み、以下、この洗濯を「家庭洗濯」と言う。
この家庭洗濯を100回行った後も、布帛2は、上述したように、表皮層4が基材層3から脱落しないものであっても良く、好ましくは家庭洗濯を150回行った後も表皮層4が基材層3から脱落しない、更に好ましくは家庭洗濯を200回行った後も表皮層4が基材層3から脱落しないものであっても良い。
【0034】
又、布帛2は、リネンサプライ(病院リネンサプライ、リネン製品)等に用いられる連続式洗濯機(6層式)での洗濯(以下、この洗濯を「商業洗濯」と言う)を100回行った後も、表皮層4が基材層3から脱落しないものであっても良い。
この商業洗濯は、例えば、水槽に液温80℃(又は、液温は80℃を限度とする)水を入れ、これに、アルカリ洗剤(又は、強アルカリ洗剤)と、漂白剤としての過酸化水素(H
2 O
2 )と、漂白殺菌剤としての次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)を添加して溶解し、洗濯液とする。この洗濯液に布帛2を投入して運転を開始する。40分間処理した後、運転を止め、布帛2を脱水機で脱水(又は、強力脱水)し、シーツローラー機や乾燥機、自動折畳み機等に通して、1回の商業洗濯としても良い。
このような商業洗濯を100回行った後も、布帛2は、上述したように、表皮層4が基材層3から脱落しないものであっても良く、好ましくは商業洗濯を120回行った後も表皮層4が基材層3から脱落しない、更に好ましくは商業洗濯を150回行った後も表皮層4が基材層3から脱落しないものであっても良い。
【0035】
<布帛2の洗濯と耐水圧・吸水性等>
上述した家庭洗濯や商業洗濯を所定回数行っても、布帛2は、表皮層4が基材層3から剥離しないだけでなく、更には、布帛2の耐水圧・吸水性等の低下が抑制できることとしても良い。
まず、耐水圧(耐水度)について述べれば、本発明に係る布帛2(実施例1)と、その他の樹脂をコーティングした布帛(例えば、編物等の基材における裏面側にウレタン等をコーティングした布帛など、以下、比較例1)に対して、家庭洗濯と商業洗濯を所定の洗濯回数だけ行った場合における耐水度試験により判定した実施例1・比較例1それぞれの耐水圧を、以下の表1に示す。
【0037】
次に、吸水性について述べれば、本発明に係る布帛2に対して、家庭洗濯か商業洗濯の何れかを所定の洗濯回数だけ行った場合におけるJIS−L−1907:2010の吸水性試験(滴下法)で示される試験により判定した布帛2の吸水性(吸水速度)を、以下の表2に示す。
尚、本発明における「JIS−L−1907:2010の吸水性試験(滴下法)で示される試験」とは、当該JISに記載された通りの試験であると共に、当該JISに記載された試験に準じる(当該JISに記載された試験を準用する)試験も含み、以下、この吸水性試験を「滴下法」と言う。
【0039】
上述した表1、2より、布帛2は、洗濯の回数が上がっても、その耐水圧・吸水性の変化・劣化が少ない。
又、これら耐水圧・吸水性以外の性質(撥水性・撥油性・耐熱性等)についても、布帛2は、洗濯によって影響はないと言える。
【0040】
撥水性・撥油性について詳解すれば、JIS−L−1092:2009のはっ水度試験(スプレー法)で示される試験により判定した布帛2(表皮層4の表面4a)の湿潤状態は、家庭洗濯か商業洗濯を所定の洗濯回数だけ行ったとしても、所定の撥水度(最も高いはっ水度である5級等)からの低下が抑えられる。
尚、本発明における「JIS−L−1092:2009のはっ水度試験(スプレー法)で示される試験」とは、当該JISに記載された通りの試験であると共に、当該JISに記載された試験に準じる(当該JISに記載された試験を準用する)試験も含む。
このように、布帛2における表皮層4側からのはっ水度が所定の級以上に保たれる(つまり、表皮層4側からの液体の浸入を防ぐ)。よって、上述の滴下法によって判定した吸水性は、布帛2における基材層3側(内方側)からの吸水性(又は、基材層3自体の吸水性)であるとも言える。
一方、耐熱性については、−180℃以上260℃以下であれば、洗濯を所定回数行った後でも、性質に変化は少ない。
【0041】
<布帛2の薬品耐性等>
更に加えて、本発明に係る布帛2の薬品耐性等について述べる。
ここでは、薬品として、強酸である硫酸(希硫酸、濃硫酸(H
2 SO
4 ))と、強アルカリである苛性ソーダ(水酸化ナトリウム(NaOH))を用いる。
【0042】
<試験1>
試験1では、強酸・強アルカリへの耐薬品性を調べる。
布帛2をビーカーの上に固定し、稍凹ませた状態で5ccの硫酸(濃度90%未満(希硫酸)や濃度98%(濃硫酸))又は苛性ソーダ(48°Be)を滴下し、4時間放置した後、布帛2の変化を目視にて確認する。
【0043】
試験1の結果、硫酸を滴下した場合、耐水圧等を含め全く問題がない。
又、苛性ソーダを滴下した場合も、布帛2の表面が多少白っぽく見える程度である。
従って、布帛2は、強酸・強アルカリに対しても耐薬品性を有する。
【0044】
<試験2>
試験2では、強酸・強アルカリへの耐薬品性の試験に加え、冷凍揉み試験も行う。
試験1と同様に、布帛2をビーカーの上に固定し、稍凹ませた状態で5ccの硫酸(濃度90%未満(希硫酸)や濃度98%(濃硫酸))又は苛性ソーダ(48°Be)を滴下し、4時間放置した後、布帛2の変化を目視にて確認する。
更に試験2では、それぞれを滴下した布帛2を、家庭用冷蔵庫等の冷凍室(−20℃)に保管し、毎日100回の手揉みを実行し、30日後の状態変化を目視にて確認する。
【0045】
試験2の結果、試験1と同様に、硫酸を滴下した場合、耐水圧等を含め全く問題がなく、苛性ソーダを滴下した場合も、布帛2の表面が多少白っぽく見える程度である。
又、冷凍揉み後であっても、布帛2の状態に全く変化はない。
従って、布帛2は、強酸・強アルカリへの耐薬品性と共に、冷凍揉みに対する耐性も有している。
【0046】
<襟11>
図5、7〜9、11、12に示した如く、襟11は、立てて使用することが出来、着用者Tの首部Nを覆うものである。
襟11は、着用者Tの首部Nの首周(首周長さ)C1に応じて、左右の襟11L、11Rの前部を閉じる襟アジャスタ31を有している。
【0047】
この襟アジャスタ31は、着用者Tの首周C1に応じて、左右の襟11L、11Rが閉じた時の内径を調整(アジャスト)可能であれば、何れの構成であっても良いが、例えば、左右の襟11L、11Rの前部にマジックテープ(登録商標)を設けていても良い。
このマジックテープ(登録商標)を詳解すれば、例えば、略円形状の襟雄部31aが、左の襟11L前部の内方側(着用者T側(着用者Tに近い側))に固定され、襟雄部31aの直径より長い帯状の襟雌部31bが、右の襟11R前部の外方側(着用者Tとは反対側(着用者Tから遠い側))に固定されることで、帯状の襟雌部31bの何れかの位置に襟雄部31aが付着することによって、着用者Tの首周C1に応じた襟11の内径を調整(アジャスト)できる。
【0048】
襟11の高さ(上下幅)は、何れの値でも構わないが、5cm以上11cm以下、好ましくは6cm以上10cm以下、更に好ましくは7cm以上9cm以下であっても良い(例えば、8cm)。
又、襟11は、防護服1が2ピース式であれば、上着21に設けられ、防護服1が1ピース式であれば、ロングコートや繋ぎに設けられる。
尚、襟11の外方側には、後述するフード12を着脱自在に取り付けるために、ボタン等の取付具11aが、所定間隔ごとに設けられていても良い。
【0049】
<フード12>
図1〜3、5〜8、10に示したように、着用者Tの頭部Hに後方から覆い被さることが出来、着用者Tの頭部Hを覆うものである。
フード12は、着用者Tの頭部Hを、その前面(顔面)も含めて完全に覆う(被さる)構成であっても良い。
【0050】
フード12は、着用者Tの頭部Hを覆いつつ、着用者Tの視界を確保するために、フード12の前上部に透明部12aを設けていても良い。
尚、フード12は、その下部の内方側に、上述した襟11に着脱自在に取り付けるために、ボタン等の取付具12bが、所定間隔ごとに設けられていても良い。
又、
図1と
図6は、何れも正面から見たフード12とその透明部12aが示されているが、
図6は
図1よりも透明部12a前端を引き出して、後述するマスク13が閉じられた際に出来る着用者Tの顔面前方のフード開口部が、横長になった場合を示している。
【0051】
<マスク13>
図1〜3、5〜8、10に示した如く、マスク13は、上述のフード12の前部に設けられ、着用者Tの口部Mを覆うものである。
マスク13は、着用者Tの頭部Hにおける口の高さでの周長さ(口高さ周)C2に応じて、左右のマスク13L、13Rを閉じるマスクアジャスタ32を有している。
【0052】
このマスクアジャスタ32は、着用者Tの口高さ周C2に応じて、左右のマスク13L、13Rが閉じた時の内径を調整(アジャスト)可能であれば、何れの構成であっても良いが、例えば、左右のマスク13L、13Rにマジックテープ(登録商標)を設けていても良い。
このマジックテープ(登録商標)を詳解すれば、例えば、略円形状のマスク雄部32aが、左のマスク13Lの内方側(着用者T側(着用者Tに近い側))に固定され、マスク雄部32aの直径より長い帯状のマスク雌部32bが、右のマスク13Rの外方側(着用者Tとは反対側(着用者Tから遠い側))に固定されることで、帯状のマスク雌部32bの何れかの位置にマスク雄部32aが付着することによって、着用者Tの口高さ周C2に応じたマスク13の内径を調整(アジャスト)できる。
【0053】
このマスク13の内径が、上述した襟11の内径より大きい(大径状である)ため、マスク13は、襟11前端より前方に位置することとなる。
これにより、襟11から所定距離だけ離れて前方に位置するマスク13で、まず薬品などの大半を浸入させないと同時に、襟11によって着用者Tを二重に覆うことで、薬槽船等からの荷役の際、ホースに残った薬品(薬液)などが、首元から浸入することを確実に防ぐことが可能となる。
【0054】
これに加え、マスク13は、その下端を、上述した襟11上端より下方に位置させても良い。
これにより、薬品などが下から跳ね上がった場合(仮に、マスク13下端から襟11とフード12との間に、薬品などが浸入した場合等)であっても、マスク13下端より上方にあり且つ上方に開口している襟11から防護服1内へ薬品などが浸入することはない(「浸入の防止」)。
このような浸入の防止は、薬品など以外の液体(例えば、雨水など)Eであっても同様である。
【0055】
尚、マスク13の高さ(上下幅)は、襟11の高さ(上下幅)より大きくても良く、この場合には、着用者Tの首部Nを覆う襟11と口部Mの両方を、更に大きなマスク13により二重に覆うこととなり、薬液などの首元からの浸入を、より確実に防ぐこと出来る。
又、マスク13の高さ(上下幅)は、何れの値でも構わないが、9cm以上15cm以下、好ましくは10cm以上14cm以下、更に好ましくは11cm以上13cm以下であっても良い(例えば、12cm)。
マスク13は、前方にいくほど、高さ(上下幅)が小さくなる先細り形状であっても良い。
【0056】
<内表皮部14>
図7〜14に示したように、内表皮部14は、布帛2端部に設けられ、表皮層4が内方側に露出するものである。
内表皮部14は、布帛2の端縁から所定幅だけ表皮層4が露出するものであったり、布帛2の端縁から所定の長さ離れた位置から所定幅(所定範囲)だけ表皮層4が露出するものであっても良い。
内表皮部14は、防護服1を構成する布帛2端部の少なくとも何れかに設けられていれば良いが、例えば、襟11やフード12下端部、マスク13、上着21の前立23(左右の前立23L、23R)、上着21の裾24、袖口25の少なくとも1つに設けられていても構わない。
【0057】
図8、9、12に示した如く、内表皮部14が襟11に設けられている場合には、襟11の内方側全面に内表皮部14が設けられていても良い。
襟11の内表皮部14における布帛2の端縁からの幅は、何れの値でも良いが、例えば、5cm以上11cm以下、好ましくは6cm以上10cm以下、更に好ましくは7cm以上9cm以下であっても良い(例えば、8cm)。
【0058】
図7、8、10に示した如く、内表皮部14がフード12に設けられている場合には、フード12下端部の内方側に内表皮部14が設けられていても良い。
フード12下端部の内表皮部14における布帛2の端縁からの幅も、何れの値でも良いが、例えば、0cm以上6cm以下、好ましくは1cm以上5cm以下、更に好ましくは2cm以上4cm以下であっても良い(例えば、3cm)。
尚、
図10においては、フード13内面に布帛2における基材層3の裏面3bが見えているが、ここに裏面層27を有していても良い。
【0059】
図7、8、10に示した如く、内表皮部14がマスク13に設けられている場合には、マスク13の内方側全面に内表皮部14が設けられていても良い。
マスク13の内表皮部14における布帛2の端縁からの幅も、何れの値でも良いが、例えば、9cm以上15cm以下、好ましくは10cm以上14cm以下、更に好ましくは11cm以上13cm以下であっても良い(例えば、12cm)。
【0060】
図11に示した如く、内表皮部14が、防護服1の上着21前面におけるファスナ26を右前面側から覆う右前立23Rに設けられている場合には、右前立23Rの内方側全面に内表皮部14が設けられていても良い。
尚、右前立23Rによって、ファスナ26の前面を覆うことで、薬品などの防護服1内への浸入を確実に防ぐこと出来る。
又、右前立23Rの左右幅は、何れの値でも構わないが、0cm以上5cm以下、好ましくは0cm以上4cm以下、更に好ましくは1cm以上3cm以下であっても良い(例えば、2cm)。
更に、右前立23Rの内表皮部14における布帛2の端縁からの幅も、同様に何れの値でも良いが、例えば、0cm以上5cm以下、好ましくは0cm以上4cm以下、更に好ましくは1cm以上3cm以下であっても良い(例えば、2cm)。
【0061】
図12に示した如く、内表皮部14が、防護服1の上着21前面におけるファスナ26と上述した右前立23Rとを左前面側から覆う左前立23Lに設けられている場合には、左前立23Lの内方側全面に内表皮部14が設けられていても良い。
尚、左前立23Lによって、ファスナ26と右前立23Rの前面を覆うことで、薬品などの防護服1内への浸入を更に確実に防ぐこと出来る。
又、左前立23Lの左右幅は、右前立23Rの左右幅より大きくても良く、この場合には、ファスナ26の前面と右前立23Rの前面の両方を、更に幅広な左前立23Lにより二重に覆うこととなり、薬液などの防護服1への浸入を、更により確実に防ぐこと出来る。
又、左前立23Lの左右幅は、何れの値でも構わないが、3.5cm以上9.5cm以下、好ましくは4.5cm以上8.5cm以下、更に好ましくは5.5cm以上7.5cm以下であっても良い(例えば、6.5cm)。
更に、左前立23Lの内表皮部14における布帛2の端縁からの幅も、同様に何れの値でも良いが、例えば、3.5cm以上9.5cm以下、好ましくは4.5cm以上8.5cm以下、更に好ましくは5.5cm以上7.5cm以下であっても良い(例えば、6.5cm)。
【0062】
図13に示した如く、内表皮部14が上着21の裾24に設けられている場合には、裾24の内方側に内表皮部14が設けられていても良い。
裾24の内表皮部14における布帛2の端縁からの幅も、何れの値でも良いが、例えば、0cm以上6cm以下、好ましくは1cm以上5cm以下、更に好ましくは2cm以上4cm以下であっても良い(例えば、3cm)。
尚、上着21の裾24には、着用者Tの胴回りに応じて上着21の裾24の内径を調整可能なアジャスタ(上着裾アジャスタ)24aを有していても良い。
【0063】
図14に示した如く、内表皮部14が上着21の袖口25に設けられている場合には、袖口25の内方側に内表皮部14が設けられていても良い。
袖口25の内表皮部14における布帛2の端縁からの幅も、何れの値でも良いが、例えば、0.0cm以上5.5cm以下、好ましくは0.5cm以上4.5cm以下、更に好ましくは1.5cm以上3.5cm以下であっても良い(例えば、2.5cm)。
尚、上着21の袖口25には、着用者Tの手首の太さに応じて袖口25の内径を調整可能なアジャスタ(袖口アジャスタ)25aを有していても良い。
【0064】
ここまで述べたように、布帛2端部に、表皮層4が内方側にも露出する内表皮部14を設けることで、布帛2端部から防護服1の内部に液体Eが多少浸入しても、PTFEフィルムである内表皮部14が存在しているため、所定の範囲で防護服1の外方側と同様の耐薬品性等を保つことが出来る。
【0065】
<裏面層27>
図15に示されたように、裏面層27は、複層構造の布帛2における1つの層であり、基材層3の裏面3b側に設けられ、防護服1の最も内方側に位置する層である。
つまり、布帛2は、その表面2a側で表皮層4が露出するのであれば、上述した基材層3や表皮層4以外に、裏面層27などを有していても良く、この裏面層27は、基材層3の他方面(裏面)3b側に位置している。
【0066】
裏面層27は、何れの素材であっても構わないが、例えば、メッシュ部材から構成されていても良い。
この裏面層27を有することによって、着用者Tの肌に、汗を吸収した基材層3が直接つくことなく、清涼感・快適性を持たせることが可能となる。
【0067】
<縫製糸28・貫通孔29>
図16に示した如く、布帛2を縫製して防護服1を構成する際に、縫製する糸(縫製糸)28が、布帛2を貫通して孔(貫通孔)29が形成される。
この貫通孔29を形成する縫製糸28として、極力細い糸を用いることによって、布帛2に形成される貫通孔29も細く(小さく)なり、その分、この貫通孔29から薬品等が防護服1の内部に浸入することを抑制できる。
尚、縫製糸28の太さ(繊度)は、何れの値でも良いが、例えば、40dtex以上1100dtex以下、好ましくは60dtex以上900dtex以下、更に好ましくは80dtex以上700dtex以下であっても良い。
【0068】
<防護服1、布帛2の変形例>
図17、18に示したように、布帛2の変形例も、複層構造である(複数の層を有している)が、基材層3と、この基材層3の一方面(表面)3a側に位置した表皮層4の他に、この表皮層4の一方面(表面)4a側に位置した(表皮層4を外方側から覆う)外方層5を少なくとも有している。
つまり、布帛2の変形例は、複数の層を有するのであれば、基材層3や表皮層4、外方層5以外に、幾つの層を有していても良い。又、防護服1の変形例は、布帛2の変形例を用いて構成されている。
【0069】
尚、布帛2の変形例において、表皮層4は、その外方(表面)側を外方層5に覆われていることから、表側層4であるとも言える。
又、外方層5は、布帛2の変形例における一方面(表面)2a側で最も上に積層された層となり、当然、この外方層5の一方面(表面)5a側に、他の層が存在せず(積層されず)、布帛2の変形例の表面2a側には外方層5が位置している。
このように、表側層4を外方側から覆う外方層5を少なくとも有することで、着用中(荷役等の作業中)に表側層4に鋭利なものが接触して(擦れ等が生じて)、表側層4が基材層3から脱落したり、表側層4が破れたりすることを低減できる。
尚、防護服1や布帛2の変形例における基材層3、表側層(表皮層)4の構成、作用効果及び使用態様は、第1実施形態と同様である。
【0070】
<外方層5>
図18に示した如く、外方層5も、複層構造の布帛2の変形例における1つの層であり、表側層4上に積層(ラミネート)され、防護服1の変形例において、最も外方側に位置する層である。
外方層5は、何れの構成であっても良いが、基材層3と同様に、例えば、編物、織物、不織布等であったり、合成樹脂製のシート状物(フィルム、シート)でも構わない。
例えば、外方層5が編物であれば、経糸又は緯糸によって編成され、より具体的には、経糸のみで編成された経編であれば、筬1枚を用いるシングル・コード編や、筬2枚を用いるダブル・コード編や、筬3枚を用いるトリプル・コード編などでも良く、これらのコード編以外では、デンビー編(トリコット編とも言う。詳しくは、シングル・デンビー編、ダブルデンビー編等)や、バンダイク編(アトラス編とも言う。詳しくは、シングル・バンダイク編、ダブル・バンダイク編等)、糸抜き編(レース編)、パイル編など何れの経編組織であっても構わない。
この他、緯編であれば、平編、ゴム編、パール編、タック編、浮き編、両面編、透孔編(レース編)、パイル編など何れの緯編組織や、これら以外でも丸編組織であっても構わない。
尚、外方層5は、経編(トリコット編機で編成したトリコット生地など)であれば、物性面から効果的であるとも言える。
【0071】
一方、外方層5が織物であれば、経糸及び緯糸によって織成され、より具体的には、経糸と緯糸を交互に交差させた平織や、綾織(斜文織)、朱子織をはじめ、これら平織、綾織、朱子織の三原組織を変化させた変化組織や、二重組織(経二重組織、緯二重組織)、二重より多い多重組織、紋織組織(ジャガード織)など、何れの織組織であっても構わない。
このような織物や編物、不織布である外方層5を構成する糸(繊維)の素材も、基材層3と同様に、特に限定はないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)や、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル繊維、ナイロン(ポリアミド)繊維、コットン(綿)などであり、これらを単独又は組み合わせて(T/C(ポリエステル繊維とコットンの混紡)として)用いられても良い。
【0072】
上述以外にも、外方層5を構成する糸の素材としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系繊維、レーヨン繊維、キュプラ繊維、アセテート繊維、ポリアクリロニトリル(PAN)を主成分とするアクリル繊維、ポリビニルアルコール(PVA)繊維(ビニロン繊維)、ポリウレタン(PU)繊維、ガラス繊維、絹、麻などであり、これらを単独又は組み合わせて用いられても良い。
この他、外方層5がシート状物であれば、それを構成する合成樹脂に敢えて言及すると、ポリエチレンテレフタレート(PET)や、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル樹脂、ナイロン(ポリアミド)樹脂、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂、アセテート樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)を主成分とするアクリル樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)樹脂(ビニロン樹脂)、ポリウレタン(PU)樹脂などであり、これらを単独又は組み合わせて用いられても良い。
【0073】
外方層5の厚みも、基材層3と同様に、特に限定はなく、例えば、0.01mm以上2.00mm以下、好ましくは0.03mm以上1.50mm以下、更に好ましくは0.50mm以上1.00mm以下であっても良い。
外方層5の目付も、特に限定はないが、例えば、10g/m
2 以上100g/m
2 以下、好ましくは20g/m
2 以上80g/m
2 以下、更に好ましくは30g/m
2 以上60g/m
2 以下(40g/m
2 )であっても良い。
外方層5は、基材層3より厚みが薄かったり、基材層3より目付が小さくても構わない。
【0074】
尚、外方層5の目付が、表側層4の目付と同じような範囲(例えば、5g/m
2 以上50g/m
2 以下や、40g/m
2 前後など)であれば、洗濯を行った後も外方層5が表側層4から脱落し難くなる(剥離強度が向上する)。これは、洗濯時において、外方層5と表側層4の挙動が同一となるからであるとも言える。
又、外方層5がメッシュ状の部材であったり、編地である(外方層5の目付が表側層4の目付と同じような範囲などである)場合には、外方層5のメッシュの孔や編地の隙間から表側層4の一方面(表面)4aが外方側に露出していることとなる。
つまり、表側層4の一方面4aの一部分が外方側に露出しているとも言える。
【0075】
外方層5は、撥水性を有し(撥水加工を施され)ていても良く、この場合、布帛2の変形例における内方側にある基材層3で、防護服1を着用した着用者Tの汗を吸収して、この吸収された汗は、布帛2の変形例における外方側にあり且つ透湿防水性(透湿性)を有した表側層4を介し、外方層5の外方側の面(一方面又は表面)5aから防護服1の外部へ蒸発され易くなる。
尚、外方層5は、パイルを有したパイル布帛なくても良く、又、起毛加工を施されていなくとも構わない。
【0076】
外方層5が編物等の糸(繊維)で構成されている場合は、基材層3と同様に、外方層5に染色が可能であり、染色する色は、特に限定はないが、例えば、白等であっても良い。
尚、撥水加工とは、外方層5に撥水性が付与されるのであれば、何れの方法でも良いが、例えば、シリコン樹脂やフッ素樹脂などの撥水剤を、外方層5の表面(編物等の場合はそれを構成している糸(繊維)の表面、フィルム等の場合はその表面)5aに付着させる等の加工を言う。撥水剤は、スプレー等による塗布や、撥水剤を溶かした溶液を霧吹きしたり、撥水剤を溶かした溶液に外方層5を浸ける等によって、外方層5の表面に付着させても良い。
【0077】
<布帛2の変形例の透湿防水性>
このような外方層5と上述した表側層4、基材層3を少なくとも有する布帛2の変形例の透湿度は、JIS−L−1099:2012(A法)で示される透湿度試験による値が19488g/m
2 ・24hrsであっても良い。
【0078】
又、布帛2の変形例の防水性としての耐水圧(耐水度)は、JIS−L−1092:2009で示される耐水度試験による値が、16000mm等であっても良い。
このような透湿防水性(透湿度・耐水圧)を有することで、更に、防護服1外部からの液体Eを通さずに、防護服1内の水蒸気(湿気)Sを外に排出することが可能となる。
【0079】
<布帛2の変形例の洗濯>
このような外方層5と上述した表側層4、基材層3を少なくとも有する布帛2の変形例は、JIS−L−0217:1995の番号103で示される洗い方での洗濯を200回行った後も、表側層4が基材層3から脱落しないものであっても構わない。
この家庭洗濯を200回行った後も、布帛2の変形例は、上述したように、表側層4が基材層3から脱落しないものであっても良く、好ましくは家庭洗濯を300回行った後も表側層4が基材層3から脱落しない、更に好ましくは家庭洗濯を400回行った後も表側層4が基材層3から脱落しないものであっても良い。
【0080】
又、布帛2の変形例も、リネンサプライ(病院リネンサプライ、リネン製品)等に用いられる連続式洗濯機(6層式)での洗濯(以下、この洗濯を「商業洗濯」と言う)を200回行った後も、表側層4が基材層3から脱落しないものであっても良い。
この商業洗濯は、上述した第1実施形態の布帛2の際と同様に、例えば、水槽に液温80℃(又は、液温は80℃を限度とする)水を入れ、これに、アルカリ洗剤(又は、強アルカリ洗剤)と、漂白剤としての過酸化水素(H
2 O
2 )と、漂白殺菌剤としての次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)を添加して溶解し、洗濯液とする。この洗濯液に布帛2の変形例を投入して運転を開始する。40分間処理した後、運転を止め、布帛2の変形例を脱水機で脱水(又は、強力脱水)し、シーツローラー機や乾燥機、自動折畳み機等に通して、1回の商業洗濯としても良い。
このような商業洗濯を200回行った後も、布帛2の変形例は、上述したように、表側層4が基材層3から脱落しないものであっても良く、好ましくは商業洗濯を250回行った後も表側層4が基材層3から脱落しない、更に好ましくは商業洗濯を300回行った後も表側層4が基材層3から脱落しないものであっても良い。
【0081】
<布帛2の変形例の洗濯と耐水圧・耐摩耗性・透湿性>
上述した家庭洗濯や商業洗濯を所定回数行っても、布帛2の変形例は、表側層4が基材層3から剥離しないだけでなく、更には、布帛2の変形例の耐水圧・耐摩耗性・透湿性の低下が抑制できることとしても良い。
まず、耐水圧(耐水度)について述べれば、本発明に係る布帛2の変形例(実施例2)と、その他の樹脂をコーティングした布帛(例えば、編物等の基材における裏面側にウレタン等をコーティングした布帛など、以下、比較例2)に対して、家庭洗濯と商業洗濯を所定の洗濯回数だけ行った場合における実施例2・比較例2それぞれの耐水圧を、以下の表3に示す。
【0083】
次に、耐摩耗性について述べれば、本発明に係る布帛2の変形例に対して、家庭洗濯か商業洗濯の何れかを所定の洗濯回数だけ行った場合におけるJIS−L−1096:2010のA−1法(ユニバーサル形法における平面法)で示される試験により判定した布帛2の変形例の耐摩耗性を、以下の表4に示す。
尚、本発明における「JIS−L−1096:2010のA−1法(ユニバーサル形法における平面法)で示される試験」とは、当該JISに記載された通りの試験であると共に、当該JISに記載された試験に準じる(当該JISに記載された試験を準用する)試験も含み、以下、この耐摩耗性試験を「平面法」と言う。又、以下の表4中の斜線は、測定していないことを示す。
【0085】
そして、透湿性について述べれば、本発明に係る布帛2の変形例に対して、家庭洗濯か商業洗濯の何れかを所定の洗濯回数だけ行った場合におけるJIS−L−1099:2012(A法)で示される透湿度試験により判定した布帛2の変形例の透湿性を、以下の表5に示す。
【0087】
上述した表3〜5より、布帛2の変形例は、洗濯の回数が上がっても、その耐水圧・耐摩耗性・透湿性の変化・劣化が、より少ない。
つまり、表側層4を外方側から覆う外方層5を少なくとも有することで、上述したように、荷役等の作業中に布帛2の変形例に擦れ等が生じても、表側層4が基材層3から脱落したり、表側層4が破れたりすることを低減できるのは勿論のこと、以下のこともわかった。
表側層4を外方側から覆う外方層5を少なくとも有した布帛2の変形例は、耐水圧については、洗濯の回数が上がっても、耐水圧(耐水圧の洗濯耐性)が全く低下せず、更に、洗濯の回数が上がることによって、逆に、透湿性が向上し(家庭洗濯を200回した際には、20000g/m
2 ・24hrsを越え)、布帛2の変形例を使用した防護服1を着用した際に、ムレ感がより抑制される。
又、布帛2の変形例は、洗濯(家庭洗濯又は商業洗濯)の回数によらず、透湿性が20000g/m
2 ・24hrs以上であることを特徴としても良い。
その他の防護服1、布帛2の構成、作用効果及び使用態様は、第1実施形態と同様である。
【0088】
<その他>
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。防護服1、布帛2などの各構成又は全体の構造、形状、寸法などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することが出来る。
防護服1は、2ピース式や、1ピース式、3ピース式など何れの部材数で構成されていても良いが、着用者Tの足首の太さに応じてズボン22の裾の内径を調整可能なアジャスタ(ズボン裾アジャスタ)を有していても良い。
【0089】
このズボン裾アジャスタだけでなく、上述した袖口アジャスタ25aも同様で、2ピース式や、1ピース式、3ピース式など部材数に関わらず、防護服1は袖口アジャスタ25aを有していても良い。更には、袖口25に、着用者Tの手首にフィットするゴム等のフィット部材を設けていても良い。
又、防護服1が1ピース式の際に、ファスナ26を有していても良く、このファスナ26を覆うように、前立23(左右の前立23L、23R)を有していても構わない。